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特許拒絶査定不服審判

2022-000565

測位システム

審判番号
2022-000565
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-172251外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年01月13日
審決日
2022年10月27日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-ZB (G01S) / P18 .575-ZB (G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-172251「測位システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 45456〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成29年9月7日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年12月22日付け:拒絶理由通知書(最初)
令和3年 2月24日 :意見書、手続補正書の提出

同年 3月15日付け:拒絶理由通知書(最初)

同年 5月19日 :意見書、手続補正書の提出

同年 6月29日付け:拒絶理由通知書(最後)

同年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出

同年10月 6日付け:補正の却下の決定

同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月19日 :原査定の謄本の送達)

令和4年 1月13日 :審判請求書の提出

第2 令和3年8月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定について

請求人は、審判請求の趣旨及び理由において、令和3年8月31日にされた手続補正(以下「補正1」という。)に対する補正の却下の決定に対する不服を申し立てているので、まず、原審における同年10月6日付け補正の却下の決定の適否について検討する。

1 補正の内容

補正1は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、以下の(1)に示す補正1前の請求項1が、以下の(2)に示す補正1後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。

(1) 補正1前の請求項1

「 【請求項1】
固定位置に設置された基準局の設置位置を示す基準局設置位置情報を登録する基準局登録手段と、
前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号と、前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とに基づいて、前記測位信号に対する補正情報を生成する補正情報生成手段と、
移動機体に設置された移動局にて測位衛星から受信した測位信号と前記補正情報生成手段で生成された補正情報とに基づく測位を行って、前記移動局の現在位置を示す移動局測位情報を求める移動局測位手段と、
前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号に基づく単独測位を行って、前記基準局の現在位置を示す基準局測位情報を求める基準局測位手段と、
前記基準局測位手段での単独測位により得られた基準局測位情報と前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とを比較して、前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報が誤ったものである誤登録状態であるか否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、
前記移動機体の移動に伴って前記移動局測位手段で求められた前記移動局測位情報の変化状態から前記移動機体の方位角を求める方位角特定処理を実行する方位角特定手段とを備え、
前記判定手段が、前記方位角特定手段での方位角特定処理の実行前に前記判定処理を実行し、
前記判定手段で前記誤登録状態であると判定された場合には、直接的又は間接的に前記方位角特定手段での前記方位角特定処理を禁止することを特徴とする測位システム。」

(2) 補正1後の請求項1

「 【請求項1】
固定位置に設置された基準局の設置位置を示す基準局設置位置情報を登録する基準局登録手段と、
前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号と、前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とに基づいて、前記測位信号に対する補正情報を生成する補正情報生成手段と、
自動走行可能な移動機体に設置された移動局にて測位衛星から受信した測位信号と前記補正情報生成手段で生成された補正情報とに基づく測位を行って、前記移動局の現在位置を示す移動局測位情報を求める移動局測位手段と、
前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号に基づく単独測位を行って、前記基準局の現在位置を示す基準局測位情報を求める基準局測位手段と、
前記基準局測位手段での単独測位により得られた基準局測位情報と前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とを比較して、前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報が誤ったものである誤登録状態であるか否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、
前記移動機体の移動に伴って前記移動局測位手段で求められた前記移動局測位情報の変化状態から前記移動機体の方位角を求める方位角特定処理を実行する方位角特定手段とを備え、
前記判定手段が、前記移動機体の自動走行の開始前、かつ前記方位角特定手段での方位角特定処理の実行前に、前記判定処理を実行し、
前記判定手段で前記誤登録状態であると判定された場合には、直接的又は間接的に前記方位角特定手段での前記方位角特定処理を禁止することを特徴とする測位システム。」

2 補正の目的

補正1は、補正1前の、移動局が設置された「移動機体」を「自動走行可能」なものに限定するとともに、「判定手段」が判定処理を実行する条件を、「方位角特定処理の実行前」から、「移動機体の自動走行の開始前」かつ「方位角特定処理の実行前」に限定するものである。

そして、補正1前の請求項1に記載された発明と補正1後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

したがって、補正1は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

そこで、補正1後の請求項1に係る発明(以下「補正1発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

3 独立特許要件の判断

(1) 補正1発明

補正1発明は、前記1(2)の補正1後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 引用文献に記載された発明の認定等

