2022-001106
歯間清掃具
- 審判番号
- 2022-001106
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-181046外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月25日
- 審決日
- 2022年09月27日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A61C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年 9月15日に出願されたものであって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年9月18日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、前記一対の支持片と連結され、手で把持可能なハンドル部と、前記一対の支持片の間で前記ハンドル部の延びる方向と直交するように延びる、2以上のマルチフィラメントを有する線材と、を備え、前記各支持片は、互いに向き合い前記線材の両端部がそれぞれ連結される対向面を有し、前記対向面間で延びる前記線材の長さが、当該対向面間の距離よりも大きく、前記対向面間で延びる前記線材の長さL、及び前記対向面間の距離Wにより規定されるゆるみ度S=100×(L-W)/Wが、0.5~8%である、歯間清掃具。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(拒絶査定における理由)は、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び下記の引用文献2に示された公然実施された発明、及び下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3~5に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-244117号公報
2.Amazon,”小林製薬の糸ようじ 入りやすいタイプ お徳用 60本入”,[online],2016年5月16日,[令和2年7月14日検索],インターネット<https://www.amazon.co.jp/小林製薬の入りやすい糸ようじ-フロス-ピック-デンタルフロス-60本/dp/B01FQCA29K/>
3.特開2010-99268号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2007-7061号公報(周知技術を示す文献)
5.特表2001-503664号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
上記引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。
(1)「【0001】本発明は、1対のアーム部間にデンタルフロスを架け渡して設けてなる歯間清掃具に関するものである。【背景技術】【0002】歯間清掃具として、ハンドルの先端部と先端近傍部とに側方へ突出する1対のアーム部を設け、ハンドルの軸方向に沿って、該アーム部の先端部にデンタルフロスを張設したF型歯間清掃具(例えば、特許文献1参照。)や、ハンドルの先端部を二股に分岐させて1対のアーム部を形成し、ハンドルの軸方向と直交するように、該アーム部の先端部にデンタルフロスを張設したY型歯間清掃具(例えば、特許文献2参照。)が提案され、実用化されている。【0003】通常、前記歯間清掃具では、デンタルフロスをアーム部間にゆるみなく張設することが一般に行われており、デンタルフロスを緩ませて張り、そのゆるみ度合いを適正に設定するという技術は提案されていなかった。」
(2)「【0005】前記歯間清掃具では、歯間へのデンタルフロスの挿入時や抜き取り時に隣接する歯の接触部分を清掃できるという利点を有するとともに、デンタルフロスを歯の周面に沿って摺接させることで歯の周面や歯肉溝を清掃できるという利点を有している。しかし、デンタルフロスをアーム部間にゆるみなく張設しているので、次のような問題があった。即ち、歯間への挿入時に、ハンドルに対して力が入りすぎて、歯間を通過した後、デンタルフロスが勢い余って歯肉に強く当たり、歯肉を傷つけるという問題があった。また、歯間清掃時、デンタルフロスを歯の周面に沿って摺接させるときに、歯の周面や歯肉溝とデンタルフロスとの接触長さを十分に確保できず、清掃効率が低下するという問題があった。【0006】本発明の目的は、デンタルフロスのゆるみを適正に設定することで、歯間への挿入性を十分に確保しつつ、歯間挿入時に歯肉を傷つけることを効果的に低減でき、しかも歯の周面や歯肉溝とデンタルフロスとの接触長さを十分に確保することで効率良く清掃可能な歯間清掃具を提供することである。」
