2022-005315
リチウムイオン電池用正極
- 審判番号
- 2022-005315
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-242181外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月08日
- 審決日
- 2023年11月20日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】財團法人工業技術研究院
- 【請求人代理人】前田・鈴木国際特許弁理士法人
- 分類
- P18 .121-WZ (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 8項目
1.手続の経緯
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本願は、平成30年12月26日(パリ条約に基づく優先権主張 平成29年12月27日 台湾 平成30年12月17日 台湾)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
の却下の決定
2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和5年9月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】集電体材料、前記集電体材料の一つの表面に配置されたリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)材料を含む第1の電極層、および前記第1の電極層に配置された、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を含む活性物質を含む第2の電極層を含み、前記第1の電極層は、前記第2の電極層に直接的に接続しており、前記リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)は、LiMnxFe1-xPO4の化学式を有し、式中、0.5≦x<1であり、前記リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)は、LiNixCoyMnzO2の化学式を有し、式中、0<x<1、0<y<1、0<z<1、およびx+y+z=1であり、前記第1の電極層の総重量に対して、前記リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)材料の重量比率は、80~99wt%であり、前記第2の電極層の総重量に対して、前記活性物質の重量比率は、80~99wt%であり、前記第2の電極層の重量比率は、前記第1の電極層と前記第2の電極層の総重量に対して、50wt%以上であるリチウムイオン電池用正極。」
3.拒絶の理由の概要
本願の請求項1に対して令和5年4月13日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(引用文献2、3に記載された技術事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
4.引用文献の記載及び引用発明
当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2007-26676号公報)には、「非水電解質電池」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】複数の正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体表面に形成された正極と、負極活物質層を備えた負極と、これら両極間に介装されたセパレータとを備えた非水電解質電池において、上記正極活物質層は正極活物質成分が異なる複数の層から成り、且つ、これら複数の層のうち正極最表面層以外の層には、正極活物質種の中で過充電時における抵抗増加率が最も高いものが主成分として含まれることを特徴とする非水電解質電池。・・・・(中 略)・・・・続きを表示(全11行)【請求項6】上記正極最表面層以外の層における正極活物質として、一般式LiMPO4(但し、式中、Mは、Fe、Ni、Mnから成る群から選択される少なくとも1種を含む)で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物のみを用いる、請求項1又は2記載の非水電解質電池。【請求項7】上記正極活物質層には、正極活物質としてのコバルト酸リチウムが含まれる、請求項1~6記載の非水電解質電池。・・・・(中 略)・・・・【請求項10】上記コバルト酸リチウムは正極最表面層に存在する、請求項7~9記載の非水電解質電池。」
(2)「【0001】本発明は、リチウムイオン電池或いはポリマー電池等の非水電解質電池の改良に関し、特に過充電時の安全性に優れた非水電解質電池に関するものである。」
(3)「【発明を実施するための最良の形態】【0040】以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の最良の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。【0041】〔正極の作製〕先ず、正極活物質であるスピネル型マンガン酸リチウム(以下、LMOと略すときがある)と、炭素導電剤としてのSP300及びアセチレンブラックとを、92:3:2の質量比で混合して正極合剤粉末を作製した。次に、当該粉末を混合装置〔例えば、ホソカワミクロン製メカノフュージョン装置(AM―15F)〕内に200g充填した後、混合装置を回転数1500rpmで10分間作動させて、圧縮・衝撃・せん断作用を起こさせつつ混合して混合正極活物質を作製した。次いで、この混合正極活物質とフッ素系樹脂結着剤(PVDF)との質量比が97:3になるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶剤中で両者を混合して正極スラリーを作製した後、正極集電体であるアルミ箔の両面に正極スラリーを塗着し、更に、乾燥、圧延することにより、正極集電体表面に第1正極活物質層を形成した。【0042】この後、正極活物質としてコバルト酸リチウム(以下、LCOと略すときがある)を用いる他は、上記と同様にして正極スラリーを作製し、さらに上記第1正極活物質層上に正極スラリーを塗着し、更に、乾燥、圧延することにより、第1正極活物質層上に第2正極活物質層を形成した。以上の工程で正極を作製した。尚、正極中の両正極活物質の質量比は、LCO:LMO=70:30とした。」
