特許拒絶査定不服審判
2022-003718
高周波ゼロイングに基づいて変換係数をコーディングする方法及びその装置
- 審判番号
- 2022-003718
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-526956外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月11日
- 審決日
- 2023年09月25日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WZ (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-526956「高周波ゼロイングに基づいて変換係数をコーディングする方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月22日国際公開、WO2020/101321、令和 3年 4月 8日国内公表、特表2021-510022〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和1年)11月12日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年11月12日 米国(US)、2019年1月15日 米国(US))とするものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 5月15日 :手続補正書の提出
令和 3年 6月22日付け :拒絶理由通知書
同年 9月 9日 :手続補正書および意見書の提出
同年11月17日付け :拒絶査定
令和 4年 3月11日 :審判請求書および手続補正書の提出
同年 5月20日 :前置報告書
同年 9月16日付け :拒絶理由通知書(当審)
同年11月 9日 :手続補正書および意見書の提出
令和 5年 3月31日 :最後の拒絶理由通知書(当審)
同年 6月30日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和4年11月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10の記載により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は特許請求の範囲の請求項1に記載される、次のとおりのものである。(記号A~Iは分説するために審判合議体が付したものであり、請求項1の記載を、記号A~Iを用いて、以下、「構成A」~「構成I」と称する。)
【請求項1】
A デコード装置による画像デコード方法において、
B レジデュアル情報を含むビットストリームを受信するステップと、
C 前記レジデュアル情報に基づいて現在ブロックに対する変換係数を導出するステップと、
D 前記導出された変換係数に逆変換を適用して前記現在ブロックに対するレジデュアルサンプルを導出するステップと、
E 前記現在ブロックに対する前記レジデュアルサンプルに基づいて復元ピクチャを生成するステップと、を含み、
F 前記現在ブロックは、少なくとも1つの有効変換係数を含む低周波変換係数領域と、変換係数0を含む前記低周波変換係数領域以外の領域とを含み、
G 前記レジデュアル情報は、前記現在ブロックに対する前記変換係数のうち最後の有効係数の位置に関する最後の有効係数プレフィックス情報及び最後の有効係数サフィックス情報を含み、
G1 前記最後の有効係数プレフィックス情報は、列位置プレフィックス情報及び行位置プレフィックス情報を含み、
G2 前記最後の有効係数サフィックス情報は、列位置サフィックス情報及び行位置サフィックス情報を含み、
G3 前記最後の有効係数の前記位置は、プレフィックスコードワードに基づいて決定され、
G31 前記プレフィックスコードワードは、前記列位置プレフィックス情報に対するコードワード、及び前記行位置プレフィックス情報に対するコードワードを含み、
G311 前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は、cMaxxに基づいて決定され、
G3111 cMaxxは、以下の式
cMaxx = (log2(W2) << 1) -1
に基づいて算出され、
cMaxxは、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの前記最大長に等しく、
前記W2は、前記低周波変換係数領域の幅であり、
G312 前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は、cMaxyに基づいて決定され、
G3121 cMaxyは、以下の式
cMaxy= (log2(H2) << 1) -1
に基づいて算出され、
cMaxyは、前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの前記最大長に等しく、
前記H2は、前記低周波変換係数領域の高さであり、
H 前記レジデュアルサンプルは、前記現在ブロックのサイズに対応して導出され、
I 前記変換係数は、前記低周波変換係数領域に対応して導出され、
G32 前記プレフィックスコードワードの最大長は、前記低周波変換係数領域のサイズに基づいて決定され、
G321 前記低周波変換係数領域の幅が16であることに基づいて、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1111111であると決定され、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は、7であると決定され、
G322 前記低周波変換係数領域の高さが16であることに基づいて、前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1111111であると決定され、前記行位置プレフィックス情報を示す前記コードワードの最大長は、7であると決定される、
A 画像デコード方法。
第3 引用文献の記載、及び引用発明、引用文献記載事項の認定
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1である国際公開2018/190594号には、以下の記載がある。(なお、引用文献1のファミリである特表2020-517191号公報の対応する箇所を引用して、引用文献1の仮訳とし、当該対応箇所についてのみ、下線を強調のために当審で付した。以下同様に、下線を強調のため当審で付した。)
(1)「[45]
[図:0001407060000001.jpg]
[46]
[図:0001407060000002.jpg]
[図:0001407060000003.jpg]
[47]
[図:0001407060000004.jpg]
・・・
[55]
[図:0001407060000005.jpg]
・・・
[57]
[図:0001407060000006.jpg]
[58]
[図:0001407060000007.jpg]
[59]
[図:0001407060000008.jpg]
[60]
[図:0001407060000009.jpg]
[61]
[図:0001407060000010.jpg]
」
(仮訳:
【0034】
