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特許拒絶査定不服審判

2023-019433

農作業機

審判番号
2023-019433
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-123453
請求日
2023年11月16日
審決日
2024年10月15日
公報発行日
2025年01月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社クボタ
  • 【請求人代理人】弁理士法人R&C
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼川 康史
  • 審判官 澤田 真治
  • 審判官 太田 恒明
分類
P18 .121-Z (A01B) / P18 .575-Z (A01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-123453「農作業機」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月 4日出願公開、特開2021-175405〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年1月13日に出願された特願2016-4590の一部を分割して、令和1年12月27日に新たな特許出願とした特願2019-239060の一部を分割して、令和3年7月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 4年 9月 9日付け:拒絶理由通知書 同年11月18日 :意見書、手続補正書の提出 令和 5年 3月 3日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出 同年 8月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 同月16日 :原査定の謄本の送達 同年11月16日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年11月16日に提出された手続補正書による補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年11月16日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、令和5年5月15日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における (補正前) 「【請求項1】 手動操舵による手動走行と、基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、 前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、 前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより前記基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と、を備え、 前記切替操作具及び前記指示操作具が、単一の操作具により構成されている農作業機。」を、 審判請求時に提出された手続補正書(令和5年11月16日提出)の特許請求の範囲の請求項1における (補正後) 「【請求項1】 手動操舵による手動走行と、自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、 前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と、 前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、を備え、 前記走行機体は、前記指示操作具による終点設定後に、前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うことで、前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行い、前記自動走行の終点に到達すると前記切替操作具による手動走行への切替を行うことで次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行するように構成され、 前記切替操作具及び前記指示操作具が、単一の操作具により構成されている農作業機。」にする補正を含むものである(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。 2 補正の適否 2-1 補正の目的及び新規事項について 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「自動操舵により走行する自動走行」に関して、「基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って」いることを一旦削除した上で後記し、「前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、」の位置を変更し、「前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより前記基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と」に関して、上記で「基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って」いることを一旦削除したことに伴い、「前記基準走行ライン」の「前記」を削除し、「走行機体」に関して、上記一旦削除した記載を含んだ「前記指示操作具による終点設定後に、前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うことで、前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行い、前記自動走行の終点に到達すると前記切替操作具による手動走行への切替を行うことで次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行するように構成され」ることを限定することを含むものである。 そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0078】、【0079】等の記載に基づくものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 2-2 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A等は、分説するため当審にて付した。)。 「【請求項1】 A 手動操舵による手動走行と、自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、 B 前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と、 C 前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、を備え、 D 前記走行機体は、前記指示操作具による終点設定後に、前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うことで、前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行い、前記自動走行の終点に到達すると前記切替操作具による手動走行への切替を行うことで次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行するように構成され、 E 前記切替操作具及び前記指示操作具が、単一の操作具により構成されている F 農作業機。」 (2)引用文献1、各周知例に記載された事項、引用発明及び周知技術 ア 引用発明 (ア)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-92818号公報(平成20年4月24日公開)(以下「引用文献1」という。)には、農用作業車に関し、次の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同じ。 「【0018】 まず始めに、本発明を実施するための最良の形態に係る田植機の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。 ここで説明する田植機1は、例えば6条植えの乗用田植機とし、機体の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4を装着している。 また、車体フレーム3の前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケース6aを介して前輪6を支持するとともに、後部にリアアクスルケース8aを介して後輪8を支持している。 上記エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9の上方には門型状の取付フレーム24を配設している。そして、前記取付フレーム24の左右両側に予備苗載台10・10を配設し、また上部中央に後述するGPSアンテナ101および操作筐体128を固設している。 また、ボンネット9後部のダッシュボード5上にメーターパネル7やハンドル14を配置しており、該ボンネット9の両側とその後部の車体フレーム3上は車体カバー12で覆われている。 ハンドル14の後方位置には座席13を配置し、ボンネット9の両側と座席13の前部、座席13の左右両側、及び座席13の後方をステップとしている。」 「【0025】 自動運転切替SW46は、自律運転を行うか否かを切替えるためのスイッチであり、スイッチの回動位置によって、自動走行モードか手動走行モードを選択できるようにしている。そして、自動運転モードに切替えている状態であれば、後述する自律運転SW48を「入」とすることにより自律運転をすることができ、手動運転モードに切替えている状態においては、自律運転SW48を「切」とするようにしている。 尚、本実施例においては、図3または図4に示す如く、自動運転切替SW46として回転式のスイッチを採用した例を示しているが、自動運転切替SW46のスイッチの種類を限定するものではない。 【0026】 ティーチングSW47は、ティーチング作業を行うためのスイッチであり、本実施例においては、図3に示す如く、押し込み式のボタン型スイッチにより構成している。 そして、オペレータがティーチングを開始したいときにティーチングSW47を一度押下することによりティーチングが開始され、ティーチングを終了したいときにティーチングSW47をもう一度押下することによりティーチング作業が終了するように構成している。 尚、本実施例ではティーチングSW47をボタン型の押し込み式スイッチで構成した例を示しているが、本発明に適用するスイッチの種類をこれに限定するものではない。 【0027】 自律運転SW48は、自律走行の入切を切替えるためのスイッチである。 図3に示す如く、本発明の第一実施例では、自律運転SW48を、自律運転(直進)SW48a(押し込み式スイッチ)と旋回SW48b(回動可能なダイヤル部を有する押しボタンスイッチ)という二つのスイッチにより構成している。 そして、自律運転(直進)SW48aを押下して「入」とするときに自律走行を開始し、また、自律運転(直進)SW48aをもう一度押下して「切」とするときに自律走行を終了するように構成している。 また、自律的に旋回走行するためには、自律走行開始後の最初の旋回には旋回方向を指示するために、オペレータが所望する旋回方向に旋回SW48bを回動操作する必要がある。回動操作を行うと、メーターパネル7上の左右ズレ表示ランプ45a・45cの左右いずれか一方が点滅し、設定された旋回方向をオペレータに示す。オペレータが所望する方向であることを確認した後に旋回SW48bを押下すると、所望する方向に自動的に旋回走行し、その後、次の目標経路を自律的に走行する。