特許拒絶査定不服審判
2024-017277
ロボットのプログラミング装置
- 審判番号
- 2024-017277
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-529146
- 請求日
- 2024年10月30日
- 審決日
- 2026年02月03日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ファナック株式会社
- 【請求人代理人】上田 邦生
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 藤江 大望
- 審判官 鈴木 貴雄
- 分類
- P18 .113-Z (B25J) / P18 .56 -Z (B25J) / P18 .575-Z (B25J) / P18 .121-Z (B25J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-529146「ロボットのプログラミング装置」拒絶査定不服審判事件〔2021年(令和3年)12月9日国際公開、WO2021/245746〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月1日を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年10月17日 :国内書面の提出
令和 5年 9月29日付け:拒絶理由通知書による拒絶の理由の通知
同年11月29日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 6年 2月29日付け:拒絶理由通知書による拒絶の理由の通知
同年 4月26日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月19日付け:拒絶をすべき旨の査定
(拒絶査定、以下「原査定」という。)
同年10月30日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時:手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年10月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
本件補正は、特許請求の範囲の全文及び明細書の段落【0005】を補正の対象とするものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた(下線は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
ロボットの制御プログラムを構成する機能をグラフィカルに表し相互に組み合わせ可能な形状を有する複数種類のプログラム要素を記憶する記憶部と、
ユーザによる操作を受け入れる入力部と、
前記記憶部に記憶されている前記プログラム要素を前記入力部により選択して形状を組み合わせて配置することにより前記制御プログラムを生成するプログラム生成部とを備え、
前記プログラム要素として、単一の命令を記述した単純なプログラム要素と、前記命令を組み合わせて記述し、前記機能を前記入力部により入力された文字列によって編集可能な可編集プログラム要素とを備えるロボットのプログラミング装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
本件補正前の(すなわち、令和6年4月26日提出の手続補正書により補正がされた)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
ロボットの制御プログラムを構成する機能をグラフィカルに表す複数種類のプログラム要素を記憶する記憶部と、
ユーザによる操作を受け入れる入力部と、
前記記憶部に記憶されている前記プログラム要素を前記入力部により選択して配置することにより前記制御プログラムを生成するプログラム生成部とを備え、
前記プログラム要素として、単一の命令を記述した単純なプログラム要素と、前記命令を組み合わせて記述し、前記機能を前記入力部により入力された文字列によって編集可能な可編集プログラム要素とを備えるロボットのプログラミング装置。」
2 本件補正の適否(補正の目的要件)
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「プログラム要素」について、上記1(1)にて下線を付した補正箇所のとおり、記憶部において「相互に組み合わせ可能な形状を有する」複数種類のプログラム要素を記憶すること、及び、プログラム生成部においてプログラム要素の「形状を組み合わせて」配置して制御プログラムを生成すること(以下「補正事項」という。)を、具体的に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものを含んでいる。
3 本件補正の適否(独立特許要件)
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むことから、本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(いわゆる「独立特許要件」)について、以下、検討する。
(1)検討する特許の要件
