2022-006588
移動局及びこれを用いた埋設物可視化システム
- 審判番号
- 2022-006588
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-108560外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2022年12月26日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】清水建設株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【請求人】株式会社菱友システムズ
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .575-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年5月31日(優先権主張 平成27年10月23日)の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
同年 7月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月17日付け:拒絶理由通知書
同年 8月30日 :意見書、手続補正書の提出
(同年 2月 1日 :原査定の謄本の送達)
同年 4月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年4月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年4月28日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和4年4月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】GNSSアンテナを介して自己位置におけるGNSS観測情報を受信するとともに、基地局の基準点におけるGNSS補正観測情報を取得して前記GNSS観測情報と前記GNSS補正観測情報とをもとに自己位置を計算する測位計算部が内蔵された受信機と、3次元の地図情報と埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報とを保持し、ネットワークを介して前記基地局から前記GNSS補正観測情報を取得して前記受信機に出力するとともに、前記測位計算部で計算された自己位置に対応する前記地図情報の位置と前記埋設物情報の位置とを照合し、照合した位置で、前記自己位置を視点位置として自タブレット端末の方角及び縮尺を一致させた前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を前記自己位置の計算の都度、動的に行うタブレット端末と、を備えたことを特徴とする移動局。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】GNSSアンテナを介して自己位置におけるGNSS観測情報を受信するとともに、基地局の基準点におけるGNSS補正観測情報を取得して前記GNSS観測情報と前記GNSS補正観測情報とをもとに自己位置を計算する測位計算部が内蔵され、人が携帯する受信機と、3次元の地図情報と埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報とを保持し、ネットワークを介して前記基地局から前記GNSS補正観測情報を取得して前記受信機に出力するとともに、前記測位計算部で計算された前記人の自己位置に対応する前記地図情報の位置と前記埋設物情報の位置とを照合し、照合した位置で、前記人の自己位置を視点位置として自タブレット端末の方角及び縮尺を一致させた前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を前記自己位置の計算の都度、動的に行う、前記人が携帯するタブレット端末と、を備えたことを特徴とする移動局。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「自己位置を計算する測位計算部が内蔵された受信機」及び「タブレット端末」を、「人が携帯する」ものに限定するとともに、「前記測位計算部で計算された自己位置」を、「人の自己位置」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献6に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された特開2015-179346号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したものであり、以下同様である。
a 【0001】~【0004】
「【技術分野】【0001】本発明は、地下構造物など視認できない地物を違和感なく表現した3次元地図を表示する3次元地図表示システムに関する。【背景技術】続きを表示(全16行)【0002】ナビゲーション装置やコンピュータの画面等に用いられる電子地図では、建物などの地物を3次元的に表現した3次元地図が用いられることがある。3次元地図は、仮想の3次元空間に配置された地物を透視投影などで投影することによって描かれる。3次元地図は、視点位置から見た状態を再現するものであるため、トンネルなどの地下構造物や高い建物の背後にある道路など、視点位置からは視認できない死角が生じるのが宿命である。このような死角による影響を緩和するため、特許文献1は、トンネルを破線等で描画する技術を開示する。【先行技術文献】【特許文献】【0003】【特許文献1】特開平11-24556号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】3次元地図の利点は、視点位置から見た状態がリアルに再現されるため、ユーザが直感的に地理を把握できる点にある。特許文献1のように、地図中に破線でトンネル等を描いてしまっては、3次元地図のリアリティを損ね、非常に違和感のある表現となってしまう。つまり、トンネルのような地下構造物を表示する場合、3次元地図の利点を損なわない違和感のない表現をすることが望まれる。これは、地下構造物を表示する場合だけでなく、建物の背後の死角を表示する場合など、視点位置から見えない種々の部位を表示する場合に共通の課題である。また、視点位置から見えない種々の部位を表示することは、単なる実写画像では不可能であり、かかる表示を行うことができる点は、3次元地図の大きな利点の一つでもある。本発明は、以上の課題に鑑み、3次元地図において、視認できない地物を違和感なく表示可能とすることを目的とする。」
b 【0009】