尚、次経路走行中には、左右ズレ表示ランプ45a・45cが前述したルールに則って点灯する。それ以降は枕地に到達する度に、左右交互に左右ズレ表示ランプ45a・45cが点滅し、オペレータが旋回SW48bを押下することで、該当方向に自動的に旋回走行し、旋回終了後、引き続き次経路を自律走行するようにしている。また、次経路走行開始後、植付開始位置で自動的に停止する機能も有している。 このように自律運転SW48を操作することにより、田植機1は直線植付部を自律的に走行したり、また、枕地においては、次の植付開始位置に向かって自動的に旋回走行したり、引き続き次の経路を自律的に走行することができる。 【0028】 つまり、GPSユニット102と、処理部110を備え、GPSユニット102により計測される位置情報に基づいて、処理部110によりティーチング経路を生成し、さらに、処理部110により前記ティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する田植機1において、オペレータにより、自律運転SW48が操作されることにより、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、前記次の目標経路上を自律的に走行するようにしている。また、作業開始および終了位置で、機体を自動停止することも可能である。 これにより、オペレータの手動操作による位置合わせが不要となり、作業性を向上させることができるのである。 【0029】 また、図4に示す如く、本発明の第二実施例では、自律運転SW48を自動車の方向指示器の如くレバー式のスイッチで構成するようにしている。そして、自律運転SW48を下側の「入」状態と、上側の「切」状態を取り得るように構成して、また、左右に対応する略前後の回動操作で旋回方向(左右)を指示することができるようにしている。尚、この場合には、旋回方向指示と同時に旋回走行を開始するようにしている。 【0030】 つまり、自律運転SW48が、操作方向に方向性を有し、自律運転SW48を、オペレータが所望する方向に対応する方向に操作することにより、オペレータが所望する方向に自動的に旋回するようにしている。 これにより、自律運転SW48を前後に操作するだけで、オペレータが旋回方向を指示することができるため、農用作業車を容易にオペレータが所望する方向に自動的に旋回させることができるのである。 尚、本実施例では自律運転SW48をボタン型の押し込み式スイッチやダイヤル型の回転式スイッチおよびレバー型スイッチ等で構成した例を示しているが、本発明に適用する自律運転SW48のスイッチの種類をこれらに限定するものではない。」 「【0035】 つまり、農用作業車が、田植機1であって、植付け作業により植え付けられる苗と施肥される肥料の残量を検知し、前記苗の残量か、または、前記肥料の残量が、予め設定した閾値よりも少ないことを検知した場合には、自律運転SW48の操作を無効とするようにしている。 このように、苗つぎや肥料の補給が必要な状況においては、田植機1を自動的に旋回させないことにより、オペレータに苗や肥料の補充が必要であることを容易に知らせることができるとともに、植付け作業の最中に苗つぎや肥料の補給が必要となり、苗や肥料の補給のために圃場端まで走行することがなくなり、作業性を向上することができるのである。 以上が、本発明の一実施例に係る農用作業車のメーターパネルについての説明である。」 「【0045】 次に、本発明の一実施例に係る目標経路の生成方法について、図7または図8を用いて説明をする。 図7または図8に示す如く、目標経路を生成するためには、まずティーチング作業を実行して基準線を設定するようにしている。 田植機1に設けられたGPSアンテナ101の位置を基準として田植機1の車体位置を計測するようにしており、ティーチング開始時にティーチングSW47を押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を開始点(点A)として記憶部105に記憶し(S11)、またティーチング終了時にティーチングSW47を押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を終了点(点B)として記憶部105に記憶するようにしている(S12)。このとき、前記開始点(点A)および終了点(点B)と機体寸法(即ち、植付部4の取付位置)の情報に基づき、実際の植付開始位置となる植付開始点(点C)と実際の植付終了位置となる植付終了点(点D)を算出し、そして、記憶部105に記憶した前記植付開始点(点C)と前記植付終了点(点D)の情報に基づいて、RTK演算部および処理部110により点Cと点Dを結ぶ基準線(線分CD)を生成して記憶部105に記憶し、その後該基準線(線分CD)に基づいて処理部110により目標経路を生成する構成としている。 また、開始点および終了点を植付開始位置(または植付終了位置)として対応付けるようにしており、線分CDに直交し、かつ、点Cまたは点Dを通過する植付基準線を生成し、さらに該植付基準線と目標経路との交点を生成し、該交点を植付開始位置(または植付終了位置)として記憶部105に記憶するようにしている。 そして、前記植付基準線よりも圃場の外側においては、田植機1を自律的に旋回走行するようにし、圃場の内側においては、田植機1を自律的に直進走行するようにして植付作業を行うようにしている。 【0046】 目標経路の生成は、基準線(線分CD)の情報と、田植機1の植付部4において設定されている植付幅aと植付条数bの情報に基づいて、処理部110にて生成するようにしている(S13)。 つまり、目標経路の間隔Wを、次式により求めるようにしている。 W=a*b 【0047】 尚、本実施例では、6条植えの乗用田植機を例にとって説明をしているため、6条分全ての植付爪を使用する場合には、植付条数b=6であるため、目標経路の間隔W=6aとなる。 そして、基準線(線分CD)に平行で、かつ、線間距離(線の間隔)を6aとした直線状の目標経路をN列生成するようにしている。 