ア 引用文献6に記載された事項と引用発明の認定

(ア) 引用文献6に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に発行された特開2006-322753号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したものである。

a 【請求項1】及び【請求項2】

「【請求項1】
予め位置が求められた基準点に設置し、衛星からの情報を基に補正情報を求める基準局と、
車両に搭載され、上記衛星からの情報に基づき車両位置を演算する移動局と、
上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記基準局の情報と上記車両位置とから該車両位置を補正演算する車両位置演算手段と、
続きを表示(全15行)
上記車両位置に基づく走行制御を行う走行制御手段と、
上記車両位置に基づいて自車の第1の走行情報を演算し、当該第1の走行情報が実車の走行状態から求まる第2の走行情報に対して予め設定した閾値以上異なるとき上記基準局の移動による異常を判定する異常判定手段とを有し、
上記走行制御手段は、上記異常判定手段での異常判定時に、上記車両位置に基づく走行制御の実行をキャンセルすることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
予め位置が求められた基準点に設置し、衛星からの情報を基に補正情報をる基準局と、
車両に搭載され、上記衛星からの情報に基づき車両位置を演算する車載の移動局と、
上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記基準局の情報と上記車両位置とから該車両位置を補正演算する車両位置演算手段と、
上記車両位置に基づく走行制御を行う走行制御手段と、
上記基準局の設置情報を検出する設置情報検出手段と、
上記設置情報検出手段で検出した設置情報が予め設定した挙動を示したとき上記基準局の移動による異常を判定する異常判定手段とを有し、
上記走行制御手段は、上記異常判定手段での異常判定時に、上記車両位置に基づく走行制御の実行をキャンセルすることを特徴とする車両の走行制御装置。」

b 【0011】~【0016】、【図1】

「【0011】
図1において、符号1は、移動局としての機能を備えた自動車等の車両(自車両)を示し、この自車両1には、RTK(Real-Time Kinematic)-GPSを用いて走行制御を行う車両制御装置2が搭載されている。
【0012】
本実施形態におけるRTK-GPSでは、地球を周回する人工衛星(GPS衛星)3からの情報(測位計算等に必要な衛星の軌道情報をはじめとするデータ等)が、使用者が自宅等に選択的に設置する基準局4と、移動局である自車両1により受信される。
続きを表示(全12行)
【0013】
基準局4は、予め位置が正確に求められている自宅等の地点(基準点)に設置されており、GPSアンテナ4a、GPS受信機4b、無線機4cを備えて構成されている。また、基準局4は、GPS受信機4bに接続する制御装置10を有する。この制御装置10は基準局4を統括的に制御するもので、制御装置10には、基準局4の設置情報を検出する設置情報検出手段として、例えば、基準局4に作用する加速度を検出する加速度センサ11、基準局4が設置面から離間した際にONする接地スイッチ12が接続されている。また、制御装置10には、例えば、超音波ソナーや赤外線センサ等で構成され基準局4を含む設定領域(警報領域)に進入する人物等の移動体を検出する移動体検出手段としての移動体検出センサ13が接続され、さらに、各種警報や情報表示等を行う液晶ディスプレイ14が接続されている。
【0014】
そして、制御装置10は、基準局4で観測したGPS衛星3からの電波の位相情報、疑似距離、及び、基準局4の位置座標を、観測する地点、すなわち、移動局である自車両1に無線機4cにより送信する。具体的には、基準局4からは、誤差補正量、疑似距離補正量、座標値等のデータが自車両1に対して送信される。
【0015】
ここで、無線機4cは、例えば、IEEE802.11a/b/g等の規格による無線LAN(Local Area Network)に基づき送受信するアクセスポイントであり、通信のセキュリティを維持するためSSID(Service Set ID)、WEP(Wired Equivalent Privacy)キー、MAC(Media Access Control)アドレス認証の設定が特有になされている。そして、図5に示すように、この無線機を4cを中心として、半径約50~100m以内の領域が、通信可能領域として設定されている。
【0016】
また、制御装置10は、加速度センサ11や接地スイッチ12で検出される設置情報が予め設定された基準局4の挙動を示したとき、基準局4の異常を判定する。すなわち、制御装置10は、例えば、加速度センサ11で予め設定した閾値α(例えば、α=0.1G)以上の加速度が検出された場合、或いは、基準局4が持ち上げられる等して接地スイッチ12がONされた場合の少なくとも何れか一方である場合に、基準局4が基準点から移動したことによる異常を判定する。そして、制御装置10は、基準局4の異常を判定すると、無線機4cを通じて、自車両1に異常情報を送信する。このように、本実施形態において、制御装置10は、異常判定手段としての機能を実現する。」
「【図1】
[図:0001392835000001.jpg]
」

c 【0018】及び【0019】

「【0018】
自車両1には、移動局としての機能を実現するための、GPSアンテナ15a、GPS受信機15b、無線機15cが搭載されている。そして、自車両1が上述の基準局4との通信可能領域に入り、基準局4との通信が確立された際に、基準局4からの誤差補正量、疑似距離補正量、座標値等のデータ(無線機15cで受信されるデータ)や、自車両1で受信したGPS衛星3からの情報がGPS受信機15b内で比較解析されることにより、自車位置(座標値)が即座に精度良く(例えば、誤差1~5cm)得られるようになっている。
【0019】
また、自車両1には制御装置18が搭載され、制御装置18には、上述のGPS受信機15bから自車位置が入力される。また、制御装置18には、ステレオカメラ16で撮像した画像を基に前方の道路環境を認識して前方障害物を認識する障害物認識部17が接続されている。」