「【0009】透過オブジェクト投影図および非透過オブジェクト投影図を作成するための投影条件は、種々の設定が可能である。まず投影方法は、透視投影、平行投影のいずれを用いても良い。また、透視投影の場合であれば、投影条件、即ち視点位置、視線方向は任意に設定可能である。平行投影の場合は、投影条件、即ち投影方向は任意に設定可能である。投影条件は任意に設定可能であるが、透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図は、位置のずれなく重畳させるため、同じ投影条件で投影する必要がある。」
c 【0018】~【0021】、【図1】及び【図2】
「【発明を実施するための形態】【実施例1】【0018】A.システム構成:続きを表示(全25行)図2は、3次元地図表示システムの構成を示す説明図である。本実施例の3次元地図表示システムは、経路探索を行い、3次元地図を表示しながら経路案内をするシステムである。3次元地図表示システムは、経路探索、経路案内機能を伴わず、単にユーザからの指示等に従って3次元地図を表示するシステムとして構成してもよい。実施例の3次元地図表示システムは、サーバ200と端末300とをネットワークNE2で接続して構成されている。端末300としては、スマートフォンを用いるものとしたが、携帯電話、携帯側情報端末(当審注:「携帯側情報端末」は「携帯型情報端末」の誤記と認められる。)、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置など、地図を表示可能な種々の装置を利用可能である。また、3次元地図表示システムは、サーバ200と端末300とを一体化したシステムとして構成してもよい。【0019】サーバ200および端末300には、図示する種々の機能ブロックが用意されている。これらの機能ブロックは、本実施例では、それぞれの機能を実現するコンピュータプログラムを、サーバ200および端末300にインストールすることによってソフトウェア的に構成したが、その一部または全部をハードウェア的に構成してもよい。本実施例では、サーバ200と端末300とからなる構成を採用したが、3次元地図表示システムは、スタンドアロンの装置として構成してもよいし、さらに多くのサーバ等からなる分散システムとして構成してもよい。【0020】(1)サーバ200について地図データベース210には、3次元地図データベース211およびネットワークデータ213が格納されている。3次元地図データベース211には、地物の3次元形状を表すポリゴンデータ、ラインデータおよび文字データが格納されている。ネットワークデータ213は、道路をリンクおよびノードで表した経路探索用のデータである。3次元地図データベース211の内容について説明する。本実施例では、地物を線状オブジェクトと、その他の一般地物とに分けて取り扱う。線状オブジェクトとは、道路のように線状の地物の総称であり、ラインデータ、即ち折れ線データで形状を表すことができるオブジェクトを言う。線状オブジェクトには、例えば、道路、トンネル、線路、経路案内表示、河川などが含まれる。線状オブジェクト以外の一般地物には、建物等が含まれる。3次元地図データベース211においては、建物等の一般地物に対しては、3次元形状を表すポリゴンデータが用意されている。線状オブジェクトに対しては、ラインデータが用意されている。ただし、後述する通り、線状オブジェクトについてポリゴンデータを併せて用意するものとしてもよい。データベース管理部202は、地図データベース210のデータの入出力を管理する。本実施例では、3地毛に地図データベース211に格納されたオブジェクトを、透過オブジェクト、非透過オブジェクトに分類して描画を行う。3次元地図データベース211からデータを読み出すとともに、この分類を行うのもデータベース管理部202の機能である。データベース管理部202には、トンネルモデル生成部204が用意されている。トンネルモデル生成部204は、トンネルを表すラインデータに基づいて、路面と壁とを設け、3次元的なポリゴンモデルを生成する機能を奏する。経路探索部203は、ネットワークデータ213を利用して、端末300のユーザから指定された出発地から目的地までの経路を探索する。経路探索は、ダイクストラ法など周知の方法によって行うことができる。送受信部201は、ネットワークNE2を介して、端末300との間で、種々のデータやコマンドの送受信を行う。【0021】(2)端末300について主制御部304は、端末300に備えられた各機能ブロックの動作を統合制御する。送受信部301は、ネットワークNE2を介してサーバ200との間で、データやコマンドの送受信を行う。コマンド入力部302は、ユーザからの経路案内等に関する指示などを入力する。指示としては、例えば、経路案内の出発地、目的地の指定、地図表示時の表示スケールの指定などが挙げられる。位置・通行情報取得部303は、GPS(Global Positioning System)等のセンサから端末300の現在位置等を取得する。地図情報記憶部305は、地図を表示する際に、サーバ200から取得した3次元地図データベース211を一時的に記憶する。本実施例では、端末300は、予め全ての地図データを記憶しておくのではなく、地図の表示範囲に応じて必要となる地図データを適宜、サーバ200から取得する。地図情報記憶部305は、こうして取得された地図データを記憶している。また、併せて、経路探索の結果も記憶する。表示制御部306は、地図情報記憶部305に記憶されている地図データを用いて、端末300のディスプレイ300dへの地図表示を行う。表示制御部306には、投影処理部307と、重畳処理部308が備えられている。投影処理部307は、地図情報記憶部305に格納されたポリゴンデータおよびラインデータを、透過オブジェクトと非透過オブジェクトに分類して、それぞれ仮想3次元空間に配置し、投影することによって透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図を生成する機能を奏する。重畳処理部308は、生成された透過オブジェクト投影図を、非透過オブジェクト投影図に、透過率を調整して重畳し、重畳図(図1の下段参照)を生成する。」
「【図1】[図:0001394982000001.jpg]」
「【図2】[図:0001394982000002.jpg]」
d 【0025】~【0029】、【図4】及び【図5】
