2020-002897
電動機、送風機、及び空気調和機
- 審判番号
- 2020-002897
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-530277外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月03日
- 審決日
- 2021年09月29日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下、「本願」という。)は、2016年(平成28年)7月28日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 6月 4日 手続補正書
令和 元年 5月 9日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 7月19日 意見書、手続補正書
令和 元年11月26日付け 拒絶査定
令和 2年 3月 3日 審判請求書、手続補正書
令和 3年 2月24日付け 拒絶理由通知書
令和 3年 4月26日 意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ロータコアと前記ロータコアの外側表面に固定された複数の永久磁石とを有し、10極の磁極を持ち、回転軸を中心として回転自在であるロータと、回転軸方向に積層された複数の電磁鋼板を持つステータコアと、集中巻によって前記ステータコアに巻回された巻線とを有するステータとを備え、前記ステータコアは、続きを表示(全14行)12個のスロット部と、前記永久磁石に面する先端面を有し、前記スロット部のうちの2つに隣接しているティース部とを有し、前記先端面は、前記回転軸と直交する断面において円弧状に連続的に形成された曲面であり、前記断面において前記回転軸と周方向における前記先端面の中央とを通る仮想線を第1の仮想線とし、前記断面において前記回転軸と前記周方向における前記先端面の端部とを通る仮想線を第2の仮想線とし、前記周方向における前記永久磁石の中央が前記第1の仮想線上に位置する状態での前記周方向における前記先端面の前記中央から前記永久磁石までの最小距離をt1とし、前記永久磁石の前記中央が前記第1の仮想線上に位置する状態での前記第2の仮想線上における前記先端面の前記端部から前記永久磁石までの距離をt2としたときに、1<t2/t1≦8の式を満たし、前記回転軸から前記周方向における前記永久磁石の前記中央である永久磁石中央部までの距離R1と、前記ステータの半径R2との比率R1/R2が、0.50以上0.625以下であり、前記永久磁石の、前記ティース部に面する表面及び前記ロータコアに面する表面の両方が前記周方向に円弧状に形成されている電動機。」
第3 拒絶の理由
令和3年 2月24日に当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。
理由2(進歩性)について
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1 引用文献1の記載事項及び引用発明
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(1)引用文献1の記載事項
ア 引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審にて付加した。以下同様である。)。
「[0007]・・・ the permanent magnets have a generally rectangular shape and are preferably one of arc magnets and breadloaf magnets.(当審仮訳:永久磁石は略長形状で、円弧状の磁石かパン型の磁石のうちの1つであることが好ましい。)」
「[0026] Referring now to FIG. 1, an electric machine 10 is illustrated and includes a housing 12, a stator 14, a rotor 16, and a shaft 18.(当審仮訳:ここで、図1を参照すると、電動機10が示されており、ハウジング12、ステータ14、ロータ16、シャフト18を含んでいる。)・・・The stator 14 includes a plurality of stator poles 26 that project radially inwardly from an outer rim 28 of the stator 14. The stator 14 includes a stator core with a stack of stator plates that are interconnected in any suitable manner.(当審仮訳:ステータ14は、ステータ14の外側リム28から半径方向内側に突出する複数のステータ極26を含んでいる。ステータ14は、ステータプレートが任意の適切な方法で相互接続されて積層されたステータコアを含む。)」