d 【0046】~【0056】、【図3】

「【0046】
次に、制御装置18で実行される自車両1側の制御について、図3に示す車両側制御ルーチンに従って説明する。
このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるもので、制御装置18は、先ず、ステップS201で、必要なパラメータの読み込みを行う。
【0047】
続きを表示(全38行)
次いで、ステップS202に進み、制御装置18は、自車両1が基準局4と通信可能領域に入り、移動局である自車両1と基準局4との間で通信が確立されているか否か判定し、通信が確立されていない場合には、そのままルーチンを抜ける。逆に、通信が確立されていると判定した場合には、制御装置18は、ステップS203に進む。
【0048】
ステップS203において、制御装置18は、基準局4から異常情報(異常判定フラグF=1のときに送信される異常情報)を受信しているか否かを判定し、異常情報を受信している場合にはステップS212に進む。逆に、基準局4から異常情報を受信していない場合には、制御装置18は、ステップS204に進み、基準局4からの情報とGPS衛星3からの情報を基に自車位置を演算し、ステップS205へと進む。
【0049】
そして、ステップS205において、制御装置18は、ステップS204で演算した自車位置情報(測位による自車位置情報)に基づいて、自車両1の走行情報(第1の走行情報)を演算する。具体的には、制御装置18は、第1の走行情報として、現在の自車位置を含む過去3点のノード情報に基づき、自車両1に作用するヨーレートγGを以下の(1)式により算出する。
γG=VG/ρG …(1)
ここで、VGは、3点のノード情報(位置及び時間)から求まる自車両1の車速である。
また、ρGは、3点のノード情報(位置)から求まる自車の旋回半径であり、例えば、以下の(2)式から求めることができる。
ρG=(a・b・c)/4Δ …(2)
但し、(2)式中において、a,b,cは3点のノードで形成される三角形の各辺の長さであり、
2s=a+b+cとおくと、
Δ=(s・(s-a)・(s-b)・(s-c))1/2 …(3)
である。
【0050】
続くステップS206において、制御装置18は、車載のセンサ情報に基づいて、自車両1の走行情報(第2の走行情報)を演算する。具体的には、制御装置18は、第2の走行情報として、車速センサ19で検出される車速VSとハンドル角センサ20で検出されるハンドル角θHSに基づき、自車両1に作用するヨーレートγSを以下の(4)式により算出する。
γS=γ0・(θHS/N)/(1+Tr) …(4)
ここで、(4)式中において、γ0は定常ヨーレートゲインであり、以下の(5)式から求まる。
γ0=1/(1+sf・V2)・V/l …(5)
但し、sfはスタビリティファクタであり、lはホイルベースである。
また、(5)式中において、Trは時定数であり、以下の(6)式から求まる。
Tr=(m・lf・V)/(2・l・kre) …(6)
但し、(6)式中において、mは車両質量であり、lfはフロント軸距離(重心から前輪軸までの距離)、kreは後輪の等価コーナリングパワである。
【0051】
次いで、ステップS206からステップS207に進むと、制御装置18は、ステップS205で求めた第1の走行情報(ヨーレートγG)と、ステップS206で求めた第2の走行情報(ヨーレートγS)の差の絶対値が、予め設定した閾値以上であるか否かを調べる。すなわち、基準局4が何らかの理由で移動すると、そのタイミングで測位される自車位置には基準局4の移動量が加算されるため、その分、ステップS205で演算される第1の走行情報と、実車の走行情報(ステップS206で演算される第2の走行情報)との間に差異が生じる。
【0052】
そこで、制御装置18は、ステップS207において、第1,第2の走行情報の差(絶対値)が予め設定された閾値以上である場合には、基準局4が移動したことを判定してステップS211に進み、基準局4の異常を判定し、異常情報を基準局4に送信した後、ステップS212に進む。
【0053】
その一方で、制御装置18は、ステップS207において、第1,第2の走行情報の差(絶対値)が予め設定された閾値以下である場合には、ステップS208に進み、自車両1の現在位置が、過去に作成した地図のノードと略一致するか(例えば、現在位置から±2m以内に過去のノードが存在するか)否かを調べる。
【0054】
そして、ステップS208において、自車両1の現在位置が過去に作成したノードに略一致すると判定した場合には、ステップS209に進み、当該一致したノードを含むノード列を目標進行路に設定し、後述の自動操縦制御を実行した後、ルーチンを抜ける。尚、この自動操縦制御では、例えば障害物認識部17により前方10m以内に障害物が検出されたとき、ドライバが大きくステアリング操作した場合、ブレーキペダル、アクセルペダルを踏んだとき、或いは、自動操縦制御のメインスイッチ21をOFFにした場合にはキャンセルされる。
【0055】
一方、ステップS208において、自車両1の現在位置が過去に作成したノードに略一致しないと判定した場合には、ステップS210に進み、以降の走行経路を設定間隔(例えば、3~5m間隔)のノード列として学習し、データベース上に記憶する。なお、過去に記憶された走行路は、ドライバにより適宜消去できるようになっている。
【0056】
また、ステップS203或いはステップS211からステップS212に進むと、制御装置18は、ステップS209で実行されている自動操縦制御、或いは、ステップS210で実行されている走行路の記憶制御をキャンセルする。」
「【図3】
[図:0001392835000002.jpg]
」

