審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-019066

水を用いて熱エネルギーを得る方法

審判番号
2024-019066
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-210777外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年11月12日
審決日
2026年03月30日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-Z (B01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法49条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第49条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-210777「水を用いて熱エネルギーを得る方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月14日出願公開、特開2022- 88292〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本件拒絶査定不服審判事件に係る特願2020-210777号の出願(以下、「本願」という。)は、令和2年12月2日に出願され、令和6年4月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月11日に面接が行われ、同年同月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同年11月12日に拒絶査定不服審判が請求され、令和8年2月2日に電子メールにて本願発明を説明する資料(応対記録参照)が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1~2に係る発明は、令和6年6月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 水を分解して得られる水素イオン及び水酸化物イオン、或いは水素イオンが水分子と結合したヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンの水和物を多量に含む電離水を、電離水が瞬時に蒸散される温度帯である摂氏数百度以上の高温中に噴霧或いは噴射により放出して水素原子を出現させ爾後水素原子が見せる齎熱現象により熱エネルギーを得る方法。」 3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、令和6年4月16日付け拒絶理由通知の理由1であって、概略、次のとおりのものである。 本願発明の「齎熱現象」とは、本願の願書に添付された明細書(以下、「本願明細書」という。)の【0006】の記載によれば、水素イオンH+及び/又はヒドロニウムイオンH3O+又は水和物等が「燃焼炎の如く摂氏数百度以上の高温中に常温レベルから放出されて急激な温度変化を受けると高温の熱、即ち強い電磁エネルギーに依り結合している水分子は蒸散し、相互の結合も外れ、更に分離した水素イオンである水素の原子核と1個の電子は激しい振動を受けることにより該水素原子の基底状態と云われているK殻に存在する1個の電子は自由度が高いため熱振動に依りK殻より準位の低い殻に落下してその差に相当するエネルギーが可視光~赤外線等の光として放出される」現象と解することができる。 しかしながら、本願出願時において、原子核を取り巻く電子軌道の集まりである電子殻のうち、エネルギー準位が最も低い電子殻はK殻であることが当該技術分野における技術常識であること、そして、「K殻より準位の低い殻」(本願明細書中の「サブK殻」)の存在をどのように確認することができるものかが本願明細書の記載を参酌しても明確であるとはいえないことから、「齎熱現象」を明確に理解し、「齎熱現象により熱エネルギーを得る方法」を実施するために必要な具体的な条件を見いだすには、当業者に期待し得る程度を越える過度の試行錯誤を要する。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない。 4 当審の判断 (1) 実施可能要件の判断手法について 特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定める。 そして、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するから、以下、この観点に立って検討する。 (2) 本願明細書の発明の詳細な説明の記載について 本願明細書の発明の詳細な説明、及び図面には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した(以下、同様である。)。 「【技術分野】 【0001】 本願発明は燃料の燃焼時に水を用いて熱エネルギーを得る方法に関する。 【背景技術】 【0002】 発明者は長年に亘り界面活性剤を用いることなく、燃料油と水のみを原材料として得られる改質燃料油につき試行し研究を重ねる過程で、改質燃料油の単位重量当たりの発熱量と重量の積である発熱総量が元の燃料油を大きく上回ることを見出し、液体燃料処理方法として平成28年7月8日付け特許第5963171号で登録を受けたが、その現象を更に分析、検討する過程で見出したのが水から熱エネルギーを得る方法である。 【0003】 上述の改質燃料油に於いては元来発熱するものではない水が恰もそのまま燃料化したようになっている。即ち得られた改質燃料油は元の燃料油と比べて密度の変化は殆どなく、単位重量当たりの発熱量は同レベル或いは若干ながらそれを上回る例もあり、また得られた改質燃料油の容量は混合に供した水の量の9割程度が元の燃料油に加算されて増量となっている。この一見不思議な発熱総量の増大は用いる水を構成する水素の燃焼熱の大略2.6倍にもなることから該水素の燃焼に依るとするには疑問があり、何か特別な現象が生じていることになるが、発明者は水素原子に特有の齎熱現象、即ちサブK殻現象に依ることを見出した。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 過去に於いて発熱量の増大が燃料油と水とを混合して、時には界面活性剤を加えて得た改質燃料油に見られる事例が報告されているが、その増大を十分に説明するだけの明確かつ論理的な原理を含む説明がなく、ましてや水から熱エネルギーを得る方法として取り上げられることもなかった。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本願発明は、サブK殻現象として語られている水素原子の齎熱現象を利用して熱エネルギーを得る方法を明示するものである。即ち、水を分解すると主として水素原子である水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が生じるが、水素イオンは周囲の水分子と配位結合してヒドロニウムイオンH3O+に、また水酸化物イオンは電荷の重心が離れて存在する双極子であり、水分子との水和或いは相互間の作用による弱い結合をして存在していることが知られている。これらのイオン或いは水和物等は燃焼炎の如く摂氏数百度以上の高温中に常温レベルから放出されて急激な温度変化を受けると高温の熱、即ち強い電磁エネルギーに依り結合している水分子は蒸散し、相互の結合も外れ、更に分離した水素イオンである水素の原子核と1個の電子は激しい振動を受けることにより該水素原子の基底状態と云われているK殻に存在する1個の電子は自由度が高いため熱振動に依りK殻より準位の低い殻に落下してその差に相当するエネルギーが可視光~赤外線等の光として放出されることになる。このエネルギーの放出現象は周囲温度が摂氏数百度を上回る高温下で瞬時に発生するが、周囲温度の低下と共に原子核および電子の熱振動も低下し、エネルギー保存の法則に従い早晩外部からのエネルギーを得て電子はK殻に戻り元の水素原子となる。本願発明では放出されるエネルギーが高温下に於いて水素原子の挙動により一方的に齎されることから齎熱或いは齎熱現象と云う表現を用いている。 【発明の効果】 【0007】 用いた水の成分が熱エネルギーを齎すことに依り、その熱エネルギーに相当する燃料が節約できると共に該燃料分の燃焼に伴う炭酸ガス等が排出されずに済むため環境保護並びに地球温暖化の防止に役立つことになる。また、ガスタービン等の内燃機関に於いては水素原子の齎熱による効果の他、水素原子の担体となっていた水が結合から離れて水蒸気となり膨張することでタービン等の出力増を図ることができる。」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 図4の燃料油改質装置を用いて行ったA重油の改質事例から水素原子が見せるサブK殻現象による齎熱現象の存在を熱の収支面を中心に以下説明する。特筆できるのは該改質装置で得られた改質燃料油は燃焼時に燃焼熱を発生すると共に高温の燃焼炎中に水素原子を運ぶ運搬役でもあると云う点である。 【0010】 まず混合に供する水の前処理として別途設けた波長約2~3μmから1mmの電磁波を放射するSiO2、TiO2を主要成分とする直径8~15mmのセラミック球が充填された容器に酸化還元電位ORPが+550~+565mVの水道水を通過させ、水温25℃でORPを+110~+120mVとした後脱気装置を通し、その後静止型混合器を用いてA重油と攪拌混合したものを処理対象液として図4の処理容器51の処理対象液の入口52から流入させ処理対象液に対して超音波を照射する。なお、界面活性剤は用いずA重油と水だけを混合させている他、A重油の流動性を増すために配管系と燃料油改質装置に対する昇温はそれぞれに取り付けた電気ヒータの設定温度を変えて行っている。この手順と要領に従い、水量或いは加温温度を変える等条件を変えて幾通りかの試行を行い好結果が得られた内の一例はA重油3000mL、水700mL(A重油比23.3%)の場合であるが、処理後の改質燃料油の容量は3630mLでありその分析結果は表1に示す通りである。 【0011】 図4に示す装置の概要は、仕切板兼超音波反射板56の位置及び超音波の周波数20kHzは固定となっており、ホーン55から発射された超音波は処理容器51の内壁と仕切板兼超音波反射板56及び超音波振動子54の固定部との間で反射され、一部は仕切板兼超音波反射板56を通して水の前処理で用いたセラミック球と同様のセラミック球53に照射される構造となっている。なお、57は超音波照射部、58は処理済処理対象液の出口である。 【0012】 【表1】 [図:0001435783000001.jpg] 但し、加温温度は約64~65℃、A重油中の硫黄含有量1.8%、またA重油の比重は処理前が資料より、処理後は他の処理例からの推定で共に0.86とするが、処理の前後の変化が小さいことは他の同様な処理例の実測値で見られており、例えば軽油5000mL、水1500mLとの処理に於いては軽油の比重0.8426に対して処理後の比重は0.8430であり、また残渣C重油3000mLと水990mLとの処理例では残渣C重油の比重0.9431に対して処理後の比重は0.9584であった。 