特許拒絶査定不服審判
2024-005152
エアロゾル供給システムとコンピュータとを備えるシステム
- 審判番号
- 2024-005152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-522315外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年03月27日
- 審決日
- 2026年02月18日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
- 【請求人代理人】池田 成人
- 【請求人代理人】酒巻 順一郎
- 【請求人代理人】野田 雅一
- 【請求人代理人】川井 夏樹
- 分類
- P18 .121-WZ (A24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-522315「エアロゾル供給システムとコンピュータとを備えるシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月22日国際公開、WO2021/074608、令和4年12月21日国内公表、特表2022-552973〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、2020年(令和2年)10月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年10月16日、(GB)グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、2020年7月10日、(GB)グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月16日付けで拒絶理由通知がされ、令和5年6月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和5年7月27日付けで拒絶理由通知がされ、令和5年11月2日に意見書が提出されたが、令和5年11月24日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、令和6年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和7年5月12日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和7年8月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1-24に係る発明は、令和7年8月13日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
エアロゾル生成材料からエアロゾルを生成するように構成されたエアロゾル供給システムと、
コンピュータであって、
前記エアロゾル生成材料から前記エアロゾル供給システムのユーザに送達された成分の量に関するユーザ挙動データを取得し、
取得された前記ユーザ挙動データに基づいて、送達されるべき成分の量に関するデフォルトユーザ挙動を決定し、
前記エアロゾル供給システムとの前記ユーザによる現在の相互作用であって一つの吸入又は複数の吸入である相互作用を監視し、
現在のユーザの相互作用が、送達された成分の量に関する前記デフォルトユーザ挙動から予め定められた量だけ逸脱する場合には、前記ユーザに通知を提供する、
ように構成された、コンピュータと、
を備えるシステム。」
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の理由2(進歩性)の概要は、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された次の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.韓国公開特許第10-2017-0056054号公報
引用文献2.国際公開2016/075746号
第4 当審の判断
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「
[図:0001436546000001.jpg]
」
(当審訳:「[0001] 本発明は、着脱式喫煙量制御装置に関し、より詳細には、ユーザの喫煙実態をモニタリングできるように改良した電子タバコの喫煙量制御装置の提供に関する。
