特許拒絶査定不服審判
2024-007130
マルチカスケード冷却システム
- 審判番号
- 2024-007130
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-570750
- 請求日
- 2024年04月25日
- 審決日
- 2025年11月26日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エヌ.エー.エム.テクノロジー リミテッド
- 【請求人代理人】高岡 亮一
- 【請求人代理人】小田 直
- 【請求人代理人】岩堀 明代
- 【請求人代理人】三好 玲奈
- 【請求人代理人】高橋 香元
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .575-Z (F25B) / P18 .537-Z (F25B) / P18 .113-Z (F25B) / P18 .121-Z (F25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-570750「マルチカスケード冷却システム」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月26日国際公開、WO2019/244144、令和3年10月14日国内公表、特表2021-527794〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年6月19日(IL)イスラエル国)を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。
令和5年3月28日付け :拒絶理由通知
令和5年10月4日 :意見書・手続補正書の提出
令和5年12月21日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年4月25日 :拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
冷凍構成要素内を流れる冷媒を有するマルチカスケード冷却システムであって、
前記冷凍構成要素の構成要素から前記冷媒を受け取り、収着機によって提供される第1の流体でそれを冷却するように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器であって、前記吸着機が熱源として残留エネルギーを利用する、第1の熱交換器と、
前記少なくとも1つの第1の熱交換器から前記冷媒を受け取り、補助冷却器によって提供される第2の流体で前記冷媒の温度を調整するように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器と、を備え、
前記冷媒が、前記温度が調節される間に前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる、システム。」
なお、「前記吸着機」は「前記収着機」の誤記と認める。
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年10月4日に提出された手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
冷凍構成要素内を流れる冷媒を有するマルチカスケード冷却システムであって、
前記冷凍構成要素の構成要素から前記冷媒を受け取り、収着機によって提供される第1の流体でそれを冷却するように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器と、
前記少なくとも1つの第1の熱交換器から前記冷媒を受け取り、補助冷却器によって提供される第2の流体で前記冷媒の温度を調整するように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器と、を備え、
前記冷媒が、前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる、システム。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「収着機によって提供される第1の流体でそれを冷却するように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器」について、「前記吸着機が熱源として残留エネルギーを利用する」ことを直列的に付加して限定するとともに、「前記冷媒が」、「前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」ことについて、「前記温度が調節される間に」であることを直列的に付加して限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の有無について
「収着機によって提供される第1の流体でそれを冷却するように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器」が「前記吸着機が熱源として残留エネルギーを利用する」ことは、願書に最初に添付した明細書の段落【0042】の記載に基づくものと一応理解できる。
「前記冷媒が」、「前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」ことが、「前記温度が調節される間に」であることは、願書に最初に添付した明細書の段落【0028】ないし【0031】及び図1の記載に基づくものと一応理解できる。