「[0028] In FIG. 1, an outermost stator plate 30 of the stack is illustrated. The remaining stator plates 30 of the stack have a similar configuration as the outermost stator plate 30. Inter-pole stator slots 32 are located between adjacent stator poles 26. While not shown in FIG. 1, the stator 14 also includes winding wire that is wound around the stator poles 26 (using needle winding, transfer winding, computer numerical control (CNC) winding or other suitable winding methods) in the inter-pole stator slots 32.(当審仮訳:図1に、積層体の、最外側のステータプレート30が示されている。積層体の残りのステータプレート30は、最外側のステータプレート30と同様の形状を有している。磁極間のステータスロット32は、隣接するステータ極26の間に位置している。図1には示されていないが、ステータ14は、磁極間のステータスロット32内に、(ニードル巻き、移動巻き、コンピュータ数値制御巻きや他の適切な巻き方を用いて)ステータ極26の周りに巻き付けられた巻線も含んでいる。)」
「[0029]・・・The rotor 16 includes a rim section 41 and a radially outer surface 42 that includes magnet attachment surfaces 43 that may include grooves for receiving adhesive. Permanent magnets 40 are preferably adhered to the magnet attachment surfaces 43 on the radially outer surface 42 of the rotor 16.(当審仮訳:ロータ16は、リム部41と、接着剤を受ける溝を含むことができる磁石取付面43を有する半径方向外側表面42を含む。永久磁石40は、好ましくは、ロータ16の半径方向外側表面42上の磁石取付面43に接着されている。)」
「[0030]・・・ the stator 14 has twelve stator slots 32 (or stator poles 26) and the rotor 16 has ten rotor poles (or permanent magnets 40) in first and second axial rotor sections.(当審仮訳:ステータ14は、12個のステータスロット32(又はステータ極26)を有し、ロータ16は、第1と第2の軸方向のロータ部において、10極のロータ極(又は永久磁石40)を有している。)In this embodiment, the stator has an outer diameter of 101.7 mm.(当審仮訳:この実施例では、ステータは、外径が101.7mmである。)・・・ The radially inner surface 48 of the stator poles 26 has a diameter of 55.5 mm. The stator slot opening 70 is 2.2 mm.(当審仮訳:ステータ極26の半径方向内面48は、直径が55.5mmである。ステータスロット開口部70は、2.2mmである。)」
「[0031]・・・The radially outer crown surface 44 preferably has a radius of 19.0 mm.(当審仮訳:半径方向外側表面44は19.0mmの半径を有することが好ましい。)」
「[0033] Referring now to FIG. 4, a center gap is identified at 60. The center gap 60 is a minimum distance between a peak 62 of the radially outer crown surface 44 of the permanent magnet 40 and the radially inner surface 48 of the stator 14. An edge gap is identified at 68. The edge gap 68 is defined as a distance between the outer lateral edge 53 of the radially outer crown surface 44 of the permanent magnet 40 and the radially inner surface 48 (or inner diameter) of the stator 14 taken along a radial line of the rotor. An air-gap ratio is defined as the edge gap 68 divided by the center gap 60. Preferably the air-gap ratio is between 1.35 and 2.5.