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特許無効審判

2021-800058

ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠

審判番号
2021-800058
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2017-012835
登録番号
6858575
請求日
2021年07月07日
審決日
2022年12月28日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東レ 株式会社
  • 【請求人代理人】重冨 貴光
  • 【請求人代理人】長谷部 陽平
  • 【請求人代理人】秋田 康博
  • 【請求人代理人】鷲見 健人
  • 【請求人代理人】皆川 量之
  • 【被請求人】沢井製薬 株式会社
  • 【被請求人代理人】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
  • 【被請求人代理人】小松 陽一郎
  • 【被請求人代理人】原 悠介
  • 【被請求人代理人】千葉 あすか
審判長/審判官
  • 審判長 原田 隆興
  • 審判官 田中 耕一郎
  • 審判官 渕野 留香
分類
P1113.121-YAA(A61K) / P1113.537-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の特許第6858575号発明「ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第6858575号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 主な手続の経緯 本件特許第6858575号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る発明についての出願である特願2017-12835号(以下「本件特許出願」という。)は、平成29年1月27日(優先権主張 平成28年1月29日 日本国(JP))に出願され、令和3年3月26日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、請求人から、令和3年7月7日付け審判請求書によって、本件特許の全ての請求項1~5に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の本件特許無効審判が請求された。 主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 7月 7日 審判請求書及び証拠説明書の提出(請求人) 同年10月 7日 答弁書の提出(被請求人) 令和4年 1月 6日付け 審理事項通知書 同年 1月31日 口頭審理陳述要領書及び 証拠説明書の提出(被請求人) 同年 2月 1日 口頭審理陳述要領書(1)、(2)及び 証拠説明書(2)の提出(請求人) 同月16日 証拠説明書(2)の提出(被請求人) 同月24日 上申書の提出(被請求人) 同年 3月29日 上申書及び証拠説明書(3)の提出(請求人) 同年 4月 5日 口頭審理 同月18日 上申書(1)及び 証拠説明書(3)の提出(被請求人) 同年 5月16日 上申書(2)及び 証拠説明書(4)の提出(請求人) 同日 上申書(2)及び 証拠説明書(4)の提出(被請求人) 同年 7月 5日付け 審決の予告 同年 8月16日 訂正請求書の提出(被請求人) 同年 8月31日 上申書(3)及び 証拠説明書(5)の提出(被請求人) 同年 9月26日 弁駁書の提出(請求人) 同年10月 6日 上申書(3)及び 証拠説明書(5)の提出(請求人) 第2 訂正請求について 1 訂正の趣旨 令和4年8月16日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項1~5について訂正することを求めるというものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりのものである。 (1)訂正事項1 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1において、本件訂正前「…L-ロイシンとを含むことを特徴とするナルフラフィン含有口腔内崩壊錠」であったものを、「…L-ロイシンとを含み、エリスリトールと、カルメロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含まないことを特徴とする素錠であるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠」とするものである。すなわち、訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1において、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に対して「エリスリトールと、カルメロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含まない」という限定事項を加えるとともに、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が「素錠」であることを特定するものである。 (2)訂正事項2 訂正事項1と明細書における記載の整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0009】の記載「本発明の一実施形態によると、ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンまたはショ糖脂肪酸エステルとを含有することを特徴とするナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が提供される。」を「本発明の一実施形態によると、ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとを含み、エリスリトールと、カルメロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含まないことを特徴とする素錠であるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が提供される。」に訂正する。 3 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンとを含む、訂正前の請求項1に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に対して、「エリスリトールと、カルメロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含まない」という限定事項を加えるとともに、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が「素錠」であることを特定するものであるところ、当該訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 そして、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、まとめて「本件明細書等」という。)には、実施例1(【0032】~【0036】)で用いられたナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、トレハロース、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、L-ロイシンを含む打錠前粉末を打錠することによって得られたことが記載されている。 さらに、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、エリスリトール、カルメロース、ステアリン酸マグネシウムを含まないものである。 ここで、下記第6 2(1)ア(ウ)及び(エ)で説示するように、本件明細書等において、エリスリトール、カルメロース、ステアリン酸マグネシウムはナルフラフィンの安定性を低下させる成分であることが確認されている。また、本件明細書等には、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、ナルフラフィン、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンまたはショ糖脂肪酸エステルとを含有するものであって、エリスリトール、カルメロース、ステアリン酸マグネシウムを含むことは記載されていない(【0009】、【0017】、【0018】)。そうすると、エリスリトール、カルメロース、ステアリン酸マグネシウムを含まないとする訂正により、新たな技術的事項が導入されるものではない。 また、打錠前粉末を打錠して得られる実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、被覆されていないことは明らかであるから、素錠であるといえる(【0023】、【0024】)。 そうすると、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1と明細書における記載の整合を図るためのものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、上記(1)において説示したのと同様に、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3)独立特許要件について 本件特許無効審判事件では、訂正前の全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課せられない。 (4)訂正要件違反についての請求人の主張について ア 請求人は、弁駁書において、本件訂正前の本件発明1は、オープンクレームであったため、特定の添加剤(トレハロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びL-ロイシン)が、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の安定性を向上させる効果を奏することを見出し、他の添加剤の存否・内容を問わないものであったのを、本件訂正後の本件発明1は、特定の添加剤(エリスリトール、カルメロース及びステアリン酸マグネシウム)が、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の安定性を低下させる効果を奏することを見出し、特定の添加剤の存否・内容を直接的に特定するものとすることによって発明の技術的特徴が大きく変更され、両者を実質上同一の発明とはおよそ評価することはできないから、本件訂正は「実質上特許請求の範囲を…変更するもの」であることは明らかである旨主張している(4頁3行~5頁5行)。 しかしながら、上記(1)で説示したように、本件明細書等には、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、トレハロース、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、L-ロイシンを含む打錠前粉末を打錠することによって得られたものであって、エリスリトール、カルメロース、ステアリン酸マグネシウムを含まない素錠であることが記載されている。 そうすると、本件訂正は、特定の添加剤(トレハロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びL-ロイシン)を含むナルフラフィン含有口腔内崩壊錠について、他の添加剤(エリスリトール、カルメロース及びステアリン酸マグネシウム)を含まないことを特定するものであって、訂正前の本件発明1を減縮するものであるし、本件明細書に開示されていた特定の添加剤を添加しない一実施態様に限定するものであって、技術的特徴を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を変更するものとはいえない。 したがって、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものではない。 よって、請求人による上記主張は採用できない。 イ 請求人は、上申書(3)において、「本件明細書の記載全体を通覧するに、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の安定性が、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に含有される多数の成分のうち、本件訂正発明1において発明特定事項として特定された一部の成分を含み、かつ、一部の成分を含まないことによって確保されているとはいえない」から、本件訂正後の添加剤の構成を備えることによって「安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得る」ことが本件訂正明細書に記載されていると当業者が理解できるとはいえないので、本件訂正は新規事項の追加に当たり、訂正要件を欠く(特許法第134条の2第9項。第126条第5項)旨主張している(13~14頁(4))。 しかしながら、上記(1)で説示したように、本件明細書等には、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、トレハロース、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、L-ロイシンを含む打錠前粉末を打錠することによって得られたものであって、エリスリトール、カルメロース、ステアリン酸マグネシウムを含まない素錠であることが記載されているといえるから、訂正事項1は、本件明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 よって、請求人による上記主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、令和4年8月16日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。なお、当審により、訂正箇所に下線を付した。 「【請求項1】 ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンとを含み、エリスリトールと、カルメロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含まないことを特徴とする素錠であるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。 【請求項2】 前記トレハロースを1錠100重量%当たり7重量%以上10重量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。 【請求項3】 前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを1錠100重量%当たり10重量%以上14重量%以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。 【請求項4】 前記L-ロイシンを1錠100重量%当たり3重量%以上6重量%以下含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。 【請求項5】 前記L-ロイシンを1錠100重量%当たり4.5重量%以上含むことを特徴とする請求項4に記載のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。」 なお、以下では、請求項1~5に係る各発明は、各請求項の番号に従い「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。 第4 当事者の主張、及び、提出した証拠方法 1 請求人の主張する無効理由、及び、提出した証拠方法 請求人が提出した審判請求書、令和4年2月1日付け口頭審理陳述要領書(1)及び(2)、令和4年3月29日付け上申書、令和4年5月16日付け上申書(2)、令和4年9月26日付け弁駁書及び令和4年10月6日付け上申書(3)によれば、請求人は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、以下の無効理由1~3を主張し、証拠方法として、甲第1号証~甲第34号証(以下、各々、「甲1」、「甲2」・・・「甲34」と表記する場合がある。)を提出している。 (無効理由1) 本件発明1~5は、本件特許の明細書(以下「本件明細書」という。)の記載に照らしても、本件発明により当業者が本件発明の課題を解決できると認識することはできないし、また、本件明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を本件発明の範囲まで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 よって、本件発明1~5に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (無効理由2) 本件発明1~5は、甲第1号証の実施例13に記載された発明並びに甲第2及び3号証に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、本件発明1~5に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (無効理由3) 本件発明1~5は、甲第1号証の実施例1に記載された発明、甲第3及び4号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、本件発明1~5に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (証拠方法) 甲第1号証:再公表特許WO2010/113841号 甲第2号証:国際公開第2008/133330号 甲第3号証:国際公開第01/76565号 甲第4号証:「トレハロースおよび結晶セルロースを使用した口腔内崩壊錠」、製剤機械技術学会誌、平成24年9月5日、21巻4号(通巻79号)、155~161頁 甲第5号証:特開2013-35824号公報 甲第6号証:再公表特許WO2002/092057号 甲第7号証:特開2009-114113号公報 甲第8号証:特開2011-26212号公報 甲第9号証:特開2009-91292号公報 甲第10号証:実験成績証明書、東レ株式会社 医薬CMC技術部 高木卓、令和3年6月18日 (以上、審判請求書に添付。) 