特許無効審判
2021-800016
多形体
- 審判番号
- 2021-800016
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2009-508325
- 登録番号
- 5323684
- 請求日
- 2021年03月02日
- 審決日
- 2022年07月15日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本ジェネリック 株式会社
- 【請求人代理人】牧野 知彦
- 【請求人代理人】岡田 健太郎
- 【被請求人】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【被請求人代理人】田中 伸一郎
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】市川 さつき
- 【被請求人代理人】服部 博信
- 【被請求人代理人】佐々木 康匡
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1113.537-YAA(C07D) / P1113.113-YAA(C07D) / P1113.121-YAA(C07D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第184条の19、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第134条第1項、特許法第29条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5323684号発明「多形体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5323684号の明細書及び特許請求の範囲の記載を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4、5、6、9、10、11、12、13、14、17、18、19、20、21、22、23、24について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許第5323684号の請求項1~18に係る発明についての出願は、2007年4月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2006年5月4日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月26日に特許権の設定登録がなされた(請求項の数18。以下、その特許を「本件特許」といい、その明細書を「本件明細書」といい、特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。)。
2 本件特許について、本件特許の利害関係人である、日本ジェネリック株式会社(以下「請求人」という。)から、本件特許請求の範囲の請求項1~18に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の無効審判の請求がなされた。
以下に、本件審判の請求以後の経緯を整理して示す。
令和 3年 3月 2日 審判請求書及び
甲第1号証~甲第5号証の8の提出
同年 7月 7日 審判事件答弁書及び乙第1号証の提出、
並びに、訂正請求書の提出
同年10月22日付け 審理事項通知
同年11月17日 上申書及び甲第6号証~甲第9号証の提出
(請求人)
上申書の提出(被請求人)
同年12月 8日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年12月22日 口頭審理の実施
令和 4年 1月24日付け 訂正拒絶理由通知及び職権審理結果通知
同年 2月24日 手続補正書及び意見書の提出(被請求人)
なお、職権審理結果通知に対して、請求人から意見書は提出されなかった。
第2 令和4年2月24日提出の手続補正書による訂正請求書の補正(以下「本件補正」という。)について
1 補正の内容
本件補正は、令和3年7月7日提出の訂正請求書に記載された訂正事項10及び訂正事項16を削除し、それにあわせ該訂正請求書の記載を補正するものである。
2 補正の適否
ア 訂正拒絶理由の内容
令和4年1月24日付け訂正拒絶理由通知において、訂正後の請求項25及び26に係る発明には、その物の製造方法が記載されているといえ、当該発明は明確でなく、そうすると、訂正事項10-2及び訂正事項16-2に係る当該箇所の訂正は、「薬剤」という物の発明が限定されるものか明らかでなく、結果として、「薬剤」という物の発明が限定されるものとはいえないので、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえず、また、同法同条第1項ただし書第2~4号に掲げる事項を目的とするものにも該当しないから、それらの訂正事項を含む請求項13および14に係る訂正を認めることができない、と指摘されたものである。
イ 本件補正に対する判断
本件補正は、訂正事項10及び訂正事項16に関して、それぞれ、訂正事項10-2、訂正事項16-2の部分を削除し、それに対応して訂正請求書の記載を補正するものであるから、本件補正は、令和3年7月7日提出の訂正請求書の要旨を変更するものでなく、認められる。
第3 訂正請求による訂正の適否についての当審の判断
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
前記第2のとおり、本件補正は認められるから、審判長が特許法第134条第1項に規定する訂正を請求するために指定した期間内である令和3年7月7日に被請求人が提出した訂正請求書による訂正の請求の趣旨は、「特許第5323684号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3~6、9~14、17~24について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1及び訂正事項2(訂正前の請求項3に係る訂正)
ア 訂正事項1
(ア)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項3に「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの請求項1記載の多形体A又は請求項2記載の多形体Bの1種の使用。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Aの使用であって、
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであり、」・・・「前記使用。」に訂正する。(審決注:下線は訂正箇所を示す。以下同様。)
(イ)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項3において、訂正事項1-1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであり、」の後に、
「且つ
前記医薬組成物は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液をtert.-ブチルメチルエーテルで希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製されるか、」という記載を追加する。
(ウ)訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項3において、訂正事項1-1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであり、」の後であって、且つ、訂正事項1-2の「無水多形体Aを使用して調製されるか、」の後に、
「或いは
前記医薬組成物は、以下の工程:
無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製され、ここで
前記無水多形体Bは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000001.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bである、」という記載を追加する。
イ 訂正事項2
(ア)訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項3に「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの請求項1記載の多形体A又は請求項2記載の多形体Bの1種の使用。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Bの使用であって、
前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、」・・・「前記使用。」と記載し、新たに請求項19とする。
(イ)訂正事項2-2
訂正事項2-1における新たな請求項19において、訂正事項2-1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、」の後に、
「 前記医薬組成物は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度に冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液をtert.-ブチルメチルエーテルで希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を10℃未満の温度で真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製されるか、」という記載を追加する。
(ウ)訂正事項2-3
訂正事項2-1における新たな請求項19において、訂正事項2-1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、」の後であって、且つ、訂正事項2-2の「無水多形体Bを使用して調製されるか、」の後に、
「或いは、
前記医薬組成物は、以下の工程:
無水多形体Aを10℃未満の温度に冷却する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製され、
ここで前記多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000002.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aである、」という記載を追加する。
(2)訂正事項3及び訂正事項4(訂正前の請求項4に係る訂正)
ア 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の請求項1記載の多形体A又は請求項2記載の多形体Bの1種を含有することを特徴とする、薬剤。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Aを含有することを特徴とし、
前記無水多形体Aが、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、薬剤。」に訂正する。
イ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の請求項1記載の多形体A又は請求項2記載の多形体Bの1種を含有することを特徴とする、薬剤。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Bを含有することを特徴とし、
ここで前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、且つ
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、薬剤。」と記載し、新たに請求項20とする。
(3)訂正事項5~訂正事項9(訂正前の請求項5、9、13に係る訂正)
ア 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1に記載の多形体Aであって、その粉末X線図が、請求項2記載の多形体Bの特徴的な反射を有さない、多形体A。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、その粉末X線図が、無水多形体Bの特徴的な反射を有さず、
ここで前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、多形体A。」に訂正する。
イ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1に記載の多形体Aであって、請求項2記載の多形体Bを有さないことをさらに特徴とする、多形体A。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、無水多形体Bを有さないことをさらに特徴とし、
ここで、前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、多形体A。」に訂正する。
ウ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1、5、7又は9に記載の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aを使用して調製される薬剤。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aを使用して調製される薬剤。」に訂正する。
エ 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1、5、7又は9に記載の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aを使用して調製される薬剤。」とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、
「206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、その粉末X線図が、無水多形体Bの特徴的な反射を有さない、無水多形体Aを使用して調製される薬剤であって、
前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、前記薬剤。」と記載し、新たに請求項21とする。
オ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1、5、7又は9に記載の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aを使用して調製される薬剤。」とあるうち、請求項7を引用するものについて、独立形式に改め、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000003.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aを使用して調製される薬剤。」と記載し、新たに請求項23とする。
(4)訂正事項10~訂正事項14(訂正前の請求項6、10、14に係る訂正)
ア 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6に「請求項2に記載の多形体Bであって、その粉末X線図が、請求項1記載の多形体Aの特徴的な反射を有さない、多形体B。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、その粉末X線図が、無水多形体Aの特徴的な反射を有さず、
ここで前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、多形体B。」に訂正する。
イ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10に「請求項2に記載の多形体Bであって、請求項1記載の多形体Aを有さないことをさらに特徴とする、多形体B。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、無水多形体Aを有さないことをさらに特徴とし、
ここで、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、多形体B。」に訂正する。
ウ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14に「請求項2、6、8又は10に記載の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを使用して調製される薬剤。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを使用して調製される薬剤であって、
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、薬剤。」に訂正する。
エ 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に「請求項2、6、8又は10に記載の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを使用して調製される薬剤。」とあるうち、請求項6を引用するものについて、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、その粉末X線図が、無水多形体Aの特徴的な反射を有さない、無水多形体Bを使用して調製される薬剤であって、
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、前記薬剤。」と記載し、新たに請求項22とする。
オ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項14に「請求項2、6、8又は10に記載の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを使用して調製される薬剤。」とあるうち、請求項8を引用するものについて、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000004.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bを使用して調製される薬剤。」と記載し、新たに請求項24とする。
(5)訂正事項15(訂正前の請求項11に係る訂正)
ア 訂正事項15-1
特許請求の範囲の請求項11に「薬剤を調製するための、請求項1に記載の無水多形体Aの使用。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「薬剤を調製するための、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aの使用であって、」・・・「前記使用。」に訂正する。
イ 訂正事項15-2
特許請求の範囲の請求項11において、訂正事項15-1の「無水多形体Aの使用であって、」の後に、
「 前記薬剤は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液を溶媒で希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製されるか、」という記載を追加する。
ウ 訂正事項15-3
特許請求の範囲の請求項11において、訂正事項15-1の「無水多形体Aの使用であって、」の後であって、且つ、訂正事項15-2の「無水多形体Aを使用して調製されるか、」の後に、
「或いは
前記薬剤は、以下の工程:
無水多形体B又は無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製され、ここで
前記無水多形体Bは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000005.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bである、」という記載を追加する。
(6)訂正事項16(訂正前の請求項12に係る訂正)
ア 訂正事項16-1
特許請求の範囲の請求項12に「薬剤を調製するための、請求項2に記載の無水多形体Bの使用。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「薬剤を調製するための、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bの使用であって、」・・・「前記使用。」に訂正する。
イ 訂正事項16-2
特許請求の範囲の請求項12において、訂正事項16-1の「無水多形体Bの使用であって、」の後に、
「 前記薬剤は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度に冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液を溶媒で希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を10℃未満の温度で真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製されるか、」という記載を追加する。
ウ 訂正事項16-3
特許請求の範囲の請求項12において、訂正事項16-1の「無水多形体Bの使用であって、」の後であって、且つ、訂正事項15-2の「無水多形体Bを使用して調製されるか、」の後に、
「或いは
前記薬剤は、以下の工程:無水多形体A又は無水多形体A及びBの混合物を10℃未満の温度に冷却する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製され、
ここで 前記無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000006.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aである、」という記載を追加する。
(7)訂正事項17(訂正前の請求項17に係る訂正)
訂正事項17
特許請求の範囲の請求項17に「図3に示される粉末X線図を有する、請求項1に記載の無水多形体A。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、図3に示される粉末X線図を有する、無水多形体A。」に訂正する。
(8)訂正事項18(訂正前の請求項18に係る訂正)
訂正事項18
特許請求の範囲の請求項18に「図4に示される粉末X線図を有する、請求項2に記載の無水多形体B。」とあるのを、引用関係を解消し、独立形式に改め、
「10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、図4に示される粉末X線図を有する、無水多形体Bであり、
ここで前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、前記無水多形体B。」に訂正する。
(9)本件明細書に係る訂正
ア 訂正事項19
(ア)訂正事項19-1
訂正前の本件明細書の段落【0005】の「10℃以下の温度まで冷却する工程」との記載を、「10℃未満の温度まで冷却する工程」に訂正する。
(イ)訂正事項19-2
訂正前の本件明細書の段落【0005】の「10℃以下の温度の真空下で乾燥する工程」との記載を、「10℃未満の温度の真空下で乾燥する工程」に訂正する。
イ 訂正事項20
(ア)訂正事項20-1
訂正前の本件明細書の段落【0004】の「濾過物」との記載を、「濾液」に訂正する。
(イ)訂正事項20-2
訂正前の本件明細書の段落【0005】の「濾過物」との記載を、「濾液」に訂正する。
(ウ)訂正事項20-3
訂正前の本件明細書の段落【0008】の「濾過物」との記載を、「濾液」に訂正する。
(エ)訂正事項20-4
訂正前の本件明細書の段落【0014】の「濾過物」との記載を、「濾液」に訂正する。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1及び訂正事項2(訂正前の請求項3に係る訂正)
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1-1及び訂正事項2-1について
訂正事項1-1及び訂正事項2-1に係る訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は請求項2を引用するものであったところ、訂正前の請求項1又は請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ、それぞれ、改めて分離したものである。
