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特許無効審判

2024-800033

DPP IVインヒビターの使用

審判番号
2024-800033
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2019-231114
登録番号
6995822
請求日
2024年03月19日
審決日
2025年08月14日
公報発行日
2025年11月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ニプロ 株式会社
  • 【請求人代理人】吉澤 敬夫
  • 【請求人代理人】紺野 昭男
  • 【請求人代理人】井波 実
  • 【請求人代理人】田村 慶政
  • 【被請求人】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【被請求人代理人】田中 伸一郎
  • 【被請求人代理人】須田 洋之
  • 【被請求人代理人】山崎 一夫
  • 【被請求人代理人】服部 博信
  • 【被請求人代理人】松田 七重
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 川口 裕美子
  • 審判官 磯貝 香苗
分類
P1113.536-Y (A61K) / P1113.537-Y (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第44条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6995822号発明「DPP IVインヒビターの使用」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 次を結論とする審決を求める。 (1)特許第6995822号の請求項1~8に係る発明についての特許を無効とする。 (2)審判費用は被請求人の負担とする。 2 答弁の趣旨 次を結論とする審決を求める。 (1)本件審判請求は成り立たない。 (2)審判費用は請求人の負担とする。 第2 手続の経緯 1 出願分割の経緯の概略 特許第6995822号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和1年12月23日にされた特許法第44条第1項の規定による特許出願であって、2007年(平成19年)5月3日を国際出願日とする特願2009-508347号(パリ条約による優先権主張 2006年(平成18年)5月4日 欧州特許庁(EP))を最先の出願とする、いわゆる第5世代の分割であるところ、出願分割の経緯は次のとおりである。 最先の出願 特願2009-508347号 (平成19年5月 3日) 第1世代 特願2010-100899号 (平成22年4月26日) 第2世代 特願2015-121087号 (平成27年6月16日) 第3世代 特願2017-054231号 (平成29年3月21日) 第4世代 特願2018-173352号 (平成30年9月18日) 本件特許出願 特願2019-231114号 (令和1年12月23日) 上記、括弧内は当該出願の提出日を示し、最先の出願の提出日である2007年(平成19年)5月3日を、以下「本件出願日」又は「本件出願時」という。 2 本件無効審判の手続経緯 本件特許は、令和3年12月17日に設定登録(請求項の数8)がされたものである。これに対して、令和6年3月19日に無効審判の請求がされた。以後の主な手続の経緯は次のとおりである。 令和6年 3月19日 審判請求書の提出 同年 8月23日 答弁書の提出 同年11月28日付け 審理事項通知書 令和7年 1月31日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出 同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出 同年 2月10日 上申書(被請求人)の提出 同年 2月21日 口頭審理 同年 2月28日 上申書(請求人)の提出 第3 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、これらの発明を、請求項の番号順に「本件発明1」~「本件発明8」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。 「【請求項1】 式(I)のDPP IVインヒビターまたはその塩の一つを含む、 [図:0001428910000001.jpg] (式中、R1は(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチルを意味し、及びR2は3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イルを意味する) 顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療するための医薬であって、微小血管の合併症のリスクが前記医薬の使用により低下することを特徴とし、前記DPP IVインヒビターの一日あたりの経口用量が5mgであり、かつ前記微小血管の合併症が糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、および糖尿病性ネフロパチーから選ばれる、前記医薬。 【請求項2】 他の抗糖尿病薬;血糖レベルを下げる活性物質;血液中の脂質レベルを下げる活性物質;血液中のHDLレベルを上昇させる活性物質;血圧を下げる活性物質;アテローム性動脈硬化又は肥満の治療において適応とされる活性物質;および心不全の治療用活性物質、の中から選択される活性物質と併用される、請求項1記載の医薬。 【請求項3】 メトホルミン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼブロッカー、インシュリンまたはインシュリン類似体、GLP-1またはGLP-1類似体、ACEインヒビター、アンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)、βブロッカーまたは利尿薬から選択される他の糖尿病薬または血圧低下活性物質と併用される請求項2記載の医薬。 【請求項4】 1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)キサンチンであるDPP IVインヒビターまたは治療的に活性なその塩を含む、タイプ2糖尿病患者における微小血管の合併症を予防または低下させるための医薬であって、前記DPP IVインヒビターの一日あたりの経口用量が5mgである、前記医薬。 【請求項5】 他の活性物質と併用される、請求項4記載の医薬。 【請求項6】 患者が1~6年の長期間治療される、請求項4または5記載の医薬。 【請求項7】 微小血管の合併症が糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、および糖尿病性ネフロパチーから選ばれる、請求項4,5または6記載の医薬。 【請求項8】 テルミサルタンとの併用療法のための請求項1または5記載のDPP IVインヒビターを含む医薬。」 第4 当事者の主張及び証拠方法 1 請求人の主張及び証拠方法 請求人は、証拠方法として甲第1号証(以下「甲1」という。)を提出するとともに、以下の無効理由1及び2を主張する。 [無効理由1](実施可能要件) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~8について、その医薬用途を裏付ける薬理試験結果が全く記載されておらず、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 よって、本件発明1~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 [無効理由2](サポート要件) 本件発明1~8の医薬用途は、発明の詳細な説明において全く裏付けられておらず、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載された技術的事項の範囲を超えることは明らかであり、本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 よって、本件発明1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 [証拠方法] <審判請求書に添付> ・甲1:国際公開第2004/018468号 2 被請求人の主張及び証拠方法 被請求人は、証拠方法として乙第1号証~乙第16号証(以下「乙1」~「乙16」という。)を提出するとともに、請求人が主張する無効理由は存在しない旨主張する。 [証拠方法] <答弁書に添付> ・乙1:日薬理誌,2005年8月1日,Vol.125,p.379~384 ・乙2:J. Med. Chem.,2005年6月24日,Vol.48,p.5025~5037 ・乙3(本件出願日後):「選択的DPP-4阻害剤 ◎糖尿病用剤◎ 日本薬局方 シタグリプチンリン酸塩錠 ジャヌビア(R)(当審注:(R)は丸囲みの中にRを表す。以下も同様である。)錠12.5mg ジャヌビア(R)錠25mg ジャヌビア(R)錠50mg ジャヌビア(R)錠100mg」の医薬品インタビューフォーム,2024年4月改訂,MSD株式会社 ・乙4(本件出願日後):「選択的DPP-4阻害剤 [2型糖尿病治療薬]ビルダグリプチン錠エクア(R)錠50mg」の医薬品インタビューフォーム,2022年11月改訂,ノバルティス ファーマ株式会社 ・乙5:ホルモンと臨床,2005年2月1日,第53巻,第2号,p.(133)9~(139)15, p.(159)35~(163)39, p.(175)51~(183)59, p.(239)115~(243)119 ・乙6(本件出願日後):糖尿病の最新治療,2011,Vol.3,No.1,p.51~55 ・乙7:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン,株式会社 南江堂,2004年5月25日,p.5~19,p.37~56,p.67~80,p.93~121,p.131~153 ・乙8:新しい診断と治療のABC18/代謝2 糖尿病,株式会社 最新医学社,2004年1月25日,p.79~86,p.106~113 ・乙9:クリニカ,2004年11月30日,Vol.31,No.6,p.36(398)~39(401) ・乙10:特表2006-503013号公報(公表日2006年1月26日) ・乙11(本件出願日後):Thomas Forst et al.,米国糖尿病協会年次学術集会において発表されたポスター,2007年6月22日公開 ・乙12(本件出願日後):「胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤-2型糖尿病治療剤-トラゼンタ(R)錠5mg」の医薬品インタビューフォーム,2022年4月改訂 ・乙13(本件出願日後):産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委委員会 第4回 審査基準専門委員会ワーキンググループ 資料1 2015年3月27日,https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou /shousai/kijun_wg/document/04-shiryou/03.pdf ・乙14:The Lancet,1998,Vol.352,p.837~853 ・乙15:糖尿病を探る,株式会社 永井書店,2004年11月15日初版,p.15 ・乙16:第116回日本医学会シンポジウム記録集 2000年7月13日,岩本安彦,糖尿病をめぐる最近の話題-[II]糖尿病の診断と治療update 1.新しい診断基準と分類, https://jams.med.or.jp/event/116.html,https://jams.med.or.jp/event/doc/116032.pdf 第5 主な証拠方法の記載事項 以下に、主な証拠方法の記載事項を示す。 なお、外国語の文献は訳文を示した。また、本文中における参照文献があることを示す数字、及び改行は適宜省略し、審決においては標記できない、□又は○の中の数字は、適宜他の形式([●]あるいは(●)、●は数字を示す。)で記載した。下線は、当審によるものがある。 1 甲1の記載事項 (摘記:甲1a) 「本発明は、以下の一般式Iで表される新規な置換されたキサンチン: [図:0001428910000002.jpg] その互変異性体、立体異性体、混合物、プロドラッグ及びその塩、特に無機又は有機の酸又は塩基との生理的に許容される塩に係り、これらは特に、酵素:ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)の活性に及ぼす阻害作用を含む、薬理的に有益な諸特性を持ち、またこれらの製造、高いDPP-IV活性と関連した、又はこのDPP-IV活性を減じることによって、予防若しくは軽減できる疾患又は状態、特にタイプI又はタイプII真性糖尿病を予防若しくは治療するためのその使用、一般式(I)の化合物又はその生理的に許容されるその塩を含む薬理組成物並びにその製法に関するものである。」(第1頁第3~16行) (摘記:甲1b) 「 以下の一般式Iの化合物が特に好ましい。 (1) 1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン, …(略)… (13) 1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン, …(略)… (20) 1-[(4-フェニルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン, …(略)… (30) 1-[(3-メチル-イソキノリン-1-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブロモベンジル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン ならびにそれらの互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、それらの混合物及びそれらの塩。」(第25頁第22行~第28頁第20行) (摘記:甲1c) 「既に上で述べたように、本発明による一般式Iの化合物及び生理的に許容されるその塩は、有益な薬理的諸特性、特に酵素DPP-IVに対する阻害作用を持つ。 これら新規化合物の生物学的特性は、以下のようにして検討した: これら物質及びその対応する塩の、DPP-IV活性を阻害する能力は、ヒト結腸癌細胞系Caco-2の抽出液を、該DPP-IV源として使用する、設定されたテストによって立証できる。DPP-IV発現を誘発するために、該細胞の分化を、「腸管細胞系Caco-2の高められた発現(Increased expression of intestinal cell line Caco-2)」と題する、Reiher等の論文(Proc. Natl. Acad. Sci., 1993, 90:5757-5761)に記載されたように実施した。該細胞抽出液は、バッファー(10mM Tris-HCl、0.15mMのNaCl、0.04t.i.u.のアプロチニン、0.5%のノニデット(Nonidet)-P40、pH 8.0)中に可溶化された細胞から、4℃にて30分間、35,000gにて遠心分離処理することにより得た。 このDPP-IVアッセイは、以下のようにして行った: 最終濃度100μMの、50μlの基質溶液(AFC;AFCは、アミド-4-トリフルオロメチルクマリンである)を、黒色のマイクロタイタープレートに入れた。20μlのアッセイバッファー(それぞれ最終濃度50mMのTris-HCl、pH 7.8、50mMのNaCl、1%のDMSO)を、ピペットで秤取り、これに加えた。この反応は、30μlの可溶化したCaco-2タンパク(最終濃度:ウエル当たり、0.14μgのタンパク)を添加することにより開始させた。検討すべきテスト物質は、典型的には予め希釈して20μlとして添加したが、結果としてアッセイバッファーの体積を、それに応じて減らした。この反応は、周囲温度にて60分間インキュベートすることにより行った。次いで、蛍光を、ビクター1420マルチラベルカウンタ(Victor 1420 Multilabel Counter)を用いて、励起波長405nm及び発光波長535nmにて測定した。ブランクの読み(活性0%に相当)を、いかなるCaco-2タンパクも含まない、混合物(所定体積をアッセイバッファーで置換)について得、コントロール値(活性100%に相当)は、物質を全く添加してない混合物について得た。IC50値で表した、問題とするテスト物質の能力は、各場合に対して11個の測定点からなる用量活性曲線から算出した。 [図:0001428910000003.jpg] [図:0001428910000004.jpg] (当審注:上記の表の訳は、以下の表である。 [図:0001428910000005.jpg] ) 本発明によって製造される化合物は、例えば実施例2(80)の化合物10mg/kgを経口経路でラットに投与した場合に、この動物におけるいかなる挙動変化も検出されなかったことから、十分に許容性を持つものである。 」(第33頁第26行~第36頁第4行) (摘記:甲1d) 「これら化合物のDPP-IV活性を阻害する能力から、本発明による一般式Iの化合物及び対応する製薬上許容されるその塩は、該DPP-IV活性の阻害によって影響される可能性のある全てのこれら状態又は疾病を治療するのに適したものである。