特許拒絶査定不服審判
2024-001206
誘導加熱サセプタおよびエアロゾル送達装置
- 審判番号
- 2024-001206
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-548959
- 請求日
- 2024年01月24日
- 審決日
- 2026年01月21日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アール・エイ・アイ・ストラテジック・ホールディングス・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P18 .121-WZ (A24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-548959「誘導加熱サセプタおよびエアロゾル送達装置」拒絶査定不服審判事件〔令和元年9月19日国際公開、WO2019/175779、令和3年8月2日国内公表、特表2021-518109〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年3月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和5年 1月30日付け :拒絶理由通知
令和5年 4月24日 :意見書・手続補正書の提出
令和5年 6月 5日付け :拒絶理由通知
令和5年 9月 8日 :意見書・手続補正書の提出
令和5年 9月22日付け :拒絶査定
令和6年 1月24日 :審判請求書・手続補正書の提出
令和7年 4月28日付け :拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」という。)
令和7年 7月29日 :意見書・手続補正書の提出
第2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち、進歩性に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1ないし3、5ないし9及び11ないし13に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
1.特表2017-506915号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和7年7月29日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
エアロゾル送達装置であって、
リザーバ内にステージングされたエアロゾル前駆体と、
誘導を通して熱を生成するように構成されたアトマイザと
を備え、
アトマイザが、誘導送信機および誘導受信機を備え、
誘導受信機が、リザーバ内のエアロゾル前駆体と動作可能に接触し、誘導送信機の範囲にエアロゾル前駆体を吸い上げて加熱および気化されるように構成されており、
誘導受信機が、ウィッキングコアと導電性または半導電性コーティングとを備え、
誘導受信機とウィッキングコアとが、同一の部品を構成する、エアロゾル送達装置。」
第4 引用文献1の記載事項及び引用発明等
当審拒絶理由で引用された特表2017-506915号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。以下同様。)。
1 「【0112】
本明細書において、電子たばこ(e-ベイピング)デバイス60の新規な例示的な実施形態が開示される。図1を参照すると、e-ベイピングデバイス60は、液体リザーバコンポーネント(第1の又はカートリッジ部)70と、再利用可能な電力供給コンポーネント(バッテリー部)72とを含む。誘導源(induction source)35とサセプタ(susceptor)14は、液体を加熱して、ウィック(wick)28から液体を気化させるように動作する。ウィックは、液体リザーバコンポーネント70の液体リザーバ22から液体を取り出す。液体リザーバコンポーネント70は、コネクタ205(例えば、ねじ接続)、または、滑り嵌め、戻り止め、クランプ、留め金および/または磁気接続などの別の便利なものによって、電力供給コンポーネント72に接続可能である。コネクタ205は、液体リザーバコンポーネント70と電力供給コンポーネント72の正確な配置を成し遂げるために、単一の成形品であってもよい。コネクタ205の密閉時には、誘導源35は、所定の及び/又は所望の量だけサセプタ14から軸方向に離間されている。その結果、誘導源35は、振動誘導電磁場を発生するように動作可能である。その振動誘導電磁場は、サセプタ14と重畳し、サセプタ14を加熱させる。誘導源35は、サセプタ14から軸方向に約2mm未満(より好ましくは約1mm未満)離間されている。
2 「【0118】
例示的な実施形態では、サセプタ14は、ニッケル-クロム合金、鉄-クロム合金で形成されている。他の例示的な実施形態では、サセプタ14は、その外側表面上に電気抵抗/導電層を有するセラミック複合サセプタとすることができる。別の例示的な実施形態において、電気抵抗/導電層は、セラミックサセプタに埋め込むことができる。」
3 「【0159】
