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特許拒絶査定不服審判

2022-005392

蒸発器及び冷凍機

審判番号
2022-005392
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-011798外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年04月11日
審決日
2023年03月20日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018- 11798「蒸発器及び冷凍機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 1日出願公開、特開2019-128139〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年 1月26日に出願された特願2018-011798号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和3年 7月30日付け:拒絶理由通知

同年 9月29日 :意見書、手続補正書の提出

同年12月27日付け:拒絶査定
令和4年 4月11日 :審判請求、手続補正書の提出
同年10月26日付け:拒絶理由通知
同年12月23日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明

本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
内部に液体の冷媒が貯留されるとともに、蒸発した冷媒を外部に排出する排出口を有するケーシングと、
外部からの液体の冷媒をケーシング内の空間の上部から供給する冷媒供給部と、
前記ケーシング内の空間の下部に前記液体の冷媒に浸漬するように設けられて、内部に被冷却液が流れる複数の第一伝熱管からなる第一伝熱管群と、
続きを表示(全15行)
前記ケーシング内の空間における前記冷媒供給部よりも下方、かつ、前記液体の冷媒の液面よりも上方に設けられて、内部に被冷却液が流れる複数の第二伝熱管からなる第二伝熱管群と、
前記第一伝熱管群と前記第二伝熱管群との間に設けられた複数の第三伝熱管からなる第三伝熱管群と、
を備え、
前記第一伝熱管は、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の全域に、等間隔となるように互いに間隔をあけて配置され、
前記第二伝熱管群は、
前記複数の第二伝熱管のうち、上部に配置されて外面に複数の針状のフィンを備えたフィン付き伝熱管と、
前記複数の第二伝熱管のうち、前記フィン付き伝熱管よりも下方に配置されたフィン無し伝熱管と、
を備え、
前記第三伝熱管群は、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の液面よりも上方に配置されて液膜式の蒸発器として機能する一方で、前記第二伝熱管群における未蒸発分の前記液体の冷媒が増加して、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の液面が上昇した場合に、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒に浸漬されように配置され、
前記第一伝熱管群と前記第三伝熱管とは、その外面側に沸騰伝熱面を備える
蒸発器。」

第3 当審による拒絶理由の概要

令和4年10月26日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載の示唆、及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

この出願の請求項2及び3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載の示唆、及び引用文献2に記載された事項、及び引用文献3及び引用文献4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2011-510250号公報
引用文献2:特開昭62-186179号公報
引用文献3:特開2000-230760号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平5-164431号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1について

(1)引用文献1に記載された事項について

当審による拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1には、「熱交換器」に関して、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付したものである。以下、同様。)。