したがって、本発明の化合物は、疾患又は状態、例えばタイプI及びタイプII真性糖尿病、糖尿病性合併症(例えば、網膜症、ネフロパシー又はニューロパシー)、代謝性アシドーシス又はケトーシス、反応性低血糖、インシュリン耐性、代謝性症候群(metabolic syndrome)、様々な器官の脂肪異常(dyslipidaemias)、関節炎、アテローム性動脈硬化症及び関連疾患、肥満、同種移植片移植及びカルシトニン-誘発性オステオポローシスの予防並びに治療のために適したものであると予想される。」(第36頁第6~16行) (摘記:甲1e) 「このような効果を達成するのに必要な用量は、静脈内経路による場合、便宜上1~100mgなる範囲、好ましくは1~30mgなる範囲、また経口経路による場合には、1~1000mgなる範囲、好ましくは1~100mgなる範囲であり、何れの場合にも1日当たり1~4回投与する。」(第39頁第14~17行) (摘記:甲1f) 「最終的な化合物の製造: …(略)… 実施例2 1-(2-{2-[(エトキシカルボニル)メトキシ]-フェニル}-2-オキソ-エチル)-3-メチル-7-(3-メチル-2-ブテン-1-イル)-8-(3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン 1-(2-{2-[(エトキシカルボニル)メトキシ]-フェニル}-2-オキソ-エチル)-3-メチル-7-(3-メチル-2-ブテン-1-イル)-8-[3-(t-ブチルオキシカルボニルアミノ)-ピペリジン-1-イル]-キサンチン(209mg)の塩化メチレン(4ml)溶液を、1mlのトリフルオロ酢酸と併合し、周囲温度にて半時間撹拌する。作業を完結するために、この反応混合物を塩化メチレンで希釈し、飽和炭酸カリウム溶液で洗浄する。得られる有機相を乾燥し、蒸発させ、塩化メチレン/メタノール(1:0~4:1)を溶離液として使用し、シリカゲルカラムを通したクロマトグラフィー処理に掛ける。収量:153mg(理論値の87%);マススペクトル(ESI+): m/z = 553 [M+H]+ 以下の化合物を、実施例2と同様にして得る: …(略)… (80) 1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (塩化メチレン中で、5-6Mのイソプロパノール性塩酸を用いて実施):マススペクトル(ESI+): m/z = 459 [M+H]+ …(略)… (142) 1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (塩化メチレン中で、5-6Mのイソプロパノール性塩酸を使用して実施):融点:198-202℃;マススペクトル(ESI+): m/z = 473 [M+H]+」(第137頁第15行~第165頁第24行) 2 乙1の記載事項 (摘記:乙1a) 「2型糖尿病治療におけるジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害薬の可能性 …(略)… 要約:インクレチンは、栄養素の刺激により腸管から分泌され、膵β細胞でのグルコース刺激によるインスリン分泌を増強させるホルモンの総称である。その中で、血糖調節因子として最も注目されているのが、グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1,GLP-1;GLP-1(7-36)amideあるいはGLP-1(7-37)である。GLP-1は腸管に存在するL細胞から分泌されるが、速やかにジペプチジルペプチダーゼ-IV(di-peptidyl peptidase-IV,DPP-IV)により不活性化される。GLP-1は、グルコース依存的なインスリン分泌の亢進ばかりではなく、グルカゴンの分泌抑制、胃排泄の抑制、膵β細胞の保護および増殖作用にも関与する。さらに、視床下部に作用して摂食を抑制し、結果として体重増加を抑制する。これら一連の作用は、2型糖尿病の治療において非常に望ましい。そのため、GLP-1作用増強をターゲットとした創薬は、次世代の2型糖尿病治療薬として注目されている。中でも、内因性GLP-1の半減期を延長させ、GLP-1作用増強を狙ったDPP-IV阻害薬の臨床開発が多くの製薬メーカーによって実施されている。最近、DPP-IV阻害薬であるLAF237が、忍容性および安全性に優れ、2型糖尿病患者の空腹時血糖および食後高血糖を改善させることが報告された。以上のことより、DPP-IV阻害薬は、GLP-1の多様な作用をもたらす新しいタイプの経口糖尿病治療薬として期待されている。」(第379頁タイトル、左欄第1~25行) (摘記:乙1b) 「腸管により分泌されたGPL-1は、その分解酵素であるDPP-IVにより、N末から2個のアミノ酸が切断されて(5)(図1)GLP-1(9-37)もしくはGLP-1(9-36)amideに不活性化され、腎臓から排泄される(図2)。」(第380頁左欄下から4行~末行) (摘記:乙1c) 「 [図:0001428910000006.jpg] 」(第382頁右欄 図3) (摘記:乙1d) 「5.2. 臨床試験 現在、多くの製薬メーカーが臨床試験を行っている。ノバルティス社の開発したNVP-DPP728は、健康成人において、食後のGLP-1の増加と食後血糖の低下をもたらした(20)。さらに、2型糖尿病患者におけるNVP-DPP728の150mg(1日2回)および100mg(1日3回)の4週間投与は、空腹時血糖低下、食後血糖の改善およびHbA1cの低下をもたらした。NVP-DPP728は忍容性もよく、副作用としては、一過性の軽度な掻痒や鼻咽頭炎などであった。体重については変化を認めなかった。この試験において、DPP-IV阻害剤の糖尿病治療における有用性および安全性の高さが初めて明示された(21)。その後、ノバルティス社は1日1回服用を可能にするため、NVP-DPP728よりも作用持続の長いLAF237の開発を進めている。2型糖尿病患者におけるLAF237の100mg(1日1回)4週間投与試験では、食後のGLP-1増加、空腹時血糖値の低下、食後血糖値の低下、HbA1cの低下およびグルカゴン値の抑制が顕著に認められた。」(第382頁右欄下から12行~第383頁左欄第7行) (摘記:乙1e) 「5.3. 併用療法 併用療法は2型糖尿病治療の有用な選択肢の1つであることから、DPP IV阻害薬と既存の2型糖尿病治療薬との併用による効果に興味が持たれる。特に、ビグアナイド剤(メトフォルミン)やチアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン、ロジグリタゾン)などのインスリン抵抗性を改善する薬剤との併用は、作用機序の違いから相加・相乗的な薬効増加が期待される。」(第383頁左欄第18~25行) 3 乙4の記載事項 (摘記:乙4a) 「医薬品インタビューフォーム 日本病院薬剤師会のIF記載要領2018(2019年更新版)に準拠して作成 選択的DPP―4阻害薬 [2型糖尿病治療薬] ビルダグリプチン錠 エクア(R)錠 50mg Equa(R)Tablets 50mg」(タイトル) (摘記:乙4b) 「II-2.一般名 (1)和名(命名法) ビルダグリプチン(JAN) …(略)… II-6.慣用名、別名、略号、記号番号 記号番号(開発コード):LAF237」(第2頁) 4 乙5の記載事項 (摘記:乙5a) 「 [図:0001428910000007.jpg] 」(第(134)10頁 図1) (摘記:乙5b) 「 [図:0001428910000008.jpg] 」(第(177)53頁 図3) (摘記:乙5c) 「GIP、GLP-1等の新しい形の治療薬の開発の現状 はじめに 食物の摂取後に小腸から放出される消化管ホルモンgastric inhibitory polypeptide(GIP)とglucagon-like peptide-1(GLP-1)は、いずれも膵β細胞からのインスリン分泌を惹起するインクレチンであることが知られている。近年、GIPやGLP-1の受容体を欠損するマウスが作製され、GIPやGLP-1がインスリン分泌促進に加えて様々な生理作用を有していることが明らかとなった。これらの作用によってGIPやGLP-1は糖代謝の恒常性維持に重要な役割を担っており、それを応用した薬剤の開発が進んでいる。 [1]インクレチンとは 約40年前、ブドウ糖を経口投与した場合には、経静脈的に投与した場合に比べ、より多くのインスリン分泌が惹起されることが明らかにされた(図1)。この機構として、小腸にはインスリン分泌を促進する因子(消化管ホルモン)が存在しており、この因子が食物の摂取後に放出されるために、経口投与後のインスリン分泌は経静脈投与後よりも亢進するものと想定された。インクレチンとは、このような役割を担う消化管ホルモンの総称である。すなわち、食物を摂取したという情報がインクレチンの分泌を介して速やかに膵β細胞へと伝達され、インスリン分泌を刺激して食後の急峻な血糖上昇を抑え、血糖をより一定に保つ役割を有する。 