尚、本実施例においては、図6に示す如く、圃場の左手前から植付作業を開始して、線分CDを決定し、図上右側にN列の目標経路を生成した例を示しているが、線分CDの左側にN列の目標経路を生成することもでき、基準線から左右いずれの方向に対しても目標経路を生成することができるようにしている。また、作業開始位置は4隅のいずれからでも開始することは可能である。 【0048】 また、直線状の目標経路は、各々の直線が端部を有しない無限直線として生成されるため、線分CDを包含する圃場よりも外側(すなわち、図6中の範囲Xおよび範囲Y、枕地)においても目標経路が存在しており、圃場端部で田植機1を旋回させる時等に目標経路を見失うことがないようにしている。 以上が、本発明の一実施例に係る目標経路の生成方法についての説明である。」 「【0052】 また、図11に示す如く、本実施例においては、田植機1が自律的に直線植付走行をし、植付終了位置に到達した時点で、前記苗つぎ警告SWおよび肥料補給警告SWが「入」である場合には、自動的に旋回走行しないようにしており、その代わりに圃場端に向かって自律的に直進走行するようにしている。 このとき、障害物検出手段60により圃場端を検出して、田植機1を圃場端から予め設定した距離xだけ離れた位置まで自律走行させて自動的に停止するようにしている。 【0053】 つまり、自律運転SW48の操作が無効である状態において、障害物検出手段60により圃場端を検知し、前記圃場端まで自動的に直進走行し、かつ、前記圃場端で自動的に停止するようにしている。 これにより、苗や肥料の補充作業を、的確なタイミングで、かつ、容易に行うことができるのである。」 「【0058】 図9または図12に示す如く、本発明の第一実施例では、田植機1が枕地に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータの操作により停止される。そして、オペレータが植付部4を上昇させて、自律走行SW48を操作するとき、自律運転SW48が「入」であって(S21)、かつ、苗つぎ警告SWおよび肥料補給警告SWが「切」であれば(S22)、田植機1を所望する方向に自動的に旋回し(S23)、かつ、自動旋回を完了した後(S24)には、次の目標経路上を自律的に走行するようにしている。そして、植付開始位置に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータ操作により停止される。その後、オペレータ操作により、植付部4を下降させることにより、引き続き目標経路上を自律的に走行するようにしている。 【0059】 具体的に言えば、図10に示す如く、田植機1の植付部4が枕地(点Cまたは点Dを通る横方向の植付始端または植付終端の基準線)に到達したときに、自律運転SW48を例えば右方と対応する方向に操作すると、田植機1は右方に機体を約180度回転するように自動的に旋回走行して、進行方向を反転するようにしている。このとき、機体の旋回直径が、前記数式により求められる目標経路の間隔Wと一致するように自動操舵するようにしており、旋回走行が完了したときには、田植機1がおおよそ目標経路上に位置するようにしている。 【0060】 そして、旋回走行が完了した後に、引き続き、次の目標経路上を自律的に走行する。植付開始位置に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータ操作により停止される。その後、オペレータ操作により植付部4を下降させ植付クラッチを「入」として、引き続き目標経路上を自律的に走行する。 また、図13に示す如く、第二実施例としては、旋回方向の指示は、最初の折り返し時に一度実施すれば、その後は旋回方向を左右交互に変更しながら、旋回SW48bを押下することにより自動的に旋回走行することができる。また、植付部4が上昇する信号と旋回SW48bを連動させることにより、旋回SW48bのSW操作無しで自動旋回する構成とすることも可能である。 【0061】 但し、図12または図13に示す如く、苗つぎ警告SWまたは肥料補給警告SWのどちらか一方が「入」である場合には(S22)旋回走行は行わず、圃場端に向かって自律的に直進走行をし(S25)、圃場端を検知した時点で(S26)、自律走行を止めて停止するようにしている(S27)。 具体的に言えば、図11に示す如く、田植機1の植付部4が枕地に位置しているときに、植付部4を上昇操作すると、苗つぎ警告SWまたは肥料補給警告SWのどちらか一方が「入」である場合には、田植機1は旋回走行せずに、圃場端に向かって自律的に直進走行するようにしている。そして、障害物検出手段60(すなわち、距離センサ61)により圃場端(本実施例では畦)との距離を検知し、該距離が予め設定した距離xとなった時点で自律走行を止めて停止するようにしている。 以上が、本発明の一実施例に係る自律走行プログラムによる自律走行時の動作についての説明である。」 「 [図:0001418083000001.jpg] 」 「 [図:0001418083000002.jpg] 」 「 [図:0001418083000003.jpg] 」 「 [図:0001418083000004.jpg] 」 「 [図:0001418083000005.jpg] 」 「 [図:0001418083000006.jpg] 」 (イ)引用発明 上記(ア)に摘記した事項より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「自律運転を行うか否かを切替えるためのスイッチである自動運転切替SW46と、自動運転モードに切替えている状態であれば、入とすることにより自律運転をすることができ、手動運転モードに切替えている状態においては、自律運転SW48を切とするようにしている自律走行の入切を切替えるためのスイッチである自律運転SW48と(【0025】、【0027】)、 オペレータがティーチングを開始したいときにティーチングSW47を一度押下することによりティーチングが開始され、ティーチングを終了したいときにティーチングSW47をもう一度押下することによりティーチング作業が終了するように構成しているティーチング作業を行うためのスイッチであるティーチングSW47と(【0026】)、を備え、 