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特許拒絶査定不服審判

2022-003507

幾何ファセットを使用する直接的なブーリアン演算の方法

審判番号
2022-003507
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-568271外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月08日
審決日
2024年08月08日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (G06T)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-568271「幾何ファセットを使用する直接的なブーリアン演算の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月18日国際公開、WO2018/010010、令和元年9月12日国内公表、特表2019-526111〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 5項目
理 由

1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2017年(平成29年)2月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2016年7月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

令和2年 8月11日 :手続補正書の提出
令和3年 2月17日付け:拒絶理由通知書

同年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出

同年11月 2日付け:拒絶査定

令和4年 3月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

同年 5月30日 :前置報告書

同年 9月 5日 :上申書

同年11月 7日 :面接

令和5年 3月30日 :補正案の電子メールによる提出

同年 6月23日付け:拒絶理由通知

同年 9月27日 :意見書、手続補正書、代理人選任届、

期間延長請求書(全3通)の提出

同年10月 3日付け:代理人選任届に係る手続補正指令書

同年12月13日 :上申書(期間延長請求書(全3通)の

返戻要求)

同年12月19日付け:代理人選任届に係る手続却下の決定

なお、その後令和6年1月22日に、合議体から審判請求人(以下「請求人」という。)に対して令和5年9月27日提出の意見書、手続補正書の内容説明についての面接の意向確認を行ったところ、請求人からは同年3月11日に面接を同年4月に行う旨の連絡があったものの、同年4月20日に面接を中止する旨の連絡があった。

2 本願発明

本願の請求項1~10に係る発明は、令和5年9月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

なお、記号(a)~(e8)は、分説するために当合議体において付したものであり、以下「構成a」~「構成e8」という。

〔本願発明〕【請求項1】

(a) 幾何オブジェクトの形状を表すようにレンダリングされる幾何ファセットであるレンダリングファセットを用いてブーリアン演算を実行する、コンピュータシステムであって、

(b) 前記コンピュータシステムは、

(c) データおよびコマンドを入力するための入力装置と、ユーザインタフェース、幾何オブジェクト、およびさらなるデータを表示する表示装置と、を有するコンピュータと、

(d) 幾何データおよび命令を記憶する媒体と、

(e) プロセッサと、を備え、

前記プロセッサは、

(e1) 幾何オブジェクトを作成、修正、またはロードし、前記幾何オブジェクトを、前記コンピュータの入力装置を用いてさまざまな位置または向きに再配置するステップと、

(e2) 前記幾何オブジェクトから2つを選択し、幾何オブジェクトの形状を表すレンダリングファセットを選択するステップと、AおよびBとして示される、

(e3) 三角形セットに、各幾何オブジェクトのレンダリングファセットをマッピングし、BlOpTriangleSetとして参照される前記三角形セット中の各三角形に隣接する三角形を設定するステップと、

(e4) 三角形Taの軸に揃えられた最小バウンディングボックスと三角形Tbの軸に揃えられた最小バウンディングボックスが重なっているかどうかをチェックし、エッジと三角形の交差の計算を行って、交差する三角形ペア(Ta,Tb)を探索することによって、前記三角形セット間の交線を構築し、次いで、前記交線が閉じるかまたはすべての三角形が探索されるまで、隣接する三角形をトレースし、交点を計算し、TaのエッジがTbと交差し、前記三角形ペア(Ta,Tb)の交点が前記交線に追加される、交線を構築するステップと、

(e5) 交線する線分からなるサブ交線のセットを有するドロネー2Dメッシュを構築する修正されたWatson法を使用して、交線が通過する各三角形を分割するステップであって、前記修正されたWatson法は、前記三角形の外接円が前記三角形を通過する点又は最後の線分を包含する場合、前記サブ交線の点が前記メッシュに挿入されるときに前記メッシュ中の三角形が分割されるか決定する、分割するステップと、

(e6) 1つのブーリアン演算または1つのサーフェストリムのために、各三角形が隠れているか見えているかをチェックするステップと、

(e7) 三角形のコピー、三角形の削除、BlOpTriangleSetを形成するための維持された三角形のマージを含む、ファセットを再編成するステップと、

(e8) 製品の設計を表す3次元の幾何モデルを形成するレンダリングファセットに、前記BlOpTriangleSetをマッピングするステップと、を実行する、

(a) コンピュータシステム。

3 拒絶理由

令和5年6月23日付けで合議体から通知した拒絶理由の理由1(実施可能要件)は、概略、次のとおりである。

発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明における「交線セグメントからなるサブ交線のセットを有するドロネー2Dメッシュを構築する修正されたWatson法を使用して、交線が通過する各三角形を分割するステップであって、前記修正されたWatson法は、前記三角形の外接円が前記三角形を通過する点又は最後のセグメントを包含する場合、前記サブ交線の点が前記メッシュに挿入されるときに前記メッシュ中の三角形が分割されるか決定する、分割するステップ」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、当該ステップを実行するコンピュータシステムである請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

よって、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 実施可能要件についての当審の判断

(1)発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する(知財高裁平成29年(行ケ)第10138号)。

