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特許拒絶査定不服審判

2022-007206

収穫機

審判番号
2022-007206
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-214874外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月13日
審決日
2023年03月13日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-214874「収穫機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020- 80656〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年11月15日の出願であって、令和3年11月1日付けの拒絶理由の通知に対し、令和4年1月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年2月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年5月13日に審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、令和4年1月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
未作業地にあらかじめ設けられた複数の経路要素に沿って自動走行して前記未作業地を往復走行する収穫機であって、
収穫物を貯留する収穫物タンクと、
前記収穫物タンクに貯留された収穫物の収量を検出するセンサと、
前記自動走行を行うための走行経路を生成する走行経路生成部とを備え、
前記走行経路生成部は、前記未作業地の途中で前記センサにより検出される収穫物の収量が排出収量となった際に、走行中の前記経路要素に隣接する前記経路要素が既に走行済みである場合には、前記隣接する経路要素に沿って走行して前記未作業地から離脱するように前記走行経路を新たに生成する収穫機。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献 特開2018-068284号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献の記載

引用文献には、以下の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、作業地を作業しながら自動走行する作業車のための走行経路を決定する走行経路決定装置に関する。
・・・
続きを表示(全12行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2による作業車の自動作業走行では、作業地の外形や作業車仕様に基づいて、当該作業地の作業のための走行経路が算出され、この算出された走行経路に沿って、1台または複数台の作業車が自動走行する。広大な圃場を走行している間に、燃料補給や収穫物の排出などの機械的要因や天候の変動や作業地状態などの環境的要因などに起因する作業車の作業環境変動により、予め設定された走行経路からの離脱、作業途中での走行経路の変更などが必要となることが少なくない。しかしながら、予め設定された走行経路に沿って走行するように自動走行制御されているシステムでは、作業途中での走行経路の変更等を柔軟に行うことができないという問題点がある。
このような実情に鑑み、作業車の作業環境の変動に対処するため、作業途中での経路変更を柔軟に行うことができる走行経路決定装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
作業地を作業しながら自動走行する作業車のための走行経路を決定する走行経路決定装置であって、前記作業地の作業対象領域を設定する領域設定部と、前記作業対象領域を網羅する走行経路を構成する多数の走行経路要素の集合体である走行経路要素群を算出して、読み出し可能に格納する経路管理部と、前記作業地内での前記作業車の走行中に、前記作業車の作業環境の評価結果である状態情報に基づいて、次に走行すべき次走行経路要素を順次前記走行経路要素群から選択する経路要素選択部とが、備えられている。」
(2)「【図面の簡単な説明】
【0014】
・・・
【図3】Uターンと直進とを繰り返す走行パターンを示す説明図である。
続きを表示(全19行)
・・・
【図8】短冊部分要素算出部によって算出された走行経路要素群の一例を示す説明図である。
【図9】ノーマルUターンとスイッチバックターンとを示す説明図である。
【図10】図8による走行経路要素群における走行経路要素の選択例を示す説明図である。
・・・
【図12】メッシュ経路要素算出部によって算出された走行経路要素群における直線往復走行パターンを示す説明図である。
・・・
【図18】作業対象領域から離脱後に再開される作業走行が離脱前の作業走行の続きから行われないケースを示す説明図である。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔自動走行の概要〕