自律運転SW48を、自律運転(直進)SW48a(押し込み式スイッチ)と旋回SW48b(回動可能なダイヤル部を有する押しボタンスイッチ)という二つのスイッチにより構成し、自律運転(直進)SW48aを押下して入とするときに自律走行を開始し、また、自律運転(直進)SW48aをもう一度押下して切とするときに自律走行を終了するように構成し、自律的に旋回走行するためには、自律走行開始後の最初の旋回には旋回方向を指示するために、オペレータが所望する旋回方向に旋回SW48bを回動操作する必要があり、回動操作を行うと、メーターパネル7上の左右ズレ表示ランプ45a・45cの左右いずれか一方が点滅し、設定された旋回方向をオペレータに示し、オペレータが所望する方向であることを確認した後に旋回SW48bを押下すると、所望する方向に自動的に旋回走行し、その後、次の目標経路を自律的に走行し、枕地に到達する度に、左右交互に左右ズレ表示ランプ45a・45cが点滅し、オペレータが旋回SW48bを押下することで、該当方向に自動的に旋回走行し、旋回終了後、引き続き次経路を自律走行するようにしており(【0027】)、 植付け作業により植え付けられる苗と施肥される肥料の残量を検知し、前記苗の残量か、または、前記肥料の残量が、予め設定した閾値よりも少ないことを検知した場合には、自律運転SW48の操作を無効とするようにし(【0035】、 ティーチング開始時にティーチングSW47を押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を開始点(点A)として記憶部105に記憶し、またティーチング終了時にティーチングSW47を押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を終了点(点B)として記憶部105に記憶するようにし、前記開始点(点A)および終了点(点B)と機体寸法(即ち、植付部4の取付位置)の情報に基づき、実際の植付開始位置となる植付開始点(点C)と実際の植付終了位置となる植付終了点(点D)を算出し、記憶部105に記憶した前記植付開始点(点C)と前記植付終了点(点D)の情報に基づいて、点Cと点Dを結ぶ基準線(線分CD)を生成して記憶部105に記憶し、その後該基準線(線分CD)に基づいて処理部110により目標経路を生成する構成とし、開始点および終了点を植付開始位置(または植付終了位置)として対応付けるようにしており、線分CDに直交し、かつ、点Cまたは点Dを通過する植付基準線を生成し、さらに該植付基準線と目標経路との交点を生成し、該交点を植付開始位置(または植付終了位置)として記憶部105に記憶するようにし、前記植付基準線よりも圃場の外側においては、田植機1を自律的に旋回走行するようにし、圃場の内側においては、田植機1を自律的に直進走行するようにして植付作業を行うようにし(【0045】)、 目標経路の生成は、基準線(線分CD)の情報と、田植機1の植付部4において設定されている植付幅aと植付条数bの情報に基づいて、処理部110にて生成し(【0046】)、6条植えの乗用田植機で6条分全ての植付爪を使用する場合には、植付条数b=6であるため、目標経路の間隔W=6aとなり、基準線(線分CD)に平行で、かつ、線間距離(線の間隔)を6aとした直線状の目標経路をN列生成するようにしており(【0047】)、 自律的に直線植付走行をし、植付終了位置に到達した時点で、前記苗つぎ警告SWおよび肥料補給警告SWが入である場合には、自動的に旋回走行しないようにしており、その代わりに圃場端に向かって自律的に直進走行するようにし(【0052】)、自律運転SW48の操作が無効である状態において、障害物検出手段60により圃場端を検知し、前記圃場端まで自動的に直進走行し、かつ、前記圃場端で自動的に停止するようにし(【0053】)、 枕地に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータの操作により停止され、オペレータが植付部4を上昇させて、自律走行SW48を操作するとき、自律運転SW48が入であって、かつ、苗つぎ警告SWおよび肥料補給警告SWが切であれば、田植機1を所望する方向に自動的に旋回し、かつ、自動旋回を完了した後には、次の目標経路上を自律的に走行するようにし、植付開始位置に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータ操作により停止され、オペレータ操作により、植付部4を下降させることにより、引き続き目標経路上を自律的に走行するようにし(【0058】)機体の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4を装着している田植機1(【0018】)。」 イ 周知技術 (ア)周知例1 a 記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願平3-92201号(実開平5-34802号)のCD-ROM(平成5年5月14日公開)(以下「周知例1」という。)には、トラクタの耕深自動制御装置(考案の名称)に関し、次の事項が記載されている。 「【0004】 【実施例】 次に、本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。図面において、1は農用トラクタの走行機体であつて、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介してロータリ耕耘式の作業部3が昇降自在に連結されるが、該作業部3を、油圧シリンダ4の伸縮作動に伴うリフトアーム5の上下揺動により昇降させる等の基本構成は従来通りである。」 「【0010】 さて、図5は制御部16のメインルーチンであつて、該メインルーチンは、サブルーチンである前記耕深自動制御とポジシヨン制御との切換え等を行うものであるが、リヤカバー移動制御を含む耕深自動制御は、耕深設定ボリユーム20が通常設定域に位置することに基づいて実行される一方、耕深設定ボリユーム20が深耕側設定端部に予め設定されるOFF域に位置することに基づいて解除され、この状態でポジシヨン制御への切換えがなされるようになつている。