特許拒絶査定不服審判
2024-011277
冷媒サイクルシステム
- 審判番号
- 2024-011277
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-109592
- 請求日
- 2024年07月08日
- 審決日
- 2026年05月25日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P18 .536-WZ (F25B) / P18 .537-WZ (F25B) / P18 .121-WZ (F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-109592「冷媒サイクルシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和2年12月17日出願公開、特開2020-201011〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年6月12日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和5年 4月28日付け:拒絶理由通知書
令和5年 7月10日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年10月 3日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月25日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 4月 5日付け:拒絶査定
令和6年 7月 8日 :審判請求書の提出
令和7年 7月 9日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書による拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和7年 9月11日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~19に係る発明は、請求項1を除き、令和7年9月11日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項2~19に記載された事項により特定されるものと認められる。また、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載にある誤記を正して、次のとおり認定した。
「【請求項1】
第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式の一次側サイクル(20)と、
第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式の二次側サイクル(40)と、
前記第1冷媒と前記第2冷媒との間で熱交換を行わせるカスケード熱交換器(35)と、
を備え、
前記一次側サイクルは、前記第1冷媒に冷熱又は温熱を与えるための熱源熱交換器(13)と、前記カスケード熱交換器及び前記熱源熱交換器を連絡する一次側連絡配管(21、22)と、を有し、
前記二次側サイクルは、前記第2冷媒が前記カスケード熱交換器から得る前記冷熱又は前記温熱を利用するための利用熱交換器(51)と、前記カスケード熱交換器及び前記利用熱交換器を連絡する二次側連絡配管(41、42)と、を有し、
前記一次側連絡配管は、一次側ガス連絡配管(22)及び一次側液連絡配管(21)を有し、
前記二次側連絡配管は、二次側ガス連絡配管(42)及び二次側液連絡配管(41)を有し、
前記第1冷媒と前記第2冷媒は同一の冷媒であり、
前記一次側ガス連絡配管の管径よりも前記二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、前記一次側液連絡配管の管径よりも前記二次側液連絡配管の管径の方が小さく、
前記二次側ガス連絡配管の前記管径が19.1mm(3/4インチ)以下であるか、又は、前記二次側液連絡配管の前記管径が15.9mm(5/8インチ)である、
冷媒サイクルシステム。」
ここで、補正後の請求項1に記載された「一次側ガス連絡配管及(22)び」は、明らかな誤記であるため、上記のとおり、「一次側ガス連絡配管(22)及び」と認定した。
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
理由1.(サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2.(委任省令要件)本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3.(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(サポート要件)について
請求項1ないし19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
●理由2(委任省令要件)について
発明の詳細な説明の記載は、請求項1ないし19に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。
●理由3(進歩性)について