[0002] 一般的にタバコは嗜好品ではあるが人体にさまざまな疾病をもたらすことは広く一般的にタバコは嗜好品ではあるが、人体に様々な病気を引き起こすことは広く知られている。タバコは各種発がん誘発物質であるニコチン、タールなど人体に有害な成分が多く含まれており、肺がんや循環器疾患などの各種疾患の発生及び死亡の原因になる可能性がある。また、タバコは周囲の人に間接喫煙による被害を与える可能性があるため、最近では禁煙区域が増加している傾向にある。
[0003] したがって、禁煙運動が社会的に広く展開されているが、すでに喫煙している愛煙家たちはその中毒性と習慣性のためになかなかやめられず、大きな実効を得られないのが実情である。
[0004] 禁煙のためには、喫煙者がどれだけ多くのニコチン、タールなどの有毒物質を吸入しているのかを知らせる必要がある。
[0005] また、喫煙者にもそれぞれの喫煙習慣があり、例えば1本のタバコを消費しても吸入するニコチンの量は人によって異なる。このような喫煙習慣について正確にユーザに知らせることができれば、喫煙者に警戒心を植え付けることができ、また、たとえ喫煙していても少しは健康的な喫煙習慣を持つように誘導することもできるだろう。」)
イ 「
[図:0001436546000002.jpg]
[図:0001436546000003.jpg]
[図:0001436546000004.jpg]
」
(当審訳:「[0020] 本発明の技術が適用される着脱式喫煙量制御装置(10)及びコンピューティング装置を含み、本実施例では、コンピューティング装置としてモバイル機器(20)を例示する。通信が可能なコンピューティング装置として、必ずしもモバイル機器(20)に限定される必要はなく、一般的なデスクトップ及びラップトップコンピュータ、スマートTVなど全ての通信手段を備えたコンピューティング装置であってもよい。以下では、説明の便宜上、モバイル機器(20)を中心に説明することにする。
[0021] 喫煙量制御装置(10)は、電子タバコ(1)が装着されると、当該電子タバコ(1)を吸入するユーザの喫煙パターンを測定して、モバイル機器(20)に近距離無線通信(ブルートゥース(bluetooth)またはWiFi(WiFi)通信など)を通じて提供する。したがって、ユーザは、喫煙量制御装置(10)に電子タバコ(1)を装着して喫煙すると、スマートフォンのようなモバイル機器(20)を利用して自分の喫煙習慣を確認することができる。
[0022] 例えば、喫煙パターン情報として、タバコが装着された回数、一つのタバコについてユーザによって吸入された回数(以下、吸入回数と呼ぶ)、喫煙する時間(以下、喫煙時間)及び吸入されるたびに吸入される程度(以下、1回吸入量)、タバコを吸う時間間隔はどのくらいか、又は最後のタバコを吸った時間はいつだったかなどが含まれることができる。つまり、喫煙量制御装置(10)は、タバコが装着されることをセンシングし、ユーザの吸入程度を測定し、タバコが装着された状態で維持される時間などを測定する。
[0023] 本実施例では、喫煙量制御装置(10)が直接近距離無線通信を利用して喫煙パターン情報をモバイル機器(20)に送信する方式であるが、他の実施例による図2を参照すると、喫煙量制御装置(10)と連結されるパイプホーム装置(30)が近距離無線通信でモバイル機器(20)に喫煙パターン情報を送信することもできる。すなわち、図2に示したシステムによれば、パイプホーム装置(30)が喫煙量制御装置(10)からの喫煙パターン情報がモバイル機器(20)に提供されるように仲介するものである。
[0024] 一例によると、喫煙量制御装置(10)は、喫煙パターン情報を保存しており、パイプホーム装置(30)と結合されると、保存された喫煙パターン情報をパイプホーム装置(30)に接続された通信端子を介して提供することである。そして、喫煙量制御装置(10)は、結合されたパイプホーム装置(30)から電源を印加されて充電することができる。簡単に言えば、ユーザは、喫煙量制御装置(10)を利用し、バッテリーを充電するためにパイプホーム装置(30)に喫煙量制御装置(10)を結合させると、バッテリー充電と共に喫煙量制御装置(10)に保存された喫煙パターン情報がパイプホーム装置(30)に提供され、後日、自分のモバイル機器(20)でその情報を確認することができるようになる。
[0025] そして、モバイル機器(20)は、受信された喫煙パターン情報を日付別、月別などに統計して、統計情報をユーザに提供することができるだろう。 したがって、ユーザは、自分が一日または一ヶ月にどれだけのタバコを消費するか、どのくらいの頻度で喫煙するかなどの喫煙習慣を確認することができ、さらに、統計情報に基づいてタバコを減らしているか、または喫煙習慣が良くなっているかについての推移まで確認することができるようになる。
