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特許拒絶査定不服審判

2022-003512

エアロゾル発生システム用の気化器組立品

審判番号
2022-003512
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-562509外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月08日
審決日
2023年03月17日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A24F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-562509「エアロゾル発生システム用の気化器組立品」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日国際公開、WO2017/220340、令和 1年 8月22日国内公表、特表2019-522965〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本件に係る出願は、2017年(平成29年)6月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年6月20日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月21日に手続補正がされ、令和3年5月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年11月1日付けで拒絶査定がされた。

これに対し、令和4年3月8日に拒絶査定不服審判の請求(同年4月26日に手続補正)がされたが、当審から同年8月10日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年11月10日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1~13に係る発明は、令和3年8月17日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

(本願発明)

「【請求項1】
エアロゾル発生システム用の気化器組立品であって、
多孔性ガラスでできている毛細管要素であって、前記毛細管要素が第一の端および第二の端を有するものと、
ヒーター要素とを備え、
前記毛細管要素の前記第一の端が液体貯蔵部分と流体連通するように構成されており、
前記ヒーター要素が前記毛細管要素の前記第二の端に提供されており、
前記毛細管要素の気孔サイズが、前記液体貯蔵部分からの液体エアロゾル形成基体が、毛細管作用によって、前記毛細管要素の前記第一の端から前記毛細管要素の前記第二の端に運ばれるように構成されており、
前記毛細管要素の平均気孔サイズが、前記毛細管要素の前記第一の端から前記毛細管要素の前記第二の端への気孔サイズの勾配が付けられるように、前記毛細管要素の前記第一の端にある大きい気孔から前記毛細管要素の前記第二の端にある小さい気孔まで様々であり、
前記小さい気孔の前記平均気孔サイズが2~8ミクロンであり、前記大きい気孔の前記平均気孔サイズが5~500ミクロンである、気化器組立品。」

第3 当審拒絶理由通知の概要

当審拒絶理由通知の概要は、以下のとおりのものである。

理由1(進歩性)

本件出願の請求項1~9、12~13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用例1:国際公開第2015/117705号

なお、請求項10、11については、拒絶の理由を発見しないことを付記する。

第4 引用例1に記載された事項及び引用発明

1.引用例1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付したものである。以下同様。)。

(1)「
[図:0001401049000001.jpg]
」(明細書第1ページ第3行~第6行)

(当審訳)

「本発明はエアロゾル発生システムに関連する。特に、本発明は、電気的に作動する喫煙システムなど、手持ち式のエアロゾル発生システムに関連する。本発明の態様は、エアロゾル発生システム用のカートリッジ、特に、電気的に作動する喫煙システムに関連する。」

(2)「
[図:0001401049000002.jpg]
」(第5ページ第33行~第35行)

(当審訳)

「第一の毛細管材料は、0.1~50μmの繊維サイズ/空孔サイズを持ちうるが、0.5~10μmが好ましく、約4μmが最も好ましい。第一の毛細管材料は、2g/ml未満の密度を持つが、約0.5g/mlが好ましい。」

(3)「
[図:0001401049000003.jpg]
」(第6ページ第5行~第8行)

(当審訳)

「第二の毛細管材料は、1~100μmの繊維サイズ/空孔サイズを持ちうるが、15~40μmが好ましく、約25μmが最も好ましい。第二の毛細管材料は、1g/ml未満の密度を持つが、0.1~0.3g/mlであることが好ましい。」

(4)「
[図:0001401049000004.jpg]
」(第6ページ第13行~第34行)

(当審訳)