図1には、本発明の作業車自動走行システムによる作業走行が模式的に示されている。この実施形態では、作業車は、作業走行として、走行しながら農作物を収穫する収穫作業(刈取作業)を行う収穫機1であり、一般に普通型コンバインと呼ばれている機種である。収穫機1によって作業走行される作業地は圃場と呼ばれる。圃場における収穫作業では、収穫機1が畦と呼ばれる圃場の境界線に沿って作業を行いながら周回走行した領域が外周領域SAとして設定される。外周領域SAの内側は作業対象領域CAとして設定される。外周領域SAは、収穫機1が収穫物の排出や燃料補給のための移動用スペース及び方向転換用スペース等として利用される。外周領域SAの確保のため、収穫機1は、最初の作業走行として、圃場の境界線に沿って3~4周の周回走行を行う。周回走行では、一周毎に収穫機1の作業幅分だけ、圃場が作業されることになるので、外周領域SAは収穫機1の作業幅の3~4倍程度の幅を有する。このことから、特別に注記しない限り、外周領域SAは既刈地(既作業地)として扱われ、作業対象領域CAは未刈地(未作業地)として扱われる。なお、この実施形態では、作業幅は、刈取り幅にオーバーラップ量を減算した値として取り扱われる。しかしながら、作業幅の概念は、作業車の種類によって異なる。本発明での作業幅は、作業車の種類や作業種類によって規定されるものである。
【0016】
収穫機1は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号に基づいて測位データを出力する衛星測位モジュール80を備えており、収穫機1は、測位データから、収穫機1の特定箇所の位置座標である自車位置を算出する機能を有する。収穫機1は、算出された自車位置を目標となる走行経路に合わせるように操縦することで走行収穫作業を自動化する自動走行機能を有している。収穫機1は、走行しながら収穫した収穫物を排出するために、畦際に駐車している運搬車CVの周辺に接近して、駐車する必要がある。運搬車CVの駐車位置が予め決められている場合には、このような接近走行、つまり作業対象領域CAにおける作業走行からの一時的な離脱、及び作業走行への復帰も自動走行で行うことも可能である。この作業対象領域CAからの離脱及び作業対象領域CAへの復帰のための走行経路は、外周領域SAが設定された時点で生成される。なお、運搬車CVの代わりに燃料補給車やその他の作業支援車も駐車可能である。」
(3)「【0017】
〔作業車自動走行システムの基本的な流れ〕
本発明の作業車自動走行システムに組み込まれた収穫機1が、収穫作業を自動走行で行うためには、走行の目標となる走行経路を生成し、その走行経路を管理する走行経路管理装置が必要となる。この走行経路管理装置の基本的な構成と、この走行経路管理装置を用いた自動走行制御の基本的な流れとを、図2を用いて説明する。
【0018】
続きを表示(全13行)
圃場に到着した収穫機1は、圃場の境界線の内側に沿って周回しながら収穫を行う。この作業は周囲刈りと呼ばれ、収穫作業ではよく知られた作業である。その際、コーナ領域では、未刈穀稈が残らないように前進と後進とを繰り返す走行が行われる。本形態では、少なくとも最外周一周は、刈り残しがないように、かつ、畦にぶつからないように、手動走行によって行われる。内周側の残りの数周は、周囲刈り専用の自動走行プログラムによって自動走行しても良く、また、最外周の周囲刈りに引き続いて手動走行によって行っても良い。このような周回走行の走行軌跡内側に残される作業対象領域CAの形状としては、自動走行による作業走行にとって都合が良いように、できるだけ簡単な多角形、好ましくは四角形が採用される。
【0019】
さらに、この周回走行の走行軌跡は、自車位置算出部53が衛星測位モジュール80の測位データから算出した自車位置に基づいて得ることができる。さらに、この走行軌跡から圃場の外形データ、特に周回走行の走行軌跡内側に位置する未刈地である作業対象領域CAの外形データが、外形データ生成部43によって生成される。圃場は、領域設定部44により外周領域SAと作業対象領域CAとに分けて管理される。
【0020】
作業対象領域CAに対する作業走行は、自動走行によって実施される。このため、作業対象領域CAを網羅する走行(作業幅で埋め尽くす走行)のための走行経路である走行経路要素群が経路管理部60によって管理される。この走行経路要素群は、多数の走行経路要素の集合体である。経路管理部60は、作業対象領域CAの外形データに基づいて走行経路要素群を算出し、読み出し可能にメモリに格納しておく。
【0021】
この作業車自動走行システムでは、作業対象領域CAでの作業走行の前に、予め全走行経路が決定されているのではなく、走行途中で、作業車の作業環境等の事情に応じて走行経路の変更が可能である。なお、走行経路の変更が可能な点(ノード)と点(ノード)の間の最小単位(リンク)が走行経路要素である。指定された場所から自動走行が開始されると、次に走行すべき次走行経路要素が、順次、経路要素選択部63によって、走行経路要素群から選択される。自動走行制御部511は、選択された走行経路要素と自車位置とに基づいて、車体が当該走行経路要素に沿うように自動走行データを生成して、自動走行を実行する。
【0022】