エンコーダ100は、入力映像信号から、インター予測部180又はイントラ予測部185から出力された予測信号を減算して、残差(残余)信号(residual signal)を生成することができ、生成された残差信号は、変換部120に送信される。
【0035】
変換部120は、残差信号に変換技法を適用して変換係数(transform coefficient)を生成する。・・・
【0036】
量子化部130は、変換係数を量子化してエントロピエンコード部190に送信し、エントロピエンコード部190は、量子化された信号をエントロピコーディングしてビットストリームに出力することができる。
・・・
【0043】
図2は、本発明が適用される実施形態であって、ビデオ信号のデコーディング(復号)が行われるデコーダの概略ブロック図を示す。
・・・
【0045】
そして、デコーダ200を介して出力された復元映像信号は、再生装置により再生される。
【0046】
デコーダ200は、図1のエンコーダ100から出力された信号を受信し、受信した信号は、エントロピデコード部210を介してエントロピデコードされる。
【0047】
逆量子化部220においては、量子化ステップサイズ情報を利用してエントロピデコードされた信号から変換係数(transform coefficient)を取得する。
【0048】
逆変換部230においては、変換係数を逆変換して残差信号を取得する。
【0049】
取得された残差信号を、インター予測部260又はイントラ予測部265から出力された予測信号に加えることにより、復元信号が生成される。)
(2)「[158]
[図:0001407060000011.jpg]
[159]
[図:0001407060000012.jpg]
」
(仮訳:
【0138】
本発明の一実施形態において、エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数の位置情報を接頭辞(prefix)と接尾辞(suffix)とに分割して2進化を行うことができる。例えば、エンコーダ/デコーダは、接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現し、接尾辞を固定長(fixed length)コードで表現できる。
【0139】
エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数の水平方向座標(すなわち、x座標)及び垂直方向座標(すなわち、y座標)を、それぞれ接頭辞と接尾辞とに分割して2進化を行うことができる。接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現し、接尾辞を固定長(fixed length)コードで表現すると仮定する場合、エンコーダ/デコーダは、次の表1のように座標値をグループ化(grouping)し、各グループに2進コードを割り当てることができる。)
(3)「
[174]
[図:0001407060000013.jpg]
」
(仮訳:
【0154】
<表2>
【表2】
[図:0001407060000014.jpg]
)
(4)「
[211]
[図:0001407060000015.jpg]
[212]
[図:0001407060000016.jpg]
」
(仮訳:
【0188】
エンコーダ/デコーダは、特定条件下でブロックサイズに関係なく最後の非ゼロ変換係数が制限された領域内に位置するようにすることができる。例えば、エンコーダ/デコーダは、現在ブロックの幅及び高さが特定値より大きいか等しい場合、又はインター予測(又は、画面間の予測)を利用してコード化されたブロックである場合、又は現在ブロックの幅と高さとの積が特定値より大きいか等しい場合(すなわち、現在ブロック内のピクセルの個数が特定個数以上である場合)、最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成することができる。
【0189】
この場合、エンコーダ/デコーダは、上記制限領域までトランケートされた単項接頭辞(truncated unary prefix)コードを割り当てることができる。例えば、64×128の非正方形ブロックにおいて最後の非ゼロ変換係数が左上端の32×32領域内にのみ存在することが保証される場合、エンコーダ/デコーダは、水平方向及び垂直方向の座標値に対して31までに制限されたトランケートされた単項コードを適用することができる。この場合、上記で説明した表2における24~31の区間に対する接頭辞として1111111110コードではない111111111コードを割り当てることができる。)
(5)図2には以下の記載がある。
「
[図:0001407060000017.jpg]
」
(仮訳:
[図:0001407060000018.jpg]
)
2 引用文献2の記載
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献2であるITU-T、SERIES H:AUDIOVISUAL AND MULTIMEDIA SYSTEMS Infrastructure of audiovisual services-Coding of moving video High efficiency video coding Recommendation ITU-T H.265のp.177には、以下の記載がある。
「Table 9-32 - Syntax elements and associated binarizations
[図:0001407060000019.jpg]
」
(仮訳:表9-32 シンタックス要素と関連する二進化)
3 引用文献3の記載
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献3である、Xin Zhao, et al.、CE6:Block size dependent zero-out transform(Test 1.14)、Joint Video Experts Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 11th Meeting: Ljubljana, SI, 10-18 July 2018 Document:JVET-K0083-v1、2018年7月3日、p.1には、以下の記載がある。
「Abstract
This contribution reports the test results of CE6-1.14 on block size dependent zero-out transform....
1 Introduction
In BMS-1.1 [1], the maximum transform size is 64-point. In case a block width (height) being larger than 64, the block is implicitly split horizontally (or vertically) into multiples of sub-blocks which are smaller than or equal to 64x64. Specifically, for a W×H block, it is split into multiples of min(W, 64)×min(H, 64) sub-blocks.