これまでインクレチンとして、gastric inhibitory polypeptide(GIP)とglucagon like peptide-1(GLP-1)の2つのホルモンが知られている。これらはいずれもグルカゴン/セクレチンファミリーに属し、互いに類似したアミノ酸配列を有するホルモンで、GIPは上部小腸に存在するK細胞から、GLP-1は下部小腸に存在するL細胞から分泌される(図2)。GIPやGLP-1は、ブドウ糖濃度が低い時にはインスリン分泌を促進せず、ブドウ糖濃度が高い時にはインスリン分泌を促進する。すなわち、インスリン分泌のpotentiatorとして作用すると考えられる。」(第(239)115頁第1行~第(240)116頁左欄第7行) (摘記:乙5d) 「[5]DPP IVと糖尿病 Dipeptidyl peptidase IV(DPP IV、CD26とも呼ばれる)は蛋白のN末端の2アミノ酸を分解する酵素で、各種ホルモンやケモカインの分解に関与する。GIPやGLP-1も血中でDPP IVによって速やかに分解され、活性を失うため、生体における半減期が短い。DPP IVの欠損マウスが作製されて解析された結果、やはりOGTT(当審注:経口ブドウ糖負荷試験)において耐糖能の悪化を認め、DPP IVがGIPやGLP-1などの分解を介して生体内の糖代謝に影響を及ぼしていることが示唆された。」(第117(241)頁左欄第17行~右欄第4行) (摘記:乙5e) 「[6]インクレチンと糖尿病治療 …(略)… 実際の臨床応用に当たっては、GLP-1が血中でDPP IVによって速やかに分解され、非活性型になることが大きな問題である。このことを解決するためにはDPP IVによって分解されないGLP-1の誘導体(GLP-1受容体アゴニスト)を用いることが必要であり、種々の誘導体が発見・開発されて海外での臨床応用が進められている。また、もうひとつの手段として、DPP IV活性を阻害する薬物の開発がある。これについても既に開発が進行しており、このような薬物も糖尿病治療薬のひとつとなることが期待される。」(第(241)117頁右欄第5行~第(242)118頁左欄第12行) (摘記:乙5f) 「[8]DPP IV阻害薬 DPP IV阻害薬は経口投与可能な製剤であり、現在ヒトでの有効性がNVP DPP728(Novartis社)やLAF237などについて、phase2からphase3 trialの段階である。NVP DPP728は1日2~3回投与であるが、LAF237は作用持続時間が長いため1日1回投与が可能である。DPP IV阻害薬の長期投与によって血糖およびHbA1cは有意に低下し、食後の活性型GLP-1濃度の上昇が観察されている。」(第(242)118頁右欄第16~25行) 5 乙6の記載事項 (摘記:乙6a) 「5 2型糖尿病治療薬 1998年Demuthらが、彼らが開発した阻害剤Ile-thiazolidideを経口投与することにより2型糖尿治療薬となることを発表した。それ以来、製薬メーカーによるDPP-4阻害薬の開発競争が行われ、それらの多くは非ペプチド化合物である。GLP-1やGIPのAla-Xを切るが、阻害剤のデザインはアラニンではなくプロリンを真似た化合物で、BRENDAで見る限り1,000以上の化合物が見られる。特許上ではこれらをはるかに超える化合物がスクリーニングされ2型糖尿病治療薬として開発されてきた。」(第54頁右欄第4行~下から2行) 6 乙7の記載事項 (摘記:乙7a) 「[1]糖尿病の診断 糖尿病の診断にはまず糖尿病の概念がはっきりしていなければならない。糖尿病の概念には大きくまとめると3つの柱がある。 (1)高血糖で代表される特徴的な代謝異常。 (2)その原因としてのインスリン作用の不足。 (3)代謝異常が長く続くと特有の合併症が起こること。 である。糖尿病の診断とは個々の患者がこれらの特徴を備えているかどうか見極めることである。」(第7頁下から6行~第8頁第2行) (摘記:乙7b) 「[7]糖尿病や関連する糖代謝異常の分類 …(略)… 2型糖尿病は糖尿病患者の95%以上を占める、最も多いタイプで、インスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下とが発病にかかわる。」(第10頁第7~13行) (摘記:乙7c) 「2 糖尿病治療の目標と指針 ●ステートメント [1]糖尿病治療の目標 (グレードA)コンセンサス 糖尿病治療の目標は、糖尿病症状を除くことはもとより、糖尿病に特徴的な合併症、糖尿病に併発しやすい合併症の発症、増悪を防ぎ、健康人と同様な日常生活の質(QOL)を保ち、健康人と変わらない寿命を全うすることにある。 [2]治療戦略 (グレードA)コンセンサス 治療戦略は、糖尿病の病型、病態、代謝障害の程度により異なる。 (1)インスリン依存状態ではインスリン治療を行う。インスリン非依存状態においても、妊娠時、全身管理が必要な外科手術、重篤な感染症の際にはインスリンで治療する。また、経口血糖降下薬によっても血糖コントロールの目標が得られない場合はインスリン治療を行う。 (2)インスリン非依存状態においては、十分な食事、運動療法を2~3ヶ月行っても良好な血糖コントロールが得られない場合、経口血糖降下薬により治療する。代謝障害の程度によっては最初よりインスリンや経口血糖降下薬の薬物療法を食事療法、運動療法に加えて開始する。 [3]慢性合併症の予防、進展抑制 (グレードA)コンセンサス 糖尿病の慢性合併症の予防、進展抑制のためには、単に血糖コントロールのみでなく、肥満を解消し、血圧や脂質代謝のコントロールを目指す。また、禁煙を守る。 [4]継続的治療・教育の必要性 慢性疾患である糖尿病において、合併症の発症、増悪を防ぐには、継続的治療は必須であり、患者教育は糖尿病治療の基幹をなすものである。 ●解説 [1]糖尿病治療の目標 糖尿病はインスリン作用の不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である。インスリン作用不足による代謝障害の程度が軽微であればほとんど症状が現れず、そのため長期間放置されることがある。しかし、血糖値が著しく高くなる代謝状態では、口渇、多飲、多尿、体重減少がみられ、さらには急性合併症として意識障害や昏睡に陥り、効果的な治療が行われなければ死に至ることもある。代謝障害が軽度でも長く続けば特徴的な慢性合併症(すなわち網膜症、腎症、神経障害)を発症するリスクが高い。さらに、糖尿病では全身の動脈硬化症が促進され、これが心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症の原因となる。また細菌感染に対する抵抗力の低下をもたらす。 糖尿病治療の目標は、これら糖尿病に特徴的な急性合併症と慢性合併症、および糖尿病に併発しやすい合併症の発症、増悪を防ぎ、健常者と同様な日常生活の質(QOL)を保ち、健常者と変わらない寿命を全うすることである。」(第13頁第1行~第14頁第10行) (摘記:乙7d) 「5 経口血糖降下薬による治療 ●ステートメント [1]経口血糖降下薬の適応 (グレードA)レベル1 インスリン非依存状態で、十分な食事・運動療法を2~4ヶ月間行ってもよい血糖コントロールが得られない場合、経口血糖降下薬の適応となる。 …(略)… [3]血糖コントロールの目標 (グレードA)レベル1 血糖コントロールは可能な限り正常血糖値に近づけるべきである。 …(略)… [4]第一選択薬とする経口血糖降下薬 (グレードA)レベル1 薬物の選択と投与量の調節は、個々の薬物の作用の特性や副作用を考慮に入れながら個々の患者の状態に応じて行う。 現在使用されている経口血糖降下薬はいずれも血糖改善効果が認められる。よい血糖コントロールが得られるならば、どの薬物も第一選択薬になりうる。ただし、長期的予後の改善が確立されている薬物はスルホニル尿素薬と、著しい肥満糖尿病患者におけるメトホルミン(ビグアナイド薬)だけである。 [5]血糖コントロールが不十分な場合の対応 (グレードA)レベル1 1種類の経口血糖降下薬治療によっては良好な血糖コントロールが長期間維持できないことがある。この場合、食事・運動療法の徹底をはかり、さらに必要であれば、作用機序の異なる経口血糖降下薬を追加するか、インスリンへの切り替え、あるいは併用によって血糖改善効果を期待する。」 (第37頁第1行~末行) (摘記:乙7e) 「[4] 各系統の経口血糖降下薬の選択と用量の調節 …(略)… (1)スルホニル尿素薬 膵ランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌を促進させる。長期間臨床の場で使用されていてevidenceも明確なため、年齢、体重を問わず、第1選択薬として有用である。 …(略)… (2)ビグアナイド薬 肝臓からのグルコース放出を抑制する作用が強く、筋肉を中心とした末梢組織でのインスリンの感受性を高める作用も有している。