(当審仮訳:ここで、図4を参照すると、中央隙間は60で表される。中央隙間60は、永久磁石40の半径方向外側表面44の頂部62とステータ14の半径方向内面48の間の最小距離である。端部隙間は68で表される。端部隙間68は、永久磁石40の半径方向外側表面44の横方向外側の端部53と、ロータの半径方向に沿ったステータ14の半径方向内面48(または内径)の間の距離を定義している。空隙率は端部隙間68を中央隙間60で割った値として定義される。好ましくは、空隙率は1.35と2.5の間である。)」
「[0034] A slot opening ratio is defined as the width of the stator slot opening 70 divided by the edge gap 68. The slot opening ratio is preferably set approximately less than or equal to one.(当審仮訳:スロット開口比は、ステータスロット開口部70の幅を端部隙間68で割った値として定義される。スロット開口比は、好ましくは約1より小さいか、1に設定される。」
イ 引用文献1の図面から以下の事項が看取される。
(ア)FIG.1から、ロータ16の中心にシャフト18が設けられていることが看取される。
(イ)FIG.1から、ステータ極26の半径方向内面48は、永久磁石40に面していることが看取される。
(ウ)FIG.1から、ステータ極26は、ステータスロット32のうちの2つに隣接していることが看取される。
(エ)FIG.1、3、4から、シャフト18の中心軸から周方向における永久磁石40の(半径方向外側表面44の)中央である中央部(すなわち頂部62)までの距離は、シャフト18の中心軸からステータ14の半径方向内面48までの距離から、中央隙間60の距離を引いた値であることが看取される。
(オ)FIG.1、3、4から、永久磁石40の(ステータ14の)ステータ極26に面する表面は、周方向に円弧状に形成され、永久磁石40の(ロータ16の)リム部41に面する表面は略直線状に形成されていることが看取される。
[図:0001385479000001.jpg]
[図:0001385479000002.jpg]
[図:0001385479000003.jpg]
ウ 上記ア、イから以下の事項がいえる。
(ア)上記ア[0026]の記載、上記イ(ア)、及び、電動機分野の技術常識より、ロータ16はシャフト18の中心軸を中心として回転自在であるということができる。
(イ)上記ア[0026][0028]の記載、及び、FIG.1より、ステータコアは、シャフト18の中心軸方向に積層された複数のステータプレートを持つことが理解できる。
(ウ)上記ア[0030]の「ステータ極26の半径方向内面48は、直径が55.5mmである。」なる記載、及び、FIG.1より、半径方向内面48はシャフト18の中心軸と直交する断面において、円弧状に連続的に形成された曲面であるということができる。
(エ)上記ア[0033]の「端部隙間68は、永久磁石40の半径方向外側表面44の横方向外側の端部53と、ロータの半径方向に沿ったステータ14の半径方向内面48(または内径)の間の距離を定義している。」なる記載、及び、FIG.3、4より、シャフト18の中心軸と直交する断面において、シャフト18の中心軸と周方向における永久磁石40の端部とを通る線を仮想線A(図4における破線)とした場合、前記仮想線A上における永久磁石40の端部からステータ14の半径方向内面48(または内径)までの距離が端部隙間68であると理解できる。
(オ)ステータ14の半径をR14、シャフト18の中心軸からステータ極26の半径方向内面48までの距離をR48、ステータスロット開口部70の距離をg70とすると、上記ア[0030]の記載より以下のことがいえる。
R14=101.7/2=50.85mm ・・・(式1)
R48=55.5/2=27.75mm ・・・(式2)
g70=2.2mm ・・・(式3)
(カ)中央隙間60の距離をt60、端部隙間68の距離をt68とすると、上記ア[0033]の記載より以下のことがいえる。
1.35≦t68/t60(空隙率)≦2.5 ・・・(式4)
(キ)上記ア[0034]の記載より以下のことがいえる。
g70/t68(スロット開口比)≦1 ・・・(式5)
(ク)シャフト18の中心軸から周方向における永久磁石40の(半径方向外側表面44の)中央である中央部(すなわち頂部62)までの距離をR44とすると、上記イ(エ)より以下のことがいえる。
R44=R48-t60 ・・・(式6)