[0026] また、モバイル機器(20)は、通信網を介して結合された統合サーバー(40)にユーザの喫煙パターン情報を提供することができ、統合サーバー(40)は、各会員から受信される情報を基に全体的な統計を算出することができ、これに対する情報をモバイル機器(20)に提供することができる。例えば、統合サーバー(40)が全体的な統計情報として喫煙者の一日の平均喫煙量を算出した場合、これに対する情報を受信したモバイル機器(20)は、ユーザの喫煙量と平均喫煙量が比較された情報を提供することができるだろう。
[0027] 喫煙量制御装置(10)の構成を示す図3を併せて参照すると、喫煙量制御装置(10)は、結合認識部(300)、吸入量測定部(310)、通信部(320)、メモリ(330)、遮断部(340)、空気吸引部(350)及び制御部(360)を含むことができる。」)
ウ 「
[図:0001436546000005.jpg]
」
(当審訳:「[0029] 吸入量測定部(310)は、ユーザが吸入口(12)を通して吸入する吸入量を測定するためのもので、図1の参照番号13と同じ位置に設けられ、結合部(11)から吸入口(12)方向に流れる空気の量を測定する。一例によると、吸引量測定部(310)は、ファン(fan)を備え、ファンが空気の流れに沿って回転する量を測定することで吸引量を算出することができる。他の一例によると、吸引量測定部(310)は、片側だけが固定された棒と加速度センサーを備え、空気の流れに応じて棒が揺れる加速度を測定することにより、吸引量を算出することもできる。もちろん、これに限定されるものではなく、上述した2つの方式以外にも、空気の流れとその量を測定することで吸引量を算出する全ての方式が吸引量測定部(310)として利用できるだろう。他の実施例によると、吸入量測定部(310)は、必ずしも空気の定量的測定ではなく、一定強度以上の空気が通過する回数に基づいて吸入量を測定することができる。つまり、ユーザが何回吸入を行ったかが吸入量として測定されるのである。これにより、精密な空気の流れを測定する必要がなく、その実装のためのコストを削減することができる。」)
エ 「
[図:0001436546000006.jpg]
」
(当審訳:「[0035] 制御部(360)は、結合認識部(300)によってタバコが装着されたことが認識されると、吸入量測定部(310)を駆動させ、吸入量測定部(310)によって測定された吸入量に関する情報を基に、上述したような喫煙パターン情報を生成してメモリ(330)に保存する。つまり、制御部(360)は、吸入回数、喫煙時間及び一回吸入量などに応じた喫煙パターンをタバコ一本又は一箱単位で、又は一定期間(一日又は一時間など)単位で算出する。
[0036] そして、通信部(320)によって予め指定された外部装置(すなわち、モバイル機器(20)又はパイプホーム装置(30)など)との通信が可能になると、制御部(360)は、メモリ(330)に保存された喫煙パターン情報を通信部(320)を介して接続された外部装置に送信する。ここで、制御部(360)は、メモリ(330)に保存された喫煙パターン情報が外部装置に提供されると、そのデータを初期化することができる。
[0037] したがって、ユーザは、モバイル機器20を介して自分の喫煙習慣を確認することができるようになる。ここで、一例によれば、ユーザは、喫煙量を減らすために、喫煙に対する可用値をモバイル機器(20)に設定することができる。簡単な例を挙げると、数値的に一日に100mlの喫煙量を可用値として設定する場合、モバイル機器(20)の当該可用値に対する情報として可用喫煙情報を喫煙量制御装置(10)に伝達する。したがって、一例によると、喫煙量制御装置(10)は、一日の喫煙量が可用値を超えないように、喫煙を遮断することができる。すなわち、制御部(360)は、遮断部(340)を制御してユーザの喫煙を遮断するが、一例によると、遮断部(340)は、結合部(11)に具備されてタバコが挟まれるのを遮断したり、他の例によると、本体内部に具備されて吸入口(12)を通じて外部に空気が流出するのを遮断するように実装することができる。結合部(11)に遮断部(340)としてストッパーが備えられ、ストッパーが制御部(360)の制御によって結合部(11)を閉じたり開いたりするように形成されるものである。 または、本体内部に多数の穴が形成されたフィルターが遮断部(340)として備えられ、当該穴が閉じたり開いたりするように実装して遮断機能を実行することができる。」)