・請求項1に係る発明に対して:引用文献1ないし4及び6ないし8
・請求項2ないし19に係る発明に対して:引用文献1ないし8
<引用文献等一覧>
1.特開昭61-46859号公報
2.特開2006-125762号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2008-209105号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2009-126300号公報(周知技術を示す文献)
5.国際公開第2013/146103号(周知技術を示す文献)
6.国際公開第2018/096580号(周知技術を示す文献)
7.特開2016-48125号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2014-145500号公報(周知技術を示す文献)
第4 理由1(サポート要件)についての判断
1 規範
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、この規範に則して検討する。
2 発明の詳細な説明に記載された事項
発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カスケード熱交換器を有しない単元冷媒サイクルと比較して、二元冷媒サイクルの二次側サイクルにおいては、冷媒の流速が遅くなる傾向にある。この場合、圧縮機から流出した冷凍機油が再び圧縮機に戻りにくくなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る冷媒サイクルシステムは、第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式の一次側サイクルと、第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式の二次側サイクルと、第1冷媒と第2冷媒との間で熱交換を行わせるカスケード熱交換器と、を備える。一次側サイクルは、第1冷媒に冷熱又は温熱を与えるための熱源熱交換器と、カスケード熱交換器及び熱源熱交換器を連絡する一次側連絡配管と、を有する。二次側サイクルは、第2冷媒がカスケード熱交換器から得る冷熱又は温熱を利用するための利用熱交換器と、カスケード熱交換器及び利用熱交換器を連絡する二次側連絡配管と、を有する。一次側連絡配管は、一次側ガス連絡配管及び一次側液連絡配管を有する。二次側連絡配管は、二次側ガス連絡配管及び二次側液連絡配管を有する。一次側ガス連絡配管の管径よりも二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、一次側液連絡配管の管径よりも二次側液連絡配管の管径の方が小さい。
【0005】
この構成によれば、一次側サイクルにおける連絡配管の管径よりも、二次側サイクルにおける連絡配管の管径の方が小さい。したがって、二次側サイクルにおいて冷媒の流速を速めることができるので、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる。」
「【0073】
・・・
(5)特徴
(5-1)
一次側サイクル20における連絡配管の管径よりも、二次側サイクル40における連絡配管の管径の方が小さい。したがって、二次側サイクルにおいて冷媒の流速を速めることができるので、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる。」
3 発明の詳細な説明の記載から把握できる発明が解決しようとする課題
上記発明の詳細な説明の記載によれば、発明が解決しようとする課題は、二元冷媒サイクルの二次側サイクルにおいて、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りにくくなるため、冷凍機油を圧縮機に戻りやすくすることと理解できる。
4 発明の詳細な説明の記載から把握できる課題解決手段
上記発明の詳細な説明の記載及び技術常識(冷凍機油は冷媒に含有されて冷媒配管を流れること)によれば、課題解決手段は、一応、一次側サイクルにおける連絡配管の管径よりも、二次側サイクルにおける連絡配管の管径を小さくして、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる程度に、第2冷媒に含有される冷凍機油の流速(以下、単に「冷凍機油の流速」という。)を速めることが記載されている。
5 本願発明が発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものか否かについて
本願発明は
「前記一次側ガス連絡配管の管径よりも前記二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、前記一次側液連絡配管の管径よりも前記二次側液連絡配管の管径の方が小さく、
前記二次側ガス連絡配管の前記管径が19.1mm(3/4インチ)以下であるか、又は、前記二次側液連絡配管の前記管径が15.9mm(5/8インチ)である、」
との発明特定事項を有する。
しかしながら、当該発明特定事項は、一次側サイクルの連絡配管の管径との比較において、二次側サイクルの連絡配管の管径を小さくするというものであるから、例えば、二次側連絡配管の管径はそのままで、他の条件を変えずに、一次側連絡配管の管径を大きくした態様も当該発明特定事項に含まれる。