したがって、訂正事項1-1及び訂正事項2-1に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものということができる。
(イ)訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2-2及び訂正事項2-3について
訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、訂正事項1-1又は訂正事項2-1に係る訂正により、訂正前の請求項1又は請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ、それぞれ、改めて分離した発明の、「医薬組成物を調製するための」「無水多形体Aの使用」又は「医薬組成物を調製するための」「無水多形体Bの使用」において、医薬組成物を調製する工程を、それぞれ、特定することにより限定するものである。
したがって、訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
(ア)訂正事項1-1及び訂正事項2-1について
訂正事項1-1及び訂正事項2-1における、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は請求項2を引用するものであったものを、訂正前の請求項1又は請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めて分離する事項については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項1-1及び訂正事項2-1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2-2及び訂正事項2-3について
特許明細書等には、
「【0003】本発明の範囲内では・・・WO 2004/018468で調製された化合物が周囲温度下で2種のエナンチオトロピー多形体の混合物として存在することが見出された。・・・該混合物を>40℃の温度まで加熱することによって得ることのできる純粋な高温形体(多形体A)・・・」、
「【0004】無水多形体Aは、(a)1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスし、任意に該混合物を濾過する工程、(b)この熱い溶液又は熱い濾過物を結晶化が開始するまで冷却する工程、(c)tert.-ブチルメチルエーテルなどの溶媒で希釈する工程、(d)該溶媒混合物を吸引濾過する工程、及び(e)多形体Aを45℃の真空下で乾燥する工程、によって調製され得る。」、
「【0005】無水多形体Bは、(a)1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中に溶解させてリフラックスし、任意に該混合物を濾過する工程、(b)この熱い溶液又は濾過物を結晶化のために10℃以下の温度まで冷却する工程、(c)tert.-ブチルメチルエーテルなどの溶媒で希釈する工程、(d)溶媒混合物を吸引濾過する工程、及び(e)多形体を10℃以下の温度の真空下で乾燥する工程、によって調製され得る。」、
「【0007】得られた多形体は、I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者を治療するのに好適な医薬組成物を調製するためのWO 2004/018468に記載された2種の多形体A及びBの混合物と同一の方法で用いられ得る。」、
「【0008】実施例1 多形体Aの結晶化 粗い1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを5倍量の無水エタノールでリフラックスし、この熱い溶液を活性炭に通して濾過した。濾過物を20℃まで冷却して結晶化を開始した後、該溶液をtert. -ブチルメチルエーテルで2倍の容積まで希釈した。続いて、この懸濁液を2℃まで冷却し、2時間攪拌し、吸引濾過し、及び真空乾燥機において45℃で乾燥させた。」、及び、
「【0011】実施例2 多形体Bの結晶化 多形体Bは、実施例1からの多形体Aを<10℃の温度まで冷却することによって得られる。」と記載されている(下線は、当審が付与。以下同様。)。
段落【0005】の(b)(e)に記載の「10℃以下の温度まで冷却」につき、10℃未満というより狭い数値範囲に限定することは、その訂正に伴って技術的意義を追加主張していない以上、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないといえる。
また、段落【0004】及び【0005】に記載の「(d)該溶媒混合物を吸引濾過する工程」は、前工程の(c)で希釈し得られた懸濁液である溶その媒混合物を吸引濾過して、濾物である結晶(多形体)を得る工程であると認められる。
また、調製工程中に記載の無水多形体A又は無水多形体Bを、特許明細書の段落【0010】又は段落【0013】に記載の各格子定数により特定するものである。
そうすると、訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、それぞれ、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項1-1~訂正事項2-3に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、及び、特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項1-1~訂正事項2-3に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項3及び訂正事項4(訂正前の請求項4に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1又は請求項2を引用するものであったところ、訂正前の請求項1又は請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ、それぞれ、改めて分離したものである。
したがって、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項3及び訂正事項4における、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1又は請求項2を引用するものであったものを、訂正前の請求項1又は請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めて分離する事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、及び、特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項5~訂正事項9(訂正前の請求項5、9、13に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項5及び訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項5及び9が訂正前の請求項1及び請求項2を直接引用するものであったところ、訂正前の請求項1及び請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ、それぞれ、改めたものである。
また、訂正事項7~訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項13が訂正前の請求項1、5、7、9を直接又は間接的に引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めて、請求項5、7を引用していた発明を分離し、請求項9を引用していた発明を削除するものである。
したがって、訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項5及び訂正事項6における、訂正前の請求項5及び9が訂正前の請求項1及び請求項2を直接引用するものであったものを、訂正前の請求項1及び請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改める事項、並びに、訂正事項7~訂正事項9における、訂正前の請求項13が訂正前の請求項1、5、7又は9を直接又は間接的に引用するものであったものを、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めて、請求項5、7を引用していた発明を分離し、請求項9を引用していた発明を削除する事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項5及び訂正事項6に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、訂正事項7~訂正事項9に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、及び、特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項10~訂正事項14(訂正前の請求項6、10、14に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項10及び訂正事項11に係る訂正は、訂正前の請求項6及び10が訂正前の請求項1及び請求項2を直接引用するものであったところ、訂正前の請求項1及び請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ、それぞれ、改めたものである。
また、訂正事項12~訂正事項14に係る訂正は、訂正前の請求項14が訂正前の請求項2、6、8又は10を直接又は間接的に引用するものであったところ、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めて、請求項6、8を引用していた発明を分離し、請求項10を引用していた発明を削除するものである。
したがって、訂正事項10~訂正事項14に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項10及び訂正事項11における、訂正前の請求項6及び10が訂正前の請求項1及び請求項2を直接引用するものであったものを、訂正前の請求項1及び請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改める事項、並びに、訂正事項12~訂正事項14における、訂正前の請求項14が訂正前の請求項1、6、8又は10を直接又は間接的に引用するものであったものを、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めて、請求項6、8を引用していた発明を分離し、請求項10を引用していた発明を削除する事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項10~訂正事項14に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項10及び訂正事項11に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、訂正事項12~訂正事項14に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、及び、特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項10~訂正事項14に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項15(訂正前の請求項11に係る訂正)
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項15-1について
訂正事項15-1に係る訂正は、訂正前の請求項11が訂正前の請求項1を引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めるものである。
したがって、訂正事項15-1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものということができる。
(イ)訂正事項15-2及び訂正事項15-3について
訂正事項15-2及び訂正事項15-3に係る訂正は、訂正事項15-1に係る訂正により、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めた発明の、「薬剤を調製するための」「無水多形体Aの使用」において、薬剤を調製する工程を、無水多形体Aの特定の調製工程を経て得られる無水多形体Aを使用して調製すること、或いは、無水多形体B又は無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程を経て得られる無水多形体Aを使用して調製すること、ここで無水多形体Bが、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、特定の格子定数によって特徴づけられるものであることを、特定することにより限定するものである。
したがって、訂正事項15-2及び訂正事項15-3に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
(ア)訂正事項15-1について
訂正事項15-1における、訂正前の請求項11が訂正前の請求項1を引用するものであったものを、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改める事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項15-1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項15-2及び訂正事項15-3について
前記(1)イ(イ)に記載したように、特許明細書等の段落【0003】、【0004】、【0007】、【0008】及び【0013】の記載、また段落【0004】に記載の「(d)該溶媒混合物を吸引濾過する工程」は、前工程の(c)で希釈し得られた懸濁液である溶媒混合物を吸引濾過して、濾物である結晶(多形体)を得る工程であると認められること、さらに調製工程中に記載の無水多形体Bを、特許明細書の段落【0013】に記載の格子定数により特定することより、訂正事項15-2及び訂正事項15-3に係る訂正は、それぞれ、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項15-2及び訂正事項15-3に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項15-1~訂正事項15-3に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、及び、特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項15-1~訂正事項15-3に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項16(訂正前の請求項12に係る訂正)
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項16-1について
訂正事項16-1に係る訂正は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項2を引用するものであったところ、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めるものである。
したがって、訂正事項16-1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものということができる。
(イ)訂正事項16-2及び訂正事項16-3について
訂正事項16-2及び訂正事項16-3に係る訂正は、訂正事項16-1に係る訂正により、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めた発明の、「薬剤を調製するための」「無水多形体Bの使用」において、薬剤を調製する工程を、無水多形体Bの特定の調製工程を経て得られる無水多形体Bを使用して調製すること、或いは、無水多形体A又は無水多形体A及びBの混合物を10℃未満の温度に冷却する工程を経て得られる無水多形体Bを使用して調製すること、ここで無水多形体Bが化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、特定の格子定数によって特徴づけられるものであることを特定することにより限定するものである。
したがって、訂正事項16-2及び訂正事項16-3に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
(ア)訂正事項16-1について
訂正事項16-1における、訂正前の請求項12が訂正前の請求項2を引用するものであったものを、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改める事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項16-1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項16-2及び訂正事項16-3について
前記(1)イ(イ)に記載したように、特許明細書等の段落【0003】~【0005】、【0007】、【0008】、【0010】及び【0011】の記載、段落【0005】の(b)(e)に記載の「10℃以下の温度まで冷却」につき、10℃未満というより狭い数値範囲に限定することは、その訂正に伴って技術的意義を追加主張していない以上、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないといえること、また、段落【0004】及び【0005】に記載の「(d)該溶媒混合物を吸引濾過する工程」は、前工程の(c)で希釈し得られた懸濁液である溶媒混合物を吸引濾過して、濾物である結晶(多形体)を得る工程であると認められること、さらに、調製工程中に記載の無水多形体Aを、特許明細書の段落【0010】に記載の格子定数により特定することにより、訂正事項16-2及び訂正事項16-3に係る訂正は、それぞれ、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項16-2及び訂正事項16-3に係る訂正は、それぞれ、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項16-1~訂正事項16-3に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とするもの、及び、特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項16-1~訂正事項16-3に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項17(訂正前の請求項17に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項17に係る訂正は、訂正前の請求項17が訂正前の請求項1を引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めるものである。
したがって、訂正事項17に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項17における、訂正前の請求項17が訂正前の請求項1を引用するものであったものを、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改める事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項17に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項17に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とする訂正であって、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項17に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項18(訂正前の請求項18に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項18に係る訂正は、訂正前の請求項18が訂正前の請求項2を引用するものであったところ、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改めるものである。
したがって、訂正事項18に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項18における、訂正前の請求項18が訂正前の請求項2を引用するものであったものを、訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含む同一内容の独立形式請求項へ改める事項については、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
したがって、訂正事項18に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項18に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とする訂正であって、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項18に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(9)訂正事項19(本件明細書に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項19に係る訂正は、訂正前の本件明細書の段落【0005】の「10℃以下の温度まで冷却する工程」との記載について、国際出願日における国際出願(PCT/EP2007/054201(国際公開第2007/128721号参照))の明細書2頁22行には、「unter eine Temperatur von 10℃」と記載されており、「10℃未満の」の誤訳であることは明らかである。
したがって、訂正事項19に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項19は、前記アで述べたように、特許法第184条の19で読み替える、同法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した範囲においてした訂正であるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項19に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記アで述べたとおり、訂正事項19に係る訂正は、国際出願日における国際出願の明細書に基づいて誤訳を訂正し内容を明確化するものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項19に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 関係する請求項について
訂正事項19に係る明細書についての訂正は、国際出願日における国際出願の明細書に基づいて誤訳を訂正し内容を明確化することにより明細書の記載を訂正前の請求項3及び12に係るものについて訂正したものであるから、訂正事項19に係る明細書についての訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第4項の規定に適合するものである。
(10)訂正事項20(本件明細書に係る訂正)
ア 訂正の目的について
訂正事項20のうち、訂正事項20-1及び訂正事項20-2に係る訂正は、訂正前の本件明細書の段落【0004】、【0005】の「濾過物」との記載について、前記国際出願の明細書2頁6、21行には、「Filtrat」と記載されており、「Filtrat」が記載されている(b)工程は、熱い溶液又は熱い濾過したものを結晶化が開始するまで又は結晶化のために冷却する工程であるから、「濾液」の誤訳であることは明らかである。