「【0025】C.経路案内処理:(1)経路案内処理:図4は、経路案内処理のフローチャートである。経路案内処理は、ユーザによって指定された出発地から目的地に向かうまでの経路を探索し、その案内を行う処理である。これは、主としてサーバ200の経路探索部203、端末300の表示制御部306などが協働して行う処理であり、ハードウェア的にはサーバ200および端末300のCPUによって行われる処理である。続きを表示(全23行)処理を開始すると、端末300は、ユーザから出発地、目的地の指定を入力する(ステップS10)。現在位置を出発地として用いても良い。サーバ200は、端末300から出発地、目的地の情報を受け、ネットワークデータ213を参照して、経路探索を行う(ステップS11)。経路探索は、ダイクストラ法などの周知の方法をとることができる。そして、経路探索結果に基づき、経路案内データを作成する(ステップS12)。経路案内データは、経路探索の結果を、ネットワークデータ213のリンク列で表したデータである。経路案内データは、経路探索の結果として、端末300に送信される。【0026】端末300は、次にユーザの現在位置に応じて、3次元地図を表示しながら経路を案内する処理を行う。まず、端末300は、ユーザの現在位置を検出する(ステップS13)。現在位置は、GPSなどのセンサを利用して検出することができる。そして、端末300は、地図表示処理によって3次元地図を表示する(ステップS14)。処理の内容は、後で詳述する。以上の処理を、端末300は、目的地に到着するまで繰り返し実行する(ステップS15)。【0027】(2)地図表示処理:図5は、地図表示処理のフローチャートである。経路案内処理(図4)のステップS14に相当する処理であり、端末300の表示制御部306が主として実行する処理である。処理を開始すると、端末300は、視点、視線方向、表示スケールを入力する(ステップS20)。視点は、現在位置に基づいて定めるものとしてもよい。視線方向は、現在位置および進行すべき経路に基づいて定めるものとしてもよい。そして、3次元地図として表示すべき範囲の地図データおよび経路案内データを読み込む(ステップS21)。3次元地図を表示するために、本実施例では、端末300は、まず地図情報記憶部305に格納されているデータを読み込む、そして地図を表示するために地図データが不足している場合には、不足分をサーバ200から取得する。【0028】次に、サーバ200は、トンネルモデル生成処理を行う(ステップS22)。この処理は、トンネルのラインデータに基づき、路面およびトンネルの壁を生成することによって、トンネルの3次元モデルを生成する処理である。処理の詳細は後述する。この処理も、地図データ等の読み込み(ステップS21)と同様、既に生成済みのトンネルモデルは地図情報記憶部305に格納されているため、不足する分のトンネルについてのみ実行される。【0029】端末300は、地図内に表示される地物から、透過オブジェクトを抽出する(ステップS23)。本実施例では、トンネルを透過オブジェクトとした。そして、端末300は、透過オブジェクトを仮想3次元空間に配置し、透視投影することで、透過オブジェクト投影図を生成する(ステップS24)。また、透過オブジェクト以外の地物、即ち非透過オブジェクトを、別途、仮想3次元空間に配置し、透視投影することで、非透過オブジェクト投影図を生成する(ステップS25)。透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図を生成する際の投影条件、つまり視点位置、視線方向などは同じとしてある。端末300は、最後に、得られた非透過オブジェクト投影図に、透過オブジェクト投影図を重畳する(ステップS26)。こうすることで、図1の下段に示した重畳図を得ることができる。重畳の際には、透過オブジェクト投影図の透過率を調整する。本実施例では、地表面などの非透過オブジェクト投影図の各地物が透けることによって透過オブジェクト投影図を視認できているとユーザが錯覚する程度の透過率に設定してある。透過率は、透過オブジェクト投影図の全体で一定としてもよいし、領域に応じて変化させてもよい。」
「【図4】[図:0001394982000003.jpg]」
「【図5】[図:0001394982000004.jpg]」
e 【0034】及び【図7】
「【0034】D.表示例:図7は、3次元地図の表示例(1)を示す説明図である。トンネルを透過オブジェクトとして表示した例を示した。中央付近に縦方向に描かれている曲線がトンネルである。その周囲には、非透過オブジェクトとして、道路、建物等が描かれている。本来であれば、トンネルは地表面の下に位置するため、3次元地図内には表示されないが、本実施例の3次元地図では、表示されることが分かる。従って、経路案内において、トンネルを通行する経路が選択されている場合でも、現在地マークはトンネル上に表示され、ユーザに対して違和感のない表示を実現できる。」
「【図7】[図:0001394982000005.jpg]」
(イ) 引用発明の認定
a 【0019】及び【図2】から読み取れる事項
【0019】及び【図2】から、端末300が、送受信部301、位置・通行情報取得部303、地図情報記憶部305及び表示制御部306を備えていることが読み取れる。
b 【0034】及び【図7】から読み取れる事項
【0034】及び【図7】から、透過オブジェクト投影図を、非透過オブジェクト投影図に重畳した重畳図に、現在地マークが表示されていることが読み取れる。
c 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記a及びbの認定事項を総合すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「送受信部301、位置・通行情報取得部303、地図情報記憶部305及び表示制御部306を備える端末300であって(上記aの認定事項)、位置・通行情報取得部303は、GPS(Global Positioning System)等のセンサから端末300の現在位置等を取得し(【0021】)、地図情報記憶部305は、サーバ200から取得した3次元地図データベース211を一時的に記憶し(【0021】)、3次元地図データベース211においては、建物等の一般地物に対しては、3次元形状を表すポリゴンデータが用意され、続きを表示(全15行)道路、トンネルが含まれる線状オブジェクトについてポリゴンデータを併せて用意され(【0020】)、表示制御部306は、地図情報記憶部305に記憶されている地図データを用いて、端末300のディスプレイ300dへの地図表示を行い(【0021】)、表示制御部306には、投影処理部307と、重畳処理部308が備えられており(【0021】)、投影処理部307は、地図情報記憶部305に格納されたポリゴンデータを、透過オブジェクトと非透過オブジェクトに分類して、それぞれ仮想3次元空間に配置し、投影することによって透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図を生成する機能を奏し(【0021】)、地表面の下に位置するトンネルを透過オブジェクトとし、非透過オブジェクトとして、道路、建物等が描かれ(【0034】)、透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図を生成する際の投影条件、つまり視点位置、視線方向などは同じであり(【0029】)、重畳処理部308は、生成された透過オブジェクト投影図を、非透過オブジェクト投影図に、透過率を調整して重畳し、重畳図を生成し(【0021】)、前記重畳図には、現在地マークが表示され(上記bの認定事項)、ユーザの現在位置に応じて、3次元地図を表示する処理を行う(【0026】)、地図を表示可能な携帯型情報端末である(【0018】)、端末300。」