For 64-point transform, only the first 32 coefficients are kept and the remaining coefficients are not calculated and constrained to 0. Specifically, for a W×H transform block, only the top-left min(W, 32)×min(H, 32) transform coefficients are calculated and the remaining coefficients are constrained as 0.
2 Proposed method
Despite the transform block size, it is noticed that large block partitions typically present less residuals, and residual energy is more concentrated in low-frequency coefficients in transform domain. Therefore, it is proposed to apply a block size dependent transform zero-out, where the block size is indicated by coding block size. That is, for a W×H coding block, for each transform block, it is constrained that only the top-left ( W==128 ? 16 : (W==64 ? 32 : W) ) × ( H==128 ? 16 : (H==64 ? 32 : H) ) transform coefficients are kept and the remaining coefficients are not calculated and set as 0.
(仮訳:
概要
この寄書では、CE6-1.14のブロックサイズ依存のゼロアウト変換に関する試験結果を報告する。...
1 はじめに
BMS-1.1[1]では、最大変換サイズは64ポイントである。ブロックの幅(高さ)が64より大きい場合、ブロックは暗黙のうちに水平方向(または垂直方向)に分割され、64×64以下のサブブロックの倍数になる。具体的には、W×Hのブロックの場合、min(W,64)×min(H,64)のサブブロックの倍数に分割される。
64ポイント変換では、最初の32個の係数のみが保持され、残りの係数は計算されず0に制限される。具体的には、W×Hの変換ブロックでは、左上のmin(W,32)×min(H,32)の変換係数のみが計算され、残りの係数は0として制限される。
2 提案手法
変換ブロックサイズにもかかわらず、大きなブロック分割は一般的に残差の発生が少なく、残差エネルギーは変換領域の低周波係数に集中することが知られている。そこで、ブロックサイズに依存した変換ゼロアウトを適用することを提案する。ブロックサイズは符号化ブロックサイズによって示される。すなわち、W×Hの符号化ブロックに対して、各変換ブロックは、左上の(W==128?16:(W==64?32:W))×(H==128?16:(H==64?32:H))の変換係数のみを保持し、残りの係数は計算されず0とするよう制限する。)
4 引用発明の認定
(1)上記1の(1)における、【0034】の「エンコーダは、入力映像信号から・・・予測信号を減算して残差(残余)信号(residual signal)を生成」、【0035】の「・・・残差信号に変換技法を適用して変換係数を生成」、【0036】の「変換係数を量子化して・・・量子化された信号をエントロピコーディングしてビットストリームに出力する」、【0043】の「ビデオ信号のデコーディング(復号)が行われるデコーダ」、【0046】の「デコーダ・・・は、エンコーダ・・・から出力された信号を受信し、受信された信号は、・・・エントロピデコードされ」、【0047】の「逆量子化部・・・においては、・・・エントロピデコードされた信号から変換係数を取得」、【0048】の「変換係数を逆変換して残差信号を取得」、【0049】の「取得された残差信号を、・・・予測信号に加えることにより、復元信号が生成され」との記載、及び、上記1の(5)によると、デコーダがビットストリームを入力とすることが読み取れることから、引用文献1には、
エンコーダは、入力映像信号から予測信号を減算して残差(残余)信号(residual signal)を生成し、残差信号に変換技法を適用して変換係数を生成し、変換係数を量子化して量子化された信号をエントロピコーディングしてビットストリームに出力する場合、
ビデオ信号のデコーディング(復号)が行われるデコーダにおいて、エンコーダから出力された信号であるビットストリームを受信し、受信した信号は、エントロピデコードされ、逆量子化部においては、エントロピデコードされた信号から変換係数を取得し、変換係数を逆変換して残差信号を取得し、取得された残差信号を予測信号に加えることにより復元信号が生成されること、
が記載されているといえる。
(2)上記1の(2)における、【0138】の「エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数の位置情報を接頭辞(prefix)と接尾辞(suffix)とに分割して2進化を行うことができ・・・接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現し」、【0139】の「エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数の水平方向座標(すなわち、x座標)及び垂直方向座標(すなわち、y座標)を、それぞれ接頭辞と接尾辞とに分割して2進化を行うことができ・・・接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現し」との記載によれば、引用文献1には、
エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数の位置情報を接頭辞(prefix)と接尾辞(suffix)とに分割して2進化を行うことができるものであり、最後の非ゼロ変換係数の水平方向座標(すなわち、x座標)及び垂直方向座標(すなわち、y座標)を、それぞれ接頭辞と接尾辞とに分割して2進化を行うことができ、接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現すること、
が記載されているといえる。
(3-1)上記1の(3)の【0154】の【表2】から、0から127の値をとるPosition(位置)の96~127の区間に対して、接頭辞(prefix)を、1111111111111というトランケートされた単項(truncated unary)で表現すること、かつ【表2】に現れる接頭辞では、13個の1が並ぶ1111111111111が最大長かつ最大値であることが、それぞれ読み取れる。
そうすると、トランケートされた単項では、すべて1が並ぶ接頭辞が最大長かつ最大値であって、値127を表現するのに1が13個並ぶことがいえる。
(3-2)さらに、上記1の(4)の【0188】の「エンコーダ/デコーダは、・・・最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成する」、【0189】の「エンコーダ/デコーダは、上記制限領域までトランケートされた単項接頭辞(truncated unary prefix)コードを割り当て・・・例えば、64×128の非正方形ブロックにおいて最後の非ゼロ変換係数が左上端の32×32領域内にのみ存在することが保証される場合、エンコーダ/デコーダは、水平方向及び垂直方向の座標値に対して31までに制限されたトランケートされた単項コードを適用・・・24~31の区間に対する接頭辞として・・・111111111コードを割り当てる」との記載がある。
ここで、上記(3-1)から、トランケートされた単項では、すべて1が並ぶ接頭辞が最大長かつ最大値であって、値127を表現するのに1が13個並ぶことがいえることと合わせると、トランケートされた単項では、すべて1が並ぶ接頭辞が最大長かつ最大値であるところ、値31までに制限された場合、これを表現するのに1が9個並ぶことがいえる。
そうすると、接頭辞の最大長かつ最大値は、現在ブロックのサイズ64×128ではなく、最後の非ゼロ変換係数が存在することが保証される領域のサイズである32×32によって決まることがいえる。
(3-3)これらを総合すると、引用文献1には、
エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成するものであって、上記制限領域までトランケートされた単項接頭辞(truncated unary prefix)コードを割り当てるものであり、接頭辞の最大長かつ最大値は、最後の非ゼロ変換係数が存在することが保証される領域のサイズによって決まり、例えば、64×128の非正方形ブロックにおいて最後の非ゼロ変換係数が左上端の32×32領域内にのみ存在することが保証される場合、エンコーダ/デコーダは、水平方向及び垂直方向の座標値に対して31までに制限されたトランケートされた単項コードを適用し、24~31の区間に対する接頭辞として最大長かつ最大値である、1が9個並ぶ111111111コードを割り当てること、
が記載されているものといえる。
以上の記載によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。(符号a~cは合議体が付した。以下、「構成a」~「構成c」等という。)
(引用発明)
a エンコーダは、入力映像信号から予測信号を減算して残差(残余)信号(residual signal)を生成し、残差信号に変換技法を適用して変換係数を生成し、変換係数を量子化して量子化された信号をエントロピコーディングしてビットストリームに出力する場合、
ビデオ信号のデコーディング(復号)が行われるデコーダにおいて、エンコーダから出力された信号であるビットストリームを受信し、受信した信号は、エントロピデコードされ、逆量子化部においては、エントロピデコードされた信号から変換係数を取得し、変換係数を逆変換して残差信号を取得し、取得された残差信号を予測信号に加えることにより復元信号が生成されるものであり、
b エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数の位置情報を接頭辞(prefix)と接尾辞(suffix)とに分割して2進化を行うことができるものであり、水平方向座標(すなわち、x座標)及び垂直方向座標(すなわち、y座標)を、それぞれ接頭辞と接尾辞とに分割して2進化を行うことができ、接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現し、
c エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成するものであって、上記制限領域までトランケートされた単項接頭辞(truncated unary prefix)コードを割り当てるものであり、接頭辞の最大長かつ最大値は、最後の非ゼロ変換係数が存在することが保証される領域のサイズによって決まり、例えば、64×128の非正方形ブロックにおいて最後の非ゼロ変換係数が左上端の32×32領域内にのみ存在することが保証される場合、エンコーダ/デコーダは、水平方向及び垂直方向の座標値に対して31までに制限されたトランケートされた単項コードを適用し、24~31の区間に対する接頭辞として最大長かつ最大値である、1が9個並ぶ111111111コードを割り当てる、