ここで、配管内を流れる冷凍機油の流速は、圧縮機の吐出流量と、配管の断面積から求まることが技術常識であるところ、たとえ一次側連絡配管の管径を変化させても、二次側サイクルの圧縮機からの冷凍機油の吐出流量と、二次側サイクルの連絡配管の断面積を変えなければ、二次側サイクルを流れる冷凍機油の流速は変化しないと理解される。
また、一次側サイクルと二次側サイクルとは独立していて、各サイクルを流れる冷凍機油の流速も独立しているから、一次側サイクルの連絡配管の管径の大きさが、二次側サイクルを流れる冷凍機油の流速には影響を与えることはないと理解される。
さらに、発明の詳細な説明には、一次側連絡配管の管径と二次側連絡配管との大小関係、及び、後者の寸法を特定することによって、冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる程度に、冷凍機油の流速が速まったことを裏付ける実験結果も示されていない。
つまり、一次側サイクルの連絡配管の管径との比較において、二次側サイクルの連絡配管の管径が小さい場合であっても、両サイクルの配管の管径が等しい又は二次側の管径が大きい態様(上記3及び4によれば、当該態様が従来技術に該当すると理解される。)と比較して、二次側サイクルにおいて、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる程度に、冷凍機油の流速を速めることはできるとは必ずしもいえない。
よって、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が、「一次側ガス連絡配管の管径よりも二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、一次側液連絡配管の管径よりも二次側液連絡配管の管径の方が小さく、二次側ガス連絡配管の管径が19.1mm(3/4インチ)以下であるか、又は、二次側液連絡配管の前記管径が15.9mm(5/8インチ)である」ことで、冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる程度に、冷凍機油の流速が速まると理解し得るものとはいえない。
そうすると、当該発明特定事項には、二次側サイクルにおいて、連絡配管の管径を小さくして、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる程度に、冷凍機油の流速を速めるための構成が反映されているとはいえない。
したがって、本願発明は、課題を解決できないものを含むから、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものである。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第5 理由2(委任省令要件)についての判断
本願発明は
「前記一次側ガス連絡配管の管径よりも前記二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、前記一次側液連絡配管の管径よりも前記二次側液連絡配管の管径の方が小さく、
前記二次側ガス連絡配管の前記管径が19.1mm(3/4インチ)以下であるか、又は、前記二次側液連絡配管の前記管径が15.9mm(5/8インチ)である、」
との発明特定事項を備えている。
しかしながら、発明の詳細な説明は、次のとおり、当業者が、本願発明について、発明が解決しようとする課題(上記第4の3)及びその解決手段(上記第4の4)との関係を理解できるように記載されているとはいえない。
まず、配管内を流れる冷凍機油の流速は、圧縮機の吐出流量と、配管の断面積から求まることが技術常識(上記第4の5)であって、たとえ配管の管径を特定したとしても、圧縮機の吐出流量について何ら特定しなければ、配管内を流れる冷凍機油の流速は特定できない。そして、上記解決手段には、二次側サイクルの圧縮機の吐出流量が特定されていないから、二次側の連絡配管内を流れる冷凍機油の流速は一義的に定まらず、よって、上記課題との関係も不明である。
また、上記解決手段には、一次側サイクルと二次側サイクルにおける連絡配管の管径の大小関係が特定されているところ、一次側サイクルと二次側サイクルとは独立していて、各サイクルを流れる冷凍機油の流速も独立しているから、かかる大小関係を特定することにより、二次側サイクルを流れる冷凍機油の流速が一義的に定まることはない。かかる点からも、上記解決手段は、上記課題との関係が不明なものである。
そして、発明の詳細な説明には、上述した点に関して、上記課題と上記解決手段との関係につき、当業者の理解に資する記載はない。例えば、本願発明の作用機序についての記載はなく、また、本願発明の作用効果を裏付ける実験結果も示されていない。