イ 引用文献7に記載された事項と技術常識1の認定
(ア) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用され、本願の優先日前に発行された特開2003-219448号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、GPS(Global Positioning System),GLONASS,Galileo等の測位衛星を用いた位置測位システム、特に位置補正情報配信による高精度位置測位システムとその利用方法に関するものである。」
「【0006】一方、2の相対測位方式は複数の衛星電波受信装置を用いる方式であり、原理的には、複数地点で同時刻の単独測位を行い、各々の地点で得られた位置情報を差し引くことで相対いちを求める方式である。この方法では、共通誤差要因として考えられる衛星軌道の誤差や電離層,対流圏等による電波遅延誤差等を相殺されることになるため、単独測位よりも精度良く測位する事が可能となる。相対測位方式は、a.ディファレンシャル測位方式(DGPS),b.干渉測位方式の2方式に大別できる。【0007】aのディファレンシャル測位の基本原理は、基準点と呼ばれる参照点に衛星電波受信装置を設置した受信装置で測位した絶対位置と既知の絶対位置との差を算出し、それを補正量として放送波や通信網を利用して位置補正情報を提供することで測位精度を向上させるものである。国内では、MCA(Multi ChannelAccess)無線により補正情報を提供する方法とFM放送波により位置補正情報を提供する方法が一般的であり、衛星通信を利用した補正情報配信方法も存在する。【0008】尚、DGPSによる測位精度は、50cmから数m程度の誤差がある。ディファレンシャル測位方式の詳細については、例えば、特開平6-342054号公報に開示されている。【0009】bの干渉測位方式は、これまでに述べた単独測位方式やディファレンシャル測位方式の様に測位衛星から受信装置までの時間の差で距離を求め位置を割り出すのではなく、測位衛星から送信されてくる電波の位相(波の数)を利用して測位衛星と受信装置との距離を算出する。それ以外の基本原理はディファレンシャル測位方式に類似しており、基準点と呼ばれる参照点に衛星電波受信装置を設置し、受信装置で測位した絶対位置と既知の絶対座標から位置補正情報を生成し、位置補正情報を放送波や通信網を利用して提供する。【0010】位置補正情報を受けた衛星電波受信装置は、測位衛星からの受信情報と位置補正情報を利用することで測位精度を向上させると言うものである。干渉測位方式には、長時間測位により誤差の平均化を図り最精密な測位を実現する静的干渉測位方式と移動しながらリアルタイムに干渉測位を実現する事が可能なRTK(Real Time Kinematic)測位方式が存在する。各々の方式の精度は、静的干渉測位方式が数mmの誤差、RTK測位方式が数cmの誤差である。干渉測位方式の詳細については、例えば特開2000-304843号公報に開示されている。」
(イ) 技術常識1の認定
引用文献7の上記(イ)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は技術常識であると認める(以下「技術常識1」という。)。
<技術常識1>
「既知の位置に設置された受信装置で測位した絶対位置と既知の絶対座標から生成された情報を送信し、前記情報を受けた別の受信装置において、測位衛星からの受信情報と前記情報を利用することで測位精度を向上させるRTK(Real Time Kinematic)測位方式において、前記情報を位置補正情報と呼ぶこと。」
ウ 引用文献8及び引用文献9に記載された事項と技術常識2の認定
(ア) 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用され、本願の優先日前に発行された特開2012-133471号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0030】(全体概要)図1は道路を端末機1で撮影している状況を示す説明図であり、図2(a)は端末機1のモニタ側を示す図であり、(b)は端末機1の背面側(カメラ側)を示す図である。図1に示すように、センターライン2が敷設された道路の下には下水管3が埋設されており、いま端末機1の使用者(以下、「ユーザ」という。)が歩道上から目の前の光景を撮影している。図2(a)(b)に示すように、端末機1にはカメラ1a(画像取得手段)が内蔵されており、端末機1の表面にはモニタ1b(表示画面)が設けられている。なお便宜上、図1では下水管3を破線で表示しているが、もちろんユーザに下水管3は見えていない。【0031】続きを表示(全12行)図2(a)に示すように、ユーザが撮影したモニタ1bには実際の空間に存在するもの(以下、「実在物」という。)、すなわち車道、歩道、電柱、建物などを撮影した画像(以下、実在物の画像を「実空間画像」という。)が表示されており、車道のセンターライン2も実空間画像(センターライン2R)として表示されている。もちろん実在物には、ここで例示した車道、歩道、電柱、建物、車道のセンターライン2に限られず、電柱に掛けてある電線類や、構造物内の鉄筋など、実際の空間に存在するあらゆるものが含まれることはいうまでもない。また、後に説明する空間モデルに基づいて作成された仮想上のモデル(以下、「仮想空間モデル」という。)を画像化したもの(以下、仮想空間モデルの画像を「仮想空間画像」という。)も、モニタ1bに表示される。図2(a)では、下水管3の仮想空間モデルを画像化した仮想空間画像(下水管3V)を表示している。なお便宜上、センターラインを実在物として表現する場合は「センターライン2」と数字のみの記号で表し、センターラインを実空間画像として表現する場合は「センターライン2R」とRを添えた記号で表し、後に説明するようにセンターラインを仮想空間画像として表現する場合は「センターライン3V」とVを添えた記号で表すこととする。同様に、下水管を実在物として表現する場合は「下水管3」と表し、下水管を仮想空間画像として表現する場合は「下水管3V」と表す。… (中略) …【0042】仮想空間モデルから、端末機1のモニタ1bに表示するための画像、すなわち仮想空間画像が作成される。