【0013】 表1の結果から、用いた700mLの水の内処理後の改質燃料油に含有されている水は極めて少量であり、また700mLの水の10%相当が減容していることから水の殆どは分解されたことが分かる。また、発熱量と重量の積である発熱総量は処理前が28431Kcal、処理後は34339Kcalであり、処理後の増加量は5908Kcal、即ち処理前の約20.7%増となっている。この増加はサブK殻現象に依るとする他には根拠が示し得ないが、該現象に依り齎たらされる熱量は既知の計算式であるプランク定数・光の振動数・水素原子のモル数・アボガドロ数・変換効率の積で表され、単位をジュールからカロリーとするには換算係数4.186で除すこととする。上記式中の光の振動数に関しては改質燃料油の燃焼炎が目視による観察では青~緑の色合いが元の燃料油の場合より若干強くなっていること、また熱作用に関係する光は可視光~赤外線の領域に含まれていることを考慮し、水素の発する線スペクトルの内バルマー系列に属する振動数の平均値に近い波長500nmを持つ光の振動数を妥当なものとして採用すれば、上記計算式は8892Kcalとなり、処理後の増加量5908Kcalを8892Kcalで除すことにより変換効率として66.4%を得る。変換効率は水分子から分離し齎熱に関与する水素原子となる割合を示すが、ここでプランク定数6.6262x10-34、光の振動数=光速299800km/波長500nm、水700mL中の水素原子のモル数155.4、アボガドロ数は6.022x1023/モルである。 【0014】 前述のA重油の改質例に於いて処理後の水分量が極わずかであることから水分子はその殆ど、即ち100%近くが主としてH+とOH-に分解されてA重油の分解成分と結合していると解される。一方、サブK殻現象に依り増加した発熱量から求めると上記の通り変換効率は66.4%となるが、この変換効率には以下の様な事情があり、それらを考慮するとサブK殻現象に関与している水素原子は更に多いことが明らかであり算出された変換効率の66.4%を訂正すべく見直す必要があると云える。即ち、得られた変換効率66.4%は熱量計を用いて発熱量を計測しその結果から算出したものであるが、熱量計は対象となる燃料油を容器に収容後点火線に電流を流して着火し燃焼させる仕組みとなっており、燃料油であるA重油がその着火温度である300℃弱に達して燃焼を開始した直後はA重油全体もまた容器内も齎熱現象が起きる条件である一定の高温には達しておらず、そのレベルに達するまでの間に分離して出現した水素原子は齎熱現象を起こすことなく別の水素原子と或いは他物質と結合し最終的には燃焼することになる。もし試験開始の時点で容器内が齎熱現象に必要な温度以上の高温に保たれているのであれば容器内で分離により放出された水素原子は即刻齎熱現象を起こすことになるが、容器内の温度環境はそうではないため齎熱現象に関与しない水素原子が一定程度存在していたと思われ、その割合を推定で15~20%とすれば、それらを加味した実質的な変換効率は以下の計算の通り大略80%に達していると思われる。その算出は表1に示す結果から得られる処理後の熱量の増加分5908Kcalを0.85及び0.80で除した後、計算式から得られる8892Kcalで更に除すと0.78と0.83となり、それらの平均値である0.80即ち変換効率は80%と云える。 【0015】 水H2Oには水素原子は2個あり、内1個の水素原子は容易に分離して水素イオンH+にもう1個は水酸化物イオンOH-になるが、水分子から分離し齎熱に関与する水素原子となる割合を示す変換効率が50%を超え、上記の通り80%と推測されることはOH-からも水素H+が分離し齎熱に関与していることが明らかである。即ち、水の分解で生じた水素イオンH+のみの関与であれば変換効率は50%以下となるところ、表1の結果から得られた66.4%のみならずそれを上回る80%と云うことは、水から容易に分離する水素原子H+の他に水酸化物イオンOH-から分離した水素原子も同時に関与していることになる。表1に示す通り処理前の燃料油では現われなかった齎熱現象が水を加えて処理した改質燃料油に現れていることは現象の全てが水に依るものであり、水の分解成分である水素イオンと水酸化物イオンの双方に含まれている水素原子が関わっていることになる。 【0016】 これらの事象から明らかな様に、発熱量の増加分5908Kcalは処理前の発熱総量の20.7%であり、かなり大きな増加割合であるが、処理過程に於いてこれに相当或いはこれを上回る熱量は事前に用いていないこと、またエネルギー保存の法則が支配する諸現象に於いて可燃性の物質或いは熱エネルギーに変換可能と言われている物質等が存在しない状況下で熱エネルギーを吸収することなく放出を先に行う現象は今まで知られていなかったことから、これ程の熱量が齎され増加したことは明らかに新たな現象、即ちサブK殻現象に依るもの以外にはなく該現象が存在することは明らかであり、水を原料として熱エネルギーが得られることになる。なお、水素原子を得る為に行う水の電離は吸熱反応であり電離の逆反応が生じてその反応熱が発熱量の増加に寄与していると仮定しても、その場合の発熱量は700mLの水の場合524.3Kcalであり、上述した発熱量の増加分5908Kcalの10%にも満たない量である。 【0017】 燃料油であるA重油と水とを混合した処理対象液を処理した場合は前述の通り燃料油の成分が水の分解物の担体となっているが、水のみを用いてその水を分解すれば、生じる水素イオンは水と結合してヒドロニウムイオンH3O+となり、もう一方の水酸化物イオンOH-は水と水和する等により共に水中に存在しているが、ヒドロニウムイオンは時間経過とともに水分子3個が加わりH9O4+となって安定化するとも言われている。また、両イオンは時間の経過と共に電気的に引き合い結合して元の水分子に戻ることが考えられるが水を分解した上で暫く放置し、その後燃料油と混合し改質油とする実験では数十分程度の時間内では特段の変化は観察されなかった。しかしヒドロニウムイオンが水分子3個と更に結合することは齎熱現象の促進に逆行する上、燃焼炎中で該水分子が奪う昇温並びに蒸発に要する熱を考慮すると好ましものではないため、水から水素イオンを分離させた後は齎熱に向けて速やかに次の段階に進める必要があると云える。 【0018】 燃料油と水とを微粒子混合した後処理する図4に示す燃料油改質装置の場合、超音波で処理して得られる燃料油の分解産物である炭化水素には水の分解物との結合箇所、特に水素結合を生じさせる部位が多く存在する他、水との混合比も燃料油の方が多いこともあって水の分解物のすべてを再結合時に受け入れることができる他水の分解物を燃焼の場に運ぶ担体の役目も果たしている。しかし乍ら水のみを用いる場合は、水の分解により産生した水素イオンは水分子と結合してヒドロニウムイオンにまた水酸化物イオンは別の水分子と水和する等により供した水の内分解の対象となり得るのは約1/3であり、残る約2/3は分解されないことになるが、この分解されない水は水の分解物を燃焼の場に運ぶ担体の役目をしていることにもなる。 【0019】 これらのヒドロニウムイオン或いは水酸化物イオン等が高温の燃焼炎中に放散されることで生じる水素原子による齎熱現象は水素原子が高温による激しい振動で他と結合することが妨げられている極短時間の間に現れる現象であることがその原理からも推定され、サブK殻現象を生じさせる場合には高温と短時間の2項目を重視しておく必要がある。その視点からすると、水和物等として存在している水酸化物イオンからの水素原子の分離は2段階であり、ヒドロニウムイオンからの水素原子の分離が1段階であるのに比して時間を要し従って齎熱に関与する水素原子となる割合は低下することになる。改質燃料油の様に燃料油自身が担体として機能し高温中に水素原子を放出する一方燃料として高温で燃焼する場合はサブK殻現象にとって好都合と云えるが、水が担体となっている場合には齎熱現象を実現させるために留意すべき事項として、担体の水は本来発熱をせず逆に吸熱側の物質であること、上述の通り両イオン間の反応過程に違いがあること、水が高温の燃焼炎中に放散されるまでは水配管が熱せられるのを避けること、また高温の燃焼炎中に担体となっている水を放散する際には水が奪う気化熱等に依り周囲の温度が過度に低下しないようにすること等があり、配管並びに単位時間当たりの放散量或いは放散方法等を決める際に考慮する必要がある。」 「【実施例】 【0020】 以下、本願発明に関連する実施例を記載し本願発明について詳述する。但しこれらの実施例は本願発明に基づく一実施態様を示すものであり、本願発明は下記の実施例に限定されない。 【0021】 図1は燃料が高温の燃焼炎を伴い燃焼している場合に実施する本願発明の請求項1のプロセスを示し、高温の燃焼炎中に多量のヒドロニウムイオン及び水酸化物イオン等を含む電離水を放出することにその特徴があるが、これに類似の方法として通常の水を燃焼炎中に放出してボイラ等の効率を上げることが既に実用化されている。しかしこの方法は加えた水が燃焼炎中で水蒸気爆発を起こすことにより燃料の微細化を図り燃料と吸気中の酸素との混合を促進することによりボイラ等の効率を少しでも上げることを目指しているが、本願発明はこれに留まらず燃焼炎中に放散された水の分解成分がサブK殻現象に依り後述する通り一連のプロセス当たり元の燃料の数%から10数%の規模で、また燃焼炎との配置関係で複数連のプロセス関連装置が設置可能であれば元の燃料の数十%にも及ぶ熱エネルギーを齎すことも実現可能になり、異なる2種類の手段をもってボイラ等の効率を大きく上げようとするところに特徴がある。このための一連のプロセスはまず水の前処理を前述及び後述の通り実施するが界面活性剤や電解質等は何も添加せずに、水の分解による水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-の発生1の後、水分子H2Oとの結合によるヒドロニウムイオンH3O+及び水酸化物イオンの水和物等を含む電離水の産生2に進み、該電離水に変化を加えずそのまま或いは一方のイオンを豊富に含む処置を施す等何らかの改変を行うことも可能であるが該電離水を配管に依り配送の後、高温の燃焼炎中に電離水の放散3、そしてその後生じるサブK殻現象による齎熱4となっている。この一連のプロセス中で特に注意を要するのは燃焼炎中に電離水を放散する場合であり、電離水の放散方法や量によっては放散された電離水の周囲温度の大幅な低下を招きその結果両イオンの担体となっている水の蒸散が遅くなり、連れて結合している水素イオン或いは水酸化物イオンの分離が遅れ水素イオンが齎熱現象を起こさなくなることである。周囲温度が高い程担体となっている水の蒸散は早まり齎熱現象も促進されるため、周囲温度は炭化水素系の液体燃料が一瞬にして燃焼を終える摂氏4~5百度以上が望ましい。なお、電解質を水に加えることなく効率よく電離水を産生する方法は後述の通りであるが、電解質を用いる方法を否定するものではない。 【0022】 図2は燃焼炎中に上述の電離水を放散する機構であり、配管系の冷却並びに放散ノズル部への熱遮蔽を考慮した構造となっている。