「第一および第二の毛細管材料は同一の材料で製造することもでき、異なる空隙率または異なる毛管作用を示すという点でのみ相互に区別されるようにできる。例えば第一の毛細管材料は、圧縮されないかまたは少なくとも圧縮度が低い状態で使用されうる第二の毛細管材料と比較して、その空孔サイズまたは空隙率が減少し、かつその毛管作用が増大するように圧縮できる。
好ましい一つの実施形態で、第一および第二の材料は、同一基部材料の単一の連続的要素から製造される。材料は、毛細管材料内でヒーター要素に向かって空孔サイズまたは空隙率が減少し、例えば連続的に減少するように、空孔サイズまたは空隙率の勾配がヒーター要素または開口部に向けた方向に方向付けられるように処理されることがより好ましい。
少なくとも第一の毛細管材料は、その有効な空孔サイズまたは空隙率が減少するように、液体貯蔵部分のハウジングの第一の部分への挿入後に圧縮されることが好ましい。例えば、単一の連続的要素は、切頭円錐の形状を持ちうるが、ここで、切頭円錐の円形基部の直径は、液体貯蔵部分の円筒形のハウジングの内径よりも大きく、一方で、円錐の切り取られた尖端部の直径は、実質的に液体貯蔵部分の円筒形のハウジングの内径と対応する。挿入後に、毛細管材料の円錐の基部での毛細管材料は、切り取られた尖端部の領域での場合よりも圧縮される。より一層圧縮された材料は第一の毛細管材料を表し、圧縮がより低い材料は第二の毛細管材料を表す。当業者であれば、結果的な圧縮の勾配は、毛細管要素および液体貯蔵部分のハウジング用に選択した相対的形状に依存することを簡単に理解するだろう。」
(5)「
[図:0001401049000005.jpg]
」(第13ページ第1行~第17行)

(当審訳)

「エアロゾル発生装置10は携帯型で、従来的な葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを持つ。装置10は、本体11およびマウスピース部分12を含む。本体11は、電池14(リン酸鉄リチウム電池など)、制御電子回路16およびくぼみ18を含む。マウスピース部分12は、ヒンジ付接続部21によって本体11に接続され、図1a~1cに示す開位置と図1dに示す閉位置との間で移動可能である。マウスピース部分12は、カートリッジ20の挿入および取り外しが許容されるように開位置に置かれ、また以下に説明する通り、システムがエアロゾルの発生に使用される時に閉位置に置かれる。マウスピース部分は、複数の空気吸込み口13および出口15を含む。使用時に、ユーザーは出口を吸うかまたは吸入して、空気を空気吸込み口13からマウスピース部分を通して出口15に引き出し、その後、ユーザーの口または肺に入る。内部バッフル17は、以下に説明する通り、マウスピース部分12を通してカートリッジを通過する空気の流れを強制するために提供される。
くぼみ18は円形断面を持ち、カートリッジ20のハウジング24を受けるサイズである。電気コネクター19は、制御電子回路16および電池14とカートリッジ20上の対応する電気接点との間に電気的接続を提供するために、くぼみ18の側部に提供される。」
(6)「
[図:0001401049000006.jpg]
」(第14ページ第13行~第36行)

(当審訳)

「図2に示すカートリッジは、2つの部分から成る液体貯蔵部分を備えたポリプロピレン製のハウジング24を含む。液体貯蔵部分の第一の部品32は、第一の毛細管材料36および第二の毛細管材料38を含む。液体貯蔵部分の第二の部品34は、液体エアロゾル発生基体で充填または部分的に充填ができる空のタンクである。
カートリッジの上端部には、セラミック基体42が提供されている。基体24は開口部44を画定し、その反対側には電気接点(図示せず)を持つ。ヒーター要素46は、基体32の電気接点に接続され、基体によって画定される開口部44の上に延びる。
第一の毛細管材料36および第二の毛細管材料38はどちらも、液体エアロゾル形成基体を保持する。ヒーター要素46と直接接触する第一の毛細管材料36は第二の毛細管材料38よりも高い熱分解温度(少なくとも160℃以上、例えば約250℃など)を持つ。第一の毛細管材料36は、第二の毛細管材料38がその熱分解温度を上回る温度に晒されないように、ヒーター要素46を第二の毛細管材料38から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たす。第一の毛細管材料36全体での熱勾配は、第二の毛細管材料38がその熱分解温度を下回る温度に晒されるほどの熱勾配である。第二の毛細管材料38は第一の毛細管材料36よりも優れた芯の性能を持つものを選択でき、単位体積あたり第一の毛細管材料36よりも多くの液体を保持でき、また第一の毛細管材料36よりも安価なものとしうる。この例では第一の毛細管材料36はガラス繊維またはガラス繊維を含む要素などの耐熱素子であり、また第二の毛細管材料38は高密度ポリエチレン密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーである。」
(7)「
[図:0001401049000007.jpg]
」(第15ページ第21行~第37行)

(当審訳)