特許法第29条第2項(進歩性)
・引用する文献
ア 引用文献1
特表2012-528015号公報(原査定の引用文献1)
イ 周知例文献A
米国特許出願公開第2007/0150102号明細書
ウ 周知例文献B
光永法明 ほか2名、「タブレット端末で動作する,マイコン用ビジュアルプログラミング環境aiBlocksの開発」、情報処理学会論文誌(トランザクション)教育とコンピュータ(TCE)、一般社団法人情報処理学会、2017年2月22日、第3巻第1号、53~63ページ、[取得日 2025年12月16日]、
取得先<https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/records/177651>
(2)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(3)引用文献1に記載された発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の記載がある(下線は当審にて付した。以下同様。また、参照箇所は、引用文献1の1~17ページの記載に基づく。)。
「【請求項1】
挙動型の行動のグループ、及び動作型の行動のグループに属する移動ロボットの少なくとも1つの行動をユーザーが編集及び制御できるようにする方法であって、前記行動が少なくとも1つの行動の主要フレーム(50、60)に属し、前記方法が、前の事象のグループと後に続く事象のグループとから選ばれる少なくとも1つの事象に前記行動の主要フレームが結ばれ、そしてタイムライン(20)により事前に定義された時間的制約に従って進行することを特徴とする方法。
・・・
【請求項4】
前記行動の主要フレームが挙動型であり、そして基本的な挙動へと分解され、各々が少なくとも1つの制御ボックスによって定義され、前記制御ボックスが少なくとも1つの流れ図(70)の中へ相互接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の編集及び制御方法。
・・・
【請求項8】
前記制御ボックスの少なくとも1つが、前記ロボットによって直接的に翻訳され得るスクリプト(90)を含み、前記スクリプトがユーザーによって直接変更可能であることを特徴とする、請求項4に記載の編集及び制御方法。
・・・
【請求項14】
プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実行可能にするプログラムコード命令を含む、コンピュータ・プログラムであって、挙動のグループと動作のグループに属する、移動ロボットの少なくとも1つの行動をユーザーが編集及び制御できるように前記プログラムが適応しており、前記行動が少なくとも1つの行動の主要フレーム(50、60)に属し、前記行動の主要フレームが、前の事象のグループとそれに続く事象のグループとから選ばれる少なくとも1つの事象とそこで結ばれ、そしてタイムライン(20)により事前に定義された時間的制約に従って進行する、少なくとも1つの制御ボックス(10)を備えることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項15】
コンピュータと、前記コンピュータを前記移動ロボットと接続するのに適する通信リンクとを含む、移動ロボットの少なくとも1つの行動を、ユーザーが編集し、制御できるようにするシステムであって、前記コンピュータが前記移動ロボットの仮想画像を表示するためのモジュールを備え、前記システムが請求項14に記載のコンピュータ・プログラムを含むことを特徴とする、システム。
【請求項16】
請求項15に記載の編集及び制御システムによって送られる命令を翻訳するのに適する、コンピュータ・プログラムとメモリを含む移動ロボット。」
「【技術分野】
【0001】
本発明はロボット・プログラミング・システムの分野に関する。より具体的に、それは関節肢の周りで動くまたはそれらを使用する、特に人間又は動物の形態のロボットの挙動と動作を編集及び制御することに適用される。・・・。」
「【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の1つの実施形態における、ロボットの挙動を編集しプログラミングするための、機能構成図である。
【0021】
本発明の方法及びシステムにより制御されるロボットは、頭部、胴体、及び四肢を有する人型ロボットであり得る。各々の部分は関節を有し、各関節は1つ以上のモーターにより制御される。本発明は、仮想のロボットにおいてシミュレートされ、有線又は無線リンクにより本システムに接続された、真のロボットにおいて実行される挙動を作り出すことにより、本システムのユーザーがそのようなロボットを制御出来るようにする。
【0022】
それは(例えば直進、nステップによる右又は左への歩行、片手を頭上に上げる「挨拶」の動作、スピーチ等のような)実行されるべき挙動と、(所与の角度の頭部、脚の一部の)動作とを、この目的のためにプログラミングされたコンピュータの画面上で視認し、シミュレートし、そして生じさせることを含む。
【0023】
本図は、それらの時間次元を伴う事象により開始される命令の構成を例証する。事象により開始される命令は、「ボックス」又は「制御ボックス」10によって、本発明の意味論において表わされる。ボックスは、下記の1つ以上の要素を含み得る、ツリー構造のプログラミング構成であり、それらは:
-「タイムライン」又はフレームの時間軸20;
-「ダイヤグラム」又は流れ図70
-スクリプト90
と定義される。
【0024】
複数の制御ボックスは、後で本明細書中において詳細に記述されるように、大抵の場合1つのボックスから他のボックスへと事象の情報を送信する接続によって、通常は互いに接続される。全てのボックスは、ロボットの挙動/動作のシナリオを初期化する「ルート・ボックス」に直接或いは間接的に接続される。
【0025】
フレームの時間軸20は、前記フレームの時間軸がその中に挿入されているボックスにおいて定義されるように、ロボットの挙動及び動作が従う必要のある、時間的制約を表わす。これ以後、明細書及び特許請求の範囲において、プログラミングの世界では同じ意味を伝えるために広く受入れられている、タイムラインという用語が用いられるであろう。従ってタイムラインはボックスの複数の挙動と動作との同期を生み出す。それは、1秒当りのフレーム数(FPS)として定義される、スクロール速度と関連するフレームへと細分される。各タイムラインのFPSは、ユーザーによってパラメータ化され得る。初期設定によりFPSは所与の値、例えば15FPSに設定され得る。
【0026】
タイムラインは:
-挙動層又はタイムラインを通過することなく、実際により高いレベルのボックスにまた直接結び付けられ得るボックスの集合である、1つ以上のダイヤグラム又は「流れ図」70を含み得る、各々が1つ以上の挙動の主要フレーム50を備える、1つ以上の挙動層30と、
-1つ以上の動作画面80を含み得る、各々が1つ以上の動作の主要フレーム60を備える、1つ以上の動作層40と
を含み得る。
【0027】
挙動層は、ロボットの挙動又は挙動の主要フレームの集合を定義する。多数の挙動層が同一のボックス内で定義され得る。それらは次に、ボックスのタイムラインにより同期されるやり方で動作するように、プログラミングされるであろう。
【0028】
挙動層は1つ以上の挙動の主要フレームを含み得る。挙動の主要フレームは歩行(“walk”[歩く])、会話(“say”[言う])、音楽を演奏する(“music”[音楽])等のような、ロボットの挙動を定義する。明細書内において後で詳細に述べられるように、一定の数の挙動がユーザーにより単純な「ドラッグ及びドロップ」操作でライブラリーから直接挿入されるために、本発明のシステムにおいて前もってプログラミングされる。各挙動の主要フレームは、それがタイムライン内へ挿入される時、フレームの開始である起動させる事象によって定義される。挙動の主要フレームの終了は、別の挙動の主要フレームがその後に挿入される限り、或いは終了の事象が定義された場合である限り、定義される。
【0029】
動作層は、ロボットの関節におけるモーターの動作を一緒にグループ化する、1つ以上の連続的な動作の主要フレームによってプログラミングされた、ロボットの動作の集合を定義する。実行されるべきこれらの動作は、動作画面上の行動によりプログラミングされ得る、前記モーターの到達角度位置によって定義され、前記行動は明細書内において後で詳細に記述されている。同一ボックスの全ての動作の主要フレームは、ボックスのタイムラインにより同期化される。動作の主要フレームは到着フレームにより定義される。出発フレームは、前の動作の主要フレームの終わりのフレーム、又はボックスの開始事象のフレームである。
【0030】
「行動の主要フレーム」という一般的な呼び方は、挙動の主要フレームと動作の主要フレームの両方を意味するために用いられる。
【0031】
それらが同じタイムラインに結び付けられるならば、多数の行動(挙動又は動作)の主要フレームを並行して実行することが可能である。
【0032】
流れ図は、以下で詳細に記述されるように、相互接続されたボックスの集合である。各々のボックスは、それに新たな挙動層又は動作層が結び付けられる、他のタイムラインを含み得る。
【0033】
スクリプトは、ロボットにより直接実行され得るプログラムである。スクリプトを備えるボックスは、他のどのような要素も含まない。」
「【図1】
[図:0001433751000001.jpg]
」
「【0034】
図2は、本発明の1つの実施形態における、ロボットの挙動を編集しプログラミングするための、本システムの主要画面の視図である。
【0035】
右側部分2.1は、命令の実行シミュレーションを作り出すことが出来るであろう、制御されるべきロボットの仮想画像を含む。ロボットはあらゆるタイプであり得るが、しかし本発明は頭部、胴体、及び四肢を有する人型ロボット又は動物の形をしたロボットの場合に、とりわけ有利であろう。
【0036】
左側部分2.2は、コンピュータに格納された挙動のライブラリーへのアクセスを与える。これらの挙動は、歩行、ダンス、会話、目又は他のLEDの点灯等のような、しばしば用いられる基本的挙動を定義するために用いられ得る、再使用可能な要素である。
【0037】
中央部分2.3は、明細書内において後で詳細に示されるように、流れ図の形態においてそれらを挙動のシーケンスに編集し、集めるために、ライブラリー2.2から取得された挙動を組み合わせるのに用いられる。」
「【図2】
[図:0001433751000002.jpg]
」
「【0044】