(3)「【0016】図1~図3に示すように、歯間清掃具1は、1対のアーム部11を有するハンドル10と、この1対のアーム部11のフロス保持部12間に架け渡して設けたデンタルフロス2とを備えている。【0017】ハンドル10の下半部には細長い棒状の持ち手としてのグリップ部13が形成され、グリップ部13は下側へ行くにしたがって断面積が小さくなるように構成され、グリップ部13の下端部には歯間清掃用の先鋭部14が形成され、グリップ部13の上部には後方へ突出する第1摘まみ部15が形成されている。グリップ部13の上端部には上方へ行くにしたがって左右方向に幅広となる三角形状の扁平な第2摘まみ部16が連設され、第2摘まみ部16の上端部の左部及び右部には上方へ延びる左右1対のアーム部11が略平行に形成され、両アーム部11の上端側部分は後方へ緩やかに湾曲されている。両アーム部11の上端部にはフロス保持部12が形成され、デンタルフロス2の両端部はインサート成形によりフロス保持部12に埋設状に保持されている。ただし、先鋭部14は省略することも可能である。また、ハンドル10としては、1対のアーム部11のフロス保持部12を結ぶ線分が、ハンドル10の軸方向と直交するように、ハンドル10の先端部を二股に分岐させて1対のアーム部11を形成した、所謂Y型のハンドル10であれば、図1~図3に図示した以外の任意の構成のものを採用することが可能である。また、Y型のハンドル10以外に、ハンドルの先端部と先端近傍部とに側方へ突出する1対のアーム部を設け、該アーム部の先端部に、ハンドルの軸方向に沿ってデンタルフロスを張設した、所謂F型のハンドルを備えた歯間清掃具に対しても本発明を同様に適用できる。続きを表示(全13行)【0018】ハンドル10の素材としては、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アセテートポリマー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等を採用することができる。特に、ポリプロピレンで構成すると、ハンドル10に弾力性を付与して、歯間への挿入時におけるデンタルフロス2による歯肉への為害性を低減できるので好ましい。【0019】デンタルフロス2の素材としては、マルチフィラメントの場合には、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、熱可塑性エラストマーが好ましく、繊度が495~1530デニール(550~1700デシテックス)、マルチフィラメントを構成する単糸一本あたりの太さは0.9~10.8デニール(1~12デシテックス)であることが好ましい。また、モノフィラメントの場合には、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、繊度540~1440デニール(600~1600デシテックス)であることが好ましい。【0020】デンタルフロス2は、下記数式(1)で求めたゆるみ率δが5~19%、好ましくは7~19%、更に好ましくは9~15%になるように、両フロス保持部12間にゆるませた状態で架け渡して設けられている。ゆるみ率は、大きすぎると、歯間への挿入性が低下し、小さすぎると、歯間への挿入性は確保できるものの、清掃性が低下するとともに、歯肉への為害性が大きくなるので、5~19%、好ましくは7~19%、更に好ましくは9~15%に設定することになる。【0021】δ(%)=(H/W)×100・・・・(1)ここで、Wは、両フロス保持部12間の保持間距離、Hは、デンタルフロス2の中央部を側方へ引っ張った後測定した、デンタルフロス2の中央部から両フロス保持部12を結ぶ線分までのゆるみ距離である。」
(4)「【図2】[図:0001391791000001.jpg]」
2 引用発明
したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「1対のアーム部11が略平行に形成され、1対のアーム部11を有するハンドル10の下半部には細長い棒状の持ち手としてのグリップ部13が形成され、1対のアーム部11のフロス保持部12間に架け渡して設けた、マルチフィラメントを有するデンタルフロス2と、を備え、両アーム部11の上端部にはフロス保持部12が形成され、デンタルフロス2の両端部はインサート成形によりフロス保持部12に埋設状に保持され、デンタルフロス2は、ゆるみ率δが5~19%になるように、両フロス保持部12間にゆるませた状態で架け渡して設けられており、Wは、両フロス保持部12間の保持間距離、Hは、デンタルフロス2の中央部を側方へ引っ張った後測定した、デンタルフロス2の中央部から両フロス保持部12を結ぶ線分までのゆるみ距離であるとき、δ(%)=(H/W)×100である、歯間清掃具1。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「略平行に形成され」る「1対のアーム部11」は、本願発明における「所定間隔をおいて配置される一対の支持片」に相当し、以下同様に「1対のアーム部11を有するハンドル10の下半部には細長い棒状の持ち手としてのグリップ部13が形成され」る点は、「前記一対の支持片と連結され、手で把持可能なハンドル部」を備える点に、「歯間清掃具1」は、「歯間清掃具」にそれぞれ相当する。
また、本願発明の「前記一対の支持片の間で前記ハンドル部の延びる方向と直交するように延びる」、「マルチフィラメントを有する線材」は、本願の図2を参酌すると、マルチフィラメントを有する線材が、緩んだ状態で概ねハンドル部の延びる方向と直交するように延びるものを含んでいる。
そして、この点で、引用文献1の図2から、デンタルフロス2が、緩んだ状態で概ねグリップ部13の延びる方向と直交するように延びていることが看取できる。
したがって、「1対のアーム部11のフロス保持部12間に架け渡して設けた、マルチフィラメントを有するデンタルフロス2」は、「前記一対の支持片の間で前記ハンドル部の延びる方向と直交するように延びる」、「マルチフィラメントを有する線材」に相当する。