この理解において、本件補正は、特許法第17条の2条第3項の規定に適合する。
(3)独立特許要件について
上記(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
本件補正発明は、「前記冷媒が、前記温度が調節される間に前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」との発明特定事項を備えている。ここで、「前記温度が調節される」とは、「補助冷却器によって提供される第2の流体で前記冷媒の温度を調整するように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器」との発明特定事項における「第2の流体で前記冷媒の温度を調整する」ことと解されるから、「前記温度が調節される間に」とは、「第2の流体で前記冷媒の温度を調整する」「間に」と解することができる。そうすると、「前記温度が調節される」という第2の熱交換器内での事象において、「前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」という第2の熱交換器外での事象が生じることがどのような事象であるか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかでないから、「前記冷媒が、前記温度が調節される間に前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」の技術的な意味内容が、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても不明確であるといわざるを得ない。
したがって、本件補正発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(4)独立特許要件についての予備的な検討
請求人は、審判請求書の「3.3-1.特許請求の範囲の補正の説明」において、「前記温度が調節される間に」なる記載を追加した補正は、明細書段落0030-0031、図1等の記載に基づく旨主張する。
そこで、当該主張を踏まえ、予備的に、本件補正発明の新規性及び進歩性について検討する。
ア 引用文献の記載事項等
原査定で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2003-75016号公報(以下「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。
(ア)「【0033】図1は、本発明に係る複合式冷房装置の一実施の形態を示す図面である。本冷房装置1は、圧縮式冷房システムA(以下、圧縮式システムAという)と、吸収式冷房システムB(以下、吸収式システムBという)と、吸収式冷房システムC(以下、吸収式システムCという)により構成されている。
【0034】圧縮式システムAは、駆動用原動機12、圧縮機11、凝縮器5、膨張弁9、蒸発器8を主要構成としている。このうち、蒸発器8は室内機として室内に設置されているが、その他の構成要素は室外機内に一体に搭載されている。各構成要素間は冷媒ラインL1乃至L5により接続されており、フロン冷媒(以下、冷媒Aという)が循環するように構成されている。圧縮式システムAは、この他にも四方弁、アキュムレーター等のヒートポンプシステムを構成する各種要素が含まれるが、図では省略してある。
【0035】原動機12は都市ガスを燃料とするガスエンジンであり、図示しない都市ガス供給ラインから燃料の天然ガスが供給される。エンジン冷却用ウオータージャケット13が設けられており、発生する冷却水廃熱が廃熱回収ラインL25、L26を介して後述する吸収式システムBの再生器16の熱源として回収されるように構成されている。また、排気経路15の途中には廃熱回収用熱交換器14が設けられており、エンジン駆動に伴い発生する排気廃熱が廃熱回収ラインL15、L16を介して後述する吸収式システムCの再生器20の熱源として回収されるように構成されている。」
(イ)「【0037】次に、吸収式システムBの構成について説明する。吸収式システムBは、水-臭化リチウム系単効用吸収式冷凍機であり、再生器16、凝縮器17、蒸発器6、吸収器18、溶液熱交換器25、溶液ポンプ19を主要構成要素としている。各構成要素間は、冷媒ラインL10乃至L12、溶液ラインL13、L14で接続されており、それぞれ冷媒(以下、冷媒Bという)又は臭化リチウム溶液が循環するように構成されている。蒸発器6には、圧縮式システムAの冷媒ラインL2が導かれ、圧縮式システムAの凝縮器5を出た冷媒Aと吸収式システムBの冷媒Bを、配管を介して熱交換させるように構成されている。
【0038】吸収式システムCも吸収式システムBと同様に、水-臭化リチウム系吸収式単効用冷凍機であり、再生器20、凝縮器21、蒸発器7、吸収器22、溶液熱交換器26、溶液ポンプ23を主要構成としている。各装置間は冷媒ラインL20乃至L22、溶液ラインL23、L24で接続されており、冷媒(以下、冷媒Cという)又は臭化リチウム溶液が循環するように構成されている。また、蒸発器7には圧縮式システムAの冷媒ラインL3が導かれ、吸収式システムBの蒸発器6を出た冷媒Aと吸収式システムCの冷媒Cを、配管を介して熱交換させるように構成されている。」