オ 「
[図:0001436546000007.jpg]
」
(当審訳:「[0042] 他の一例によると、制御部(360)は、モバイル機器(20)から送信されて受信された可用性喫煙情報による可用性値に吸入量が達した場合、備えられたスピーカー(図示せず)を制御して警告音を出力し、空気吸入口(15)がユーザによって手動で開かれる場合、警告音出力を中断させることができる。つまり、喫煙量が可用値を超える場合、喫煙量を減らすようにユーザに警告音を出力するものであり、ユーザが空気吸入口(15)を開放したり、挟まれたタバコを抜く場合、警告音出力を中断することができる。
[0043] 本実施例では、可用値を超える吸入量が存在する場合、スピーカーを具備して警告音を出力する内容で説明したが、他の実施例によれば、LEDを具備して光を出力したり、振動手段を具備して振動を駆動することにより、ユーザが認識するようにすることもできる。つまり、LEDが点灯したり、振動が鳴るようにすることで、ユーザが喫煙量を減らさなければならないことを認識し、空気吸入口(15)を閉じたり、タバコをこれ以上喫煙しないように誘導することができる。」)
カ 「
[図:0001436546000008.jpg]
」(図1)
キ 「
[図:0001436546000009.jpg]
」(図2)
ク 「
[図:0001436546000010.jpg]
」(図3)
(2)上記(1)から認められる事項
ア 記載事項イの段落[0021]から、喫煙量制御装置10は、電子タバコ1を装着して喫煙を行うように構成されたものである。
そして、電子タバコにおいての喫煙されるものが、エアロゾル生成材料から生成されたエアロゾルであるというにおける技術常識から、上記喫煙を行うように構成されたものは、エアロゾル生成材料から、エアロゾルを生成するように構成されたものといえる。
よって、引用文献1の喫煙量制御装置10は、エアロゾル生成材料から、エアロゾルを生成するように構成されたものといえる。
イ 記載事項イの[0027]、記載事項エの[0035]及び図3の図示事項から、喫煙制御装置10は、結合認識部3010、吸入量測定部310、通信部320、メモリ330、遮断部340、空気吸引部350及び制御部360を有しており、吸入量測定部310によって測定された吸入量に関する情報を基に、制御部360が喫煙パターン情報を生成し、メモリ330に保存するものといえる。
ウ 上記イで認定した吸入量測定部310によって測定される吸入量に関する情報は、記載事項ウの[0029]から、ユーザが喫煙制御装置10の吸入口12を通して吸入する吸入量喫煙制御装置10を用いたユーザとの現在の相互作用であって、一つの吸入又は複数の吸入である相互作用を測定して得られたものといえる。
エ 記載事項エの[0037]には、ユーザが喫煙量を減らすために、喫煙に対する可用値をモバイル機器20に設定し、この可用値がモバイル機器から、喫煙量制御装置10に伝達されることが開示されているといえる。
また、記載事項オの[0042]には、モバイル機器20から受信した可用値に吸入量が達した場合に、制御部360がスピーカーを制御して警告音を出力することが開示されているといえる。
そして、上記ウで認定した事項を併せて検討すると、引用文献1の制御部360は、吸入量測定部310によって測定される吸入量が、ユーザの設定した可用値に達した場合に、ユーザに警告音を出力するように構成されているといえる。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)及び(2)を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明〕
「エアロゾル生成材料から、エアロゾルを生成するように構成された喫煙量制御装置10であって、
喫煙制御装置10が、結合認識部310、吸入量測定部310、通信部320、メモリ330、遮断部340、空気吸引部350及び制御部360を有し、
吸入量測定部310によって測定された吸入量に関する情報を基に、制御部360が喫煙パターン情報を生成し、メモリ330に保存し、
吸入量測定部310によって測定される吸入量に関する情報が、ユーザが喫煙制御装置10の吸入口12を通して吸入する吸入量を測定して得られたものであり、