また、引用文献1の図2から1対のアーム部11に形成されたフロス保持部12は、互いに向き合った面を有していることが看取できるから、「両アーム部11の上端部にはフロス保持部12が形成され、デンタルフロス2の両端部はインサート成形によりフロス保持部12に埋設状に保持され」る点は、「前記各支持片は、互いに向き合い前記線材の両端部がそれぞれ連結される対向面を有」する点に、「デンタルフロス2」を、「両フロス保持部12間にゆるませた状態で架け渡して設け」る点は、「前記対向面間で延びる前記線材の長さが、当該対向面間の距離よりも大き」い点に、にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、前記一対の支持片と連結され、手で把持可能なハンドル部と、前記一対の支持片の間で前記ハンドル部の延びる方向と直交するように延びる、マルチフィラメントを有する線材と、を備え、前記各支持片は、互いに向き合い前記線材の両端部がそれぞれ連結される対向面を有し、前記対向面間で延びる前記線材の長さが、当該対向面間の距離よりも大きい、歯間清掃具。」
[相違点1]
本願発明では、線材が2以上のマルチフィラメントを有するのに対し、引用発明では、デンタルフロス2がマルチフィラメントを有するものの、2以上のマルチフィラメントを有するのか不明である点。
[相違点2]
本願発明は、対向面間で延びる線材の長さL、及び対向面間の距離Wにより規定される、ゆるみ度S=100×(L-W)/Wが、0.5~8%であるのに対し、引用発明は、Wが、両フロス保持部12間の保持間距離、Hが、デンタルフロス2の中央部を側方へ引っ張った後測定した、デンタルフロス2の中央部から両フロス保持部12を結ぶ線分までのゆるみ距離であるとき、ゆるみ率δ(%)=(H/W)×100が5~19%である点。
第6 判断
1 相違点1について
歯間清掃具において、複数のマルチフィラメントを有するデンタルフロスは、本願の出願前に周知技術であった(必要であれば、原査定の拒絶理由に引用された引用文献3の段落【0006】、【0037】、【0057】、【0063】、図1~図4、特開2013-192586号公報の段落【0012】、【0025】、【0031】等を参照。)。
また、引用文献3の段落【0006】には、課題として、優れた清掃効果を備えたデンタルフロスを提供することが記載されており、特開2013-192586号公報の段落【0009】には、清拭効果が良好な歯間フロス用糸を提供することが記載されている。
そして、引用文献1の段落【0006】には、効率良く清掃可能な歯間清掃具を提供することを課題としていることが記載されているから、引用発明において、清掃効果を向上させるために、上記周知技術を適用して、引用発明のデンタルフロス2を2以上のマルチフィラメントとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
引用文献1の図2を参照すると、デンタルフロス2の長さをLとしたとき、ピタゴラスの定理から(0.5W)2+H2=(0.5L)2の関係が成立する。そして、ゆるみ率δ(%)=(H/W)×100が5~19%であるから、これをもとに、本願発明におけるゆるみ度(100×(L-W)/W)を求めると、約0.498~6.976%となる。
したがって、引用発明1のデンタルフロスのゆるみ度は、本願発明の線材のゆるみ度と0.5~約6.976%の範囲で一致しており、実質的な相違点ではない。
仮に相違点であるとしても、引用発明は、「歯の周面や歯肉溝とデンタルフロスとの接触長さを十分に確保することで効率良く清掃可能な歯間清掃具を提供する」(段落【0006】)ことを課題としており、当該効果をより発揮するために、採用するデンタルフロスの素材や形状、大きさ等に合わせて、ゆるみ率を好適化することは、当業者が、適宜なし得た事項に過ぎない。
3 効果について
本願発明の効果は、2以上のマルチフィラメントを有する線材に緩みをもたせることにより、線材が回転して絡まりやすくなることから、高い清掃効果を有するというものである。
ここで、2以上のマルチフィラメントのエッジによりプラークの掻き取りを効果的に行ったり、フィラメント間の空隙にバイオフィルムを取り込んで、清掃効果を高めることは、周知技術である2以上のマルチフィラメントを有するデンタルフロスが自ずともたらす効果にすぎない。
また、引用発明は、デンタルフロスに緩みを持たせることにより、歯の周面に対するデンタルフロスの接触長さを大きく設定して、デンタルフロスにより歯の周面や歯肉溝を効率良く清掃できるという効果を有している。
そうすると、本願発明の効果は、周知技術及び引用発明から当業者が想到し得る範囲のものであって、格別なものであるとは認められない。
4 請求人の主張について
請求人は、令和3年5月6日に提出した意見書において、引用文献1におけるデンタルフロス2のゆるみ率について、デンタルフロス2の中央部を側方へ引っ張ったことによって、デンタルフロス2が延びる旨主張している。
しかしながら、引用文献1のものは、「ゆるみ」を測定しているものであるところ、デンタルフロスが延びるほどの力を加えてデンタルフロスの中央部を側方へ引っ張れば、デンタルフロスのゆるみ率を適切に評価できなくなることは、当業者であれば当然予測し得ることであるから、通常、デンタルフロスの長さに影響がない程度の力でデンタルフロスの中央部を側方へ引っ張り、デンタルフロスのゆるみ率の評価をしていることは、明らかである。
よって、請求人のこの主張は採用し得ない。
また、請求人は、令和4年1月25日に提出した審判請求書において、「審査官は、引用文献1の図に三角形を作図することによって、本件発明1のゆるみ度が、引用文献1に開示されていると認定しています」と主張している。
しかしながら、引用発明のゆるみ率δを、本願発明のゆるみ度Sに換算する際には、ピタゴラスの定理を用いて計算しているのであって、図面をもとに推測したものではないため、請求人のこの主張は採用し得ない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-001106