e 【0070】

「【0070】
同様に、基準局4に設けた加速度センサ11や接地スイッチ12等によって基準局4の設置情報を検出し、これら加速度センサ11や接地スイッチ12で検出した設置情報が予め設定した挙動を示したとき、基準局4が移動することによる該基準局4の異常を判定することにより、基準局4の異常を的確に検出することができ、この異常判定時には、自車位置に基づく走行制御の実行をキャンセルすることにより精度のよい走行制御を実現することができる。特に、この場合においては、基準局4に設けた加速度センサ11や接地スイッチ12等からの情報に基づいて基準局4の異常を判定するものであるため、基準局4と自車両1との通信が確立していない場合にも的確に基準局4の異常を判定することができる。」

f 【図3】から読み取れる事項

【図3】から、ステップS203において、基準局から異常情報を受信したときは、ステップS205~S207に進まずに、ステップS212に進むことが読み取れる。

(イ) 引用発明の認定

前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

なお、請求項2には、「衛星からの情報を基に補正情報をる基準局」と記載されており、「補正情報をる」という意味が日本語として明らかでないが、請求項1には「補正情報を求める基準局」と記載されており、当該記載からみて、請求項2の上記「補正情報をる」という記載は、「補正情報を求める」の誤記であると認定した。

<引用発明>

「予め位置が求められた基準点に設置し、衛星からの情報を基に補正情報を求める基準局と(【請求項2】)、
車両に搭載され、上記衛星からの情報に基づき車両位置を演算する車載の移動局と(【請求項2】)、
基準局4は、制御装置10を有し(【0013】)、
制御装置10は、基準局4で観測したGPS衛星3からの電波の位相情報、疑似距離、及び、基準局4の位置座標を、移動局である自車両1に送信し、具体的には、誤差補正量、疑似距離補正量、座標値等のデータが送信され(【0014】)、
続きを表示(全20行)
上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記基準局の情報と上記車両位置とから該車両位置を補正演算する車両位置演算手段と(【請求項2】)、
上記基準局の設置情報を検出する設置情報検出手段と(【請求項2】)、
上記設置情報検出手段で検出した設置情報が予め設定した挙動を示したとき上記基準局の移動による異常を判定する異常判定手段とを有し(【請求項2】)、
基準局4の異常を判定すると、自車両1に異常情報を送信し(【0016】)、
当該異常判定手段は、基準局4に設けた加速度センサ11や接地スイッチ12等からの情報に基づいて基準局4の異常を判定するものであるため、基準局4と自車両1との通信が確立していない場合にも的確に基準局4の異常を判定することができ(【0070】)、
自車両1には制御装置18が搭載され(【0019】)、
前記制御装置18で実行される車両側制御ルーチンは(【0046】)、
移動局である自車両1と基準局4との間で通信が確立されているか否か判定し、通信が確立されていると判定した場合には、ステップS203に進み(【0047】)、
ステップS203において、基準局4から異常情報を受信しているか否かを判定し、異常情報を受信している場合にはステップS212に進み、基準局4から異常情報を受信していない場合には、ステップS205へと進み(【0048】
)、
ステップS205において、第1の走行情報として、現在の自車位置を含む過去3点のノード情報に基づき、自車両1に作用するヨーレートγGを算出し(【0049】)、
続くステップS206において、第2の走行情報として、車速センサ19で検出される車速VSとハンドル角センサ20で検出されるハンドル角θHSに基づき、自車両1に作用するヨーレートγSを算出し(【0050】)、
ステップS207において、第1,第2の走行情報の差(絶対値)が予め設定された閾値以上である場合には、基準局4が移動したことを判定してステップS211に進み、基準局4の異常を判定し、異常情報を基準局4に送信した後、ステップS212に進み(【0052】)、
ステップS203或いはステップS211からステップS212に進むと、自動操縦制御をキャンセルし(【0056】)、
ステップS203において、基準局から異常情報を受信したときは、ステップS205~S207に進まずに、ステップS212に進むものである(【図3】、上記(ア)f)、
車両の走行制御装置(【請求項2】)。」