甲第11号証:Hiromasa HORIKIRI et al., Chem. Pharm. Bull., 2004, 52(6), pp.664-669 甲第12号証:特開2017-39686号公報 甲第13号証:特開2015-166331号公報 甲第14号証:再公表特許W02018/021518号 甲第15号証:国際公開第2010/047381号 (以上、口頭審理陳述要領書(1)に添付。) 甲第16号証:請求人意見陳述資料、令和4年3月28日 (以上、令和4年3月29日付け上申書に添付。) 甲第17号証:JISハンドブック49化学分析、一般財団法人日本規格協会、2016年1月29日、1008~1044頁 甲第18号証:「医薬品試験の効率化に関する検討(第4報)-グラジエント法を用いた解熱鎮痛薬成分の分析法の検討-」、富山県、家庭薬研究、2017年3月、No.36、26~33頁 甲第19号証:添加剤の特性・選び方・使い方ノウハウ集、株式会社技術情報協会、2012年1月31日、5~6頁 (以上、令和4年5月16日付け上申書(2)に添付。) 甲第20号証:医薬品添加物事典 2007、株式会社薬事日報社、2009年11月6日第2刷発行、181頁、197頁、198頁 甲第21号証:医薬品添加物事典 2016、株式会社薬事日報社、2016年2月18日第1刷発行、636頁 甲第22号証:添加剤の特性・選び方・使い方ノウハウ集、株式会社技術情報協会、2012年1月31日、34~37頁、104~107頁 甲第23号証:医薬品添加剤の処方設計と物性評価、株式会社シーエムシー出版、2016年1月29日、3~11頁 甲第24号証:すべてがわかる口腔内崩壊錠ハンドブック-添加剤編-、PHARM TECH JAPAN 2015年2月臨時増刊号、第31巻4号、10(710)~15(715)頁 甲第25号証:医薬品・化粧品分野における添加剤の選択・処方例と最新規制申請対応、株式会社技術情報協会、2008年2月29日、36~37頁、46~53頁 甲第26号証:新・薬剤学総論 改訂第4版、株式会社南江堂、1993年5月1日、124頁、125頁 甲第27号証:特開2013-173802号公報 甲第28号証:特開2015-110663号公報 甲第29号証:特開2016-183195号公報 甲第30号証:特開2015-151337号公報 甲第31号証:特開2015-134838号公報 甲第32号証:特開2015-147812号公報 甲第33号証:国際公開第01/76565号 甲第34号証:特開2016-121197号公報 (以上、令和4年10月6日付け上申書(3)に添付。) なお、上記甲号証のうち、甲12、甲14、甲21、甲29及び甲34の発行日は、本件優先日後である。また、甲17及び甲23の発行日は、本件優先日である。 2 被請求人の主張、及び、提出した証拠方法 被請求人が提出した答弁書、令和4年1月31日付け口頭審理陳述要領書、令和4年2月24日付け上申書、令和4年4月18日付け上申書(1)、令和4年5月16日付け上申書(2)及び令和4年8月31日付け上申書(3)によれば、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、請求人の本件特許が無効であるとの主張には理由がない旨を主張し、証拠方法として、乙第1~12号証(以下、各々、「乙1」、「乙2」・・・「乙12」と表記する場合がある。)を提出している。 (証拠方法) 乙第1号証:安定性試験ガイドラインの改定について、厚生労働省医薬局審査管理課長、医薬審発第0603001号、平成15年6月3日 乙第2号証:新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について、厚生労働省医薬局審査管理課長、医薬審発第0624001号、平成15年6月24日 乙第3号証:添付文書(第2版)経口そう痒剤 ナルフラフィン塩酸塩口腔内崩壊錠 ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5μg「サワイ」、沢井製薬株式会社、令和3年3月 (以上、口頭審理陳述要領書に添付。) 乙第4号証:口頭審理用パワーポイント資料、令和4年2月16日 (以上、令和4年2月24日付け上申書に添付。) 乙第5号証:経口投与製剤の処方設計、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日、36~39頁 (以上、令和4年4月18日付け上申書(1)に添付。) 乙第6号証:CAPCELL PAK C1 8 MGII、SHISEIDO HPLC COLUMNSのパンフレット、株式会社資生堂、平成25年3月、13~16頁、https://www.hplc.eu/Downloads/Shiseido_HPLC_Columns_Catalog.pdf 乙第7号証:ライフサイエンスのための高速液体クロマトグラフィー -基礎と実験-、株式会社廣川書店、平成元年2月25日、108~111、140~145頁 乙第8号証:陳述書、沢井製薬株式会社製剤研究部 小川芳之、令和4年5月12日 乙第9号証:第十六改正日本薬局方、厚生労働省、平成23年3月24日、348頁 乙第10号証:熱分析による医薬品の安定性予測、住友化学2000-II、平成12年、51~53頁 乙第11号証:DDS製品開発の最前線 連載39 フィルムコーティング型口腔内崩壊錠「レミッチ(R)OD錠2.5μg」の開発、Drug Delivery System、2019年11月、34巻5号(通巻第180号)、390~393頁(当審注:原文では(R)は上付きの丸囲みされたRである。) (以上、令和4年5月16日付け上申書(2)に添付。) 乙第12号証:基礎から学ぶ 製剤化のサイエンス、エルゼビア・ジャパン株式会社、2009年4月1日第1版第2刷発行、126頁、127頁 (以上、令和4年8月31日付け上申書(3)に添付。) なお、上記乙号証のうち、乙11の公開日は、本件出願後である。 第5 証拠の記載事項 1 甲号証の記載事項 甲第1号証~甲第10号証及び甲第16号証には、以下の記載がある。下線は当審で付した。 甲第1号証 (摘示事項1A)請求項1、3、10 「【請求項1】 20℃において10mL未満の水に1g以上溶け、かつ分子内にヒドロキシ基を有し単位ヒドロキシ基当たりの分子量が200以下の水溶性物質と、被覆層重量に対して5重量%以上のポリビニルアルコール系樹脂とを含有する被覆層により被覆された、薬物を含有する安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 ・・・ 【請求項3】 前記水溶性物質が、マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、フルクトース、ブドウ糖、ラクチトール、イソマルトース、乳糖、エリスリトール、マンニトール、トレハロース、ショ糖および平均分子量が400以下のポリエチレングリコールの少なくとも1種である、請求項1記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 ・・・ 【請求項10】 薬物が、ナルフラフィン、アムロジピン、ドネペジル、エバスチン、セレギリン、ファモチジン、イルソグラジン、ブロチゾラム、オランザピン、ランソプラゾール、ベポタスチン、ラモセトロン、タムスロシン、ナフトピジル、ポラプレジンク、ボグリボース、リザトリプタン、ミドドリン、リスペリドン、オンダンセトロン、ロラタジン、モンテルカスト、アズレンスルホン酸、エチゾラム、エナラプリル、カプトプリル、グリベンクラミド、クロルマジノン酢酸エステル、ドキサゾシン、トリアゾラム、ドンペリドン、ケトチフェン、ブロムペリドール、プラバスタチン、シンバスタチン、ロペラミド、リシノプリル、リルマザホン、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、メコバラミン、アルファカルシドール、ブロモクリプチンおよびプラミペキソールならびにその薬理学的に許容される塩および溶媒和物の少なくとも1種である、請求項1記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。」 (摘示事項1B)段落0010 「【0010】 本発明は、口腔内での速崩壊性を確保しながら、口腔内崩壊性錠剤が高湿度下において吸湿により膨潤した場合においても、被覆層に亀裂が生じることが無い安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することを目的とする。また、光に不安定な薬物を含有する口腔内崩壊性錠剤においては、被覆層に遮光剤を配合することで、薬物の分解を抑制することも目的とする。」 (摘示事項1C)段落0014 「【0014】 本発明によれば、錠剤の硬度不足、高い摩損性の改善、または光などの外的環境要因による分解の改善された口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することができる。より詳細には、本発明は、口腔内での速崩壊性を確保しながら、口腔内崩壊性錠剤が高湿度下において吸湿により膨潤した場合においても、被覆層に亀裂が生じることが無い安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することができる。また、光に不安定な薬物を含有する口腔内崩壊性錠剤においては、被覆層に遮光剤を配合することで、薬物の分解を抑制することもできる。これらの効果により、これまで一包化包装ができなかった口腔内崩壊錠に対しても、一包化包装が可能となり、患者の服薬コンプライアンスを改善し、治療効果を向上させることができる。」 (摘示事項1D)段落0024~0028 「【0024】 本発明の被覆層には、上述の成分のほか、必要に応じて薬学的に許容される添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で加えることが可能である。当該添加剤として例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、矯味剤、香料、着色剤または滑沢剤などが挙げられる。例えば賦形剤として、コーンスターチ、ポテトスターチなどのデンプン類、微結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などを挙げることができる。例えば崩壊剤として、部分アルファー化デンプン、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどを挙げることができる。例えば結合剤として、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、アミノアルキルメタルリレートコポリマーなどを挙げることができる。例えば矯味剤として、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ステビア、ソーマチン、クエン酸などを挙げることができる。例えば香料として、メントール、ペパーミント、レモン、レモンライム、オレンジ、ハッカ油、各種フレーバーを挙げることができる。例えば着色剤として、タール系色素、ウコン抽出液、カラメル、カロチン液、β―カロテン、銅クロロフィル、リボフラビンなどを挙げることができる。例えば滑沢剤として、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、シリコーン、長鎖脂肪酸エステルなどの界面活性剤類、ミツロウ、カルナウバロウ、パラフィンなどのワックス類などが挙げられる。これら添加剤は例示されたものであり、何ら限定するものではない。また、本発明の被覆層の内外表面に、当該添加剤を添加することも可能である。 ・・・ 【0028】 本発明における内核つまり、口腔内崩壊性錠剤は、口腔内での崩壊時間が1~42秒程度であれば、製法、組成に関して特に制限はされない。例えば、直接打錠法、間接打錠法、鋳型成形法など製剤分野における慣用の方法により製造されるものを用いることができる。このような製法として、例えば湿潤した粒子を打錠して多孔性錠剤を得る製法や、糖類の結晶化など物理化学的性質を利用する製法、凍結乾燥技術を用いた製法、クロスポビドンなどの崩壊剤を利用した製法、外部滑沢剤法を用いた製法などが挙げられる。」 (摘示事項1E)段落0032 「【0032】 参考例1 マンニトール(ペアリトール300DC、ロケットジャパン)を96.745重量部(以下「部」と略記する。以下も特に断らない場合には同様とする。)秤り目開き1mmのMeshで篩過し、流動層造粒機(FLO-5、フロイント産業)に投入した。次にこの顆粒に対しナルフラフィン塩酸塩を0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物0.1部を蒸留水に溶解したスプレー液を噴霧し、造粒顆粒を製造した。次にマンニトール(ペアリトール50C、ロケットジャパン)を25.87部秤りとり目開き1mmのMeshで篩過し、クロスポビドン(Kollidon CL、BASF)6.5部と共に攪拌造粒機(NMG-3L、奈良機械)に投入した。次に三二酸化鉄(癸巳化成)を0.13部分散させた蒸留水を加えながら造粒し、造粒物を製造した。流動層造粒機にて製造した造粒顆粒および攪拌造粒機にて製造した造粒顆粒を、それぞれコーミルを使用して処理し整粒顆粒を得た。整粒顆粒129.35部に対してステアリン酸マグネシウム(大平化学産業)、0.65部添加して5分間混合した。得られた顆粒を、打錠機(Correct19、菊水製作所)を用いて130mgのWR錠剤とした。」 (摘示事項1F)段落0033 「【0033】 実施例1 PVA(ポリビニルアルコール4-88、メルク)10部、マルチトール(MALTISORBP200、ロケットジャパン)90部を蒸留水に溶解し、固形分10重量%の被覆液を調製した。参考例1により製造した口腔内崩壊性錠剤200gをフィルムコーティング機(DRC-200、パウレック)に投入し、被覆液を噴霧し130mgの錠剤に対して1.95mgの被覆層を有する131.95mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。」 (摘示事項1G)段落0052 「【0052】 実施例13 実施例1の被覆液が、PVA30部、トレハロース(トレハロースG、旭化成ケミカルズ)40部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。」 (摘示事項1H)段落0076 「【0076】 本発明は、種々の薬物に対しても適応が可能である。特に、これまで適応が困難であった光に不安定な薬物の口腔内崩壊性錠剤化を達成することができる。また錠剤の硬度を向上するとともに摩損性も顕著に改善し、これらの効果により、これまで一包化包装不可であった口腔内崩壊錠に対しても、一包化包装が可能となり、患者の服薬コンプライアンスを改善し、治療効果を向上させることができる。」 甲第2号証 (摘示事項2A)段落0001 「[0001] 本発明は、4,5-エポキシモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩の安定な固形製剤に関する。更に詳しくは、4,5-エポキシモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分として、チオ硫酸ナトリウム、糖類もしくは糖アルコール類、および有効成分を含有するユニット重量あたり1~30重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有することを特徴とする安定な固形製剤に関する。」 (摘示事項2B)段落0005 「[0005] 一方、乳糖またはマンニトール、エリスリトールなどの糖類もしくは糖アルコール類を含有し、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有した固形製剤として、服用コンプライアンスの改善を目的とした、水なしでも服用できる口腔内崩壊型の錠剤が開示されている。有効成分と糖アルコール類と特定のヒドロキシプロポキシル基の置換度や嵩密度を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有し崩壊性を向上した組成物(例えば特許文献7(特開平11-43429号公報)、特許文献8(特開2001-328948号公報)参照)、あるいは口腔内での崩壊時間を早めるため、ステアリン酸マグネシウムの添加量を最小限にした外部滑沢打錠法(例えば、特許文献9(国際公開第2003/103713号パンフレット)参照)、滑沢剤のエタノール浸透速度を規定した手法が開示されている(例えば、特許文献10(国際公開第2001/076565号パンフレット)参照)。しかし、本発明の固形製剤は口腔内で崩壊する必要はないためこれらの課題とは本質的に異なる。なにより、いずれの報告にもチオ硫酸ナトリウムの記載はなく、その安定化効果についての記載もなく、これらの報告から本発明を容易に類推することは出来ない。」 (摘示事項2C)段落0010 「[0010] そこで本発明者らは、一般式(I)で表される4,5-エポキシモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩の安定な固形製剤を開発すべく鋭意検討を行った結果、4,5-エポキシモルヒナン誘導体とチオ硫酸ナトリウム、糖類もしくは糖アルコール類を共存させることにより顕著な安定化効果が得られるという知見を得た。またその一方で、製剤化に一般的に用いられる例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、またはクロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムのような崩壊剤を添加した場合は分解が促進されることを見出した。