(2)そこで、本願発明について上記の事項をふまえて検討する。

本願発明は、上記構成a~e8からみて、

幾何オブジェクトの形状を表すようにレンダリングされる幾何ファセットであるレンダリングファセットを用いてブーリアン演算を実行するものであり、

前記幾何オブジェクトから2つを選択し、幾何オブジェクトの形状を表すレンダリングファセットを選択し、

三角形セットに、各幾何オブジェクトのレンダリングファセットをマッピングし、前記三角形セット中の各三角形に隣接する三角形を設定し、

エッジと三角形の交差の計算を行って、交差する三角形ペアを探索することによって、前記三角形セット間の交線を構築し、

交線が通過する各三角形を分割し、

ブーリアン演算等のために、各三角形が隠れているか見えているかをチェックし、

ファセットを再編成し、

レンダリングファセットにマッピングする

というステップを実行するものである。

そして、本願発明のブーリアン演算を実行するにあたっては、レンダリングファセットに対応する三角形の交差に依存して分割された三角形を用いて行われるから、当該三角形を分割するステップを実施可能な程度に開示されていることが必要である。

ここで、本願発明の上記三角形を分割するステップは、構成e5のとおり

「交線する線分からなるサブ交線のセットを有するドロネー2Dメッシュを構築する修正されたWatson法を使用して、交線が通過する各三角形を分割するステップであって、前記修正されたWatson法は、前記三角形の外接円が前記三角形を通過する点又は最後の線分を包含する場合、前記サブ交線の点が前記メッシュに挿入されるときに前記メッシュ中の三角形が分割されるか決定する、分割するステップ」(以下「三角形を分割するステップ」という。)である。

(3)上記(2)の「三角形を分割するステップ」に関して、令和5年9月27日にされた手続補正により補正された発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。

「 【0039】
<サブ交線>
交線は一連の三角形を通過し、各三角形を複数の区画(partition)に分割する。三角形の内側の交線する線分がサブ交線を構成する。図10A~図10Cは、3つの例を示しており、濃い色の線がサブ交線である。実際には、三角形は、0本、1本、2本、または3本のサブ交線を有することができる。
【0040】
続きを表示(全41行)
次のアルゴリズムは、少なくとも1本のサブ交線を有する1つの三角形への有効な参照を得る方法を示している。
【0041】
各交線において、
各交点について、三角形の参照を得る(m_Tri0,m_Tri1)
三角形ペアの各三角形において、この三角形が分割されない場合、
各交線において、
サブ交線を探索して構築する。
【0042】
有効な三角形と交線が与えられたとき、petがその三角形のサブ交線に属するかを判定するため、本方法は以下をチェックする。
1)petが三角形の辺上であるか
2)またはpetが三角形の内側であるか
3)またはpetが三角形の1つの頂点に等しいか
【0043】
<三角形の分割>
一連のサブ交線が与えられたとき、1つの三角形を分割するため、本方法は、
1)重複しているpetを除去する。隣り合うpetが同じである場合、本方法は1つのコピーのみを維持する。
2)それぞれの端のpetの位置を識別する。各petが三角形のどのエッジ上に位置しているかをチェックする。
3)この三角形の上側区画、下側区画、および中央区画に分割する(適用可能な場合)。
【0044】
1つの三角形の1つの区画を表す平面上の一連の点が与えられたとき、この平面を三角形の1つのグループに分解するため、本方法では、1981年に公開されたドロネー2DメッシュWatson法を修正する[非特許文献2]。
【0045】
1つのドロネー2Dメッシュは、3つのデータセット、すなわち、生成された三角形を保持する三角形セットと、直前に削除された三角形を格納する削除三角形セットと、削除三角形セットのアウトラインを記録する1つのポリゴン、を有する。
【0046】
修正されたドロネー2Dメッシュ法は、以下のステップを含む。
1)サブ交線と三角形の頂点を結ぶ輪郭点列を構築する(適用可能な場合)。
2)この3次元点列を、前記平面の向きに従って2次元点列にマッピングする。
3)4つの点を加えて、前記2次元の点すべてを囲む、より大きいバウンディングボックスを形成する。
4)バウンディングボックスの1本の対角線が、バウンディングボックスを2つの三角形に分割するものと想定し、これらの三角形を三角形セットに追加する。
5)境界上の点を除くあらゆる点を三角形セットに挿入する。
【0047】
a)各点について、三角形セットの中のそれぞれ三角形の外接円がその点を含むか、または最後の線分が三角形を通過するか、三角形セットの中のすべての三角形をチェックする。条件が満たされる場合、その三角形を三角形セットから消去し、削除三角形セットに追加する。
【0048】
b)前記削除済み三角形セットを使用前記してポリゴンを拡張し、前記削除済み三角形セットをただちにクリアする。
【0049】
c)前記ポリゴンを使用して三角形セットを生成し、それらを前記三角形セットに追加する。
【0050】
図12A~図12Hは、1つのドロネー2Dメッシュシーケンスを示している。」