訂正事項20のうち、訂正事項20-3及び訂正事項20-4に係る訂正は、訂正前の本件明細書の段落【0008】の「濾過物」との記載について、前記国際出願の明細書4頁7行には、「Filtrates」と記載されており、「Filtrates」が記載されている文には、濾過したものを20℃まで冷却して結晶化を開始した後、該溶液を活性炭に通して濾過したことが記載されていることから、「濾液」の誤訳であることは明らかである。
訂正事項20のうち、訂正事項20-4に係る訂正は、訂正前の本件明細書の段落【0014】の「濾過物」との記載について、前記国際出願の明細書13頁1行には、「Filtrat」と記載されており、「Filtrat」が記載されている文には、122Lのメタノールを濾過したものから蒸溜したことが記載されていることから、「濾液」の誤訳であることは明らかである。
したがって、訂正事項20に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものということができる。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項20は、前記アで述べたように、特許法第184条の19で読み替える、同法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した範囲においてした訂正であるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項20に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
前記アで述べたとおり、訂正事項20に係る訂正は、国際出願日における国際出願の明細書に基づいて誤訳を訂正し内容を明確化するものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項20に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 関係する請求項について
訂正事項20に係る明細書についての訂正は、国際出願日における国際出願の明細書に基づいて誤訳を訂正し内容を明確化することにより明細書の記載を訂正前の請求項3、11及び12に係るものについて訂正したものであるから、訂正事項20に係る明細書についての訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第4項の規定に適合するものである。
(11)一群の請求項について
訂正前の請求項5、9、13は、請求項13が、訂正の請求の対象である請求項5又は9の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項5、9、13について請求されている。
また、訂正前の請求項6、10、14は、請求項14が、訂正の請求の対象である請求項6又は10の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項6、10、14について請求されている。
さらに、訂正後の請求項3~6、9~14、17~24に係る訂正について、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正範囲として扱われることを求めている。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1、2又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項3、4、5、6、9、10、11、12、13、14、17、18、19、20、21、22、23、24についての訂正を認める。
第4 本件発明
前記第3で述べたとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1~24に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明24」といい、合わせて「本件発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A。
【請求項2】
10-40℃の温度で請求項1記載の多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B。
【請求項3】
I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Aの使用であって、
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであり、且つ
前記医薬組成物は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液をtert.-ブチルメチルエーテルで希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製されるか、或いは
前記医薬組成物は、以下の工程:
無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製され、ここで
前記無水多形体Bは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000007.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bである、
前記使用。
【請求項4】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Aを含有することを特徴とし、
前記無水多形体Aが、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、薬剤。
【請求項5】
206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、その粉末X線図が、無水多形体Bの特徴的な反射を有さず、
ここで前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、多形体A。
【請求項6】
10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、その粉末X線図が、無水多形体Aの特徴的な反射を有さず、
ここで前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、多形体B。
【請求項7】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000008.jpg]
によって特徴づけられる、多形体A。
【請求項8】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000009.jpg]
によって特徴づけられる、多形体B。
【請求項9】
206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、無水多形体Bを有さないことをさらに特徴とし、
ここで、前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、多形体A。
【請求項10】
10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、無水多形体Aを有さないことをさらに特徴とし、
ここで、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、多形体B。
【請求項11】
薬剤を調製するための、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aの使用であって、
前記薬剤は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液を溶媒で希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製されるか、或いは
前記薬剤は、以下の工程:
無水多形体B又は無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製され、ここで
前記無水多形体Bは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000010.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bである、前記使用。
【請求項12】
薬剤を調製するための、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bの使用であって、
前記薬剤は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度に冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液を溶媒で希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を10℃未満の温度で真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製されるか、或いは
前記薬剤は、以下の工程:無水多形体A又は無水多形体A及びBの混合物を10℃未満の温度に冷却する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製され、
ここで 前記無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000011.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aである、
前記使用。
【請求項13】
206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aを使用して調製される薬剤。
【請求項14】
10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを使用して調製される薬剤であって、
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、薬剤。
【請求項15】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000012.jpg]
によって特徴づけられる、多形体Aと、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤であって、前記薬剤が0.1%~0.5%の多形体Aを少なくとも含む、薬剤。
【請求項16】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000013.jpg]
によって特徴づけられる、多形体Bと、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤であって、前記薬剤が0.1%~0.5%の多形体Bを少なくとも含む、薬剤。
【請求項17】
206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、図3に示される粉末X線図を有する、無水多形体A。
【請求項18】
10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、図4に示される粉末X線図を有する、無水多形体Bであり、
ここで前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、前記無水多形体B。
【請求項19】
I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Bの使用であって、
前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、
前記医薬組成物は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度に冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液をtert.-ブチルメチルエーテルで希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を10℃未満の温度で真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製されるか、或いは、
前記医薬組成物は、以下の工程:
無水多形体Aを10℃未満の温度に冷却する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製され、
ここで前記無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000014.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aである、
前記使用。
【請求項20】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Bを含有することを特徴とし、
ここで前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであり、且つ
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、薬剤。
【請求項21】
206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、その粉末X線図が、無水多形体Bの特徴的な反射を有さない、無水多形体Aを使用して調製される薬剤であって、
前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、前記薬剤。
【請求項22】
10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、その粉末X線図が、無水多形体Aの特徴的な反射を有さない、無水多形体Bを使用して調製される薬剤であって、
前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、前記薬剤。
【請求項23】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000015.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aを使用して調製される薬剤。
【請求項24】
化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000016.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bを使用して調製される薬剤。」
第5 請求人の請求の趣旨及びその主張の概要並びに証拠方法
1 審判請求書に記載した無効理由の概要
請求人の請求の趣旨は、「特許第5323684号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至18に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」である。
そして、請求人が主張する無効理由1及び2は、概略以下のとおりである(第1回口頭審理調書)。
(1)無効理由1(明確性要件違反、サポート要件違反)
ア 無効理由1-1(明確性要件違反)
本件の特許請求の範囲の記載は、下記の理由で、請求項2の記載が不明確であり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
記
本件発明2の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bの粉末X線図における「d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å」について、本件明細書の段落【0004】には、「低温形体(多形体B)は・・。粉末X線図(図4参照)では、この形体は以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Å(表3及び4も参照)で特徴的な反射を示す」と記載されているところ、表3、4(段落【0012】、【0013】)には、当該d値は記載されていない[当該表3(【0012】)において最も近似している値を示すと、「11.3Å」、「9.36Å」、「7.48Å」、「6.77Å」である。]。段落【0004】の当該記載は、表3は図4から読み取った値を記載しているはずであるから、段落【0004】の当該記載は参考にならないというべきである。
そうすると、本件発明2は、本件明細書に記載されたd値とは異なる値で特定された結晶であり、その内容が不明確である。
イ 無効理由1-2(サポート要件違反)
本件の特許請求の範囲の記載は、下記の理由で、請求項2に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
記
前記アで述べたように、本件発明2は、本件明細書に記載されたd値とは異なる値で特定された結晶であるから、結果として、本件明細書に記載された発明とはいえない。
(2)無効理由2(新規性又は進歩性の欠如)
ア 無効理由2-1(新規性の欠如)
本件の請求項1~24に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証を参照することで、本件優先日前に頒布された甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、同法同条第1項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
イ 無効理由2-2(進歩性の欠如)
本件の請求項1~24に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証を参照することで、本件優先日前に頒布された甲第2号証に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、同法同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
2 証拠方法
請求人は、証拠方法として、以下の書証を提出している。
甲第1号証:特許第5323684号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:国際公開第2004/018468号(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特表2006-503013号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:実験成績証明書(以下「甲4」という。)
作成日:2021年2月25日
作成者:日本ジェネリック株式会社 つくば研究所 分析研究部
磯田 雄一、小林 佑希子
甲第5号証の1:平成29年(行ケ)第10147号判決(以下「甲5の1」という。)
甲第5号証の2:仲井由宣等編、「新製剤学」、1982年、株式会社南山堂発行、p.102-103(以下「甲5の2」という。)
甲第5号証の3:塩路雄作著、「固形製剤の製造技術」、2003年、株式会社シーエムシー出版発行、p.9-14(以下「甲5の3」という。)
甲第5号証の4:特開平1-242582号公報(以下「甲5の4」という。)
甲第5号証の5:特開平7-70120号公報(以下「甲5の5」という。)
甲第5号証の6:化学工学論文集、第21巻 第3号、1995年、p.437-443(以下「甲5の6」という。)
甲第5号証の7:特許第2708715号公報(以下「甲5の7」という。)
甲第5号証の8:「第十三改正 日本薬局方解説書」、1996年、東京廣川書店刊行、B-471-B-473、B-256-B-258(以下「甲5の8」という。)
甲第6号証:社団法人日本化学会編、「第4版実験化学講座1 基本操作I」、1990年、丸善株式会社発行、p.184-186(以下「甲6」という。)
甲第7号証:Toronto Research Chemicals、 「Certificate of Analysis N-Boc Linagliptin」、2018年 (以下「甲7」という。)
甲第8号証:「第十三改正 日本薬局方解説書」、1996年、東京廣川書店刊行、[B]一般試験法 B-471-B-475(以下「甲8」という。)
甲第9号証:各都道府県衛生主管部(局)長あて 厚生省医薬安全局審査管理課長通知、「医薬品の残留溶媒ガイドラインについて」、平成10年3月30日 医薬審第307号 (以下「甲9」という。)
第6 被請求人の答弁の趣旨及びその主張の概要並びに証拠方法
1 答弁の趣旨及びその主張
被請求人の答弁の趣旨は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」である(審判事件答弁書「6.答弁の趣旨」)。
そして、被請求人は、審判事件答弁書、上申書、口頭審理陳述要領書において、請求人が主張する前記無効理由1及び2は、いずれも理由がない旨の主張をしている。
2 証拠方法
被請求人は、証拠方法として、以下の書証を提出している。
乙第1号証:M.R.Caira, et al., Topics in Current Chemistry, Vol.198, (1998), p.164 (以下「乙1」という。)
第7 無効理由についての当審の判断
当審は、以下に示すとおり、無効理由1及び無効理由2には、理由がないものと判断する。
1 無効理由1:無効理由1-1(明確性要件違反)について
(1)無効理由1-1(明確性要件違反)の判断
無効理由1-1の対象請求項として、請求項2が挙げられていることから請求項2の記載を検討することとする。
本件発明2の、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B(以下「無水多形体B」という。以下同様。)の粉末X線図における格子面間隔であるd値を4つの特定の値で示したものであり、それ自体は明確である。そして、粉末X線図において、当該d値で特徴的な反射を有することが特定されている無水多形体Bは、結晶を特定する記載として明確である。
したがって、請求項2の記載には、第三者に不測の不利益を及ぼすような点はなく、本件発明2は、明確であるといえる。
(2)請求人の主張について
請求人は、令和3年3月2日提出の審判請求書5頁2~9行及び18頁22行~20頁1行において、本件発明2は特許請求の範囲に記載された粉末X線図おけるd値で特定されているが、本件明細書の段落【0012】の表3には、当該d値のうち特定のd値(「11.25Å」、「9.32Å」、「7.46Å」、「6.98Å」)が記載されておらず、この点、段落【0004】には「低温形体(多形体B)は、<10℃の温度まで冷却することによって得られる。粉末X線図(図4参照)では、この形体は以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Å(表3及び4も参照)で特徴的な反射を示す。」とあるが、上記表3及び図4から読み取った値を記載しているはずであるから、段落【0004】の記載は参考にならず、本件明細書に記載されたd値とは異なる値で特定された結晶形であるため、その内容が不明確であるから、明確性要件に違反する旨を主張している。
しかしながら、以下の2(4)で述べるように、発明の詳細な説明の段落【0004】には、本件発明2のd値が記載されており、同一結晶形では通例、回折角は±0.2°以内の範囲で一致するという、本件出願当時の技術常識を考慮すると、表3(【0012】)のd値が本件発明2のd値と明示的に完全に一致していないからといって、無水多形体Bのd値の特定が理解できなくなるとまではいえない。
そうである以上、発明の詳細な説明の段落【0004】に記載の、本件発明2のd値は、表3及び図4を参照することにより理解される、無水多形体Bの特徴的なd値といえ、その内容は明確であり、明確性要件を満たすものといえる。
したがって、請求人のこの主張は採用することができない。
(3)まとめ
本件の特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
したがって、本件発明2に係る特許は、同法同条第6項に違反して特許されたものではないから、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由1-1により無効とすべきものではない。
2 無効理由1:無効理由1-2(サポート要件違反)について
(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。
(2)特許請求の範囲の記載
前記第4に記載したとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
ア 背景技術に関する記載
「【背景技術】
【0002】