体重増加があまり起こらず、中性脂肪やLDLコレステロース(LDL-C)を下げる働きがある。欧米では、肥満のある場合の第一選択薬として用いられており、スルホニル尿素薬と同等の血糖改善があるとされている…(略)…」(第38頁第19行~第39頁第3行) (摘記:乙7f) 「[5] 経口血糖降下薬の併用 最初に単独投与でよいコントロールを得られた患者でも次第に血糖値は上昇し、経口血糖降下薬の併用療法やインスリンへの変更あるいは併用が必要となる場合がある。作用機序の異なる経口血糖降下薬の併用は下記のように多くの組み合わせで血糖改善効果が報告されている。3種類以上の経口血糖降下薬の併用、あるいは経口血糖降下薬と睡眠前の中間型インスリンの併用も血糖改善効果が認められる。 ○スルホニル尿素薬+ビグアナイド薬 ○スルホニル尿素薬+αグルコシダーゼ阻害薬 ○ビグアナイド薬+αグルコシダーゼ阻害薬 ○スルホニル尿素薬+チアゾリジン誘導体 ○ビアグナイド薬+チアゾリジン誘導体(保険適用外) ○αグルコシダーゼ阻害薬+チアゾリジン誘導体 ○αグルコシダーゼ阻害薬+フェニルアラニン誘導体 ○ビアグナイド薬+フェニルアラニン誘導体(保険適用外)」(第39頁下から14行~末行) (摘記:乙7g) 「13 糖尿病に合併した高血圧 ●ステートメント [1]糖尿病患者における高血圧の治療 グレートA レベル1 糖尿病患者における高血圧の治療に際しては、血圧が130/80mmHg以上なら生活習慣の改善を3~6ヶ月指導し、効果不十分なら降圧薬による治療を開始する。 [2]降圧薬による治療 140/90mmHg以上の高血圧では、生活習慣の改善を指導しながら、同時に降圧薬による治療を開始する。 …(略)… [4]第一選択薬 第一選択薬は、臓器障害やインスリン抵抗性を改善するアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、持続型ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬を用いる。 降圧目標を達成するために複数の降圧薬を併用する場合には、少量のサイアザイド系利尿薬も考慮する。 …(略)… 3 降圧目標 糖尿病患者では、しばしば高血圧が合併する。両者は独立した心血管系疾患の危険因子であり、高血圧合併糖尿病がハイリスクであることが広く認識されている。」(第131頁第1行~第132頁第17行) (摘記:乙7h) 「14 糖尿病に合併した高脂血症 ●ステートメント [1]糖尿病患者の高脂血症治療の意義 グレードA レベル2 糖尿病患者の高脂血症は積極的に治療する。糖尿病は心血管疾患発症の独立した強い危険因子である。糖尿病に合併する高脂血症は心血管疾患のリスクをさらに高めるが、その是正により心血管イベントを減らすことができる。 …(略)… [4]薬物療法 生活習慣・血糖コントロールが改善しても脂質管理目標が達成できない場合には薬物療法を考慮する。グレードA レベル1 LDLコレステロール(LDL-C)が高い場合、薬物療法の第一選択はスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)である。グレードA レベル1 高中性脂肪血症に対しては、フィブラート系薬剤の使用を考慮する。グレードB レベル1 …(略)… [1] 高脂血症の意義 2型糖尿病に合併する脂質代謝異常としては、高中性脂肪血症と低HDL-C血症の頻度が高く、高コレステロール血症もみられ、IIb型およびIV型が特に多い(表2)。 心血管疾患の発症が糖尿病患者では非糖尿病患者に比べて2~4倍多く、そのうち冠動脈心疾患(coronay heart desease:CHD)に罹患した場合の予後も悪いことが、Framingham Studyをはじめとする疫学研究により明らかにされている。これは心筋梗塞や脳血管障害の既往を持つ非糖尿病者が再びイベントを生ずるリスクに匹敵し、いわば糖尿病患者の治療は二次予防に相当する意義がある。」(第145頁第1行~第146頁第9行) (摘記:乙7i) 「[3] 治療法 …(略)… フィブラート系薬剤は、高中性脂肪血症、低HDL-C血症の改善に効果的である。VA-HIT(Veterans Affairs High Density Lipoprotein Cholesterol Intervention Trial)は、平均的LDL-Cと低HDL-CのCHD既往症を対象にジェムフィブロジルの効果をみた試験である。その糖尿病サブグループ解析ではCHDの発症が24%抑制された。また2型糖尿病患者のみを対象としたDAIS(Diabetes Atherosclerosis Intervention Study)では、フェノフィブラートの投与による冠動脈病変の進展抑制効果が確認されている。」(第147頁第12行~下から2行) 7 乙8の記載事項 (摘記:乙8a) 「第4章 糖尿病の管理・治療 治療目標 要旨 糖尿病治療の目的は、健康な人と変わらないQOLの維持と健康な人と変わらない寿命の確保にある。そのためには、糖尿病性網膜症、腎症、神経障害、および糖尿病に多発する動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症)の発症・進展阻止を図ることになり、血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロール状況の維持が必須となる。さらに、急性の代謝異常を伴う変化に対し、的確な対処を行い、生命の危機を回避すること、その予防を図ることも治療の目的の一つとなる。 …(略)… 糖尿病を発症しても糖尿病性腎症や網膜症といった微小血管障害や動脈硬化症を発症・進展させないことが、糖尿病治療の目標であることは言うまでもない。…(略)…さらに、作用機序の異なる薬剤(現時点で臨床応用可能なものほぼすべて)を適用することができる。したがって、2型糖尿病患者のみならず1型糖尿病患者においても良好な血糖コントロール状況を維持することは、決して不可能なことではない。 糖尿病治療の目的 糖尿病治療の目的は、(1)健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、ならびに、(2)健康な人と変わらない寿命の確保にある。そのためには、糖尿病に特有の微小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)および糖尿病に多発する動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症)の発症、進展の阻止を図らなければならない。すると、血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロール状況の維持が必須となろう。」(第79頁第1行~第80頁第15行) (摘記:乙8b) 「経口剤の作用機序と特徴 現在我が国で許可されている経口剤を表1にまとめて示す。 1.スルホニル尿素(SU)剤 …(略)… 2.ビグアナイド剤 …(略)… 3.αグルコシダーゼ阻害薬 …(略)… 4.インスリン抵抗性改善薬 …(略)… 5.速効型インスリン分泌促進薬 …(略)… 」(第106頁下から8行~第109頁第14行) (摘記:乙8c) 「 [図:0001428910000009.jpg] 」(第107頁 表1) 8 乙9の記載事項 (摘記:乙9a) 「特集・糖尿病の薬の使い方 経口血糖降下薬の作用と使い方 α-グルコシダーゼ阻害薬 二糖類分解酵素α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI) …(略)… 1.α-GIの作用機序 食事由来の炭水化物は、唾液と膵液中のアミラーゼにより二糖類やオリゴ糖に分解された後、小腸で二糖類加水分解酵素であるα-glucosidaseにより単糖類に分解されて吸収される。α-GIは、α-glucosidaseの活性部位に結合して競合的に作用し、二糖類の単糖類への分解を阻害することで、糖質の消化・吸収を遅延させる。軽症の糖尿病の場合、インスリンは遅延過剰分泌反応を示すことが多いため、糖質の吸収を遅延させることでインスリン分泌と血糖の上昇タイミングが同期し、食後の血糖上昇が抑制される。」(第36頁第1行~第37頁右欄第2行) (摘記:乙9b) 「III 使用上のポイント …(略)… 2)多剤との併用療法 α-GIはその作用機序から、理論上は全ての糖尿病治療薬との併用が可能である。他の経口血糖降下剤やインスリンで治療中の患者で食後の高血糖が認められる症例が対象となる。」(第38頁右欄第7行~左欄第5行) 9 乙10の記載事項 (摘記:乙10a) 「【要約】 本発明は、価値ある薬理的な特定、特に酵素:ジペプチルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)の活性に及ぼす阻害作用を持つ、以下の一般式(ここで、R1~R3は特許請求の範囲における請求項1~16に記載したような意味を持つ)で表される置換されたキサンチン、およびその互変異性体、立体異性体、混合物、プロドラッグ並びにその塩に関する: 【化1】 [図:0001428910000010.jpg] 」(【要約】) (摘記:乙10b) 「【0042】 本発明の化合物は、また他の活性物質との組合せで使用することもできる。