「図4は、ハウジング24が円形断面を持つ正円柱の形状を持つ実施形態を示す。第一および第二の毛細管材料は同一の材料から製造され、切頭円錐の形状を持つ毛細管材料60の単一の連続片として一体成型される。円錐の切り取られた尖端の直径は、円筒形のハウジングの内径に対応する。円錐の基部の直径は、円筒形のハウジングの内径の2倍の大きさである。毛細管材料60は、円錐の基部の表面が円筒形のハウジングの前面と同一面上になるまで円筒形のハウジング24に先端部を先にして挿入される。挿入後に、毛細管材料40が圧縮され、毛細管材料および円筒形のハウジングの相対的形状により、毛細管材料60の圧縮は円筒形のハウジングの端面に向けて増大する。同時に、ハウジングの端面の近くにある毛細管材料の空孔サイズまたは空隙率が円筒形のハウジングの中心に位置する毛細管材料の空孔サイズまたは空隙率よりも小さくなるように、毛細管材料の空孔サイズまたは空隙率が減少する。図4の右側にある円筒形のハウジングの開放端は、円筒形のハウジングの内側が、液体エアロゾル発生基体を保持するためのタンク貯蔵部を形成するように、閉じた状態で提供されている。他方の端には、図2および図3に図示したヒーター組立品を提供できる。」

(8)「Figure 2
[図:0001401049000008.jpg]
」
(9)「Figure 4
[図:0001401049000009.jpg]
」

(10) 摘記事項(8)から、第一の毛細管材料36および第二の毛細管材料38を含む第1の部分32は、第二の毛細管材料38側の端部と第一の毛細管材料36側の端部が看取できる。そして、第二の毛細管材料38側の端部は、液体エアロゾル発生基体で充填または部分的に充填ができる空のタンクと隣接しており、第一の毛細管材料36側の端部には、ヒーター要素46が配置されていることが看取できる。

2.引用発明

以上の摘記事項及び認定事項から、特にFigure 2に着目すると、引用例1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

(引用発明)

「エアロゾル発生システム用のカートリッジであって、
第一の毛細管材料36および第二の毛細管材料38を含む第1の部分32は、第二の毛細管材料38側の端部と第一の毛細管材料36側の端部を有し、
ヒーター要素46を備え、
第二の毛細管材料38側の端部は、液体エアロゾル発生基体で充填または部分的に充填ができる空のタンクと隣接しており、
第一の毛細管材料36側の端部には、ヒーター要素46が配置されており、
第二の毛細管材料38は第一の毛細管材料36よりも優れた芯の性能を持ち単位体積あたり第一の毛細管材料36よりも多くの液体を保持でき、
第一の毛細管材料36はガラス繊維またはガラス繊維を含む要素などの耐熱素子であり、また第二の毛細管材料38は高密度ポリエチレン密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーであり、
第一の毛細管材料36は、約4μmの繊維サイズ/空孔サイズを持ち、
第二の毛細管材料38は、約25μmの繊維サイズ/空孔サイズを持つ、カートリッジ。」

第5 当審の判断

1.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「第一の毛細管材料36および第二の毛細管材料38を含む第1の部分32」、「第二の毛細管材料38側の端部」、「第一の毛細管材料36側の端部」、「ヒーター要素46」、「空のタンク」、「液体エアロゾル発生基体」、「空孔」は、本願発明の「毛細管要素」、「第1の端」、「第2の端」、「ヒーター要素」、「液体貯蔵部分」、「液体エアロゾル形成基体」、「気孔」に相当する。

引用発明の「空のタンク」は、「液体エアロゾル発生基体」で充填できるのであるから、「第二の毛細管材料38側の端部」は、「空のタンク」と「流体連通」するものといえる。してみると、引用発明の「第二の毛細管材料38側の端部は、液体エアロゾル発生基体で充填または部分的に充填ができる空のタンクと隣接して」いることは、本願発明の「前記毛細管要素の第一の端が液体貯蔵部分と流体連通するように構成され」ていることに相当する。

引用発明の「第一の毛細管材料36側の端部には、ヒーター要素46が配置されて」いることは、本願発明の「前記ヒーター要素が前記毛細管要素の第二の端に提供されて」いることに相当する。