即ち、耕深設定ボリユーム20を耕深自動制御のON-OFF切換え操作具に兼用するものであるが、耕深設定ボリユーム20をOFF域に操作した場合には、リヤカバー11の移動も現在位置で直ちに停止されるようになつている。」 「 [図:0001418083000007.jpg] 」 b 周知例1に記載の事項 上記aに摘記した周知例1に記載された事項より、周知例1には次の事項が記載されている(以下「周知例1の記載事項」という。)。 「耕深設定ボリユーム20を耕深自動制御のON-OFF切換え操作具に兼用する農用トラクタの走行機体。」 (イ)周知例2 a 記載事項 本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-228643号公報(平成20年10月2日公開)(以下「周知例2」という。)には、コンバイン(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。 「【発明を実施するための最良の形態】 【0007】 次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈の脱穀処理及び選別処理を行う脱穀選別部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、運転席5や各種の操作具が配設される操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成される。」 「【0009】 操作部6には、刈取・作業機クラッチレバー11、刈高ダイヤル12、マルチステアリングレバー13などの操作具が配設されている。刈取・作業機クラッチレバー11は、刈取クラッチ操作具及び作業機クラッチ操作具に兼用されるレバー式操作具であり、刈取・作業機クラッチレバー11を後位置に操作すると、刈取クラッチ(前処理クラッチ)及び作業機クラッチ(脱穀選別クラッチ)が切りとなり、刈取・作業機クラッチレバー11を中間位置に操作すると、作業機クラッチのみが入りとなり、刈取・作業機クラッチレバー11を前位置に操作すると、刈取クラッチ及び作業機クラッチが入りとなる。尚、刈取・作業機クラッチレバー11の近傍には、作業機クラッチの入り操作を検出する作業機クラッチスイッチ14が設けられている。 【0010】 刈高ダイヤル12は、刈高自動スイッチ12a、刈高自動ダイヤル12b及び刈高ランプ12cに兼用されるLED付きのダイヤル式操作具であり、刈高ダイヤル12を押すと、刈高自動制御がON/OFFされ、刈高ダイヤル12を回すと、刈高自動制御の設定高さが変更される。」 b 周知例2に記載の事項 上記aに摘記した周知例2に記載された事項より、周知例2には次の事項が記載されている(以下「周知例2の記載事項」という。)。 「刈高自動スイッチ12a、刈高自動ダイヤル12b及び刈高ランプ12cに兼用されるLED付きのダイヤル式操作具であり、刈高ダイヤル12を押すと、刈高自動制御がON/OFFされ、刈高ダイヤル12を回すと、刈高自動制御の設定高さが変更される刈高ダイヤル12(【0010】)が操作部6に配設されている(【0009】)コンバイン1(【0007】。」 (ウ)周知技術 上記(ア)周知例1の記載事項及び(イ)周知例2の記載事項を総合すると、 「農作業機において、特定の動作に関する操作具を集約して兼用とすること。」は本願出願前に農作業機の分野で周知(以下「周知技術」という。)であると認められる。 (3)対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Aについて 引用発明の「自律運転SW48」が「切」で「自律走行」が「切」での走行、「自律運転SW48」が「入」で「自律走行」が「入」での「自律走行」、「入切を切替える」こと、「機体」は、それぞれ本願発明の「手動操舵による手動走行」、「自動操舵により走行する自動走行」、「切替自在」であること、「走行機体」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Aに相当する構成を有する。 イ 構成Bについて 引用発明の「ティーチング作業」の時の走行は、本願発明の「ティーチング走行」に相当する。 また、引用発明の「ティーチングSW47」は、「ティーチング開始時に」「押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を開始点(点A)として記憶部105に記憶し、またティーチング終了時に」「押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を終了点(点B)として記憶部105に記憶」し「前記開始点(点A)および終了点(点B)と機体寸法(即ち、植付部4の取付位置)の情報に基づき、実際の植付開始位置となる植付開始点(点C)と実際の植付終了位置となる植付終了点(点D)を算出し、記憶部105に記憶した前記植付開始点(点C)と前記植付終了点(点D)の情報に基づいて、点Cと点Dを結ぶ基準線(線分CD)を生成して記憶部105に記憶」するときに使用するものであるから、本願発明の「操作することにより基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Bに相当する構成を有する。 ウ 構成Cについて 引用発明は「自動運転モードに切替えている状態であれば」、「自律運転SW48」を「入とすることにより自律運転をすることができ」ることから、「自動運転モードに切替えている状態」において、「切」とすると自律運転をすることができないことは明らかである。 そうすると、引用発明の「自律運転SW48」は、本願発明の「前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を有する。 