イ 引用文献1に記載された事項と引用文献1記載事項の認定

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(ア) 引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に発行された特開2003-219448号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したものである。

a 【0001】

「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、GPS(Global Positioning System),GLONASS,Galileo等の測位衛星を用いた位置測位システム、特に位置補正情報配信による高精度位置測位システムとその利用方法に関するものである。」

b 【0050】、【図3】

「【0050】図3を用いて、移動局104での位置測位の流れについて説明する。端末の周辺基地局情報を受取るステップ301では、移動局104は近傍にある携帯基地局の位置情報を入手する。次に自分に最も近い基地局までの概算距離を計算するステップ302で、移動局104は位置補正を伴わない位置測位を行い、ステップ301で得られた近傍の携帯基地局の位置情報を元に、移動局104から最も近いと予想される携帯基地局までの概算距離を計算する。ステップ303では、移動局104が仮想基準点方式を採用しているかどうかの判定を行っている。ステップ303で移動局104が仮想基準点方式を採用して無い場合は、ステップ304に進み、ステップ302で計算された最近傍基地局より位置補正情報を入手し、ステップ305で、相対測位を実行し位置測位を終了する。このときの測位方式は、単独の基準点利用によるディファレンシャル方式やRTK方式が考えられる。」

「【図3】
[図:0001392835000003.jpg]
」

c 【0063】、【0064】、【図6】

「【0063】図6を用いて、携帯基地局側の基準点のメンテナンスの流れについて説明する。位置測位衛星より信号を受信するステップ601で、基準点102はGPS衛星からのGPS信号を受信する。続くステップ(=既知座標値と測位結果を比較するステップ)602で、基準点が測位した位置座標と携帯基地局103の記憶部116に記憶されている既知の位置座標をデータ処理部115で比較する。比較結果が所定の基準を満たしているかどうかの判断ステップ603では、基準点102が測位した位置座標と既知の位置座標との比較結果が、所定の基準値を満たしているかどうかの判定をしている。ここでの基準とは、測位した位置座標と既知の位置座標との差(距離),その時点迄に測位した位置座標と既知の位置座標との差(距離)の平均値との差(距離),その時点迄に測位した位置座標の平均との差(距離),GPS衛星からの信号の受信感度,GoP値、等が基準として考えられる。ステップ603で、基準点102が測位した位置座標と既知の位置座標との比較結果が、所定の基準値を満たしておれば、ステップ604に進み、位置補正情報の配信を継続する。
【0064】ステップ603で、基準点102が測位した位置座標と既知の位置座標との比較結果が、所定の基準値を満たしていなければ、ステップ605に進み、位置補正情報配信を一時的に中断する。このとき、位置補正情報の配信は一時的に中断するが、位置測位自体は、定められた時間内は継続して行われ、携帯基地局103の記憶部116にログデータとして記録される。」
「【図6】
[図:0001392835000004.jpg]
」

(イ) 引用文献1に記載された事項の認定

前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の事項が記載されているものと認められる。

<引用文献1記載事項>

「最近傍基地局より位置補正情報を入手し、相対測位を実行し位置測位を終了する【0050】)、
位置補正情報配信による高精度位置測位システム(【0001】)において、
携帯基地局側の基準点102が測位した位置座標と既知の位置座標との比較結果が、所定の基準値を満たしているかどうかの判定をし、ここでの基準とは、測位した位置座標と既知の位置座標との差(距離)であり(【0063】)、
基準点102が測位した位置座標と既知の位置座標との比較結果が、所定の基準値を満たしていなければ、位置補正情報配信を一時的に中断すること(【0064】)。」