a デコーダ。
5 引用文献2記載の事項の認定
上記2から、引用文献2には、シンタックス要素last_sig_coeff_x_prefix、last_sig_coeff_y_prefixについて、cMaxの値がcMax=(log2TrafoSize<<1)-1で求められること
(以下、「引用文献2記載の事項」という)が記載されているものと認められる。
6 引用文献3記載の事項の認定
上記3において、Wが128をとり、Hが128をとる場合を考えると、引用文献3には、
ブロックサイズに依存した変換ゼロアウトを適用することを提案するものであり、128×128の符号化ブロックに対して、各変換ブロックは、左上の16×16の変換係数のみを保持し、残りの係数は計算されず0とするよう制限すること、
(以下、「引用文献3記載の事項」という)が記載されているものと認められる。
第4 本願発明と引用発明との対比及び相違点に対する判断
1 本願発明と上記引用発明とを対比する。
(1)構成AないしE、構成Hについて
引用発明の構成aの「ビデオ信号のデコーディング(復号)が行われるデコーダ」は、「エンコーダから出力された信号であるビットストリームを受信し、受信した信号は、エントロピデコードされ、逆量子化部においては、エントロピデコードされた信号から変換係数を取得し、変換係数を逆変換して残差信号を取得し、取得された残差信号を予測信号に加えることにより復元信号が生成されるものであ」り、構成Aと同様に「デコード装置による画像デコード方法」を実行するものといえる。
ここで、引用発明の構成aでは、「エンコーダは入力映像信号から予測信号を減算して残差(残余)信号(residual signal)を生成し、残差信号に変換技法を適用して変換係数を生成し、変換係数を量子化して量子化された信号をエントロピコーディングしてビットストリームに出力する」ことから、引用発明において、受信した信号であるビットストリーム中には残差(残余)信号(residual signal)が変換され量子化されてエントロピコーディングされたものが含まれており、このようなビットストリームから変換係数を取得し、変換係数を逆変換して残差信号を取得し、取得した残差信号に基づいて復元信号が生成されるといえる。
また、ビデオ信号の復号処理に関する技術的前提を踏まえると、引用発明のデコーダにおいて取得される変換係数は、現在ブロックに関するものであるといえる。
そうすると、上記「残差(残余)信号が変換され量子化されてエントロピコーディングされたもの」、「ビットストリームから」「取得し」た「変換係数」、「ビットストリームから変換係数を取得し、変換係数を逆変換し」て取得された「残差信号」は、それぞれ構成Bの「レジデュアル情報」、構成Cの「現在ブロックに対する変換係数」、構成Dの「現在ブロックに対するレジデュアルサンプル」に相当するといえ、これを踏まえると、
構成aの「エンコーダから出力された信号であるビットストリームを受信」すること、「受信した信号はエントロピデコードされ、逆量子化部においては、エントロピデコードされた信号から変換係数を取得」すること、「変換係数を逆変換して残差信号を取得」すること、「取得された残差信号を予測信号に加えることにより復元信号が生成される」ことは、
それぞれ、構成Bの「レジデュアル情報を含むビットストリームを受信するステップ」、構成Cの「前記レジデュアル情報に基づいて現在ブロックに対する変換係数を導出するステップ」、構成Dの「前記導出された変換係数に逆変換を適用して前記現在ブロックに対するレジデュアルサンプルを導出するステップ」、構成Eの「前記現在ブロックに対する前記レジデュアルサンプルに基づいて復元ピクチャを生成するステップ」
に相当する。
さらに、上記のとおり、「ビットストリームから変換係数を取得し」て取得された「残差信号」は、構成Dの「現在ブロックに対するレジデュアルサンプル」に相当することから、構成Hと同様に「現在ブロックのサイズに対応して導出」されるものといえる。
(2)構成F、Iについて
引用発明の構成cの「エンコーダ/デコーダは、最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成する」によれば、引用発明において、「現在ブロック内で制限された領域内」には最後の非ゼロ変換係数が含まれていることから、それ以外の領域では変換係数としてゼロのみを含むものといえる。
そうすると、上記「現在ブロック内で制限された領域内」は構成Fの「少なくとも1つの有効係数を含む低周波変換係数領域」に、それ以外の領域であって変換係数としてゼロのみを含むものは構成Fの「変換係数0を含む前記低周波変換係数領域以外の領域」に相当する。
また、引用発明における「最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置する」ことから、構成Iと同様に「前記変換係数は、前記低周波変換係数領域に対応して導出され」るといえる。
(3)構成G、G1、G2、G3、G31について
引用発明は、構成bに特定されるように、エンコーダ/デコーダは「最後の非ゼロ変換係数の位置情報を接頭辞(prefix)と接尾辞(suffix)とに分割して2進化を行う」ことから、上記(1)において示した、変換され量子化されてエントロピコーディングされた残差(残余)信号とともに、変換係数の位置情報が2進化されてビットストリームに含まれているといえる。
ここで、上記の変換係数の位置情報は、変換係数すなわち変換された残差信号に関連するところ、上記(1)のとおり、残差信号が変換され、量子化されてエントロピコーディングされたものが構成Bの「レジデュアル情報」に相当することから、当該変換係数の位置情報は構成Bの「レジデュアル情報」に含まれる情報であるといえる。
また、上記(1)のとおり、引用発明において取得される変換係数は、現在ブロックに関するものであることを踏まえると、