また、図12の記載は次のとおりである。

「
[図:0001418390000001.jpg]
」

(4)本願発明の構成e5の「三角形を分割するステップ」について、上記(3)の記載をもとに当業者が出願時の技術常識に基づいて実施可能な程度に開示されているかどうかについて検討すると、有限個の点の集合に対して三角形分割を行うドロネーの三角形分割技術自体は周知技術として当業者が理解可能なものであるが、当該技術がどのように修正されて本願発明の三角形の分割に適用されるのか、発明の詳細な説明の記載から理解することができない。

(4-1)例えば、【0044】の「1つの三角形の1つの区画を表す平面上の一連の点が与えられたとき」との記載から、当該平面上の一連の点に基づいてドロネーの三角形分割のような分割を行うものと解され、また、【0043】の「一連のサブ交線が与えられたとき、1つの三角形を分割する」との記載から、前記平面上の一連の点とは、一連のサブ交線に基づいて得られるものと推測される。ここで、前記サブ交線とは、【0039】の「三角形の内側の交線する線分がサブ交線を構成する」との記載から、三角形の内側の交線する線分のことと解される。

しかしながら、三角形の内側の交線する線分から上記平面上の一連の点がどのように得られるのかについては、【0043】の記載を考慮しても、前記一連のサブ交線や一連の点との関係を理解することができず、当業者が実施できるとは認められない。

(4-2)また、上記「三角形を分割するステップ」について、【0046】の記載からでは、サブ交線におけるどの位置の点を三角形の頂点と結ぶのか、当業者が理解できるものとはいえない。

請求人は令和5年9月27日付け意見書において「三角形において、辺と頂点は明確かつ確実な対応関係を持っています。段落0043は、各端の交点がどのエッジ上に位置するかを確認するステップを示しています。」と主張しているが、当該主張はサブ交線のどの位置の点を三角形の頂点と結ぶのかということを説明したものではなく、この主張によっては依然として当業者が理解できるものとはいえない。

(4-3)次に、上記「三角形を分割するステップ」における「前記修正されたWatson法は、前記三角形の外接円が前記三角形を通過する点又は最後の線分を包含する場合、前記サブ交線の点が前記メッシュに挿入されるときに前記メッシュ中の三角形が分割されるか決定する」について、【0047】の記載からは、「最後の線分」の対象、具体的には、ここでの「線分」とは何を指すのか、及び、「最後の」とは何の順番における最後を指すのかということについて、当業者が理解できるものとはいえない。

請求人は令和5年9月27日付け意見書において「「すべての点を挿入」と言った場合、「最後の線分」は明確ではありません。「あらゆる点を挿入」と言った場合、「最後の線分」は明確です。」と主張しているが、「5)境界上の点を除くあらゆる点を三角形セットに挿入する。」(【0046】)ことが、上記「最後の線分」とどのように関係するのか不明であり、依然として当業者が理解できるものとはいえない。

(4-4)さらに、【0050】には「図12A~図12Hは、1つのドロネー2Dメッシュシーケンスを示している。」と記載され、当該図12A~図12Hには、線分が順次追加、削除されるシーケンスが記載されている。

しかしながら、当該図12A~図12Hに記載されている線や点が具体的に【0046】~【0049】のアルゴリズムにおけるどの部分を意味しているのか、図12A~図12Hの各図が具体的に【0046】~【0049】のアルゴリズムにおけるどの処理に対応しているのか、いずれも発明の詳細な説明には記載されておらず、具体的手順を理解することはできないから、この点からも当業者が上記三角形を分割するステップを実施することができるとは認められない。

請求人は令和5年9月27日付け意見書において「拒絶理由通知書には誤った推定があります。すなわち「図12A~図12Hの分割された三角形を生成する過程を示していると推測されるが」です。図12A~図12Hに一例を示します。従来技術としてWatson法が明らかである。補正の最も重要な要素は、やはり理解できる条件です。」と主張しているが、従来技術としてWatson法が明らかであるというだけでは、上記修正されたWatson法を使用した三角形を分割するステップは、依然として当業者が理解できるものとはいえない。

(4-5)以上のとおり、【0043】には、「一連のサブ交線が与えられたとき、1つの三角形を分割する」と記載され、【0044】には「三角形の区画を表す平面上の一連の点が与えられたとき、その平面を三角形のグループに分解するため、本方法では、1981年に公開されたドロネー2DメッシュWatson法を修正する」と記載されているものの、一連のサブ交線が与えられたときに1つの三角形を分割するための処理とされている【0043】の記載事項や、修正されたドロネー2Dメッシュ法に含まれるステップとされている【0046】~【0049】の記載事項、及び、1つのドロネー2Dメッシュシーケンスを示したものとされている図12A~図12Hの記載事項が、当業者が実施できる程度に明確かつ十分なものではなく、当該サブ交線を用いた処理において、当該ドロネーの三角形分割を行うWatsonの方法をどのように修正すれば三角形を分割することができるのか、理解することができないといわざるを得ない。

(5)したがって、発明の詳細な説明の記載は、出願時の技術常識を考慮しても、請求項1に係る発明における上記「三角形を分割するステップ」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、当該ステップを実行するコンピュータシステムである請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

5 むすび

よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-003507

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