制御部360は、吸入量測定部310によって測定される吸入量が、ユーザの設定した可用値に達した場合に、ユーザに警告音を出力するように構成されている喫煙量制御装置10。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「[0001] 本発明は、電池から供給される電力によってエアロゾル源を霧化する非燃焼型香味吸引器、非燃焼型香味吸引器で用いる制御方法に関する。」
イ 「[0070] 図15に示すように、非燃焼型香味吸引器1は、報知部40及び制御回路50を有する。
[0071] 報知部40は、各種情報を報知する。報知部40は、発光素子によって構成されていてもよく、振動素子によって構成されていてもよく、音出力素子によって構成されていてもよい。報知部40は、発光素子、振動素子及び音出力素子のうち、2以上の素子の組合せであってもよい。報知部40は、電源ユニット10に設けられることが好ましいが、実施形態は、これに限定されるものではない。報知部40は、第1カートリッジ20に設けられてもよく、第2カートリッジ30に設けられてもよい。
[0072] 制御回路50は、検知部51と、報知制御部52と、電力制御部53とを有する。
[0073] 検知部51は、パフ動作を検知する。このような場合には、検知部51は、吸引センサに接続されており、吸引センサの出力結果に基づいてパフ動作を検知する。また、検知部51は、電池11から霧化部22への電力供給を検知する。このような場合には、検知部51は、電池11と霧化部22とを接続する電力線上に設けられた電圧センサに接続されており、電圧センサの出力結果に基づいて電力供給を検知する。」
ウ 「[0081] 電力制御部53は、電池11に対する指示として、霧化部22によって霧化されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように電池11に指示する所定指示を電池11に対して出力する。所定指示の出力は、パフ動作ごとに1回行われてもよい。また、電力制御部53は、パフ動作が行われているパフ期間において霧化部22への電力の出力を電池11に指示するが、パフ動作が行われていない非パフ期間において霧化部22への電力の出力を電池11に指示しないことに留意すべきである。なお、パフ期間及び非パフ期間は、上述した検知部51によって検知されるパフ動作によって特定可能である。
[0082] ここで、電力制御部53は、霧化部22によって霧化されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように所定指示を制御する。例えば、電力制御部53は、電池11の蓄電量の減少に伴って、所定指示を変更する。また、電力制御部53は、霧化部22への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、電池11から霧化部22に対する電力供給を停止する。言い換えると、電力制御部53は、ユーザが実際にパフ動作を行っているパフ期間内であっても、パフ期間が所定期間を超えた場合に、電池11から霧化部22に対する電力供給を停止する。
[0083] また、電力制御部53は、パフ動作を開始してから所定期間が経過する前であっても、パフ動作が終了した場合には、電池11から霧化部22に対する電力供給を停止する。これによって、パフ動作が行われていない期間(非パフ期間)でエアロゾルが発生しないため、非パフ期間においてエアロゾル流路内にエアロゾルが滞留、凝縮することによって液滴が発生し、非パフ期間に続くパフ動作で生成するエアロゾルが液滴にトラップされる事態が抑制され、所望範囲のエアロゾル量供給の妨げとなる虞及び液滴に起因する喫味の劣化などを抑制することができる。
[0084] ここで、所定期間は、ユーザのパフ期間の統計から導き出される標準パフ期間の上限値よりも短い。さらには、所定期間は、ユーザのパフ期間の統計から導き出されるパフ期間の平均値よりも短いことが好ましい。パフ期間の平均値は、標準パフ期間の上限値よりも短いことは勿論である。
[0085] 所定期間は、ユーザのパフ期間のばらつきを抑制するために定められるため、パフ期間が所定期間よりも長いユーザが一定数以上存在している必要がある。このよな観点から、所定期間は、統計から導き出されることが好ましい。さらに、所定期間が統計から導き出されるパフ期間の平均値よりも短いことによって、過半数のパフ動作における霧化部22への通電時間を所定期間に固定することができるため、ユーザのパフ期間のばらつきに起因するエアロゾルの量の変動を抑制することができる。