よって、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「一次側ガス連絡配管の管径よりも二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、一次側液連絡配管の管径よりも二次側液連絡配管の管径の方が小さく、二次側ガス連絡配管の前記管径が19.1mm(3/4インチ)以下であるか、又は、前記二次側液連絡配管の前記管径が15.9mm(5/8インチ)である」ことと、圧縮機から流出した冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる程度に、冷凍機油の流速が速まることとの関係を当業者が理解できるとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明に関して、発明が解決しようとする課題及びその解決手段との関係において、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、本願発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。
第6 理由3(進歩性)についての判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明等
(1)引用文献1
当審拒絶理由において引用された特開昭61-46859号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。以下同様。)。
ア 「第2図は従来の二元冷凍装置のサイクル系統図を示している。この二元冷凍装置は、高温側圧縮機1、凝縮器2、キャピラリチューブ3、カスケードコンデンサ4およびこれら機器を接続する配管よりなる高温側冷凍サイクルと、低温側圧縮機5、油分離器6、前記カスケードコンデンサ4、キャピラリチューブ7、蒸発器8、アキュムレータ9およびこれら機器を接続する配管よりなる低温側冷凍サイクルとを組合わせた構成となっている。
この二元冷凍装置の作用を説明すると、高温側冷凍サイクルでは、高温側圧縮機1より吐出する冷媒は凝縮器2で液化し、キャピラリチューブ3で減圧された後、カスケードコンデンサ4で蒸発交換し、再び高温側圧縮機1に戻るというサイクルを繰り返す。
一方、低温側冷凍サイクルでは、低温側圧縮機5より吐出する冷媒は油分離器6で油を分離された後、カスケードコンデンサ4で凝縮液化し、キャビラリチューブ7で減圧され、蒸発器8で被冷却物と熱交換して蒸発し、アキュムレータ9を通って再び低温側圧縮機5に戻るというサイクルを繰り返す。
ところで、前述した二元冷凍装置においては、一般に蒸発器8での冷媒の蒸発温度が-50℃~-90°Cにもなり、冷凍機油の戻りが困難となるため、図示のように低温側圧縮機5の吐出側に油分離器6を取付けて低圧側に冷凍機油が流人しないようにしている。しかし、たとえ油分離器6を設けても100%油分離を行うことは難しく、一部の油が低圧側に流入してしまう。そして低圧側へ流入した油は分離して、特に高分子成分の油が低温のために固化したり、ゲル状になって、キャピラリチューブ7、蒸発器8やアキュムレータ9に詰まり易い。その結果、冷凍サイクルは閉塞され、運転不能となることがある。」(1ページ右下欄2行ないし2ぺージ左上欄17行)
イ 「
[図:0001437773000001.jpg]
」(第2図)
ウ 上記アの「高温側冷凍サイクルでは、高温側圧縮機1より吐出する冷媒は凝縮器2で液化し、キャピラリチューブ3で減圧された後、カスケードコンデンサ4で蒸発交換し、再び高温側圧縮機1に戻る」との記載から、高温側冷凍サイクルは第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式であるといえる。
エ 上記アの「低温側冷凍サイクルでは、低温側圧縮機5より吐出する冷媒は油分離器6で油を分離された後、カスケードコンデンサ4で凝縮液化し、キャビラリチューブ7で減圧され、蒸発器8で被冷却物と熱交換して蒸発し、アキュムレータ9を通って再び低温側圧縮機5に戻る」との記載から、低温側冷凍サイクルは第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式であるといえる。
オ 上記アの「高温側冷凍サイクルでは、高温側圧縮機1より吐出する冷媒は凝縮器2で液化し、キャピラリチューブ3で減圧された後、カスケードコンデンサ4で蒸発交換し」及び「低温側冷凍サイクルでは、低温側圧縮機5より吐出する冷媒は油分離器6で油を分離された後、カスケードコンデンサ4で凝縮液化し」との記載並びに第2図の図示事項から、カスケードコンデンサ4は第1冷媒と第2冷媒との間で熱交換を行わせるものであるといえる。
カ 上記アの「高温側冷凍サイクルでは、高温側圧縮機1より吐出する冷媒は凝縮器2で液化し、キャピラリチューブ3で減圧された後、カスケードコンデンサ4で蒸発交換し、再び高温側圧縮機1に戻る」との記載及び第2図の図示事項から、カスケードコンデンサ4及び凝縮器2を接続する配管は、液の配管(凝縮器2からキャピラリチューブ3を経てカスケードコンデンサ4に至る配管)及びガスの配管(カスケードコンデンサ4から高温側圧縮機1を経て凝縮器2へ至る配管)を有するといえる。
キ 上記アの「低温側冷凍サイクルでは、低温側圧縮機5より吐出する冷媒は油分離器6で油を分離された後、カスケードコンデンサ4で凝縮液化し、キャビラリチューブ7で減圧され、蒸発器8で被冷却物と熱交換して蒸発し、アキュムレータ9を通って再び低温側圧縮機5に戻る」との記載及び第2図の図示事項から、カスケードコンデンサ及び蒸発器8を接続する配管は、液の配管(カスケードコンデンサ4からキャピラリチューブ7を経て蒸発器8に至る配管)及びガスの配管(蒸発器8から低温側圧縮機5を経てカスケードコンデンサ4へ至る配管)を有するといえる。