図2では、外形データ生成部43と、領域設定部44と、経路管理部60とによって、収穫機1のための走行経路を生成する走行経路生成装置が構築されている。また、自車位置算出部53、領域設定部44と、経路管理部60と、経路要素選択部63とによって、収穫機1のための走行経路を決定する走行経路決定装置が構築されている。このような走行経路生成装置や走行経路決定装置は、従来の自動走行可能な収穫機1の制御系に組み込むことが可能である。あるいは、走行経路生成装置や走行経路決定装置をコンピュータ端末に構築し、当該コンピュータ端末と収穫機1の制御系とをデータ交換可能に接続して、自動走行を実現することも可能である。」
(4)「【0023】
〔走行経路要素群の概要〕
走行経路要素群の一例として、図3には、作業対象領域CAを短冊状に分割する多数の平行分割直線を走行経路要素とする走行経路要素群が示されている。この走行経路要素群は2つのノード(両端点であって、ここで経路変更可能である経路変更可能点と称する)を1本のリンクで連結した直線状の走行経路要素を平行に並べたものである。走行経路要素は、作業幅のオーバーラップ量を調整することにより、等間隔を開けて並ぶように設定される。1つの直線で示される走行経路要素の端点から他の直線で示される走行経路要素の端点への移行には、Uターン走行(例えば180°の方向転換走行)が行われる。このような平行な走行経路要素をUターン走行によって繋ぎながら自動走行することを、以降は、『直線往復走行』と称する。このUターン走行には、ノーマルUターン走行と、スイッチバックターン走行とが含まれる。ノーマルUターン走行は、収穫機1の前進だけで行われ、その走行軌跡はU字状となる。スイッチバックターン走行は、収穫機1の前進と後進とを用いて行われ、その走行軌跡はU字状とはならないが、結果的には、収穫機1はノーマルUターン走行と同じ方向転換走行が得られる。ノーマルUターン走行を行うためには、方向転換走行前の経路変更可能点と方向転換走行後の経路変更可能点との間に2本以上の走行経路要素を挟む距離が必要となる。それより短い距離では、スイッチバックターン走行が用いられる。つまり、スイッチバックターン走行は、ノーマルUターン走行と異なって後進を行うため、収穫機1の旋回半径の影響がなく、移行する走行経路要素の選択肢が多い。しかし、スイッチバックターン走行では前後進の切替えが行われるため、スイッチバックターン走行は、基本的には、ノーマルUターン走行と比べて時間がかかる。」
(5)「【0025】
〔走行経路要素を選択する際の考え方〕
経路要素選択部63が、順次、次に走行すべき走行経路要素である次走行経路要素を選択する際の選択ルールは、作業走行の前に予め設定される静的ルールと、作業走行中にリアルタイムで利用される動的ルールとに分けることができる。静的ルールには、予め決められた基本的な走行パターンに基づいて走行経路要素を選択すること、例えば、図3に示すようなUターン走行を行いながら直線往復走行を実現するように走行経路要素を選択するルールや、図4に示すような外から内に向かう反時計回りの渦巻き走行を実現するように走行経路要素を選択するルールなどが含まれる。動的ルールには、リアルタイムでの収穫機1の状態、作業地の状態、監視者(運転者や管理者も含む)の指令などが含まれる。原則として、動的ルールは、静的ルールに優先して用いられる。このために、収穫機1の状態、作業地の状態、監視者の指令などを評価して求められる状態情報を出力する作業状態評価部55が備えられる。そのような評価のために必要となる入力パラメータとして種々の一次情報(作業環境)が作業状態評価部55入力される。この一次情報には、収穫機1に設けられている各種センサやスイッチからの信号だけでなく、天候情報や時刻情報や乾燥施設などの外部施設情報なども含まれている。さらに、複数台の収穫機1で協調作業を行う場合には、この一次情報に、他の収穫機1の状態情報も含まれる。」
(6)「【0026】
〔収穫機の概要〕
図5は、この実施の形態での説明に採用されている作業車としての収穫機1の側面図である。この収穫機1は、クローラ式の走行機体11が備えている。走行機体11の前部には、運転部12が設けられている。運転部12の後方には、脱穀装置13及び収穫物を貯留する収穫物タンク14が、左右方向に並設されている。また、走行機体11の前方には、収穫部15が高さ調整可能に設けられている。収穫部15の上方には、穀稈を起こすリール17が高さ調節可能に設けられている。収穫部15と脱穀装置13との間には刈取穀稈を搬送する搬送装置16、収穫物タンク14から収穫物を排出する排出装置18が設けられている。収穫物タンク14の下部に収穫物の重量(収穫物の貯留状態)を検出するロードセンサが装備され、収穫物タンク14の内部や周辺に、収量計や食味計が装備されている。食味計からは、品質データとして収穫物の水分値とタンパク値の測定データが出力される。収穫機1には、GNSSモジュールやGPSモジュールなどとして構成される衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナが走行機体11の上部に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。」
(7)「【0042】