カメラ1aで撮影している場所の仮想空間画像をモニタ1b上に表示すれば、目視だけでは得られない情報も同時に取得することができるので極めて有益である。このとき仮想空間画像は、モニタ1b上でも実際に存在している位置に表示されることが望ましい。例えば、実際には下水管3は道路左側に埋設されているにもかかわらず、モニタ1b上では下水管3V(仮想空間画像)が車道の右側に表示されたのでは、却って混乱することとなる。【0043】さらに図2(a)に示すように、モニタ1bに表示される実空間画像は、実際に見た状態、すなわち遠近感を表現した状態で表示されている(以下、遠近感を表現した状態での表示を、「遠近表示」という。)ため、仮想空間画像も遠近表示としなければ誤解を招くおそれがある。仮に、図2(a)で下水管3Vのみモニタ1bの縦枠と平行に表示したとすると、下水管3Vは道路から外れて埋設されたと誤認されることになる。なおこれまでも、実際に撮影した「もの」に関連する情報を、モニタ1b上でその「もの」が表示されている付近にタグで表示することは行われてきたが、タグなど「点」の情報とは異なり、「線」や「面」の地物を実空間画像に表示する場合は、単に位置を合わせるだけでなく、その表示方法にも工夫しなければならない。【0044】そこで本願発明では、仮想空間画像についても、実際に撮影すれば表示されるであろう状態でモニタ1bに表示することとしている。つまり図2(a)に示す下水管3V(仮想空間画像)の場合で説明すれば、モニタ1bに表示される実空間画像の中において、実際に埋設されている平面位置に下水管3Vを表示するとともに、実空間画像のように(例えば車道や歩道のように)遠近表示するものである。」
「【図1】[図:0001394982000006.jpg]」
「【図2】[図:0001394982000007.jpg]」
(イ) 引用文献9に記載された事項
当審において新たに引用され、本願の優先日前に発行された特開2015-114823号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0009】実施の形態1.以下、この発明を図に基づいて説明する。図1は実施の形態1による道路工事等の現場作業を支援するための携帯用端末装置(以下、端末と称す)100を示すブロック図であり、図1において、端末100は後述する例えば、道路に埋設された不可視物である上水道管32が、地震等の自然災害発生に伴い部分的な損傷を受け、水漏れ現象が発生した場合の補修作業において、現場技術員(以下ユーザと称す)が端末100によって撮影する第1、第2の位置情報から得られる保持状態情報と、前記上水道管32の埋設時の位置情報を格納する設備情報データベース1とを比較して、埋設当時の位置からの変位を特定するものである。この端末100が用いられる現場の1例を図2に示す。図2は地震発生による地面液状化現象によって上水道管32が地表面方向に持ち上がった状態を示しており、マンホール31のマンホール蓋31aは本来ならば道路面33と同じ高さにあるべきだが、液状化現象によってマンホール31、および上水道管32とともに、持ち上がっている状態である。不可視物を覆う部材に相当する道路面33には3箇所以上の複数箇所にペンキ等で描かれたマーク(標識)34が設けられており、このマーク34は基準平面を決定するのに利用される。ユーザ30は端末100を保持して利用し、この端末100によって図2に示すようにマーク34を含む所定領域内の撮影角度θ内の道路面33を撮影し、後述の演算等によって所要の補正が行われて上水道管32の変位を特定する構成を有している。【0010】端末100を構成する各要素を図1に基づいて説明する。位置情報取得部2は、端末100に内蔵されているGPS(全地球測位システム)や無線LANあるいは携帯電話基地局からの電波を利用した3点測量を可能とする機能を備え、端末100の現在位置の緯度、経度、高度情報を取得する。設備情報取得部3は、前記位置情報取得部2および後述する姿勢情報取得部4が取得した保持状態情報とをキーとして、その位置における前記上水道管32の埋設時の設備情報を格納している設備情報データベース1より、設備情報12を取得する。この際、前記設備情報取得部3は3点以上の座標で指定された領域、つまり、マーク34が設けられた領域に埋設されている設備に関する情報であって、この場合、領域内における上水道管32の布設の始点、終点、管の寸法、材質や道路面33からの深さ等の情報を取得する。姿勢情報取得部4は、端末100に内蔵された地磁気センサ、加速度センサ等を利用して、端末100の仰俯角、方位角、回転角を取得する。仮想画像生成部5は、設備情報12を基に仮想画像を生成する。重畳補正部6は後述する画像重畳部7でもって、仮装画像と現実空間の動画像を重畳した場合に、仰俯角や方位角、回転角によっては正しく重畳できない場合があり、それを補正するパラメータを生成するとともに、動画像表示部9を介して補正量の入力可能となるような機能を備えている。撮影部8は、端末100に設けられたカメラであり、静止画および動画像撮影を行う。図3に示す動画像表示部9は前記撮影部8で撮影した動画像および現実空間と仮想画像を重畳した動画像を表示する。尚、撮影部8は端末100の裏面に設けられている。演算部10は各種演算を行うものであり、その結果は記憶部11に記憶される。」
「【図2】[図:0001394982000008.jpg]」
(ウ) 技術常識2の認定
引用文献8及び引用文献9の上記(ア)及び(イ)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は技術常識であると認める(以下「技術常識2」という。)。
<技術常識2>
「目視では得られない仮想画像を実画像に重畳して表示する際に、実画像を撮影すれば表示されるであろう状態で、すなわち、自己位置を視点位置として、当該自己位置から端末を見た状態で表示を行うこと。」
エ 引用文献1に記載された事項と周知技術の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された特開2002-6026号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 【0001】
「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、移動局の現在位置及び未知の目標位置を表示装置に表示することにより、移動局を目標位置に誘導する目標位置誘導システム、より詳しくいうと、持ち運び可能なGPS(Global Positioning System :汎地球測位システム)装置を用いて、測量作業において道路や宅地などに杭打ちを行うための測設点などの目標位置への案内画面を携帯可能な表示装置に表示し、視覚的な援助によりリアルタイムで目標位置を探索するのに適した目標位置誘導システム、及び、そのための記録媒体に関する。」