しかし、驚くべきことに、崩壊剤の中でも低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに限っては、チオ硫酸ナトリウム、糖類もしくは糖アルコール類と共存させることにより、4,5-エポキシモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩を固形製剤中で安定に存在し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (摘示事項2D)段落0023 「[0023] 本発明において一般式(I)で表される4,5-エポキシモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される塩として特に好ましいのは、17-(シクロプロピルメチル)-3,14β-ジヒドロキシ-4,5α-エポキシ-6β-[N-メチル-トランス-3-(3-フリル)アクリルアミド]モルヒナン塩酸塩(以下、化合物1という)、17-(シクロプロピルメチル)-3,14β-ジヒドロキシ-4,5α-エポキシ-6β-[N-メチル-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)プロピオルアミド]モルヒナン塩酸塩(以下、化合物2という)である。」 甲第3号証 (摘示事項3A)明細書5頁10~13行 「本発明は、上述したような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製剤の取扱いにおいて必要とされる適切な強度を有し、しかも口腔内において速やかに崩壊する口腔内崩壊型組成物及び口腔内崩壊型製剤を提供することにある。」 (摘示事項3B)明細書5頁23行~6頁17行 「即ち、口腔内崩壊型組成物は、口腔内で速やかに崩壊する成型組成物であって、糖アルコールから成る賦形剤と、崩壊剤と、滑沢剤を含有して成り、この滑沢剤に対するエタノールの浸透速度が3.0×10-3g2/sec以上であることを特徴とする。 この場合、上記滑沢剤に対するエタノールの浸透速度が5.0×10-3g2/sec以上であることが望ましい。 また、本発明の口腔内崩壊型組成物の好適形態は、上記滑沢剤が、ロイシン及び又はフマル酸ステアリルナトリウム、あるいはステアリン酸及び/又はタルクであることを特徴とする。 更に、本発明の口腔内崩壊型組成物の他の好適形態は、上記糖アルコールがマンニトール及び又はエリスリトールであることを特徴とする。 更にまた、本発明の口腔内崩壊型組成物の更に他の好適形態は、上記崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン及びバレイショデンプンから成る群より選ばれた少なくとも 1種の難水溶性の結合性崩壊剤であるか、あるいはクロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、水酸化アルミナマグネシウム、炭酸マグネシウム及びリン酸二水素カルシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする。」 (摘示事項3C)明細書8頁3~14行 「更に、本発明で用いる所定の滑沢剤は、この崩壊型組成物が口腔内で崩壊する際、組成物内部への水の浸入を容易にする機能を有し、当該滑沢剤に対するエタノールの浸透速度が3.0×10-3g2/秒以上であるものが該当する。 具体的には、ロイシン、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク及びステアリン酸等を挙げることができ、ロイシン及びフマル酸ステアリルナトリウムを好適に用いることができ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することが可能である。 なお、本発明においては、従来から頻用されているステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤であってもエタノールの浸透速度が3.0×10-3g2/秒未満のもの自体の使用は望ましくなく、このような滑沢剤の使用は組成物や製剤の崩壊時間の延長を招く。」 (摘示事項3D)明細書9頁6~17行 「本発明の口腔内崩壊型組成物における上記各成分の配合比は、特に限定されるものではないが、後述する錠剤強度と口腔内崩壊時間を実現できるように処方することが好ましく、代表的には、上記賦形剤を32~99.2%、上記崩壊剤を0.5~60%、上記滑沢剤を0.3~8.0%の割合で配合することが望ましい。 なお、上記結合性崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合、その配合量は10~40%が適量であり、結晶セルロース又はヒドロキシプロピルスターチを用いる場合、その配合量は10~60%が適量である。また、上記崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウムを用いる場合、その配合量は0.5~5%とすることが好ましい。クロスポビドンを用いる場合は、その配合量は2~20%が適量である。」 (摘示事項3E)明細書12頁4~15行 「・・・図2は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース系処方錠剤の口腔内崩壊時間と該錠剤に使用した滑沢剤に対するエタノールの浸透速度の関係を示すグラフ・・・である。 なお、図中で滑沢剤を次のように略記する。 Leucine…L-ロイシン、Mg-St…ステアリン酸マグネシウム、Ca-St…ステアリン酸カルシウム、SSF…フマル酸ステアリルナトリウム、Talc…タルク、SEFA…ショ糖脂肪酸エステル、St…ステアリン酸」 (摘示事項3F)明細書14頁下から4行~16頁・表2 「(実施例1) [結合性崩壊剤がヒドロキシプロピルスターチの場合] 60のマンニトール粉末と、40gのヒドロキシプロピルスターチ粉末を乳鉢で約5分間混合した。得られた混合物100gに対して15mlの精製水を添加し、約5分間混合して造粒した後、目開き1700μm(10メッシュ)の篩を通し、60℃で4時間乾燥した。この乾燥混合物を目開き600μm(28メッシュ)の篩を介して整粒し、顆粒を得た。 得られた顆粒の14.55gに対し、上記滑沢剤の1種を選択して全体重量に対して3%(0.45g)になるように添加した。 次いで、この顆粒を蓋付き容器に充填し、この容器をタービュラーシェーカー(Willy A.Bachofen AG Machinenfabrik type:T2C)で50回転処理に供し、滑沢剤を顆粒になじませて滑沢化を行った。 しかる後、滑沢化を行った顆粒を、表2に示すように、錠剤硬度が約20~30Nになるような圧力で油圧式プレスを用いて圧縮し、錠剤に成型した。なお、錠剤形状は直径7.94mm、重量200mgの隅角平錠である。得られた錠剤につき上述の性能評価を行い、その結果を表2に示した。なお、滑沢剤として、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Ca又はショ糖脂肪酸エステルを用いたものは、本発明の範囲外の処方に相当する。 [図:0001397656000001.jpg] 」 (摘示事項3G)明細書16頁1行~17頁・表3 「(実施例2) [結合性崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの場合] 90gのマンニトール粉末と、10gの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を乳鉢で約5分間混合した。得られた混合物100gに対して20mlの精製水を添加し、約5分間混合して造粒した後、目開き1700μm(10メッシュ)の篩を通し、60℃で4時間乾燥した。この乾燥混合物を目開き600μm(28メッシュ)の篩を介して整粒し、顆粒を得た。 以下、実施例1と同様に錠剤を調製し性能評価を行った。但し、錠剤硬度は約30~40Nになるように圧縮成型した。その結果を表3に示した。なお、滑沢剤として、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Ca又はショ糖脂肪酸エステルを用いたものは、本発明の範囲外の処方に相当する。 [図:0001397656000002.jpg] 」 (摘示事項3H)明細書18頁1~7行 「上述した実施例1~3の処方系ごとに、横軸に錠剤の口腔内崩壊時間、縦軸に該錠剤に使用した滑沢剤に対するエタノールの浸透速度をとった相関図を図1~図3に示す。 これらの図から分かるように、浸透速度が5×10-3g2/秒以上であるロイシン・・・はいずれの処方系でも口腔内崩壊時間が最短の群(30秒以内)に属し口腔内崩壊時間短縮に有用であることがわかった。」 (摘示事項3I)図面1/2頁の図2 「 [図:0001397656000003.jpg] 」 甲第4号証 (摘示事項4A)155頁「要旨」 「要旨 口腔内崩壊錠は、患者のコンプライアンスの向上、医療現場での利便性に寄与する剤形として国内外で広く開発されている。口腔内での崩壊性を重視する剤形の性質上、必ずしも十分な錠剤硬度を付与することができず、割れや摩損しやすいという課題がある。また、多くの口腔内崩壊錠が実用化されているが、特殊な設備を必要とするものも多く、一般的な設備で製造可能な口腔内崩壊錠が望まれている。本報では、一般的な攪拌造粒法により、硬度と口腔内崩壊時間のバランスに優れる口腔内崩壊錠用の処方検討を行った。医薬用途で用いられる糖質の中でも、成形性の高いトレハロースと、結晶セルロースの高成形性グレードである「セオラス」KG-802とを用いることで、硬度と崩壊性のバランスに優れた口腔内崩壊錠が得られた。これらの高成形性の添加剤を用いることにより、低打圧で実用硬度が得られるようになり、その結果、錠剤厚みを厚くでき、唾液の浸透が促進されて崩壊を速くすることができる。・・・」 (摘示事項4B)156頁左欄本文下から9~6行 「Fig.2に糖類の成形性を示す。トレハロースは医薬用途で用いられる糖類の中でも成形性に優れるものである。口腔内崩壊錠では糖類がよく用いられるが、トレハロースを用いると硬度の高い錠剤が得られる。」 (摘示事項4C)156頁右欄・Fig.2 「 [図:0001397656000004.jpg] 」 (摘示事項4D)156頁右欄下から5行~157頁右欄1行 「(1)トレハロース、「セオラス」KG-802の配合比 アセトアミノフェン(以下、APAPと略記、APIコーポレーション製)をモデル薬物とし、トレハロースP(旭化成ケミカルズ販売)、「セオラス」KG-802(旭化成ケミカルズ製)を用いて、トレハロースPと「セオラス」KG-802の最適比について検討した。・・・結果をTable2に示す。」 (摘示事項4E)157頁・Table2 「 [図:0001397656000005.jpg] 」 甲第5号証 (摘示事項5A)請求項1~4 「【請求項1】 D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、ドンペリドンならびにヒドロキシプロピルセルロースを含有する口腔内崩壊錠。 ・・・ 【請求項3】 さらに、崩壊剤を含有する請求項1または2記載の口腔内崩壊錠。 【請求項4】 崩壊剤が、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびデンプンから選ばれた1つ以上の崩壊剤である、請求項3記載の口腔内崩壊錠。」 (摘示事項5B)【0016】 「【0016】 本発明の口腔内崩壊錠は、崩壊剤、好ましくはクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチおよびデンプン等から選ばれる1つ以上の崩壊剤、より好ましくはクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびデンプンから選ばれる1つ以上の崩壊剤、さらに好ましくはクロスポビドンを、1~30重量%、より好ましくは2~25重量%、さらに好ましくは3~15重量%含有することが好ましい。」 甲第6号証 (摘示事項6A)請求項1~3 「【請求項1】 薬物、稀釈剤、および前記薬物と前記稀釈剤より相対的に融点の低い糖類を含有してなり、該融点の低い糖類が錠剤中に均一に配合され、前記薬物および/または前記稀釈剤粒子を、該融点の低い糖類の溶融固化物により架橋を形成してなる口腔内速崩壊性錠剤。 ・・・ 【請求項3】 融点の低い糖類が、キシリトール、トレハロース、マルトース、ソルビトール、エリスリトール、グルコース、マルチトール、マンニトール、白糖、およびその水和物からなる群より選択される1種または2種以上である請求の範囲1または2に記載の口腔内速崩壊性錠剤。」 (摘示事項6B)9頁43行~10頁22行 「本発明に用いられる融点の低い糖類(以下『糖類』と記すこともある)としては、医薬的に許容され、本発明に用いられる薬物および稀釈剤より相対的に融点の低いものであり、かつ溶融固化し錠剤の形状を維持するものであれば特に制限されないが、好ましくは融点が約80~約180℃の糖類であり、さらに好ましくは約90~150℃の糖類である。かかる糖類としては、例えばグルコース(一水和物、融点83℃)、キシリトール(融点93℃)、トレハロース(二水和物、融点97℃)、・・・などが挙げられる。・・・最適には、糖類自体が吸湿しにくいため取扱い容易なトレハロース、マルトース、エリスリトール、またはマルチトールであり、とくにトレハロースおよび/またはエリスリトールである。本発明の糖類は、適用される薬物の化学的特性、すなわち薬物の温度に対する安定性を考慮して適宜選択することができる。また、かかる糖類は1種または2種以上組合せて用いることができる。・・・本発明に用いられる糖類(『融点の低い糖類』)の配合量は、薬物の用量および/または錠剤の大きさに応じ適宜調整されるが、・・・薬物、および稀釈剤を含有してなる錠剤の形状を維持し得る量であれば特に制限されない。・・・したがって、本発明に用いられる『融点の低い糖類』の配合量は、通常薬物および/または本発明に用いられる稀釈剤の重量に対し、0.5~25w/w%であり、好ましくは2~20w/w%であり、さらに好ましくは、5~10w/w%であるか、もしくは、製剤全体の2~20w/w%である。」 (摘示事項6C)16頁下から7~2行 「(考察) トレハロースは成形性が高く、非晶質になる糖類である。本試験例の結果、トレハロースは25℃60%RH条件および従来の加湿乾燥条件で容易に結晶化することが明らかとなった。また、トレハロースを結晶化させた後は、25℃60%RH条件で安定であった。したがって、加熱処理を用いた口腔内速崩壊性錠剤の調製において、トレハロースは有用な糖類のひとつであることが示された。」 (摘示事項6D)17頁4~18行 「実施例1(前記試験例3、錠剤B、1群) マンニトール(東和化成工業(株)製)450gを篩い(20mesh)で篩過後、トレハロース(林原商事(株)製)水溶液(20w/v%)250gを結合剤として流動層造粒機(大川原製作所製)を用いて造粒した。この造粒物にステアリン酸マグネシウム0.5%を配合し、ロータリー打錠機を用いて打錠圧約0.1t/杵にて1錠あたり200mgの錠剤を製した((φ8.5mm、10.2mmR)、錠剤硬度0.8kp(n=5))。次にこの錠剤をプログラムオーブン(型番MOV-112P、サンヨー社製)を用いて、140℃で9分間加熱し、その後、室温にて30分間放置した。このとき、トレハロース結晶由来の吸熱ピークの消失をDSCを用いて確認し、トレハロースが非晶質であることを確認した。続いて、本錠剤を恒温恒湿機(タバイエスペック(株)製、PR-35C)を用いて25℃/75%RHの加温、加湿下に18時間保存した。その後、30℃(湿度40%)で3時間乾燥し、本発明錠剤を得た。得られた錠剤は硬度6.4kp(n=5)、磨損度0.66%(100回転)、口腔内崩壊時間20秒(n=1)、空隙率30.6%を示した。また、得られた錠剤において、DSCを用いて測定した結果、トレハロース結晶由来の吸熱ピークが認められ、トレハロースが結晶化したことが確認された。」 (摘示事項6E)22頁5~14行 「産業上の利用の可能性 本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、従来の口腔内速崩壊性錠剤に比し、口腔内における崩壊時間を延長させることなく、錠剤強度を高め、特に磨損度を低く抑え、通常の経口医薬用錠剤とほぼ同じ特性を兼ね備えたものであるので、自動分包機に適用することができる。また、本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、用量の大きな薬物にも適用することができる。さらに、本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、通常の経口医薬用錠剤と同様に、口腔内で崩壊させることなく服用することや、水と一緒に服用することもできる。さらにまた、本発明の錠剤をコップなどに入れた水などに溶解した後、服用することもできる。 本発明の口腔内速崩壊性錠剤およびその製造方法は、通常の打錠機により製造され、種々の薬物に適用することができるので、汎用性の高い製剤技術である。」 甲第7号証 (摘示事項7A)請求項1~9 「【請求項1】 (a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)崩壊剤、(e)粉末状の甘味剤を含有し、口腔内における崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上であることを特徴とする口腔内崩壊錠。 ・・・ 【請求項6】 (b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールが、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール及びラクチトールからなる群より選択される少なくとも1の平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒物である請求項1記載の口腔内崩壊錠。 ・・・ 【請求項9】 (d)崩壊剤が、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース及びヒドロキシプロピルスターチからなる群より選ばれる少なくとも1である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。」 (摘示事項7B)【0020】~【0029】 「【0020】 糖アルコールは、口腔内崩壊錠の賦形剤として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。糖アルコールは、例えば、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール及びラクチトールなどが挙げられる。 ・・・ 【0024】 本発明の口腔内崩壊錠は、(d)崩壊剤を含有する。(d)崩壊剤は、服用時における崩壊性を向上させる役割を有する。(d)崩壊剤は、口腔内崩壊錠の崩壊剤として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。(d)崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルスターチなどが挙げられる。特に、とりわけ崩壊性がよい観点から、クロスポビドンが好ましい。また、(d)崩壊剤の含量は、機械的強度を損なわないようにする観点から、口腔内崩壊錠の全重量に対して、約5~15重量%であることが好ましい。 ・・・ 【0029】 滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸、硬化ナタネ油、硬化ひまし油、グリセリン脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-ロイシン及びL-バリン等が挙げられる。」 甲第8号証 (摘示事項8A)請求項1 「【請求項1】 フルボキサミンマレイン酸塩を主薬として含有する医薬組成物であって、滑沢剤としてL-ロイシンを含む、医薬組成物。」 (摘示事項8B)【0004】 「【0004】 一般的に錠剤を製造する場合、主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤や滑沢剤などの助剤を加え、製剤としている。主薬の性質に合わせ適切な助剤を検討するのであるが、しばしば主薬と助剤の相互作用が問題となる。このフルボキサミンマレイン酸塩錠剤においても、主薬と滑沢剤との相互作用が問題となった。例えば特許文献3では、フルボキサミンマレイン酸塩錠剤において、滑沢剤として最も汎用されているステアリン酸塩やフマル酸ステアリルナトリウムを用いたところ、錠剤の保存中に主薬が分解してしまい、主薬の含有量が減少し、さらには錠剤の変色が引き起こされるという安定性の問題を開示している。」 (摘示事項8C)【0010】 「【0010】 滑沢剤は、錠剤を製造する際に粉体の流動性の改善や粉体の杵への付着を低減し良好な打錠性を確保するために、通常用いられる。本発明者らが見いだしたところによれば、フルボキサミンマレイン酸塩錠剤において、滑沢剤としてタルクや硬化油を用いたところ、打錠時に粉体が杵に付着し、打錠性が悪化してしまうという、新たな課題が明らかになったのである。この新たな課題は、前記した特許文献3には開示も指摘も一切されておらず、むしろ特許文献3には滑沢剤として硬化油やタルクを用いることで、打錠時に良好な滑沢作用を発揮すると記載されている。」 (摘示事項8D)【0012】 「【0012】 本発明者らは、フルボキサミンマレイン酸塩の保存安定性に優れ、かつ、良好な打錠性を有する滑沢剤について、種々のフルボキサミンマレイン酸塩錠剤の処方につき鋭意検討した結果、滑沢剤としてL-ロイシンを用いることで、前記2つの課題を同時に解決できるという知見を見いだし、本発明を完成させた。」 (摘示事項8E)実施例1 「【0031】 [試験錠剤の調製] [実施例1] フルボキサミンマレイン酸塩、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、および、バレイショデンプンを乳鉢にて混合し、これに精製水を加え練合造粒した。得られた造粒物を通気式乾燥機(富山産業株式会社)にて60℃で乾燥し、篩(22号)にて整粒したのち、袋中にてL-ロイシンと混合した。この混合物を、単発打錠機(φ6R面、菊水製作所株式会社)にて打錠し、フルボキサミンマレイン酸塩を50mg含有する錠剤を調製した。 ・・・ 【0034】 【表2】 [図:0001397656000006.jpg] 【0035】 各錠剤の打錠性、および、保存安定性について以下の方法により評価を行った。 [打錠性試験方法] 各錠剤について50錠を打錠した後の杵表面を目視観察し、次の基準により打錠性を評価した。その結果を表3に示した。 杵へ殆ど付着しない :- 杵中央が僅かに曇る :± 杵全面が白く曇る :+ 杵全面が白く曇り、粉末が固着 :++ 【0036】 [保存安定性試験方法] 各錠剤を 条件(1)60℃、10%RH以下、 条件(2)60℃、60%RH、 の環境下に開栓状態で2週間保存した。各錠剤中の主薬の化学変化に由来する類縁物質をHPLCで、色調の変化を色差計で測定し、その結果を表3に記載した。 ・・・ 【0038】 錠剤の色調は分光式色差計SE-2000(NIPPONDENSHOKU)を用いて測定し、色差(ΔE)は各錠剤のイニシャルを0とした。 【0039】 【表3】 [図:0001397656000007.jpg] 表中、N.D.は、未検出または0.01%未満を意味する。表中、Int.は、イニシャル(各環境条件に保存する前)を意味する。 【0040】 [試験結果] ステアリン酸カルシウムを滑沢剤として用いた比較例1は、比較的良好な打錠性を有していたものの、試験例1の結果と同様に類縁物質が大きく増加し、また錠剤の色調も大きく変化していた。ステアリン酸を滑沢剤として用いた比較例3は、打錠性が悪く、類縁物質の増加も大きかった。硬化油あるいはタルクを滑沢剤として用いた比較例2および4は、類縁物質の増加は小さく、また錠剤の色調の変化も殆どなかったが、打錠時に粉末が杵に固着してしまうことが判明した。以上の比較例1から4の滑沢剤は、それぞれに助剤として好ましくない点が存在し、フルボキサミンマレイン酸塩錠剤における使用は不適と考えられた。 【0041】 一方、L-ロイシンを滑沢剤として用いた実施例1は、打錠時に杵に粉体が付着することなく良好な打錠性を有し、その上、錠剤の保存においても、類縁物質の増加は小さく、また錠剤の色調も殆ど変化しなかった。従って、フルボキサミンマレイン酸塩錠剤の調製において、L-ロイシンは非常に好ましい滑沢剤であり、L-ロイシンを滑沢剤として用いたフルボキサミンマレイン酸塩錠剤は、保存安定性に優れ、かつ、良好な打錠性を有する製剤であることが判明した。」 甲第9号証 (摘示事項9A)請求項1~4 「【請求項1】 塩酸テモカプリルを主薬とし、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含んでなる錠剤において、滑沢剤としてステアリン酸及び/又はL-ロイシンを使用したことを特徴とする保存安定性に優れた塩酸テモカプリルの錠剤。 ・・・ 【請求項4】 崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1に記載の錠剤。」 (摘示事項9B)【0005】 「【0005】 ・・・ そこで、汎用されている他の助剤を用いて錠剤を調製し、その温度や湿度に対する安定性、崩壊性を調べたところ、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムやカルボキシメチルスターチナトリウム、滑沢剤のステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムなど、金属を含む助剤も塩酸テモカプリルを不安定にすることが判明した。 ところが滑沢剤としてステアリン酸及び/又はL-ロイシンを用いると、高温、高湿条件下でも主薬含量の低下や分解物の増加は認められないことを突き止めた。さらに、賦形剤として乳糖またはマンニトールを、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いると、錠剤の崩壊性は一段と良好になり、崩壊時間が大幅に改善された。」 (摘示事項9C)【0011】~【0014】 「【0011】 本発明においては滑沢剤としてステアリン酸及び/又はL-ロイシンが用いられるが、その配合量は、製剤中0.5~10重量%、好ましくは、1~6重量%である。 【0012】 本発明の錠剤では、滑沢剤の他、特定の賦形剤、崩壊剤及び結合剤の助剤を用いるとより安定且つ崩壊性に富んだ錠剤とすることができる。 賦形剤とは、容積を増やすための添加物であり、一般には糖類(乳糖、マンニトール)、デンプン類(トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン)、セルロース類(結晶セルロース)等を挙げることができるが、本発明においては乳糖又はマンニトールが好ましい。その配合量は、製剤に対して25~90重量%、好ましくは70~90重量%である。 【0013】 崩壊剤は、錠剤を内服後、固体の製剤の速やかな崩壊を促すための成分であり、一般には低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が用いられるが、本発明においては低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いる。その配合量は錠剤中、5~15重量%が適当である。 【0014】 結合剤は、粒子間の結合を強化し、流動性や均一性を向上させるための添加剤であり、一般にはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができるが、本発明においてはヒドロキシプロピルセルロースが好ましく用いられる。その配合量は錠剤中、1~15重量%、好ましくは3~6重量%である。」 (摘示事項9D)【0019】 「【0019】 本発明の主薬として塩酸テモカプリルを、滑沢としてステアリン酸及び/又はL-ロイシンを含有する錠剤は、高温多湿下においても主薬の分解率が低い。さらに賦形剤として乳糖マンニトールを、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いると、錠剤の崩壊性は一段と良好になり、崩壊時間が大幅に改善される。」 (摘示事項9E)実施例1、3 「【0023】 [試験製剤]塩酸テモカプリル3g、乳糖水和物もしくはD-マンニトール適量、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース30gをハイスピードミキサー中で3分間混合した。次にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(固形分10.5g)を添加し、ハイスピードミキサーにより湿式練合法により造粒を行った。得られた造粒物を60℃で乾燥、整粒し、ステアリン酸および/又はL-ロイシンを添加後、V型混合機にて7分間混合して打錠前粉末300gを得た。この粉末を単発打錠機にて打錠(打圧約800kg)し、厚み約2.30mm、径約6.5mm、重量約100mgの錠剤を製した。ステアリン酸もしくはL-ロイシンに代えて、ステアリン酸Mgあるいは硬化油、ショ糖脂肪酸エステルを用いて同様に錠剤を調製し、比較例とした。調整した錠剤の組成を表2に掲げる。 【0024】 【表2】 [図:0001397656000008.jpg] 【0025】 [試験方法]各錠剤を60℃、60%RHの環境下で2週間保管後、錠剤中の主薬含量および加水分解物量をHPLC法により測定するとともに、錠剤の色差変化と水中での崩壊時間を評価した。 その試験結果を表3に示した。 【0026】 【表3】 [図:0001397656000009.jpg] 【0027】 [試験結果]ステアリン酸Mgを配合した比較例錠剤は変色が著しく、かつ錠剤中の主薬含量も約60%と大きく低下するとともに、加水分解物量は対主薬25%まで増加していた。また、硬化油およびショ糖脂肪酸エステルを配合した錠剤は、錠剤外観の変化や主薬の分解は抑えられたものの、錠剤の崩壊時間が製造直後の2~3分から10分もしくは30分と著しく遅延していた。 これに対し、ステアリン酸および/又はL-ロイシンを添加した錠剤は、主薬含量の低下や加水分解物量の増加が抑えられ、なおかつ錠剤の崩壊遅延もない、優れた製剤であることが判明した。」 甲第10号証 (摘示事項10A)2頁「3.実験方法(1)、(2)」 「3.実験方法 (1)ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の製造 本件特許明細書実施例1記載の方法に従い、請求項1に記載の特徴を充足する2処方(表1)のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を製造した。すなわち、ナルフラフィン塩酸塩0.0025部を精製水に溶解し、トレハロース水和物(旭化成製、P)10.0部およびヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC-SSL)6.0部を混合し、この混合物にナルフラフィン溶液と精製水を添加し、練合した。さらに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製、LH-21)8.0部を加えて練合し、棚式乾燥機で40℃、90分乾燥、整粒して整粒末を得た。得られた整粒末に結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、PH102)33.9975部、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、UF702)49部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製、NBD-021)6部、アスパルテーム(味の素製)1.6部を混合し、さらにL-ロイシン(味の素製)5.4部を混合して、ナルフラフィンを含む打錠前粉末を得た。このナルフラフィンを含む打錠前粉末を打錠することにより、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 [図:0001397656000010.jpg] (2)保存条件 ガラス瓶に密栓し、40℃にて3日間保管した。」 (摘示事項10B)3頁「4.実験結果」 「4.実験結果 本件特許明細書実施例1記載の処方および処方Aについて、40℃密栓条件で3日間保管した後の、ナルフラフィンの残存率を表2に示す。 [図:0001397656000011.jpg] 」 (摘示事項10C)3頁「5.結語」 「5.結語 本件特許の請求項1に記載のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンとを含むことを特徴としている。しかし、本件特許の特徴を充足する製剤(本実験証明成績書に記載した処方A)において、本件特許比較例1を下回る安定性しか得られず、本件特許の効果が得られないことは明らかである。」 甲第16号証 (摘示事項16A)11~12頁 「 [図:0001397656000012.jpg] 」 (摘示事項16B)13~17頁 「 [図:0001397656000013.jpg] [図:0001397656000014.jpg] [図:0001397656000015.jpg] 」 (摘示事項16C)18頁 「 [図:0001397656000016.jpg] 」 (摘示事項16D)25~26頁 「 [図:0001397656000017.jpg] 」 2 乙号証の記載事項 乙第4号証、乙第12号証には、以下の記載がある。 乙第4号証 (摘示事項乙4A)29~30頁 「 [図:0001397656000018.jpg] 」 (摘示事項乙4B)34、36頁 「 [図:0001397656000019.jpg] [図:0001397656000020.jpg] 」 乙第12号証 (摘示事項乙12A)126頁「III 錠剤」の「(1) 素錠(裸錠)」 「(1) 素錠(裸錠) 最もシンプルな錠剤であるが,粉末や顆粒を圧縮した場合には錠剤の表面が粗になりやすいため,滑りにくく,微粉末が発生しやすい,光や湿度の影響を受けやすい,苦味を有した医薬品の場合には服用しにくいなどの欠点を有している.」 (合議体注:上記の(1)は、原文では丸の中に1である。) 第6 当審の判断 当審は、以下のとおり判断する。 本件発明1~5の特許は、無効理由1によって無効にすべきものであるとはいえない。 本件発明1~5の特許は、無効理由2によって無効にすべきものであるとはいえない。 本件発明1~5の特許は、無効理由3によって無効にすべきものであるとはいえない。 その理由は、以下のとおりである。 1 本件明細書に記載された事項 本件明細書には、次のとおりの記載がある。 (1)【技術分野】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に関する。特に、本発明は、各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に関する。」 (2)【背景技術】 「【背景技術】 【0002】 ナルフラフィン((2E)-N-[(5α,6β)-17-(cyclopropylmethyl)- 3,14-dihydroxy-4,5-epoxymorphinan- 6-yl]- 3-(3-furyl)- N-methylacrylamide)は、そう痒症を改善するオピオイドκ受容体選択的作動薬である。 【0003】 マウスを用いた非臨床試験において、ナルフラフィンはヒスタミン、サブスタンスP、およびモルヒネによる痒みに対して抑制作用を示す。このため抗ヒスタミン薬など既存薬が無効な痒みにも効果を示す新しい作用機序を有するそう痒改善薬として有用である。実際、血液透析患者および慢性肝疾患患者におけるそう痒症改善薬として東レ株式会社よりレミッチ(登録商標)カプセル(REMITCH(登録商標))が販売されている(非特許文献1、特許文献1)。また特許文献2には、ナルフラフィン含有錠剤が開示されている。 【0004】 さらに利便性の向上した剤形である、水なしで服用できるナルフラフィンの口腔内崩壊錠に対する期待も高まりつつある。