即ち、電離水の配管23により電離水をボイラ等に導き燃焼炎中に放散させる場合、燃焼室隔壁21を穿孔して設けられた電離水放散ノズル22の先端迄の特定距離は電離水の温度上昇を極力防ぐ目的で二重管とし、該二重管内部には冷却水の入口24から流入させた水に依って電離水の配管23の外周部を冷却すると共に、燃焼室隔壁と電離水放散ノズルとの間隙26には空気等の冷却用流体25を吹き込み積極的に電離水放散ノズル22を熱から防御した上で電離水を放散微粒子27として燃焼炎28中に放散する。 【0023】 図3は燃料として気体燃料を用いる場合を示すが、気体燃料中に電離水を霧化の上混合させると気体燃料は微粒化した電離水の担体となり、しかも燃焼炎中に放出された気体燃料は即座に燃焼し高温を発生することで電離水中の水の昇温及び蒸発を促進すると共に電離水に含まれている両イオンが発現する齎熱現象を向上させることにも繋がり、その結果燃焼と齎熱の両作用に依る良好な発熱現象が現われることになる。図3に示す概念図に於いて前処理をした水は水の入口32から電離水生成装置31に導入され、球状のセラミック層を通過の後水の流路35を通過中に超音波振動子33からの超音波34に依って分解され電離水となった後水の出口36から流出し電離水貯留槽37に一時的に貯留される。その後電離水は図3に図示する例では特段の処理を受けないが送水ポンプ39により吸い上げられ気体燃料の入口41から流入している気体燃料中にスプレーノズル40から噴霧され、爾後気体燃料によって燃焼バーナ45に運ばれノズル44からガスの燃焼炎46中に放出されることになる。この場合、望ましくは噴霧された電離水の全量が気体燃料中に浮遊してガスの燃焼炎46中に放出されることであるが、電離水の一部が噴霧以降の配管内で結露する等により水滴となる場合はノズル44の近傍にそれらの水滴を集めて気体燃料により霧吹き状に燃焼炎中に放出する機構を設けることである。なお、流量制御弁38はガスの燃焼炎46中の燃焼状況等に応じて電離水の流量を調整するためのものである。また、燃焼バーナ45に配設された気体燃料の配管は空気取入口43からの空気で冷却されるが、冷却が不十分な場合は図2に示す様な冷却用二重管方式を採用して気体燃料の配管を水冷とすることもできる。 【0024】 燃料に固体燃料を用いる場合には燃焼炎中に図2に示す様な方法で電離水を放散する方法、或いは燃焼用の空気中に電離水を噴霧する方法、或いは固体燃料と気体燃料との混合燃焼として該気体燃料中に図3に示す様な方法で電離水を霧化の上燃焼バーナで燃焼炎中に放出する方法等がある。しかし燃焼用の空気中に電離溶液を噴霧する方法に於いて空気を予熱することは勿論、配管等を過度に加熱することは空気中に噴霧された電離水が燃焼バーナに至るまでに蒸発し齎熱現象が阻害されることになるため好ましいことではない。また液体燃料の場合は燃料油を改質する方法が既に実用化されているが、それに重畳的に本願発明の方法を用いることもでき、その場合は液体燃料の燃焼炎中に図2に示す様な方法等で電離水を含む液体燃料を放散することである。 【0025】 原料となる水に関して一部前述しているが、その水質は酸化還元電位が+200~+300mV以下で清浄な軟質のものが望ましいが、これに拘るものではない。また、取水した水はクラスター状になっていると思われるが反応性を高めるためにクラスターに振動或いは衝撃を与えてクラスターを分解しておく或いはその結合を緩めておくことが望ましく、その目的のために簡便かつ有効な方法は適切かつ十分な赤外線領域の周波数の電磁波を照射することであり、その場合には単独でなく異なった鉱石数種類を選びそれらが発する周波数の電磁波を重畳加算の上周波数帯として照射するのが効率的であり、鉱石としては例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、或いは酸化マグネシュウム等の数種類が推奨される。 【0026】 上記処理の後、引き続き赤外線領域の周波数の電磁波を繰り返し照射する、或いは水分子に対称伸縮振動等の振動を与える、或いは超音波を照射する等の手段で水分子から水素原子を切り離すことにすれば、水素原子は周辺の水分子と結合してヒドロニウムイオンH3O+となる一方、水酸化物イオンOH-は周辺の水分子と水和し或いは水酸化物イオン相互の弱い結合体を構成し水中に存在することになる。この状況は電離水のpHがアルカリ側に傾くことで、また酸化還元電位を示すORPが低下或いはマイナス側になることで知ることができる。 【0027】 固体燃料に応用する場合には水を担体として上記両イオンを運搬させるのが簡便且つ経済的な方法であるが、上記両イオン中の水素原子が齎す齎熱量と、用いた水が燃焼炎中で蒸発し燃焼炎と同温度の蒸気となるための蒸発と昇温に要する熱量、更には高温蒸気が燃焼炎中で起こす一酸化炭素との結合による水性ガス化反応、また炭素との結合による水性ガス反応それぞれの発熱、吸熱分の全てを織り込み、水を用いることに依る熱収支の全体を把握する必要がある。 【0028】 水温25℃の水300mLを用いる場合を一例とすれば、内100mLの水が水素イオンと水酸化物イオンに分離し、水素イオンは水と結合してヒドロニウムイオンになりまた水酸化物イオンは水と水和する他水酸化物イオン相互の結合体を構成することになるが、そのために各100mL、合わせて200mLの水が最大で必要となり、水が300mLあると云えども齎熱に関与するのは水約100mL中の水素のみと云うことになる。一方水から分離した水素イオン即ち水素原子はその100%が、また水酸化物イオン由来の水素原子は少し低下してその80%が齎熱現象を起こすとすれば、前掲の表1の結果を得る際に用いた700mLの水が齎す理論的な齎熱量の最大値は8892Kcalであり、100mLの水であれば齎熱量はその7分の一即ち1270Kcalとなるところ、2種類のイオンの内の1つは齎熱の機能が80%に低下する為に1270/2x1.8=1143Kcalが理論的な齎熱量の最大値となる。なお、水蒸気が一酸化炭素と500℃以下で起こす水性ガス化反応は発熱反応であり、また水蒸気が炭素と1000℃以下で起こす水性ガス反応は吸熱反応であるが1000℃以下であればそれら発熱分と吸熱分がほぼ同程度でありエネルギー収支の面では無視できるが、燃焼温度が1000℃超となる場合は比較的大きな吸熱反応となるためその影響を考慮する必要がある。 【0029】 燃料が天然ガスの場合その燃焼温度は約482~632℃であり、平均温度は557℃となるが、燃焼による平均的な真発熱量は9720Kcal/Nm3である。一方用いる水300mLを平均的な水温の25℃から上記の557℃に昇温する場合に要する熱量はh-s線図から250Kcalとなり、この熱量を理論的な齎熱量から差し引いた1143-250=893Kcalが正味の齎熱量となる。また、天然ガスの主成分はメタンCH4であり含まれる水素由来の水蒸気が多いため齎熱用に使用する水は水性ガス化反応等には実質的に関与の枠外であると判断できる。従って真発熱量9720Kcal/Nm3の一般的な天然ガスを燃焼させる場合、比較の条件を同じにするため燃焼の平均温度557℃に齎熱の条件を合わせ、1Nm3の天然ガスを燃焼させる時に水300mLを用いれば齎熱量として893Kcalが得られそれに依る燃費改善効果は9.2%となり、また水450mLを用いれば13.8%の改善効果が得られることになる。 【0030】 また燃料が石炭の場合、燃焼温度の平均を700℃とすれば、25℃の水300mLを加熱して700℃まで昇温させるエネルギーは発熱反応である水性ガス化反応を含むために107Kcalで済むことになり、1143-107=1036Kcalが正味の再熱量になるが、石炭燃焼に於いては更に高温とすることが工業分野では通例であり、その場合元の燃料には水素が含まれておらず新たに持ち込まれた水300mLが水蒸気となり吸熱反応である水性ガス反応を起こすことになるため1000℃超では677Kcalが必要となり、齎熱量は1143-677=466Kcalと減じることになるものの、齎熱が幾分かは貢献し1g当たり8000calの燃焼熱を持つ石炭に換算すると700℃程度では約130g、1000℃超では約58gに相当することになる。 【0031】 水の電離は吸熱反応であり、水1モル即ち18g当たり13.473Kcalの熱量が本来必要であるが、水分子の共振現象を利用して水を分解すれば遥かに小さいエネルギーで同等の現象を生じさせることができるのも本願特許の特徴であり、実施事例では上記熱量の数%程度のエネルギーで水の分解が可能であった。」 「【図1】 [図:0001435783000002.jpg] 【図2】 [図:0001435783000003.jpg] 【図3】 [図:0001435783000004.jpg] 【図4】 [図:0001435783000005.jpg] 」 (3) 本願出願時の技術常識を示す文献について ア 文献一覧 文献1 「ニュートン別冊 完全図解 元素と周期表 新装版 美しい周期表と全118元素を読み解こう!」、株式会社ニュートンプレス、2018年12月5日発行、第40ページ 文献2 合原眞編、「新しい基礎無機化学」、初版、三共出版株式会社、2007年10月25日、第16~19ページ、第22ページ イ 文献1の記載事項 「電子が存在する場所には決まりがある 1913年,デンマークの物理学者ニールス・ボーア(1885~1962,左の写真)は,原子の中で電子が存在する領域に,一定のルールがあることを示しました。 陽子はプラス1,電子はマイナス1の電気をおびています。そのため,酸素原子のように8個の陽子(プラス8の電気)をもつ原子核があれば,周囲にはそれとつり合うように8個の電子(マイナス8の電気)が飛んでいます。陽子と電子の数が同数になると,電気の値はプラスマイナスゼロとなるため,原子全体としては電気をおびません。 ボーアによると,電子は原子核の周囲を勝手気ままに飛びまわっているわけではないといいます。電子が存在する領域は,右のイラストのように層状の球に分かれており,たとえば8個の電子をもつ酸素原子の場合,原子核に最も近い層に2個の電子があり,その1つ外側の層に6個の電子があるというのです。 電子が存在する層状の領域は「電子殻」とよばれています。原子核に近いほうからK殻,L殻,M殻,……と名前がついており,外側の電子殻ほど1つの殻内に存在できる電子の最大数(定員)が多くなります。」(第40ページ) ウ 文献2の記載事項 「2.3 ● 原子模型 19世紀後半にはいくつもの原子模型が提案された。その代表的な原子模型は,地球を回る人工衛星のような原子模型や,太陽を中心として水星,金星,地球などの惑星が軌道を回っているような模型であった。しかしこの原子模型では,原子核のまわりを運動する電子は,エネルギー(光)を放出しながらいずれは原子核に引き付けられて行くことになり,このとき生じる光は連続スペクトルを与えることになるであろう。ところが励起された水素原子から発生する輝線スペクトル(発光スペクトル)はとびとびの値を与えることが観察された。ボーア(Bohr)は水素原子の輝線スペクトルとプランク(Planck)の量子仮説(quantum hypothesis)6)に基づき,“電子がとびとびの円軌道上のみを運動する原子モデル”を提案した。このモデルは化学の歴史において重要であるので,多少長くなるが1つずつ説明することにする。まず輝線スペクトルについて考えてみよう。 