ウ 引用文献10及び11に記載された事項と技術常識の認定

(ア) 引用文献10に記載された事項

当審において新たに引用され、本願出願前に発行された特開2017-3395号公報(以下「引用文献10」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星航法による測位と自律航法による測位とが可能な車両の測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、自車両の位置を測位する方法として、GPS衛星等の航法衛星からの信号を受信して測位する衛星航法と、車両搭載のセンサによって検出した方位角及び相対移動量に基づいて測位する自律航法との2つの測位方法を採用することが多い。この場合、通常は、より精度の高い衛星航法による測位を主として、トンネル内等の航法衛星からの信号を受信できない走行環境になったとき、自律航法による測位に切り換えることが一般的である。」
「【0045】
ステップS3~S5は、衛星航法と自律航法とを比較して、衛星航法の測位データを使用可能か否かを判断する処理である。先ず、ステップS3において、衛星航法の自車位置データと、自律航法の自車位置データとの差分値DL(距離)を算出し、差分値DLが閾値THDL以下である条件を満足するか否かを調べる。
【0046】
そして、DL≦THDLの場合、ステップS4で、衛星航法の測位を開始した時点を基準として、測位データが更新される毎に、衛星航法の位置データの変化量(距離)、及び自律航法の位置データの変化量(距離)を求め、両者の変化量の差分値Ddを算出する。そして、差分値Ddが閾値THDd以下である条件を満足するか否かを調べる。
【0047】
ステップS4において、Dd≦THDdの場合、更に、ステップS5で衛星航法の測位を開始した時点を基準として、測位データが更新される毎に、衛星航法の方位角の変化量と、ヨーレートの積分値で得られる自律航法の方位角の変化量との差分値Dθを算出する。そして、差分値Dθが閾値THθ以下である条件を満足するか否かを調べ、Dθ≦THθの場合、ステップS6以降へ進む。」
「【0051】
この衛星航法の測位データを使用可能との判定を受けて、走行制御装置10は、衛星航法によって測位した自車両の位置情報、周辺環境認識装置50で認識した自車両の周囲環境情報、地図情報処理装置60からの地図情報、各種センサで検出した車両走行状態の検出情報に基づいて、自動操作や自動ブレーキ等を含む運転支援制御を実行する。また、地図情報処理装置60においては、衛星航法の測位データにより、地図データベースDBの更新を判断する。」
「【図3】
[図:0001392835000005.jpg]
」

(イ) 引用文献11に記載された事項

当審において新たに引用され、本願出願前に発行された特許第6080998号公報(以下「引用文献11」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が自動運転を行うことを目的として、予め設定した目標走行経路を自動運転で走行するための制御パラメータを求める車両制御情報生成装置および車両制御情報生成方法に関するものである。」
「【0019】
図2は図1の車両制御情報生成装置8および車両制御装置9の構成の一例を示す機能ブロック図である。車両制御情報生成装置8で求められた制御パラメータは車両制御装置9へ送られる。
車両制御情報生成装置8は、目標地点21、地図データ22、自車位置出力部23、目標走行経路導出部24、車両制御量演算部25、そして外部に少なくとも1つのジャイロセンサ20を備えている。ジャイロセンサ20は車両1の状態量であるヨーレートYawrateを検知し、出力する。ここでは代表してヨーレートのみ記載するが、6軸の各信号(速度、加速度等)を出力してもよい。」
「【0032】
車両方位角演算部40は、現在自車位置Veh_Pos、ヨーレートYawrateから、車両方位角Veh_Angleを演算し、出力する。例えば、現在の自車位置に更新する前の自車位置を保持しておき、更新する前の自車位置と現在自車位置から演算した角度からVeh_Angleを演算すればよい。また、ある初期値を基準にヨーレートの時間経過分を積分することにより、車両方位角Veh_Angleを演算すればよい。その他、周知技術を用いて車両方位角Veh_Angleを演算してもよい。
本実施の形態1において、車両方位角Veh_Angleは図7のように北向きを0°、北から左向きを正とし、北方位と車両1の進行方向となす角を車両方位角としているが、この発明においては、車両方位角はこれに定まるものではない。」
「【図7】
[図:0001392835000006.jpg]
」

(ウ) 技術常識の認定

a 引用文献10の【0002】、【0047】及び【0051】の記載から、自動操作や自動ブレーキ等を含む運転支援制御において、トンネル内等の航法衛星からの信号を受信できない走行環境においては、ヨーレートの積分値で得られる自律航法の方位角の変化量を用いていることが読み取れる。

b また、引用文献11の記載からも同様に、自動運転に関する制御について、ヨーレートの積分により方位角を得ることが読み取れる。

c よって、前記引用文献10及び11に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる。

<技術常識>

「車両のヨーレートを積分して方位角を特定し、車両制御に用いること。」

(3) 対比

ア 対比分析

補正1発明と引用発明を対比する。

(ア)a 引用発明の「予め位置が求められた基準点に設置し、衛星からの情報を基に補正情報を求める基準局」において、基準局4の制御装置10は、基準局4で観測したGPS衛星3からの電波の位相情報、疑似距離、及び、基準局4の位置座標、具体的には、誤差補正量、疑似距離補正量、座標値等のデータを、移動局である自車両1に送信し、上記基準局の情報に基づいて、移動局において、車両位置を補正演算するものである。

b ここで、引用発明において、基準局4が自身の位置座標を移動局に送信するためには、基準局4に位置座標を予め登録しておかなければならないことは明らかであるから、基準局4側に位置座標を登録する手段があることは明らかである。

c したがって、補正1発明と引用発明は、「固定位置に設置された基準局の設置位置を示す基準局設置位置情報を登録する基準局登録手段」を備える点で一致する。

d また、補正1発明と引用発明は、「前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号と、前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とに基づいて、前記測位信号に対する補正情報を生成する補正情報生成手段」を備える点で一致する。