なお、外周領域SAにも、経路管理部60によって走行経路要素群が設定されており、外周領域SAに設定された走行経路要素は、収穫機1が外周領域SAを走行する際に用いられる。外周領域SAに設定された走行経路要素には、離脱経路、復帰経路、Uターン走行用中間直進経路などの属性値が与えられる。離脱経路は、収穫機1が作業対象領域CAを離脱して外周領域SAに入るために用いられる走行経路要素群を意味する。復帰経路は、収穫機1が外周領域SAから作業対象領域CAでの作業走行に復帰するために用いられる走行経路要素群を意味する。Uターン走行用中間直進経路(以下単に中間直進経路と略称する)は、外周領域SAでのUターン走行に用いられるUターン走行経路の一部を構成する直線状の経路である。即ち、中間直進経路は、Uターン走行の開始側の旋回経路とUターン走行の終了側の旋回経路とを接続する直線部分を構成する直線状の走行経路要素群であって、外周領域SAにおいて作業対象領域CAの各辺に平行に設けられた経路である。また、当所は渦巻き走行を行い、途中で直線往復走行に切り換えて作業走行を行う場合、渦巻き走行によって、未刈地は、全辺において作業対象領域CAよりも小さくなるため、効率良く作業走行を行うには、作業対象領域CA内でUターン走行をする方が、わざわざ外周領域SAにまで移動しなくても良いため、無駄な走行がなく、効率的である。そこで、作業対象領域CAでUターン走行が実行される場合には、中間直進経路は、未刈地の外周ラインの位置に応じて、内周側へ平行移動される。」
(8)「【0051】
〔自動走行の経路について〕
作業車自動走行システムにおける自動走行の例を、直線往復走行を行う例と、渦巻き走行を行う例とに分けて説明する。
【0052】
まず、短冊経路要素算出部602によって算出された走行経路要素群を用いて直線往復走行する例について説明する。図8には、模式化によって、直線長さを短くした短冊で表された21本の走行経路要素からなる走行経路要素群が示されており、各走行経路要素の上側に経路番号が付与されている。作業走行開始時の収穫機1は、14番の走行経路要素に位置している。収穫機1が位置している走行経路要素と、他の走行経路要素との離間度が符号付き整数で、各経路の下側に付与されている。14番の走行経路要素に位置している収穫機1が、次の走行経路要素に移行するための優先度が、図8において、走行経路要素の下部に整数値で示されている。値が小さいほど優先度が高く、優先的に選択される。この収穫機1は、走行完了した走行経路要素から次の走行経路要素移行する際に、図9で示すように、少なくとも2つの走行経路要素を挟んで次の走行経路要素に移行するノーマルUターン走行と、2つ以下の走行経路要素を挟んで、つまり隣接する走行経路要素へ移行することができるスイッチバックターン走行とが可能である。ノーマルUターン走行は、移行元の走行経路要素の端点から外周領域SAに入ると、約180°の方向転換を行い、移行先の走行経路要素の端点に入る。なお、移行元の走行経路要素と移行先の走行経路要素との間隔が大きい場合は、約90°の旋回の間に相応な直進が入ることになる。つまり、ノーマルUターン走行は、前進走行のみで実行される。これに対して、スイッチバックターン走行は、移行元の走行経路要素の端点から外周領域SAに入ると、一旦約90°旋回した後、約90°旋回でスムーズに移行先の走行経路要素に入れる位置まで後進してから、移行先の走行経路要素の端点に向かう。これにより、操舵制御は複雑になるが、互いの間隔が短い走行経路要素への移行も可能である。
【0053】
次に走行すべき走行経路要素の選択は、経路要素選択部63によって行われるが、この実施形態では、基本的な選択の優先度として、順番元になる走行経路要素から所定距離だけ離れている適正離間走行経路要素を最高優先度とし、この適正離間走行経路要素に比べて順番元になる走行経路要素から離れるほど、優先度は低くなるように設定される。例えば、次の走行経路要素への移行に関しては、走行距離の短いノーマルUターン走行が走行時間も短く、効率が良い。したがって、2本あけた左右両隣りの走行経路要素の優先度が最も高く設定される(優先度=「1」)。それより収穫機1から離れるほど、ノーマルUターン走行の走行時間が長くなるので、優先度が低くなる(優先度=「2」,「3」,・・・)。つまり、優先度の数値は優先順位を示している。ただし、ノーマルUターン走行の走行時間が長くなり、スイッチバックターン走行より効率が悪くなる8本あけた隣りの走行経路要素への移行の優先度は、スイッチバックターン走行より低くなる。スイッチバックターン走行では、隣の走行経路要素へ移行する優先度より、1本あけた走行経路要素へ移行する優先度の方が高くなっている。これは隣の走行経路要素へのスイッチバックターン走行は、急旋回が必要となり、圃場を荒らす可能性が高いからである。なお、次の走行経路要素への移行は、左右いずれの方向も可能であるが、従来の作業の慣習にしたがって、左側の走行経路要素への移行が右側の走行経路要素への移行に優先するというルールを採用される。したがって、図8の例では、経路番号:14に位置する収穫機1は、次に走行する走行経路要素として、経路番号:17の走行経路要素を選択する。このような優先度の設定が、収穫機1が新しい走行経路要素に入るごとに行われる。
【0054】
既に作業が完了している走行経路要素は、原則的に選択禁止とされる。したがって、図10で示すように、例えば、優先度が「1」である経路番号:11や経路番号:17が既作業地(既刈地)であれば、経路番号:14に位置する収穫機1は、次に走行する走行経路要素として、優先度が「2」である経路番号:18の走行経路要素を選択する。」
(9)「【0063】
〔経路選択のルール〕