図4は、本発明の1つの実施形態における、ロボットにより実行されるべき挙動のシーケンスを編集し、プログラミングするために接続された、挙動制御ボックスを示す画面の視図である。
【0045】
挙動制御ボックスは、本発明によるロボットを編集し、制御するためのシステムの基礎的構成要素である。挙動制御ボックスは、1つ以上の行動を定義し、1つ以上の入力と1つ以上の出力を有する。図4の例において、入力は図2の画面2.3の左上端部における“Start of behavior sequence X”(「挙動シーケンスXの開始」)事象である。このポイントは第一の“Movement”(「動作」)ボックスの左側に位置する入力の1つに弧で接続されている。前記ボックスの出力は、第二の“Hello”(「挨拶」)ボックスの入力の1つに接続されている。この第二のボックスの出力は、画面の右上端部にある“End of behavior sequence X”(「挙動シーケンスXの終了」)事象に接続されている。2つのボックスは、図2のライブラリー2.2から対応する要素をコピー(ドラッグ及びドロップ操作)により、画面内に作られている。その接続はマウスを用いて入力点/出力点をつなぐことにより、画像を用いて作られている。
【0046】
図1に対するコメントに示すように、本発明の1つの実施形態において、ボックスは:
-使われる言語がURBITMのようなロボット制御専用の言語であり得る、コンピュータ言語での一連の命令を含むスクリプト・ボックスと、
-例えば歩行距離のような、別のボックスにより使用されるパラメータを、ユーザーが定義できるボックスを例えば含む、多数のボックスを備えた流れ図のボックスと、
-1つ以上の動作層及び/又は1つ以上の挙動層を伴うタイムラインを含むボックスとの3タイプであり得る。」
「【図4】
[図:0001433751000003.jpg]
」
「【0071】
図11は、本発明の1つの実施形態における、ロボットの挙動実行の直接プログラミングを可能にする、スクリプトの一例を示す。
【0072】
本図の例は、ロボットの左耳の複数のLED(LEarLeds)をスイッチオンさせるためのスクリプトである。スクリプトは、翻訳された言語であるPython言語でここに書かれたモジュールである。スクリプト・ボックスの作成は3つのステップ:
-ボックスの具体化ステップと、
-それに結合される他のボックスから呼び出され得る、モジュールとしてのボックスを登録するステップと、
-ボックスの初期化ステップと
で行なわれる。
【0073】
ユーザーは最初の2ステップにおいては介入しない。ユーザーは3番目を制御する。それは従来スクリプト言語によるため、各モジュールは1つ以上のクラスにおいて使われ得る方法で作られる。属性(又は変数)は1つ以上のモジュールに対して定義される。スクリプトはユーザーによって全体的又は部分的に変更できる。本システムのモジュールは直接アクセス可能である。幾つかのモジュールは、ロボットの基礎的な機能(そのメモリに対するALMemory、動作機能に対するALMotion、LEDに対するALLeds等)を管理する。ALMotionモジュールは、ロボットを動かすためのインターフェースを(プログラミング・インターフェースの意味において)提供する。それは「1m前進歩行」のような非常に高レベルの方法、又は「動作を円滑にするために補間を用いて、‘HeadPitch’(頭部の移動角度)関節を1.5秒間のうちに30°動かす」という、より低いレベルの方法を含む。ALLedsモジュールはロボットの全てのLEDへのアクセスを与える。それは従って各LED又はLEDの1つのグループの光強度、(LEDが色を変えられるとき)色を(例えば左目の全LEDを一度に)調整できる。また、(例えば両耳のLEDのような)1つのグループのLEDを回転可能にする、より高いレベルの方法も存在する。」
「【図11】
[図:0001433751000004.jpg]
」
イ 引用文献1に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)引用文献1の請求項15、段落【0001】、【0020】、【0034】の記載、及び、図2の図示内容から、引用文献1には、ロボットの挙動を編集しプログラミングするためのシステムに関する発明が記載されている。
(イ)引用文献1の請求項4、段落【0023】~【0024】、【0036】~【0037】、【0044】~【0045】の記載、及び、図2、図4の図示内容から、引用文献1に記載の当該システムは、1つの制御ボックス10と他の制御ボックス10とを弧で接続することによって、ロボットにより実行されるべき挙動のシーケンスを編集しプログラミングするためのものであるといえる。そして、当該制御ボックス10は、例えば、段落【0044】~【0045】、図4に示される、「Movement」ボックスや、「Hello」ボックスのように、各挙動を示すものであって、図2のライブラリー2.2(段落【0036】)から対応する要素をドラッグ及びドロップ操作することにより、画面内(段落【0037】、図2の中央部分2.3、段落【0045】、図4)にグラフィカルに表され、形状を有するものであり、マウスを用いて入力点/出力点をつなぐことにより、画像を用いて接続されることで、挙動のシーケンスが編集されるといえる。また、段落【0028】、【0036】、【0045】の記載から、挙動を示す制御ボックス10は、複数種類のものが存在し、ライブラリー2.2としてコンピュータに格納されるものであるから、当然に、コンピュータは、制御ボックス10に関する情報を格納する記憶部を備えるといえる。