[0086] 例えば、所定期間は、1秒以上3秒以下である。所定期間が1秒以上であることによって、霧化部22への通電時間がパフ期間に比べて短くなり過ぎず、ユーザに与える違和感が軽減される。一方で、所定期間が3秒以下であることによって、霧化部22への通電時間が所定期間に固定されるパフ動作を一定数以上とすることができる。
[0087] さらに、所定期間は、1.5秒以上2.5秒以下であってもよい。これによって、ユーザに与える違和感がさらに軽減され、霧化部22への通電時間が所定期間に固定されるパフ動作を増やすことができる。
[0088] 実施形態において、所定期間は、予め定められていることが好ましい。このようなケースにおいては、所定期間は、複数のユーザのパフ期間の統計から導き出される標準パフ期間に応じて定められることが好ましい。
[0089] なお、標準パフ期間とは、ユーザのパフ期間の統計から導き出すことが可能であり、複数のユーザのパフ期間の中の下限値と複数のユーザのパフ期間の中の上限値との間の期間である。下限値並びに上限値は、ユーザのパフ期間データの分布に基づいて、例えば、平均値の95%信頼区間の下限値並びに上限値として導出してもよく、m±nσ(ここで、mは平均値、σは標準偏差、nは正の実数)として導出してもよい。」
(2)引用文献2記載技術事項
上記(1)を踏まえると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2記載技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献2記載技術事項〕
「非燃焼型香味吸引器1が制御回路50を有し、制御回路50が電力制御部53を有し、電力制御部53が、霧化部22への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、電池11から霧化部22に対する電力供給を停止し、所定期間が、ユーザのパフ期間の統計から導き出される標準パフ期間の上限値よりも短いこと。」
3 対比・判断
(1)対比
ア 本願発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「喫煙量制御装置10」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本願発明の「エアロゾル供給システム」に相当する。
そうすると、引用発明の「エアロゾル生成材料から、エアロゾルを生成するように構成された喫煙量制御装置10」は、本願発明の「エアロゾル生成材料からエアロゾルを生成するように構成されたエアロゾル供給システム」に相当する。
イ また、引用発明の「吸入量測定部310によって測定された吸入量に関する情報」は、本願発明の「ユーザに送達される成分の量に関する」データに相当する。また、引用発明の「制御部360が喫煙パターン情報を生成し、メモリ330に保存」することは、ユーザの「喫煙パターン情報」が取得されるものといえるから、本願発明の「ユーザ挙動データを取得」することに相当する。
そうすると、引用発明の「吸入量測定部310によって測定された吸入量に関する情報を基に、制御部360が喫煙パターン情報を生成し、メモリ330に保存」することは、「エアロゾル生成材料」から「喫煙制御装置10」の「ユーザに送達される成分の量に関する」「ユーザ挙動データを取得する」ものといえるから、本願発明の「前記エアロゾル生成材料から前記エアロゾル供給システムのユーザに送達された成分の量に関するユーザ挙動データを取得」することに相当する。
ウ また、引用発明の「吸入量測定部310によって測定される吸入量に関する情報が、ユーザが喫煙制御装置10の吸入口12を通して吸入する吸入量を測定して得られたものであ」ることにおいて、「吸入量を測定」することは、吸引を監視するものといえる。
そして、ユーザが喫煙制御装置10の吸入口12を通して吸入することは、喫煙制御装置10とユーザとが相互に作用するものであり、測定された時点の吸入量、すなわち、現在の吸入についての吸引を監視しているといえる。
そうすると、引用発明の「吸入量測定部310によって測定される吸入量に関する情報が、ユーザが喫煙制御装置10の吸入口12を通して吸入する吸入量を測定するものであ」ることは、本願発明の「前記エアロゾル供給システムとの前記ユーザによる現在の相互作用であって一つの吸入又は複数の吸入である相互作用を監視」することに相当する。
エ また、引用発明の「吸入量測定部310によって測定される吸入量」及び「ユーザに警告音を出力するように構成されている」は、本願発明の「現在のユーザの相互作用」及び「ユーザに通知を提供する」に相当する。