エ 構成Dについて 引用発明の「ティーチング終了時にティーチングSW47を押下」し「、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を終了点(点B)として記憶部105に記憶」した後、「自動運転モードに切替えている状態で」「自律運転SW48を」「入とすること」、「基準線(線分CD)に平行で、かつ、線間距離(線の間隔)を6aとした直線状の目標経路をN列生成」し「目標経路上を自律的に走行するようにし」ていることは、それぞれ本願発明の「前記指示操作具による終点設定後」、「前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うこと」、「前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行」うことに相当する。 また、引用発明は、「自律的に直線植付走行をし、植付終了位置に到達した時点で、」「枕地に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータの操作により停止され、オペレータが植付部4を上昇させて、自律走行SW48を操作するとき、自律運転SW48が入であって、かつ、苗つぎ警告SWおよび肥料補給警告SWが切であれば、田植機1を所望する方向に自動的に旋回」することが可能ではあるものの、自律運転SW48を切とすればオペレータの操作により田植機1を走行可能であることは明らかであって、オペレータの操作によって、次の「植付開始位置に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータ操作により停止され、オペレータ操作により、植付部4を下降させることにより、引き続き目標経路上を自律的に走行するようにしている」ことから、「自律運転SW48」を「入」とすれば、引き続き、目標経路上を自律的に走行することが可能であることも明らかであるといえる。 ここで、引用発明の「植付終了位置」、「到達」すること、「自律運転SW48を切とす」ること、「オペレータの操作によって、次の「植付開始位置に到達する」」ことは、それぞれ本願発明の「前記自動走行の終点」、「到達する」こと、「前記切替操作具による手動走行への切替を行うこと」、「次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行する」ことに相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を有する。 オ 構成Fについて 引用発明の「田植機1」は、本願発明の「農作業機」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Fに相当する構成を有する。 上記1~5からみて、本願発明と引用発明とは、 <一致点> 「A 手動操舵による手動走行と、自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、 B 前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と、 C 前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、を備え、 D 前記走行機体は、前記指示操作具による終点設定後に、前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うことで、前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行い、前記自動走行の終点に到達すると前記切替操作具による手動走行への切替を行うことで次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行するように構成される F 農作業機。」 で一致し、以下の点で相違している。 <相違点(構成E)> 切替操作具及び指示操作具に関して、 本願発明では、「単一の操作具により構成されている」のに対して、 引用発明では、「自律運転SW48」と「ティーチングSW47」とが別に設けられている点。 (4)判断 ア 相違点について検討する。 上記「(2)イ(ウ)周知技術」で示したとおり、「農作業機において、特定の動作に関する操作具を兼用すること。」は周知技術である。 そして、農作業機において、オペレータの操作性を向上させるという課題は自明な課題であるから、引用発明の「自律運転SW48」と「ティーチングSW47」という自律走行に関する操作具を集約して兼用として、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知技術が奏する効果から、当業者が予測することができた程度のものである。 イ 請求人の主張について (ア)請求人は、審判請求書の「4.本願が特許されるべき理由」において、以下のとおり主張する。 「「手動操舵による手動走行と、自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、 前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と、 前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、を備え、 前記走行機体は、前記指示操作具による終点設定後に、前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うことで、前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行い、前記自動走行の終点に到達すると前記切替操作具による手動走行への切替を行うことで次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行するように構成され、 前記切替操作具及び前記指示操作具が、単一の操作具により構成されている農作業機。」 という構成を備えます。 上記の構成を有する結果、切替操作具及び指示操作具が、単一の操作具により構成されているので、基準走行ラインの生成を行う操作具、及び、自動走行と手動走行との切替えを行う操作具を、単一の操作具に集約することができます。このように、自動走行に関する操作具を単一の操作具に集約することにより、自動走行に関する操作を単一の操作具により、容易に行うことができます。 