引用発明の構成bにおける「水平方向座標(すなわち、x座標)及び垂直方向座標(すなわち、y座標)を、それぞれ接頭辞と接尾辞とに分割して2進化を行」い、「接頭辞をトランケートされた単項(truncated unary)コードで表現」された「最後の非ゼロ変換係数の位置情報」は、
構成Gの「前記現在ブロックに対する前記変換係数のうち最後の有効係数の位置に関する最後の有効係数プレフィックス情報及び最後の有効係数サフィックス情報を含」む「前記レジデュアル情報」に相当する情報であり、構成G1、G2と同様に「前記最後の有効係数プレフィックス情報は、列位置プレフィックス情報及び行位置プレフィックス情報を含み、前記最後の有効係数サフィックス情報は、列位置サフィックス情報及び行位置サフィックス情報を含」み、構成G3に特定されるように、「前記最後の有効係数の前記位置は、プレフィックスコードワードに基づいて決定され」、構成G31と同様に「前記プレフィックスコードワードは、前記列位置プレフィックス情報に対するコードワード、及び前記行位置プレフィックス情報に対するコードワードを含」むといえる。
(4)構成G32、G311、G3111、G312、G3121、G321、G322について
(4-1)引用発明は、構成cに特定されるように、「単項接頭辞コード」について「接頭辞の最大長かつ最大値は、最後の非ゼロ変換係数が存在することが保証される領域のサイズによって決ま」ることから、構成G32と同様に「前記プレフィックスコードワードの最大長は、前記低周波数変換係数領域のサイズに基づいて決定され」るといえる。
(4-2)また、引用発明は、構成c1に特定されるように、「最後の非ゼロ変換係数が左上端の32×32領域内にのみ存在することが保証される場合」、「水平方向及び垂直方向の座標値に対して31までに制限されたトランケートされた単項コードを適用し」、「24~31の区間に対する接頭辞として最大長かつ最大値である、1が9個並ぶ111111111コードを割り当てる」ことがいえる。
そうすると、引用発明は、「水平方向及び垂直方向の座標値に対して31」を最大値としてとり、このとき、水平方向及び垂直方向のいずれの座標値についても、「単項接頭辞コード」の「接頭辞の最大長かつ最大値」は「1が9個並ぶ111111111コード」になるといえる。
(4-3)一方、構成G311を踏まえた構成G3111によれば、cMaxxは「cMaxx = (log2(W2) << 1) -1」に基づいて算出され」、「前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの」「前記最大長に等し」いこと、「前記W2は、前記低周波変換係数領域の幅であ」ることから、「前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は」「前記低周波変換係数領域の幅」に基づいて決定されるといえる。
同様に、構成G312を踏まえた構成G3121によれば、「前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は」「前記低周波変換係数領域の高さ」に基づいて決定されるといえる。
(4-4)(4-2)、(4-3)から、引用発明の「単項接頭辞コード」について、「水平方向及び垂直方向の座標値に対」する「接頭辞の最大長」に関して、構成G311、G3111、G312、G3121とは「前記列(行)位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は」「低周波数変換係数領域の幅(高さ)」に基づいて決定される点で共通する。
(4-5)また、(4-2)から、引用発明の「単項接頭辞コード」について、「水平方向及び垂直方向の座標値に対」する「接頭辞の最大値」に関して、構成G321、G322とは「低周波変換係数領域の幅(高さ)」に基づいて、「列(行)位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値」は1が連続するコードワードの最大長が示す値であると決定される点で共通する。
(4-6)一方、「列(行)位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長」について、本願発明は、
・構成G311、G3111、G312、G3121に特定されるように、「cMaxx(cMaxy)に基づいて決定され、cMaxx(cMaxy)は」、「cMaxx = (log2(W2) << 1) -1(cMaxy= (log2(H2) << 1) -1)に基づいて算出され」「前記W2(H2)は、前記低周波変換係数領域の幅(高さ)であり」、
・構成G321、G322に特定されるように、「前記低周波変換係数領域の幅が16であることに基づいて、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1111111であると決定され、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は、7であると決定され」、「前記低周波変換係数領域の高さが16であることに基づいて、前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1111111であると決定され、前記行位置プレフィックス情報を示す前記コードワードの最大長は、7であると決定される」のに対して、
引用発明は、
・「単項接頭辞コード」の「最大長」を決定する具体的な式を特定するものではなく、
・「最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域に位置するように構成するもの」における「制限領域」の幅と高さが32の場合しか示されておらず、この場合の「水平方向及び垂直方向の座標値に対」する「接頭辞の最大長かつ最大値」は、「9」であって「111111111」である場合しか示されていないため、上記幅と高さが16を取り得るかどうか特定されておらず、その結果上記接頭辞の最大長が7、最大値が1111111をとるかどうか不明である、