そうすると、引用発明の「制御部360」が「吸入量測定部310によって測定される吸入量が、ユーザの設定した可用値に達した場合に、ユーザに警告音を出力するように構成されている」ことは、本願発明の「現在のユーザの相互作用が、送達された成分の量に関する前記デフォルトユーザ挙動から予め定められた量だけ逸脱する場合には、前記ユーザに通知を提供する」ことと、「現在のユーザの相互作用が所定の条件に該当する場合には、前記ユーザに通知を提供する」ことの限りにおいて一致する。
オ 本願発明における「システム」が、「エアロゾル供給システム」及び「コンピュータ」を有することの技術的意義を確認すると、本願明細書の段落【0040】には、「・・・本明細書で後述するように、コンピュータは、エアロゾル供給システム10又は遠隔デバイス40に位置されてもよい。・・・」と記載されているから、「システム」が、「エアロゾル供給システム」及び「コンピュータ」を有することには、「エアロゾル供給システム」自体に「コンピュータ」が位置するものも含んでいるといえる。すなわち、「コンピュータ」の位置については、「エアロゾル供給システム」の内部にあるものも、外部にあるものも、その射程に含まれるといえる。
そうすると、引用発明の「結合認識部300、吸入量測定部310、通信部320、メモリ330、遮断部340、空気吸引部350及び制御部360」は、本願発明の「エアロゾル供給システム」に相当する「喫煙量制御装置10」が有する、すなわち「喫煙量制御装置10」の内部にあり、上記イ-エで説示した機能を奏するように構成された本願発明の「コンピュータ」に相当するといえる。
カ よって、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「エアロゾル生成材料からエアロゾルを生成するように構成されたエアロゾル供給システムと、
コンピュータであって、
前記エアロゾル生成材料から前記エアロゾル供給システムのユーザに送達された成分の量に関するユーザ挙動データを取得し、
前記エアロゾル供給システムとの前記ユーザによる現在の相互作用であって一つの吸入又は複数の吸入である相互作用を監視し、
現在のユーザの相互作用が所定の条件に該当する場合には、前記ユーザに通知を提供する、
ように構成された、コンピュータと、
を備えるシステム。」
〔相違点1〕
本願発明では、「取得された前記ユーザ挙動データに基づいて、送達されるべき成分の量に関するデフォルトユーザ挙動を決定」するものであるのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。
〔相違点2〕
「所定の条件に該当する場合」について、本願発明では、「送達された成分の量に関する前記デフォルトユーザ挙動から予め定められた量だけ逸脱する場合」であるのに対して、引用発明では、「ユーザの設定した可用値に達した場合」である点。
(2)判断
ア 相違点1について
上記相違点1について、まず、引用発明における「ユーザの設定した可用値」の技術的意義について検討し、その後、引用文献2記載技術事項と本願発明との対比を行い、さらに、引用発明に対して引用文献2記載技術事項を適用する動機付けについて検討し、さらに、相違点1に係る本願発明の構成を得ることについて検討する。
(ア)引用発明における「ユーザの設定した可用値」の技術的意義について
上記1(1)エの段落[0037]の記載を踏まえれば、引用発明における「ユーザの設定した可用値」とは、ユーザが自分の喫煙習慣を確認して、喫煙量を減らすために、自身で設定するものである。
そして、ここで確認される自分の喫煙習慣とは、上記1(1)イの段落[0024]~[0026]の記載を踏まえれば、ユーザの喫煙パターン情報から統計処理された情報として提供されるものと理解される。
そうすると、喫煙習慣を正確にユーザが把握し、健康的な喫煙習慣を持つように誘導することを課題として(段落[0005]参照)、測定される吸入量が「可用値」に達した場合に、ユーザに警告音を出力するような解決手段を採用したことが、引用発明の技術的意義であって、引用発明の「ユーザの設定した可用値」については、「ユーザの設定した」態様が記載されているほか、統計処理された情報を参照する態様も示唆されているといえる。
(イ)引用文献2記載技術事項と本願発明との対比について
一般に、喫煙物品の「パフ期間」は、その他の条件が等しければ、パフ期間の長短と、喫煙物品を用いることでパフによって送達される成分量の多少とが関連することが技術常識である。