一般に口腔内崩壊錠は、口腔内の唾液のみ又は少量の水で速やかに崩壊するため、患者が服用しやすい固形製剤であるが、安定性を損なわないようにする工夫が必要となる。 【0005】 しかしながら、各種剤形検討が進められる中で、ナルフラフィンが溶液剤処方中では安定であるのに対して、固形剤処方中では十分な安定性が得られないことが報告された(非特許文献2)。」 (3)【発明が解決しようとする課題】 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、上述の課題を解決するものであって、各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。 【0009】 本発明の一実施形態によると、ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンまたはショ糖脂肪酸エステルとを含有することを特徴とするナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が提供される。」 (4)【0017】、【0018】 「【0017】 本発明に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンまたはショ糖脂肪酸エステルを含むことを特徴とする。ナルフラフィン塩酸塩は例えば、1錠120mgあたり2.5μgとなるよう含有してもよいが、これに限定されるものではない。 【0018】 本発明者らは、エリスリトール、カルメロース、およびステアリン酸マグネシウムがナルフラフィンの安定性に悪影響を及ぼすことを見出した。これらに代わる添加剤のスクリーニングを行った結果、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における賦形剤としてトレハロース、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、滑沢剤としてL-ロイシンまたはショ糖脂肪酸エステルを用いることにより、各種保存条件においてもナルフラフィンの安定性の低下が生じないことを見出した。」 (5)(比較例1) 「【0027】 (比較例1) 比較例1においては、ナルフラフィン塩酸塩100mgを精製水30gに溶解し、ナルフラフィン溶液を得た。次にエリスリトール(日研化成製、100M)320gおよびヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社、HPC-SSL)8gを混合し、この混合物にナルフラフィン溶液と精製水80gを添加し、練合した。さらに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学製、LH-21)320gを加えて練合し、コーミル(QC-197S、メッシュサイズ6.35mm)にて粗砕した後、棚式乾燥機で40℃90分乾燥し、コーミル(QC-197S、メッシュサイズ1.143mm)にて整粒して整粒末を得た。得られた整粒末に結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社、PH102)3559.9g、カルメロース(ニチリン化学製、NS300)480g、アスパルテーム(味の素製)64gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム(大平化学製)48gを混合して、ナルフラフィンを含む打錠前粉末を得た。このナルフラフィンを含む打錠前粉末を打錠することにより、比較例1に係る素錠を得た。 【0028】 (安定性―定量試験) 比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠をアルミ分包包装したものを、冷所、室温条件下で4カ月保存後、または加速条件下(40℃、75RH)で1または3カ月保存後、高速液体クロマトグラフィーを用いてナルフラフィンを定量した。冷所条件下で保存後のナルフラフィン量を100%としたときの、各種条件下で保存後のナルフラフィンの定量値を表1に示す。 【表1】 [図:0001397656000021.jpg] 【0029】 表1の結果から、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠において、特に加速条件下でのナルフラフィン定量値の低下が認められた。 【0030】 (安定性試験―純度) 比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、冷所、室温条件下で4カ月保存後、または加速条件下(40℃、75RH)で1または3カ月保存後、LC/MSを用いてナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の純度を測定した。LC/MSによるナルフラフィンおよび各種類縁物質含有量の測定結果を表2に示す。 【表2】 [図:0001397656000022.jpg] 【0031】 表2の結果から、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠において、特に加速条件下で保存後にNLF-6などの類縁物質の増加が認められた。しかしながら、定量値に影響を与えるほどのナルフラフィン純度の低下はみられなかった。」 (6)【実施例】(実施例1) 「【実施例】 【0026】 上述した本発明に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠について、具体例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。 ・・・ 【0032】 (実施例1) 実施例1においては、ナルフラフィン塩酸塩300mgを精製水90gに溶解し、ナルフラフィン溶液を得た。次にトレハロース水和物(旭化成製、P)1200gおよびヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC-SSL)24gを混合し、この混合物にナルフラフィン溶液と精製水240gを添加し、練合した。さらに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製、LH-21)960gを加えて練合し、コーミル(QC-197S、メッシュサイズ6.35mm)にて粗砕した後、棚式乾燥機で40℃、90分乾燥、コーミル(QC-197S、メッシュサイズ1.143mm)にて整粒して整粒末を得た。得られた整粒末に結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、PH102)4079.7g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、UF702)6576g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製、NBD-021)720g、アスパルテーム(味の素製)192gを混合し、さらにL-ロイシン(大和薬品製)648gを混合して、ナルフラフィンを含む打錠前粉末を得た。このナルフラフィンを含む打錠前粉末を打錠することにより、実施例1に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0033】 (安定性―定量試験) 実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、遮光密閉40℃の条件下で1、2、4週間保存後、高速液体クロマトグラフィーを用いてナルフラフィンを定量した。開始時のナルフラフィン量を100%としたときの、遮光密閉40℃の条件下で保存後のナルフラフィンの定量値を表3に示す。 【表3】 [図:0001397656000023.jpg] 【0034】 表3の結果から、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠において、遮光密閉40℃で保存条件下でも、比較例1でみられたナルフラフィン定量値の低下を抑制することができた。 【0035】 (安定性―純度試験) 実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、遮光密閉40℃の条件下で1、2、4週間保存後、LC/MSを用いてナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の純度を測定した。LC/MSによるナルフラフィンおよび各種類縁物質含有量の測定結果を表4に示す。 【表4】 [図:0001397656000024.jpg] 【0036】 表4の結果から、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠において、遮光密閉40℃で保存条件下でも、比較例1でみられたナルフラフィン純度の低下を抑制することができた。」 (7)【参考例】(参考例1~13) 「【0037】 以下に、実施形態において説明した本発明に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に至った各種検討結果を示す。本発明者らは、比較例1においてナルフラフィン定量値の低下が認められたことから、各添加剤との相互作用によりナルフラフィンの安定性が低下している可能性を考えた。このため各添加剤とナルフラフィンとの接触試験を行い、ナルフラフィンの安定性低下要因を検討した。 【0038】 (参考例1) 参考例1においては、エリスリトール(日研化成製、100M)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0039】 (参考例2) 参考例2においては、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社、HPC-SSL)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0040】 (参考例3) 参考例3においては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社、LH-21)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0041】 (参考例4) 参考例4においては、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社、PH102)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0042】 (参考例5) 参考例5においては、カルメロース(ニチリン化学製、NS300)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0043】 (参考例6) 参考例6においては、アスパルテーム(味の素製)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0044】 (参考例7) 参考例7においては、ステアリン酸マグネシウム(大平化学製)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0045】 (参考例8) 参考例8においては、ナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液の、メタノールを留去した。 【0046】 (接触試験) 参考例1~参考例8のナルフラフィン含有剤を、40℃で3または7日間保存後、内標準物質としてパラオキシ安息香酸を用い、高速液体クロマトグラフィーによってナルフラフィンを定量した。開始時、40℃で3または7日間保存後のナルフラフィンの定量値、および開始時のナルフラフィン量を100%としたときの40℃で3または7日間保存後のナルフラフィンの定量値の比(initial比)を表5に示す。 【表5】 [図:0001397656000025.jpg] 【0047】 表5の結果から、エリスリトールを含む参考例1、カルメロースを含む参考例5、ステアリン酸マグネシウムを含む参考例7のナルフラフィン含有剤において、40℃で7日間保存後のナルフラフィン定量値の低下が認められた。 【0048】 次に、処方比率に合わせた量で各添加剤とナルフラフィンとの接触試験を行い、ナルフラフィンの安定性低下要因を検討した。 【0049】 (参考例9) 参考例9においては、エリスリトール(日研化成製、100M)32mgにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0050】 (参考例10) 参考例10においては、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC-SSL)1.6mgにナルフラフィン20μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0051】 (参考例11) 参考例11においては、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、PH102)355.99mgにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0052】 (参考例12) 参考例12においては、カルメロース(ニチリン化学製、NS300)48mgにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0053】 (参考例13) 参考例13においては、ステアリン酸マグネシウム(大平化学製)4.8mgにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0054】 (接触試験) 参考例9~参考例13のナルフラフィン含有剤を、40℃で3または7日間保存後、内標準物質としてパラオキシ安息香酸を用いて高速液体クロマトグラフィーによってナルフラフィンを定量した。開始時、40℃で3または7日間保存後のナルフラフィンの定量値、および開始時のナルフラフィン量を100%としたときの40℃で3または7日間保存後のナルフラフィンの定量値の比(initial比)を表6に示す。 【表6】 [図:0001397656000026.jpg] 【0055】 表6の結果から、エリスリトールを含む参考例9、カルメロースを含む参考例12、ステアリン酸マグネシウムを含む参考例13のナルフラフィン含有剤において、40℃で保存後のナルフラフィン定量値の低下が認められた。」 (8)【参考例】(参考例14~21) 「【0056】 接触試験より、エリスリトール、カルメロース、またはステアリン酸マグネシウムとの相互作用によりナルフラフィンの安定性が低下している可能性が考えられた。このため、これらの添加剤を比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠から除くことで、ナルフラフィンの安定性の低下を改善できるかどうか検討した。 【0057】 (参考例14) 参考例14においては、ステアリン酸マグネシウム量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0058】 (参考例15) 参考例15においては、カルメロース量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0059】 (参考例16) 参考例16においては、ステアリン酸マグネシウム量およびカルメロース量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0060】 (参考例17) 参考例17においては、エリスリトールを乳糖水和物に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0061】 (参考例18) 参考例18においては、エリスリトールを乳糖水和物に変更し、ステアリン酸マグネシウム量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0062】 (参考例19) 参考例19においては、エリスリトールを乳糖水和物に変更し、カルメロース量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0063】 (参考例20) 参考例20においては、エリスリトールを乳糖水和物に変更し、ステアリン酸マグネシウム量およびカルメロース量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0064】 (参考例21) 参考例21においては、エリスリトールを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-21)に変更し、ステアリン酸マグネシウム量およびカルメロース量を0mgに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得た。 【0065】 (安定性―定量試験) 比較例1、参考例14~参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、40℃密閉条件下で3日間、1、2、4週間保存後、高速液体クロマトグラフィーを用いてナルフラフィンを定量した。各種ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の開始時、40℃密閉保存条件下におけるナルフラフィンの平均定量値(n=2)、および開始時のナルフラフィン量を100%としたときの40℃で3日間、1、2、4週間密閉保存後のナルフラフィンの定量値の比(initial比)を表7および図2に示す。 【表7】 [図:0001397656000027.jpg] 【0066】 表7および図2の結果から、比較例1と比較して、参考例14~参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における40℃密閉条件下で4週間保存後のナルフラフィン定量値の低下は改善した。特に、エリスリトール、ステアリン酸マグネシウム、およびカルメロース量を0mgに変更した参考例20および参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における40℃密閉条件下で4週間保存後のナルフラフィン定量値の低下はほぼ確認されなかった。