このような組合せとして適した治療薬は、例えば抗-糖尿病薬、例えばメトホルミン、スルホニルウレア(例えば、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド)、ナテグリニド(nateglinide)、レパグリニド(repaglinide)、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、ピオグリタゾン)、PPAR-γアゴニスト(例えば、GI 262570)およびアンタゴニスト、PPAR-γ/αモジュレータ(例えば、KRP 297)、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、フォグリボース(voglibose)、他のDPP IV阻害剤、α2アンタゴニスト、インシュリンおよびインシュリン類似体、GLP-1およびGLP-2類似体(例えば、エキセンジン-4)またはアミリン(amylin)を含む。」(【0042】) 10 乙14の記載事項 (摘記:乙14a) 「2型糖尿病患者におけるスルホニル尿素又はインスリンによる厳格な血糖コントロールと従来の治療との比較及び合併症のリスク(UKPDS 33)」(標題) (摘記:乙14b) 「スルホニル尿素又はインスリンによる厳格な血糖コントロールは、2型糖尿病患者における微小血管合併症のリスクを大幅に減少させるが、大血管疾患のリスクは減少させない。」(第837頁右欄第3段落) 11 乙15の記載事項 (摘記:乙15a) 「3 糖尿病の合併症 …(略)…細小血管障害は糖尿病特有の合併症であり、糖尿病がないと発症しない。網膜症、腎症、神経障害がこれに含まれ、古くから三大合併症(triopathy)と呼ばれている。」(第15頁第1行~左欄下から3行) なお、(摘記:乙8a)の「微小血管」と(摘記:乙15a)の「細小血管」は同じ意味であり、本審決においては「微小血管」を用いる。 また、「DPP-IV」と「DPP IV」と「DPP 4」、「インヒビター」と「阻害剤」と「阻害薬」は、それぞれ同じ意味である。 第6 当審の判断 1 本件明細書に記載された事項 本件明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)には、次のとおりの記載がある。 「【背景技術】 【0002】 名称CD26でも知られる酵素DPP-IVは、タンパク質のジペプチドのN末端でプロリン又はアラニングループの開裂を促進するセリンプロテアーゼである。これによりDPP-IVインヒビターは、ペプチドGLP-1を含んだ生物活性ペプチドの血漿レベルに影響し、糖尿病の治療を大いに促進する分子である。 30歳以下の年少者で主に発生するタイプ1の糖尿病は、自己免疫性の疾患として分類される。…(略)… 【0003】 タイプ2の糖尿病は、自己免疫性疾患としては分類されず、血漿1dl当たり125mgのグルコースを超える空腹時血糖レベルで現れる;…(略)… 【0004】 糖尿病の治療の観察において、HbA1c値、ヘモグロビンB鎖の非酵素的なグリケーション(glycation)の生成物は非常に重要なものである。その構造は実質的に血糖レベルと赤血球の寿命に依存するため、“血糖値の記憶(blood sugar memory)”と言う意味のHbA1cは4-12週間前の平均血糖レベルを反映する。そのHbA1cレベルが長期間に亘りより集中的な糖尿病治療によって良好に制御された(即ち6.5より低い試料中の合計ヘモグロビン)糖尿病の患者は、糖尿病性の細小血管障害から顕著により良好に守られる。 …(略)… 【0009】 …(略)… いくつかの選択したDDP IVインヒビターは、特に前糖尿病、耐糖能障害(障害のある耐糖能)、病的な空腹時グルコース(障害のある空腹時グルコース)、糖尿病性足病変、糖尿病が誘発する潰瘍、糖尿病性高脂血症、糖尿病性異常脂質血症、新たに診断されたタイプ1の糖尿病(膵臓からのインシュリンの残りの分泌を維持するための)、妊娠性糖尿病(妊娠性糖尿病)、高血糖症、アドレナリン作動性の食後の症状(反応性低血糖症)又は心不全から選択される医学的又は生理学的な機能障害であると診断された患者の治療上の処置のための薬物の調製に特に適している。 【0010】 これらの薬物は、治療にかかわらず患者が障害のあるグルコース代謝、上昇したHbA1c値、障害のある空腹時グルコース値、顕性タイプ2糖尿病、糖尿病性足病変、糖尿病が誘発する潰瘍、糖尿病性高脂血症又は糖尿病性異常脂質血症に罹患するであろうこと、及び治療にかかわらずインシュリン治療が必要となるか又は大血管性の合併症を起こすことのリスクを減少させるためにも使用されるであろう。 …(略)… 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 生理的な機能障害の治療のため及び潜在的に危険な状態にある患者における機能障害の発生リスクを減少させるために選択した、DPP IVインヒビターの使用を記載する。 対応する単離又は貯蔵媒体、及び使用する媒体に対してDPP IVインヒビターを添加することによるランゲルハンス島又はβ細胞の活力及び分泌能力を向上する対応した方法が、本発明のさらなる目的である。 【課題を解決するための手段】 【0012】 最終的には、上記インヒビターは、種々の形態の関節炎の治療の適切であるが、特には関節リューマチの治療に適している。 本発明の選択されたDPP IVインヒビターは、以下の式(I)又は式(II)により記載できる 【化1】 [図:0001428910000011.jpg] [図:0001428910000012.jpg] (式中、R1は([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル、(キナゾリン-2-イル)メチル、(キノキサリン-6-イル)メチル、(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル、2-シアノ-ベンジル、(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル、(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル、(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル又は(4,6-ジメチルピリミジン-2-イル)メチルを意味し、及びR2は3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル、(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ又は(2-(S)-アミノ-プロピル)-メチルアミノを意味する)。 【0013】 特に好ましいDPP IVインヒビターは、以下の化合物及びこれらの治療的に活性な塩である: ・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)キサンチン(cf.WO2004/018468,Example2(142)) 【化3】 [図:0001428910000013.jpg] ・1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2004/018468,Example2(252)) 【化4】 [図:0001428910000014.jpg] ・1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2004/018468,Example2(80)) 【化5】 [図:0001428910000015.jpg] ・2-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-(ブタ-2-イニル)-5-(4-メチル-キナゾリン-2-イルメチル)-3.5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジン-4-オン(cf.WO2004/050658,Example136) 【化6】 [図:0001428910000016.jpg] 【0014】 ・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン(cf.WO2006/029769,Example2(1)) 【化7】 [図:0001428910000017.jpg] ・1-[(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2005/085246,Example1(30)) 【化8】 [図:0001428910000018.jpg] ・1-(2-シアノ-ベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2005/085246,Example1(39)) 【化9】 [図:0001428910000019.jpg] 【0015】 ・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-(2-アミノ-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン(cf.WO2006/029769,Example2(4)) 【化10】 [図:0001428910000020.jpg] ・1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2005/085246,Example1(52)) 【化11】 [図:0001428910000021.jpg] ・1-[(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2005/085246,Example1(81)) 【化12】 [図:0001428910000022.jpg] 【0016】 ・1-[(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)-メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2005/085246,Example1(82)) 【化13】 [図:0001428910000023.jpg] ・1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO2005/085246,Example1(83)) 【化14】 [図:0001428910000024.jpg] 【0017】 これらのDDP IVインヒビターは構造的に類似するDPP IVインヒビターから区別され、それはこれらが好ましい薬理学的な特性、レセプター選択性及び好ましい副作用特性と優秀な効能及び長く持続する効果を組み合わせ、又は他の医薬活性物質と組み合わせた場合に予想外の治療の利点又は改良をもたらすためである。これらの調製は記載した公報に開示されている。 異なる代謝機能障害は多くの場合同時に発生するため、多くの異なる活性原理の組み合わせがかなり頻繁に現れる。従って、診断された機能障害によって、DPP IVインヒビターを他の高糖尿病物質から選択した活性物質、特に血液中の血糖レベル又は脂質レベルを低下させ、血液中のHDLレベルを上げ、血圧を下げ又はアテローム性動脈硬化又は肥満の治療で指示される活性物質と組み合わせた場合、改良した治療の結果が得られるであろう。 【0018】 DPP IVインヒビターの要求される投与量は、静脈投与される場合は0.1mgから10mg、好ましくは0.25mgから5mgであり、経口投与される場合は0.5mgから100mg、好ましくは2.5mgから50mgであり、各場合において一日1~4回投与される。 …(略)… 【0022】 抗糖尿病の組み合わせパートナーの例は、メトホルミン;スルホニルウレア、例えばグリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド(glibornuride)及びグリクラジド;ナテグリニド;レパグリニド;チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾン及びピオグリタゾン;PPARγモジュレーター、例えばメタグリダーゼ;PPAR-γアゴニスト、例えばGI262570;PPAR-γアンタゴニスト;PPAR-γ/αモジュレーター、例えばテサグリタザル、ムラグリタザル及びKRP297;PPAR-γ/α/デルタモジュレーター;AMPK-アクティベーター、例えばAICAR;アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC1及びACC2)インヒビター;ジアシルグリセロール-アセチルトランスフェラーゼ(DGAT)インヒビター;パンクレアチックβ細胞GFRPアゴニスト、例えばSMT3-レセプター-アゴニスト及びGPR119;11β-HSD-インヒビター;FGF19アゴニスト又は類似体;α-グルコシダーゼブロッカー、例えばアカルボーズ、ボグリボーズ及びミグリトール;α2-アンタゴニスト;インシュリン及びインシュリン類似体、例えばヒトインシュリン、インシュリンリスプロ、インシュリングルシリン、r-DNA-インシュリンアスパルト、NPHインシュリン、インシュリンデテミール、インシュリンジンク懸濁液及びインシュリンゲラルギン;胃抑制ペプチド(GIP);プラムリンチド;アミリン又はGLP-1及びGLP-1類似体、例えばエキセンジン-4;SGLT2-インヒビター、例えばKGT-1251;タンパクチロシン-ホスファターゼのインヒビター;グルコース-6-ホスファターゼのインヒビター;フルクトース-1,6-ビスホスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリラーゼモジュレーター;グルカゴンレセプターアンタゴニスト;ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼ(phosphoenolpyruvatecarboxynase)(PEPCK)インヒビター;ピルベートデヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)インヒビター;チロシン-キナーゼのインヒビター(50mgから600mg)、例えばPDGF-レセプター-キナーゼ(cf. EP-A-564409, WO 98/35958, US 5093330, WO 2004/005281及びWO 2006/041976);グルコキナーゼ/調整タンパクモジュレーターを含むグルコキナーゼアクティベーター;グリコーゲン合成キナーゼインヒビター;SH2-ドメインを含むイノシトール5-ホスファターゼタイプ2(SHIP2)のインヒビター;IKKインヒビター、例えば高投与量サリシレート;JNK1インヒビター;タンパクキナーゼC-セタインヒビター;β3-アゴニスト、例えばリトベグロン、YM178、ソラベグロン、タリベグロン、N-5984、GRC-1087、ラファベグロン、FMP825;アルドースレダクターゼインヒビター、例えばAS3201、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレスタット、ラニレスタット、NZ-314、CP-744809及びCT-112;SGLT-1又はSGLT-2インヒビター;KV1.3チャンネルインヒビター;GPR40モジュレーター;SCD-1インヒビター;CCR-2アンタゴニスト;及び他のDPP IVインヒビターである。 …(略)… 【0031】 抗糖尿病薬の組み合わせパートナーの特に好ましい例は、約100mg~500mg、又は200mg~850mg(1日1~3回)、又は1日1回又は2回の約300mg~1000mgの投与量におけるメトホルミン、又は1日1回又は2回の約100mg~1000mg若しくは好ましくは500mg~1000mg、又は1日1回の約500mg~2000mgの投与量における遅延放出のメトホルミンである。他の特に好ましい例は、1日1回の約1-10mg、15mg、30mg又は45mgの投与量におけるピオグリタゾンである。他の特に好ましい例は、1日1~3回の約10mg~50mg又は100mg以下の投与量におけるミグリトールである。 血液中の脂質レベルを低くする組み合わせパートナーの例は、HMG-CoA-レダクターゼインヒビター、例えばシムバスチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン及びロスバスタチン;フィブラート、例えばベザフィブラート、フェノフィブラート、クロフィブラート、ジェムフィブロジル、エトフィブラート及びエトフィリンクロフィブラート;ニコチン酸及びその誘導体、例えばアシピモックス;PPAR-αアゴニスト;PPAR-デルタアゴニスト;アシル-コエンザイムAのインヒビター;コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT;EC2.3.1.26)、例えばアバシミベ(avasimibe);コレステロール再吸収インヒビター、例えばエゼチミブ;胆汁酸に結合する物質、例えばコレスチラミン、コレスチポール及びコレセベラム;胆汁酸輸送体のインヒビター;HDLモジュレーティング活性物質、例えばD4F、リバースD4F、LXRモジュレーティング活性物質及びFXRモジュレーティング活性物質;CETPインヒビター、例えばトルセトラピブ、JTT-705又はWO2007/005572の化合物12;LDLレセプターモジュレーター;及びApoB100アンチセンスRNAである。