以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明〕
「第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式の高温側冷凍サイクルと、
第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式の低温側冷凍サイクルと、
前記第1冷媒と前記第2冷媒との間で熱交換を行わせるカスケードコンデンサ4と、
を備え、
前記高温側冷凍サイクルは、凝縮器2と、前記カスケードコンデンサ4及び前記凝縮器2を接続する配管と、を有し、
前記低温側冷凍サイクルは、蒸発器8と、前記カスケードコンデンサ4及び前記蒸発器8を接続する配管と、を有し、
前記カスケードコンデンサ4及び前記凝縮器2を接続する配管は、ガスの配管及び液の配管を有し、
前記カスケードコンデンサ4及び前記蒸発器8を接続する配管は、ガスの配管及び液の配管を有する、
二元冷凍装置。」
(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「【0065】
ガス冷媒の圧力損失となる室内熱交換器40をバイパスさせ、高圧ガス分岐管5cと室内側低圧ガス管7cとを接続することとしたので、高い流速でガス冷媒を流すことができ、効果的に油戻しを行うことができる。特に、冷媒としてR410Aを用いた場合、圧力損失が少ないので、従来と同等の圧力損失を許容するとすれば配管径を小さくすることができる。これにより、ガス冷媒の流速をさらに上げることでき、より効率的に油回収を行うことができる。」
上記から、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献2記載事項〕
「配管径を小さくすることにより、ガス冷媒の流速を上げ、効率的に油回収を行うこと。」
(3)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「【0042】
また、ガス側連絡配管(4)の配管径が大きいと、その配管内の冷媒流速が低くなり、必要な冷媒流速を確保しにくくなる。逆に、ガス側連絡配管(4)の配管径が小さいと、その配管内の冷媒流速が高くなり、必要以上の冷媒流速となる。本実施形態では、配管径が大きいと第3運転モードが選択され、圧縮機(11)の最低運転容量が比較的高くなるため、配管内の冷媒流速を高めることができ、必要な冷媒流速を適切に確保することができる。また、配管径が小さいと第2運転モードが選択され、圧縮機(11)の最低運転容量がそれほど高くならないため、配管内の冷媒流速が過剰になるのを防止でき、必要な冷媒流速を適切に確保することができる。」
イ 「【0044】
さらに、油戻し運転が不要な運転モードとして、圧縮機(11)の最低運転容量が異なる2種類(第2運転モードおよび第3運転モード)のものを選択可能に備えるようにした。したがって、冷媒回路(10)の配管径の大小によって配管内の必要冷媒流速を適切に確保することができる。これにより、配管内の冷凍機油の残留を確実に防止することができる。
【0045】
また、ガス側連絡配管(4)を基準に必要冷媒流速を設定するようにしたので、必要最低限の冷媒流速を確実に確保することができる。したがって、配管内の冷凍機油の残留を確実に防止でき、一層油戻し運転が不要になる。つまり、冷媒回路(10)において、ガス側連絡配管(4)や液側連絡配管(5)は他の箇所よりも比較的長さが長いため、冷凍機油が残留しやすい。また、ガス側連絡配管(4)は、ガス冷媒が流れることから、液冷媒が流れる液側連絡配管(5)に比べて、流体力が小さく冷凍機油が残留しやすい。このように、冷凍機油が残留しやすいガス側連絡配管(4)を基準にすることにより、必要最低限の冷媒流速を設定することができる。」
上記から、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献3記載事項〕
「配管径が小さいと、その配管内の冷媒流速が高くなり、配管径の大小によって配管内の必要冷媒流速を適切に確保して、配管内の冷凍機油の残留を確実に防止すること。」
(4)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア 「【0004】
近年では、後席側の低圧冷媒配管に潤滑オイルが溜まってしまうのをより確実に防ぐために、後席側低圧冷媒配管の管径が全体に亘って比較的小さく設定される場合がある。これにより、低圧冷媒配管内での冷媒の流速が高まるため、潤滑オイルは冷媒と共に圧縮機側に戻り易くなる。」
上記から、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献4記載事項〕
「冷媒配管の管径を小さく設定することにより、冷媒の流速が高まるため、潤滑オイルは冷媒と共に圧縮機側に戻り易くなること。」
(5)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
ア 「[0031] 図2に示すように、本実施例では、冷媒R32を使用した冷凍サイクル装置の接続配管7,8の管外径は、冷媒R410Aを使用した冷凍サイクル装置の接続配管7,8の管外径を「D0/8インチ」としたとき(但し、本実施例では、前記D0の範囲を、液接続配管7では「2≦D0≦4」とし、ガス接続配管8では「3≦D0≦8」とする)、これよりも1ランク細い管外径、即ち「(D0-1)/8インチ」に設定している。