このことから、エリスリトール、ステアリン酸マグネシウム、およびカルメロースのいずれもが、ナルフラフィンの安定性に影響していることがわかった。 【0067】 (安定性試験―純度) 比較例1、参考例14~参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、40℃密閉条件下で4週間保存後、LC/MSを用いてナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の純度を測定した。LC/MSによるナルフラフィンおよび各種類縁物質含有量の測定結果を表8および図3に示す。 【表8】 [図:0001397656000028.jpg] 【0068】 表8および図3の結果から、比較例1と比較して、参考例14~参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における40℃密閉条件下で4週間保存後のナルフラフィン純度の低下は改善した。特にエリスリトール、ステアリン酸マグネシウム、およびカルメロース量を0mgに変更した参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における40℃密閉条件下で4週間保存後のナルフラフィン純度の低下は大幅に改善した。また、比較例1と比較して、参考例14~参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における40℃密閉条件下で4週間保存後のNLF-6の増加は改善した。特にエリスリトール、ステアリン酸マグネシウム、およびカルメロース量を0mgに変更した参考例21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠における40℃密閉条件下で4週間保存後のNLF-6の増加は大幅に改善した。このことから、エリスリトール、ステアリン酸マグネシウムおよびカルメロースのいずれもが、ナルフラフィンの安定性に影響していることがわかった。」 (9)【実施例と比較例】(実施例2~4、比較例2~8) 「【0069】 エリスリトール、ステアリン酸マグネシウムおよびカルメロースのいずれもが、ナルフラフィンの安定性に影響していることから、各添加剤とナルフラフィンとの接触試験を行い、エリスリトール、ステアリン酸マグネシウムおよびカルメロースに代わる添加剤のスクリーニングを行った。 【0070】 (実施例2) 実施例2においては、トレハロース水和物(旭化成)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0071】 (比較例2) 比較例2においては、乳糖水和物(DMV、200M)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0072】 (比較例3) 比較例3においては、トウモロコシデンプン(日本食品化工製、XX16W)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0073】 (比較例4) 比較例4においては、部分アルファー化デンプン(旭化成、PC-10)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0074】 (比較例5) 比較例5においては、デンプングリコール酸ナトリウム(DMV)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0075】 (比較例6) 比較例6においては、クロスポビドン(BASF製、コリドンCL-F)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0076】 (実施例3) 実施例3においては、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、F-20)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0077】 (実施例4) 実施例4においては、L-ロイシン(大和薬品製)10μgを含むメタノール溶液の、メタノールを留去した。 【0078】 (比較例7) 比較例7においては、フマル酸ステアリルナトリウム(JRSPHARMA)0.1gにナルフラフィン10μgを含むメタノール溶液を添加後、メタノールを留去した。 【0079】 (比較例8) 比較例8においては、ステアリン酸(日油)10μgを含むメタノール溶液の、メタノールを留去した。 【0080】 (接触試験―定量) 実施例2~実施例4、および比較例2~比較例8のナルフラフィン含有剤を、ガラス試験管に入れ、40℃遮光条件下で3日間、1、2、4週間保存後、内標準物質としてパラオキシ安息香酸を用い、高速液体クロマトグラフィーによってナルフラフィンを定量した。開始時、40℃で3日間、1、2、4週間遮光保存後のナルフラフィンの定量値、および開始時のナルフラフィン量を100%としたときの40℃で3日間、1、2、4週間遮光保存後のナルフラフィンの定量値の比(initial比)を表9に示す。 【表9】 [図:0001397656000029.jpg] 【0081】 表9の結果から、部分アルファー化デンプンを含む比較例4、デンプングリコール酸ナトリウムを含む比較例5、クロスポビドンを含む比較例6、フマル酸ステアリルナトリウムを含む比較例7、ステアリン酸を含む比較例8のナルフラフィン含有剤において、40℃で4週間保存後のナルフラフィン定量値の大幅な低下が認められた。乳糖水和物を含む比較例2、トレハロース水和物を含む実施例2、トウモロコシデンプンを含む比較例3、ショ糖脂肪酸エステルを含む実施例3、L-ロイシンを含む実施例4のナルフラフィン含有剤において、40℃で4週間保存後のナルフラフィン定量値の大幅な低下はみられなかった。 【0082】 (接触試験―純度)次に、実施例2~実施例4、および比較例2~比較例8のナルフラフィン含有剤を、ガラス試験管に入れ、40℃遮光条件下で4週間保存後、LC/MSを用いてナルフラフィン含有剤の純度を測定した。LC/MSによるナルフラフィンおよび各種類縁物質含有量の測定結果を表10に示す。 【表10】 [図:0001397656000030.jpg] 【0083】 表10の結果から、部分アルファー化デンプンを含む比較例4、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む比較例7のナルフラフィン含有剤において、40℃で4週間保存後のナルフラフィン純度の大幅な低下、および類縁物質の大幅な増加が認められた。また、乳糖水和物を含む比較例2、トウモロコシデンプンを含む比較例3、デンプングリコール酸ナトリウムを含む比較例5、クロスポビドンを含む比較例6、ステアリン酸を含む比較例8のナルフラフィン含有剤において、40℃で4週間保存後のNLF-6の増加が認められた。ショ糖脂肪酸エステルを含む実施例3においては、L-ロイシンを含む実施例4よりもN-oxideの増加が認められた。 【0084】 表9および表10の結果から、本発明に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の賦形剤としてはトレハロースが好ましいことが明らかとなった。崩壊剤はいずれも良好な結果が得られなかったことから、本発明に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の崩壊剤としては接触試験表5で良好な結果が得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましいことが明らかとなった。本発明に係るナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の滑沢剤としてはL-ロイシンまたはショ糖脂肪酸エステルが好ましく、表10の結果から、L-ロイシンがより好ましいことが明らかとなった。」 2 無効理由1(サポート要件)について 当合議体は以下に述べる理由から本件発明1~5の特許は無効理由1によって無効にすべきものであるとはいえないと判断する。 (1)当審の判断 ア 本件発明1について (ア)特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 そこで、この観点に立って、検討する。 (イ)本件発明1~5は「ナルフラフィンと、トレハロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、L-ロイシンとを含み、エリスリトールと、カルメロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含まないことを特徴とする素錠であるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠」に係るものであって、本件明細書【0008】の記載によれば、本件発明1~5の課題は、「各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を提供する」ことである。 (ウ)本件明細書の発明の詳細な説明には、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠(【0027】比較例1)に含まれる、エリスリトール、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルメロース、アスパルテーム及びステアリン酸マグネシウムが、それぞれナルフラフィンの安定性低下の要因であるか否かを確認する接触試験を行ったことが記載されている(【0037】~【0055】、参考例1~13)。それによると、開始時から40℃で保存後のナルフラフィン定量値は、エリスリトールを含む参考例9、カルメロースを含む参考例12、ステアリン酸マグネシウムを含む参考例13のナルフラフィン含有剤において、それぞれ、エリスリトールを含む参考例9では96.8から92.6(3日間保存後Initial比95.6)及び89.3(7日間保存後Initial比92.2)と、カルメロースを含む参考例12では98.0から96.0(3日間保存後Initial比97.9)及び96.2(7日間保存後Initial比98.2)と、ステアリン酸マグネシウムを含む参考例13では87.0から79.0(3日間保存後Initial比91.8)及び90.4(7日間保存後Initial比103.8)となったことも記載されている(【0054】~【0055】、【表6】)。したがって、測定誤差等による数値のばらつきを考慮しても、ナルフラフィン含有剤におけるナルフラフィンの定量値は、エリスリトール、カルメロース又はステアリン酸マグネシウムを含むことによって低下する傾向があると認められる。 (エ)また、本件明細書の発明の詳細な説明には、上記(ウ)の参考例1~13の接触試験の結果を受けて、各添加剤とナルフラフィンとの接触試験を行い、エリスリトール、ステアリン酸マグネシウムおよびカルメロースに代わる添加剤のスクリーニングを行ったことが記載されている(【0069】~【0084】)。それによると、40℃で保存後のナルフラフィン定量値は、トレハロース水和物を含む実施例2、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む参考例3、L-ロイシンを含む実施例4のナルフラフィン含有剤において、それぞれ、トレハロース水和物を含む実施例2では97.1から97.4(3日間保存後Initial比100.3)及び93.9(4週間保存後Initial比96.7)と、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む参考例3では100.3から101.9(3日間保存後Initial比101.6)及び99.2(7日間保存後Initial比98.9)と、L-ロイシンを含む実施例4では99.6から99.6(3日間保存後Initial比100.0)及び93.9(4週間保存後Initial比94.3)となったことも記載されている(【0040】、【0046】、【0070】、【0077】、【0080】~【0084】、表5、9、10)。 したがって、測定誤差等による数値のばらつきを考慮しても、ナルフラフィン含有剤におけるナルフラフィンの定量値は、トレハロース水和物、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はL-ロイシンを含むことによって大幅な低下はみられないものであるといえる。 (オ)上記(ウ)及び(エ)によれば、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、ナルフラフィンの安定性を低下させる「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」を含み、ナルフラフィンの安定性を低下させない「トレハロース」及び「L-ロイシン」を含まないものであり、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、ナルフラフィンの安定性を低下させる「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」を含まず、ナルフラフィンの安定性を低下させない「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」及び「L-ロイシン」を含むものであるといえる。 そして、当然、ある化学物質の安定性を低下させる添加剤に代えて安定性を低下させない添加剤を用いることによって、当該化学物質の安定性は向上すると考えるのが自然であるし、「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」及び「L-ロイシン」を組み合わせて用いることによってナルフラフィンの安定性を低下させるものとなることが本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。 そうすると、当業者は、ナルフラフィンの安定性を低下させない「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」及び「L-ロイシン」を含み、ナルフラフィンの安定性を低下させる「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」を含まない実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、ナルフラフィンの安定性を低下させる「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」を含み、ナルフラフィンの安定性を低下させない「トレハロース」及び「L-ロイシン」を含まない比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比較して、ナルフラフィンの安定性が向上したものであることを理解できるといえる。 (カ)さらに、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の安定性に関する試験とその結果が記載されている(【0025】~【0036】)。 ここで、実施例1と比較例1の保存条件や測定基準が異なるため、実施例1と比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠におけるナルフラフィンの定量値及び純度を直接比較することはできないにもかかわらず、上記(オ)で説示したように、上記(ウ)及び(エ)で説示した本件明細書の発明の詳細な説明及び本件特許の出願時の技術常識から、当業者は、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比較して、ナルフラフィンの安定性が向上したものであることを理解できることを、以下に説示する。 a 実施例1には、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を遮光密閉40℃の条件で4週間保存した後(40℃4W)のナルフラフィンの安定性について、定量値が「開始時のナルフラフィン量を100%」としたときに「95.6%」であり(【0033】の表3)、純度が「開始時」が「99.60%」であるときに「98.77%」である(【0035】の表4)ことが記載されている。なお、純度について、開始時の「99.60%」を「100%」とすると、「98.77%」は「99.17%」と算出される。 一方、比較例1には、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠をアルミ分包包装したものを40℃、75RHの条件で1ヵ月保存した後(加速1M)のナルフラフィンの安定性について、定量値が、冷所条件下で4ヵ月保存後(冷所4M)のナルフラフィン量を100%としたときに「94.2%」であり(【0028】の表1)、純度が、冷所4Mで「97.81%」であるときに「97.44%」である(【0030】の表2)ことが記載されている。なお、純度について、冷所4Mの「97.81%」を「100%」とすると、「97.44%」は「99.62%」と算出される。 b ここで、比較例1における「冷所条件下で4ヵ月保存後(冷所4M)」について、「冷所条件」が明らかではないものの、「冷所条件」であっても4ヵ月保存すれば、ナルフラフィンの定量値は、保存開始直後よりも少量分解されて低くなることが考えられるから、「冷所条件下で4ヵ月保存後(冷所保存4M)のナルフラフィン量」は「開始時のナルフラフィン量」よりも低くなっており、「冷所保存4Mのナルフラフィン量」を100%(基準値)として算出された「加速1M」の定量値(%)は、「開始時のナルフラフィン量」を100%(基準値)として算出された「加速1M」の定量値(%)よりも高く算出されるといえる。 また、比較例1の保存条件である「アルミ分包包装したものを40℃、75RHの条件で1ヵ月保存」については、アルミは遮光性であり、分包包装されたものは密閉状態となるものであり、また、1ヵ月は4週間と同程度であるから、実施例1の「遮光密閉40℃の条件で4週間保存」の条件と同程度であるといえる。 