名称CD26としても公知な酵素DPP-IVは、N末端にプロリン又はアラニン基を有する蛋白質におけるジペプチドの開裂を促進するセリンプロテアーゼである。それによって、DPP-IV阻害剤は、ペプチドGLP-1を含む生理活性ペプチドの血栓濃度に影響を与える。このタイプの化合物は、増加したDPP-IV活性に関連するか、又は該DPP-IV活性を減少させることによって予防又は軽減することのできる病状又は疾患、特にI型又はII型の糖尿病、前糖尿病、又は減少した糖耐性の予防又は治療に有用である。 WO2004/018468は、有用な薬理学的特性を有するDPP-IV阻害剤を記載している。そこで開示されている阻害剤の一例は、1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンである。」
イ 無水多形体Bの実施の態様に関する記載
「【0003】
本発明の範囲内では、1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンが種々の多形体結晶修飾となり、且つWO2004/018468で調製された化合物が周囲温度下で2種のエナンチオトロピー多形体の混合物として存在することが見出された。該2種の多形体がもう1種に変形する温度は25±15℃である(図1及び2参照)。該混合物を>40℃の温度まで加熱することによって得ることのできる純粋な高温形体(多形体A)は、206±3℃で融解する。粉末X線図(図3参照)では、この形体は以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Å(表1及び2も参照)で特徴的な反射を示す。
【0004】
無水多形体Aは、(a)1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスし、任意に該混合物を濾過する工程、(b)この熱い溶液又は熱い濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程、(c)tert. -ブチルメチルエーテルなどの溶媒で希釈する工程、(d)該溶媒混合物を吸引濾過する工程、及び(e)多形体Aを45℃の真空下で乾燥する工程、によって調製され得る。 低温形体(多形体B)は、<10℃の温度まで冷却することによって得られる。粉末X線図(図4参照)では、この形体は以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Å(表3及び4も参照)で特徴的な反射を示す。
【0005】
無水多形体Bは、(a)1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中に溶解させてリフラックスし、任意に該混合物を濾過する工程、(b)この熱い溶液又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度まで冷却する工程、(c)tert.-ブチルメチルエーテルなどの溶媒で希釈する工程、(d)溶媒混合物を吸引濾過する工程、及び(e)多形体を10℃未満の温度の真空下で乾燥する工程、によって調製され得る。」
ウ 無水多形体Bの実施例に関する記載
「【0008】
実施例1 多形体Aの結晶化 粗い1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを5倍量の無水エタノールでリフラックスし、この熱い溶液を活性炭に通して濾過した。濾液を20℃まで冷却して結晶化を開始した後、該溶液をtert.-ブチルメチルエーテルで2倍の容積まで希釈した。続いて、この懸濁液を2℃まで冷却し、2時間攪拌し、吸引濾過し、及び真空乾燥機において45℃で乾燥させた。 多形体Aは206±3℃で融解する。該DSC図では、別のわずかな吸熱信号が約25℃で見ることができる。これは、該2種のエナンチオトロピー結晶修飾A及びBの間の完全に可逆な固体-固体の相転移である。該形体Aはこの変形温度よりも高温で熱力学的に安定な修飾であり、形態Bはこの変形温度よりも低温で熱力学的に安定な修飾である。 図2は周期的なDSC図を示しており、-40℃~120℃の相転移及びその逆が計3回起こっている。加熱中、相転移は吸熱信号として観察され、従って冷却中は発熱信号として観察される。第一の加熱サイクル中に、相転移は吸熱の二重信号か又は非常にブロードな信号としても観察され、全ての他のサイクルにおいて該信号は非常に鋭い吸熱又は発熱信号として起こり、加熱又は冷却が起こるか否かに依存する
・・・・・
【0011】
実施例2 多形体Bの結晶化 多形体Bは、実施例1からの形体Aを<10℃の温度まで冷却することによって得られる。
【0012】
表3:無水形体Bの30°以下の標識化されたX線反射2θと強度(標準化)
[図:0001391741000017.jpg]
・・・・・
【0013】
表4:無水形体Bの格子定数
[図:0001391741000018.jpg]
・・・・・
【図面の簡単な説明】
【0018】
・・・・・
【図4】無水形体Bの粉末X線図。
・・・・・
[図:0001391741000019.jpg]
」
(4)判断
ア 本件発明2の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0002】)、無水多形体Bに関する実施の態様の記載(【0004】~【0005】)の記載、並びに、実施例1及び2の記載(【0008】~【0013】)からみて、本件発明2の解決しようとする課題は、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを提供することであると認める。
イ (ア)発明の詳細な説明には、本件発明2の説明として、「【0004】・・低温形体(多形体B)は、<10℃の温度まで冷却することによって得られる。粉末X線図(図4参照)では、この形体は以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Å(表3及び4も参照)で特徴的な反射を示す」と記載されており、このd値は本件発明2のd値と同じである。
ここには、無水多形体Bの粉末X線図として図4が示され、そこに示されるd値として、具体的に「11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Å」という値が記載されていることから、実施例2の段落【0011】には、「多形体Bの結晶化 多形体Bは、実施例1からの多形体Aを<10℃の温度まで冷却することによって得られる。」という無水多形体Bの結晶化方法が記載されていることを踏まえると、具体的に無水多形体Bを取得し提供できるといえ、当業者であれば本件発明2の前記課題を解決し得ると理解できる。
(イ)発明の詳細な説明の実施例2(【0011】~【0013】)には、前記(ア)に記載した段落【0011】の記載の他に、無水多形体BのX線反射2θ及びd値が表3(【0012】)に記載されている。この表3には、本件発明2のd値のうち、「11.25Å」、「9.32Å」、「7.46Å」及び「6.98Å」は記載されておらず、これらのd値に最も近い、表3に記載のd値としては、「11.3Å」、「9.36Å」、「7.48Å」及び「7Å」が記載されている。
ここで、以下の2(1)に示した第十三改正日本薬局方解説書である甲8には、粉末X線回折測定法は結晶、結晶多形の同定に用いることができること、及び、同一結晶形では通例、回折角は±0.2°以内の範囲で一致すること(甲8a、甲8b)が記載されており、このことは、本件出願当時、技術常識であったといえる。
このことを考慮すると、表3のd値が本件発明2のd値と明示的に完全に一致していないからといって、無水多形体Bのd値の特定が理解できなくなるとまではいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の段落【0004】に記載の、本件発明2のd値は、表3及び図4を参照することにより理解される、無水多形体Bの特徴的なd値といえる。
したがって、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
ウ 請求人の主張について
請求人は、令和3年3月2日提出の審判請求書5頁2~9行及び18頁22行~20頁1行、並びに、令和3年12月8日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)12頁6~22行において、本件発明2は特許請求の範囲に記載された粉末X線図おけるd値で特定されているが、本件明細書には当該d値が記載されておらず、本件明細書に記載されたd値とは異なる値で特定された結晶形であり、本件発明2は本件明細書に記載された発明とはいえないから、サポート要件に違反する旨を主張している。
しかしながら、前記アで述べたとおり、発明の詳細な説明の段落【0004】には、本件発明2のd値が明確に記載されており、参考にならないという特段の事情はなく、同一結晶形では通例、回折角は±0.2°以内の範囲で一致するという、本件出願当時の技術常識を考慮すると、表3(【0012】)のd値が本件発明2のd値と明示的に完全に一致していないからといって、無水多形体Bのd値の特定が理解できなくなるとまではいえない。
そうである以上、発明の詳細な説明の段落【0004】に記載の、本件発明2のd値は、表3及び図4を参照することにより理解される、無水多形体Bの特徴的なd値といえ、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(5)まとめ
したがって、本件発明2は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明2に係る特許出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、本件発明2に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
2 無効理由2:無効理由2-1(新規性の欠如)及び無効理由2-2(進歩性の欠如)について
(1)請求人提出の証拠の内容
ア 甲1に記載されている事項
甲1は、本件特許公報であり、記載の摘記を省略する。
イ 甲2に記載されている事項(甲3は甲2の翻訳)
甲2は、国際公開公報(ドイツ語)であり、甲3は甲2のパテントファミリーで日本の公表公報であるため、甲2に記載されている事項は、甲3の翻訳を参考に記載した。
甲2a「特許請求の範囲
1.以下の一般式Iで表される化合物:
[図:0001391741000020.jpg]
ここで、R1は、ジメチルアミノカルボニル、ピロリジン-1-イルカルボニル、ピペリジン-1-イルカルボニル、t-ブチルカルボニルまたはシクロヘキシルカルボニル基で置換されたメチル基、
ナフチル、メチルナフチル、メトキシナフチル、ニトロナフチルまたは(ジメチルアミノ) -ナフチル基で置換されたメチル基、
2-フェニルエテニルまたはビフェニルイル基で置換されたメチル基、
フェニル-オキサジアゾリル、5-メチル-3-フェニル-イソキサゾリル、フェニル-ピリジニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、メチルイソキノリニル、(メトキシカルボニルメチルアミノ) -イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、メチルキナゾリニル、1,2-ジヒドロ-1-メチル-2-オキソ-キノリニル、1,2-ジヒドロ-2-メチル1オキソ-イソキノリニル、3,4-ジヒドロ-4-オキソ-フタラジニル、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-フタラジニル、3,4-ジヒドロ-4-オキソ-キナゾリニル、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-キナゾリニルまたは2-オキソ-2H-クロメニル基で置換されたメチル基、
2-メトキシエチル、2-フェニルオキシエチルまたは2-シアノエチル基、
フェニルカルボニルメチルまたは1-(フェニルカルボニル) -エチル基、
フェニル部分がアミノ、シアノメチルアミノ、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、(エチルオキシカルボニルアミノ) -カルボニルアミノまたは2-オキソ-イミダゾリジン-1-イル基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、
フェニル部分がカルボキシ、メトキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニルまたはモルホリン-4-イルカルボニル基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、
フェニル部分がメチルスルファニル、メチルスルフィニルまたはメチルスルホニル基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、
フェニル部分がカルボキシメトキシ、エチルオキシカルボニルメトキシ、イソプロピルオキシカルボニルメトキシ、アミノカルボニルメトキシ、メチルアミノカルボニルメトキシ、エチルアミノカルボニルメトキシ、イソプロピルアミノカルボニルメトキシ、ジメチルアミノカルボニルメトキシ、ピロリジン-1-イルカルボニルメトキシまたはモルホリン-4-イルカルボニルメトキシ基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、
フェニル部分が1-(メトキシカルボニル) -エチルオキシまたは1-(アミノカルボニル) -エチルオキシ基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、
フェニル部分がメチルスルフィニルメトキシ基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、
フェニル部分が2つのメトキシ基で置換されたフェニルカルボニルメチル基、または
フェニル部分における2つの隣接する水素原子が、-O-CH2-O-、-O-CH2-CH2-O-、または-N(CH3) -CO-O-基で置換されている、フェニルカルボニルメチル基であり、
R2は、メチル、イソプロピルまたはフェニル基を表し、かつ
R3は、2-メチル-2-プロペン-1-イル、2-クロロ-2-プロペン-1-イルまたは3-ブロモ-2-プロペン-1-イル基
2-ブテン-1-イルまたは2,3-ジメチル-2-ブテン-1-イル基
2-ブチン-1-イル基
1-シクロペンテン-1-イルメチル基 または
2-フラニルメチル基を表す、
並びに以下に列挙する化合物:
・・・・・
;その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、混合物、そのプロドラッグおよびその塩。
・・・・・
19.請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物または請求項18記載の生理的に許容される塩を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有することを特徴とする、薬理組成物。
20.請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物の、真性糖尿病タイプIおよびタイプII、関節炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに適した、薬理組成物を製造するための使用。」(特許請求の範囲 請求項1、19、20)
甲2b「8-(3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、その製造及びその薬物組成物としての使用」(1頁1~2行)
甲2c「このDPP-IVアッセイは、以下のようにして行った:
最終濃度100μMの、50μlの基質溶液(AFC;AFCは、アミド-4-トリフルオロメチルクマリンである)を、黒色のマイクロタイタープレートに入れた。20μlのアッセイバッファー(夫々最終濃度50mMのTris-HCl、pH 7.8、50mMのNaCl、1%のDMSO)を、ピペットで秤取り、これに加えた。この反応は、30μlの可溶化したCaco-2タンパク(最終濃度:ウエル当たり、0.14μgのタンパク)を添加することにより開始させた。検討すべきテスト物質は、典型的には予め希釈して20μlとして添加したが、結果としてアッセイバッファーの体積を、それに応じて減らした。この反応は、周囲温度にて60分間インキュベートすることにより行った。次いで、蛍光を、ビクター1420マルチラベルカウンタ(Victor 1420 Multilabel Counter)を用いて、励起波長405nmおよび発光波長535nmにて測定した。ブランクの読み(活性0%に相当)を、如何なるCaco-2タンパクも含まない、混合物(所定体積をアッセイバッファーで置換)について得、コントロール値(活性100%に相当)は、物質を全く添加してない混合物について得た。IC50値で表した、問題とするテスト物質の能力は、各場合に対して11個の測定点からなる用量/活性曲線から算出した。
[図:0001391741000021.jpg]
本発明によって製造される化合物は、例えば実施例2(80)の化合物10mg/kgを経口経路でラットに投与した場合に、この動物における如何なる挙動変化も検出されなかったことから、十分に許容性をもつものである。
これら化合物のDPP-IV活性を阻害する能力から、本発明による一般式Iの化合物および対応する製薬上許容されるその塩は、該DPP-IV活性の阻害によって影響される可能性のある全てのこれら状態または疾病を治療するのに適したものである。従って、本発明の化合物は、疾患または状態、例えばタイプIおよびタイプII真性糖尿病、糖尿病性合併症(例えば、網膜症、ネフロパシーまたはニューロパシー)、代謝性アシドーシスまたはケトーシス、反応性低血糖、インシュリン耐性、代謝性症候群(metabolic syndrome)、様々な器官の脂肪異常(dyslipidaemias)、関節炎、アテローム性動脈硬化症および関連疾患、肥満、同種移植片移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスの予防並びに治療のために適したものであると予想される。」(34頁12行~36頁末行)
甲2d「実施例V:1-[2-(2-メトキシ-フェニル) -2-オキソ-エチル]-3-メチル-7-(3-メチル-2-ブテン-1-イル) -8-クロロ-キサンチン
15mlのN,N-ジメチルホルムアミド中に分散させた、2.00gの3-メチル-7-(3-メチル-2-ブテン-1-イル) -8-クロロ-キサンチンと、1.38mgの炭酸カリウムとの混合物の、1.71gの2-ブロモ-1-(2-メトキシ-フェニル) -エタンを添加する。この反応混合物を周囲温度にて、8時間撹拌する。水で処理した後、得られる粗生成物を、溶離液としてシクロヘキサン/酢酸エチル(8:1~8:1)を用いて、シリカゲルカラムを介するクロマトグラフィー処理によって精製する。
収量:2.61g (理論値の84%)
マススペクトル(ESI+):m/z = 417,419 [M+H]+
以下の化合物を、実施例Vと同様にして得る:
・・・・・・
(86)1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-[(R) -3-(t-ブチルオキシカルボニルアミノ) -ピペリジン-1-イル]-キサンチン
Rf値:0.48 (シリカゲル、塩化メチレン/メタノール=95:5)
マススペクトル(ESI+):m/z=573[M+H]+
・・・・・
実施例2:1-(2-{2-[(エトキシカルボニル)メトキシ]-フェニル}-2-オキソ-エチル) -3-メチル-7-(3-メチル-2-ブテン-1-イル) -8-(3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン
1-(2-{2-[(エトキシカルボニル)メトキシ]-フェニル}-2-オキソ-エチル) -3-メチル-7-(3-メチル-2-ブテン-1-イル) -8-[3-(t-ブチルオキシカルボニルアミノ) -ピペリジン-1-イル]-キサンチン(209mg)の塩化メチレン(4ml)溶液を、1mlのトリフルオロ酢酸と併合し、周囲温度にて半時間撹拌する。作業を完結するために、この反応混合物を塩化メチレンで希釈し、飽和炭酸カリウム溶液で洗浄する。得られる有機相を乾燥し、蒸発させ、塩化メチレン/メタノール(1:0~4:1)を溶離液として使用し、シリカゲルカラムを通したクロマトグラフィー処理に掛ける。
収量:153mg(理論値の87%)
マススペクトル(ESI+):m/z=553[M+H]+
以下の化合物を、実施例2と同様にして得る:
・・・・・
(142)1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチン
(塩化メチレン中で、5-6Mのイソプロパノール性塩酸を使用して実施)
融点:198-202℃
マススペクトル(ESI+):m/z=473[M+H]+」(60頁3~15行、73頁17~20行、138頁6~20行、165頁20~24行)
ウ 甲4の実験成績証明書の記載内容
[図:0001391741000022.jpg]
[図:0001391741000023.jpg]
[図:0001391741000024.jpg]
[図:0001391741000025.jpg]
[図:0001391741000026.jpg]
[図:0001391741000027.jpg]
[図:0001391741000028.jpg]
[図:0001391741000029.jpg]
[図:0001391741000030.jpg]
[図:0001391741000031.jpg]
[図:0001391741000032.jpg]
エ 甲5の1の判決の説示内容
甲5の1の判決には、説示内容の一部として、以下の記載がある。
甲5の1a「イ しかし,前記((3)イ(ア))のとおり,結晶多形は,同じ化学組成をもちながら結晶構造が異なり,別の結晶形を示す現象又はその現象を示すものをいい,多くの医薬品で結晶多形の存在が確認されているところ,結晶多形体は,固有の融点,溶解度をもち,再結晶条件を変化させることで結晶多形体の存在を確認することができる。
・・・・・
ウ また,結晶多形が存在する医薬品においては,結晶多形体ごとに種々の物性の違いがあるため,バイオアベイラビリティ(生体内での有用性),結晶状態における安定性及び製剤特性などの種々の要因を考慮して,最適な結晶形を選択するという技術課題が存在している。・・・
このため,結晶多形が存在する医薬品においては,本件優先日当時の当業者の技術常識にとして,上記技術課題を解決するべく,再結晶条件につき検討を加えることでバイオアベイラビリティ(生体内での有用性),結晶状態における安定性及び製剤特性等の種々の要因を考慮して最適と思われる結晶形を探求し,これを得ようとすることは,当業者が当然に行うことということができる。」(47頁5行~48頁7行)
オ 甲5の2の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第11号証として提出され、医薬品の結晶及び多形についての記載が示されている。
カ 甲5の3の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第12号証として提出され、結晶多形の存在の有無を確認するための一般的な方法についての記載が示されている。
キ 甲5の4の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第14号証として提出され、結晶多形の調製方法の具体例についての記載が示されている。
ク 甲5の5の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第15号証として提出され、結晶多形の結晶学的安定性の試験例についての記載が示されている。
ケ 甲5の6の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第17号証として提出され、結晶多形の調製方法の具体例についての記載が示されている。
コ 甲5の7の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第18号証として提出され、結晶多形の調製方法の具体例についての記載が示されている。
サ 甲5の8の内容:判決文(甲5の1)中に示され、該事件の中で、結晶多形に関する技術常識を示すために甲第21号証として提出され、結晶多形の特性の一般的な測定法についての記載が示されている。
シ 甲6に記載されている事項
甲6a「a.再結晶
・・・・・
(i)試料の純度 再結晶を行う試料の純度は・・・・・
・・・・・
勿論,精製が可能かどうかは再結晶の原理からみて,溶解度曲線の形に関係するので,不純物が多い場合にも,純粋な結晶が得られることも少なくない.
