特許拒絶査定不服審判
2022-000133
無線周波数穿孔装置
- 審判番号
- 2022-000133
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-188330外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月05日
- 審決日
- 2023年07月18日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 【請求人代理人】本田 淳
- 分類
- P18 .121-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-188330「無線周波数穿孔装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月28日出願公開、特開2019- 30693〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願は、平成24(2012)年11月 9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成24(2012)年 5月31日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2015-514606号の一部を平成30年10月 3日に新たな特許出願としたものであって、出願後の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月 4日 手続補正書、上申書の提出
令和 1年 8月20日付け 拒絶理由通知書
同年11月25日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月16日付け 拒絶理由通知書
同年 6月 3日 意見書、手続補正書の提出
同年10月 7日付け 拒絶理由通知書
同年12月25日 意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月22日付け 拒絶理由通知書
同年 8月 2日 意見書、手続補正書の提出
同年 9月 7日付け 補正の却下の決定、拒絶査定
令和 4年 1月 5日 審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和 4年 1月 5日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和 4年 1月 5日提出の手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正
令和 4年 1月 5日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和 2年12月25日提出の手続補正書(令和 3年 8月 2日提出の手続補正書による手続補正は同年 9月 7日付けで却下されている。)により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含むものである。なお、下線部は補正箇所を明確にする目的で当審にて付与した。
ア 補正前
「【請求項1】
心臓の中隔の組織に穿孔を形成するための医療機器であって、
近位端部および遠位端部を有する細長い部材であって、前記細長い部材は、ポリマーを含み、金属により支持されておらず、実質的に前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するルーメンを規定し、かつ前記ルーメンからの少なくとも1つの開口部を規定する、細長い部材と、
マーカー位置で前記細長い部材に関連付けられた造影用マーカーであって、前記マーカー位置における前記医療機器の外径が前記マーカー位置に隣接する前記医療機器の外径に実質的に等しく、使用時に、前記ルーメンを通る前記開口部への流体の流れが前記造影用マーカーによって実質的に妨害されないように前記医療機器が構成されており、前記造影用マーカーが、前記細長い部材の前記遠位端部を実質的に閉塞して、前記ルーメン内の流体が前記マーカー位置を通過して流れるのを実質的に防止する、前記造影用マーカーと、
前記細長い部材の前記遠位端部に配置された、電気エネルギーを送達することにより前記組織に穿孔するための電極と、を含み、
前記造影用マーカーおよび前記電極は、X線不透過性金属を含む、医療機器。」
イ 補正後
「【請求項1】
心臓の中隔の組織に穿孔を形成するための医療機器であって、
近位端部および遠位端部を有する細長い部材であって、前記細長い部材は、実質的に高密度ポリエチレンを含み、金属により支持されておらず、実質的に前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するルーメンを規定し、かつ前記ルーメンからの少なくとも1つの開口部を規定する、細長い部材と、 マーカー位置で前記細長い部材に関連付けられた造影用マーカーであって、前記マーカー位置における前記医療機器の外径が前記マーカー位置に隣接する前記医療機器の外径に実質的に等しく、使用時に、前記ルーメンを通る前記開口部への流体の流れが前記造影用マーカーによって実質的に妨害されないように前記医療機器が構成されており、前記細長い部材の壁の内表面が溝を定義し、前記造影用マーカーは、前記溝内に含まれる係留要素であり、それにより、前記造影用マーカーが流れる流体によって運び去られないようにする一方、前記造影用マーカーが前記溝内で制限された距離を移動できるようにし、それによって、使用中に、前記ルーメン内の流体の流れが前記造影用マーカーによって実質的に妨害されない、前記造影用マーカーと、
前記細長い部材の前記遠位端部に配置された、電気エネルギーを送達することにより前記組織に穿孔するための電極と、を含み、
前記造影用マーカーおよび前記電極は、X線不透過性金属を含む、医療機器。」
2 本件補正の目的の適否について
本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された「前記造影用マーカーが、前記細長い部材の前記遠位端部を実質的に閉塞して、前記ルーメン内の流体が前記マーカー位置を通過して流れるのを実質的に防止する、」という発明特定事項を削除するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項を限定するものとはいえない。