また、引用発明の「第一の毛細管材料は、約4μmの繊維サイズ/空孔サイズを持ち」、「第二の毛細管材料は、約25μmの繊維サイズ/空孔サイズを持つ」ことは、「約4μmの空孔サイズ」又は「約25μmの空孔サイズ」が、ぞれぞれ、本願発明の「小さい気孔の前記平均気孔サイズが2~8ミクロン」、「大きい気孔の前記平均気孔サイズが5~500ミクロン」の範囲に含まれることから、本願発明の「前記小さい気孔の前記平均気孔サイズが2~8ミクロンであり、前記大きい気孔の前記平均気孔サイズが5~500ミクロンである」ことに相当する。

そして、引用発明の「第二の毛細管材料38は第一の毛細管材料36よりも優れた芯の性能を持ち単位体積あたり第一の毛細管材料36よりも多くの液体を保持でき」ることは、「第二の毛細管材料38」と「第一の毛細管材料36」のいずれもが「芯」として「液体を保持でき」るのであるから、「空のタンク」からの「液体エアロゾル発生基体」が、「芯」としての「第二の毛細管材料38」及び「第一の毛細管材料36」の毛細管作用によって、「第二の毛細管材料38側の端部」から「第一の毛細管材料36側の端部」に運ばれるものであって、当該「第二の毛細管材料38」と「第一の毛細管材料36」とは、それぞれ、「約4μmの空孔サイズ」と「約25μmの空孔サイズ」を備える毛細管材料なのであるから、本願発明の「前記毛細管要素の平均気孔サイズが、前記液体貯蔵部分からの液体エアロゾル形成基体が、毛細管作用によって、前記毛細管要素の前記第一の端から前記毛細管要素の第二の端に運ばれるように構成されて」いることに相当する。

そして、引用発明の「エアロゾル発生システム用のカートリッジ」は、本願発明の「エアロゾル発生システム用の気化器組立体」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)

エアロゾル発生システム用の気化器組立品であって、

毛細管要素が第一の端および第二の端を有するものと、

ヒーター要素とを備え、

前記毛細管要素の前記第一の端が液体貯蔵部分と流体連通するように構成されており、

前記ヒーター要素が前記毛細管要素の前記第二の端に提供されており、

前記毛細管要素の気孔サイズが、前記液体貯蔵部分からの液体エアロゾル形成基体が、毛細管作用によって、前記毛細管要素の前記第一の端から前記毛細管要素の前記第二の端に運ばれるように構成されており、

前記小さい気孔の前記平均気孔サイズが2~8ミクロンであり、前記大きい気孔の前記平均気孔サイズが5~500ミクロンである、気化器組立品。」

(相違点1)

本願発明では、「毛細管要素」が「多孔性ガラスでできている毛細管要素」であるのに対して、引用発明では、「第一の毛細管材料36はガラス繊維またはガラス繊維を含む要素などの耐熱素子であり、また、第二の毛細管材料38は高密度ポリエチレン密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマー」である点。

(相違点2)

本願発明では、「前記毛細管要素の平均気孔サイズが、前記毛細管要素の前記第一の端から前記毛細管要素の前記第二の端への気孔サイズの勾配が付けられるように、前記毛細管要素の前記第一の端にある大きい気孔から前記毛細管要素の前記第二の端にある小さい気孔まで様々」であるのに対して、引用発明では、そのような構成がない点。

2.当審の判断

上記相違点1について検討する。

引用例1には、「第一および第二の毛細管材料は同一の材料で製造することもでき、異なる空隙率または異なる毛管作用を示すという点でのみ相互に区別されるようにできる。」(摘記事項(4))、「第一および第二の毛細管材料は同一の材料から製造され、切頭円錐の形状を持つ毛細管材料60の単一の連続片として一体成型される。」(摘記事項(7))と記載されているから、引用発明において、「第一の毛細管材料36」と「第二の毛細管材料38」とを「同一の材料で製造」することは、引用例1に示唆されているといえる。

さらに引用例1には、「ヒーター要素46と直接接触する第一の毛細管材料36は第二の毛細管材料38よりも高い熱分解温度(少なくとも160℃以上、例えば約250℃など)を持つ。第一の毛細管材料36は、第二の毛細管材料38がその熱分解温度を上回る温度に晒されないように、ヒーター要素46を第二の毛細管材料38から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たす。」(摘記事項(6))とも記載されているから、「第一の毛細管材料36」と「第二の毛細管材料38」とを「同じ材料で製造」する場合に、「第一の毛細管材料36」を構成する「ガラス繊維またはガラス繊維を含む要素などの耐熱素子」を採用することも、引用例1に示唆されたことである。