b 【0011】~【0018】、【図1】及び【図2】
「【0011】【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ、この発明の好適な実施例を詳述する。なお、以下の実施例は単なる一例であって、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。【0012】〔システムの概略〕図1は、この発明の一実施例による目標位置誘導システムを用いる測設作業の概観図を示し、図2は、この発明の一実施例による目標位置誘導システムの全体的なハードウエアブロック図を示す。この例では、目標位置誘導システムは、ディジタル観測データ処理装置1、第1GPS装置(移動局)2及び第2GPS装置(固定局)3を備え、観測データ処理装置1は、パーソナルコンピュータを利用した携帯可能な現場測量用CADシステムであり、「電子平板」或いは「現場用コンピュータ」とも通称される(以下、「電子平板」という。)。この電子平板1は、観測現場においてGPS観測データを処理する通常の観測データ処理機能を有すると共に、特に、測設作業のために、両GPS装置1,2で得た観測情報から求められる移動局座標データ及び所与の測設目標点座標データに基づいて、移動局である第1GPS装置2を測設目標点に誘導するのに適した案内画面を電子平板1のディスプレイに表示する機能を有している。【0013】この目標位置誘導システムは、図1を用いて端的にいうと、持ち運び可能な固定局3のGPSアンテナ3Aを既知位置に設置し、測設点などの未知の目標位置を設定すると、固定局GPS受信機3から送られてくる観測情報と、持ち運び可能な移動局2のGPSアンテナ2Aで受信される観測情報に基づいて、移動局2の現在位置が算出され、設定された目標位置と算出された移動局現在位置との関係を表わす案内画面が、携帯可能な電子平板1の表示装置にグラフィック表示されるので、目標位置を探索するユーザは、案内画面に従ってGPS移動局2を目標位置に容易に移動させることができる。目標位置近くになると、案内画面は探索当初のナビゲーション誘導画面から拡大図画面に代り、さらに、この拡大図画面は、目標位置と現在位置との位置関係に応じて表示拡大率が自動的に変更される。【0014】図2において、電子平板1は、上述のように、この発明による測設支援業務を中心的に行うためのホストコンピュータとして機能し、CPU(中央処理装置)11、システムメモリ12、外部記憶装置13、ペン形の操作子などをもつ入力操作装置14、ディスプレイ等の表示装置15、インターフェイス16などを備え、これらの装置11~16は、バス17を介して互いに接続されている。【0015】このシステムを制御するCPU11は、種々の観測アプリケーションプログラムに従って種々の制御を行う外、特に、この発明による測設点誘導に関する処理プログラム〔「GPS-RTK(リアルタイムキネマティック)測設プログラム」と称することができるものであり、以下において、このプログラムを単に「RTK測設」と呼ぶことがある。〕に従って、測設点探索業務のための画面制御を行い、システムメモリ(ROM&RAM)12は、基本プログラムや固定データ/パラメータを記憶したROM(読出専用メモリ)、及び、各種観測アプリケーションプログラムやデータ等を一時記憶するRAM(ランダムアクセスメモリ)を備える。また、外部記憶装置13には、HDD(ハードディスクドライブ)が備えられ、測設点誘導等を含む各種処理プログラム/データを記憶させることができる。記憶装置としては、さらに、メモリカードや、FDD(フロッピィディスク)/CD-R/MO(光磁気)ディスク等の記憶媒体を増設/付設することができる。【0016】また、入力操作装置14は、カラー液晶表示器(LCD)のようなディスプレイ15に表示される各種画面を視認しつつ、主として、ペン形操作子などによる簡単な画面上への指示操作によって、各種入力を与えるものであり、これによって、測設業務支援のための各種処理を遂行することができる。【0017】電子平板1には、インターフェイス16を介して、GPS現場観測を行うGPS受信機である第2GPS装置3或いは第1GPS装置2との接続が可能であり、例えば、各GPS装置3,2とは、有線(シリアル通信ケーブル)で通信可能に接続可能である。また、第1GPS装置2は、第2GPS装置3からの送信信号を通信装置〔MCA無線装置、省電力無線装置などの無線モデムや、携帯電話、PHSなど、種々のワイヤレスな通信手段〕5,4を介して受信することができる。なお、インターフェイス16は、現場観測後、この電子平板1を、屋内にある観測データ編集用ホストコンピュータ(図示せず)に接続するのにも用いられる。【0018】第2GPS装置3は、図1に示すように、固定局(既知局)として用いられ、第2GPS装置3の受信アンテナ3Aは、現在既知の基準座標値をもつ基準位置の点に設置される。また、第1GPS装置2は、杭入れすべき測設点を決定するための移動局として用いられ、図1に示すように、電子平板1や通信装置4(移動局側の電源バッテリーを含む。)と共に、ユーザにより移動可能である。第1GPS装置2の受信アンテナ2Aで衛星電波が受信されると、電子平板1は、受信された観測データ及び通信装置5,4を介して得た第2GPS装置3からの信号データを処理することにより、移動局2(アンテナ2A)の現在位置を直ちに算出しディスプレイ15上に反映させる。従って、測設作業を行うユーザ(一人でも可)は、電子平板1のディスプレイに表示される案内画面の誘導に従って、第1GPS装置2を迅速且つ容易に測設目標点に近づけることができる。」
「【図1】[図:0001394982000009.jpg]」
「【図2】[図:0001394982000010.jpg]」
(イ) 周知技術の認定
前記イ(イ)において技術常識1として示したように、GPS-RTKにおいて、既知の位置に設置された固定局からの情報を、位置補正情報と呼ぶことは技術常識であるから、引用文献1の前記(ア)の摘記箇所の記載に例示される次の事項は周知技術であると認める。
<周知技術>
「既知の基準位置の点に設置され、固定局(既知局)として用いられる第2GPS装置と、ユーザにより移動可能であり、移動局として用いられる第1GPS装置を備え、第1GPS装置で受信された観測データ及び通信装置を介して得た第2GPS装置からの信号データ(位置補正情報)を、移動局側で処理することにより、移動局の現在位置を算出する、GPS-RTK(リアルタイムキネマティック)。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「位置・通行情報取得部303」を備える「端末300」は、GPS(Global Positioning System)等のセンサから端末300の現在位置等を取得するものであり、当該取得が、GNSS観測情報に基づいた計算によるものであることは明らかであるから、「GNSSアンテナを介して自己位置におけるGNSS観測情報を受信するとともに」「前記GNSS観測情報」「をもとに自己位置を計算する測位計算部が内蔵され[る]」「受信機」に相当する。