(ケ)ここで、上記(式5)において、g70/t68=1(スロット開口比が1)とすると、上記(式3)より、
t68=g70=2.2mm ・・・(式7)
となり、上記(式4)、(式7)より、
0.88 ≦ t60 ≦ 1.6296 ・・・(式8)
となり、上記(式2)、(式6)、(式8)より、
26.1204 ≦ R44 ≦ 26.87 ・・・(式9)
となり、上記(式1)、(式9)より、
0.5136 ≦ R44/R14 ≦ 0.5284
となる。
(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロータ16のリム部41と、前記リム部41の半径方向外側表面42に接着された複数の永久磁石40とを有し、10極のロータ極を持ち、シャフト18の中心軸を中心として回転自在であるロータ16と、シャフト18の中心軸方向に積層された複数のステータプレートを持つステータコアと、前記ステータコアに巻き付けられた巻線とを有するステータ14とを備え、前記ステータコアは、続きを表示(全14行)12個のステータスロット32と、前記永久磁石40に面する半径方向内面48を有し、前記ステータスロット32のうちの2つに隣接しているステータ極26とを有し、前記半径方向内面48は前記シャフト18の中心軸と直交する断面において円弧状に連続的に形成された曲面であり、前記半径方向内面48から前記永久磁石40までの最小距離をt60とし、前記シャフト18の中心軸と周方向における前記永久磁石40の端部とを通る線を仮想線Aとし、前記仮想線A上における前記永久磁石40の端部から前記半径方向内面48までの距離をt68としたときに、1.35≦t68/t60≦2.5の式を満たし、前記シャフト18の中心軸から前記周方向における前記永久磁石40の中央である中央部までの距離R44と、前記ステータ14の半径R14との比率R44/R14が0.5136以上0.5284以下であり、前記永久磁石40の、前記ステータ極26に面する表面が、前記周方向に円弧状に形成され、前記リム部41に面する表面は略直線状に形成されている電動機10。」
2 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ロータ16のリム部41」あるいは「リム部41」は、本願発明の「ロータコア」に相当し、以下同様に、「半径方向外側表面42」は「外側表面」に、「接着」は「固定」に、「永久磁石40」は「永久磁石」に、「ロータ極」は「磁極」に、「シャフト18の中心軸」は「回転軸」に、「ロータ16」は「ロータ」に、「ステータプレート」は「電磁鋼板」に、「ステータコア」は「ステータコア」に、「巻き付けられた」は「巻回された」に、「巻線」は「巻線」に、「ステータ14」は「ステータ」に、「ステータスロット32」は「スロット部」に、「半径方向内面48」は「先端面」に、「ステータ極26」は「ティース部」に、「中央部」は「永久磁石中央部」に、「距離R44」は「距離R1」に、「半径R14」は「半径R2」に、「比率R44/R14」は「比率R1/R2」に、「電動機10」は「電動機」に相当する。
そして、引用発明における「前記シャフト18の中心軸から前記周方向における前記永久磁石40の中央である中央部までの距離R44と、前記ステータ14の半径R14との比率R44/R14が0.5136以上0.5284以下であり」と、本願発明における「前記回転軸から前記周方向における前記永久磁石の前記中央である永久磁石中央部までの距離R1と、前記ステータの半径R2との比率R1/R2が、0.50以上0.625以下であり」とは、「前記回転軸から前記周方向における前記永久磁石の中央である永久磁石中央部までの距離R1と、前記ステータの半径R2との比率R1/R2が所定の数値範囲であり」という限りにおいて一致している。
(2)一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「ロータコアと前記ロータコアの外側表面に固定された複数の永久磁石とを有し、10極の磁極を持ち、回転軸を中心として回転自在であるロータと、回転軸方向に積層された複数の電磁鋼板を持つステータコアと、前記ステータコアに巻回された巻線とを有するステータとを備え、前記ステータコアは、続きを表示(全11行)12個のスロット部と、前記永久磁石に面する先端面を有し、前記スロット部のうちの2つに隣接しているティース部とを有し、前記先端面は、前記回転軸と直交する断面において円弧状に連続的に形成された曲面であり、前記回転軸から前記周方向における前記永久磁石の中央である永久磁石中央部までの距離R1と、前記ステータの半径R2との比率R1/R2が所定の数値範囲であり、前記永久磁石の、前記ティース部に面する表面が前記周方向に円弧状に形成されている電動機。」
<相違点1>
本願発明では、巻線が「集中巻」によってステータコアに巻回されているのに対し、引用発明では、巻線が「集中巻」によってステータコアに巻回されているか不明である点。
<相違点2>