2.3.1 水素原子の輝線スペクトル 水素を封入した放電管に高電圧をかけると,水素分子は水素原子になり,同時に原子核を中心に運動している電子は励起される。励起状態の電子は連続スペクトルを示すことなくとびとびの振動数の光を放出してより低いエネルギー状態になる。図2-1に可視光線部(380~780nm)で観察される水素原子の輝線スペクトルを示す。 [図:0001435783000006.jpg] [図:0001435783000007.jpg] 表2-3に示すように水素原子の輝線スペクトルは可視部(Balmer系列)だけでなく紫外部(Lyman系列),赤外部(Paschen系列ほか)においてもそれぞれ観察される。これらの輝線スペクトルはリュードベリ(Rydberg)により整理され,次に示すような一般式を提出した。 [図:0001435783000008.jpg] ここで<ν->は輝線スペクトルの波数[cm-1],RHはリュードベリ定数とよばれ,109,737.31[cm-1]の値をもつ。niはni=1,2,3,4,5の値をとり,その値は表2-3に示すそれぞれの系列に対応する。また。nj=2,3,4,…は電子が励起したエネルギー準位を示す(後ほど図2-3で説明する)。 2.3.2 ボーアの原子模型 ボーアは,水素原子の輝線スペクトルを説明できる原子模型を提案した。その模型は地球(原子核)を中心に回る人工衛星(電子)の軌道を描いたようなものであるが,両者はいくつかの点で大きく異なっている。 <1>人工衛星の軌道は打ち上げ時の速度や角度で自由に変えることが できるが,電子はある定まったとびとびの軌道上しか運動できない (量子条件)。 <2>人工衛星は長年軌道を回っていると地球の重力に引かれ,同時に 回転のエネルギーを失い,終には大気圏に突入して燃え尽きる。こ れに対して,電子は同一の軌道を運動している限りエネルギーを放 出せず,安定に軌道を回り続ける。ある軌道から別の軌道に移動す るときにだけ,エネルギーの放出か吸収を伴う(リュードベリの式 (2-4)参照)。 という点である。これらの仮定に基づいて提出されたボーアの電子の軌道の概念図を図2-2に示す。量子条件に基づき得られた水素原子における電子の軌道半径rnを与える式を(2-5)に示す。 [図:0001435783000009.jpg] ここで,nは量子数,ε0は真空の誘電率(8.854×10-12Fm-1),hはplanck定数(6.626×10-34Js),mは電子の質量(9.109×10-31kg),eは電子の電荷量(1.602×10-19C)およびZは原子番号である。 [図:0001435783000010.jpg] r1の軌道半径を計算すると,5.29×10-11m(0.0529nm)となる。この値は水素原子の最小の軌道半径の大きさを表しており,ボーア半径とよぶ(a0で表す)。n=1,2,3…のときの軌道半径はr1=a0,r2=4a0,r3=9a0,…,rn=n2a0と表すことができる。すなわちrn∝n2の関係がある。 次に半径rの軌道上を運動する電子の持つエネルギーEは,E=-e2/8πε0rの関係がある。この式に式(2-5)を代入すると水素原子の軌道エネルギーEnは次式で表される(Z=1)。 [図:0001435783000011.jpg] 基底状態にある水素原子の軌道エネルギーを求めるとE1=-2.18×10-18Jとなる。En∝(1/n)2の関係があることがわかる。 一方,電磁波の振動数とエネルギーにはν=E/hの関係があるので,(2-6)との関係をもとに遷移を起こす2つの軌道間(niとnj)のエネルギー差ΔEの間で吸収または放出される電磁波を波数<ν->(=ΔE/hc)で表すと式(2-7)のようになる。 [図:0001435783000012.jpg] ここで定数項me4/8ε02ch3=RHとおくと,式(2-4)と同じになる。すなわちボーアの原子模型は水素原子のスペクトルを見事理論的に説明したのである。水素原子の輝線スペクトルと水素原子の軌道(原子軌道という)のエネルギー準位との関係を図2-3に示す。 このようにボーアの原子模型は,とびとびのスペクトルの値との関係を明らかにすることに成功した。しかし電子の粒子としての一面を基礎においていたので,“なぜ”とびとびの値を取るのかという理由を説明するには至らなかった。 [図:0001435783000013.jpg] 」 (当審注:<1>、<2>は○囲い数字、<ν->はオーバーライン付きのνを示す。)(第16~19ページ) 「2.4.2 電子の状態と軌道 原子核のまわりを回る電子の位置を示すには,x,y,z軸を中心とした直交座標P(x,y,z)よりも極座標といわれるx軸およびy軸となす角φ,θ,および原点からの距離rで表す方法が便利である。したがって、波動関数Ψは以下のように表される。 [図:0001435783000014.jpg] ここでR(r)は動径関数(radial function)とよばれ,原点からの距離rのみの関数であり球対称である。また,Θ(θ)とΦ(φ)は角関数(angular function)とよばれ,軸方向の角運動量を表す関数である。このようにr,θおよびφの関数の積として表されたシュレーディンガー波動方程式を解くと,水素原子の電子の状態および軌道のエネルギーが求められる。 動径関数R(r)の解としては [図:0001435783000015.jpg] が求められる。ここでeは自然対数の底である。この関数はrが無限大になるとき,すなわち電子が原子核から遠くなるとその存在は0に近づくことを表している。一方,許される関数のエネルギーは [図:0001435783000016.jpg] で表される。この式は2.3.2項で述べたボーアの原子模型で得られた式(2-6)そのもので,nは整数値1,2,3,…のみをとる。このようなとびとびの整数値をとくに量子数(quantum number)という。 角関数Θ(θ)とΦ(φ)の解にも量子数(lとml)が導入される。以下に電子の軌道を表すのに必要な3つの量子数と,軌道への電子の詰まり方に関する1つの量子数をまとめて記載する。 (1)主量子数 nは主量子数(principal quantum number)とよばれ,式(2-9)と式(2-13)のnと同じもので,軌道の広がりと軌道のエネルギーを決める量子数である。主量子数nで決まる状態にある電子は殻(shell)を形成するという。n=1,2,3,…に従いK殻,L殻,M殻とよぶ。」(第22ページ) (4) 実施可能要件の充足性について ア 本願発明は、前記2に示したとおり、「水を分解して得られる水素イオン及び水酸化物イオン、或いは水素イオンが水分子と結合したヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンの水和物を多量に含む電離水を、電離水が瞬時に蒸散される温度帯である摂氏数百度以上の高温中に噴霧或いは噴射により放出して水素原子を出現させ爾後水素原子が見せる齎熱現象により熱エネルギーを得る方法」の発明であるところ、「水素原子が見せる齎熱現象」とは、前記(2)の【0006】の「これらのイオン或いは水和物等は燃焼炎の如く摂氏数百度以上の高温中に常温レベルから放出されて急激な温度変化を受けると高温の熱、即ち強い電磁エネルギーに依り結合している水分子は蒸散し、相互の結合も外れ、更に分離した水素イオンである水素の原子核と1個の電子は激しい振動を受けることにより該水素原子の基底状態と云われているK殻に存在する1個の電子は自由度が高いため熱振動に依りK殻より準位の低い殻に落下してその差に相当するエネルギーが可視光~赤外線等の光として放出されることになる。・・・本願発明では放出されるエネルギーが高温下に於いて水素原子の挙動により一方的に齎されることから齎熱或いは齎熱現象と云う表現を用いている。」との記載からして、水素原子が常温から摂氏数百度以上の高温に急激な温度変化を受けることで、水素原子の基底状態といわれているK殻に存在する1個の電子が熱振動によりK殻より準位の低い殻(以下、「サブK殻」という。)に落下してその差に相当するエネルギーが放出される現象と解することができる。 イ まず、本願明細書の発明の詳細な説明の記載をみてみると、本願明細書及び図面には、前記(2)のとおりの記載があり、特に、「水素原子が見せる齎熱現象」、あるいは、「電離水が瞬時に蒸散される温度帯である摂氏数百度以上の高温中に噴霧或いは噴射により放出して水素原子を出現させ爾後水素原子が見せる齎熱現象により熱エネルギーを得る」ことに関して、次の事項が記載されているといえる。 (ア) 界面活性剤を使用せずに燃料油と水から生成した改質燃料油の発熱総量が元の燃料油を大きく上回ることを見出し、この現象が水素原子に特有の齎熱現象、すなわち、サブK殻現象によることを見出したこと(【0002】、【0003】)。 (イ) 前処理した水とA重油を攪拌混合後に超音波処理する改質事例において、改質処理後の発熱総量の増加分がサブK殻現象によるとする他には根拠が示し得ないこと(【0009】~【0013】)。 (ウ) 前記(イ)の発熱総量の増加分と、改質燃料油の燃焼炎が発する水素の線スペクトルから算出される熱量との比較により、齎熱に関与する水素原子の割合が66.4%であること(【0013】)。 (エ) サブK殻現象により増加した発熱量の実質的な変換効率は約80%であり、水から分離する水素イオンH+だけでなく、水酸化物イオンOH-も、齎熱に関与していること(【0014】、【0015】)。 (オ) 前記(イ)の発熱総量の増加分は、水の電離の逆反応での発熱量より大きいため、この増加がサブK殻現象によるもの以外にはないこと(【0016】)。 (カ) ヒドロニウムイオンが水分子3個と結合することは齎熱現象の促進に逆行するため、水から水素イオンを分離させた後は齎熱に向けて速やかに次の段階に進める必要があること(【0017】)。 (キ) ヒドロニウムイオン又は水酸化物イオンが高温の燃焼炎中に放散されることで生じる水素原子による齎熱現象は、水素原子が高温による激しい振動で他と結合することが妨げられている極短時間の間に現れる現象であることが推定され、サブK殻現象を生じさせるためには高温と短時間が重視されること(【0019】)。 (ク) 燃料油自身が担体として機能する場合はサブK殻現象にとって好都合といえるが、水が担体となっている場合には、水が吸熱するため、齎熱現象を実現させるために留意が必要であること(【0019】)。 (ケ) 高温の燃焼炎中に多量のヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンを含む電離水を放出するプロセスであり、燃焼炎中に放散された水の分解成分がサブK殻現象により熱エネルギーを齎すことができること(【0021】)。 (コ) 前記(ケ)のプロセスは、水の分解による水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-の発生1の後、水分子H2Oとの結合によるヒドロニウムイオンH3O+及び水酸化物イオンの水和物等を含む電離水の産生2に進み、高温の燃焼炎中に電離水の放散3、そしてその後生じるサブK殻現象による齎熱4となっており、周囲温度が高い程担体となっている水の蒸散は早まり齎熱現象も促進されるため、周囲温度は炭化水素系の液体燃料が一瞬にして燃焼を終える400~500℃以上が望ましいこと(【0021】、【図1】)。 (サ) 前記(ケ)の燃焼炎中に電離水を放散する機構は、配管系の冷却や放散ノズル部への熱遮蔽を考慮した構造となっていること(【0022】、【図2】)。 (シ) 気体燃料中に電離水を霧化して混合させると気体燃料は微粒化した電離水の担体となり、これを燃焼炎中に放出して即座に燃焼し高温を発生することで、電離水の昇温及び蒸発が促進され、電離水に含まれている両イオン(ヒドロニウムイオン及び水酸化物イオン)が発現する齎熱現象が向上すること(【0023】) (ス) 前処理をした水は電離水生成装置31に導入され、超音波34によって分解され電離水となった後に電離水貯留槽37に一時的に貯留され、その後電離水は気体燃料中にスプレーノズル40から噴霧され、その後気体燃料によって燃焼バーナ45に運ばれノズル44からガスの燃焼炎46中に放出されること(【0023】、【図3】)。 (セ) 燃料に固体燃料を用いる場合には、燃焼炎中に電離水を放散する方法、燃焼用の空気中に電離水を噴霧する方法、又は固体燃料と気体燃料との混合燃焼として該気体燃料中に電離水を霧化の上燃焼バーナで燃焼炎中に放出する方法等があること(【0024】)。 (ソ) 固体燃料に応用する場合には、水素原子が齎す齎熱量だけでなく、水の蒸発や昇温に必要な熱量、高温蒸気が燃焼中に起こす一酸化炭素や炭素との反応による水生ガス反応の吸熱や発熱分を織り込み、水を用いることによる熱収支の全体を把握する必要があること(【0027】)。 (タ) 水温25℃の水300mLを用いる場合、理論的な齎熱量の最大値は1143Kcalであり、天然ガスを用いたときの齎熱量は893Kcalであり、石炭燃料を用いたときの齎熱量は466Kcalであること(【0028】~【0030】)。 ウ しかしながら、前記イの記載事項は、「齎熱現象」が生じることを前提として、燃料油と水から生成した改質燃料油の改質事例を説明したり、齎熱現象を実現させるための条件等を示したり、水素原子による齎熱現象の変換効率や理論的な齎熱量の計算結果を示したりしているだけであり、本願明細書の発明の詳細な説明には、「齎熱現象により熱エネルギーを得る方法」に関して、K殻より準位の低い「サブK殻」の存在をどのように確認することができるのか、また、得られた熱エネルギーが、齎熱現象による熱エネルギー、すなわち、水素原子の基底状態といわれているK殻に存在する1個の電子が「サブK殻」に落下して齎された熱エネルギーであることをどのように確認できるのかについて何ら記載されていない。 エ また、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記イ(コ)、(サ)、(ス)、(セ)によれば、電離水を400~500℃以上の高温中に噴霧あるいは噴射により放出するための具体的な方法が記載されているが、これらの記載事項も、前記ウで検討したとおり、「齎熱現象」が生じることを前提として記載されているにすぎず、電離水を400~500℃以上の高温中に噴霧あるいは噴射により放出することで、実際に、水素原子が見せる齎熱現象により熱エネルギーを得たことを確認していない。 オ 次に、本願出願当時の技術常識について検討する。 文献1には、前記(3)イによれば、「デンマークの物理学者ニールス・ボーア・・・は,原子の中で電子が存在する領域に,一定のルールがあることを示し」たこと、「電子が存在する領域は,・・・層状の球に分かれて」いること、「電子が存在する層状の領域は「電子殻」とよばれてい」ること、「原子核に近いほうからK殻,L殻,M殻,……と名前がついて」いることが記載されている。 また、文献2には、前記(3)ウによれば、「ボーア・・・は水素原子の輝線スペクトルとプランク・・・の量子仮説・・・に基づき,“電子がとびとびの円軌道上のみを運動する原子モデル”を提案した」こと、「ボーアの原子模型は水素原子のスペクトルを見事理論的に説明した」こと、「許される関数のエネルギーは [図:0001435783000017.jpg] で表される。この式は2.3.2項で述べたボーアの原子模型で得られた式(2-6)そのもので,nは整数値1,2,3,…のみをとる」こと、「nは主量子数・・・とよばれ,・・・軌道の広がりと軌道のエネルギーを決める量子数である。主量子数nで決まる状態にある電子は殻・・・を形成するという。n=1,2,3,…に従いK殻,L殻,M殻とよぶ」ことが記載されている。 これらの記載によれば、原子の中で電子が存在する領域は層状の球に分かれており、電子が存在する層状の領域は「電子殻」と呼ばれ、原子核に近いほうからK殻、L殻、M殻・・・との名前がついており、それぞれ、軌道の広がりと軌道のエネルギーを決める主量子数nが、整数値1、2、3・・・に対応するエネルギーEnを有すること、すなわち、原子の中で電子が存在する領域は層状に分かれた電子殻と呼ばれ、そのうち、エネルギー準位が最も低い電子殻が、主量子数nが1に対応するエネルギーEnを有するK殻であることが、本願出願当時の技術常識であるといえる。 カ 前記オの技術常識を踏まえると、原子の中で電子が存在する領域のうち、エネルギー準位が最も低い電子殻がK殻であり、このK殻よりもさらにエネルギー準位の低い「サブK殻」が存在することは、本願出願当時の技術常識であるとはいえないため、「サブK殻」の存在の確認手段や、得られた熱エネルギーが、水素原子の基底状態といわれているK殻に存在する1個の電子が「サブK殻」に落下して齎された熱エネルギーであることの確認手段も、本願出願当時の技術常識であるとはいえない。 キ 前記ウ、カで検討したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が「サブK殻」の存在の確認手段や、得られた熱エネルギーが、齎熱現象による熱エネルギー、すなわち、水素原子の基底状態といわれているK殻に存在する1個の電子が「サブK殻」に落下して齎された熱エネルギーであることの確認手段を理解できないし、また、前記エで検討したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載された、電離水を400~500℃以上の高温中に噴霧あるいは噴射により放出する方法によって、齎熱現象による熱エネルギーが得られたことも理解できないため、「水素原子が見せる齎熱現象」を明確に理解し、「齎熱現象により熱エネルギーを得る方法」を実施するために必要な具体的な条件を見いだすことは、当業者に期待し得る程度を越える過度の試行錯誤を要するといわざるをえない。 キ したがって、前記(1)の実施可能要件の判断手法に従えば、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足しない。 (5) 請求人の主張について ア 主張の内容 意見書、審判請求書、及び、令和8年2月2日に電子メールにて提出された本願発明を説明する資料(以下、「説明資料」という。)における請求人の主張は、次のとおりである。 (ア) 意見書における主張 a 「(1)サブK殻及びK殻に関して述べますと、原子の電子軌道の内最も準位の低い電子殻はK殻であるとされたのはボーアの原子模型であり、その発表は1913年と100年以上前のことでした。 出願者が見出し述べています「K殻がエネルギーレベルの最も低い電子軌道ではない」ことの理由は以下にあります。・・・ その1、ボーアの原子模型の対象となったのは水素原子といわれていますが、本特許願は水素原子の高温下での挙動にあります。その特殊な条件下の状況をボーア他関係者はどこまで認識していたかの疑問があり、恐らくそこまでは検討されていなかったのではないかということに加えて、殻の名称のスタートをAからではなくKとしたこともK殻より下の軌道はあるかも、との思いの表れであり、K殻から下には殻はあり得ないと確信を持って誰も明言はしていないことです。 その2、本特許願に記している改質燃料油は燃料油と水だけを用いて製造しますが、その際には超音波振動によりセラミックを刺激して赤外線放射能を高めることにより水のイオン化を促進し、水素イオン濃度の指標である酸化還元電位のORP値を元のレベルから大きく低下させています。その様にして水の水素イオン濃度を高めた場合にのみ次に述べる燃費改善の効果が見られる改質燃料油が得られ、装置から得られた該改質燃料油の容積は元の燃料油と用いた水の約90%の和であり、比重は元の燃料油と同程度、また発熱量と重量の積である発熱総量は用いた水の約90%が燃料油に変化したかの如き増加で、その増加したエネルギー量に比べて水のイオン化に要した正味のエネルギー量は無視できる程に少量です。 この水が恰も燃料油に変化している一見不思議な現象の合理的説明は、高温に水素原子が曝された時に現れるサブK殻、即ちK殻より準位の低い殻、に電子が落ち差分のエネルギーが放出されたとする以外には見出せないことであり、逆に電子はK殻から下には落ちないとすればこれ程大幅なエネルギーがどこから齎されるのかに付き説明が全くできないことです。このサブK殻は常温時にも存在しているとは言い切れず、原子核と1個の電子の2個の素粒子が高温により激しい熱運動をしている時に現れる殻ということになります。即ち、摂氏数百度以上の高温下で現れる現象であり、その環境下では原子核の熱運動は激しくなり、またK殻軌道上の1個の電子もその動きを制約するものがないために熱により引き起こされる自由な熱運動でK殻軌道から逸脱し易くなり、更に両素粒子間には常時作用しているクーロン力があり、温度がある閾値を超した場合には遂にK殻上にある1個の電子は逸脱して原子核に近づき、即ちK殻から落下して、新たな殻であるサブK殻上を周回することになり、元のK殻には電子がゼロという状況が現われることになります。・・・ その3、文部科学省が平成14年12月に公表している科学技術・学術審議会の資源調査分科会報告書があり、「第4章水の特性を生かした様々な活用、2超臨界水」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu0/shiryo/attach/1331584.htm)の欄に超臨界水の特徴を示す横軸を温度(摂氏0~600度)、縦軸の右に誘電率、同左にH+とOH-両イオンの積が対数表示で示されている図がありますが、誘電率は温度上昇と共に徐々に低下して400度では一桁、600度では限りなくゼロに近付くことが示されている一方、イオン積は300数十度に向けて低温からなだらかな山を描き上昇後、400度辺りでスケールの半分程度と云う極めて急な下落を見せ、その後は600度に向けて徐々に低下して行くとなっています。即ち、イオン積は温度数十度の間に約8ポイント下落となっており、これはどちらかのイオンの下落幅が最大8桁であることを示しています。 この図を如何に読むかになりますが、・・・また300数十度から400度に掛けて約8ポイント即ち8桁という大幅なイオン積の急落はOH-或いはH+どちらのイオンに依るのかは軽量故に熱運動の激しいH+の消滅にあるとするのが妥当であり、出願人はこれをサブK殻現象の一環と見るのです・・・ 従って、イオン積の8ポイントという大きな下落はK殻を周回していた1個の電子がどこかに移動し、新しい場に移動したことを示していますが、その場であるサブK殻は原子核と1個の電子との対で成り立ち他の電子を入れる隙間がなくイオンではないことになり、上記その2、に記載の通り電子並びに原子核は共に激しい熱運動に曝された結果電子はK殻から飛び出し原子核に近く、K殻より下の準位即ちサブK殻に落下しているとする見方と合致していることになります。 ・・・ その4、上記の通り、K殻より準位の低いサブK殻は高温時に発現し常温の時点では消滅しているためその存在を確認する方法は見当たらず、従ってこのサブK殻の存在については司法に於ける手法である「状況証拠に基づく裁量」を適用する必要があると考えますが、その状況証拠を改めて記しますと以下の通りです。 #1、水と油からなる改質燃料油を燃焼させると恰も水が燃料油に変化したかの如き燃焼状態であり、発熱量と重量の積である発熱総量の大幅な増加が見られますが、これはサブK殻に電子が落ちることにより電子の位置と運動の両エネルギーが放出されることに依る、とする他には合理的な説明が付かないこと。 #2、この改質燃料油は段落【0010】に記載の通り、用いる水の水素イオンレベルを示す酸化還元電位を大きく下げた場合にのみ得ることができることは注目に値し、水素イオンの存在がキーであることが分かります。水の分解で大量に産生された水素イオンH+は結合力の弱い水素結合により一旦水分子と結合してH3O+となり装置内で改質燃料油に組み込まれ、該油の燃焼時には高温により水分子から分離されて出現し、周囲の高温により水素イオンH+を構成する成分である原子核と電子には激しい熱運動が生じるが、1個の電子の動きを束縛するものは両微粒子間に働くクーロン力のみであり、またそのクーロン力は高温下では常温時の約4倍或いはそれ以上に上昇して両微粒子間に強力な引き合う力を生じさせているため両微粒子間には何らかの新たな変化、即ちサブK殻の出現、が考えられること。 #3、超臨界水に見られる360~400度近辺でのH+とOH-両イオンのイオン積の急減を、サブK殻に電子が落ちてH+が消滅することによる、とすれば改質燃料油の産生熱量との差異はなく矛盾点が見出せないのですが、H+の消滅が考え得る他の反応によるとした場合には当該発熱量が実際に生じた齊熱量に比べて遥かに小さく、イオン積の急減する事象に対して納得できる理由とはならないことです。 即ち、サブK殻への落下以外で考え得るH+の消滅は外にもあり、まず意図的な電子供与ですがこれは否定するとして、次にOH-との再結合でH2Oとなる場合はモル当たり56.4kJの発熱であり比較のための10gの水であれば15.7kJの発熱であり、既に検討したH+の水素分子化の場合は爾後の水素の燃焼熱を加えて101kJの発熱であり、実際に生じている齎熱量である413kJとはいずれも大きな隔たりがあります。 #4、K殻に於ける電子の収容可能数は2個であり、電子が1個である故に水素イオンとなっていたのが、高温下でサブK殻が現れるとそこでは電子の収容可能数が1個のためにイオンではなくなり、H+の消滅という事象になっていること。 その5、関連事項を記しますと、・・・ その6、サブK殻現象による齊熱を改質燃料油の燃焼を通して見て来ましたが、この場合の燃料油の役割は燃焼による高温の発生と水素原子を発現させるための水分子の運搬役という2役であり、要点は水素原子を含む成分を何らかの運搬役により高温の場に急速に持ち込むことである限り燃料の種類を問う必要はなくなり、従って高温炎中に多数の水素原子を含む水を噴霧或いは噴射する手法であってもサブK殻現象を生じさせることは可能となります。」 b 「(2)高温の熱即ち強い電磁エネルギーとはどのような大きさのものであるのか、につきましては上記の文中ではイオン積が急落するのは摂氏300数十度から400度に掛けてとなっていますが、本願の段落【0021】に周囲温度は摂氏4~5百度以上が望ましいと記しています。この100度程度の温度差は水素原子が結合していた水分子から即座に切り離されるためにも必要と思われます。」 c 「(3)次にエネルギー保存の法則の関係ですが、高温中に放出された水に含まれている水素イオンの電子がK殻からサブK殻に落下し、差分のエネルギーが電磁波として放出されるのですが、改質燃料油での実験では電子がサブK殻からK殻に戻るために必要なエネルギーをすぐさま求める様な燃焼上の反応は見られず、高温時に現れるサブK殻は原子核の周囲にある深い溝の様な抜け出し難い殻とも解釈出来ますが、その位置では原子核と電子の距離がK殻上よりも縮まり両粒子間に働くクーロン力も上述の通り約4倍強く作用していることになります。・・・」 d 「(4)当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない点ですが、段落【0006】中の記載「水分子は蒸散し、相互の結合も外れ、更に分離した水素イオンである水素原子は激しい振動を受ける」は、より正しくは、水素イオンは水素原子と1個の電子であるため訂正し手続補正書に記載しています。これは燃料と共に燃焼炎中に持ち込まれた水素イオンの高温下での発現と振動の状況を述べているのですが、通常の水分子H2Oと水素イオンが水素結合してH3O+となっている場合、高温によりまず水分子と水素イオンの結合が外れると水素イオンが単独で極短時間ですが現れることになり、上述の通り周囲が高温であれば水素イオンの電子はK殻から落下することになります。 また、水は水の分子が単独で存在している集合体ではなく、圧倒的多数はイオン化した成分を一部組み込みながら水分子が水素結合によりクラスターを形成していると見られていて、通常の水ではクラスターの分解は摂氏100度でも約10%程度、ほぼ完全な分解は蒸気状態である摂氏300~400度になることが知られていますが、摂氏数百度以上であれば水素イオンは瞬時に分離ということになり、そのことを上記では表現しています。従い、当業者が発明を実施するには、酸化還元電位を示すORP値を大きく低下させて水素原子を多量に産生させた後、その水を高温に曝すことなく燃料と共に或いは噴霧或いは噴射により燃焼炎中に運び、その場で初めて高温に曝すことで齎熱が実現できることになります。」 (イ) 審判請求書における主張 a 「3.本願発明が特許されるべき理由 ・・・ しかし乍ら、今日の技術常識であるK殻は最も低い位置の殻であると云うことは水素原子の実験から得られたボーアの原子模型が諸現象と整合しており広く認知されたことにありますが、そこには水素の高温高圧下の状況に関する記述はなく、本願発明者が改質燃料油の実験で体験した珍しい現象の解明が既存の理論では進まないため新たにサブK殻の存在を仮定したところその理論と実験結果に整合性が見られ納得できたのですが、思えば高温高圧域はボーアの原子模型に於いていわば空白域になっていたと思う次第です。 サブK殻はK殻と同様に理論から導かれたものであり、その理論を持ち込むと改質燃料油の他に複数の高温高圧域の事象がすべて合理的に説明できる一方、K殻の存在を固持していると全く説明できないため本願発明者はサブK殻の存在を確信しているのですが、K殻もサブK殻同様に未だ物理的に確認或いは観察されたものではなく諸現象との整合性があるため正当と判断されているだけに審査官殿からサブK殻に対してその存在を確認する方法を現象との整合性以外に求められるのはK殻の存在を認める論理と同一ではなくサブK殻に対して過剰な要求になっていると思う次第です。 他には、高温高圧下を空白域と見做した場合、その域での諸現象を説明するために持ち出せる論は水素の原子核と電子の関係なので二現象しかないのですが、K殻或いはサブK殻のどちらの論を持ち出せば合理性があるのかを見る時、一部の事例を後述しますがサブK殻の論を展開しないと説明ができないことはやはりその論の確かさを証することになるのではないでしょうか。 また、求められている「齊熱現象により熱エネルギーを得る方法」を実施するために必要となる具体的な条件は、特許請求の範囲に記載の通り摂氏数百度以上の高温中に電離水を放出することであり、具体的温度として明細書中に摂氏4~5百度以上とも記しております。 以上を踏まえた上で、高温高圧下での水素イオンの消滅或いは改質燃料油の発熱例にも見られる様に厳然としてサブK殻現象を示すものが存在しており、今般の審判請求書に記す内容は審査要件を満たしていると思う次第であり、・・・」 b 「(1)齊熱現象を説明しますと、水の水素原子が高温部に何らかの方法で投入された場合水素原子を構成する原子核と一個の電子は共に激しい熱運動をすることになりますが、この熱運動および両粒子間に働き温度の上昇により強まったクーロン力との双方の作用でK殻上の電子はK殻から逸脱し、K殻より内側に存在するとしているサブK殻に移動することになります。即ち、急な温度上昇前はバランスが取れていたクーロン力と電子の回転に伴う遠心力が温度上昇によるクーロン力の増大で電子が原子核に一層強く引き付けられること、及び温度上昇による以前よりも激しい両粒子の熱運動により原子核と電子の距離が短くなる場面が増え、他に拘束するものがない一個の電子は原子核に引き込まれる機会が増し、K殻からその内側のサブK殻に遷移することになります。 そうした電子の遷移による両殻間のエネルギー差は電磁波となり放出されますが、この様な原子核に近い位置での電磁波は紫外線領域が通例であり、燃焼装置の様に周囲を金属で囲まれている場合には生じた紫外線領域の電磁波は金属により赤外線領域の電磁波に周波数変換され熱エネルギーとして放散されますが、電子のサブK殻への移動による熱放散は瞬時であるもののそれ以降に電子が置かれた温度環境の下で周囲のエネルギーを吸収して元のK殻に戻る際の熱の吸収はカノニカル分布に従うため瞬時には戻れず時間差が生じて、熱エネルギーの収支はいずれゼロとなるものの暫くは齎される方が大きく正であるため熱エネルギーを人は利用することができる訳です。」 c 「(2)次にサブK殻ですが、原子の電子軌道の内最内殻がK殻であるとする今日知られている電子軌道はボーアが1913年に発表した理論によるものであり、実在を観察した結果ではないこと、またそれらの軌道は太陽の周囲を回る地球の様に決められた一つの軌道ではなく、量子条件を満たす軌道と仮定されているため速度と軌道の半径の積が一定であれば、ある程度の温度範囲内では様々な軌道を取ることができK殻も幅を持ったものとなります。また、原子核からK殻までの半径はボーア半径と呼ばれ0.053nmとされています。 水素の原子核の直径は即ち陽子の直径であり、上記ボーア半径の2倍であるK殻の直径との比は約6万3千分の1となるため、原子核の直径を1cmとすればK殻は直径約630m、半径は約315mであり、高温に曝され激しく熱運動をする電子が高温により強まったクーロン力によりK殻を外れK殻よりも原子核に近い軌道を周回することになりますが、そのために必要な新たな軌道の空間は十分にあることになります。K殻から原子核の間に存在するこの空間に於いてK殻を離れた電子が周回することにより新たに形成される軌道の殻をサブK殻と総称しているのですが、軌道は温度と圧力により異なるためK殻より内側にあり電子の取る軌道の全帯域を包括的に一つと見るのか或いは温度と圧力により複数区分とするのかは今後の研究を待つことになります。 現在、最内殻であるとされているK殻にそれまで存在していた一個の電子がサブK殻に移り、電子を二個収容できるK殻に電子が存在しなくなると水素原子はイオンではなくなるのですが、そのことは去る6月20日の意見書に引用した科学技術・学術審議会の報告書の図に示されており、高温高圧下の超臨界水のイオン積は摂氏300数十度で急減するとなっています。