(ii)溶媒の選択 再結晶溶媒の選択には一定の規則があるわけでなく,試行錯誤により選択するのが基本である.・・・・・一般には水素結合性,極性を考慮すれば,次の6種の溶媒の中から選択すれば十分であろう.
ヘキサン<ベンゼン<酢酸エチル<アセトン<エタノール<水(極性小から大)」(184頁下から14行~185頁17行)
ス 甲7の内容: 甲4で使用した出発物質である、N-Boc Linagliptin (Toronto Research Chemicals社製造Lot No.9-APD-14-5)の純度は98%であること。
セ 甲8に記載されている事項
甲8a「 46.粉末X線回折測定法
・・・結晶性物質のX線回折パターンは各化合物の各結晶形に固有かつ特徴的である○注1.したがって,本測定法は結晶,結晶多形及び溶媒和結晶○注2の同定,判定又は定量,結晶性の定性的評価,結晶化度の測定などに用いることができる.・・・
結晶性物質では,構成分子や原子が一定の周期性をもって規則正しく三次元配列して立体的な格子を形成しており,この格子の最小単位が単位格子である.単位格子中の任意の三格子点で規定される平面は,多くの平行な面の群を形成し,その面に特有な一定の面積隔が存在する.これらの面の群を結晶面と呼び,通例,ミラー指数hklで表す.この指数は,各単位格子の三主軸の長さを各主軸上のある結晶面の切片の長さで割った各値を一組の最も小さい整数に変換したものである.ある一組の平行な面(hkl)の面間隔はdhklで表す.
ある結晶面によりX線回折が生じる可能性及び干渉性散乱X線の回折方向は,ブラッグの法則で規定される.入射X線の波長をλ,結晶面に対するX線の入射角及び反射角をθ,反射次数をnとすると,
2dhklsinθ=nλ
を満たす角度でのみX線回折が生じる.したがって,面(hkl)の回折角2θは面間隔を規定する結晶系,格子定数及び入射X線の波長によって決定される.」(B-471頁7行~下から7行、審決注:○注数字は、注数字の各丸付き文字を表す。以下同様。)
甲8b「同定及び判定
・・・・・同一結晶形では通例,回折角は±0.2°以内の範囲で一致し,相対強度の差は20%以内である○注12.同定又は判定しようとするX線回折パターンを比較するとき,両者のX線回折パターンが同一の面間隔のところに同様の相対強度の回折ピークを与えるならば両者の同一性が確認される.」(B-472頁下から6行~B-473頁8行)
ソ 甲9の内容: 「医薬品の残留溶媒ガイドライン」(厚生省医薬安全局審査管理課長通知)において、エタノールは、毒性が低く、人の健康に及ぼすリスクも低いと考えられるクラス3の溶媒に分類されていること。
(2)被請求人提出の証拠の内容
乙1の内容: 結晶化プロセスにおける結果の予測が困難であること。
(3)甲2に記載された発明
ア 甲2は、請求項1に記載の一般式Iで表される化合物並びに請求項1に列挙される化合物、該化合物の薬物組成物としての使用及び該化合物の薬物組成物に関し記載するものである(甲2a 請求項1、19、20、甲2b)。
請求項1に記載の一般式Iで表される化合物の具体例として、甲2の実施例には、実施例2に記載の製造方法と同様にして製造し化合物(142)、すなわち、融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを得たことが記載されている(甲2d)。この化合物は、融点が198-202℃であると示されていることから、固体であると理解される。
そうすると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。
「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」の発明(以下「甲2発明1」という。)
イ さらに、甲2には、化合物(142)がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)の阻害活性を有することを具体的に確認したこと(甲2c)、それゆえ、化合物(142)は、タイプIおよびタイプII真性糖尿病、関節炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに適していると予想されること(甲2c)も記載されている。
そうすると、請求項19、20の記載(甲2a)も踏まえると、化合物(142)は、真性糖尿病タイプIおよびタイプII、関節炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに適した、薬理組成物を製造するために使用できること、および、その使用により、化合物(142)を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有する薬理組成物とすることができると理解される。
したがって、甲2には、以下の発明も記載されているといえる。
「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の、真性糖尿病タイプIおよびタイプII、関節炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに適した、薬理組成物を製造するための使用方法」の発明(以下「甲2発明2」という。)
「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有する薬理組成物」の発明(以下「甲2発明3」という。)
(4)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明1との対比
本件発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点1-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明1は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明1は、融点が198-202℃である点。
相違点1-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明1は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点1-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明1は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
(イ)相違点の判断
請求人の主張する無効理由2は、本件発明と甲2記載の発明との相違点に関し、甲4として提出した追加実験の結果を参酌することを前提として、実質的相違点ではない(新規性)、相違点の構成に容易に想到する(進歩性)旨の主張しているので(審判請求書21~22頁)、甲4(実験成績証明書)に記載の実験-I成績体又は実験-II成績体が、甲2の実施例2と同様に化合物(142)を製造した「追試実験」結果といえるかについて検討した後、上記相違点を判断することとする。
a 甲4(実験成績証明書)に記載の実験-I成績体又は実験-II成績体が、甲2の実施例2と化合物(142)を製造した「追試実験」結果といえるかについて
甲4は、請求人が、甲2の実施例2と同様にした化合物(142)の製造の「追試実験」と称する実験をして得られた実験-I成績体又は実験-II成績体と、本件発明1の結晶とを比較した実験成績証明書である。ちなみに、実験-Iは、甲2の実施例2と概ね同量で実施したものであり、実験-IIは、甲2の実施例2の約3倍量のスケールで実施したものである。
請求人は、甲4の「追試実験」結果を参酌することで、本件発明1は、甲2に記載された発明であるか、少なくとも、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に想到し得たものである、と主張していることから、甲4に記載の実験-I成績体又は実験-II成績体が、甲2の実施例2の化合物(142)を製造した「追試実験」結果といえるか、以下に示した観点から検討する。
(a)融点について
甲4の3~5頁に記載の「4-1.示差走査熱量測定(DSC)」の図1及び図2には、実験-I成績体の融解温度は206.1℃、及び、実験-II成績体の融解温度は203.8℃であることが記載されている。これらの結果は、甲2の化合物(142)すなわち甲2発明1の融点として記載されている、「融点:198-202℃」と異なるものである。
この記載がある以上、甲2発明1については、当業者は、融点:198-202℃の物質であると理解し、異なる融点の物質が製造された結果から同じ物質が製造されたとは理解しない。
したがって、甲4の実験-I成績体及び実験-II成績体が、甲2の実施例2と同様に化合物(142)を製造した「追試実験」結果であるとは認められない。
(b)結晶について
甲2には、甲2発明1が「固体」であると記載されているにすぎず、結晶であるとも、結晶化方法についても記載も示唆もなされていない。それゆえ、甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえない。
一方、甲4の「4-2.粉末X線回折(粉末XRD)」及び「4-3.粉末X線回折(粉末XRD)」(6~10頁)には、図4、図5、図7及び表1~表3が記載され、粉末X線回折(粉末XRD)の各種データが示されていることから、実験-I成績体(合成1日後のもの)並びに実験-II成績体(合成4日後のもの、及び、合成1箇月後のもの)は、いずれも結晶であると認められる。ただし、甲4には、結晶化方法について具体的な記載はない。
そうすると、甲2には、甲2発明1が「固体」であると記載されているにすぎず、結晶であるとも、結晶化方法についても記載も示唆もなされていないことから、甲2発明1が必ずしも結晶であるとはいえない一方、甲4には、結晶化方法は明らかでないものの、実験-I成績体及び実験-II成績体は結晶である以上、甲4の実験-I成績体及び実験-II成績体が、甲2発明1と同じ物質であるとはいえない。
したがって、甲4の実験-I成績体及び実験-II成績体が、甲2の実施例2の化合物(142)を製造した「追試実験」結果であるとは認められない。
(c)実験-II成績体(合成1箇月後測定)のd値について
甲4の9~10頁に記載の「4-3.粉末X線回折(粉末XRD)」の図7、表2及び表3には、実験-II成績体(合成1箇月後測定)の粉末XRD図、2θ(測定値)及び2θから算出されたd値が記載されている。ちなみに、実験-II成績体を合成後1箇月どのように保存していたのか不明である。
前記(b)で述べたように、甲2には、甲2発明1が「固体」であると記載されているにすぎず、結晶であるとも、結晶化方法についても記載も示唆もなされていない。さらに、甲2には、甲2の実施例2の化合物(142)を製造する方法として、合成後1箇月保存することは記載されていない。
一般に、化合物の物性は、保存環境(温度、湿度等)の影響により変化する可能性があるものである。それゆえ、実験-II成績体(合成1箇月後測定)と甲2発明1とは、その保存期間も含めて考えると製造方法が同じであるとはいえず、製造方法が同じであるとはいえない。
したがって、甲4に記載の実験-II成績体が、甲2の実施例2の化合物(142)を製造した「追試実験」結果であるとは認められない。
(d)以上(a)~(c)より、甲4に記載の実験-I成績体又は実験-II成績体が、甲2の実施例2の化合物(142)を製造した「追試実験」結果とはいえない。
したがって、甲2を主引例とする場合の、本件発明1の新規性及び進歩性の判断に、甲4の「追試実験」結果を参酌することはできない。
b 相違点1-1~相違点1-3の検討について
上述のとおり、甲4の「追試実験」結果を参酌することはできないので、その前提で相違点の判断をする。
(a)新規性について
i 相違点1-1について
本件発明1は、206±3℃で融解する、すなわち、融点が206±3℃であるのに対し、甲2発明1は、融点が198-202℃である。そして、異なる融点が実質的に同じであるといえる本件優先日当時の技術常識があったとは認められない。
したがって、相違点1-1は、実質的な相違点といえる。
ii 相違点1-2及び相違点1-3について
前記a(b)に記載したように、甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえない。ましてや、甲2発明1の「固体」が、結晶の無水多形体Aであることも、結晶のd値も不明である。
また、甲2発明1が、記載がなくとも、無水多形体Aであること、さらに、その粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することが記載されているに等しいとする、本件優先日当時の技術常識もない。
したがって、相違点1-2及び相違点1-3も、実質的な相違点といえる。
iii 以上より、本件発明1は、甲2発明1ではない。
(b)進歩性について
相違点1-1~相違点1-3は、特定の結晶を提供するという課題に関していえば、関連しているものであるので、一体的に検討する。
甲2発明の化合物が医薬化合物であることを考慮すると、結晶自体を探索する動機付けについては、一応存在するといえる。
そして、結晶の発明を当業者が容易に発明することができたかどうかについては、結晶析出方法が容易になし得たものであるかどうかの点、製造された結晶が予測できない顕著な効果を有しているかどうかの点から検討すべきである。
まず、結晶析出方法について検討する。
「無水エタノール」という結晶溶媒自体、技術常識の結晶溶媒であるエタノールに概念上含まれるものであったとしても、水分を相当量含んでいるものを含有する「エタノール」としか記載されていない甲6には無水エタノールが記載されているとはいえない上に、仮に、甲6の記載から結晶化溶媒として無水エタノールが示唆されているといえる場合であっても、さらに濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥するという点を含めた結晶析出方法は、技術常識とはいえない。
したがって、容易に得られたとはいえない本件発明1の結晶を得て、さらにその融点を特定し、XRDの分析を行いピークを特定することは、当業者が容易に発明することができたとはいえない。
以上より、本件発明1の効果を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 請求人の主張について
(a)請求人は、以下のことを主張している。
i 請求人は、令和3年11月17日提出の上申書(請求人)7頁11行~8頁3行において、甲2には最終産物を何℃で得たのか記載がなく、また、甲4の試験も最終産物を何℃で得たのか明らかでない旨の被請求人の答弁書の主張に答える形で、甲4には最終産物を何℃で得たのか具体的な記載はないものの、最終産物を得た温度は室温であり、ごく常識的な条件で問題ない条件であって、技術常識に基づいて適宜設定すべき設計事項である旨主張している。
また、令和3年11月17日提出の上申書(請求人)8頁5行~9頁5行において、甲4には、化合物142の製造に用いる出発物質(化合物86)をどのように調製したのか記載がなく、出発物質の不純物プロファイルも影響するとの被請求人の答弁書の主張に答える形で、甲4で使用した出発物質の純度は98%(甲7)であり、不純物が多い場合にも、純粋な結晶が得られることも少なくないから(甲6)、甲4で使用した出発物質の純度から再結晶する際の不純物の影響は問題ない旨主張している。
さらに、甲4の追試は、甲2の実施例2の最終生成物(142)の結晶形を立証するための実験であり、最終生成物の合成工程は甲2と同一であるから、出発物質をどのように調製したのかは問題とならず、さらに、本件優先日当時の技術常識に照らしても、出発物質である化合物86の合成それほど困難なものとはいえず、当業者であれば容易に合成することが可能である旨主張している。
ii 請求人は、令和3年11月17日提出の上申書(請求人)9頁7~26行において、審判請求書15頁以下で知財高裁判決を示して説明したとおり(甲5の1)、医薬品の原薬になりうる物質が見出されれば、医薬品製造にかかる当業者であれば、物質に関する先行技術文献の存在そのものが結晶多形を製造しようとする動機付けになり得る旨主張している。
iii 請求人は、令和3年11月17日提出の上申書(請求人)11頁12行~12頁23行において、d値が結晶構造を示すことは技術常識であって、本件発明が無水物であるならば、測定した結晶のd値がこれと一致していればその結晶は無水物であること、甲4に記載のDSCデータに基づき追試で得られた結晶が無水物であることは示されていると考えるが、仮に被請求人の主張のとおり、無水物であることが示されていないというのであれば、甲1(本件特許公報)に記載の結晶が無水物であることを裏付けるデータは甲1にも記載されてないということなること、甲2を追試した結果、d値が一致する物が得られるのであれば、進歩性を欠如することから、追試によって「無水物」であることまで理解する必要もない旨主張している。
iv 請求人は、令和3年11月17日提出の上申書(請求人)12頁25行~13頁14行において(本件発明3についての主張であるが、前記b(b)で述べたように、本件発明1の進歩性の判断に関係する主張であるから、ここで取り上げる。)、甲6aの記載より、再結晶溶媒としてエタノールを使用することは技術常識であり、また、甲9より、エタノールは毒性が低く人の健康に及ぼすリスクも低いと考えられる溶媒であることから、医薬品の製造においてエタノールは当然の選択肢であるから、甲2記載の塩化メチレンに代えて無水エタノールを用いることは、単なる設計事項の問題にすぎず、何らの顕著な効果も認めることはできない旨主張している。
v 請求人は、令和3年12月8日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)4頁1行~7頁4行及び令和3年12月8日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)12頁24行~13頁17行において、甲5の1の「・・多くの医薬品で結晶多形の存在が確認されているところ,結晶多形体は,固有の融点,溶解度をもち,再結晶条件を変化させることで結晶多形体の存在を確認することができる。」(甲5の1a)という判示事項の記載より、結晶であれば固有の融点を持つことは技術常識であり、当業者であれば、文献に融点の記載があれば、当該物質が結晶であることを当然のこととして理解する、とした上で、甲2には融点の記載がある以上、甲2発明1が結晶であることは当業者に明らかであること、そうである以上、技術常識に照らし、結晶多形を得ようとすることには十分な動機付けがあること、付言として、本件明細書には無水多形体AやBの作用効果についての特段の記載はない上に、本件明細書の段落【0003】の記載より、無水多形体A及びBは室温レベルで結晶転移する不安定な結晶形であるから、結晶としての安定性という効果を奏しておらず、顕著な効果が認められる余地はない旨主張している。
vi 請求人は、令和3年12月8日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)7頁17行~8頁24行及び9頁末行~10頁8行において、相違点1-3に関連し、
(i)本件発明1が規定するのは所定のd値を有する「無水多形体A」というだけであるところ、甲4の実験のように無水多形体AとBの混合物が得られている以上、無水多形体AとBの両方が得られているといえるから、構成要件の充足性において何ら問題はない旨、
(ii)甲2には融点の記載があり、当業者は融点の記載があればその物質が結晶形であることを理解すること、なお、甲2には、本件化合物を得るための製法の記載があり、これを追試すれば、無水多形体A及びBが得られるから、そもそも、甲2において本件化合物が結晶形であることや無水物であることが明示されているか否かは、本件発明1の新規性や進歩性の議論とは無関係である旨主張している。
vii 請求人は、令和3年12月8日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)10頁15行~11頁14行において、被請求人の、甲2でいかなる結晶形が得られたのか不明との主張に対し、本件明細書の段落【0003】によれば、これは無水多形体AやBであったはずであるから、被請求人がその結晶形を問題視するのであれば、段落【0003】の根拠になった実験ノート等を示すなどして問題点を主張立証すべきである旨、及び、
同口頭審理陳述要領書(請求人)13頁24行~15頁末行において、被請求人の主張が、甲4の出発物質の不純物プロファイルによって最終物の結晶形に影響を与える場合があるという趣旨である場合、それは単なる抽象的な可能性の問題に過ぎず、甲4で用いた原料の純度は98%であって不純物は十分に少ないし、甲2においても原料はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製されており不純物量は十分に少ないといえるから、甲4の実験における原料の不純物の状態が甲2とそれほど異なっていたはずはなく、甲4の追試によって無水多形体A及びBが得られており、この結果は本件明細書【0003】と一致しているから、客観的にも不純物の影響がなかったことが示されている旨主張している。
(b)前記(a)の主張について、以下検討する。
i 主張iについて
甲2にも及び甲4の「追試実験」にも、最終産物を何℃で得たのか記載はなく、仮に、最終産物を得た温度が室温であり常識的な条件であるとしても、前記aで述べたように、甲4の実験-I成績体及び実験-II成績体の融解温度は甲2発明1の「融点:198-202℃」と異なるものであり、また、甲2発明1が必ずしも結晶であるとはいえない一方、甲4の実験-I成績体及び実験-II成績体は結晶であることから、甲4の実験-I成績体及び実験-II成績体が、甲2発明1と同じ物質であるとはいえない以上、甲4で使用した出発物質の調製方法や純度について検討するまでもなく、甲4に記載の実験-I成績体又は実験-II成績体が、甲2の実施例2の化合物(142)を製造した「追試実験」結果とはいえない。
ii 主張iiについて
医薬化合物の結晶多形の探索を行うことに動機付けがあるからといって、結晶多形に係る発明の取得の容易想到性は、結晶析出方法や製造された結晶の効果の顕著性で判断されるべきである。
そして、本件発明1の結晶は、晶析溶媒として‘無水’エタノールを用いており、「無水エタノール」という結晶溶媒自体、技術常識の結晶溶媒であるエタノールに概念上含まれるものであったとしても、水分を相当量含んでいるものを包含する「エタノール」としか記載されていない甲6には無水エタノールが記載されているとはいえない上に、仮に、甲6の記載から結晶化溶媒として無水エタノールが示唆されているといえる場合であっても、さらに濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥するという点を含めた結晶析出方法は、技術常識とはいえないことから、そのような結晶析出方法により初めて析出された本件発明1の結晶が、容易に発明することができたものとはいえないのは、前記b(b)で述べたとおりである。
iii 主張iiiについて
「無水物」である点については、本件発明1の発明特定事項である以上、それを甲2発明1が備えていることを示す必要があるが、そのことを示すまでもなく、前記aで述べたとおり、甲4の「追試実験」結果を参酌できず、他の点(d値)等が一致しているとはいえない。
また、一般に、結晶が水和物であるか無水物であるかの確認は、熱重量分析(TG)の重量減少や示差走査熱量測定(DSC)の吸熱ピークにより判断されるものであり、【0017】や【図1】の記載から、本件発明1の結晶が無水物であることを推定しているものである。
iv 主張ivについて
再結晶溶媒としてエタノールを使用することは技術常識であり、エタノールは毒性が低く人の健康に及ぼすリスクも低い溶媒であるとしても、本件発明1の晶析溶媒は無水エタノールであって、水分含量等の純度を考慮すると甲6に記載された「エタノール」と同視することはできない。また、無水エタノールをエタノールと同視できないことを考慮すると、無水エタノールを適用することが単なる設計事項といえる技術的根拠も示されていない。無水エタノールではなく、水分含量等の純度が異なるエタノールを用いた場合であっても本件発明1の無水結晶が得られるかは不明である。したがって、請求人の主張する、甲2記載の塩化メチレンに代えて無水エタノールを用いることは、単なる設計事項の問題にすぎず、何らの顕著な効果も認めることはできない、とはいえない。
v 主張vについて
結晶が固有の融点を持つことは技術常識と認められるが、甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえないところ、他の相違点である相違点1-1(融点)および相違点1-2(d値)について、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえないことは、前記b(b)で述べたとおりである。
付言としての、本件発明が無水多形体AやBの作用効果について無水多形体A及びBは室温レベルで結晶転移する不安定な結晶形であるから、結晶としての安定性という効果を奏しておらず、顕著な効果が認められないとの主張については、本件発明1の構成を特定することは、当業者が容易になし得るとはいえない以上、本件発明1の効果を検討するまでもない。
vi 主張viについて
(i)について、甲4の「追試実験」結果を参酌できないことについては、前記aで述べたとおりであり、構成要件の充足性において何ら問題はないとはいえない。
(ii)について、甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえないところ、前記aで述べたとおり、甲4の「追試実験」結果を参酌できず、甲2発明1が、本件発明1の構成要件を備えた結晶形であることや無水物であることについて、甲2に記載されているか、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易になし得た事項であるといえない限り、新規性又は進歩性を否定できないことは当然である。
vii 主張viiについて