点において相違する。
(5)以上(1)~(4)を踏まえて、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
【請求項1】
A デコード装置による画像デコード方法において、
B レジデュアル情報を含むビットストリームを受信するステップと、
C 前記レジデュアル情報に基づいて現在ブロックに対する変換係数を導出するステップと、
D 前記導出された変換係数に逆変換を適用して前記現在ブロックに対するレジデュアルサンプルを導出するステップと、
E 前記現在ブロックに対する前記レジデュアルサンプルに基づいて復元ピクチャを生成するステップと、を含み、
F 前記現在ブロックは、少なくとも1つの有効変換係数を含む低周波変換係数領域と、変換係数0を含む前記低周波変換係数領域以外の領域とを含み、
G 前記レジデュアル情報は、前記現在ブロックに対する前記変換係数のうち最後の有効係数の位置に関する最後の有効係数プレフィックス情報及び最後の有効係数サフィックス情報を含み、
G1 前記最後の有効係数プレフィックス情報は、列位置プレフィックス情報及び行位置プレフィックス情報を含み、
G2 前記最後の有効係数サフィックス情報は、列位置サフィックス情報及び行位置サフィックス情報を含み、
G3 前記最後の有効係数の前記位置は、プレフィックスコードワードに基づいて決定され、
G31 前記プレフィックスコードワードは、前記列位置プレフィックス情報に対するコードワード、及び前記行位置プレフィックス情報に対するコードワードを含み、
G311’、G3111’ 前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は低周波変換領域の幅に基づいて算出され、
G312’、G3121’ 前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は低周波変換領域の高さに基づいて算出され、
H 前記レジデュアルサンプルは、前記現在ブロックのサイズに対応して導出され、
I 前記変換係数は、前記低周波変換係数領域に対応して導出され、
G32 前記プレフィックスコードワードの最大長は、前記低周波変換係数領域のサイズに基づいて決定され、
G321’ 前記低周波変換係数領域の幅に基づいて、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1が連続するコードワードの最大長が示す値と決定され、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長が決定され、
G322’ 前記低周波変換係数領域の高さに基づいて、前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1が連続するコードワードの最大長が示す値であると決定され、前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長が決定される、
A 画像デコード方法。
(相違点)
列位置プレフィックス情報及び行位置プレフィックス情報に対するコードワードの最大長cMaxxとcMaxy、低周波変換係数領域の幅W2と高さH2及びこれらに基づいて決定される列位置プレフィックス情報及び行位置プレフィックス情報に対するコードワードの最大二進値、及び最大長cMaxx、cMaxyの具体的な値について、
本願発明は
cMaxx = (log2(W2) << 1) -1及びcMaxy = (log2(H2) << 1) -1
であり、W2及びH2として16をとることで、列位置プレフィックス情報及び行位置プレフィックス情報に対するコードワードの最大二進値が1111111をとり、cMaxxとcMaxyがいずれも4<<1-1すなわち7をとるのに対して、
引用発明は水平方向及び垂直方向の座標値であって現在ブロック内で制限された領域内の位置を示す値に対する単項接頭辞コードの最大長が、最後の非ゼロ変換係数が存在することが保証される領域の幅及び高さによって決まるにすぎず、これを決める具体的な数式及び上記領域の幅と高さとして16を取り得ることが特定されておらず、その結果上記単項接頭辞の最大二進値及び最大長として1111111及び7を取り得るかどうか不明な点。
2 相違点に対する検討及び判断
上記相違点について検討する。
まず、引用文献3記載の事項によれば、符号化ブロックが128×128である時に、左上の16×16の変換係数のみを保持し、残りの係数は計算せずに0とするよう制限することがいえるから、現在ブロック内で当該16×16に制限された領域にのみ最後の非ゼロ変換係数が存在しうること、すなわち当該制限された領域の幅と高さとしてそれぞれ16という値を取り得るといえる。
そうすると、引用文献3記載の事項に基づいて、引用発明の「左上端の」「制限領域」の幅と高さをそれぞれ16に制限し、当該16×16に制限された領域にのみ最後の非ゼロ変換係数が存在するように構成することは当業者にとって適宜なし得る設計的選択事項にすぎないといえる。
また、引用文献2記載の事項によれば、シンタックス要素last_sig_coeff_x_prefix、last_sig_coeff_y_prefixすなわち最後の非ゼロ変換係数の水平方向及び垂直方向の座標値の接頭辞の最大長cMaxについて、その値がcMax=(log2TrafoSize<<1)-1で求められることがいえる。
そうすると、引用発明の最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成する場合においても、当該制限領域までトランケートされた単項接頭辞コードを割り当てるものにおいて、接頭辞の最大長を計算するにあたり、引用文献2記載の事項を適用することで、当該接頭辞の最大長cMaxについて、その値がcMax=(log2TrafoSize<<1)-1で求められるようにすることは当業者が格別の困難なく想到し得たものと認められる。