請求人は、審判請求書において、本件補正は、いわゆる限定的減縮に該当すると主張するが、その根拠は何ら示していない。そして、上記発明特定事項の削除が、その余の発明特定事項の補正、すなわち、本件補正前の「ポリマー」を「実質的に高密度ポリエチレン」とした点、「前記細長い部材の壁の内表面が溝を定義し、前記造影用マーカーは、前記溝内に含まれる係留要素であり、それにより、前記造影用マーカーが流れる流体によって運び去られないようにする一方、前記造影用マーカーが前記溝内で制限された距離を移動できるようにし、それによって、使用中に、前記ルーメン内の流体の流れが前記造影用マーカーによって実質的に妨害されない、」との発明特定事項を付加した点、により、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項が実質的に限定されるものともいえない。特に、造影用マーカーが、本件補正前に細長い部材の遠位端部を実質的に閉塞するものであったのに対して、本件補正後に細長い部材の壁の内表面の溝内に含まれる係留要素とした、つまり本件図面の図3gや図4fの態様とした点で、細長い部材の遠位端部を実質的に閉塞するという機能が失われており、その技術的意義を変更するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項を限定するものとはなっていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれを目的とするものに該当しないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものに該当しない。
3 本件補正についての結び
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正が上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和 2年12月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1 アに示すとおりのものであると認める。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち本願発明に対する理由は、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:米国特許出願公開第2005/0065507号明細書
引用文献2:特開2008-245765号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2010/0076404号明細書
第5 引用文献1の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本件優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2005/0065507号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、「SURGICAL PERFORATION DEVICE WITH CURVE」に関して以下のように記載されている。括弧内は当審で付した日本語訳である。
A 「[0001] The invention relates to a device for creating a perforation in material of a patient such as the septum of the heart. More specifically, the invention relates to a device for creating a perforation in the material while minimizing the risk of inadvertent injury to other patient structures. 」
([0001] 本発明は、心臓の中隔などの患者の組織に孔を形成するための装置に関するものである。より具体的には、本発明は、患者の他の組織への不注意による損傷の危険性を最小化しつつ、組織に孔を形成する装置に関する。)
B 「[0018] FIG.1 illustrates a schematic view of an electrosurgical system including a preferred embodiment of a transseptal device in accordance with the invention; 」
([0018]図1は、本発明に係る経中隔装置の好ましい実施形態を含む電気外科手術システムの概略図である;)
C 「[0024] FIGS.7A and 7B illustrate respectively a side cross-sectional view of the distal and proximal regions of the transseptal device of FIG. 1; 」
([0024]図7A及び図7Bは、それぞれ図1の経中隔装置の遠位及び近位領域の側方断面図を示す図である;)
D 「[0030] FIG.1 illustrates a preferred embodiment of a transseptal device 100 in accordance with the invention. Transseptal device 100 comprises an elongate member 102 having a distal region 104, and a proximal region 106. The Distal region 104 is adapted to be inserted within and along a lumen of a body of a patient, such as a patient's vasculature, and maneuverable therethrough to a desired location proximate to septal tissue to be cut.
[0031] The elongate member 102 is typically tubular in configuration, having at least one lumen extending from the proximal region 106 to the distal region 104. Elongate member 102 is preferably constructed of a biocompatible polymer material that provides column strength. The elongate member 102 is sufficiently stiff to permit a soft guiding catheter to be easily advanced over the transseptal device 100 and through a perforation. Examples of suitable materials for the tubular portion of elongate member 102 are polyetheretherketone (PEEK), and polyimide. In a preferred embodiment, the outer diameter of the tubular portion of elongate member 102 tapers down to connect to the distal region 104. In alternate embodiments the outer diameter of the elongate member 102 and the outer diameter of distal region 104 are the same.