以上から、引用文献1に記載のシステムは、ロボットの挙動のシーケンスを構成する各挙動をグラフィカルに表し形状を有する複数種類の制御ボックス10をライブラリー2.2として格納するコンピュータの記憶部を備えるものであるといえる。
(ウ)引用文献1の段落【0028】、【0045】の記載から、引用文献1に記載の制御ボックス10は、ユーザーによるドラッグ及びドロップ操作により、ライブラリー2.2から選択されるものであり、また、マウスを用いて入力点/出力点をつなぐことから、引用文献1におけるシステムは、ユーザーによる操作を受け入れるマウス等の操作部を備えるといえる。また、請求項8、段落【0033】、【0071】~【0073】の記載、及び、図11の図示内容から、引用文献1に記載の制御ボックス10には、ロボットの挙動実行の直接プログラミングを可能にする、ユーザーによって直接変更可能なスクリプトを含むボックスが含まれることから、引用文献1におけるシステムは、当然に、ユーザーによる文字列の入力による操作を受け入れるキーボード等の操作部を備えるといえる。
以上から、引用文献1に記載のシステムは、ユーザーによる操作を受け入れる操作部を備えるといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)、引用文献1の段落【0034】~【0037】の記載及び図2の図示内容、並びに、段落【0044】~【0045】の記載及び図4の図示内容から、引用文献1に記載のシステムは、記憶部にライブラリー2.2として格納されている制御ボックス10を操作部により選んで、ドラッグ及びドロップ操作により画面内(図2の中央部分2.3)に配置して、前後の制御ボックスを弧で接続することにより、挙動のシーケンスを生成するものであるといえる。そして、引用文献1に記載のシステムは、当然に、当該挙動のシーケンスを生成するための生成部を備えるといえる。
(オ)引用文献1の段落【0028】には、「歩行(“walk”[歩く])、会話(“say”[言う])、音楽を演奏する(“music”[音楽])等のような、ロボットの挙動」に関し、「一定の数の挙動がユーザーにより単純な「ドラッグ及びドロップ」操作でライブラリーから直接挿入されるために、本発明のシステムにおいて前もってプログラミングされる」ことが記載され、段落【0045】の記載及び図4の図示内容を併せてみれば、上記(イ)に示した制御ボックス10には、歩行、会話、音楽の演奏、移動、挨拶といった単一の挙動を記述した、単純な操作で挿入可能な制御ブロック10が含まれるといえる。
また、引用文献1の段落【0071】~【0073】には、図11とともに、例えば、ロボットの左耳の複数のLEDを制御対象として、光強度や色の調整等を、例えばPython言語によるスクリプトとして直接プログラミングすることが可能なスクリプト・ボックスについて記載され、上記(ウ)、引用文献1の請求項8、段落【0033】の記載を併せてみれば、上記(イ)に示した制御ボックス10には、挙動を組み合わせて記述し、挙動を操作部により入力された文字列によって編集可能なスクリプト・ボックスが含まれるといえる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア~イを含む引用文献1に記載された事項を本件補正後の請求項1の記載(上記1(1))に合わせて整理すると、引用文献1には、ロボットの挙動を編集しプログラミングするためのシステムに関する、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ロボットの挙動のシーケンスを構成する各挙動をグラフィカルに表し形状を有する複数種類の制御ボックス10をライブラリー2.2として格納するコンピュータの記憶部と、
ユーザによる操作を受け入れる操作部と、
前記ライブラリー2.2として前記記憶部に格納されている前記制御ボックス10を前記操作部により選んで前後の制御ボックスを弧で接続して配置することにより前記挙動のシーケンスを生成する生成部とを備え、
前記制御ブロック10として、単一の挙動を記述した単純な操作で挿入可能な制御ブロック10と、前記挙動を組み合わせて記述し、前記挙動を前記操作部により入力された文字列によって編集可能なスクリプト・ボックスとを備える、ロボットの挙動を編集しプログラミングするためのシステム。」
(4)周知の技術的事項の認定
ア 周知例文献Aに記載された事項
周知例文献Aには、図面とともに次の記載がある(日本語訳は当審による。)。
(ア)発明の詳細な説明の段落[0021]~[0022]
「[0021]Preferred embodiments of the present invention will now be described in detail ・・・but they are connectable to one another to form one graphical shape in operation S120.」
<当審日本語訳>