(ウ)「【0040】最初に圧縮式システムAの運転動作について説明する。圧縮機11で圧縮された高温高圧のガス冷媒Aは、冷媒ラインL1を経由して凝縮器5に導かれ、ここで外気と熱交換して冷却凝縮される。凝縮した液冷媒Aは、冷媒回路L2を経て吸収式システムBの蒸発器6に導かれる。ここで蒸発器6に供給される冷媒Bに管壁を介して熱を与え、自らは過冷却される。液冷媒Aはさらに冷媒ラインL3を経て吸収式システムCの蒸発器7に導かれる。ここで液冷媒Aは、蒸発器7に供給される冷媒Cに管壁を介して熱を与え、自らはさらに過冷却される。蒸発器7を出た液冷媒Aは、膨張弁9を通過する際に断熱膨張し低圧の液ガス並存状態となって蒸発器8に導かれる。冷媒Aは、蒸発器8において冷房対象である室内空気から熱を奪って自らは蒸発し、低圧冷媒ガスとなって冷媒ラインL5を経由して圧縮機11に戻る。」
(エ)「【0052】凝縮器5出口(P3)における冷媒Aの温度は、外気温度条件から約50℃である。上述のように蒸発器6における冷媒Bの蒸発温度は約30℃であるから、蒸発器6出口(P4)における冷媒Aは35℃以下に過冷却される。さらに、蒸発器7における冷媒Cの蒸発温度は約10℃であるから、蒸発器7出口(P5)における冷媒Aは20℃以下に過冷却される。」
(オ)「【図1】
[図:0001434628000001.jpg]
」
上記から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明〕
「圧縮式システムAと、吸収式システムBと、吸収式システムCにより構成され、前記圧縮式システムAは、駆動用原動機12、圧縮機11、凝縮器5、膨張弁9、蒸発器8を主要構成とし、各構成要素間は冷媒ラインにより接続されて冷媒Aが循環するように構成された複合式冷暖房装置1であって、
前記凝縮器5を出た前記冷媒Aと前記吸収式システムBの冷媒Bを熱交換させ、冷媒Aを過冷却する蒸発器6であって、前記吸収式システムBが熱源として前記駆動用原動機12の冷却水廃熱を利用する、蒸発器6と、
前記蒸発器6を出た前記冷媒Aと前記吸収式システムCの冷媒Cを熱交換させ、冷媒Aをさらに過冷却する蒸発器7と、を備え、
前記冷媒Aが、前記蒸発器7から前記膨張弁9に流れる、
複合式冷暖房装置1。」
イ 当審の判断
(ア)対比
引用発明の「圧縮式システムA」の「圧縮機11、凝縮器5、膨張弁9、蒸発器8」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件補正発明の「冷凍構成要素」に相当し、同様に「冷媒A」は「冷媒」に相当する。
引用発明の「各構成要素間は冷媒ラインにより接続されて冷媒Aが循環する」ことは、「各構成要素」内に冷媒Aが流れることが技術的に明らかだから、本件補正発明の「冷凍構成要素内を流れる冷媒を有する」ことに相当する。
引用発明の「圧縮式システムAと、吸収式システムBと、吸収式システムC」は、図1を参照すると、「圧縮式システムA」と「吸収式システムB」とがカスケード構造となっており、「圧縮式システムA」と「吸収式システムC」とがカスケード構造となっているから、マルチカスケード式の冷却システムを構成しているといえる。
そうすると、引用発明の「圧縮式システムAと、吸収式システムBと、吸収式システムCにより構成され、前記圧縮式システムAは、駆動用原動機12、圧縮機11、凝縮器5、膨張弁9、蒸発器8を主要構成とし、各構成要素間は冷媒ラインにより接続されて冷媒Aが循環するように構成された複合式冷暖房装置1」は、本件補正発明における「冷凍構成要素内を流れる冷媒を有するマルチカスケード冷却システム」に相当する。
引用発明の「前記凝縮器5」は、本件補正発明の「前記冷凍構成要素の構成要素」に相当し、以下同様に、「冷媒B」は「第1の流体」に、「過冷却」は「冷却」に、それぞれ相当する。
本件補正発明の「収着機」について、本件明細書の段落【0042】の記載を参酌すると「吸収機」または「吸着機」のいずれかを利用することができるとあるから、引用発明の「吸収式システムB」は、本件補正発明の「収着機」に相当する。
また、引用発明の「駆動用原動機12の冷却水廃熱」は、「廃熱」であるから、本件補正発明の「残留エネルギー」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記凝縮器5を出た前記冷媒Aと前記吸収式システムBの冷媒Bを熱交換させ、冷媒Aを過冷却する蒸発器6であって、前記吸収式システムBが熱源として前記駆動用原動機12の冷却水廃熱を利用する、蒸発器6」は、本件補正発明の「前記冷凍構成要素の構成要素から前記冷媒を受け取り、収着機によって提供される第1の流体でそれを冷却するように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器であって、前記吸着機が熱源として残留エネルギーを利用する、第1の熱交換器」に相当する。
引用発明の「吸収式システムC」と、本件補正発明の「補助冷却器」とは「冷却器」という限りにおいて一致している。引用発明の「冷媒C」は、本件補正発明の「第2の流体」に相当する。そうすると、引用発明の「前記蒸発器6を出た前記冷媒Aと前記吸収式システムCの冷媒Cを熱交換させ、冷媒Aをさらに過冷却する蒸発器7」と、本件補正発明の「前記少なくとも1つの第1の熱交換器から前記冷媒を受け取り、補助冷却器によって提供される第2の流体で前記冷媒の温度を調整するように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器」とは、「前記少なくとも1つの第1の熱交換器から前記冷媒を受け取り、冷却器によって提供される第2の流体と前記冷媒を熱交換させる少なくとも1つの第2の熱交換器」という限りにおいて一致している。