(4)「【0054】〔第1実施例〕(実施例1)実施例1としては、前記発明を実施するための最良の形態で示した電池を用いた。続きを表示(全14行)このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A1と称する。【0055】(実施例2)セパレータとして、電子線架橋型セパレータの代わりに耐熱層積層型セパレータを用いた他は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A2と称する。【0056】・・・・(中 略)・・・・(実施例3)セパレータとして、電子線架橋型セパレータの代わりに通常セパレータを用いた他は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A3と称する。」
(5)「【0091】〔第4実施例〕(実施例1~3)第1正極活物質(集電体側の正極活物質)として、LMOの代わりに、LiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(以下、LFPと称するときがある)を用いると共に、正極活物質中のLCOとLFPとの質量比を75:25とした他は、前記第1実施例の実施例1~実施例3と同様にして電池を作製した。尚、オリビン型リン酸リチウム化合物は導電性に乏しく、負荷特性に劣る。このため、電池性能を確保する目的で、正極活物質の焼成段階で二次粒子内部に炭素による導電パスを確保すべく、オリビン型リン酸リチウム化合物の二次粒子内部に5%炭素成分を含有させている。また、上記電池の設計容量は780mAhである。このようにして作製した電池を、以下それぞれ、本発明電池D1~D3と称する。・・・・(以下、略)」
(6)「【0094】[図:0001409529000001.jpg]」
上記(1)ないし(6)から以下のことがいえる。
・引用文献1に記載の「非水電解質電池」は、上記(2)の記載によれば、例えばリチウムイオン電池であり、上記(1)の【請求項1】の記載によれば、正極活物質層が正極集電体表面に形成された正極と、負極活物質層を備えた負極と、これら両極間に介装されたセパレータとを備えた非水電解質電池(リチウムイオン電池)であって、正極活物質層が、正極活物質成分が異なる複数の層からなるものである。
・上記(1)の【請求項6】の記載によれば、正極最表面層以外の層における正極活物質として、一般式LiMPO4(但し、式中、Mは、Fe、Ni、Mnから成る群から選択される少なくとも1種を含む)で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物のみを用いるものであるところ、上記(5)の記載、及び(6)(【表5】)によれば、第4実施例の実施例1~3に係る「本発明電池D1~D3」では、集電体側の第1正極活物質層における正極活物質としてLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)を用いてなるものである。
・上記(1)の【請求項7】、【請求項10】の記載によれば、正極最表面層における正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いるものであるところ、上記(5)の記載、及び(6)(【表5】)によれば、第4実施例の実施例1~3に係る「本発明電池D1~D3」でも表面側の第2正極活物質層における正極活物質としてコバルト酸リチウム(LCO)を用いてなるものである。
・上記(5)の記載によれば、第4実施例の実施例1~3に係る「本発明電池D1~D3」は、正極活物質中のLCOとLFPとの質量比を75:25とした他は、第1実施例の実施例1~実施例3と同様にして電池の作製をしてなるものであるところ、上記(4)の記載によれば、その第1実施例の実施例1~実施例3に係る電池は、「発明を実施するための最良の形態」で示した電池を用いてなるものである。そして、上記(3)の記載によれば、発明を実施するための最良の形態」は、正極集電体(アルミ箔)の両面に、正極集電体表面に第1正極活物質層を形成し、当該第1正極活物質層上に第2正極活物質層を形成してなるものであって、第1正極活物質層は正極活物質、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)が92:3:2:3の質量比で構成され、第2正極活物質層を形成するための正極スラリーについても第1正極活物質層を形成するための正極スラリーと同様にして作製されるものであることから、第2正極活物質層も正極活物質、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)が92:3:2:3の質量比で構成されてなるものであると解される。
以上のことから、特に第4実施例の実施例1~3に係る非水電解質電池(リチウムイオン電池)である「本発明電池D1~D3」が備える正極の構成に着目してこれを発明として捉え、上記記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「正極集電体と、前記正極集電体の両面に形成された正極活物質層と、を有し、前記正極活物質層は、前記正極集電体表面に形成された第1正極活物質層と当該第1正極活物質層上に形成された第2正極活物質層からなり、前記第1正極活物質層は、正極活物質としてLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)を含み、前記第2正極活物質層は、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LCO)を含み、前記第1正極活物質層は前記正極活物質、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)が92:3:2:3の質量比で構成され、同様に前記第2正極活物質層も前記正極活物質、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)が92:3:2:3の質量比で構成され、前記正極活物質層に含まれる正極活物質中のコバルト酸リチウム(LCO)とLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)との質量比が75:25である、リチウムイオン電池が備える正極。」
5.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「正極集電体」は、本願発明でいう「集電体材料」に相当する。
(2)引用発明における「第1正極活物質層」は、正極集電体の表面に形成されてなるものであり、本願発明でいう「第1の電極層」に相当する。