特に、上記の農作業車では、基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行と次の自動走行の開始点までの手動走行とを複数回繰り返すこととなり、それぞれの自動走行の開始点及び終了点で切替操作具(単一の操作具)により、自動走行と手動走行との間に切替えが行われます。したがって、本発明のように、自動走行に関する操作を単一の操作具に集約することにより、特に、乗員の自動走行に関する操作を容易にすることができます。 一方、上記構成は、いずれの引用文献にも開示されていません。 つまり、引用文献2(特開2012-120490号公報)には、植付装置の昇降やマーカの操作といった、自動走行とは関連のない操作に関する操作具を兼用することが開示過ぎません。また、引用文献3(特開2000-139170号公報)及び引用文献4(実開平5-34802号公報)についても、自動走行とは関連のない操作に関する操作具を兼用することが開示過ぎません。 上記のように、自動走行に関する操作を単一の操作具に集約するということについては、いずれの引用文献にも開示されておらず、このような構成を採る動機付けとなる記載や示唆もありません。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、当業者が容易に想到し得るものではありません。」 (イ)請求人の主張について検討する。 請求人は、上記(ア)のとおり「自動走行に関する操作を単一の操作具に集約するということ」について、特に主張しているものの、本願の明細書の【0085】及び【0087】においては、 「【0085】 また、切替スイッチ50の設置個所は、変速操作具44以外の箇所に設けてあったり、更には、他の機能スイッチと兼用化してもよい。 それらを含めて切替スイッチ50と総称する。」 及び 「【0087】 また、指示スイッチ52として二つのスイッチを設けることに限らず、例えば、一つのスイッチで、基準走行ラインKLの始点K1と終点K2とを指示できるように構成してあってもよい。 また、指示スイッチ52は、変位スイッチ59とは別のスイッチと兼用化してあったり、単独のスイッチとして構成してあってもよい。 それらを含めて指示スイッチ52と総称する。」(下線は合議体が付した。) と記載されているように、「切替操作具」及び「指示操作具」を兼用とすることについては明示的な記載はなく、「切替操作具」及び「指示操作具」を兼用とすることについて、一般的に操作具を兼用とすることで奏される効果以上のものは認められない。 よって、上記請求人の主張は採用できない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 3 むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年5月15日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 手動操舵による手動走行と、基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、 前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、 前記手動走行によるティーチング走行の際に操作することにより前記基準走行ラインの始点及び終点を設定する指示操作具と、を備え、 前記切替操作具及び前記指示操作具が、単一の操作具により構成されている農作業機。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1~3 ・引用文献等1~4 <引用文献等一覧> 1.特開2008-92818号公報 2.特開2012-120490号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2000-139170号公報(周知技術を示す文献) 4.実願平3-92201号(実開平5-34802号)のCD-ROM(周知技術を示す文献) 3 引用文献1の記載事項、引用発明 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2008-92818号公報(上記第2〔理由〕2-2(2)の引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定については、上記「第2〔理由〕3(2)引用文献1、各周知例に記載された事項、引用発明及び周知技術」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明(上記「第2 1(補正前)」)は、本件補正発明(上記「第2 1(補正後)」)から上記「第2 2 2-1」において検討したとおり、一旦削除して後記した「基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って」を元に戻し、「前記手動走行と前記自動走行とを切替自在な切替操作具と、」の位置を元に戻し、「前記」を削除した「基準走行ライン」の「前記」を元に戻し、「走行機体」に関して、上記一旦削除して後記した記載を含んだ「前記指示操作具による終点設定後に、前記切替操作具により前記自動走行への切替操作を行うことで、前記基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行を行い、前記自動走行の終点に到達すると前記切替操作具による手動走行への切替を行うことで次の前記自動走行の開始点まで前記手動走行により走行するように構成され」るという限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものである本件補正発明が引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、上記相違点が削除された本願発明は引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-019433

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