「[0021]本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る支持ロボットアプリケーションプログラミングの方法を示すフローチャートである。図2は、本発明の一実施形態によるロボット応用プログラムのプログラミングツールのウィンドウを示す図である。図3は、XMLスキーマに基づいて作成することのできるタスク記述の一例を示す図である。図4~図7は、図2のタスクを詳細に示している。
[0022]まず、図1を参照すると、図2に示されたプログラミングツールを作成し、ユーザに提供する方法が、概略フローチャートを用いて示されている。まず、ロボットにより実行される処理が機能によって分類される。これらの処理は、電子機器を制御する音声認識、音声合成、検知情報によるイベント発生、制御ストリームの制御、マルチメディア再生、電子メール送信、及び、電子機器制御のためのホーム・ネットワーク関連情報を含む。ロボットにより実行される処理はステップS110で機能によって分類される。次に、機能を構成できるようにするロボットの行動が、条件とともに視覚的に連結できるグラフィカルな形式で表示装置に表示される。より具体的には、音声認識、音声合成、及び動作を含む、ステップS110で機能を構成するロボットの挙動のそれぞれは、動作ブロックによって表されている。ツールバーは、ロボットの行動を連結させるために使用されるように構成され、グラフィカル形式で表示され、モニタに提供される。これにより、ユーザは、各動作ブロックを選択して、図2に示すように当該動作ブロック同士を連結して、1つの機能を完成させる。前述の動作ブロックには、ライブラリとして再利用することができるユーザ定義ブロック、繰り返し(ループ)や条件(if)を含む実行を制御するための制御ブロック、特定のイベントが発生した場合に制御ブロックの条件として利用されるセンサ/イベントブロックが含まれる。ユーザ定義ブロックの内容が変更されると、他の関連するブロックのユーザ定義ブロックの内容も同時に変更される。ユーザ定義ブロック、制御ブロック、およびセンサー/イベントブロックは、異なる図形として表示されるが、ステップS120において1つのグラフィカルな形状を形成するために、互いに連結可能である。」
(イ)図2
「
[図:0001433751000005.jpg]
」
イ 周知例文献Bに記載された事項
周知例文献Bには、図面ととともに次の記載がある(行数は、図面及び空白行を除いた行の数で示す。半角文字は全角文字で表記し、句読点は「、」「。」で代替し、丸付き数字は、例えば「(1)」のように半角数字に半角括弧と下線を付して代替する。)。
(ア)3.2 画面構成と基本操作(57ページ左欄10行~右欄3行)
「aiBlocksの画面表示を図3に示す。画面左上にブロックのカテゴリを選択する(1)『カテゴリ選択ボタン』が並び、その下には(2)『ブロックパレット』がある。画面中央には、ブロックを並べてプログラムを作る(3)『プログラムエリア』があり、その上部には実行に関するボタンが並ぶ(4)『実行ツールバー』がある。
プログラムを作成するときはまず、使いたいブロックの(1)カテゴリをタップする。すると選択したカテゴリの(2)ブロックパレットが表示される。その中から使いたいブロックを選び、(3)プログラムエリアにドラッグし並べる。図3では「出力・待つ」のカテゴリの「デジタル出力」ブロックと「待つ」ブロックを並べて、1秒間Arduino上のLEDを点灯するプログラムを作っている。プログラムが完成したら(4)実行ツールバーの『書き込み』ボタンをタップする。するとブロックのプログラムがiArduino言語に変換されiArduinoに送られる。『実行』ボタンをタップすると、そのプログラムが実行される。」
(イ)図3(57ページ右欄)
「
[図:0001433751000006.jpg]
」
(ウ)3.3 プログラミングに使うブロック(57ページ右欄4行~58ページ左欄15行)
「aiBlocksで用意しているブロックをカテゴリごとに表2に示す。ブロックのカテゴリは2.3節での想定に基づき『出力・待つ』『くりかえし』『分岐』『入力』『数・演算』の5種類に分かれている。ブロックは全部で19種類である。『出力・待つ』には、デジタル/アナログ出力と待つ(busyloop)、音を出すブロックがある。『くりかえし』には、C言語のfor文とwhile文に相当するブロックが、『分岐』には、if文に相当するブロックと条件式でよく利用する演算子に相当するブロックがある。『入力』には、デジタル/アナログ入力のブロックが、『数・演算』には、数値や変数、代入、四則演算のブロックがある。
ブロックの形状は、単独でC言語の文(式文)に相当するブロック(デジタル出力や変数への代入など)、式の一部になるブロック(数値、変数名、演算子、デジタル/アナログ入力など)、制御文に相当するブロック(for、while、if文など)で変え、形状が異なるブロックが結合できないようにしている。これにより文法的な誤りを防ぐ。」
(エ)表2(57ページ下方)
「
[図:0001433751000007.jpg]
」
(オ)4.1 aiBlocksを使った製作例と使用感(61ページ左欄23行~右欄4行)