図18Aを参照すると、さらなる例示的な実施形態において、電力供給コンポーネント72の誘導源35は、液体リザーバコンポーネント70の領域(範囲)に拡張するように構成されている。その結果、電力供給コンポーネント72が液体リザーバコンポーネント70に接続されたとき、誘導源35は、サセプタ14によって少なくとも部分的に囲まれる。図18Aにおいて特徴Aで表されたサセプタは、中央チャネル20の注入口部230に隣接する液体リザーバ22領域で、液体リザーバ22から液体材料をウィックするための能力を有する導電性/抵抗素子14’で形成されている(図18Bを参照)。または、サセプタは、中央チャネル20の注入口部230に隣接する液体リザーバ22領域で、一体化されたウィック/サセプタ28/14を形成するように、ウィッキング層(28)と連結されている(図18Cを参照)。そのウィック/サセプタ28/14は、液体リザーバ22の液体貯留媒体21の一部と連通している。そのような配置によって、ウィック/サセプタ28/14は、液体貯蔵媒体21から液体材料をウィックする。液体貯蔵媒体21の一部は、サセプタ14を囲んでもよく、あるいはウィック/サセプタ28/14を囲んでもよい。
【0160】
さらに図18Aを参照すると、代替的な例示的な実施形態では、液体貯蔵媒体21は、特徴Aで表される、電気抵抗/導電性シリンダーであるサセプタに接触するように構成されている。サセプタが加熱されると、サセプタは、液体が気化するように、液体貯蔵媒体21内の液体材料を直接加熱する。気化した液体は、サセプタに提供された隙間や孔319を介して、中央空気通路20に引き出される(図18Cを参照)。誘導源35は、フェライト材料を含む円筒状のコア37の周りに巻かれた誘導コイル36を含む。誘導コイル36と円筒状のコア37は、外側ケーシング6の長手方向に延びている。誘導コイル36は、円筒状のコア37の周りに螺旋状に巻かれていてもよい。しかしながら、別の例示的な実施形態において、誘導コイル36は、平面コイルであることができる。平面コイルは、円筒状のコア37を取り囲んていてもよい。」
4 「【図18A】
[図:0001435536000001.jpg]
」
5 「【図18C】
[図:0001435536000002.jpg]
」
上記から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)及び次の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明〕
「e-ベイピングデバイス60であって、
液体リザーバ22内の液体材料
を備え、
誘導源35とサセプタ14は、液体材料を加熱して、ウィック28から液体を気化させるように動作し、誘導源35は、振動誘導電磁場を発生させ、振動誘導電磁場は、サセプタ14と重畳し、サセプタ14を加熱させ、
サセプタ14は、一体化されたウィック/サセプタ28/14を形成するように、ウィッキング層28と連結されて、一体化されたウィック/サセプタ28/14が、液体リザーバ22の液体貯留媒体21の一部と連通し、液体貯留媒体21から液体材料をウィックする、e-ベイピングデバイス60。」
〔引用文献1記載事項〕
「サセプタ14は、その外側表面上に電気抵抗/導電層を有するセラミック複合サセプタとすることができること。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「e-ベイピングデバイス60」は、本願発明の「エアロゾル送達装置」に相当する。
引用発明の「液体リザーバ22」は、本願発明の「リザーバ」に相当し、同様に、「内の」は「内にステージングされた」に、「液体材料」は「エアロゾル前駆体」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「液体リザーバ2222内の液体材料」は、本願発明の「リザーバ内にステージングされたエアロゾル前駆体」に相当する。
引用発明の「誘導源35とサセプタ14は、液体材料を加熱して、ウィック28から液体を気化させるように動作し、誘導源35は、振動誘導電磁場を発生させ、振動誘導電磁場は、サセプタ14と重畳し、サセプタ14を加熱させ」ることは、誘導源35が、振動誘導電磁場を発生させ、振動誘導電磁場が、サセプタ14と重畳してサセプタ14を加熱させ、液体材料を加熱して、ウィック28から液体を気化させるから、本願発明の「誘導を通して熱を生成するように構成されたアトマイザ」に相当するものを備えているといえる。
引用発明の「誘導源35」は誘導送信機としての機能を有するから、本願発明の「誘導送信機」に相当する。
引用発明の「サセプタ14」は、誘導源35が発生する振動誘導電磁場により加熱されるから、誘導受信機としての機能を有するといえるので、引用発明の「一体化されたウィック/サセプタ28/14」は、本願発明の「誘導受信機」に相当する。
そうすると、引用発明の「誘導源35とサセプタ14は、液体材料を加熱して、ウィック28から液体を気化させるように動作し、誘導源35は、振動誘導電磁場を発生させ、振動誘導電磁場は、サセプタ14と重畳し、サセプタ14を加熱させ」ることは、本願発明の「誘導を通して熱を生成するように構成されたアトマイザとを備え、アトマイザが、誘導送信機および誘導受信機を備え」ることに相当する。