ア 「【0017】
[0027]図5Aから図5Cは、「ハイブリッド流下膜式」蒸発器の形態とされた蒸発器の一例としての実施の形態を示す。図5Aから図5Cに示したように、蒸発器138は、胴体76の長さに沿って実質的に水平に伸びる管束78を形成する複数の管を有する実質的に円筒状の胴体76を含む。少なくとも1つの支持体116を胴体76内に配置して管束78内の複数の管を支えることができる。水、エチレン、エチレングリコール、又は塩化カルシウムブラインのような適当な流体は、管束78内の管を通って流れる。管束78の上方に配置された分配器80は、冷媒110を複数の位置から管束78内の管に分配し、適用し又は付加する。一例としての実施の形態において、分配器80により適用された冷媒は、完全に液体冷媒とすることができるが、別の一例としての実施の形態において、分配器80により適用された冷媒は、液体冷媒及び蒸気冷媒の双方を含むことができる。
【0018】
[0028]状態を変化させずに管束78の管の回りを流れる液体冷媒は、胴体76の下方部分に集まる。集まった液体冷媒は、液体冷媒82のプール又はリザーバを形成することができる。分配器80からの適用位置は、管束78に対する長手方向又は側方向位置の任意の組み合わせを含むことができる。別の一例としての実施の形態において、分配器80からの適用位置は、管束78の上方の管に適用する位置に限定されるものではない。分配器80は、冷媒の分散源により供給される複数のノズルを含むことができる。一例としての実施の形態において、分散源は、凝縮器34のような冷媒源を接続する管である。ノズルは、噴霧ノズルを含むが、冷媒を管の表面に案内し又は導くことのできる研削した開口部も含む。ノズルは、ジェットパターンのような所定のパターンにて冷媒を施し、管束78の上方列の管がカバーされるようにすることができる。管束78の管は、管の表面の回りにて冷媒が膜の形態にて流れるのを促進するよう配置することができ、液体冷媒は凝集して液滴を形成し、又は場合によっては、管の表面の底部にて液体冷媒のカーテン又はシートを形成する。形成されるシート状の物は、管の表面の濡れを促進し、このことは、管束78の管の内部を流れる流体と管束78の管の表面の回りを流れる冷媒との間の熱伝達効率を向上させる。
【0019】
[0029]液体冷媒82のプールにおいて、管束140は、浸漬し又は少なくとも部分的に浸漬し、冷媒とプロセス流体との間の追加的な熱エネルギの伝達を実現し、液体冷媒82のプールを蒸発させる。・・・一例としての実施の形態において、蒸発器138は、2パスシステムを組み込んでおり、冷却すべきプロセス流体は最初に管束140の管の内部を流れ、次に、管束140内の流れに対して反対方向に向けて管束78の管の内部を流れるように導かれる。2パスシステムの第二のパスにおいて、管束78内を流れる流体の温度は低下し、このため、プロセス流体の所望の温度を得るため、管束78の表面の上を流れる冷媒による熱伝達量は少なくてよい。
【0020】
[0030]第一のパスが管束140と関係付けられ、第二のパスが管束78と関係付けられた、2パスシステムについて説明したが、その他の配置とすることも考えられることを理解すべきである。例えば、蒸発器138は、プロセス流体が管束140及び管束78の双方を通って同一方向に流れる1パスシステムを組み込むことができる。・・・」
イ 「【0023】
[0033]・・・蒸気冷媒96は、開放端94から又は液体冷媒82のプールから流れるかどうかを問わず、上端88の近くにて壁92から通路100内に突き出す1対の伸長体98の上を流れる。蒸気冷媒96は、伸長体98の端部と胴体76との間の空間である、スロット102を通って通路100に入り、その後、出口104にて蒸発器138から出る。別の一例としての実施の形態において、蒸気冷媒96は、スロット102ではなく、伸長体98に形成された開口部又は孔を通って通路100に入ることができる。更に別の一例としての実施の形態において、スロット102は、フード86と胴体76との間の空間により形成することができる、すなわち、フード86は、伸長体98を含まない。」
ウ 「【0029】
[0039]別の一例としての実施の形態において、異なる管束の構造とすることが考えられる。例えば、管束の最上方の水平列又は最上方部分に沿って配置されたように、フィン付き管(図示せず)を管束内にて使用することができる。フィン付き管を使用する可能性と共に、「フラッド式」蒸発器におけるように、プールの沸騰目的のためより効率よく作動するように開発された管を採用することもできる。更に、又はフィン付き管と組み合わせて、多孔質の被覆をまた、管束の壁の外面に施すこともできる。」
エ 「【図5A】
[図:0001397821000001.jpg]
」
オ 「【図5B】
[図:0001397821000002.jpg]
」
カ 「【図5C】
[図:0001397821000003.jpg]
」
キ 「【図6A】
[図:0001397821000004.jpg]
」
ク 「【図6B】
[図:0001397821000005.jpg]
」
ケ 「【図6C】
[図:0001397821000006.jpg]
」

コ 上記カの図5Cから、分配器80は、胴体76内の空間の上部から冷媒を供給することが看取できる。

サ 上記カの図5Cから、管束78は、胴体76内の空間における分配器80よりも下方、かつ、液体冷媒82のプールの液面よりも上方に設けられることが看取できる。

シ 上記アの段落【0017】の「水、エチレン、エチレングリコール、又は塩化カルシウムブラインのような適当な流体」は、管束78内を通って流れるものであって、段落【0019】~【0020】の「プロセス流体」を指すことは明らかであるから、以下、「プロセス流体」と用語を統一する。

ス 上記カの図5Cから、管束140に含まれる管は、胴体76の下方部分にプールが形成された液体冷媒82の全域に、等間隔となるように互いに間隔をあけて配置されていると認められる。