c そうすると、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を実施例1と同程度の条件で保存した後のナルフラフィンの安定性については、上記bで説示したように、比較例1の「冷所保存4Mのナルフラフィン量を100%」(基準値)で算出された「加速1M」の定量値(%)「94.2%」は、「開始時のナルフラフィン量を100%」(基準値)で算出された「加速1M」の定量値(%)よりも高く算出されるので、比較例1の「開始時のナルフラフィン量を100%」(基準値)で算出された「加速1M」の定量値(%)は「94.2%」よりもさらに低い値となること、すなわち、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の「加速1M」の定量値「95.6%」よりも当然、低い値となることが推認されるから、純度についてはともかく、当業者は、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠より安定性を向上させたものであることが理解できる。 (キ)したがって、本件発明1は、上記(ウ)~(カ)で説示した本件明細書の発明の詳細な説明全体の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえるに、当業者が、「各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を提供する」という課題を解決できると認識し得る範囲のものである。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1において、「トレハロースを1錠100重量%当たり7重量%以上10重量%以下含むこと」(本件発明2)、本件発明1又は2において、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを1錠100重量%当たり10重量%以上14重量%以下含むこと」(本件発明3)、本件発明1~3のいずれか1つにおいて、「L-ロイシンを1錠100重量%当たり3重量%以上6重量%以下含むこと」(本件発明4)、本件発明4において、「L-ロイシンを1錠100重量%当たり4.5重量%以上含むこと」(本件発明5)、を特定したものである。 ここで、本件明細書の実施例1においては、トレハロース水和物を1200g/14400g(=0.3g+1200g+24g+960g+4079.7g+6576g+720g+192g+648g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを1680g/14400g、L-ロイシンを648g/14400gで含むナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を得たことが記載され、これらを計算すると、トレハロースを1錠100重量%当たり8.3重量%で含むこと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを1錠100重量%当たり11.7重量%含むこと、L-ロイシンを1錠100重量%当たり4.5重量%含むことが記載されている。すなわち、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、「トレハロースを1錠100重量%当たり7重量%以上10重量%以下」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを1錠100重量%当たり10重量%以上14重量%以下」、「L-ロイシンを1錠100重量%当たり3重量%以上6重量%以下」及び「L-ロイシンを1錠100重量%当たり4.5重量%以上」含むものである。 そうすると、上記アで説示したように、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、当業者が、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠より安定性を向上させたものであることが理解できるものであるから、上記ア(ウ)~(カ)で説示した本件明細書の発明の詳細な説明全体の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえるに、本件発明2~5は、当業者が、「各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を提供する」という課題を解決できると認識し得る範囲のものである。 ウ 以上のとおりであるから、本件発明1~5は、当業者が、「各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を提供する」という課題を解決できると認識し得る範囲のものである。 (2)請求人の主張に対する当審の判断 ア 請求人の主張について (ア)請求人は、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、本件明細書に記載された参考例15ないし21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠よりも安定性に劣っており、比較例1及び参考例14のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比べても安定性に優れているとはいえないから、本件発明はサポート要件を充足しない旨主張する(審判請求書10頁下から8行~11頁2行、11頁下から11行~19頁13行の項目(6-1)及び(6-2)、令和4年2月1日付け口頭審理陳述要領書(2)4頁2行~9頁12行の項目(2-1)、令和4年3月29日付け上申書に添付した甲16の11~17頁、令和4年10月6日付け上申書(3)13頁下から9~7行)。 (イ)請求人は、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、多数の成分を含有しているところ、本件発明1においては当該成分のうち一部しか発明特定事項として特許請求の範囲に記載されておらず、本件明細書の記載に照らしても、トレハロース水和物ないしL-ロイシンとナルフラフィンとの混合物に係る定量試験や純度試験の結果から、各添加剤が単体ではナルフラフィンの安定性保持に寄与し得ることが確認できたとしても、それにより直ちに当該添加剤を他の添加剤と組み合わせてナルフラフィン含有口腔内崩壊錠とした場合にも同様に安定性が保持されると理解することは到底できないから、ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の安定性が、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に含有される多数の成分のうち、本件発明1において発明特定事項として特定された一部の成分によって保たれるとはいえず、本件発明はサポート要件を充足しない旨主張する(審判請求書11頁3~9行、19頁14行~21頁15行の項目(6-3)ア、イ、令和4年2月1日付け口頭審理陳述要領書(2)9頁13行~10頁下から4行の項目(2-2)、令和4年3月29日付け上申書に添付した甲16の13~17頁)。 (ウ)請求人は、本件明細書に記載された参考例7は、試験開始時のナルフラフィン定量値が35.8%(表5)という極めて少ない異常値であって添加剤の薬物の安定性に対する影響をおよそ適切に評価することはできないこと、参考例13の40℃で7日間保存後のナルフラフィン定量値は103.8%と100%を超えており少なくともステアリン酸マグネシウムがナルフラフィンの安定性に悪影響及ぼしているとはいえないこと、定量試験において参考例17からステアリン酸マグネシウムを除去した参考例18の方が安定性に劣っていること、純度試験において参考例19からステアリン酸マグネシウムを除去した参考例20の方が安定性に劣っていること、が記載されていることからみて、ステアリン酸マグネシウムがナルフラフィンの安定性に悪影響を及ぼしていると理解することはできないから、ステアリン酸マグネシウムに代わりL-ロイシンを用いた本件発明はサポート要件を充足しない旨主張する(審判請求書21頁16行~23頁7行の項目(6-3)ウ、令和4年2月1日付け口頭審理陳述要領書(2)10頁下から3行~12頁下から10行の項目(2-3)、令和4年5月16日付け上申書(2)9頁12行~10頁最終行の項目(3-4))。 (エ)請求人は、甲10を提出し、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠の処方からヒドロキシプロピルセルロース及び結晶セルロースの配合量のみを変更したナルフラフィン含有口腔内崩壊錠(処方A)を作製し、定量試験を実施したところ、処方Aの定量値の低下幅は比較例1の定量値の低下幅よりも大きく、処方Aは比較例1と比べ安定性に劣っていることが示されているから、本件発明はサポート要件を充足しない旨主張する(審判請求書23頁8行~24頁2行の項目(6-3)エ、令和4年2月1日付け口頭審理陳述要領書(2)12頁下から9行~13頁13行の項目(2-4)、令和4年3月29日付け上申書に添付した甲16の18頁)。 イ 当審の判断 (ア)上記ア(ア)及び(イ)の請求人の主張について 上記(1)ア(ア)~(カ)で説示したとおり、本件明細書には、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠で用いられているトレハロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びL-ロイシンは、ナルフラフィンの安定性を低下させないものであることが記載されており、また、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に用いられているエリスリトール、カルメロース及びステアリン酸マグネシウムは、ナルフラフィンの安定性を低下させるものであることが記載されているから、参考例14~21のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠におけるナルフラフィンの安定性(定量値、純度)は実施例1と比較例1の結果を否定するものではない。そうすると、当業者は、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比較して、ナルフラフィンの安定性が向上したものであることを理解できる。そして、上記(1)で記載したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明全体の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえるに、本件発明はサポート要件を充足するといえる。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 (イ)上記ア(ウ)の請求人の主張について 本件明細書には、上記(ア)で述べたことが記載されている。そうすると、測定誤差等による数値のばらつきを考慮すれば、参考例7、13、17~20のナルフラフィン含有剤又はナルフラフィン含有口腔内崩壊錠におけるナルフラフィンの安定性(定量値、純度)は実施例1と比較例1の結果を否定するものではないから、当業者は、実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比較して、ナルフラフィンの安定性が向上したものであることを理解できる。 そして、上記(1)で記載したとおり、本件発明はサポート要件を充足するといえるから、請求人の上記主張は採用することができない。 (ウ)上記ア(エ)の請求人の主張について 本件発明の解決すべき課題は、上記(1)ア(イ)のとおり、「各種条件下で保存した後であっても安定性の高いナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を提供する」というものであるから、「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」及び「L-ロイシン」を含む本件発明1とすることによって、これらを含有しない場合と比較して相対的に安定性が向上することによって達成できるものであることが理解できる程度の記載があれば十分である。 ここで、甲10には、本件特許の実施例1の処方によるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠(本件特許 実施例1)と、本件特許の実施例1の処方からヒドロキシプロピルセルロース及び結晶セルロースの配合量のみを変更したナルフラフィン含有口腔内崩壊錠(処方A)とを作成し、これらを40℃密栓条件で3日間保存した後のナルフラフィンの残存率(Initial比)が、それぞれ99.1%、96.5%であることが記載されている(摘記事項10B)。 そして、甲10に記載された処方Aは、本件明細書に記載された実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と同じ配合成分を含むものであって、本件明細書に記載された比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠に用いられているエリスリトール、カルメロース及びステアリン酸マグネシウムを含まないものであるし、また、比較例1は、処方Aのようにヒドロキシプロピルセルロース及び結晶セルロースの配合量を変更したものではなく、処方Aの比較の対象とはいえないことから、上記(1)アで説示したのと同様に、処方Aは、本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものである。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、請求人の主張する無効理由1により無効とすることはできない。 3 無効理由2(進歩性)について 当合議体は以下に述べる理由から本件発明1~5の特許は無効理由2によって無効にすべきものであるとはいえないと判断する。 (1)甲1発明1の認定 甲1の実施例13(摘記事項1G)、実施例1(摘記事項1F)及び参考例1(摘記事項1E)によれば、甲1には、 「マンニトール96.745重量部を造粒した顆粒に対し、ナルフラフィン塩酸塩0.005重量部、チオ硫酸ナトリウム水和物0.1重量部を含む水溶液を噴霧した造粒顆粒、及び、 マンニトール25.87重量部及びクロスポビドン6.5重量部に、三二酸化鉄0.13重量部を分散させた蒸留水を加えながら造粒した造粒顆粒を、 それぞれ処理した整粒顆粒129.35重量部に対してステアリン酸マグネシウム0.65重量部添加した顆粒を打錠した130mgの錠剤(以下「内核」ということがある。)に対して、 ポリビニルアルコール(以下、「PVA」という。)30部、トレハロース40部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液からなる被覆液を噴霧した、 3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤。」 の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。 なお、各成分の割合から、例えば、3.9mgの被覆層は、1.17mgのPVA、1.56mgのトレハロース、1.053mgの酸化チタン及び0.117mgの三二酸化鉄からなるものと計算される。 (2)本件発明1について ア 甲1発明1との対比 甲1発明1の「口腔内崩壊性被覆錠剤」は、内核に「マンニトール」、「ナルフラフィン塩酸塩」、「チオ硫酸ナトリウム水和物」、「クロスポビドン」、「三二酸化鉄」、「ステアリン酸マグネシウム」を含み、被覆層に「PVA」、「トレハロース」、「酸化チタン」及び「三二酸化鉄」を含むものである。 ここで、甲1発明1の「ナルフラフィン塩酸塩」は、本件発明1の「ナルフラフィン」に相当する。 また、甲1発明1の「口腔内崩壊性被覆錠剤」は、「エリスリトール」及び「カルメロース」を含まないものである点で、本件発明1の「口腔内崩壊錠」と一致する。 さらに、甲1発明1の「口腔内崩壊性被覆錠剤」と本件発明1の「口腔内崩壊錠」とは、「トレハロース」を含む「口腔内崩壊錠」である点に限りにおいて一致する。 そして、本件発明1は、「ナルフラフィン」、「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」、「L-ロイシン」、「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」(以下、それぞれ順に「(A)」~「(G)」と記載することがある。)以外の成分の有無や種類を特定しないものであるから、甲1発明1がマンニトール等の成分を含むことは、相違点とはならない。 そうすると、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「(A)ナルフラフィンと (B)トレハロースを含み、 (E)エリスリトールと (F)カルメロースを含まない、 ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。」 <相違点> 相違点1A ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」を含むのに対し、甲1発明1においては、「(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」を含んでいない点。 相違点1B ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(D)L-ロイシン」を含むのに対し、甲1発明1においては、「(D)L-ロイシン」を含んでいない点。 相違点1D ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(G)ステアリン酸マグネシウム」を含まないのに対し、甲1発明1においては、「(G)ステアリン酸マグネシウム」を含む点。 相違点1E ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(B)トレハロース」を含む「素錠」であるのに対し、甲1発明1においては、「(B)トレハロース」を被覆層に含む「内核と被覆層からなる被覆錠剤」である点。 