そして、引用発明の「位置・通行情報取得部303」を備える「端末300」は、「携帯型情報端末」であるから、「人が携帯する受信機」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「GNSSアンテナを介して自己位置におけるGNSS観測情報を受信するとともに、前記GNSS観測情報をもとに自己位置を計算する測位計算部が内蔵され、人が携帯する受信機」を備える点で共通する。
(イ)a 引用発明の「地図情報記憶部305」が記憶する「3次元地図データベース211」は、建物、道路及びトンネルに対して、3次元形状を表すポリゴンデータが用意されている。
そして、引用発明において、「建物及び道路の3次元形状を表すポリゴンデータ」及び「地表面の下に位置するトンネルを表すポリゴンデータ」は、それぞれ、本件補正発明の「3次元の地図情報」及び「埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報」に相当する。
よって、引用発明において、「建物等の一般地物に対して」「用意され」た「3次元形状を表すポリゴンデータ」、及び、「道路、トンネルが含まれる線状オブジェクトについて」「用意され」た「ポリゴンデータ」が「地図情報記憶部305に格納され[る]」ことは、本件補正発明における「3次元の地図情報と埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報とを保持[する]」ことに相当する。
b 引用発明は、地図情報記憶部305に格納されたポリゴンデータを、透過オブジェクトと非透過オブジェクトに分類して、それぞれ仮想3次元空間に配置し、投影することによって透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図を生成し、生成された透過オブジェクト投影図を、非透過オブジェクト投影図に重畳して重畳図を生成しており、ここでトンネルを透過オブジェクトとし、道路、建物等を非透過オブジェクトとしており、さらに、このような処理は、ユーザの現在位置に応じて行われているものである。
そうすると、引用発明において、3次元地図データベース211から、現在位置に対応する、建物、道路及びトンネルの3次元形状を表すポリゴンデータを読み出し、トンネルを透過オブジェクトとする投影図と、道路及び建物を非透過オブジェクトとする投影図を生成して、これらを重畳する処理を行っていることは、明らかである。
そして、上記aにおいて示したとおり、引用発明の、「建物及び道路の3次元形状を表すポリゴンデータ」及び「地表面の下に位置するトンネルを表すポリゴンデータ」は、それぞれ、本件補正発明の「3次元の地図情報」及び「埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報」に相当する。
よって、引用発明において、地表面の下に位置するトンネルを透過オブジェクトとする投影図と、道路及び建物を非透過オブジェクトとする投影図を生成して、これらを重畳する処理を行うことは、本件補正発明における「測位計算部で計算された人の自己位置に対応する前記地図情報の位置と前記埋設物情報の位置とを照合し、照合した位置で」、「前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を」「行う」ことに相当する。
c 引用発明においては、透過オブジェクト投影図、非透過オブジェクト投影図を生成する際の視点位置、視線方向などの、すなわち方角は同じとされており、また重畳図を作成する目的からして、両者の縮尺が同じであることも明らかであるから、本件補正発明と、「方角及び縮尺を一致させた前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示」を行う点で共通する。
d 引用発明は、取得したユーザの現在位置に応じて、透過オブジェクト投影図を、非透過オブジェクト投影図に重畳した重畳図を作成する処理を行うものであり、上記(ア)に示したとおり、ユーザの現在位置は計算により取得されるものであるから、引用発明と本件補正発明は「前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を前記自己位置の計算の都度、動的に行う」点で一致する。
e 本件補正発明の「人が携帯するタブレット端末」と、引用発明の「地図を表示可能な」「携帯型情報端末」である「端末300」は、「人が携帯する端末」である点で共通する。
f 上記a~eを総合すると、本件補正発明と引用発明は、「3次元の地図情報と埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報とを保持し、測位計算部で計算された人の自己位置に対応する前記地図情報の位置と前記埋設物情報の位置とを照合し、照合した位置で、方角及び縮尺を一致させた前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を前記自己位置の計算の都度、動的に行う、前記人が携帯する端末」を備える点で共通する。
(ウ) 引用発明の「端末300」は、「携帯型情報端末」であり、持ち運び可能な無線局であることは明らかであるから、本件補正発明の「移動局」に相当する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
GNSSアンテナを介して自己位置におけるGNSS観測情報を受信するとともに、前記GNSS観測情報をもとに自己位置を計算する測位計算部が内蔵され、人が携帯する受信機と、
3次元の地図情報と埋設物の3次元構造の位置情報を示す埋設物情報とを保持し、測位計算部で計算された人の自己位置に対応する前記地図情報の位置と前記埋設物情報の位置とを照合し、照合した位置で、方角及び縮尺を一致させた前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を前記自己位置の計算の都度、動的に行う、前記人が携帯する端末と、
を備えたことを特徴とする移動局、である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明においては、「受信機」に、「基地局の基準点におけるGNSS補正観測情報を取得して」「自己位置における」「GNSS観測情報と前記GNSS補正観測情報とをもとに自己位置を計算する測位計算部が内蔵され」ており、「端末」が、「ネットワークを介して前記基地局から前記GNSS補正観測情報を取得して前記受信機に出力する」ものであるのに対して、