経路要素選択部63は、管理センタKSから受け取った作業計画書や通信端末4から人為的に入力された走行パターン(例えば、直線往復走行パターンや渦巻き走行パターン)と、自車位置と、作業状態評価部55から出力される状態情報とに基づいて、走行経路要素を順次選択する。即ち、設定された走行パターンのみを基準にして全走行経路を形成してしまう場合とは異なって、作業前には予測し得ない事態に対応した好適な走行経路が形成されたことになる。また、経路要素選択部63には、上述した基本的なルール以外に、以下のような経路選択ルールが予め登録されており、走行パターンと状態情報とに応じて、好適な経路選択ルールが適応される。
・・・
続きを表示(全15行)
【0066】
(A3)収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯または満杯近くとなって、収穫物排出が必要な場合、作業状態評価部55から経路要素選択部63へ、状態情報の1つとして、排出要求(作業対象領域CAでの作業走行からの離脱要求の一種)が出される。この場合、畦際の運搬車CVへの排出作業を行うための駐車位置と自車位置とに基づいて、作業対象領域CAでの作業走行から離脱し、外周領域SAを走行して該駐車位置に向かう、適正な走行経路要素(例えば、最短経路となる走行経路要素)が、外周領域SAに設定された走行経路要素群のうち離脱経路の属性値が与えられたものと、作業対象領域CAに設定された走行経路要素群とから選択される。
・・・
【0069】
(A6)収穫物排出や燃料補給のため、作業対象領域CAでの作業走行から離脱して、再び作業対象領域CAに戻る走行経路を決定する際、作業対象領域CAにおける既作業(既走行)となって走行禁止の属性が付与された走行経路要素を、走行可能な走行経路要素として復活させる。既作業の走行経路要素を選択することで所定以上の時間短縮が可能な場合には、当該走行経路要素が選択される。さらに、作業対象領域CAから離脱する際の作業対象領域CAにおける走行には後進を用いることも可能である。
【0070】
(A7)収穫物排出や燃料補給のため、作業対象領域CAでの作業走行から離脱するタイミングは、それぞれの余裕度と駐車位置までの走行時間または走行距離とから決定される。余裕度は、ここでは、収穫物排出であれば、収穫物タンク14における現状の貯留量から満杯になるまでに予測される走行時間または走行距離である。燃料補給であれば、燃料タンクにおける現状の残量から完全に燃料切れになるまでに予測される走行時間または走行距離である。例えば、自動走行中に排出用の駐車位置の近くを通過する際に、余裕度や排出作業に要する時間等に基づいて、駐車位置を通り過ぎて、満杯になってから離脱して駐車位置に戻ってくる場合と、駐車位置の近くを通るついでに排出も行う場合とで、いずれが、最終的に効率的な走行であるか(総作業時間が短いとか総走行距離が短いとか)を判定する。あまりにも少ない量のときに排出作業を行うと、全体として排出回数が増えてしまい、効率的ではないし、ほぼ満杯なのであれば、ついでに排出してしまう方が効率的である。
【0071】
(A8)図18には、作業対象領域CAから離脱後に再開される作業走行で選択される走行経路要素が、離脱前の作業走行の続きではないケースが示されている。このケースでは、図3、図12で示されたような直線往復走行パターンが予め設定されている。図18では、駐車位置は符号PPで示されており、かつ、比較例として、作業対象領域CAを180°のUターン走行を伴う直線往復走行で順調に作業走行しきった場合の走行経路が点線で示されている。実際の走行軌跡は太実線で示されている。作業走行の進行に伴って、順次、直線状の走行経路要素とUターン走行経路とが選択される(ステップ#01)。
【0072】
作業走行の途中で(ステップ#02)、離脱要求が発生すると、作業対象領域CAから外周領域SAに進む走行経路が算出される。この地点では、現在走行中の走行経路要素に沿ってそのまま直進して外周領域SAに出る経路と、現在走行中の走行経路要素から90°旋回し、既刈地(=既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分)を通過して駐車位置が存在する外周領域SAに出る経路とが考えられる。ここでは、より走行距離が短い後者の経路が選択される(ステップ#03)。この後者の離脱走行では、90°旋回後の作業対象領域CAでの離脱走行経路要素として、外周領域SAに設定されている走行経路要素を離脱点まで平行移動させたものが用いられる。但し、時間的な余裕を持って離脱要求がなされるのであれば、前者の経路が選択される。この前者の離脱走行では、作業対象領域CAでの離脱走行中において、収穫作業が続行されるので、作業効率の点で利点がある。」
(10)「【0078】
(A12)稲作や麦作などの圃場では、苗の作付け列である条(畝)に平行に収穫機1を走行させることが、収穫作業の効率が向上させる。このため、経路要素選択部63による走行経路要素の選択において、条に平行な走行経路要素ほど選択されやすくする。ただし、作業走行開始時に、機体の姿勢が条方向に平行な姿勢や位置でない場合には、条方向と交差する方向に沿った走行であっても、条に平行な姿勢とするための走行によって作業を行うように構成する。これにより、少しでも無駄な走行(非作業走行)を減らし、早く作業を終えられる。
」