本願発明では、「前記断面において前記回転軸と周方向における前記先端面の中央とを通る仮想線を第1の仮想線とし、前記断面において前記回転軸と前記周方向における前記先端面の端部とを通る仮想線を第2の仮想線とし、前記周方向における前記永久磁石の中央が前記第1の仮想線上に位置する状態での前記周方向における前記先端面の前記中央から前記永久磁石までの最小距離をt1とし、前記永久磁石の前記中央が前記第1の仮想線上に位置する状態での前記第2の仮想線上における前記先端面の前記端部から前記永久磁石までの距離をt2としたときに、1<t2/t1≦8の式を満たし」ているのに対し、引用発明では「前記半径方向内面48から前記永久磁石40までの最小距離をt60とし、前記シャフト18の中心軸と周方向における前記永久磁石40の端部とを通る線を仮想線Aとし、前記仮想線A上における前記永久磁石40の端部から前記半径方向内面48までの距離をt68としたときに、1.35≦t68/t60≦2.5の式を満たし」ている点。
<相違点3>
比率R1/R2の数値範囲に関して、本願発明は「0.50以上0.625以下」であるのに対し、引用発明は「0.5136以上0.5284以下」である点。
<相違点4>
本願発明は「前記永久磁石の、前記ティース部に面する表面及び前記ロータコアに面する表面の両方が前記周方向に円弧状に形成されている」のに対し、引用発明は、永久磁石40のステータ極26に面する表面は周方向に円弧状に形成されているものの、リム部41に面する表面は略直線状に形成されている点。
3 判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1([0028]参照)には、巻線の巻き方として「ニードル巻き」が例示されており、「ニードル巻き」は、通常、巻線を集中巻で巻く際に用いられる巻き方と考えられるところ、引用発明の巻線も集中巻によってステータコアに巻き付けられていると解される。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点1が実質的な相違点であったとしても、巻線を集中巻によって巻回することは本願の出願前から周知の事項であり(例えば、特開2001-157428号公報(以下、「引用文献2」という。)の請求項1、【0017】等参照。)、引用発明において、巻線を集中巻によって巻回することは当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
引用文献1には、1つのステータ極26の半径方向内面48の周方向の長さと、1つの永久磁石40の半径方向外側表面44の周方向の長さの大小関係については明記がないものの、FIG.1を参照すると、以下の大小関係が認められる。
「1つのステータ極26の半径方向内面48の周方向の長さ」<「1つの永久磁石40の半径方向外側表面44の周方向の長さ」・・・(※)
一方、FIG.4を参照すると、符号「48」で示される円弧状の実線の方が、1つの永久磁石40の半径方向外側表面44の周方向の長さよりも長いように表されており、上記大小関係と整合していないように思われる。しかしながら、引用文献1の[0033]には、「端部隙間68は、永久磁石40の半径方向外側表面44の横方向外側の端部53と、ロータの半径方向に沿ったステータ14の半径方向内面48(または内径)の間の距離を定義している。」と記載されており、FIG.4の符号「48」で示される円弧状の実線は、「半径方向内面48」それ自体、もしくは、ステータ14の「内径」面を表しているものと解せられる。そうすると、ステータ14の「内径」面を表している場合は、FIG.4の符号「48」で示される円弧状の実線は、1つのステータ極26の半径方向内面48を示したものではないから、FIG.1において認めた大小関係と整合する。さらに、引用発明が「10極のロータ極を持ち」、「12個のステータスロット32」を備えるものであって、永久磁石40の数よりもステータ極26の数の方が多いことも、FIG.1において認めた上記大小関係(※)を裏付けるものである。
また、引用発明は、ロータ16がシャフト18の中心軸を中心として回転自在であるから、シャフト18の中心軸と直交する断面において、シャフト18の中心軸と、周方向におけるステータ極26の半径方向内面48の中央とを通る仮想線(本願発明の「第1の仮想線」)上に、周方向におけるロータ16の永久磁石40の中央を配置することが可能である。そして、引用文献1[0030]の「ステータ極26の半径方向内面48は、直径が55.5mmである。」なる記載より、ステータ14の「内径」面のシャフト18の中心軸からの距離は一定である(半径方向内面48の中央と、中央以外の位置において違いはない)から、引用発明は、永久磁石40の中央が上記仮想線(本願発明の「第1の仮想線」)上に配置された状態であっても、ステータ14の「内径」面はFIG.4に示される態様となり得るものである。
してみると、引用文献1のFIG.4において、シャフト18の中心軸と周方向におけるステータ極26の半径方向内面48の中央とを通る仮想線を「第1の仮想線」、シャフト18の中心軸と周方向におけるステータ極26の半径方向内面48の端部とを通る仮想線を「第2の仮想線」とした場合、t60は、周方向における永久磁石40の中央が前記「第1の仮想線」上に位置する状態での、半径方向内面48の中央から永久磁石40までの最小距離といえ、また、上記大小関係(※)より、「第2の仮想線」は「第1の仮想線」と「仮想線A」との間に位置することが明らかである。