(2)引用文献1に記載された発明について

上記(1)の摘記事項ア~ケ及び認定事項コ~スから、引用文献1には、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。

「内部に液体冷媒82のプールが形成されるとともに、蒸気冷媒96を外部に排出する出口104を有する胴体76と、
外部からの液体冷媒を胴体76内の空間の上部から供給する分配器80と、
前記胴体76内の下方部分に前記液体冷媒82に浸漬するように設けられて、内部にプロセス流体が流れる複数の管からなる管束140と、
前記胴体76内の空間における前記分配器80よりも下方、かつ、前記液体冷媒82のプールの液面よりも上方に設けられて、内部にプロセス流体が流れる複数の管からなる管束78と、
を備え、
前記管束140に含まれる管は、前記胴体76の下方部分にプールが形成された液体冷媒82の全域に、等間隔となるように互いに間隔をあけて配置され、
前記液体冷媒82のプールにおいて、管束140は、浸漬し又は少なくとも部分的に浸漬する、
蒸発器。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2に記載された事項について

当審による拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献2には、「滴下液分散用伝熱管」に関して、以下の記載がある。

ア 「吸収式冷凍機の吸収器及び蒸発器は、夫々密閉容器内に水平、あるいは垂直に多数の伝熱管を並列配置して構成されている。・・・また蒸発器の伝熱管は、管外側に冷媒、例えば水を滴下し、これを管内を流れる冷水により蒸発させて熱交換を行うようになっている。
従って、この種の伝熱管には伝熱性能と吸収能力の向上が要求される。そのためには伝熱管表面に滴下された液を管全面に薄い膜状に分散させることが大きなポイントとなる。このため、最近では外面に多数の微細な針状フィンを設けた構造の伝熱管を使用し、管外面での滴下された液の分散を向上させることが行なわれている。」(第1頁右下欄第2-18行)

イ 「本発明の要旨は、伝熱管としてその表面組織が微小な針状結晶からなる構造のものを用いたことにあり、これにより滴下された液の濡れ面積を飛躍的に増大させて吸収器及び蒸発器の伝熱性能並びに吸収能力を向上させることができるようにしたものである。」(第2頁左上欄第14-19行)

ウ 「
[図:0001397821000007.jpg]
」
エ 「
[図:0001397821000008.jpg]
」

したがって、上記ア~エの記載から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。

「流下膜式蒸発器の伝熱管表面に針状フィンを設けること。」(以下、「引用文献2記載事項」という。)

3 引用文献3~4に記載された事項と周知技術の認定

(1)引用文献3に記載された事項について

当審による拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献3には、「冷凍機」に関して、以下の記載がある。

ア 「【0046】ここで「満液式に特化した満液式チューブ13」とは、冷媒液12に浸漬した状態でこの冷媒液12をプール沸騰させる際に良好な沸騰伝熱特性を有するもので、例えば図2(a)に示すように、チューブ本体13aの表面に多数の窪み13bを形成した沸騰伝熱促進管と呼称されるチューブで好適に形成することができる。この沸騰伝熱促進管を用いた場合、その窪み13bに冷媒液12が入り込み、このように入り込んだ冷媒液12が集中的に冷水と熱交換して蒸発する。すなわち、蒸発部位を窪み13bの部分に限定することにより効率良く沸騰・蒸発を行なわせることができるようにしたものである。」

イ 「【0051】上述の如き本形態の蒸発器2においては、二つの流通路の満液式流通路A1,A2を通る冷水とこれらの満液式流通路A1,A2を浸漬する冷媒液12とが熱交換して冷媒液12を沸騰・蒸発させ、スプレー式流通路Bを通る冷水とスプレー14で噴霧してスプレー式流通路Bを形成する各スプレー式チューブ15の表面に付着させた膜冷媒とが熱交換して膜蒸発させる。すなわち、沸騰・蒸発と膜蒸発とによる冷媒液12の蒸発が生起される。ここで、当該冷凍機が部分負荷で運転されている場合、蒸発器2の冷媒液面が低下し満液式チューブ13のうち上部のものは冷媒液12の液面から露出し、冷媒液12で浸漬されない状態となる場合があるが、この場合でも露出した満液式チューブ13には上方から流下する冷媒液が付着し、スプレー式チューブ15におけるのと同様の膜蒸発による熱交換が行なわれ、このように露出した部分が当該熱交換に寄与しない無効部分となることはない。」