ここで、本願発明の「第1の電極層」が含むリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)材料と、引用発明の「第1正極活物質層」が含むLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)とは、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物である点で共通するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記集電体材料の一つの表面に配置されたオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物を含む第1の電極層」を含むものである点で共通する。
ただし、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物について、本願発明では「リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)材料」であり、「前記リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)は、LiMnxFe1-xPO4の化学式を有し、式中、0.5≦x<1」であることを特定するのに対し、引用発明ではLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)である点で相違する。
(3)引用発明における「第2正極活物質層」は、第1正極活物質層上に形成されてなるものであり、本願発明でいう「第2の電極層」に相当する。
ここで、本願発明の「第2の電極層」が含むリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)と、引用発明の「第2正極活物質層」が含むコバルト酸リチウム(LCO)とは、層状型構造を有するリチウム複合酸化物である点で共通するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1の電極層に配置された、層状型構造を有するリチウム複合酸化物を含む活性物質を含む第2の電極層」を含むものである点で共通する。
ただし、活性物質が含む層状型構造を有するリチウム複合酸化物について、本願発明では「リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)」であり、「前記リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)は、LiNixCoyMnzO2の化学式を有し、式中、0<x<1、0<y<1、0<z<1、およびx+y+z=1」であることを特定するのに対し、引用発明ではコバルト酸リチウム(LCO)である点で相違する。
(4)引用発明においても、第2正極活物質層は第1正極活物質層上に形成されてなるものであり、第1正極活物質層は第2正極活物質層に直接的に接続しているといえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1の電極層は、前記第2の電極層に直接的に接続している」点で一致する。
(5)引用発明における「第1正極活物質層」に含まれる正極活物質(LiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP))は質量比で92であるから、第1正極活物質層の総重量に対して、正極活物質(LiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP))の重量比率は92質量%であり、本願発明で特定する「80~99wt%」に含まれる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1の電極層の総重量に対して、前記オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物の重量比率は、80~99wt%」である点で共通するといえる。
ただし、上記(2)にも記載したように、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物について、本願発明では「リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)材料」であるのに対し、引用発明ではLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)である点で相違する。
(6)引用発明における「第2正極活物質層」に含まれる正極活物質(コバルト酸リチウム(LCO))は質量比で92であるから、第2正極活物質層の総重量に対して、正極活物質(コバルト酸リチウム(LCO))の重量比率は92質量%であり、本願発明で特定する「80~99wt%」に含まれる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第2の電極層の総重量に対して、前記活性物質の重量比率は、80~99wt%」である点で共通するといえる。
なお、ここでいう「前記活性物質」について、上記(3)にも記載したように、本願発明では「リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)」を含むものであるのに対し、引用発明ではコバルト酸リチウム(LCO)である点で相違する。
(7)引用発明における第1正極活物質層中の正極活物質(LiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP))、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)は92:3:2:3の質量比であり、第2正極活物質層中の正極活物質(コバルト酸リチウム(LCO))、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)も92:3:2:3の同じ質量比であるところ、引用発明の正極活物質層に含まれる正極活物質中のコバルト酸リチウム(LCO)とLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)との質量比は75:25であることから、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LCO)を含む第2正極活物質層の重量比についても、第1正極活物質層と第2正極活物質層の総重量に対して75質量%であるといえ、本願発明で特定する「50wt%以上」の範囲に含まれる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第2の電極層の重量比率は、前記第1の電極層と前記第2の電極層の総重量に対して、50wt%以上」である点で一致するといえる。