[0032] The distal region 104 comprises a functional tip 108. A preferred embodiment of the functional tip 108 comprises at least one active electrode made of an electrically conductive and radiopaque material, such as stainless steel, tungsten, platinum, or another metal. Distal region 104 defines at least one opening 110 in fluid communication with a main lumen as described further below. Radiopaque markers (not shown) may be affixed to the elongate member 102 to highlight the location of the transition from the distal region 104 to the elongate member 102, or other important landmarks on the transseptal device 100 such as locations of openings 110. 」
([0030] 図1は、本発明に係る経中隔装置100の好ましい実施形態を示している。経中隔装置100は、遠位領域104及び近位領域106を有する細長い部材102を備えている。遠位領域104は、患者の身体例えば、患者の脈管構造に沿って、管腔の中に挿入されるように適合されており、かつ切断すべき中隔組織に近接した所望の位置に到達するように操縦可能である。
[0031] 細長い部材102は、典型的には、近位領域106から遠位領域104に延在する少なくとも1つの管腔を有する、管状である。細長い部材102は、カラム強度を備えた、生体適合性のあるポリマー材料で構成することが好ましい。細長い部材102は、柔軟なガイドカテーテルが、経中隔装置100上を容易に前進し孔を通過できるように、十分に固い。細長い部材102の管状部分に適した材料の例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド等が挙げられる。好ましい実施形態では、細長い部材102の管状部分の外径は、遠位領域104に接続するために先細りになっている。別の実施形態では、細長い部材102の外径と遠位領域104の外径は同じである。
[0032] 遠位領域104は機能的先端108を備えている。機能的先端108の好ましい実施形態は、導電性かつ放射線不透過性材料、例えば、ステンレス鋼、タングステン、白金、またはその他の金属からなる、少なくとも1つの活性電極を備える。遠位領域104は、以下でさらに説明するように、管腔と流体連通する、少なくとも1つの開口部110を規定する。放射線不透過性マーカー(図示せず)は、遠位領域104から細長い部材102への移行部の位置や、又は開口部110の位置のような、経中隔装置100上の重要な目印を強調するために、細長い部材102に取り付けられる。)
E 「[0037]・・・FIGS.3, 4 and 5 depict transseptal device 100 during use. The transseptal device 100 is introduced into patient through a guiding catheter 300. Distal region 104 is pliable so that the curve 126 straightens out within guiding catheter 300 and takes on the shape of guiding catheter 300 as it is advanced to the atrial septum 302, as shown in FIG.3. The transseptal device 100 is longer than the guiding catheter 300 so that it may be advanced slightly out of the tip of guiding catheter 300, exposing functional tip 108, as shown in FIG.4. Functional tip 108 is positioned against a desired perforation site on atrial septum 302, and energy is delivered to perforate septum 302.・・・」
([0037]・・・図3、4及び5は、使用中の経中隔装置100を描写している。経中隔装置100は、ガイディングカテーテル300を介して患者に導入される。遠位領域104は、図3に示されるように心房中隔302に前進させられたときに、ガイドカテーテル300内で、曲がり126が真っ直ぐな形状となるように柔軟である。経中隔装置100は、図4に示すように、ガイドカテーテル300の先端から少し出たときに、機能的先端108が露出するように、ガイドカテーテル300よりも長い。機能的先端108は、心房中隔302上の所望の穿孔部位に配置され、そのエネルギーが、隔壁302を穿孔するために送達される。・・・)
F 「[0039] Referring to FIGS.7A and 7B a cross-section of proximal 106 and distal 104 regions of the transseptal device 100 is illustrated in accordance with the preferred embodiment of FIG.1. Functional tip 108 comprises an active electrode 700 that is coupled to an electrically insulated conducting wire 702. Conducting wire 702 is preferably attached to distal region 104 using an adhesive. Alternately, distal region 104 is melted onto insulation 704 on conducting wire 702 to form a bond.