イオン積とは水のイオンである水素イオンと水酸化物イオンの積であり、イオン積が急減することは両イオンの特性から水素イオンの方が無くなることであり、イオンでないことは電子の過不足がないことを示しているため電子が遷移したサブK殻では電子の収容数は一個であることも分かります。」 d 「(3)金属水素との関係を述べますと、世界では現在、超高温高圧下での金属水素の生成が追求されていますが、・・・ 個人情報保護の関係で図示できないのですが他の資料に出ている金属水素の合成条件は圧力100数十万気圧、温度3500~4000Kとなっている他、下記の証拠方法に記載されている金属水素に至る圧力の予測図に於いても200数十万気圧以上、温度数百K以上の領域にあることが示されています。これらの温度と圧力の下での水素原子の大きさは、圧力が3次元で働き、また圧力と絶対温度は比例するとみれば前述の原子核の半径315mはどちらの予測に於いても1~2m以下に縮まっていることになり、これが予測される金属水素の条件である高密度とすれば、金属水素となる殻もK殻の変形であるとすることは合理性を大きく欠く論になり、新たな殻の総称であるサブK殻の存在を認める必要があります。 即ち、超高温高圧下に水素原子を置けばK殻上の電子はK殻から新たな殻であるサブK殻に遷移し、原子核と周回する電子の距離はK殻のボーア半径と比べると極度に短くなること、またサブK殻に収容できる電子は一つとなることですが、この状態でも尚K殻と呼ぶことには大いに疑義があると云えます。 従って、サブK殻は前述の科学技術・学術審議会の報告書に図示されている通り摂氏300数十度の段階で出現し、金属水素の領域にまで広がっていると見ることができ、またサブK殻の存在を認めることにより水素の特異な現象である超臨界水に於ける水素イオンの消滅、水から得た改質燃料油の元の液体燃料級の発熱現象、及び金属水素との整合性を矛盾なく説明することができるのですが、K殻のままではこれらの現象を論理的に説明することはできないのです。」 e 「【証拠方法】 東京科学大学(旧東工大)の公開情報「高温高圧力下における流体水素のプラズマ相転移を観察―木星の内部構造の再現に成功、常温超伝導にも一歩近づく―」(公開日2015年11月16日) 1通 https://www.titech.ac.jp/news/2015/032699」 (ウ) 説明資料における主張 a 「1、論文関係 昨年8月21日付でクールフュージョン(株)のホームページに記載されていました。内容は、常温核融合を研究しておられる元北大の水野忠彦先生が、画期的な科学的実証に成功し、ヨーロッパ応用物理学会の論文誌 ( European Journal of Applied Physics)である論文名:「 Neutrons produced by heating processed metals」)に公表されたとのこと。 その概要は、 和訳(ABSTRACT) 要旨 SUS304 合金を圧縮加工および引張加工し、さらに 300℃から 800℃に加熱したところ、中性子が生成されることを確認した。生成された中性子のエネルギーは 0.7 MeV であった。 本論文では、この中性子生成の制御について報告する。 反応器には、厚さ 2 mm の SUS304 板を曲げて作った円筒型チャンバーを用いた。直径は 10 cm、長さは 40 cm で、内面はメッシュ 400 でバフ研磨されている。両端を密閉し、内部に水素を 1 気圧で導入した後、排気した。このチューブを加熱し温度を変化させることで、過剰熱と中性子の放出が確認された。 中性子エネルギースペクトルは、NE213 液体シンチレーターを用いてガンマ線と中性子を識別することで測定した。中性子エネルギーは 0.7 MeV にピークを持ち、従来核融合によるものと考えられてきた 2.45 MeV とは大きく異なっていた。 この反応は再現性が高く、温度が高いほど反応は強くなった。 ・・・ サブK殻現象とは、高温下(300数十度以上)に置かれた水素原子(分子ではなく)の一個の電子は高温故に原子核に引き寄せられK殻から下に落ちるが、その際K殻との差分のエネルギーが放出され、周囲の金属で波数変換を受けて熱エネルギーである赤外線となる、と云うことです。 水野先生の実験では、水素原子を吸着しているステンレス板を真空にした状態で高温下に置くと、過剰な熱が生じ、しかも中性子線やガンマ―線が検出された、と云うものです。これは正しくサブK殻現象のことであり、中性子線やガンマ―線は金属に当たった強力な電磁波により放出されたもので、中性子は水素原子には含まれていない素粒子です。K殻から落ちた電子が持つエネルギーがそれ程強力であることは、以下で説明ができます。 高温下の金属面では照射される赤外線による加熱とその温度下での自由電子による発熱及び水のサブK殻現象により齎される熱の3種類の熱により加熱が亢進し極めて高温になることが予想されるが、自由電子による発熱とサブK殻現象により齎される熱には正のフィードバック関係があるため金属表面の更なる温度上昇はサブK殻現象に反映され一層強力な(軟X線~X線級以上の)電磁波の放出があり得る。 2、水野先生の実験結果はなぜ生じるのか? 論文で先生は常温核融合とされていますが、それは誤りと云えるのは、 ・核融合と云える熱量ではないことが一番、 ・放出された中性子は水にはなく、金属中のものであること、 ではなぜか?に対してAIの一つCopilot は添付文の様に論じています。 水の見せる他の現象との関係からサブK殻現象に軍配を上げているのです。」(応対記録第2~5ページ) b 「水野先生の軽水実験について、 Q:水野忠彦博士の論文、軽水を用いて300~800度の加熱で過剰熱と0.7MeVno中性子の放出を確認したとする内容でしたが、それの理由に対してそれは格子内核反応とのことでした。それでは、軽水素のイオン積が300数十度で急減する反応との整合性はありますか?私は0.7MeVがサブK殻現象によるとするのであれば、どの場合も合理的な説明ができると思いますが。 A:興味深い論点ですね。水野忠彦博士の実験(軽水・300~800℃加熱・過剰熱・0.7MeV中性子)を・・・」(応対記録第6ページ) イ 主張に対する当審の判断 前記アの主張のうち、特に、「水素イオン」や「水素原子」に関する主張、「サブK殻」の存在を確認できるとの主張、「齎熱現象」に関する主張、本願発明の実施に関する主張について検討する。 (ア) 「水素イオン」や「水素原子」に関する主張について 前記アにおける主張は、「水素イオンH+を構成する成分である原子核と電子」(前記ア(ア)aの「その4」の「♯2」参照)、「K殻に於ける電子の収容可能数は2個であり、電子が1個である故に水素イオンとなっていた」(前記ア(ア)aの「その4」の「♯4」参照)、「水素イオンの電子がK殻からサブK殻に落下」(前記ア(ア)c参照)、「段落【0006】中の記載・・・は、より正しくは、水素イオンは水素原子(当審注:本願明細書の【0006】によれば「水素の原子核」の誤記である。)と1個の電子である」(前記ア(ア)d参照)、「水素イオンの電子はK殻から落下する」(前記ア(ア)d参照)、「電子を二個収容できるK殻に電子が存在しなくなると水素原子はイオンではなくなる」(前記ア(イ)c参照)との主張を含んでいる。 しかしながら、水素原子は、1つの陽子(原子核)と1つの電子から構成され、電気的に中性であり、また、水素イオンは、水素原子から電子が取り除かれて、正の電荷を有し、電子を有さないものであるから、前記アにおける主張は、科学的に誤った前提に基づく主張となっている。 (イ) 「サブK殻」の存在を確認できるとの主張について a 「水から得た改質燃料油の元の液体燃料級の発熱現象・・・との整合性」(前記ア(イ)d参照)について、「燃費改善の効果が見られる改質燃料油が得られ・・・この水が恰も燃料油に変化している一見不思議な現象の合理的説明は、高温に水素原子が曝された時に現れるサブK殻、即ちK殻より準位の低い殻、に電子が落ち差分のエネルギーが放出されたとする以外には見出せないこと」(前記ア(ア)aの「その2」参照)、「水と油からなる改質燃料油を燃焼させると恰も水が燃料油に変化したかの如き燃焼状態であり、発熱量と重量の積である発熱総量の大幅な増加が見られますが、これはサブK殻に電子が落ちることにより電子の位置と運動の両エネルギーが放出されることに依る、とする他には合理的な説明が付かないこと」(前記ア(ア)aの「その4」の「♯1」参照)、あるいは、「本願発明者が改質燃料油の実験で体験した珍しい現象の解明が既存の理論では進まないため新たにサブK殻の存在を仮定したところその理論と実験結果に整合性が見られ納得できた」こと(前記ア(イ)a参照)を主張している。 しかしながら、これらの主張は、他に説明できる反応等を思いつかないことを述べるのみで、そのことをもって、「サブK殻」の存在を確認できるとはいえない。 b また、「この改質燃料油は段落【0010】に記載の通り、用いる水の水素イオンレベルを示す酸化還元電位を大きく下げた場合にのみ得ることができる・・・水の分解で大量に産生された水素イオンH+は結合力の弱い水素結合により一旦水分子と結合してH3O+となり装置内で改質燃料油に組み込まれ、該油の燃焼時には高温により水分子から分離されて出現し、周囲の高温により水素イオンH+を構成する成分である原子核と電子には激しい熱運動が生じるが、1個の電子の動きを束縛するものは両微粒子間に働くクーロン力のみであり、またそのクーロン力は高温下では常温時の約4倍或いはそれ以上に上昇して両微粒子間に強力な引き合う力を生じさせているため両微粒子間には何らかの新たな変化、即ちサブK殻の出現、が考えられること」(前記ア(ア)aの「その4」の「♯2」参照)を主張している。 しかしながら、前記(ア)で検討したとおり、水素イオンは電子を有していないため、この主張は技術常識に矛盾している。仮に、この主張における「水素イオンH+」が「水素原子」の誤りであったとすると、水の分解で「水素原子」が生成するという、水の電離により水素イオンが生成するよりはるかに起こり難い反応を前提とすることとなるから、水の電離が起こり得ることに基づく説明から、そのような現象が起こるとはいえない。 c 「超臨界水に於ける水素イオンの消滅・・・との整合性」(前記ア(イ)d参照)について、「超臨界水の特徴を示す横軸を温度・・・、縦軸・・・にH+とOH-両イオンの積が対数表示で示されている図があり・・・イオン積は300数十度に向けて低温からなだらかな山を描き上昇後、400度辺りでスケールの半分程度と云う極めて急な下落を見せ、その後は600度に向けて徐々に低下して行く・・・300数十度から400度に掛けて約8ポイント即ち8桁という大幅なイオン積の急落はOH-或いはH+どちらのイオンに依るのかは軽量故に熱運動の激しいH+の消滅にあるとするのが妥当であり、出願人はこれをサブK殻現象の一環と見る」こと(前記ア(ア)aの「その3」参照)、「超臨界水に見られる360~400度近辺でのH+とOH-両イオンのイオン積の急減を、サブK殻に電子が落ちてH+が消滅することによる、とすれば改質燃料油の産生熱量との差異はなく矛盾点が見出せない」こと(前記ア(ア)aの「その4」の「♯3」参照)、あるいは、「K殻に於ける電子の収容可能数は2個であり、電子が1個である故に水素イオンとなっていたのが、高温下でサブK殻が現れるとそこでは電子の収容可能数が1個のためにイオンではなくなり、H+の消滅という事象になっていること」(前記ア(ア)aの「その4」の「♯4」参照)を主張している。 