「aiBlocksを使って製作したライントレースカーの外観を図13に、回路図を図14に示す。マイコンボードはArduino Uno、電源には単三形乾電池4本を使用している。モータの駆動にはトランジスタを使用し、ベース端子をアナログ出力ができる10番と11番ピンに接続する。ラインの判別にはLEDとCdSセルを使用する。LEDとCdSを、ライン(黒色)の幅以上のスペースを空けて2組固定し、LEDで床面を照らし、CdSでその反射光を受ける。固定抵抗とCdSの抵抗分圧により、CdSの明るさの変化による抵抗値の変化を電圧に変える。CdSで受ける光が弱い(ライン上)とアナログ入力の値が大きくなり、逆に受ける光が強い(ライン外)とアナログ入力の値が小さくなる。
車体の中心がライン上にあるときは左右のCdSの間にラインがあるので、アナログ入力の値は左右ともに小さい。このときは左右のモータの回転数を同一にして直進すればよい。ラインが左に曲がっていたり車体の中心がラインの右寄りになり、左のCdSがラインの黒色の影響を受けるとアナログ入力の値が大きくなる。このとき左のモータの回転数を下げれば、車体の中心がライン上に戻る。右のCdSがラインの黒色の影響を受けた場合も同様である。
ライントレースカーのプログラムを図15に示す。車体の左にあるCdSをA0番ピンに、モータを10番ピンにつないでいる。1つ目のif-else文でCdSが黒色の影響を受けA0番ピンの値が250以上であれば左のモータの回転速度を決める10番ピンのアナログ出力を15とし、そうでなければ50としている。2つ目のif-else文は車体の右にあるCdSとモータ用である。この2つのif-else文を繰り返すことでライン上を左右に振れながら車体が進む。」
(カ)図13~図15(61ページ右欄)
「
[図:0001433751000008.jpg]
[図:0001433751000009.jpg]
」
ウ 周知の技術的事項
上記ア~イに例示されるように、ロボット動作のためのプログラミングの分野において、次の技術は、本件出願前において周知の事項(以下「周知の技術的事項」という。)であったと認められる。
「ロボットの制御プログラムを生成するにあたり、相互に組み合わせ可能な形状を有する複数種類のブロックを選択して形状を組み合わせて配置すること。」
(5)本件補正発明と引用発明1との対比
ア 相当関係
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、発明を特定するための事項に次の相当関係があるといえる。
(ア)引用発明1における「ロボットの挙動」は、例えば、歩行、会話、音楽の演奏、移動、挨拶等のロボットの挙動を意味し(上記(3)イ(イ)、(オ))、「ロボットの挙動のシーケンス」は、ロボットの挙動を複数組み合わせることを意味し、「ロボットの挙動のシーケンスを構成する各挙動」は、ロボットの挙動を複数組み合わせる場合のそれぞれの挙動を意味する。そして、ロボットの挙動が、ロボットの挙動に対応するプログラムの機能により実現されることは明らかであるから、引用発明1の「ロボットの挙動のシーケンス」は、本件補正発明における「ロボットの制御プログラム」に相当し、以下同様に、「シーケンスを構成する各挙動」は「制御プログラムを構成する機能」に、「ライブラリー2.2として格納する」は「記憶する」に、「コンピュータの記憶部」は「記憶部」に、それぞれ相当する。そして、引用発明1の「各挙動をグラフィカルに表し形状を有する複数種類の制御ボックス10」は、「機能をグラフィカルに表し形状を有する複数種類のプログラム要素」である限りにおいて、本件補正発明における「機能をグラフィカルに表し相互に組み合わせ可能な形状を有する複数種類のプログラム要素」に一致する。
(イ)引用発明1における「操作部」は、その機能・作用からみて、本件補正発明における「入力部」に相当し、以下同様に、「選んで」は「選択して」に、「生成部」は「プログラム生成部」に、それぞれ相当する。また、引用発明1における「前記制御ボックス10を前記操作部により選んで前後の制御ボックスを弧で接続して配置すること」は、「前記プログラム要素を前記入力部により選択して配置すること」の限りにおいて、本件補正発明における「前記プログラム要素を前記入力部により選択して形状を組み合わせて配置すること」に一致する。
(ウ)引用発明1における「単一の挙動を記述した単純な操作で挿入可能な制御ブロック10」は、「一定の数の挙動がユーザーにより単純な「ドラッグ及びドロップ」操作でライブラリーから直接挿入されるために、本発明のシステムにおいて前もってプログラミングされる」(段落【0028】)ものであって、歩行、会話、音楽の演奏、移動、挨拶等を意味する(上記(3)イ(イ)、(オ))。また、本件補正発明における「単一の命令を記述した単純なプログラム要素」に関して、本件出願の明細書の段落【0012】において一例として示される「MOVE」は、「ロボット100のTCP(ツール先端点)を目標位置に移動させるようロボット100を動作させる要素」である。当該命令は、一見すれば目標位置への移動という単一の命令であるものの、コンピュータ上での処理を考えた場合、目標位置を達成するロボットの関節それぞれの目標変位を計算し、ロボットの各関節を当該目標変位へと駆動する指令を生成すること等を含む複数の処理を実行するための複数の指令が適切に組み合わされて実行されて初めて実現できる命令であるいえる。
してみると、引用発明1における「単一の挙動を記述した単純な操作で挿入可能な制御ブロック10」は、本件補正発明における「単一の命令を記述した単純なプログラム要素」に相当するといえる。