・・・
[0041] In the preferred embodiment of FIGS.7A and 7B, main lumen 706 extends from distal region 106 along elongate member 102 and through distal region 104 of the transseptal device 100. At least one opening 110 at the distal region 104 provides a pathway between main lumen 706 and the environment surrounding distal region 104, such as a desired location within a patient's body. Openings 110 are sufficiently dimensioned to easily aspirate blood and to inject radiopaque contrast to and through main lumen 706 ; however, openings 110 are limited in number and dimension so that they do not compromise the structural integrity of distal region 104 . ・・・ 」
([0039] 図7A及び7Bには、図1の好ましい実施形態に従った経中隔装置100の近位106及び遠位領域104が図示されている。機能的先端108は、電気的に絶縁された導線702に結合されたアクティブ電極700を備えている。導線702は、接着剤を使用して遠位領域104に取り付けられることが好ましい。あるいは、遠位領域104は、導線702の絶縁部704上に溶融して結合を形成する。
・・・
[0041] 図7A及び7Bの好適な実施形態において、管腔706は、遠位領域(当審注:「近位領域」の誤記である。)106から延在する細長い部材102に沿って経中隔装置100の遠位領域104を貫通している。遠位領域104の少なくとも1つの開口部110は、管腔706と、患者の体内の所望の位置のような、周囲の環境との間の経路を提供する。開口部110は管腔706との間で容易に血液を吸引できかつ造影剤を注入できるよう寸法決めされるが、開口部110は遠位領域104の構造的完全性を損なわないように数と寸法が制限されている。・・・)
G 図7Aから、細長い部材102の遠位領域104は、機能性先端108により実質的に閉塞されており、当該遠位領域104の近位側に、管腔706と周囲の環境との間の経路を提供する3つの開口部110が設けられていること、が見て取れる。
a 摘記事項Aの「本発明は、心臓の中隔などの患者の組織に孔を形成するための装置に関するものである。」との記載及び摘記事項Bの「図1は、本発明に係る経中隔装置の好ましい実施形態を含む電気外科手術システムの概略図である」との記載から、引用文献1に記載された発明は、「心臓の中隔などの患者の組織に孔を形成するための経中隔装置」である。
b 摘記事項Dの「[0030]・・・経中隔装置100は、遠位領域104及び近位領域106を有する細長い部材102を備えている。遠位領域104は、患者の身体例えば、患者の脈管構造に沿って、管腔の中に挿入されるように適合されており、かつ切断すべき中隔組織に近接した所望の位置に到達するように操縦可能である・・・[0031] 細長い部材102は、典型的には、近位領域106から遠位領域104に延在する少なくとも1つの管腔を有する、管状である。細長い部材102は、カラム強度を備えた、生体適合性のあるポリマー材料で構成することが好ましい。・・・[0032] ・・・遠位領域104は、以下でさらに説明するように、管腔と流体連通する、少なくとも1つの開口部110を規定する。」との記載からみて、引用文献1に記載された経中隔装置は、「患者の脈管構造に沿って、管腔の中に挿入されるように適合されており、かつ切断すべき中隔組織に近接した所望の位置に到達するように操縦可能である遠位領域及び近位領域を有する細長い部材であって、前記細長い部材はポリマー材料を含み、金属により支持されておらず、近位領域から遠位領域に延在する少なくとも1つの管腔を有し、かつ管腔と流体連通する、少なくとも1つの開口部を画定する細長い部材」を備えている。
c 摘記事項Dの「[0032] 遠位領域104は機能的先端108を備えている。機能的先端108の好ましい実施形態は、導電性かつ放射線不透過性材料、例えば、ステンレス鋼、タングステン、白金、またはその他の金属からなる、少なくとも1つの活性電極を備える。」との記載、摘記事項Fの「([0039] 図7A及び7Bには、図1の好ましい実施形態に従った経中隔装置100の近位106及び遠位領域104が図示されている。機能的先端108は、電気的に絶縁された導線702に結合されたアクティブ電極700を備えている。」との記載、摘記事項Eの「[0037]・・・図3、4及び5は、使用中の経中隔装置100を描写している。・・・機能的先端108は、心房中隔302上の所望の穿孔部位に配置され、そのエネルギーが、隔壁302を穿孔するために送達される。・・・」との記載からみて、引用文献1に記載された経中隔装置は、「細長い部材の遠位領域は機能的先端を備えており、該機能的先端は導電性かつ放射線不透過性の金属からなるアクティブ電極を備え、該アクティブ電極には、電気エネルギーが、隔壁を穿孔するために送達される」ことが理解できる。