してみると、引用発明において、「第一の毛細管材料36」と「第二の毛細管材料38」とからなる「毛細管要素」を「毛細管材料の単一の連続片として一体成形され」た「多孔性ガラス」とすることは、引用例1中の示唆から当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について検討する。

引用例1には、さらに「好ましい一つの実施形態で、第一および第二の材料は、同一基部材料の単一の連続的要素から製造される。材料は、毛細管材料内でヒーター要素に向かって空孔サイズまたは空隙率が減少し、例えば連続的に減少するように、空孔サイズまたは空隙率の勾配がヒーター要素または開口部に向けた方向に方向付けられるように処理されることがより好ましい。」(摘記事項(4))と記載されているから、引用例1には、「毛細管材料内でヒーター要素に向かって空孔サイズまたは空隙率が減少し、例えば連続的に減少するように、空孔サイズまたは空隙率の勾配がヒーター要素または開口部に向けた方向に方向付けられるように処理される。」ことが示唆されているといえる。

してみると、引用発明において、「毛細管要素の平均気孔サイズが、前記毛細管要素の前記第一の端から前記毛細管要素の前記第二の端への気孔サイズの勾配が付けられるように、前記毛細管要素の前記第一の端にある大きい気孔から前記毛細管要素の前記第二の端にある小さい気孔まで様々」であるように構成することは、引用例1中の示唆から当業者が容易に想到し得たことである。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用例1に記載された示唆から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.審判請求人の主張

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審判請求人は、令和4年11月10日に提出した意見書で、引用例1について以下のように主張する。

「・・・この同一材料の単一の連続片が何であるかについては開示も示唆もされていません。一方で第一の毛細管材料36と第二の毛細管材料38が別個の構成要素である場合、上述のようにそれらがそれぞれガラス繊維とポリマーから形成されることも記載されています。そのため、材料の単一の連続片がこれらの材料のいずれかから形成され得るのか、または何らかの他の材料から形成され得るのかは教示されていません。」

「・・・当該技術分野の当業者がこの多数のリストから「ガラス繊維」を選択する明確な理由はありません。仮に、引用文献1が開示している多数の材料のリストの中からガラス繊維に着目したとしても、当業者が、ガラス繊維の繊維を多孔性のものと考える理由も、ガラス繊維を構成するガラスが多孔性であると考える理由も全くなく、ガラス繊維についての開示から多孔性ガラスという技術思想を抽出することはあり得ません。」

しかしながら、上記2.で説示したとおり、「第一の毛細管材料36」と「第二の毛細管材料38」とを「同じ材料で製造」する場合に、「ガラス繊維またはガラス繊維を含む要素などの耐熱素子」を採用すること、及び「毛細管材料内でヒーター要素に向かって空孔サイズまたは空隙率が減少し、例えば連続的に減少するように、空孔サイズまたは空隙率の勾配がヒーター要素または開口部に向けた方向に方向付けられるように処理される。」ことは、それぞれ引用文献1に示唆されているのであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

また、審判請求人は、上記意見書において「本願明細書の段落[0023]には、毛細管要素の気孔サイズの勾配は一般に「比較的大量の液体が毛細管要素の第一の端で液体貯蔵部分から、毛細管要素の第二の端に運ばれること」を可能にすることが明示されています。また、本願明細書の段落[0021]には、毛細管要素の第二の端の2~8ミクロンの小さな気孔サイズは「流量を最適化する」と同時に「液体が毛細管要素から漏れ出るのを防止する」という有利な効果を奏することが記載されています。

これらの有利な技術的効果は、引用文献1では何らの開示や示唆もされていません。そのため、本願発明における特徴的な構成である気孔サイズの勾配は引用文献1の示唆から容易に想到し得たものではありません。」と主張するが、引用文献1には、「第一の毛細管材料は、0.1~50μmの繊維サイズ/空孔サイズを持ちうるが、0.5~10μmが好ましく、約4μmが最も好ましい。」と明記されており、その効果についても、当業者が予測し得た範囲内のものにすぎないから、審判請求人の主張を採用することはできない。

4.小括

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-003512

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