(エ)引用発明1における、「前記挙動を組み合わせて記述し、前記挙動を前記操作部により入力された文字列によって編集可能なスクリプト・ボックス」は、上記(3)イ(オ)に示した機能からみて、本件補正発明における「前記命令を組み合わせて記述し、前記機能を前記入力部により入力された文字列によって編集可能な可編集プログラム要素」に相当するといえる。
(オ)引用発明1における「ロボットの挙動を編集しプログラミングするためのシステム」は、上記(ア)~(イ)の限りにおいて、本件補正発明における「ロボットのプログラミング装置」に相当する。
イ 一致点
上記アから、本件補正発明と引用発明1とは、次の一致点で一致する。
[一致点]
「ロボットの制御プログラムを構成する機能をグラフィカルに表し形状を有する複数種類のプログラム要素を記憶する記憶部と、
ユーザによる操作を受け入れる入力部と、
前記記憶部に記憶されている前記プログラム要素を前記入力部により選択して配置することにより前記制御プログラムを生成するプログラム生成部とを備え、
前記プログラム要素として、単一の命令を記述した単純なプログラム要素と、前記命令を組み合わせて記述し、前記機能を前記入力部により入力された文字列によって編集可能な可編集プログラム要素とを備えるロボットのプログラミング装置。」
ウ 相違点
他方、本件補正発明と引用発明1とは、次の相違点で相違する。
[相違点]
プログラム要素に関し、
本件補正発明においては、「相互に組み合わせ可能な形状を有する」ものであって、プログラム要素の「形状を組み合わせて」配置することにより、制御プログラムを生成するのに対し、
引用発明1においては、制御ボックス10(プログラム要素)は、所定の形状を有するものの、相互に組み合わせ可能な形状を有しておらず、前後の制御ボックス10(プログラム要素)を弧で接続することにより、挙動のシーケンス(制御プログラム)を生成するものである点。
(6)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記(4)ウに周知の技術的事項として示した事項は、本件出願前において当業者に周知の技術であった。
引用発明1と周知の技術的事項とは、機能をグラフィカルに表した制御ボックスを接続して組み合わせることでロボットの制御プログラムを生成する技術である点で、技術分野が関連し、また、機能・作用が共通する。
してみると、引用発明1において、前後の制御ボックス10を弧で接続することに代えて、周知の技術的事項を採用し、上記相違点に係る本件補正発明とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(7)審判請求書における請求人の主張について
本件請求人は、令和6年10月30日提出の審判請求書において、概ね、上記相違点については引用文献1に開示も示唆もされていない旨を主張する。
しかしながら、上記(6)で検討したように、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、本件出願前における周知の技術的事項であったといえ、引用発明1に当該周知の技術的事項を適用することに困難性も認められないから、当該請求人の主張を採用することはできない。
(8)本件補正の適否(独立特許要件)の小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
上記3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり、決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~7に係る発明は、令和6年4月26日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の本件発明に対する拒絶の理由(原査定に説示される令和6年2月29日付け拒絶理由通知書に記載された理由A)は、概略、次のとおりである。
理由A:新規性
「本件発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」
(なお、引用文献1は、上記第2の[理由]3(1)アに示した文献である。)
3 引用文献に記載された発明、技術的事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された事項、及び、引用文献1に記載された引用発明1は、上記第2の[理由]3(3)に示したとおりである。
4 対比
本件発明は、上記第2の[理由]3で検討した本件補正発明から、補正事項(上記第2の[理由]2)による限定を削除したものである。
そして、本件補正発明と引用発明1とを対比した際の相違点(上記第2の[理由]3(5)ウ)は、当該補正事項に基づくものであるから、本件補正発明から補正事項を削除した本件発明と、引用発明1とを対比すると、両者に差異はない。
5 本件発明の新規性についてのまとめ
したがって、本件発明は、引用発明1であるから、上記2に示した理由Aのとおり、特許法第29条第1項第3号に該当する。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、原査定の拒絶の理由のとおり、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-017277