d 摘記事項Fの「[0041] 図7A及び7Bの好適な実施形態において、管腔706は、遠位領域(当審注:「近位領域」の誤記である。)106から延在する細長い部材102に沿って経中隔装置100の遠位領域104を貫通している。遠位領域104の少なくとも1つの開口部110は、管腔706と、患者の体内の所望の位置のような、周囲の環境との間の経路を提供する。開口部110は管腔706との間で容易に血液を吸引できかつ造影剤を注入できるよう寸法決めされる」との記載、図示内容Gの「細長い部材102の遠位領域104は、機能性先端108により実質的に閉塞されていること、当該遠位領域104の近位側に、管腔706と周囲の環境との間の経路を提供する開口部110が設けられていること」からみて、引用文献1に記載された経中隔装置は、「細長い部材の遠位領域は、機能性先端により実質的に閉塞されており、当該遠位領域の近位側に、管腔と周囲の環境との間の経路を提供する開口部が設けられ、当該開口部は管腔との間で容易に血液を吸引できかつ造影剤を注入できるよう寸法決めされている」ことが理解できる。
引用文献1の摘記事項A~F、図示事項G及び認定事項a~dを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「心臓の中隔などの患者の組織に孔を形成するための経中隔装置であって、
患者の脈管構造に沿って、管腔の中に挿入されるように適合されており、かつ切断すべき中隔組織に近接した所望の位置に到達するように操縦可能である遠位領域及び近位領域を有する細長い部材であって、前記細長い部材はポリマー材料を含み、金属により支持されておらず、近位領域から遠位領域に延在する少なくとも1つの管腔を有し、かつ管腔と流体連通する、少なくとも1つの開口部を画定する細長い部材と、
細長い部材の遠位領域は機能的先端を備えており、該機能的先端は導電性かつ放射線不透過性の金属からなるアクティブ電極を備え、該アクティブ電極には、電気エネルギーが、隔壁を穿孔するために送達され、細長い部材の遠位領域は、機能性先端により実質的に閉塞されており、当該遠位領域の近位側に、管腔と周囲の環境との間の経路を提供する開口部が設けられ、当該開口部は管腔との間で容易に血液を吸引できかつ造影剤を注入できるよう寸法決めされた、
経中隔装置。」
2 対比及び判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「心臓の中隔などの患者の組織に孔を形成するための経中隔装置」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「心臓の中隔の組織に穿孔を形成するための医療機器」に相当する。以下同様に、「近位領域」は「近位端部」に、「遠位領域」は「遠位端部」に、「ポリマー材料を含み」は「ポリマーを含み」に、「近位領域から遠位領域に延在する少なくとも1つの管腔を有し」は「実質的に前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するルーメンを規定し」に、「管腔と流体連通する、少なくとも1つの開口部を画定する」は「ルーメンからの少なくとも1つの開口部を規定する」に、「放射線不透過性の金属」は「X線不透過金属」に、「電気エネルギーが、隔壁を穿孔するために送達され」る「アクティブ電極」は「電気エネルギーを送達することにより前記組織に穿孔するための電極」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「機能性先端」は、「導電性かつ放射線不透過性の金属からなるアクティブ電極を備え」るものであって、放射線不透過性の金属を有するから、本願発明の「造影用マーカー」に相当し、かつ、当該「機能性先端」は、細長い部材の遠位領域に備えられるのであるから、本願発明の「マーカー位置で前記細長い部材に関連付けられた」ものに相当する。
さらに、引用発明の「細長い部材の遠位領域は、機能性先端により実質的に閉塞されており、当該遠位領域の近位側に、管腔と周囲の環境との間の経路を提供する開口部が設けられ、当該開口部は管腔との間で容易に血液を吸引できかつ造影剤を注入できるよう寸法決めされ」ている態様は,アクティブ電極によって、吸引、注入が妨害されていないことが明らかであるから、本願発明の「使用時に、前記ルーメンを通る前記開口部への流体の流れが前記造影用マーカーによって実質的に妨害されないように」構成されている態様に相当する。