(11)【図3】、【図8】ないし【図10】、【図12】、【図18】は以下のとおり。

[図:0001397888000001.jpg]

[図:0001397888000002.jpg]

[図:0001397888000003.jpg]

[図:0001397888000004.jpg]

(12)上記(8)の記載を踏まえると、上記(11)の図8及び図10において、優先度「2」の経路は、優先度「1」の経路と隣接することが看取される。

2 引用発明

したがって、引用文献には、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)

(引用発明)

「走行しながら農作物を収穫する収穫作業を行う収穫機1であり、
収穫機1が圃場の境界線に沿って作業を行いながら周回走行した領域が外周領域SAとして設定され、外周領域SAの内側は作業対象領域CAとして設定され、外周領域SAは、収穫機1が収穫物の排出や燃料補給のための移動用スペース及び方向転換用スペース等として利用され、外周領域SAは既刈地(既作業地)として扱われ、作業対象領域CAは未刈地(未作業地)として扱われ、
作業対象領域CAに対する作業走行は、自動走行によって実施され、このため、作業対象領域CAを網羅する走行のための走行経路である走行経路要素群が経路管理部60によって管理され、この走行経路要素群は、多数の走行経路要素の集合体であり、
収穫機1のための走行経路を決定する走行経路決定装置が、自車位置算出部53、領域設定部44と、経路管理部60と、経路要素選択部63とによって構築され、
続きを表示(全13行)
走行経路要素群の一例として示される、作業対象領域CAを短冊状に分割する多数の平行分割直線を走行経路要素とする走行経路要素群は2つのノードを1本のリンクで連結した直線状の走行経路要素を平行に並べたものであり、1つの直線で示される走行経路要素の端点から他の直線で示される走行経路要素の端点への移行には、Uターン走行が行われ、このような平行な走行経路要素をUターン走行によって繋ぎながら自動走行する直線往復走行が行われ、
Uターン走行には、ノーマルUターン走行と、スイッチバックターン走行とが含まれるが、スイッチバックターン走行では前後進の切替えが行われるため、スイッチバックターン走行は、基本的には、ノーマルUターン走行と比べて時間がかかるものであり、
収穫機1は、収穫物を貯留する収穫物タンク14が、左右方向に並設され、収穫物タンク14の下部に収穫物の重量を検出するロードセンサが装備され、
直線往復走行を行う自動走行の例について、経路要素選択部63によって行われる、次に走行すべき走行経路要素の選択は、基本的な選択の優先度として、順番元になる走行経路要素から所定距離だけ離れている適正離間走行経路要素を最高優先度とし、この適正離間走行経路要素に比べて順番元になる走行経路要素から離れるほど、優先度は低くなるように設定され、
既に作業が完了している走行経路要素は、原則的に選択禁止とされ、したがって、優先度が「1」である経路が既作業地(既刈地)であれば、優先度「1」の経路と隣接する優先度が「2」である経路の走行経路要素を選択するものであり、
経路要素選択部63は、入力された走行パターン(例えば、直線往復走行パターンや渦巻き走行パターン)と、自車位置と、作業状態評価部55から出力される状態情報とに基づいて、走行経路要素を順次選択するので、作業前には予測し得ない事態に対応した好適な走行経路が形成され、経路要素選択部63には、経路選択ルールが予め登録されており、走行パターンと状態情報とに応じて、好適な経路選択ルールが適応され、
収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯または満杯近くとなって、収穫物排出が必要な場合、状態情報として、排出要求(作業対象領域CAでの作業走行からの離脱要求の一種)が出され、この場合、畦際の運搬車CVへの排出作業を行うための駐車位置と自車位置とに基づいて、作業対象領域CAでの作業走行から離脱し、外周領域SAを走行して該駐車位置に向かう、適正な走行経路要素(例えば、最短経路となる走行経路要素)が、外周領域SAに設定された走行経路要素群のうち離脱経路の属性値が与えられたものと、作業対象領域CAに設定された走行経路要素群とから選択され、
作業対象領域CAから離脱後に再開される作業走行で選択される走行経路要素が、離脱前の作業走行の続きではないケースでは、直線往復走行パターンが予め設定され、作業走行の途中で、離脱要求が発生すると、作業対象領域CAから外周領域SAに進む走行経路が算出され、この地点では、現在走行中の走行経路要素に沿ってそのまま直進して外周領域SAに出る経路と、現在走行中の走行経路要素から90°旋回し、既刈地(=既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分)を通過して駐車位置が存在する外周領域SAに出る経路とが考えられ、ここでは、より走行距離が短い後者の経路が選択される、
収穫機1。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「作業対象領域CA」及び「作業対象領域CA」を走行するための「多数の走行経路要素」は、それぞれ、本願発明の「未作業地」及び「複数の走行経路要素」に相当する。

2 上記1の対比を踏まえると、引用発明の「作業対象領域CA」を短冊状に分割する「走行経路要素」を「走行経路要素の端点から他の直線で多数の平行分割直線を示される走行経路要素の端点への移行には、Uターン走行が行われ」、「往復走行」して「自動走行」する「収穫機1」は、本願発明の「未作業地にあらかじめ設けられた複数の経路要素に沿って自動走行して前記未作業地を往復走行する収穫機」に相当する。

3 引用発明の「収穫物を貯留する収穫物タンク14」及び「収穫物タンク14の下部」に「装備」された「収穫物の重量を検出するロードセンサ」は、それぞれ、本願発明の「収穫物を貯留する収穫物タンク」及び「前記収穫物タンクに貯留された収穫物の収量を検出するセンサ」に相当する。

4 引用発明の「収穫機1のための走行経路を決定する走行経路決定装置」は、本願発明の「前記自動走行を行うための走行経路を生成する走行経路生成部」に相当する。

5 引用発明は「収穫物タンク14の下部に収穫物の重量を検出するロードセンサが装備され」るものであるから、引用発明において収穫物排出が必要な場合の「離脱要求」が「収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯または満杯近くとなって、収穫物排出が必要な場合」が「ロードセンサ」により検出されることは自明である。また、「収穫物の貯留量」が「満杯または満杯近く」であることが、「排出収量」として定められることも技術常識である。

そうすると、本願発明の「前記走行経路生成部は、前記未作業地の途中で前記センサにより検出される収穫物の収量が排出収量となった際に、走行中の前記経路要素に隣接する前記経路要素が既に走行済みである場合には、前記隣接する経路要素に沿って走行して前記未作業地から離脱するように前記走行経路を新たに生成する」ことと、引用発明の「作業対象領域CAでの作業走行からの離脱要求」が出され、「作業走行の途中で、離脱要求が発生すると、作業対象領域CAから外周領域SAに進む走行経路」として「現在走行中の走行経路要素から90°旋回し、既刈地(=既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分)を通過して駐車位置が存在する外周領域SAに出る経路」が「走行経路決定装置」の「経路要素選択部63」によって「算出され」ることとは、「前記走行経路生成部は、前記未作業地の途中で前記センサにより検出される収穫物の収量が排出収量となった際に、走行中の前記経路要素に隣接する前記経路要素が既に走行済みである場合には、前記未作業地から離脱するように前記走行経路を新たに生成する」点で共通する。