(イ)a 引用発明の「自車両1」は、自動操縦制御を行うものであるから、補正1発明の「自動走行可能な移動機体」に相当する。

b そして、引用発明の「車載の移動局」は、衛星からの情報に基づき車両位置を演算し、当該車両位置と基準局から送信された情報から、車両位置の補正演算を行うものであるから、補正1発明と引用発明は、「自動走行可能な移動機体に設置された移動局にて測位衛星から受信した測位信号と前記補正情報生成手段で生成された補正情報とに基づく測位を行って、前記移動局の現在位置を示す移動局測位情報を求める移動局測位手段」を備える点で一致する。

(ウ)a 引用発明の「異常判定手段」は、基準局4に設けた加速度センサ11や接地スイッチ12等からの情報に基づいて、当該基準局の移動による異常を判定するものであり、「基準局の移動による異常」は、基準局4に登録された位置座標が、基準局4の移動後の位置座標とは異なるものであることを意味する。

b したがって、補正1発明と引用発明は、「前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報が誤ったものである誤登録状態であるか否かを判定する判定処理を実行する判定手段」を備える点で共通する。

(エ) 引用発明の「車両の走行制御装置」は、衛星からの情報を基に補正情報を求める基準局と、衛星からの情報に基づき車両位置を演算する車載の移動局であって、前記補正情報に基づいて車両位置を補正演算する移動局とから構成されるものであるから、補正1発明の「測位システム」に相当する。

イ 一致点及び相違点

前記アの対比分析の検討結果を総合すると、補正1発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。

(ア) 一致点

固定位置に設置された基準局の設置位置を示す基準局設置位置情報を登録する基準局登録手段と、

前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号と、前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とに基づいて、前記測位信号に対する補正情報を生成する補正情報生成手段と、

自動走行可能な移動機体に設置された移動局にて測位衛星から受信した測位信号と前記補正情報生成手段で生成された補正情報とに基づく測位を行って、前記移動局の現在位置を示す移動局測位情報を求める移動局測位手段と、

前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報が誤ったものである誤登録状態であるか否かを判定する判定処理を実行する判定手段とを備える、

測位システム、である点。

(イ) 相違点

a 相違点1

基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報が誤ったものである誤登録状態であるか否かを判定する判定処理を実行する判定手段が、

補正1発明においては、「前記基準局にて測位衛星から受信した測位信号に基づく単独測位を行って、前記基準局の現在位置を示す基準局測位情報を求める基準局測位手段」と、「前記基準局測位手段での単独測位により得られた基準局測位情報と前記基準局登録手段で登録された基準局設置位置情報とを比較[する]」ものであるのに対して、

引用発明においては、基準局4に設けた加速度センサ11や接地スイッチ12等からの情報に基づいて、当該基準局の移動による異常を判定するものである点。

b 相違点2

補正1発明では、「移動機体の移動に伴って前記移動局測位手段で求められた前記移動局測位情報の変化状態から前記移動機体の方位角を求める方位角特定処理を実行する方位角特定手段」を備え、「判定手段が、前記移動機体の自動走行の開始前、かつ前記方位角特定手段での方位角特定処理の実行前に、前記判定処理を実行し」、「前記判定手段で前記誤登録状態であると判定された場合には、直接的又は間接的に前記方位角特定手段での前記方位角特定処理を禁止する」ものであるのに対して、

引用発明では、自車両の方位角特定処理を行っているか不明であり、その結果、基準局の移動による異常の判定が、移動機体の自動走行の開始前、かつ当該方位角特定処理の実行前に行われているか不明であり、異常と判定された場合に、当該方位角特定処理を禁止するものであるか不明な点。

(4) 当審の判断

ア 相違点1について

前記相違点1について検討する。

(ア) 前記(2)イ(イ)において示したとおり、引用文献1には、位置補正情報配信による高精度位置測位システムにおいて、携帯基地局側の基準点102が測位した位置座標と既知の位置座標との差(距離)が、所定の基準値を満たしているかどうか判定し、所定の基準値を満たしていなければ、位置補正情報配信を一時的に中断することが記載されている。

そして、測位した位置座標が既知の位置座標が一致している場合、補正演算に全く支障がないことは明らかであるから、測位した位置座標と既知の位置座標との差(距離)が所定の基準値以上の場合に、所定の基準値を満たしていないと判定していることは明らかである。

(イ) そうすると、引用発明と引用文献1に記載された事項は、いずれも基準局から送信された補正情報に基づいて移動局の位置を補正演算する測位システムにおいて、基準局の現在の位置が、既知の位置と異なっているかを判定するものであるから、引用発明の異常判定手段として、引用文献1に記載された、測位した位置座標と既知の位置座標との差(距離)が、所定の基準値を満たしているかどうか判定する手段を採用して、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