このことから、引用発明において、「永久磁石40の中央が前記第1の仮想線上に位置する状態での、前記第2の仮想線上における半径方向内面48の端部から永久磁石40までの距離」をt68’とすると、t68は仮想線A上における永久磁石40の端部から半径方向内面48(ステータ14の「内径」)までの距離であるから、以下の関係を満たすことが当業者にとって明らかである。
t60<t68’<t68
してみれば、t60(本願発明のt1)とt68’(本願発明のt2)は上記1(1)ウ(カ)の(式4)より以下の関係を満たす。
1<t68’/t60(本願発明のt2/t1)<t68/t60≦2.5
したがって、t68’/t60(本願発明のt2/t1)は、本願発明の1<t2/t1≦8に含まれるので、相違点2は実質的な相違点ではない。
また、t68’/t60の数値範囲における最大値は当業者が適宜設定し得るものである。
(3)相違点3について
引用発明は、比率R44/R14(本願発明のR1/R2)が、0.5136以上0.5284以下であり、本願発明の比率R1/R2の数値範囲である0.50以上0.625以下に含まれるので、相違点3は実質的な相違点ではない。
また、R1/R2の数値範囲における最大値は当業者が適宜設定し得るものである。
(4)相違点4について
回転子の外側表面に永久磁石が固定された電動機において、該永久磁石のティースに面する表面及び回転子に面する表面の両方を周方向に円弧状に形成したもの(例えば、引用文献2の図1参照。)は本願の出願前から周知の事項である。そして、上記電動機の回転子に用いられる永久磁石は、回転子への固着強度や、製造コスト等を考慮の上、当業者が最適な形状のものを選択し得るものであるから、引用発明の永久磁石40として、ステータ極26に面する表面及びリム部41に面する表面の両方が周方向に円弧状に形成されている永久磁石を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(5)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 請求人の主張について
審判請求人は、令和3年4月26日に提出された意見書の「〔3〕本願が特許されるべき理由〔3-1〕理由1及び2について〔3-1-2〕本願請求項1に係る発明と引用文献との対比」において、
「しかしながら、引用文献1の図1は、ElectricMachine10の全体構造を概略的に示したものに過ぎず、引用文献1の図1の記載からは、ステータ極26の内面48の周方向の長さが、永久磁石40の半径方向外側表面44の周方向の長さよりも短いとは断定できるものではないと考えます。拒絶理由通知書において引用されているように、引用文献1の段落0033には、端部隙間68は、永久磁石40の半径方向外側表面44の横方向外側の端部53と、ロータの半径方向に沿ったステータ14の半径方向の内面48との間の距離として定義されることが記載されています。したがって、仮に、ステータ極26の内面48の端部が、永久磁石40の半径方向外側表面44の端部53よりも周方向において永久磁石40の中央寄りに位置する場合、引用文献1の段落0033に記載の端部隙間68の定義と矛盾します。言い換えると、審判官殿による上述の認定の場合、引用文献1のFIG.4に示される、永久磁石40の端部53を半径方向に通る破線の端部(破線の上端)には、ステータ極26の内面48が存在しないことになります。さらに、引用文献1のFIG.4には、ステータ極26の内面48及び永久磁石40の詳細な構造及びこれらの位置関係が拡大して示されており、このFIG.4の記載に触れた当業者にとっては、ステータ極26の内面48の周方向の長さが、永久磁石40の半径方向外側表面44の周方向の長さよりも短いと認識するものではありません。ましてや、ステータ極26の内面48の端部が、永久磁石40の半径方向外側表面44の端部53よりも周方向において永久磁石40の中央寄りに位置するとは到底認識できるものではありません。よって、引用文献1に記載の発明においては、ステータ極26の内面48の方が永久磁石40の半径方向外側表面44よりも周方向に長い、と認識すべきものと思料いたします。」と主張している(下線は、当審で付与した。)。
しかしながら、引用文献1の[0033]によると、上記「第4 当審の判断 3(2)」で判断したとおり、引用文献1のFIG.4の「端部隙間68」は、永久磁石40の半径方向外側表面44の周方向外側の端部53と、ロータの半径方向に沿ったステータ14の「内径」の間の距離を定義しているものと認められ、FIG.4の符号「48」で示される円弧状の実線の端部に、1つのステータ極26の端部と認識される部分もないことから、引用文献1の記載、及び、FIG.1、4に触れた当業者が「ステータ極26の内面48の方が永久磁石40の半径方向外側表面44よりも周方向に長い」と認識するものとは認められない。
したがって、上記主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-002897