(8)そして、引用発明における「リチウムイオン電池が備える正極」は、正極集電体と、当該正極集電体の表面に形成された第1正極活物質層及び第2正極活物質層とを含むものであり、本願発明でいう「リチウムイオン電池用正極」に相当する。
よって上記(1)ないし(8)によれば、本願発明と引用発明とは、
「集電体材料、前記集電体材料の一つの表面に配置されたオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物を含む第1の電極層、および前記第1の電極層に配置された、層状型構造を有するリチウム複合酸化物を含む活性物質を含む第2の電極層を含み、前記第1の電極層は、前記第2の電極層に直接的に接続しており、前記第1の電極層の総重量に対して、前記オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物の重量比率は、80~99wt%であり、前記第2の電極層の総重量に対して、前記活性物質の重量比率は、80~99wt%であり、前記第2の電極層の重量比率は、前記第1の電極層と前記第2の電極層の総重量に対して、50wt%以上であるリチウムイオン電池用正極。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
第1の電極層が含むオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物について、本願発明では「リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)材料」であり、「前記リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)は、LiMnxFe1-xPO4の化学式を有し、式中、0.5≦x<1」であることを特定するのに対し、引用発明ではLiFePO4で表されるオリビン型リン酸リチウム化合物(LFP)である点。
[相違点2]
第2の電極層が含む活性物質が含む層状型構造を有するリチウム複合酸化物について、本願発明では「リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)」であり、「前記リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)は、LiNixCoyMnzO2の化学式を有し、式中、0<x<1、0<y<1、0<z<1、およびx+y+z=1」であることを特定するのに対し、引用発明ではコバルト酸リチウム(LCO)である点。
6.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用文献1の【請求項6】(上記「4.(1)」を参照)、段落【0132】~【0133】には、第1正極活物質層が含むオリビン型リン酸リチウム化合物は、一般式LiMPO4(但し、式中、Mは、Fe、Ni、Mnから成る群から選択される少なくとも1種を含む)ものであり、LiFePO4に限定されないことが記載されているところ、例えば当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2017-63027号公報)の段落【0017】や上記引用文献3(特開2016-76317号公報)の段落【0024】~【0025】に記載のように、正極活物質として用いられるオリビン型リン酸リチウム化合物としては、LiFePO4(LFP)だけでなく、LiMn1-xFexPO4(0.05≦x≦0.5)も周知のものであり、引用発明においても第1正極活物質層が含むオリビン型リン酸リチウム化合物として、LiFePO4(LFP)に代えてLiMn1-xFexPO4(0.05≦x≦0.5)を採用(すなわち、上記一般式LiMPO4におけるMとしてFe、Mnを選択)して相違点1に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。
[相違点2]について
引用文献1の段落【0130】、【0131】(【表9】)の記載によれば、第2正極活物質層に用いられる正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LCO)に限定されるものではなく、層状リチウムニッケル化合物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)でも良いことが記載されているといえ、引用発明において、第2正極活物質層が含む層状型構造を有するリチウム複合酸化物としてコバルト酸リチウム(LCO)に代えて層状リチウムニッケル化合物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)を採用し、相違点2に係る構成とすることも当業者であれば適宜なし得たことである。
よって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7.審判請求人の主張について
審判請求人は、令和5年9月5日に提出した意見書において「引用文献1の段落0091には、「正極活物質中のLCOとLFPとの質量比を75:25」とした旨が記載されている。しかし、引用文献1は第1正極活物質層および第2正極活物質層における活物質以外の他の物質の含有率を開示していない。したがって、引用文献1は、本願請求項1で規定している「前記第2の電極層の重量比率は、前記第1の電極層と前記第2の電極層の総重量に対して、50wt以上である」との構成要件を開示していない。」などと主張している。
しかしながら、上記「4.引用文献の記載及び引用発明」にも記載したとおり、引用文献1には、第1正極活物質層は正極活物質、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)が92:3:2:3の質量比で構成され、第2正極活物質層についても正極活物質、SP300(炭素導電剤)、アセチレンブラック(炭素導電剤)、結着剤(PVDF)が92:3:2:3の質量比で構成されることが記載されているといる。そして、上記「5.対比」の(7)に記載したとおり、引用発明における正極活物質としてコバルト酸リチウム(LCO)を含む第2正極活物質層の重量比は、第1正極活物質層と第2正極活物質層の総重量に対して75質量%であり、本願発明で特定する「50wt%以上」の範囲に含まれるものであることを踏まえると、審判請求人の上記主張は採用できない。
8.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-005315