ウ 「【図1】
[図:0001397821000009.jpg]
」
エ 「【図2】
[図:0001397821000010.jpg]
」

(2)引用文献4に記載された事項について

当審による拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献4には、「満液式蒸発器」に関して、以下の記載がある。

ア 「【0010】しかして、以上の満液式蒸発器において、前記蒸発器本体1における液面aの下方側に配設される下部冷却管21として、図2のようにトンネル構造の沸騰伝熱面を有する沸騰伝熱管を用い、また、前記液面aの上部側に配設される上部冷却管22として、図3のようにトンネル構造をもたない主としてフィンテューブから成る伝熱管を用いるのである。
【0011】前記蒸発器本体1の液面下に配設する沸騰伝熱管から成る下部冷却管21は、図2で明らかにしたように、管21aの外周部に多数の開口部21bをもった多孔材21cを設けて、これら管21aと多孔材21cとの間にトンネル部21dを形成する。そして、以上の下部冷却管21を前記蒸発器本体1の液面下に配設することにより、前記トンネル部21d内へは液冷媒の引込みが充分に行われるのであって、該トンネル部21d内の液冷媒は前記管21a内を通過する被熱交換体との熱交換により低過熱度で沸騰して気泡核が捕獲され、前記開口部21bから成長した気泡が放出されるのである。従って、沸騰熱伝達が促進され蒸発効率が高められるのである。」
イ 「【図1】
[図:0001397821000011.jpg]
」
ウ 「【図2】
[図:0001397821000012.jpg]
」

(3)周知技術の認定

上記事項(1)~(2)に例示されるように、次の事項は周知技術(以下、「引用文献3~4に記載された周知技術」という。)であると認められる。

<引用文献3~4に記載された周知技術>

「満液式の蒸発器において、伝熱管の外面側に沸騰伝熱面を設けること。」

第5 対比

本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「液体冷媒82」、「蒸気冷媒96」、「出口104」、「胴体76」、「分配器80」、「プロセス流体」、「管束140」、「管束78」は、それぞれ本願発明の「液体の冷媒」、「蒸発した冷媒」、「排出口」、「ケーシング」、「冷媒供給部」、「被冷却液」、「第一伝熱管群」、「第二伝熱管群」に相当する。

そして、引用発明の「管束140」に含まれる「複数の管」は、本願発明の「複数の第一伝熱管」に相当し、同様に、引用発明の「管束78」に含まれる「複数の管」は、本願発明の「複数の第二伝熱管」に相当する。

また、引用発明において、「液体冷媒82のプールが形成される」ことは、液体冷媒が貯留される状態を意味し、同様に、「胴体76の下方部分にプールが形成」されることは、胴体76の下部に液体冷媒が貯留される状態を意味することが、当業者にとって自明である。

したがって、引用発明の「内部に液体冷媒82のプールが形成されるとともに、蒸気冷媒96を外部に排出する出口104を有する胴体76」は、本願発明の「内部に液体の冷媒が貯留されるとともに、蒸発した冷媒を外部に排出する排出口を有するケーシング」に相当し、同様に、引用発明の「外部からの液体冷媒を胴体76内の空間の上部から供給する分配器80」は、本願発明の「外部からの液体の冷媒をケーシング内の空間の上部から供給する冷媒供給部」に、引用発明の「前記胴体76内の下方部分に前記液体冷媒82に浸漬するように設けられて、内部にプロセス流体が流れる複数の管からなる管束140」は、本願発明の「前記ケーシング内の空間の下部に前記液体の冷媒に浸漬するように設けられて、内部に被冷却液が流れる複数の第一伝熱管からなる第一伝熱管群」に、引用発明の「前記胴体76内の空間における前記分配器80よりも下方、かつ、前記液体冷媒82のプールの液面よりも上方に設けられて、内部にプロセス流体が流れる複数の管からなる管束78」は、本願発明の「前記ケーシング内の空間における前記冷媒供給部よりも下方、かつ、前記液体の冷媒の液面よりも上方に設けられて、内部に被冷却液が流れる複数の第二伝熱管からなる第二伝熱管群」に、引用発明の「前記管束140に含まれる管は、前記胴体76の下方部分にプールが形成された液体冷媒82の全域に、等間隔となるように互いに間隔をあけて配置され」は、本願発明の「前記第一伝熱管は、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の全域に、等間隔となるように互いに間隔をあけて配置され」に、それぞれ相当する。

よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりであると認められる。

[一致点]

内部に液体の冷媒が貯留されるとともに、蒸発した冷媒を外部に排出する排出口を有するケーシングと、

外部からの液体の冷媒をケーシング内の空間の上部から供給する冷媒供給部と、

前記ケーシング内の空間の下部に前記液体の冷媒に浸漬するように設けられて、内部に被冷却液が流れる複数の第一伝熱管からなる第一伝熱管群と、

前記ケーシング内の空間における前記冷媒供給部よりも下方、かつ、前記液体の冷媒の液面よりも上方に設けられて、内部に被冷却液が流れる複数の第二伝熱管からなる第二伝熱管群と、

を備え、

前記第一伝熱管は、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の全域に、等間隔となるように互いに間隔をあけて配置された蒸発器。

[相違点1]

本願発明では、「前記第一伝熱管群と前記第二伝熱管群との間に設けられた複数の第三伝熱管からなる第三伝熱管群」を備え、当該「第三伝熱管群は、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の液面よりも上方に配置されて液膜式の蒸発器として機能する一方で、前記第二伝熱管群における未蒸発分の前記液体の冷媒が増加して、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒の液面が上昇した場合に、前記ケーシングの下部に貯留された前記液体の冷媒に浸漬されように配置され」るのに対し、引用発明では、そのような伝熱管群が特定されていない点。

[相違点2]

本願発明では、「第二伝熱管群」が「前記複数の第二伝熱管のうち、上部に配置されて外面に複数の針状のフィンを備えたフィン付き伝熱管」と「前記複数の第二伝熱管のうち、前記フィン付き伝熱管よりも下方に配置されたフィン無し伝熱管と」を備えるのに対して、引用発明では、「管束78」が、上述のような二種類の管で構成されているか不明である点。

[相違点3]

本願発明では、「前記第一伝熱管群と前記第三伝熱管とは、その外面側に沸騰伝熱面を備える」のに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

第6 判断

上記相違点について検討する。

1 相違点1について

引用発明は、「前記液体冷媒82のプールにおいて、管束140は、浸漬し又は少なくとも部分的に浸漬する」ものであるから、引用発明の「管束140」のうち、少なくとも最上列に配置された部分は、液体冷媒82のプールの液面よりも上方に配置されて液膜式の蒸発器として機能する一方で、管束78における未蒸発分の前記液体の冷媒が増加して、胴体76の下部に貯留された前記液体冷媒82のプールの液面が上昇した場合に、胴体76の下部に貯留された前記液体冷媒82に浸漬されるように配置されるものであるといえるから、本願発明の「第三伝熱管群」と同様の機能、作用を奏するものと認められ、実質的に差異はない。

したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

2 相違点2について

まず、引用文献2には、流下膜式蒸発器の伝熱管表面に針状フィンを設けることが記載されている(上記第4の2参照)。

次に、引用文献1では、段落【0018】において、「管束78の管は、管の表面の回りにて冷媒が膜の形態にて流れるのを促進するよう配置することができ、液体冷媒は凝集して液滴を形成し」と記載されており(上記第4の1(1)ア参照)、かつ引用文献1の図5Cにおいて、「管束78」の管の表面に特段フィンの形状が見受けられないことから(上記第4の1(1)カ参照)、引用文献1における「管束78」の管は、フィン無しのものが基本形態であると推認される。

さらに、引用文献1の段落【0029】には、「別の一例としての実施の形態において、異なる管束の構造とすることが考えられる。例えば、管束の最上方の水平列又は最上方部分に沿って配置されたように、フィン付き管(図示せず)を管束内にて使用することができる。」との記載がある(上記第4の1(1)ウ参照)。そして、当該記載は、「異なる管束の構造とする」との記載、及び上述のように、「管束78」の管は、フィン無しのものが基本形態であることを考慮すると、「管束78」の最上方の水平列に沿ってフィン付き管を配置し、それ以外の下方部分においては、フィン無し管を採用することを示唆していると解されるから、引用発明における「管束78」の最上方の水平列に沿う伝熱管をフィン付きにする動機付けがあるといえる。