引用発明の「前記膨張弁9」は、本件補正発明の「前記冷凍構成要素の別の構成要素」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記冷媒Aが、前記蒸発器7から前記膨張弁9に流れる」ことと、本件補正発明の「前記冷媒が、前記温度が調節される間に前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」こととは、「前記冷媒が、前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」ことという限りにおいて一致している。
引用発明の「複合式冷暖房装置1」は、本件補正発明の「システム」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「冷凍構成要素内を流れる冷媒を有するマルチカスケード冷却システムであって、
前記冷凍構成要素の構成要素から前記冷媒を受け取り、収着機によって提供される第1の流体でそれを冷却するように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器であって、前記吸着機が熱源として残留エネルギーを利用する、第1の熱交換器と、
前記少なくとも1つの第1の熱交換器から前記冷媒を受け取り、冷却器によって提供される第2の流体と熱交換させる少なくとも1つの第2の熱交換器と、を備え、
前記冷媒が、前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる、システム。」
〔相違点1〕
「冷却器によって提供される第2の流体と熱交換させる少なくとも1つの第2の熱交換器」に関して、本件補正発明は「補助冷却器」によって提供される第2の流体で「前記冷媒の温度を調整する」ように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器であるのに対して、引用発明は、前記蒸発器6を出た前記冷媒Aと前記吸収式システムCの冷媒Cを熱交換させる蒸発器7である点。
〔相違点2〕
「前記冷媒が、前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」ことに関して、本件補正発明は、前記冷媒が、「前記温度が調節される間に」前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れるのに対して、引用発明は、前記冷媒Aが、前記蒸発器7から前記膨張弁9に流れる点。
(イ)相違点についての検討
相違点1について検討する。
引用文献1の段落【0040】には「液冷媒Aはさらに冷媒ラインL3を経て吸収式システムCの蒸発器7に導かれる。ここで液冷媒Aは、蒸発器7に供給される冷媒Cに管壁を介して熱を与え、自らはさらに過冷却される」(上記ア(ウ)参照。)と記載され、段落【0052】には「蒸発器6出口(P4)における冷媒Aは35℃以下に過冷却される。さらに、蒸発器7における冷媒Cの蒸発温度は約10℃であるから、蒸発器7出口(P5)における冷媒Aは20℃以下に過冷却される。」(上記ア(エ)参照。)と記載されている。すなわち、吸収式システムCの蒸発器7においては、(吸収式システムBの)蒸発器6において35℃以下に過冷却された冷媒Aが、さらに、20℃以下に過冷却されるのであるから、吸収式システムCの蒸発器7は、吸収式システムBの蒸発器6による冷媒Aの冷却を補って、さらに所望の温度まで冷却しているといえる。そうすると、引用発明の「吸収式システムC」は「補助冷却器」ということができ、引用発明の「蒸発器7」は「冷媒の温度を調整するように構成され」ているということができる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。
相違点2について検討する。
上記相違点1についての検討で述べたとおり、引用発明の「蒸発器7」は、本件補正発明の「冷媒の温度を調整するように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器」に相当にする。
そして、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項における「前記温度が調節される間に」とは、本件明細書の段落【0029】に記載される「補助熱交換器104」、「最後の膨張弁105」の順に冷却剤冷媒が流れるものも包含されていると理解できる。そして、この理解を元に更に検討を進めると、引用発明の「前記冷媒Aが、前記蒸発器7から前記膨張弁9に流れる」ことは、蒸発器7、膨張弁9の順に冷媒Aが流れることであるから、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項と実質的に同じである。
したがって、相違点2も、実質的な相違点ではない。
(ウ)まとめ
以上によれば、本件補正発明は引用発明である。
仮に、本件補正発明と引用発明との間に相違点があるとしても、当該相違点は、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