請求人は、本件発明1の結晶である無水多形体Aが甲2に記載された発明であると主張する以上、被請求人の、甲2でいかなる結晶形が得られたのか不明との主張に対しては、請求人が甲2で得られた結晶形を示すべきであり、それを示すべく請求人は甲4を提出しているが、甲4の実験における原料の不純物の状態やその影響を検討するまでもなく、甲4の「追試実験」結果を参酌できないことについては、前記aで述べたとおりである。
本件明細書の段落【0003】の記載をみても、甲2発明1が無水多形体A又はBであるという根拠はない。本件明細書に無水多形体A又はBの製造方法を記載している被請求人に、本願の発明の詳細な説明の記載の実施可能要件等が問われているわけでもない条件で、実験ノートを提出すべき必要性はないといえる。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明1は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲2発明1との対比
本件発明2の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明2の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点2-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明2は、10-40℃の温度で本件発明1の多形体Aに可逆的に変形すると特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点2-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明2は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点2-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明2は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
(イ)判断
a 甲4(実験成績証明書)の「追試実験」結果の参酌について
請求人は、甲4の「追試実験」結果を参酌することで、本件発明2は、甲2に記載された発明であるか、少なくとも、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に想到し得たものである、と主張している。
前記ア(イ)aで述べたように、甲4に記載の実験-I成績体又は実験-II成績体が、甲2の実施例2の化合物(142)を製造した「追試実験」結果とはいえない。
したがって、甲2を主引例とする場合の、本件発明2の新規性及び進歩性の判断に、甲4の「追試実験」結果を参酌することはできない。
b 甲4の「追試実験」結果の参酌無しでの、相違点2-1~相違点2-3の検討について
(a)新規性について
相違点2-2及び相違点2-3を先に検討する。
i 相違点2-2及び相違点2-3について
甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえず、ましてや、甲2発明1の「固体」が、結晶の無水多形体Bであることも、結晶のd値も不明である。
また、甲2発明1が、記載がなくとも、無水多形体Bであること、さらに、その粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することが記載されているに等しいとする、本件優先日当時の技術常識もない。
したがって、相違点2-2及び相違点2-3は、実質的な相違点といえる。
ii したがって、相違点2-1を検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明1ではない。
(b)進歩性について
相違点2-1~相違点2-3は、特定の結晶を提供するという課題に関していえば、関連しているものであるので、一体的に検討する。
甲2発明の化合物が医薬化合物であることを考慮すると、結晶自体を探索する動機付けについては、一応存在するといえる。
そして、結晶の発明を当業者が容易に発明することができたかどうかについては、結晶析出方法が容易になし得たものであるかどうかの点、製造された結晶が予測できない顕著な効果を有しているかどうかの点から検討すべきである。
そこで、まず結晶析出方法について検討すると、本件発明2は、無水多形体Bという結晶であり、無水多形体Aを、<10℃の温度まで冷却することによって得られるものである(【0004】)。無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを‘無水’エタノール中でリフラックス後、濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥して得られるものである(【0004】)。
「無水エタノール」という結晶溶媒自体、技術常識の結晶溶媒であるエタノールに概念上含まれるものであったとしても、水分を相当量含んでいるものを包含する「エタノール」としか記載されていない甲6には無水エタノールが記載されているとはいえない上に、仮に、甲6の記載から結晶化溶媒として無水エタノールが示唆されているといえる場合であっても、さらに濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥して得られる無水多形体Aを、さらに<10℃の温度まで冷却するという点を含めた結晶析出方法は、技術常識とはいえない。
したがって、容易に得られたとはいえない本件発明2の結晶を得て、さらにXRDの分析を行いピークを特定し、特定温度で多形体Aに可逆的に変形することを特定することは、当業者が容易に発明することができたとはいえない。
よって、本件発明2の効果を検討するまでもなく、本件発明2は、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 請求人の主張について
(a)請求人は、以下のことを主張している。
i 審判請求書10頁11行~18頁16行及び21頁7~末行において、相違点2-2について、甲4の「追試実験」結果を参酌し、実質的な相違点とはいえないか、甲2から容易想到である旨。
ii 前記ア(イ)c(a)に記載した主張に加え、さらに、令和3年12月8日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)8頁25行~9頁23行において、相違点1-3に関連し、以下のことも主張している。
(i)甲2によって結晶の存在が理解できる以上、得られる結晶多形に予想を超えた顕著な効果でも認められない限り、結晶多形を得ようとすることにはなんの進歩性も認められないというべきであるところ、無水多形体Bであろうが、あるいはその混合物であろうが、いずれであっても特段の作用効果が認められるわけではなく、室温付近で転移する程度の結晶なのであるから、無水多形体Bについての新規性や進歩性も認められない旨。
(ii)本件における無水多形体Bは室温保存された状態であっても無水多形体Aから転移して生じるのであるから、気温が下がるという自然現象程度のことによっても、あるいは、安定性の観点から得られた物質を冷蔵保存にて保管するという技術常識を適用することによっても、無水多形体Bのみが得られることは明らかであり、甲4において当初得られた結晶と1ヶ月後の結晶を比較することで、1ヶ月後の結晶が混合物に転移していることが理解できるのであるから、技術常識に照らし、得られたAとBの混合物からBのみを分離すること自体、技術常識の適用に過ぎないというべきである旨。
(b)前記(a)の主張について、以下検討する。
i 主張iについて
甲4の「追試実験」結果を参酌できないことについては、前記aで述べたとおりである。
ii 主張iiについて
(i)については、前記ア(イ)a(b)に記載したように、甲2には、甲2発明1が「固体」であると記載されているにすぎず、結晶であるとも、結晶化方法についても記載も示唆もなされていない故、甲2発明1は必ずしも結晶であるとはいえないから、本件発明2は、甲2発明1であるとはいえない。
また、前記b(b)で述べたとおり、本件発明2の結晶の晶析出方法は、技術常識とはいえず、容易に得られたとはいえない本件発明2の結晶を得て、さらにXRDの分析を行いピークを特定し、特定温度で多形体Aに可逆的に変形することを特定することは、当業者が容易に発明することができたとはいえないから、本件発明2の効果を検討するまでもなく、本件発明2は、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ii)については、前記aで述べたように、甲4の「追試実験」結果を参酌できず、甲4の「追試実験」結果の参酌無しでの新規性及び進歩性の検討については、前記bで述べたとおりである。
なお、前記ア(イ)c(a)に記載した主張に対する検討は、前記ア(イ)c(b)で述べたとおりである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(ウ)小括
したがって、本件発明2は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明1は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と甲2発明2との対比
a 本件発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明2の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、「無水多形体A」化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明2の「真性糖尿病タイプIおよびタイプII、関節炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに適した、薬理組成物」は、本件発明3の「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物」に相当する。
c 甲2発明2の「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の」「薬理組成物を製造するための使用方法」は、本件発明3の「医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Aの使用」と、前記aを踏まえると、医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の使用である点で共通する。
そうすると、両者は、
「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの固体の使用。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点3-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明3は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明2は、融点が198-202℃である点。
相違点3-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明3は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明2は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点3-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明3は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明2は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点3-4:医薬組成物の調製について、本件発明3は、「前記医薬組成物は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液をtert.-ブチルメチルエーテルで希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製されるか、或いは
前記医薬組成物は、以下の工程:
無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製され、ここで
前記無水多形体Bは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000033.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bである」と特定されているのに対し、甲2発明2は、医薬組成物の調製がそのように特定されていない点。
(イ)判断
相違点3-1~相違点3-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点3-4を検討するまでもなく、本件発明3は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点3-4及び本件発明3の効果を検討するまでもなく、本件発明3は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
エ 本件発明4について
(ア)本件発明4と甲2発明3との対比
a 本件発明4の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明4の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、「無水多形体A」化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有する薬理組成物」は、本件発明4の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Aを含有することを特徴とし」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を含有することを特徴とする点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を含有することを特徴とする、薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点4-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明4は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明3は、融点が198-202℃である点。
相違点4-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明4は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明3は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点4-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明4は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点4-4:薬剤について、本件発明4は、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Aを含有することを特徴とするのに対し、甲2発明3は、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Aを含有すると特定されていない点。
(イ)判断
相違点4-1~相違点4-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点4-4を検討するまでもなく、本件発明4は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点4-4及び本件発明4の効果を検討するまでもなく、本件発明4は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
オ 本件発明5について
(ア)本件発明5と甲2発明1との対比
本件発明5の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明5の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、「無水多形体A」化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点5-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明5は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明1は、融点が198-202℃である点。
相違点5-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明5は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点5-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明5は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点5-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明5は、その粉末X線図が、無水多形体Bの特徴的な反射を有さず、ここで前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、その粉末X線図がそのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点5-1~相違点5-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点5-4を検討するまでもなく、本件発明5は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点5-4及び本件発明5の効果を検討するまでもなく、本件発明5は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
カ 本件発明6について
(ア)本件発明6と甲2発明1との対比
本件発明6の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明6の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点6-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明6は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点6-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明6は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点6-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明6は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点6-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明6は、その粉末X線図が、無水多形体Aの特徴的な反射を有さず、ここで前記無水多形体Aは、前記相違点6-1に記載した事項を特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、その粉末X線図がそのような特徴があることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点6-2及び相違点6-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点6-1及び相違点6-4を検討するまでもなく、本件発明6は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点6-1、相違点6-4及び本件発明6の効果を検討するまでもなく、本件発明6は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
キ 本件発明7について
(ア)本件発明7と甲2発明1との対比
本件発明7の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明7の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点7-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明7は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点7-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明7は、格子定数:
[図:0001391741000034.jpg]
によって特徴づけられる、多形体Aと特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴があることは特定されていない点。
(イ)判断
前記ア(イ)aで述べたように、甲4の「追試実験」結果を参酌することはできないので、甲4の「追試実験」結果の参酌無しで、以下相違点7-1及び相違点7-2を纏めて検討する。
a 新規性について
(a)甲2には、甲2発明1が「固体」であると記載されているにすぎず、結晶であるとも、結晶化方法についても記載も示唆もなされていない。それゆえ、甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえない。ましてや、甲2発明1の「固体」が、結晶の無水多形体Aであることも、結晶の格子定数も不明である。
また、甲2発明1が、記載がなくとも、無水多形体Aであること、さらに、格子定数:
[図:0001391741000035.jpg]
によって特徴づけられるものであることが記載されているに等しいとする、本件優先日当時の技術常識もない。
したがって、相違点7-1及び相違点7-2は、実質的な相違点といえる。
(b)請求人は、審判請求書26頁下から2行~27頁14行において、相違点7-2について、格子定数はある結晶形に特有のものであって、無水多形体Aであれば必ず備える特徴であるから、格子定数は本件発明1と別個の相違点ということはできない旨を主張しているが、前記(a)で述べたように、甲2発明1の「固体」が、必ずしも結晶であるとはいえず、ましてや、結晶の無水多形体Aであるともいえない以上、甲2発明1が前記格子定数によって特徴づけられるものとはいえない。
したがって、請求人のこの主張は採用することができない。
(c)以上より、本件発明7は、甲2発明1ではない。
b 進歩性について
(a)相違点7-1~相違点7-2は、特定の結晶を提供するという課題に関していえば、関連しているものであるので、一体的に検討する。
甲2発明の化合物が医薬化合物であることを考慮すると、結晶自体を探索する動機付けについては、一応存在するといえる。
そして、結晶の発明を当業者が容易に発明することができたかどうかについては、結晶析出方法が容易になし得たものであるかどうかの点、製造された結晶が予測できない顕著な効果を有しているかどうかの点から検討すべきである。
そこで、まず結晶析出方法について検討すると、本件発明7は、無水多形体Aという結晶であり、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを‘無水’エタノール中でリフラックス後、濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥して得られるものである(【0004】)。
「無水エタノール」という結晶溶媒自体、技術常識の結晶溶媒であるエタノールに概念上含まれるものであったとしても、水分を相当量含んでいるものを包含する「エタノール」としか記載されていない甲6には無水エタノールが記載されているとはいえない上に、仮に、甲6の記載から結晶化溶媒として無水エタノールが示唆されているといえる場合であっても、さらに濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥するという点を含めた結晶析出方法は、技術常識とはいえない。
したがって、容易に得られたとはいえない本件発明7の結晶を得て、さらに格子定数を特定することは、当業者が容易に発明することができたとはいえない。
(b)請求人は、審判請求書26頁下から2行~27頁14行において、相違点7-2について、格子定数はある結晶形に特有のものであって、無水多形体Aであれば必ず備える特徴であるから、格子定数は本件発明1と別個の相違点ということはできず、また、得られた結晶形の格子定数を調べたからといって、そこになんらかの発明性は認められない旨を主張している。
しかしながら、前記aで述べたように、甲2発明1の「固体」が、必ずしも結晶であるとはいえず、ましてや、結晶の無水多形体Aであるともいえない以上、甲2発明1が前記格子定数によって特徴づけられるものとはいえず、単に得られた結晶形の格子定数を調べて当該構成を特徴づけられたものとはいえない。
したがって、請求人のこの主張は採用することができない。
(c)以上より、本件発明7の効果を検討するまでもなく、本件発明7は、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということができない。
また、本件発明7は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ク 本件発明8について
(ア)本件発明8と甲2発明1との対比