前記相違点2について検討する。

(ア) 方位角特定手段について

a 前記(2)ウ(ウ)において示したとおり、車両のヨーレートを積分して方位角を特定し、車両制御に用いることは、車両制御の分野において技術常識である。

b 引用発明では、ステップS205において、第1の走行情報として、現在の自車位置を含む過去3点のノード情報に基づき、自車両1に作用するヨーレートγGを算出しており、これは、ステップS207において、第1、第2の走行情報の差(絶対値)が予め設定された閾値以上である場合に、基準局4が移動したと判定するためであるものの、上記したとおり、ヨーレートを積分して方位角を特定し、車両の走行制御に用いることは技術常識であることや、ヨーレートを算出する目的が、基準局4が移動したことを判定するためだけであるとも考えにくいことから、引用文献6に明示されていないが、引用発明においても、自車両1に作用するヨーレートγGを、基準局4の移動の判定に用いる以外に、車両の走行制御に必要となる方位角の特定に用いているものであると理解するのが相当である。

(イ) 判定処理について

a 引用発明の「異常判定手段」は、基準局4に設けた加速度センサ11や接地スイッチ12等からの情報に基づいて基準局4の異常を判定するものであり、基準局4が単独で判定を行い得るものであるから、自車両1の自動操縦制御の開始前であっても、開始後と同様に、異常を判定し得ることは明らかである。

b そして、引用発明が、基準局4から異常情報を受信している場合に自動操縦制御をキャンセルする、すなわち、自動操縦制御の開始後に、異常情報を受信した場合、自動操縦制御をキャンセルするものであることを鑑みれば、引用発明において、異常判定が行われた状態においては、自動操縦制御が行われるべきでないという認識があることは明らかといえる。

そうすると、引用発明において、自動操縦制御の開始前に異常判定が行われ、異常情報を受信した場合、自動操縦制御を開始しないようにしていることは明らかである。

c また、引用発明では、ステップS203において、基準局4から異常情報を受信しているか否かを判定し、異常情報を受信している場合にステップS212に進むものであるところ、ステップS203からステップS212に進むときは、基準局4が移動したことを判定するステップS205~S207を行わないものであるから、基準局4から異常情報を受信している場合は、自車両1に作用するヨーレートγGの算出を行っていないことになり、ヨーレートの算出を行っていない以上、ヨーレートに基づく方位角の特定処理を行っていないことは明らかである。

d 上記a~cをまとめると、引用発明は、自車両1の自動操縦制御の開始前に、基準局4が異常を判定するものであり、その異常情報は自車両1に送信され、自動操縦制御の開始前、自車両1が当該異常情報を受信した場合は、自動操縦制御を開始しないようにするとともに、自車両1に作用するヨーレートγGの算出を行わず、その結果、ヨーレートγGに基づく方位角の特定処理を行わないものと認められる。

そうすると、基準局4が異常を判定するのは、自動操縦制御の開始前、かつ方位角の特定処理の実行前であることは明らかである。

(ウ) したがって、前記(ア)及び(イ)の検討を踏まえれば、前記相違点2は実質的な相違点ではない。また仮に、実質的な相違点であったとしても、引用発明において前記相違点2に係る構成とすることに、格別の困難性があるとは認められない。

ウ 総合検討

前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、補正1発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、補正1発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 請求人の主張について

(ア) 請求人の主張内容

請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。

本願発明1(令和3年8月31日付け手続補正書の請求項1に係る発明)と引用文献6に記載の発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点>

本願発明1では判定処理を移動機体の自動走行の開始前に実行するのに対し、引用文献6では、(基準局4が基準点から移動したことによる異常の)判定を自車両の走行開始後に実行する点。

(イ) 請求人の主張についての検討

請求人は、引用発明は前記相違点に係る構成を有していないと主張しているが、前記イ(イ)において検討したとおり、引用発明が当該構成を実質的に備えていることは明らかである。

したがって、請求人の主張は、前記ウの結論を左右するものではない。

オ 小括

以上のとおり、補正1発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正1の適否についてのまとめ

前記3(4)において検討したとおり、補正1発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、補正1は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

したがって、原審における補正の却下の決定は適法なものである。

第3 本願発明について

1 本願発明の認定

前記第2に示したとおり、原審における補正の却下の決定は適法なものであり、補正1は却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年5月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明については、次のとおりである。

本願発明は、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1.特開2003-219448号公報

引用文献6.特開2006-322753号公報

3 引用文献に記載された発明の認定等

前記引用文献6に記載された発明、前記引用文献1に記載された事項の認定は、前記第2の3(2)において示したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、補正1発明の、移動局が設置された「移動機体」について、「自動走行可能」であるという限定を省くとともに、「判定手段」が判定処理を実行する条件から、「移動機体の自動走行の開始前」という条件を省くものである(前記第2の2参照)。

そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに当該構成の一部を限定したものに相当する補正1発明が、前記第2の3(4)において示したとおり、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-000565

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