また、喫煙物品におけるパフの期間がコンピュータを用いて取得されることも技術常識である。
そうすると、引用文献2記載技術事項の「ユーザのパフ期間」は、パフの期間が、非燃焼型香味吸引器1を用いてユーザに送達される香味成分の量に関するものといえるから、本願発明の「コンピュータ」が取得する「ユーザ挙動データ」に相当するといえる。
また、引用文献2記載技術事項の「標準パフ期間」は、上記2(1)ウの段落[0084]~[0089]の記載及び統計処理が一般的にコンピュータを用いて行われるという技術常識を踏まれば、ユーザのパフ期間の統計から、導き出されるものであるから、本願発明の「コンピュータ」が決定する「デフォルトユーザ挙動」に相当する。
すなわち、引用文献2記載技術事項において、取得された「ユーザのパフ期間」から(コンピュータを用いて)「標準パフ期間」を導くことは、本願発明の「コンピュータ」が「取得された前記ユーザ挙動データに基づいて、送達されるべき成分の量に関するデフォルトユーザ挙動を決定」するものに相当するといえる。
(ウ)引用発明に対して引用文献2記載技術事項を適用する動機付けについて
引用発明の「ユーザの設定した可用値」は、上記(ア)で説示したとおり、ユーザ自身が、ユーザの喫煙パターン情報に基づいて統計処理された情報を参照して設定することが示唆されているから、引用文献2記載技術事項の「標準パフ期間」と、ユーザの喫煙習慣に関する値で共通し、ユーザの喫煙習慣を健康的に導くという技術的意義も共通している。さらに、両者は、ユーザがエアロゾル供給システムを用いて行う吸入に関する指標が、所定のパラメータと対比して逸脱する場合にエアロゾル供給システムの制御を行うという制御上の作用・機能においても共通している。
したがって、引用発明に対して引用文献2記載技術事項を適用する動機付けは存在するといえる。
(エ)相違点1に係る本願発明の構成を得ることについて
以上を踏まえると、引用発明の可用値の設定に関して、ユーザ自身が設定することに代えて、引用文献2記載技術的事項における、取得された「ユーザのパフ期間」から(コンピュータを用いて)「標準パフ期間」を導く点を踏まえて、統計から導き出される標準的な値とすること、すなわち、引用発明の吸入量測定部310によって測定された吸入量に関する情報であって、メモリ330に保存された喫煙パターン情報を統計処理して、標準的な値(「送達されるべき成分の量に関するデフォルトユーザ挙動」に相当)とし、もって、相違点1に係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって容易になし得た事項にすぎない。
イ 相違点2について
引用文献2記載技術事項は、非燃焼型香味吸引器1の制御(具体的には電力供給の停止)を行う契機について、ユーザがエアロゾル供給システムを用いて行う吸入に関する指標である霧化部22への電力供給を開始してからの期間が、標準パフ期間よりも短い所定期間を経過した場合、すなわち標準パフ期間から予め定められた量だけ逸脱した場合とするものである。
そして、上記ア(イ)で説示したとおり、引用文献2記載技術事項の「ユーザのパフ期間」及び「標準パフ期間」は、それぞれ、本願発明の「コンピュータ」が取得する「ユーザ挙動データ」及び「コンピュータ」が決定する「デフォルトユーザ挙動」に相当するから、引用文献2記載技術事項において、標準パフ期間の上限値よりも短い「所定期間」を定め、この「所定期間」に基づいて制御の契機とすることは、本願発明の「エアロゾル供給システム」を制御するための契機である「送達された成分の量に関する前記デフォルトユーザ挙動から予め定められた量だけ逸脱する場合」とすることに相当するものである。
そして、上記ア(ウ)で説示したとおり、引用発明に対して引用文献2記載技術事項を適用する動機付けは存在するといえる。
してみると、引用発明において、ユーザに警告音を出力する契機である、「吸入量測定部310によって測定される吸入量が、ユーザの設定した可用値に達した場合」に代えて、引用文献2記載技術的事項における、霧化部22への電力供給を開始してからの期間が、標準パフ期間から予め定められた量だけ逸脱した場合である点を適用して、相違点2に係る本願発明の「送達された成分の量に関する前記デフォルトユーザ挙動から予め定められた量だけ逸脱する場合」を契機とする構成を得ることは、当業者にとって容易になし得た事項にすぎない。
また、本願発明は、全体としてみても引用発明及び引用文献2記載技術事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005152