6 上記1ないし5を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の一致点、相違点を有する。

(一致点)

未作業地にあらかじめ設けられた複数の経路要素に沿って自動走行して前記未作業地を往復走行する収穫機であって、

収穫物を貯留する収穫物タンクと、

前記収穫物タンクに貯留された収穫物の収量を検出するセンサと、

前記自動走行を行うための走行経路を生成する走行経路生成部とを備え、

前記走行経路生成部は、前記未作業地の途中で前記センサにより検出される収穫物の収量が排出収量となった際に、走行中の前記経路要素に隣接する前記経路要素が既に走行済みである場合には、前記未作業地から離脱するように前記走行経路を新たに生成する収穫機。

(相違点)

未作業地から離脱するように前記走行経路を新たに生成する際に、本願発明は、「隣接する経路要素に沿って走行」するのに対し、引用発明は、「現在走行中の走行経路要素から90°旋回し、既刈地(=既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分)を通過して駐車位置が存在する外周領域SAに出る経路」とされ、「隣接する経路要素に沿って走行する」ものとはされていない点。

第6 判断

1 相違点の検討

上記相違点について検討する。

(1)引用発明は、「作業車の作業環境の変動に対処するため、作業途中での経路変更を柔軟に行うことができる」ようにしたものであり(上記第4の1(1))、そのために、「状態情報」に基づいて、「作業前には予測し得ない事態に対応した好適な走行経路が形成され」るものであり、「状態情報」の1つとして、「排出要求」があり、「収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯または満杯近くとなって、収穫物排出が必要な場合、状態情報として、排出要求(作業対象領域CAでの作業走行からの離脱要求の一種)が出され、この場合、畦際の運搬車CVへの排出作業を行うための駐車位置と自車位置とに基づいて、作業対象領域CAでの作業走行から離脱し、外周領域SAを走行して該駐車位置に向かう、適正な走行経路要素が、外周領域SAに設定された走行経路要素群のうち離脱経路の属性値が与えられたものと、作業対象領域CAに設定された走行経路要素群とから選択され」るものである。

(2) ア 引用発明の「作業対象領域CAから離脱後に再開される作業走行で選択される走行経路要素が、離脱前の作業走行の続きではないケース」(以下「【図18】ケース」という。)では、「作業対象領域CAから離脱」の際に現在走行中の走行経路要素に隣接する「既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分としての既刈地」から外周領域SAに出る経路が算出される。

イ 一般に、稲作や麦作などの圃場では、収穫作業において苗の作付け列である条(畝)に平行に収穫機1を走行させるものとされ、引用文献においてもこの点に言及されている(上記第4の1(10))。よって、収穫作業において収穫機1が走行する経路は、既刈地においても刈った後の株を踏まずに済むため、走行に適していることは明らかである。

ウ そして、【図18】ケースは既刈地を既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分として認識しているように、引用文献においては「既走行の属性を持つ走行経路要素」が認識されているものである。さらに、「既走行の属性を持つ走行経路要素」は、引用文献においては、必要に応じて「走行禁止の属性が付与された走行経路要素を、走行可能な走行経路要素として復活させる」ことができるものである(上記第4の1(9))。

エ 【図18】ケースにおいて、既刈地から外周領域SAに出る経路は、「現在走行中の走行経路要素から90°旋回」する経路とされるが、この経路によらなければ外周領域SAに出られないものではなく、好適な経路を設定できるものであるから、現在走行中の走行経路要素に隣接する既刈地から外周領域SAに出る経路を、刈った後の株を踏まずに走行できる、収穫作業において収穫機1が走行する経路とし、「隣接する経路要素に沿って走行する」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3) ア ところで、引用発明は、作業対象領域CA内の走行経路について、【図18】ケースのような作業対象領域CA内に平行に配置される隣接する経路要素を端から順に走行する走行経路のみならず、「次に走行する経路要素」の「基本的な選択の優先度」として、「順番元になる走行経路から所定距離だけ離れている適正離間走行経路要素を最高優先度とし、この適正離間走行経路要素に比べて順番元になる走行経路要素から離れるほど、優先度は低くなるように設定され」るケースも含まれており、この場合、前進だけで行われるノーマルUターン走行によって走行経路要素間を走行できる利点がある。また、【図12】もノーマルUターン走行によって走行経路要素間を走行するものである。

イ 引用発明が「作業車の作業環境の変動に対処するため、作業途中での経路変更を柔軟に行うことができる」ようにしたものであることに鑑みると、これらの例においても、「収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯または満杯近くとなって、収穫物排出が必要な場合」が発生することは明らかであり、その場合、引用発明においては、「状態情報として、排出要求(作業対象領域CAでの作業走行からの離脱要求の一種)が出され、この場合、畦際の運搬車CVへの排出作業を行うための駐車位置と自車位置とに基づいて、作業対象領域CAでの作業走行から離脱し、外周領域SAを走行して該駐車位置に向かう、適正な走行経路要素(例えば、最短経路となる走行経路要素)が、外周領域SAに設定された走行経路要素群のうち離脱経路の属性値が与えられたものと、作業対象領域CAに設定された走行経路要素群とから選択され」るものと認められる。