イ 相違点についての当審の判断 (ア)相違点について 事案に鑑み、相違点1Eから検討する。 甲1には、まず被覆のない素錠を製造し(摘記事項1E)、次いでその素錠にトレハロースを含む被覆液を噴霧して被覆することによって甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤を製造することが記載されている(摘記事項1G、1F)。 ここで、甲1には、被覆層に亀裂を生じることのない安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することを目的とするものであって(摘記事項1B)、これまで一包化包装ができなかった口腔内崩壊錠に対しても一包化包装が可能となり、患者の服薬コンプライアンスを改善し、治療効果を向上させるものである(摘記事項1C)ことが記載されている。 そうすると、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤は、患者への投与を前提として開発されたものであって、素錠が被覆層で被覆されていることを前提とするものであるから、たとえ甲1に、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤を製造する過程において、被覆前の素錠(内核)が「口腔内崩壊性錠剤」(摘記事項1D、1F)と記載されていたとしても、被覆前の素錠が患者へ投与するためのものであることが記載されているとはいえない。 また、甲1発明1は、被覆層に亀裂を生じることのない安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することを目的とするものである。ここで、被覆のない錠剤(素錠、裸錠)は、最もシンプルな錠剤であるが、粉末や顆粒を圧縮した場合には錠剤の表面が粗になりやすいため、滑りにくく、微粉末が発生しやすい、光や湿度の影響を受けやすい、苦味を有した医薬品の場合には服用しにくいなどの欠点を有していることは、本願優先日当時の当業者に知られた技術的事項である(摘示事項乙12A)。 そして、甲1には、錠剤に所定の被覆層を設けることによって、外観の改善、耐水性の付与、摩損性の改善、光安定化などの様々な機能を付与し、上述の欠点を改善することが記載されている(甲1の【0001】、【0002】)といえるから、甲1発明1の口腔内崩壊錠が所定の被覆層を有する点は、甲1発明1の目的を達成するためにも重要な事項であり、所定の被覆層を有しない場合には甲1発明1の目的を達成できなくなるといえる。 そうすると、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤の内核のみに着目し、これを患者への投与を前提とする口腔内崩壊錠の素錠とすることには阻害要因があるといえる。ましてや、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤において、被覆層にあるトレハロースを内核に含有させた上で、被覆層を設けない口腔内崩壊錠の素錠とすることはなおさら阻害要因があるといえる。 したがって、甲1発明1を相違点1Eに係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得るとはいえない。 (イ)効果について 本件明細書には、「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」及び「L-ロイシン」を含み、「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」を含まない実施例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」といったナルフラフィンの安定性を低下させる添加剤を含む比較例1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠と比較して、ナルフラフィンの安定性が向上したことが記載されているといえる(上記2(2)ア(オ))から、本件明細書には、本件発明1が甲1発明1と比較して安定性が向上したものであることが裏付けられているといえる。 そして、甲2~4を見ても、「トレハロース」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」及び「L-ロイシン」の3成分を含み、「エリスリトール」、「カルメロース」及び「ステアリン酸マグネシウム」の3成分を含まないナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、安定性に優れたものとなることは、本願優先日当時の当業者が予測できたものとはいえない。 そうすると、本件発明1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、甲1発明1と比較して予測できない優れた効果を奏するものであるといえる。 ウ 請求人の主張と当審の判断 (ア)請求人は、上申書(3)において、被覆層に含有される添加剤は、内核(素錠)に含有される有効成分・添加剤と広く接触するから、特定の有効成分との関係で被覆層に含有可能な添加剤が内核への含有を否定される理由はなく、むしろ、甲1発明1に接した当業者は、トレハロースを添加剤(賦形剤等)として用いてナルフラフィンと組み合わせることが可能であり、好適であると当然に認識するのであって、トレハロースとの組み合わせの可否・適否が含有箇所(内核(素錠)か被覆層か)により変わる(「被覆層に含有するならば組み合わせられるが、内核に含有するならば組み合わせられない。」など)とは考えられず、甲1発明1においてトレハロースを素錠の内核に含有するものとすることが容易である旨主張する(13頁1~13行)。 しかしながら、上記イ(ア)で説示したように、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤は、患者への投与を前提として開発されたものであって、素錠が被覆層で被覆されていることを前提とするものであるから、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤の内核のみに着目し、これを患者への投与を前提とする口腔内崩壊錠の素錠とすることには阻害要因があるといえる。ましてや、甲1自体には、内核にトレハロースを含有させる示唆があるとはいえないし、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤を患者への投与を前提とする口腔内崩壊錠の素錠とするための添加剤として、甲1において口腔内崩壊性被覆錠剤の内核に添加される添加剤としても明示されないトレハロースを採用することは、なおさら阻害要因があるといえる。 よって、上記請求人の主張を採用することはできない。 (イ)請求人は、上申書(3)において、上記(ア)で指摘した相違点以外の相違点については、本件発明1が「素錠」に関するものであるのに対して甲1発明1(合議体注:請求人の主張は、「甲1発明2」に関する無効理由3を無効理由2に当てはめるものと理解し、無効理由3の「甲1発明2」を無効理由2の「甲1発明1」と読み替えた。以下同様。)は「被覆錠剤」に関するものであったとしても、甲1発明1において用いられている「クロスポビドン」、「ステアリン酸マグネシウム」及び「マンニトール」はいずれも「素錠」(内核)に含有される添加剤であるから、本件発明1において用いられる添加剤と比較して、含有箇所や作用効果の発揮場面に何ら相違はない旨主張する(上申書(3)6頁の枠囲いの下1~15行)。 しかしながら、上記イ(ア)で説示したように、甲1発明1は、被覆層に亀裂を生じることのない安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することを目的とするものであるから、被覆層を有していない素錠である本件発明1とは剤形も目的も異なるものである。 そして、素錠である本件発明1と被覆層を有する甲1発明1とは、被覆層の有無によって、投与後の作用効果を発揮する場面において、その挙動が大きく異なるものであるといえる。 よって、上記請求人の主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点1A、1B、1Dについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項並びに周知技術に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも、本件発明1の素錠であるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、請求項2~5に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、上記(2)イ(ア)において示したとおり、甲1発明1における「(B)トレハロース」を被覆層に含む「内核と被覆層からなる被覆錠剤」を「(B)トレハロース」を含む「素錠」とするには阻害要因があるといえるから、本件発明1について、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1を更に限定する本件発明2~5についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、本件発明2~5は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 無効理由3(進歩性)について 当合議体は以下に述べる理由から本件発明1~5の特許は無効理由3によって無効にすべきものであるとはいえないと判断する。 (1)甲1発明2の認定 甲1の実施例1(摘記事項1F)及び参考例1(摘記事項1E)によれば、甲1には、 「マンニトール96.745重量部を造粒した顆粒に対し、ナルフラフィン塩酸塩0.005重量部、チオ硫酸ナトリウム水和物0.1重量部を含む水溶液を噴霧した造粒顆粒、及び、 マンニトール25.87重量部及びクロスポビドン6.5重量部に、三二酸化鉄0.13重量部を分散させた蒸留水を加えながら造粒した造粒顆粒を、 それぞれ処理した整粒顆粒129.35重量部に対してステアリン酸マグネシウム0.65重量部添加した顆粒を打錠した130mgの錠剤に対して、 PVA10重量部、マルチトール90重量部からなる固形分10重量%の被覆液を噴霧した、1.95mgの被覆層を有する131.95mgの口腔内崩壊性被覆錠剤。」の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 なお、各成分の割合から、例えば、1.95mgの被覆層は、0.195mgのPVAと1.755mgのマルチトールからなるものと計算される。 (2)本件発明1について ア 甲1発明2との対比 甲1発明2の「口腔内崩壊性被覆錠剤」は、内核に「マンニトール」、「ナルフラフィン塩酸塩」、「チオ硫酸ナトリウム水和物」、「クロスポビドン」、「三二酸化鉄」、「ステアリン酸マグネシウム」を含み、被覆層に「PVA」及び「マルチトール」を含むものである。 ここで、甲1発明2の「ナルフラフィン塩酸塩」は、本件発明1の「ナルフラフィン」に相当する。 また、甲1発明2の「口腔内崩壊性被覆錠剤」は、「エリスリトール」及び「カルメロース」を含まないものである点で、本件発明1の「口腔内崩壊錠」と一致する。 そして、本件発明1は、下記(A)~(G)成分以外の成分の有無や種類を特定しないものであるから、甲1発明2がマンニトール等の成分を含むことは、相違点とはならない。 そうすると、本件発明1と甲1発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「(A)ナルフラフィンを含み、 (E)エリスリトールと (F)カルメロースを含まない、 ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠。」 <相違点> 相違点1A’ ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」を含むのに対し、甲1発明2においては、「(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」を含んでいない点。 相違点1B’ ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(D)L-ロイシン」を含むのに対し、甲1発明2においては、「(D)L-ロイシン」を含んでいない点。 相違点1C ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(B)トレハロース」を含むのに対し、甲1発明2においては、「(B)トレハロース」を含んでいない点。 相違点1D ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「(G)ステアリン酸マグネシウム」を含まないのに対し、甲1発明2においては、「(G)ステアリン酸マグネシウム」を含む点。 相違点1F ナルフラフィン含有口腔内崩壊錠が、本件発明1においては、「素錠」であるのに対し、甲1発明2においては、「内核と被覆層からなる被覆錠剤」である点。 イ 相違点についての当審の判断 (ア)相違点について 事案に鑑み、相違点1C及び相違点1Fを合わせて検討する。 甲1には、まず被覆のない素錠を製造し(摘記事項1E)、次いでその素錠にトレハロースを含まない被覆液を噴霧して被覆することによって甲1発明2の口腔内崩壊性被覆錠剤を製造することが記載されている(摘記事項1F)。 ここで、甲1には、被覆層に亀裂を生じることのない安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することを目的とするものであって(摘記事項1B)、これまで一包化包装ができなかった口腔内崩壊錠に対しても一包化包装が可能となり、患者の服薬コンプライアンスを改善し、治療効果を向上させるものである(摘記事項1C)ことが記載されている。 そうすると、甲1発明2の口腔内崩壊性被覆錠剤は、患者への投与を前提として開発されたものであって、素錠が被覆層で被覆されていることを前提とするものであるから、たとえ甲1に、甲1発明1の口腔内崩壊性被覆錠剤を製造する過程において、被覆前の素錠(内核)が「口腔内崩壊性錠剤」(摘記事項1D、1F)と記載されていたとしても、被覆前の素錠が患者へ投与するためのものであることが記載されているとはいえない。 また、甲1発明2は、被覆層に亀裂を生じることのない安定な口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することを目的とするものである。ここで、被覆のない錠剤(素錠、裸錠)は、最もシンプルな錠剤であるが、粉末や顆粒を圧縮した場合には錠剤の表面が粗になりやすいため、滑りにくく、微粉末が発生しやすい、光や湿度の影響を受けやすい、苦味を有した医薬品の場合には服用しにくいなどの欠点を有していることは、本願優先日当時の当業者に知られた技術的事項である(摘示事項乙12A)。 そして、甲1には、錠剤に被覆を施すことによって、外観の改善、耐水性の付与、摩損性の改善、光安定化などの様々な機能を付与し、上述の欠点を改善することが記載されている(甲1の【0002】)といえるから、甲1発明1の技術的に重要な事項は、甲1発明1の口腔内崩壊錠が被覆層を有することにあるといえる。 そうすると、甲1発明2の口腔内崩壊性被覆錠剤の内核のみに着目し、これを患者への投与を前提とする口腔内崩壊錠の素錠とすること(相違点1Fに係る本件発明1の構成とすること)には阻害要因があるといえる。ましてや、甲1発明2の口腔内崩壊性被覆錠剤において、トレハロースを内核に含有させること(相違点1Cに係る本件発明1の構成とすること)を選択した上で、被覆層を設けない口腔内崩壊錠の素錠とすること(相違点1Fに係る本件発明1の構成とすること)はなおさら阻害要因があるといえる。 したがって、甲1発明2を相違点1C及び相違点1Fに係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得るとはいえない。 (イ)効果について 上記3(2)イ(イ)で説示したように、本件明細書には、本件発明1が甲1発明2と比較して安定性が向上したものであることが裏付けられているといえるから、本件発明1のナルフラフィン含有口腔内崩壊錠は、甲1発明2と比較して予測できない優れた効果を奏するものであるといえる。 ウ 請求人の主張と当審の判断 上記3(2)ウで説示したように、請求人の主張はいずれも採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点1A’、1B’、1Dについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項並びに周知技術に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも、本件発明1の素錠であるナルフラフィン含有口腔内崩壊錠を、請求項2~5に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、上記3(2)イ(ア)において示したとおり、甲1発明2における「(B)トレハロース」を被覆層に含まない「内核と被覆層からなる被覆錠剤」を「(B)トレハロース」を含む「素錠」とするには阻害要因があるといえるから、本件発明1について、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1を更に限定する本件発明2~5についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、本件発明2~5は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許を、無効理由1~3によって無効とすることはできないので、本件特許の請求項1~5に係る特許に対する審判請求は、成り立たない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担するものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800058

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