即ち、前記接続配管7,8の管外径は、冷媒R410Aを使用した冷凍サイクル装置のものでは、一般に、ガス側接続配管8は5/8インチ(15.88mm)、液側接続配管7は3/8インチ(9.53mm)のものが使用されているので、図2の説明でも前述した管外径のものを使用しているものとする。これに対して、本実施例の冷媒R32を使用した冷凍サイクル装置では、接続配管7,8の管外径はガス側接続配管8及び液側接続配管7共に、1ランク細い管外径のものを使用しているので、ガス側接続配管8では4/8インチ(=1/2インチ:12.7mm)であり、液側接続配管7では2/8インチ(=1/4インチ:6.35mm)のものを使用している。」
イ 「
[図:0001437773000002.jpg]
」([図2])
(6)引用文献6
引用文献6には、次の事項が記載されている。
ア 「[0011][構成説明]
冷凍サイクル装置100は、第1の冷媒回路C1と、第2の冷媒回路C2とを備えている。つまり、冷凍サイクル装置100は、2元冷凍サイクルを有している。第1の冷媒回路C1が、第1の冷凍サイクル(低元側冷凍サイクル)に対応し、第2の冷媒回路C2が、第2の冷凍サイクル(高元側冷凍サイクル)に対応する。第2の冷媒回路C2の冷却能力は第1の冷媒回路C1の冷却能力よりも低い。第1の冷媒回路C1と第2の冷媒回路C2とは、独立した冷媒回路になっている。第1の冷媒回路C1を循環する第1の冷媒と、第2の冷媒回路C2を循環する第2の冷媒とは、同じ種類のものでもよいし、別の種類のものでもよい。」
上記より、引用文献6には、次の事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献6記載事項〕
「第1の冷媒回路C1と、第2の冷媒回路C2とを備えた2元冷凍サイクルにおいて、第1の冷媒回路C1を循環する第1の冷媒と、第2の冷媒回路C2を循環する第2の冷媒とを、同じ種類のものとすること。」
(7)引用文献7
引用文献7には、次の事項が記載されている。
ア 「【0034】
ヒートポンプ4,5は、蒸気圧縮式のヒートポンプであり、且つ、二元のヒートポンプサイクルから構成される。具体的には、低段側ヒートポンプ(低温側ヒートポンプ)4と、高段側ヒートポンプ(高温側ヒートポンプ)5とが、カスケード熱交換器13を介して接続されて構成される。なお、各ヒートポンプ4,5の冷媒は、同じでもよいし、異なってもよい。」
上記より、引用文献7には、次の事項(以下「引用文献7記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献7記載事項〕
「低段側ヒートポンプ(低温側ヒートポンプ)4と、高段側ヒートポンプ(高温側ヒートポンプ)5とから構成される二元のヒートポンプにおいて、各ヒートポンプ4,5の冷媒を同じとすること。」
(8)引用文献8
引用文献8には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明の実施形態は、同一筐体内に、高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルを備えた二元冷凍サイクル装置に関する。」
イ 「【0078】
また低温側冷媒の例としては、以下のものがある。
(1) 高温側冷媒と同一
(2) HFC系冷媒(HFC-410A等)
(3) CO2
(4) HC系冷媒
なお、高温側冷媒は、上記C3 Hm Fn で示される冷媒に限定されるものではなない。例えば高温側冷媒にHFC系冷媒であるHFC-134a等を用い、低温側冷媒として、HFC-410A等を用いても良い。」
上記より、引用文献8には、次の事項(以下「引用文献8記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献8記載事項〕
「高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルを備えた二元冷凍サイクル装置において、低温側冷媒を高温側冷媒と同一とすること。」
2 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「高温側冷凍サイクル」は、本願発明の「一次側サイクル(20)」に相当し、以下同様に、「低温側冷凍サイクル」は「二次側サイクル(40)」に、「カスケードコンデンサ4」は「カスケード熱交換器(35)」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式の高温側冷凍サイクルと、第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式の低温側冷凍サイクルと、前記第1冷媒と前記第2冷媒との間で熱交換を行わせるカスケードコンデンサ4と、を備え」ることは、本願発明の「第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式の一次側サイクル(20)と、第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式の二次側サイクル(40)と、前記第1冷媒と前記第2冷媒との間で熱交換を行わせるカスケード熱交換器(35)と、を備え」ることに相当する。