したがって、本件補正発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、本件補正発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(エ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3.3-2.特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項に基づく拒絶理由について」において、以下の主張をしている。
「引用文献1には、駆動用原動機12を備える圧縮式システムAが開示されている。圧縮式システムAの2つの熱交換器(蒸発器6、蒸発器7)は、廃熱回収ラインL15およびL25を介して吸収式システムBおよびCと熱交換している。すなわち、主回路である圧縮式システムAの圧縮機11を作動させる原動機12からの熱を回収するものであり、熱源がシステム内部に含まれるものである。
本審判請求人は、引用文献1に記載の発明と本願発明をより明確に区別するために上記の通り特許請求の範囲の補正を行った。
本願発明において、最初のカスケードを形成する熱交換器に接続されるエネルギー源は、ガスエンジン(原動機)等のエンジンではなく、吸着機外からの残留エネルギー(廃熱)である。廃熱からのエネルギーは、産業において通常無駄になっているエネルギーである。冷却に使用される廃熱は、本来排出されるものであり、当業者であってもこれを利用する動機はないものと思料する。
また、引用文献1に記載の蒸発器6、7と本願発明に係る熱交換器は異なるものである。引用文献1の構成における蒸発器は、相移転が起こる蒸発器である一方、本願発明に係る熱交換器は、吸着機を利用するものであり、残留エネルギーを利用して冷媒の冷却を補助するためにのみ使用される。
さらに、引用文献1において、冷媒の温度を調節する補助冷却器の構成については開示も示唆もされていないと思料する。
従って、補正後の請求項に係る発明は、引用文献1に記載されたものでなく、引用文献1-6の記載から当業者が容易に想到できたものではないと思料する。」
当該主張について検討する。
「本願発明において、最初のカスケードを形成する熱交換器に接続されるエネルギー源は、ガスエンジン(原動機)等のエンジンではなく、吸着機外からの残留エネルギー(廃熱)である。」という主張について、引用発明も、吸収式システムBの熱源である駆動用原動機12の冷却水廃熱は、吸収式システムB(吸着機)外からの残留エネルギー(廃熱)である。そして、エネルギー源が、ガスエンジン(原動機)等のエンジンではないことは、本件補正発明において特定されておらず、特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
また、「引用文献1の構成における蒸発器は、相移転が起こる蒸発器である一方、本願発明に係る熱交換器は、吸着機を利用するものであり、残留エネルギーを利用して冷媒の冷却を補助するためにのみ使用される。」という主張について、引用発明も、蒸発器6は、吸収式システムB(吸着機)を利用するものであり、冷却水廃熱(残留エネルギー)を利用して、圧縮式システムAの凝縮器5による冷媒を過冷却(冷却を補助)するためにのみ使用される。そして、相移転が起こるか否かについては、本件補正発明において特定されておらず、特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
さらに、「引用文献1において、冷媒の温度を調節する補助冷却器の構成については開示も示唆もされていないと思料する。」という主張について、上記(イ)の相違点1についての検討で述べたとおり、引用発明の「吸収式システムC」は「補助冷却器」ということができる。
よって、請求人の主張をいずれも採用できない。
(5)補正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、令和5年10月4日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(2)に記載のとおりのものである。
第4 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、当該発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1 特開2003-75016号公報
第5 引用文献、引用発明
引用文献1の記載事項、認定事項及び引用発明は、上記第2の2(4)アに記載したとおりである。
第6 対比・判断
本願発明は、上記第2の2(1)の本件補正発明から、「第1の熱交換器」について「前記吸着機が熱源として残留エネルギーを利用する」との発明特定事項を削除し、「前記冷媒が、前記少なくとも1つの第2の熱交換器から前記冷凍構成要素の別の構成要素に流れる」ことについて「前記温度が調節される間に」との発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本件補正発明が、引用発明であり、または、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと判断されるのだから、本願発明も、本件補正発明と同様の理由により、引用発明である。または、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-007130