そして、引用発明において機能性先端は、細長い部材の遠位領域を実質的に閉塞しており、また開口部は遠位領域の近位側に設けられていることから、管腔内の造影剤は、機能性先端の位置よりも近位側の開口部から注入されるといえることを踏まえると、引用発明の「細長い部材の遠位領域は、機能性先端により実質的に閉塞されて」いることは、本願発明の「前記造影用マーカーが、前記細長い部材の前記遠位端部を実質的に閉塞して、前記ルーメン内の流体が前記マーカーの位置を通過して流れるのを実質的に防止する」よう構成されていることに相当する。
また、引用発明の「アクティブ電極」は、細長い部材の遠位領域に備えられた機能性先端に備えられるのであるから、本願発明の「細長い部材の前記遠位端部に配置された」電極に相当する。
さらに、引用発明の「機能性先端は、導電性かつ放射線不透過性の金属からなるアクティブ電極を備える」ことは、本願発明の「造影用マーカーおよび前記電極は、X線不透過性金属を含む」構成に相当する。
してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点において一致する。
(一致点)
「心臓の中隔の組織に穿孔を形成するための医療機器であって、
近位端部および遠位端部を有する細長い部材であって、前記細長い部材は、ポリマーを含み、金属により支持されておらず、実質的に前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するルーメンを規定し、かつ前記ルーメンからの少なくとも1つの開口部を規定する、細長い部材と、
マーカー位置で前記細長い部材に関連付けられた造影用マーカーであって、使用時に、前記ルーメンを通る前記開口部への流体の流れが前記造影用マーカーによって実質的に妨害されないように前記医療機器が構成されており、前記造影用マーカーが、前記細長い部材の前記遠位端部を実質的に閉塞して、前記ルーメン内の流体が前記マーカー位置を通過して流れるのを実質的に防止する、前記造影用マーカーと、
前記細長い部材の前記遠位端部に配置された、電気エネルギーを送達することにより前記組織に穿孔するための電極と、を含み、
前記造影用マーカーおよび前記電極は、X線不透過性金属を含む、医療機器。」
そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明では、マーカー位置における医療機器の外径が前記マーカー位置に隣接する前記医療機器の外径に実質的に等しいのに対し、引用発明では、
機能性先端の位置における経中隔装置の外径が機能性先端の位置に隣接する前記経中隔装置の外径に実質的に等しいといえるか否か不明である点。
イ 判断
上記相違点について検討すると、脈管内を移動させる医療機器において、脈管内での引っかかり等を回避するために、マーカー位置における外径と、当該マーカー位置に隣接する位置における外径とを実質的に等しく構成することは、ごく普通に採用される常套手段にすぎない。必要があれば、引用文献2(特開2008-245765号公報)の【0024】、【図1】、【図2】、引用文献3(米国特許出願公開第2010/0076404号明解書))のFIGS.4~7を参照されたい。
そうすると、患者の脈管構造に沿って、管腔の中に挿入されるように適合されており、かつ切断すべき中隔組織に近接した所望の位置に到達するように操縦可能な経中隔装置である引用発明において、上記常套手段を採用することにより、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
そして、本願発明の奏する効果をみても、引用発明及び常套手段に鑑みて格別の効果であるということもできない。
よって、本願発明は引用発明及び常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでない。
3 審判請求書等における主張について
請求人は、令和 3年 8月 2日受付の意見書において、「引用文献1のデバイスは、その図7に示されているように、先端が細くなるテーパーを有しています。電極よりも近位にある部分よりも電極の外径が小さくなっています。そのため、図7に示された、小さな電極700によって組織に生じる穿孔を通ってが前進するためには、穿孔を拡張しながら前進する必要があると考えられます。これに対して、本願の請求項1の構成によれば、電極により生じる穿孔は細長い部材の外径と同じ外径を有するので、医療機器は少ない抵抗で前進することができます。これは引用文献1の構成からは得られない本願の請求項1に係る発明による効果であると思料します。」と主張する。
しかしながら、引用文献1の[0031]には、「好ましい実施形態では、細長い部材102の管状部分の外径は、遠位領域104に接続するために先細りになっている。別の実施形態では、細長い部材102の外径と遠位領域104の外径は同じである。」と記載されていることからみて、遠位領域の外径よりも大きい細長い部材の管状部分の外径を、遠位領域と連続的に接続するために先細りとしてもよいこと、さらに、遠位領域の外径と同じにしてもよいことが示唆されており、このような示唆をふまえれば、請求人が主張する、前進する際の抵抗がより小さくなるという効果が、当業者からみて格別の効果であるということはできない。
第6 結び
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-000133