引用発明の「凝縮器2」は、凝縮器が冷媒に冷熱を与えて凝縮させるものであることが技術常識であるから、本願発明の「第1冷媒に冷熱又は温熱を与える熱源熱交換器(13)」に相当する。
引用発明の「前記カスケードコンデンサ4及び前記凝縮器2を接続する配管」は、本願発明の「前記カスケード熱交換器及び前記熱源熱交換器を連絡する一次側連絡配管(21、22)」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記高温側冷凍サイクルは、凝縮器2と、前記カスケードコンデンサ4及び前記凝縮器2を接続する配管と、を有」することは、本願発明の「前記一次側サイクルは、前記第1冷媒に冷熱又は温熱を与えるための熱源熱交換器(13)と、前記カスケード熱交換器及び前記熱源熱交換器を連絡する一次側連絡配管(21、22)と、を有」することに相当する。
引用発明の「蒸発器8」は、二元冷凍装置の低温側冷凍サイクルの蒸発器が、冷媒がカスケードコンデンサから得た冷熱を利用するものであることが技術常識であるから、本願発明の「前記第2冷媒が前記カスケード熱交換器から得る前記冷熱又は前記温熱を利用するための利用熱交換器(51)」に相当する。
引用発明の「前記カスケードコンデンサ4及び前記蒸発器8を接続する配管」は、本願発明の「前記カスケード熱交換器及び前記利用熱交換器を連絡する二次側連絡配管(41、42)」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記低温側冷凍サイクルは、蒸発器8と、前記カスケードコンデンサ4及び前記蒸発器8を接続する配管と、を有」することは、本願発明の「前記二次側サイクルは、前記第2冷媒が前記カスケード熱交換器から得る前記冷熱又は前記温熱を利用するための利用熱交換器(51)と、前記カスケード熱交換器及び前記利用熱交換器を連絡する二次側連絡配管(41、42)と、を有」することに相当する。
引用発明の「前記カスケードコンデンサ4及び前記凝縮器2を接続する配管は、ガスの配管及び液の配管を有」することは、本願発明の「前記一次側連絡配管は、一次側ガス連絡配管び(22)及び一次側液連絡配管(21)を有」することに相当する。
引用発明の「前記カスケードコンデンサ4及び前記蒸発器8を接続する配管は、ガスの配管及び液の配管を有する」ことは、本願発明の「前記二次側連絡配管は、二次側ガス連絡配管(42)及び二次側液連絡配管(41)を有」することに相当する。
引用発明の「二元冷凍装置」は、本願発明の「冷媒サイクルシステム」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「第1冷媒を循環させる蒸気圧縮式の一次側サイクルと、
第2冷媒を循環させる蒸気圧縮式の二次側サイクルと、
前記第1冷媒と前記第2冷媒との間で熱交換を行わせるカスケード熱交換器と、
を備え、
前記一次側サイクルは、前記第1冷媒に冷熱又は温熱を与えるための熱源熱交換器と、前記カスケード熱交換器及び前記熱源熱交換器を連絡する一次側連絡配管と、を有し、
前記二次側サイクルは、前記第2冷媒が前記カスケード熱交換器から得る前記冷熱又は前記温熱を利用するための利用熱交換器と、前記カスケード熱交換器及び前記利用熱交換器を連絡する二次側連絡配管と、を有し、
前記一次側連絡配管は、一次側ガス連絡配管及び一次側液連絡配管を有し、
前記二次側連絡配管は、二次側ガス連絡配管及び二次側液連絡配管を有する、
冷媒サイクルシステム。」
〔相違点1〕
本願発明は「前記第1冷媒と前記第2冷媒は同一の冷媒であ」るのに対して、引用発明はかかる事項を備えていない点。
〔相違点2〕
本願発明は「前記一次側ガス連絡配管の管径よりも前記二次側ガス連絡配管の管径の方が小さいか、又は、前記一次側液連絡配管の管径よりも前記二次側液連絡配管の管径の方が小さ」いのに対して、引用発明はかかる事項を備えていない点。
〔相違点3〕
本願発明は「前記二次側ガス連絡配管の前記管径が19.1mm(3/4インチ)以下であるか、又は、前記二次側液連絡配管の前記管径が15.9mm(5/8インチ)である」のに対して、引用発明は、ガスの配管及び液の配管の寸法関係が不明な点。
3 判断
上記相違点1について検討する。
二元冷凍装置において、高温側冷凍サイクルの冷媒と低温側冷凍サイクルの冷媒を同一の冷媒とすることは、周知の技術である(以下「周知技術1」という。例えば、引用文献6記載事項ないし引用文献8記載事項を参照。)。
引用発明に周知技術1を適用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
上記相違点2について検討する。
二元冷凍装置における高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルは、それぞれが閉じた回路を有する別個の冷凍サイクルであって、高温側冷凍サイクルは、熱源熱交換器からカスケード熱交換器へと熱を運ぶものであり、低温側冷凍サイクルは、カスケード熱交換器から利用熱交換器へと熱を運ぶものであるから、両者の役割は異なり、運転条件も異なり得る。このような、役割や運転条件が異なる別個の冷凍サイクルにおいて、それぞれ最適な設計を行うことは、当業者が通常行う事項である。