してみると、引用発明における「管束78」の最上方の水平列に沿う伝熱管表面に、引用文献2に記載されたような針状フィンを設け、それ以外の下方部分においては、フィン無し管を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

3 相違点3について

満液式の蒸発器において、伝熱管の外面側に沸騰伝熱面を設けることは、例えば、引用文献3や引用文献4に記載されているように周知技術である(上記第4の3参照)。

そして、引用発明の「管束140」は、全域が液体冷媒に浸漬する場合もあることから、本願発明の「第一伝熱管群」に相当する部分に加えて、本願発明の「第三伝熱管群」に相当する最上列の部分(上記1参照)も含めて、「管束140」の全体に対して、上記周知技術を適用して、伝熱管の外面側に沸騰伝熱面が備わった構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

なお、この点について、令和4年12月23日提出の意見書の(3)において、出願人は、「つまり、本願請求項1に係る発明の第三伝熱管群のように、液面の変動により浸漬されたり浸漬されなかったりする伝熱管に沸騰伝熱面を設けるという技術思想は、引用文献1から4に記載も示唆もされていないと思料します。」と主張している。

しかしながら、引用文献3の段落【0051】には、「ここで、当該冷凍機が部分負荷で運転されている場合、蒸発器2の冷媒液面が低下し満液式チューブ13のうち上部のものは冷媒液12の液面から露出し、冷媒液12で浸漬されない状態となる場合がある」と記載されているから(上記第4の3(1)イ参照)、出願人の主張する上記技術思想は開示されているといえる。したがって、引用発明の「管束140」のように、最上列に配列された部分が液体冷媒82のプールの液面位置の変動に応じて、液体冷媒に浸漬したり、液面より上方に位置したりするものにおいても、外面側に沸騰伝熱面を設けるという周知技術を適用することに困難性はない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載の示唆、及び引用文献2記載事項、及び引用文献3~4に記載された周知技術に基いて当業者が容易なし得たものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載の示唆、及び引用文献2記載事項、及び引用文献3~4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-005392

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決72件(三菱重工サーマルシステムズ株式会社)
  • 2024-004320拒絶査定不服審判 / 2025-11-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)ターボ冷凍機
    同じ当事者: 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
  • 2024-005985拒絶査定不服審判 / 2025-10-15 / 請求不成立圧縮機
    同じ当事者: 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
  • 2024-009829拒絶査定不服審判 / 2025-10-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)車両用空気吹出装置
    同じ当事者: 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
  • 2024-003839拒絶査定不服審判 / 2025-09-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)空気調和機の室内機
    同じ当事者: 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
  • 2024-000789拒絶査定不服審判 / 2025-07-18 / 請求不成立ロータリ圧縮機
    同じ当事者: 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
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同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-013752拒絶査定不服審判 / 2026-07-15 / 請求不成立ヒートポンプ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-011277拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 請求不成立冷媒サイクルシステム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-007884拒絶査定不服審判 / 2026-01-07 / 請求不成立移送方法、冷凍方法、冷凍システム及び冷凍システム用ホース
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-007130拒絶査定不服審判 / 2025-11-26 / 請求不成立マルチカスケード冷却システム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-020426拒絶査定不服審判 / 2025-06-11 / 請求不成立空調装置
    共通の条文: 特許法29条2項
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同じ論点・分野の審決(審決分類)246件(121・F25B)
  • 2024-013752拒絶査定不服審判 / 2026-07-15 / 請求不成立ヒートポンプ
    共通の審決分類: 121・F25B
  • 2024-000308拒絶査定不服審判 / 2026-06-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)冷凍装置
    共通の審決分類: 121・F25B
  • 2024-017643拒絶査定不服審判 / 2026-06-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)極低温冷凍機および熱スイッチ
    共通の審決分類: 121・F25B
  • 2024-009129拒絶査定不服審判 / 2026-06-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)冷凍サイクル装置
    共通の審決分類: 121・F25B
  • 2024-002085拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)空気調和装置
    共通の審決分類: 121・F25B

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