この場合、TrafoSizeすなわち変換ブロックのサイズとして、上記の当業者が適宜なし得る設計的選択に基づいて16を設定した場合、本願発明の構成G321、G322と同様に、単項接頭辞コード長の最大長及び最大二進値が、本願発明の構成G321、G322と同様にそれぞれ7及び1111111となることは明らかである。
以上を総合すると、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり主張している。
「(b)新請求項1に係る発明は、「前記低周波変換係数領域の幅が16であることに基づいて、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1111111であると決定され、前記列位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大長は、7であると決定され、前記低周波変換係数領域の高さが16であることに基づいて、前記行位置プレフィックス情報に対する前記コードワードの最大二進値は、1111111であると決定され、前記行位置プレフィックス情報を示す前記コードワードの最大長は、7であると決定される」という構成を含みます。
新請求項1に係る発明によると、低周波変換係数領域の幅及び高さが16のとき、コードワードの最大二進値及び最大長が規定されます。低周波変換係数領域の幅及び高さは、さまざまな値で導出されることがあり、新請求項1に係る発明は、低周波変換係数領域の幅及び高さが16である特定の場合を教示します。
また、変換ブロックの幅が32であると仮定すると、変換ブロックの高さは16であり、低周波変換係数領域の幅は16であり、低周波変換係数領域の高さは16です。新請求項1に係る発明によると、列位置プレフィックス情報のコードワードの最大二進値は、1111111になるように決定され、列位置プレフィックス情報に対するコードワードの最大長は、7になるように決定されます。
(c)これに対し、引用文献1~3は、(b)に記載の構成を開示も示唆もしていません。
例えば、引用文献1は、低周波変換係数領域のサイズが16×16の場合を開示していません。
また、引用文献2の177ページの式は、低周波変換係数領域ではなく変換ブロックのサイズに基づいてcMaxを導出します。引用文献2の式から、新請求項1の低周波変換係数領域のサイズが16×16である場合のcMaxは、導出されません。令和3年9月9日付の意見書に記載した通り、引用文献2のcMaxxは、'(log2TrafoSize << 1 ) - 1'、すなわち変換ブロックのサイズに基づいて導出されます。引用文献2は、低周波変換係数領域を全く説明していません。
さらに、引用文献2によると、最後の有効係数が低周波変換係数領域の16×16の内部に位置するときでさえ、列位置プレフィックス情報に対するcMaxは、11111110であり、したがって、列位置プレフィックス情報に対するコードワードの最大長は、8です。すなわち、新請求項1に係る発明と引用文献2に記載の発明との間で、コードワードの長さはおおよそ1異なり、これは、コーディング効率に大きく影響します。低周波変換係数領域の概念は引用文献2に含まれていないため、引用文献2に記載の発明において、新請求項1に係る発明のようなコーディングの効率を期待することはできません。
したがって、新請求項1に係る発明は、当業者が引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易になし得たものでないと考えます。」
上記主張について検討する。
(1)上記2のとおり、引用文献3記載の事項によれば、符号化ブロックが128×128である時に、左上の16×16の変換係数のみを保持し、残りの係数は計算せずに0とするよう制限することがいえるから、現在ブロック内で当該16×16に制限された領域にのみ最後の非ゼロ変換係数が存在しうること、すなわち当該制限された領域の幅と高さとしてそれぞれ16という値を取り得ることから、引用文献3記載の事項に基づいて、引用発明の「左上端の」「制限領域」の幅と高さをそれぞれ16に制限し、当該16×16に制限された領域にのみ最後の非ゼロ変換係数が存在するように構成することは当業者にとって適宜なし得る設計的選択事項にすぎない。
(2)また、上記2のとおり、引用文献2記載の事項によれば、最後の非ゼロ変換係数の水平方向及び垂直方向の座標値の接頭辞の最大長cMaxについて、その値がcMax=(log2TrafoSize<<1)-1で求められることがいえるから、引用発明の最後の非ゼロ変換係数が現在ブロック内で制限された領域内に位置するように構成する場合においても、当該制限領域までトランケートされた単項接頭辞コードを割り当てるものにおいて、接頭辞の最大長を計算するにあたり、引用文献2記載の事項を適用することで、当該接頭辞の最大長cMaxについて、その値がcMax=(log2TrafoSize<<1)-1で求められるようにすることは当業者が格別の困難なく想到し得たものと認められ、この場合、変換ブロックのサイズとして、上記の当業者が適宜なし得る設計的選択に基づいて16を設定した場合が、本願発明の構成G321、G322と同様に、単項接頭辞コード長の最大長及び最大二進値が、本願発明の構成G321、G322と同様にそれぞれ7及び1111111となることは明らかであり、審判請求人が主張するような「列位置プレフィックス情報に対するcMaxは、11111110であり、したがって、列位置プレフィックス情報に対するコードワードの最大長は、8」になるわけではない。
以上のとおり、審判請求書の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-003718