しかしながら、前記(ア)で検討したとおり、水素イオンH+には電子が存在しないから、これらの主張により、「サブK殻」の存在を確認できるとはいえない。 d 「金属水素との整合性」(前記ア(イ)d参照)について、「原子核からK殻までの半径はボーア半径と呼ばれ0.053nmとされ・・・原子核の直径を1cmとすればK殻は直径約630m、半径は約315mであり」(前記ア(イ)c参照)、「金属水素に至る圧力の予測図に於いても200数十万気圧以上、温度数百K以上の領域にあることが示され・・・これらの温度と圧力の下での水素原子の大きさは、・・・前述の原子核の半径315mはどちらの予測に於いても1~2m以下に縮まっていることになり、これが予測される金属水素の条件である高密度とすれば、金属水素となる殻もK殻の変形であるとすることは合理性を大きく欠く論になり、新たな殻の総称であるサブK殻の存在を認める必要があ」ること(前記ア(イ)d参照)を主張している。 前記主張における「1~2m以下に縮まっている」とする水素原子の大きさをどのように算出したのか不明であるが、例えば、通常の金属原子の原子半径と同様に、金属水素の構造を仮定してその格子間距離の測定値から求めたと考えた場合でも、そもそも孤立原子に対する理論計算から求められたボーア半径と一致するものではなく、このような単純な原子の大きさの比較を根拠として「サブK殻」の存在を確認できるとはいえない。 e その他の事象との整合性について、「水素原子を吸着しているステンレス板を真空にした状態で高温下に置くと、過剰な熱が生じ、しかも中性子線やガンマ―線が検出された、と云うものです。これは正しくサブK殻現象のことであり、・・・論文で先生は常温核融合とされていますが、・・・AIの一つCopilot は・・・水の見せる他の現象との関係からサブK殻現象に軍配を上げている」こと(前記ア(ウ)a参照)を主張している。 しかしながら、「水素原子を吸着しているステンレス板を真空にした状態で高温下に置く」ことは、前記ア(ウ)aによれば、「反応器には、厚さ 2 mm の SUS304 板を曲げて作った円筒型チャンバーを用いた。直径は 10 cm、長さは 40 cm で、内面はメッシュ 400 でバフ研磨されている。両端を密閉し、内部に水素を 1 気圧で導入した後、排気した。このチューブを加熱し温度を変化させる」との実験であるのに対して、Copilotへの質問は、前記ア(ウ)bによれば、前記実験と異なり、「軽水」の使用を前提としているため、前記主張は、「水素原子を吸着しているステンレス板を真空にした状態で高温下に置くと、過剰な熱が生じ、しかも中性子線やガンマ―線が検出された」との事象を検討しているといえない。 f 「サブK殻はK殻と同様に理論から導かれたものであり、その理論を持ち込むと改質燃料油の他に複数の高温高圧域の事象がすべて合理的に説明できる・・・K殻もサブK殻同様に未だ物理的に確認或いは観察されたものではなく諸現象との整合性があるため正当と判断されているだけに・・・サブK殻に対してその存在を確認する方法を現象との整合性以外に求められるのはK殻の存在を認める論理と同一ではなくサブK殻に対して過剰な要求になっている」こと(前記ア(イ)a参照)を主張している。 しかしながら、K殻の存在、すなわち、ボーアの分子模型は、前記4(3)ウの記載によれば、水素原子の輝線スペクトル観測結果の整合性や、量子力学計算で科学的に認められたものであり、他に理論的な説明が思いつかないことをもって「サブK殻」を確認したとの主張を同じレベルで論じるべきものではない。 (ウ) 「齎熱現象」に関する主張について a 「水素イオンは水素原子(当審注:本願明細書の【0006】によれば「水素の原子核」の誤記である。)と1個の電子である・・・通常の水分子H2Oと水素イオンが水素結合してH3O+となっている場合、高温によりまず水分子と水素イオンの結合が外れると水素イオンが単独で極短時間ですが現れることになり、上述の通り周囲が高温であれば水素イオンの電子はK殻から落下する・・・通常の水ではクラスターの分解は摂氏100度でも約10%程度、ほぼ完全な分解は蒸気状態である摂氏300~400度になることが知られていますが、摂氏数百度以上であれば水素イオンは瞬時に分離ということになり、・・・従い、当業者が発明を実施するには、酸化還元電位を示すORP値を大きく低下させて水素原子を多量に産生させた後、その水を高温に曝すことなく燃料と共に或いは噴霧或いは噴射により燃焼炎中に運び、その場で初めて高温に曝すことで齎熱が実現できること」(前記ア(ア)d参照)を主張している。 しかしながら、前記主張は、「水素イオン」と「水素原子」を混同して使用しており、「水素イオン」であるならば、前記(ア)で検討したとおり、水素イオンには電子が存在しないから、この主張は、科学的に誤っている。また、「水素原子」であるならば、酸化還元電位を低下させるだけで水素原子を生成するとの、水の電離により水素イオンが生成するよりはるかに起こり難い反応を前提としているため、水の電離が起こり得ることに基づく説明から、そのような現象が起こるとはいえない。 b 「齊熱(当審注:本願明細書の【0006】によれば「齎熱」の誤記である。)現象を説明しますと、水の水素原子が高温部に何らかの方法で投入された場合水素原子を構成する原子核と一個の電子は共に激しい熱運動をすることになり・・・この熱運動および両粒子間に働き温度の上昇により強まったクーロン力との双方の作用でK殻上の電子はK殻から逸脱し、K殻より内側に存在するとしているサブK殻に移動することになり・・・そうした電子の遷移による両殻間のエネルギー差は電磁波となり放出され・・・周囲を金属で囲まれている場合には・・・金属により赤外線領域の電磁波に周波数変換され熱エネルギーとして放散されますが、電子のサブK殻への移動による熱放散は瞬時であるものの・・・周囲のエネルギーを吸収して元のK殻に戻る際の熱の吸収はカノニカル分布に従うため瞬時には戻れず時間差が生じて、・・・熱エネルギーを人は利用することができる」こと(前記ア(イ)b参照)を主張している。 しかしながら、前記主張は、「サブK殻」が存在することを仮定した上での理論を説明したにすぎない。 (エ) 本願発明の実施に関する主張について 本願発明を実施するための具体的な条件に関して、「高温の熱即ち強い電磁エネルギーとは・・・本願の段落【0021】に周囲温度は摂氏4~5百度以上が望ましいと記し・・・水素原子が結合していた水分子から即座に切り離されるためにも必要」であること(前記ア(ア)b参照)、あるいは、「求められている「齊熱(当審注:本願明細書の【0006】によれば「齎熱」の誤記である。)現象により熱エネルギーを得る方法」を実施するために必要となる具体的な条件は、特許請求の範囲に記載の通り摂氏数百度以上の高温中に電離水を放出することであり、具体的温度として明細書中に摂氏4~5百度以上とも記して」いること(前記ア(イ)a参照)を主張している。 しかしながら、これらの主張は、「齎熱現象」が起こることを前提として、具体的温度を説明しているだけであり、電離水を摂氏4~5百度以上の高温中に放出することで発生したエネルギーが、「水素原子が見せる齎熱現象」による熱エネルギーであることを確認していない。 (オ) 以上のとおり、請求人の前記アの主張は、その前提に科学的な誤りや矛盾を含み、また、他に説明を思いつかないことを根拠にしたり、多くの仮定に基づいた主張であるため、前記(4)の判断を左右するものではない。 5 むすび 以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものでなく、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その余の事項について検討するまでもなく、特許法第49条第4号に該当するため拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-019066

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ根拠条文の審決819件(特許法36条4項1号、特許法49条4号)
  • 2022-015605拒絶査定不服審判 / 2024-12-17 / 請求不成立幹細胞分化の促進
    共通の条文: 特許法36条4項1号、特許法49条4号
  • 2023-005449拒絶査定不服審判 / 2024-10-22 / 請求不成立ナノ粉末、ナノセラミック材料並びにこれらの製造方法及び使用方法
    共通の条文: 特許法36条4項1号、特許法49条4号
  • 2022-018324拒絶査定不服審判 / 2024-09-17 / 請求不成立銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板
    共通の条文: 特許法36条4項1号、特許法49条4号
  • 2022-000167拒絶査定不服審判 / 2024-06-25 / 請求不成立生物起源の活性炭ならびにそれを作製および使用する方法
    共通の条文: 特許法36条4項1号、特許法49条4号
  • 2019-006177拒絶査定不服審判 / 2021-01-28 / 請求不成立フッ素ゴム組成物を用いたシール材を具備するシール構造
    共通の条文: 特許法36条4項1号、特許法49条4号
同じ論点・分野の審決(審決分類)94件(536・B01J)
  • 2025-005771拒絶査定不服審判 / 2026-07-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)光触媒担持体
    共通の審決分類: 536・B01J
  • 2023-013621拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)単分散エマルションを生成する方法
    共通の審決分類: 536・B01J
  • 2024-018865拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)金属系固定化触媒及びそれを用いてなるカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルの製造…
    共通の審決分類: 536・B01J
  • 2025-000961拒絶査定不服審判 / 2026-05-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)高圧装置から離脱可能な高圧状態の材料の製造方法
    共通の審決分類: 536・B01J
  • 2024-008923拒絶査定不服審判 / 2026-03-10 / 請求不成立押出された有機金属構造体材料及びその製造方法
    共通の審決分類: 536・B01J

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存