引用発明の「一体化されたウィック/サセプタ28/14が、液体リザーバ22の液体貯留媒体21の一部と連通し、液体貯留媒体21から液体材料をウィック」することは、本願発明の「誘導受信機が、リザーバ内のエアロゾル前駆体と動作可能に接触し」、「エアロゾル前駆体を吸い上げ」ることに相当する。ここで、引用発明は「誘導源35とサセプタ14は、液体材料を加熱」するから、誘導源35の範囲に液体材料を吸い上げて加熱しているといえる。
そうすると、引用発明の「一体化されたウィック/サセプタ28/14が、液体リザーバ22の液体貯留媒体21の一部と連通し、液体貯留媒体21から液体材料をウィック」することは、本願発明の「誘導受信機が、リザーバ内のエアロゾル前駆体と動作可能に接触し、誘導送信機の範囲にエアロゾル前駆体を吸い上げて加熱および気化されるように構成されて」いることに相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「エアロゾル送達装置であって、
リザーバ内にステージングされたエアロゾル前駆体と、
誘導を通して熱を生成するように構成されたアトマイザと
を備え、
アトマイザが、誘導送信機および誘導受信機を備え、
誘導受信機が、リザーバ内のエアロゾル前駆体と動作可能に接触し、誘導送信機の範囲にエアロゾル前駆体を吸い上げて加熱および気化されるように構成されている、
エアロゾル送達装置。」
〔相違点1〕
本願発明は「誘導受信機が、ウィッキングコアと導電性または半導電性コーティングとを備えるのに対して、引用発明は、かかる事項を備えていない点。
〔相違点2〕
本願発明は「誘導受信機とウィッキングコアとが、同一の部品を構成する」ものであるのに対して、引用発明は、かかる事項を備えるか不明な点。
2 判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1記載事項の「外側表面上」の「電気抵抗/導電層」は、「導電性または半導電性コーティング」といえるから、引用文献1記載事項は、サセプタ14を、導電性または半導電性コーティングを備えたものにできることを示唆している。
そうすると、引用発明において引用文献1記載事項を適用し、一体化されたウィック/サセプタ28/14すなわち誘導受信機を、ウィッキングコアと導電性または半導電性コーティングとを備えたものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
よって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に引用文献1記載事項を適用することにより、当業者が容易になし得たものである
上記相違点2について検討する。
引用発明の「一体化されたウィック/サセプタ28/14」は、「ウィック28」がウィッキングコアとしての機能を有し、「サセプタ14」が誘導受信機としての機能を有するから、誘導受信機とウィッキングコアとが、同一の部品を構成するものといえる。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
そして、全体として見ても、本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 請求人の主張について
請求人は、令和7年7月29日の意見書の「(3) 本願発明と引用発明との対比」において、次のとおり主張する。
「上述のように、請求項1は、「誘導受信機およびウィッキングコアが同一の部品を構成する」(つまり、1つの部品である)との発明特定事項を有する。
請求人はさらに、引用文献1がこの事項を教示も示唆もしていないことを以下に説明する。
本発明の特徴の一例は、本意見書に参考図1として添付された図3に示される。
この図3において、要素260は、脚270を介してリザーバ218からエアロゾル前駆体を吸い上げる吸い上げコアと同じ部分である誘導受信機を表している。
対照的に、引用文献1は、芯28とは別個の部品であるサセプタ14を開示している。これは、引用文献1の図に明確に表されている。
例えば、本意見書に参考図2として添付した、引用文献1の図1を参照されたい。この図は、サセプタ14とウィック28との間のギャップを明確に示している。
本意見書に添付した参考図2、より詳細には、これらの別個の部品間のギャップを明確に示す、本意見書に参考図3として添付した、引用文献1の図1の拡大図を参照されたい。
したがって、引用文献1では、サセプタ14およびウィック28は別個の部品であり、したがって同一の部品を構成するものではない。」
しかしながら、上記第4の3で摘記したとおり、引用文献1には「サセプタは、中央チャネル20の注入口部230に隣接する液体リザーバ22領域で、一体化されたウィック/サセプタ28/14を形成するように、ウィッキング層(28)と連結されている(図18Cを参照)。」ものが記載されており、上記相違点2についての検討で述べたとおり、サセプタ14及びウィック28を一体化したものは、誘導受信機とウィッキングコアとが同一の部品を構成するものといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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