引用発明においては、端末300が、基準点におけるGNSS補正観測情報を取得しておらず、GNSS観測情報と前記GNSS補正観測情報をもとに自己位置を計算していない点。
b 相違点2
方角及び縮尺を一致させた地図情報と埋設物情報との重ね合わせ表示を行う場合における「方角」が、
本件補正発明においては、「人の自己位置を視点位置として自端末の方角」であるのに対して、
引用発明においては、透過オブジェクト投影図と非透過オブジェクト投影図の重畳図には、現在地マークが表示されており、人の自己位置の後方にある位置を視点位置としている点。
c 相違点3
人が携帯する端末が、
本件補正発明においては、「タブレット端末」であるのに対して、
引用発明においては、地図を表示可能な携帯型情報端末ではあるが、タブレット端末であるか不明である点。
(4) 当審の判断
ア 相違点1について
前記相違点1について検討する。
前記(2)エ(イ)において、周知技術として示したとおり、既知の基準位置の点に設置され、固定局(既知局)として用いられる第2GPS装置と、ユーザにより移動可能であり、移動局として用いられる第1GPS装置を備え、第1GPS装置で受信された観測データ及び通信装置を介して得た第2GPS装置からの信号データ(位置補正情報)を、移動局側で処理することにより、移動局の現在位置を算出する、GPS-RTK(リアルタイムキネマティック)は周知である。
よって、引用発明において、前記周知技術を適用し、端末300の送受信部301において、固定局からの位置補正情報を受け取り位置・通行情報取得部303に当該位置補正情報を送信して、GPS-RTK(リアルタイムキネマティック)測位を行わせるようにして、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
前記相違点2について検討する。
(ア) 前記(2)ウ(ウ)において、技術常識2として示したとおり、目視では得られない仮想画像を実画像に重畳して表示する際に、実画像を撮影すれば表示されるであろう状態で、すなわち、自己位置を視点位置として、当該自己位置から端末を見た状態で表示を行うことは技術常識である。
そして、引用文献6の【0009】には、「また、透視投影の場合であれば、投影条件、即ち視点位置、視線方向は任意に設定可能である。」と記載され、【0004】には、「3次元地図の利点は、視点位置から見た状態がリアルに再現されるため、ユーザが直感的に地理を把握できる点にある。」と記載されているから、引用発明において、ユーザが直感的に把握するように、前記技術常識2を踏まえて、透過オブジェクト投影図と非透過オブジェクト投影図の重畳図の方角を、人の自己位置を視点位置とした自端末の方角にして、前記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
地図を表示可能な携帯型情報端末として、タブレット端末は例示するまでもなく周知であるから、引用発明の「端末300」を、タブレット端末とすることは、実質的な相違点ではない。
エ 総合検討
前記ア~ウにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点1から相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1から相違点3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術、技術常識から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張
折りたたみ中(クリックで表示)
請求人は、審判請求書において、下記主張をしている。
本願発明は、現場の作業者である人の自己位置を視点位置に固定し、人が携帯するタブレット端末上に、人が携帯する自タブレット端末の方角及び縮尺を一致させた前記地図情報と前記埋設物情報との重ね合わせ表示を、人の自己位置の計算あるいは入力の都度、動的に行うものであり、引用文献6のように現在位置に基づいて視点を変化させることを前提とするものではない。
なお、審査官は、自己位置を視点位置とすることの阻害要因はないと指摘しているが、引用文献6は自己位置と異なる視点位置の設定が記載されているのみであり、自己位置を視点位置とする記載はない。
なお、視点位置が自己位置と異なる場合、作業者自身の目と、視点位置における目とが異なるため、作業者による埋設物情報の把握に時間がかかり、混乱が生じる場合がある。
本願発明は、作業者の視点とタブレット端末の視点とを同一に固定することにより、タブレット端末2が常に作業者の目となり、作業者は重ね合わせ表示された埋設物情報の把握を容易に行うことができ、作業者による作業効率を向上させることができるという、引用文献1,2,6を適宜組み合わせたものからは期待できない顕著な効果を奏する。
(イ) 請求人の主張について
前記イにおいて示したとおり、引用文献6の【0004】には、ユーザが直感的に地理を把握できることが、3次元地図の利点であることが記載されており、また技術常識2として示したとおり、自己位置を視点位置とする表示自体、ごく普通に行われている表示であるから、引用発明において、ユーザが直感的に地理を把握するために、自己位置を視点位置とする表示を行わせるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の主張は、前記エの結論を左右するものではない。
(5) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年8月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
本願発明は、下記引用文献6に記載された発明及び下記引用文献1に示された周知技術に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1 特開2002-6026号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6 特開2015-179346号公報
3 引用文献1、6に記載された事項、引用発明及び周知技術の認定
引用文献1、6に記載された事項、引用発明、技術常識及び周知技術の認定は、前記第2の3(2)ア~エにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「自己位置を計算する測位計算部が内蔵され、人が携帯する受信機」及び「人が携帯するタブレット端末」について、「人が携帯する」という限定を省くとともに、「前記測位計算部で計算された前記人の自己位置」における「人の自己位置」について、「人の」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-006588