ウ 「収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯」となって「収穫物排出が必要な場合」に「作業対象領域CAでの作業走行から離脱し、外周領域SAを走行して該駐車位置に向かう、適正な走行経路要素」として「作業対象領域CAに設定された走行経路要素群」を選択すると、貯留量が満杯を超えてしまうから、「現在走行中の走行経路要素に隣接する「既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分としての既刈地」から外周領域SAに出る経路」を採用することに利点があることは当業者に自明である。

また、ノーマルUターン走行によって走行経路要素間を走行する例においては、順番元になる走行経路要素から所定距離だけ離れている適正離間走行経路要素が優先的に選択されることから、図18ケースのような90°旋回が最短経路として想定されるものではなく、優先度「2」の経路は、優先度「1」の経路と隣接することから、「走行中の経路要素に隣接する」経路要素が存在する蓋然性が高いことも当業者に自明である。

そして、「走行中の経路要素に隣接する」経路要素が既に走行済みであれば、それ以外の経路要素が未作業であるか既作業であるか等の状態に関わらず「作業対象領域CAでの作業走行から離脱し」て、「外周領域SA」に出ることができることも、当業者であれば当然に認識できることである。

エ そうすると、この場合に、「前記走行経路生成部」が「走行経路」を、「前記未作業地の途中で前記センサにより検出される収穫物の収量が排出収量となった際に、走行中の前記経路要素に隣接する前記経路要素が既に走行済みである場合には、前記隣接する経路要素を走行して前記未作業地から離脱するように」「新たに生成する」にあたり、「隣接する経路要素に沿って走行して」未作業地から離脱するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

2 審判請求人の主張について

(1)審判請求人の主張

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審判請求人は、審判請求書等において、概略以下の主張をする。

ア 文献1の図18に示された例について、第0072段落の記載によると、そのまま直進するか、走行経路要素の集合部分(領域)である既刈地を通過するかが候補となることが開示されているだけであり、また、「時間的な余裕を持って離脱要求がなされるのであれば」、「作業対象領域CAでの離脱走行中において、収穫作業が続行されるので、作業効率の点で利点がある」ので「前者の経路が選択される」と明記されることからからみても、「時間短縮」を意図したものであり、また、引用文献は、満杯になってから排出をするものではない。そうすると、仮に、図18に示された例において、運搬車CVが図の左側に駐車したものである場合には、作業対象領域CAにおいて収穫作業が続行しながら離脱走行することが想定されるのみであり、未作業地を「隣接する経路要素に沿って」離脱することを想到できるものではない。

イ 「ノーマルUターン走行によ」る経路で作業を行う事例についても、上記(1)と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 本願発明は、どのような場合においても、隣接する経路に沿って走行して未作業地から離脱するものである。仮に、図18に示された例において、隣接する走行経路に沿って未作業地から離脱することがあったとしても、どのような場合においても、隣接する経路に沿って走行して未作業地から離脱するものとは異なるし、そのようにすることにより、離脱経路を算出する計算負担が減る利点がある。

(2)主張の検討

ア 上記アの主張について

文献1の図18に示された例について、段落【0072】には、「作業走行の途中で(ステップ#02)、離脱要求が発生すると、作業対象領域CAから外周領域SAに進む走行経路が算出される。この地点では、現在走行中の走行経路要素に沿ってそのまま直進して外周領域SAに出る経路と、現在走行中の走行経路要素から90°旋回し、既刈地(=既走行の属性を持つ走行経路要素の集合部分)を通過して駐車位置が存在する外周領域SAに出る経路とが考えられる。・・・」と記載される。(上記第4の1(9))

この記載は、現在位置から外周領域SAに出る経路として「そのまま直進」する経路と「90°旋回し、既刈地を通過」する経路の2つの経路が「考えられる」ことを示すものであって、他の選択肢を排除するものとは理解できない。

また、段落【0066】に「収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯または満杯近くとなって、収穫物排出が必要な場合、作業状態評価部55から経路要素選択部63へ、状態情報の1つとして、排出要求(作業対象領域CAでの作業走行からの離脱要求の一種)が出される。」と記載されるように、引用文献は、収穫物タンク14の収穫物の貯留量が満杯となって収穫物排出が必要な場合に排出要求を出すことも記載されるものであり、審判請求人の「引用文献は、満杯になってから排出をするものではない」との主張は、引用文献の記載に基づくものではない。

そして、上記1(2)において説示したように、文献1の図18に示された例において「隣接する経路要素に沿って走行して」未作業地から離脱するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記イの主張について

上記1(3)において説示したように、ノーマルUターン走行を行う際に、「隣接する経路要素に沿って走行して」未作業地から離脱するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記ウの主張について

「隣接する経路要素に沿って走行」するものとすることによって、走行経路を算出する計算負担が減じることは、当業者が予測し得た程度の効果である。

よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび

上記のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-007206

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