そして、引用文献1には、上記1(1)アで摘記したとおり、二元冷凍装置の低温側冷凍サイクルにおいて、冷凍機油の戻りが困難になるという課題が記載されているところ、配管径を小さくして冷媒の流速を速めて、油を戻りやすくすることは、周知の技術である(以下「周知技術2」という。例えば、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項を参照。)。
そうすると、引用発明の低温側冷凍サイクルに周知技術2を適用することは、当業者が容易に想到し得ることであって、その結果、高温側冷凍サイクルのガスの配管(一次側ガス連絡配管)の管径よりも低温側冷凍サイクルのガスの配管(二次側ガス連絡配管)の管径の方を小さくするか、又は、高温側冷凍サイクルの液の配管(一次側液連絡配管)の管径よりも低温側冷凍サイクルの液の配管(二次側液連絡配管)の管径の方を小さくすることは、当業者が通常の創作能力の範囲でなし得る設計的事項にすぎない。
上記相違点3について検討する。
ガスの配管に管径が19.1mm(3/4インチ)以下の管を用いることは、周知の技術である(以下「周知技術3」という。例えば、引用文献5の段落[0031]及び図2を参照。)
引用発明において周知技術3を踏まえ、ガスの配管に管径が19.1mm(3/4インチ)以下の管を用いることは、当業者が容易に想到できたことである。
また、管径が15.9mm(5/8インチ)の管は規格で定められているものであって、このような管を液の配管に用いることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 請求人の主張について
請求人は、令和7年9月11日の意見書において、以下の主張をする。
「3-2.理由1(サポート要件)及び理由2(委任省令要件)について
今般の応答において請求項1に上述の補正Aを行なったことにより、二次側ガス連絡配管と二次側液連絡配管の管径に上限を定める数値限定(発明特定事項R3)が加わりました。これにより、補正後の請求項1では、二次側ガス連絡配管と二次側液連絡配管の配管径に一定の「小ささ」が担保されています。したがって、二次側の連絡配管が細いことにより、冷媒の流速を高める効果が期待できますので、「冷凍機油が圧縮機に戻りやすくなる」という作用効果を奏することができます。
したがって、補正後の請求項1~19に係る発明は課題を解決することができますので、理由1は解消したものと思料いたします。
同じく、補正後の請求項1~19に係る発明が課題を解決する作用機序は、二次側ガス連絡配管と二次側液連絡配管の配管径の「小ささ」によって説明できますので、理由2も解消したものと思料いたします。」(以下「主張1」という。)
「発明特定事項R1及びR2が別個の引用文献に開示されていても、当業者にはそれらを同一の発明に組み込むことが自明であったとは言えません。同じ物性を有する同一の冷媒を用いる限り、異なる冷媒経路の管径を異ならせるという必然性が当業者にはないからです。
本願発明は、二元冷媒回路において一次側と二次側に同一の冷媒が循環するにもかかわらず、一次側と二次側の管径を異ならせた点において独創性があります。同一冷媒が通過する管径が部位によって異なる本願発明は、冷媒回路分野の当業者が行いうる通常の創作範囲を超えて発明者が獲得した着想によるものです。「周知技術1」と「周知技術2」を同時に兼ね備えて開示している引用文献というものは存在していない状況において、本願の補正後の発明に当業者が想到することは容易ではありません。」(以下「主張2」という。)
主張1について検討する。
上記「第4 理由1(サポート要件)についての判断」で述べたように、一次側サイクルと二次側サイクルはサイクルとして独立しており、熱交換の影響を考慮しても、一方のサイクルの配管の大きさが他方のサイクルを流れる冷媒の流速に影響を及ぼす理由は明らかでなく、冷媒の流速は、圧縮機の吐出流量等の運転条件が影響を及ぼすことが技術常識であるから、二次側ガス連絡配管と二次側液連絡配管の管径に上限を定めても、必ずしも課題を解決することができるとはいえず、また、本願発明の作用機序も明らかでない。また、本願発明の作用効果に関して、実験結果も示されていない。
したがって、主張1は採用できない。
主張2について検討する。
上記「第6 理由3(進歩性)についての検討」「3 判断」で述べたとおり、二元冷凍装置における高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルは、それぞれが閉じた回路を有する別個の冷凍サイクルであって、その役割や運転条件は異なるから、それぞれについて最適な設計を行うことは、当業者が通常行う事項である。その結果、二元冷媒回路において一次側と二次側に同一の冷媒が循環し、一次側と二次側の管径を異ならせることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
したがって、主張2も採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6号第1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が同条第4号第1号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-011277