本件発明8の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明8の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点8-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明8は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点8-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明8は、格子定数:
[図:0001391741000036.jpg]
によって特徴づけられる、多形体Bと特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
前記ア(イ)aで述べたように、甲4の「追試実験」結果を参酌することはできないので、甲4の「追試実験」結果の参酌無しで、以下相違点8-1及び相違点8-2を纏めて検討する。
a 新規性について
(a)甲2には、甲2発明1が「固体」であると記載されているにすぎず、結晶であるとも、結晶化方法についても記載も示唆もなされていない。それゆえ、甲2発明1の「固体」が必ずしも結晶であるとはいえない。ましてや、甲2発明1の「固体」が、結晶の無水多形体Bであることも、結晶の格子定数も不明である。
また、甲2発明1が、記載がなくとも、無水多形体Bであること、さらに、格子定数:
[図:0001391741000037.jpg]
によって特徴づけられるものであることが記載されているに等しいとする、本件優先日当時の技術常識もない。
したがって、相違点8-1及び相違点8-2は、実質的な相違点といえる。
(b)請求人は、審判請求書27頁16行~28頁2行において、相違点8-2について、格子定数はある結晶形に特有のものであって、無水多形体Bであれば必ず備える特徴であるから、格子定数は本件発明1(審決注:本件発明2の誤記と認める。)と別個の相違点ということはできない旨を主張しているが、前記(a)で述べたように、甲2発明1の「固体」が、必ずしも結晶であるとはいえず、ましてや、結晶の無水多形体Bであるともいえない以上、甲2発明1が前記格子定数によって特徴づけられるものとはいえない。
したがって、請求人のこの主張は採用することができない。
(c)以上より、本件発明8は、甲2発明1ではない。
b 進歩性について
(a)相違点8-1~相違点8-2は、特定の結晶を提供するという課題に関していえば、関連しているものであるので、一体的に検討する。
甲2発明の化合物が医薬化合物であることを考慮すると、結晶自体を探索する動機付けについては、一応存在するといえる。
そして、結晶の発明を当業者が容易に発明することができたかどうかについては、結晶析出方法が容易になし得たものであるかどうかの点、製造された結晶が予測できない顕著な効果を有しているかどうかの点から検討すべきである。
そこで、まず結晶析出方法について検討すると、本件発明8は、無水多形体Bという結晶であり、無水多形体Aを、<10℃の温度まで冷却することによって得られるものである(【0004】)。無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを‘無水’エタノール中でリフラックス後、濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥して得られるものである(【0004】)。
「無水エタノール」という結晶溶媒自体、技術常識の結晶溶媒であるエタノールに概念上含まれるものであったとしても、水分を相当量含んでいるものを包含する「エタノール」としか記載されていない甲6には無水エタノールが記載されているとはいえない上に、仮に、甲6の記載から結晶化溶媒として無水エタノールが示唆されているといえる場合であっても、さらに濾過物を冷却、tert.-ブチルメチルエーテル等で希釈し、溶媒混合物を吸引濾過し、45℃の真空下で乾燥して得られる無水多形体Aを、さらに<10℃の温度まで冷却するという点を含めた結晶析出方法は、技術常識とはいえない。
したがって、容易に得られたとはいえない本件発明8の結晶を得て、さらに格子定数を特定することは、当業者が容易に発明することができたとはいえない。
(b)請求人は、審判請求書27頁16行~28頁2行において、相違点8-2について、格子定数はある結晶形に特有のものであって、無水多形体Bであれば必ず備える特徴であるから、格子定数は本件発明1(審決注:本件発明2の誤記と認める。)と別個の相違点ということはできず、また、得られた結晶形の格子定数を調べたからといって、そこになんらかの発明性は認められない旨を主張している。
しかしながら、前記aで述べたように、甲2発明1の「固体」が、必ずしも結晶であるとはいえず、ましてや、結晶の無水多形体Aであるともいえない以上、甲2発明1が前記格子定数によって特徴づけられるものとはいえず、単に得られた結晶形の格子定数を調べて当該構成を特徴づけられたものとはいえない。
したがって、請求人のこの主張は採用することができない。
(c)以上より、本件発明8の効果を検討するまでもなく、本件発明8は、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件発明8は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明8は、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ケ 本件発明9について
(ア)本件発明9と甲2発明1との対比
本件発明9の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明9の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点9-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明9は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明1は、融点が198-202℃である点。
相違点9-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明9は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点9-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明9は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることは特定されていない点。
相違点9-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明9は、無水多形体Bを有さないことをさらに特徴とし、ここで、前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点9-1~相違点9-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点9-4を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点9-4及び本件発明9の効果を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
コ 本件発明10について
(ア)本件発明10と甲2発明1との対比
本件発明10の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明10の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点10-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明10は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
相違点10-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明10は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点10-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明10は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点10-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明10は、無水多形体Aを有さないことをさらに特徴とし、前記無水多形体Aは、前記相違点10-1に記載した事項を特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点10-2及び相違点10-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点10-1及び相違点10-4を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点10-1、相違点10-4及び本件発明10の効果を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
サ 本件発明11について
(ア)本件発明11と甲2発明2との対比
a 本件発明11の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明2の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明11の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明2の「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の」「薬理組成物を製造するための使用方法」と、本件発明11の「薬剤を調製するための、」「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Aの使用」とは、前記aを踏まえると、薬剤を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の使用である点で共通する。
そうすると、両者は、
「薬剤を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の使用。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点11-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明11は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明2は、融点が198-202℃である点。
相違点11-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明11は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明2は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点11-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明11は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明2は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点11-4:薬剤の調製について、本件発明11は、「薬剤は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化が開始するまで冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液を溶媒で希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程を得る工程;及び、その後前記濾物を45℃の真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製されるか、或いは
前記薬剤は、以下の工程:
無水多形体B又は無水多形体A及びBの混合物を40℃超の温度に加熱する工程
を経て得られる無水多形体Aを使用して調製され、ここで
前記無水多形体Bは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000038.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bである」と特定されているのに対し、甲2発明2は、薬剤の調製がそのようであることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点11-1~相違点11-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点11-4を検討するまでもなく、本件発明11は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点11-4及び本件発明11の効果を検討するまでもなく、本件発明11は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
シ 本件発明12について
(ア)本件発明12と甲2発明2との対比
a 本件発明12の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明2の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明12の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明2の「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の」「薬理組成物を製造するための使用方法」と、本件発明12の「薬剤を調製するための、」「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Bの使用」とは、前記aを踏まえると、薬剤を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の使用である点で共通する。
そうすると、両者は、
「薬剤を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の使用。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点12-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明12は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000039.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明2は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点12-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明12は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明2は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点12-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明12は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明2は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点12-4:薬剤の調製について、本件発明12は、薬剤は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度に冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液を溶媒で希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を10℃未満の温度で真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製されるか、或いは
前記薬剤は、以下の工程:無水多形体A又は無水多形体A及びBの混合物を10℃未満の温度に冷却する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製され、
ここで 前記無水多形体Aは、前記相違点12-1に記載した事項によって特徴づけられる、無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明2は、薬剤の調製がそのようであることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点12-2及び相違点12-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点12-1及び相違点12-4を検討するまでもなく、本件発明12は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点12-1、相違点12-4及び本件発明12の効果を検討するまでもなく、本件発明12は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ス 本件発明13について
(ア)本件発明13と甲2発明3との対比
a 本件発明13の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明13の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、当該固体を使用して当該固体を含有するように調製されている薬剤といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、本件発明13の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aを使用して調製される薬剤」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点13-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明13は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明3は、融点が198-202℃である点。
相違点13-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明13は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明3は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点13-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明13は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
(イ)判断
相違点13-1~相違点13-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明13は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明13の効果を検討するまでもなく、本件発明13は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
セ 本件発明14について
(ア)本件発明14と甲2発明3との対比
a 本件発明14の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明14の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、当該固体を使用して当該固体を含有するように調製されている薬剤といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、本件発明14の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bを使用して調製される薬剤」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点14-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明14は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点14-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明14は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明3は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点14-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明14は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
(イ)判断
相違点14-2及び相違点14-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点14-1を検討するまでもなく、本件発明14は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点14-1及び本件発明14の効果を検討するまでもなく、本件発明14は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ソ 本件発明15について
(ア)本件発明15と甲2発明3との対比
a 本件発明15の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明15の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有する薬理組成物」は、本件発明15の「多形体Aと、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤であって、前記薬剤が0.1%~0.5%の多形体Aを少なくとも含む」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの固体と、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの固体と、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点15-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明15は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点15-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明15は、格子定数:
[図:0001391741000040.jpg]
によって特徴づけられる、多形体Aと特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点15-3:薬剤について、本件発明15は、0.1%~0.5%の多形体Aを少なくとも含むことを特徴とするのに対し、甲2発明3は、0.1%~0.5%の多形体Aを少なくとも含むことは特定されていない点。
(イ)判断
相違点15-1及び相違点15-2は、前記キ(ア)に記載の相違点7-1及び相違点7-2と同じであるから、前記キ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点15-3を検討するまでもなく、本件発明15は、本件発明7と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点15-3及び本件発明15の効果を検討するまでもなく、本件発明15は、本件発明7と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
タ 本件発明16について
(ア)本件発明16と甲2発明3との対比
a 本件発明16の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明16の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有する薬理組成物」は、本件発明16の「多形体Bと、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤であって、前記薬剤が0.1%~0.5%の多形体Bを少なくとも含む」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの固体と、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの固体と、1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含む薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点16-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明16は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点16-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明16は、格子定数:
[図:0001391741000041.jpg]
によって特徴づけられる、多形体Bと特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点16-3:薬剤について、本件発明16は、0.1%~0.5%の多形体Bを少なくとも含むことを特徴とするのに対し、甲2発明3は、0.1%~0.5%の多形体Bを少なくとも含むことは特定されていない点。
(イ)判断
相違点16-1及び相違点16-2は、前記ク(ア)に記載の相違点8-1及び相違点8-2と同じであるから、前記ク(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点16-3を検討するまでもなく、本件発明16は、本件発明8と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点16-3及び本件発明16の効果を検討するまでもなく、本件発明16は、本件発明8と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
チ 本件発明17について
(ア)本件発明17と甲2発明1との対比
本件発明17の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明17の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点17-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明17は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明1は、融点が198-202℃である点。
相違点17-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明17は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点17-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明17は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点17-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明17は、図3に示される粉末X線図を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴があることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点17-1~相違点17-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点17-4を検討するまでもなく、本件発明17は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点17-4及び本件発明17の効果を検討するまでもなく、本件発明17は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ツ 本件発明18について
(ア)本件発明18と甲2発明1との対比
本件発明18の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明1の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明18の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点18-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明18は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴があるもことは特定されていない点。
相違点18-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明18は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点18-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明18は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明1は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点18-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明18は、図4に示される粉末X線図を有すると特定されているのに対し、甲2発明1は、そのような特徴があることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点18-2及び相違点18-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点18-1及び相違点18-4を検討するまでもなく、本件発明18は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点18-1、相違点18-4及び本件発明18の効果を検討するまでもなく、本件発明18は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
テ 本件発明19について
(ア)本件発明19と甲2発明2との対比
a 本件発明19の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明2の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明19の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明2の「真性糖尿病タイプIおよびタイプII、関節炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに適した、薬理組成物」は、本件発明19の「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物」に相当する。
c 甲2発明2の「融点が198-202℃である、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の」「薬理組成物を製造するための使用方法」は、本件発明19の「医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの無水多形体Bの使用」と、前記aを踏まえると、医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体の使用である点で共通する。
そうすると、両者は、
「I型及びII型糖尿病、前糖尿病又は減少した糖耐性、さらに関節リウマチ、肥満、又はカルシトニン誘導骨粗鬆症を有する患者、並びに同種移植が行われた患者の治療のための医薬組成物を調製するための、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンの固体の使用。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点19-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明19は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すると特定されており、前記無水多形体Aは、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aであって、以下の格子定数:
[図:0001391741000042.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体A、であるのに対し、甲2発明2は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点19-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明19は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明2は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点19-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明19は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明2は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点19-4:医薬組成物の調製について、本件発明19は、「前記医薬組成物は、以下の工程:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを無水エタノール中でリフラックスして混合物を得る工程、ここで前記混合物を濾過して濾液を得てもよい;前記混合物又は濾液を結晶化のために10℃未満の温度に冷却する工程;冷却後の前記混合物又は濾液をtert.-ブチルメチルエーテルで希釈して溶媒混合物を得る工程;懸濁液である前記溶媒混合物を吸引濾過して濾物を得る工程;及び、その後前記濾物を10℃未満の温度で真空下で乾燥する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製されるか、或いは、
前記医薬組成物は、以下の工程:
無水多形体Aを10℃未満の温度に冷却する工程
を経て得られる無水多形体Bを使用して調製され、
ここで前記無水多形体Aは、前記相違点19-1に記載した事項によって特徴づけられる、無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明2は、医薬組成物の調製がそのようであることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点19-2及び相違点19-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点19-1及び相違点19-4を検討するまでもなく、本件発明19は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点19-1、相違点19-4及び本件発明19の効果を検討するまでもなく、本件発明19は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ト 本件発明20について
(ア)本件発明20と甲2発明3との対比
a 本件発明20の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明20の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を、場合により1種またはそれ以上の不活性な担体および/または稀釈剤と共に含有する薬理組成物」は、本件発明20の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Bを含有することを特徴とし」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を含有することを特徴とする点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル) -8-(3-(R) -アミノ-ピペリジン-1-イル) -キサンチンに加えて1種以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を含有する薬剤であって、少なくとも化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を含有することを特徴とする、薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点20-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明20は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴があることは特定されていない点。
相違点20-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明20は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明3は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点20-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明20は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点20-4:薬剤について、本件発明20は、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Bを含有することを特徴とするのに対し、甲2発明3は、少なくとも0.1%~0.5%の無水多形体Bを含有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点20-2及び相違点20-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点20-1及び相違点20-4を検討するまでもなく、本件発明20は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点20-1、相違点20-4及び本件発明20の効果を検討するまでもなく、本件発明20は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ナ 本件発明21について
(ア)本件発明21と甲2発明3との対比
a 本件発明21の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明21の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、当該固体を使用して当該固体を含有するように調製されている薬剤といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、本件発明21の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」「を使用して調製される薬剤」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点21-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明21は、206±3℃で融解すると特定されているのに対し、甲2発明3は、融点が198-202℃である点。
相違点21-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明21は、粉末X線図において、d値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明3は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点21-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明21は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点21-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明21は、その粉末X線図が、無水多形体Bの特徴的な反射を有さず、前記無水多形体Bは、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形し、粉末X線図において、以下のd値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Bである、と特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点21-1~相違点21-3は、前記ア(ア)に記載の相違点1-1~相違点1-3と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明21は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明21の効果を検討するまでもなく、本件発明21は、本件発明1と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ニ 本件発明22について
(ア)本件発明22と甲2発明3との対比
a 本件発明22の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明22の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、当該固体を使用して当該固体を含有するように調製されている薬剤といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、本件発明22の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」「を使用して調製される薬剤」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点22-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明20は、10-40℃の温度で無水多形体Aに可逆的に変形すること、及び、前記無水多形体Aは、206±3℃で融解し、及び粉末X線図において、以下のd値:11.59Å、7.60Å、7.15Å、3.86Å、3.54Å及び3.47Åで特徴的な反射を有することを特徴とする、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
相違点22-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明20は、粉末X線図において、d値:11.25Å、9.32Å、7.46Å、6.98Å及び3.77Åで特徴的な反射を有すると特定されているのに対し、甲2発明3は、粉末X線図の特定のd値で、特徴的な反射を有するとは特定されていない点。
相違点22-3:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明22は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点22-4:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明22は、その粉末X線図が、無水多形体Aの特徴的な反射を有さず、前記無水多形体Aは、前記相違点22-1に記載した事項によって特徴づけられる、無水多形体Aである、と特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点22-2及び相違点22-3は、前記イ(ア)に記載の相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点22-1及び相違点22-4を検討するまでもなく、本件発明22は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、相違点22-1、相違点22-4及び本件発明22の効果を検討するまでもなく、本件発明22は、本件発明2と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ヌ 本件発明23について
(ア)本件発明23と甲2発明3との対比
a 本件発明23の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」は、「無水多形体A」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明23の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体A」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、当該固体を使用して当該固体を含有するように調製されている薬剤といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、本件発明23の「無水多形体Aを使用して調製される薬剤」は、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点23-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明23は、無水多形体Aであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Aであることも特定されていない点。
相違点23-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明23は、格子定数:
[図:0001391741000043.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Aと特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点23-1及び相違点23-2は、前記キ(ア)に記載の相違点7-1及び相違点7-2と同じであるから、前記キ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明23は、本件発明7と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明23の効果を検討するまでもなく、本件発明23は、本件発明7と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
ネ 本件発明24について
(ア)本件発明24と甲2発明3との対比
a 本件発明24の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」は、「無水多形体B」が結晶であり固体といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体」は、本件発明24の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの無水多形体B」と、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体である点で共通する。
b 甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、当該固体を使用して当該固体を含有するように調製されている薬剤といえる。
そうすると、甲2発明3の「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を」「含有する薬理組成物」は、本件発明24の「無水多形体Bを使用して調製される薬剤」と、前記aを踏まえると、化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤である点で共通する。
そうすると、両者は、
「化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体を使用して調製される薬剤。」である点で一致し、以下の点において相違する。
相違点24-1:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明24は、無水多形体Bであると特定されているのに対し、甲2発明3は、結晶であることも、その結晶が無水多形体Bであることも特定されていない点。
相違点24-2:化合物1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの固体について、本件発明24は、格子定数:
[図:0001391741000044.jpg]
によって特徴づけられる、無水多形体Bと特定されているのに対し、甲2発明3は、そのような特徴を有することは特定されていない点。
(イ)判断
相違点24-1及び相違点24-2は、前記ク(ア)に記載の相違点8-1及び相違点8-2と同じであるから、前記ク(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明24は、本件発明8と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
また、本件発明24の効果を検討するまでもなく、本件発明24は、本件発明8と同様の理由により、甲第4号証を参照することで、甲2に記載された発明及び本件優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
(5)まとめ
よって、本件発明1~24についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由2により無効すべきものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1~24についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり決定する。
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2021-800016