特に好ましい例は、1日1回の約1mgから40mg、又は10mgから80mgの投与量におけるアトルバスタチンである。 【0032】 血圧を低くする組み合わせパートナーの例は、βブロッカー、例えばアテノロール、ビスプロロール、セリプロロール、メトプロロール及びカルベジロール;利尿薬、例えばヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、キシパミド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、アミロリド及びトリアムテレン;カルシウムチャンネルブロッカー、例えばアムロジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニピジン(lercanipidine)、マニジピン、イスラジピン、ニルバジピン、ベラパミル、ガロパミル及びジルチアゼム;ACEインヒビター、例えばラミプリル、リシノプリル、シラザプリル、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、フォシノプリル及びトランドラプリル;加えてアンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)例えばテルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン及びエプロサルタンである。特に好ましい例は、1日当たり50mgから200mgの投与量におけるメトプロロール、1日当たり2.5mgから10mgの投与量におけるアムロジピン、1日当たり2.5mgから15mgの投与量におけるラミプリル、1日当たり80から160mgの投与量におけるバルサルタン、及び1日当たり20mgから320mg又は40mgから160mgの投与量におけるテルミサルタンである。 …(略)… 【実施例】 【0037】 実施例1: 前糖尿病の治療 病的な空腹時グルコース及び/又は障害のある耐糖能により特徴付けられる前糖尿病の治療における、本発明のDDP IVインヒビターの効果は、臨床試験を用いて試験できる。短期間(例えば2-4週間)の試験において、治療の成功は、空腹時グルコース値及び/又は試験のための治療の最後の期間の後の食事後のグルコース値又は負荷試験(経口耐糖能値又は定義した食事後の食物負荷試験(food tolerance test))後のグルコース値を決定し、次いでこれらの値と試験開始前の値及び/又はプラセボ群の値とを比較することにより試験される。更に、フルクトサミン値を治療前後で決定し、初期値及び/又はプラセボ群と比較することができる。空腹時又は空腹ではない場合のグルコースレベルにおける顕著な低下は、治療の効果を実証する。長期間(12週間以上)の試験において、治療の成功は、HbA1c値の決定、初期値及び/又はプラセボ群の値と比較することにより試験される。初期値及び/又はプラセボ値と比較したHbA1c値の顕著な変化は、前糖尿病の治療に対するDPP IVインヒビターの効果を実証する。 【0038】 実施例2: 顕性タイプ2糖尿病の予防 病的な空腹時グルコース及び/又は障害のある耐糖能(前糖尿病)に罹患した患者の治療は、顕性タイプ2糖尿病への移行を予防することのゴールを求めることでもある。治療の効果は、活性物質か又は活性物質の組み合わせを用いるか、又はプラセボを用いるか、又は医薬品を用いない又は他の薬物を用いた治療を用いて前糖尿病患者を長期(例えば1-5年)に亘り治療する、比較臨床試験で調査できる。治療の間及び治療の末期において、空腹時のグルコースを決定すること及び/又は負荷試験(例えばoGTT)により、チェックは、どの程度の数の患者が顕性タイプ2糖尿病を示すか、即ち125mg/dlの空腹時グルコースレベル及び/又は199mg/dlのoGTTに従った2時間の値を示すことを決定することで行われる。治療の他の形態の1つと比較して、活性物質又は活性物質の組み合わせを用いて治療した場合に、顕性タイプ2糖尿病を示す患者の数の顕著な減少は、前糖尿病の明らかな糖尿病への移行の防止における、活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を実証する。 【0039】 実施例3: タイプ2糖尿病の治療 グルコース代謝状況(glucose metabolic situation)における急速な改善の発生に加えて、本発明の活性物質を用いたタイプ2糖尿病に罹患した患者の治療は長期間の代謝状況における悪化を防ぐ。これは、長期間、例えば1-6年の間本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合わせで患者を治療し、次いで他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較することで観察できる。空腹時グルコース及び/又はHbA1c値における増加が無いか又はほんのわずかに増加したことが観察される場合、他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較して治療が成功したことの証拠が存在する。他の薬物で治療された患者と比較して、本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合わせで治療された患者の顕著により少ないパーセンテージが、グルコース代謝ポジション(glucose metabolic position)における、付加的な経口の抗糖尿病薬を用いて、又はインシュリンを用いて、又はインシュリン類似体を用いて、又は他の抗糖尿病薬(例えばGLP-1類似体)を用いた治療が指示されるポイントへの悪化(例えばHbA1c値を6.5%又は7%まで増加させること)に耐える場合に、治療の成功のさらなる証拠が得られる。 【0040】 実施例4: インシュリン抵抗性の治療 異なった期間(例えば2週間から12ヶ月)行う臨床試験において、治療の成功は、オイグリセミック高インシュリン血症クランプ試験(hyperinsulinaemic euglycaemic glucose clamp study)を用いてチェックされる。初期値と比較した又はプラセボ群と比較した、又は異なる治療を受けた群と比較した、試験末期のグルコース注入速度(glucose infusion rate)の顕著な増加は、インシュリン抵抗性の治療における活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を証明する。 【0041】 実施例5: 糖尿病性高脂血症又は異常脂質血症の治療 タイプ2の糖尿病に罹患した患者における異なる期間(例えば2週間から60ヶ月)行った臨床試験において、治療の成功を合計コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール及び血漿トリグリセリドを決定することによりチェックする。初期値と比較して又はプラセボ群と比較して又は異なる治療を受けた群と比較して、合計コレステロール、LDL-コレステロール又は血漿トリグリセリドにおける顕著な低下、及び/又は試験の間又は末期におけるHDL-コレステロールレベルの上昇は、糖尿病性高脂血症又は異常脂質血症の治療における活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を証明する。 【0042】 実施例6: 低血糖症の治療 異なる期間(例えば1日から24ヶ月)行う臨床試験において、低血糖症に罹患した患者の治療の成功は、空腹時グルコース又は空腹ではない場合のグルコース(例えば食後又はoGTT若しくは定義した食事の負荷試験後)を決定することによりチェックする。初期値と比較して又はプラセボ群と比較して又は他の治療を受けた群と比較して、試験の間又は末期のこれらグルコース値の顕著な低下は、低血糖症の治療における活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を証明する。 【0043】 実施例7: 妊娠性糖尿病の治療 短い期間(例えば2-4週間)行う臨床試験において、治療の成功は、空腹時グルコース値及び/又は食事後又は試験の治療期間の末期における負荷試験(経口耐糖能試験又は定義した食事後の食品耐性試験)後のグルコース値を決定し、これらの値を試験開始前の値及び/又はプラセボ群の値と比較することによりチェックされる。更に、フルクトサミン値を、治療の前後で決定し、及び初期値及び/又はプラセボ値と比較できる。空腹時又は空腹ではない場合のグルコースレベルにおける顕著な低下は、活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を実証する。 長期間(12週間以上)行う試験において、治療の成功は、HbA1c値(初期値及びプラセボ群と比較した)を決定することによりチェックされる。初期値及び/又はプラセボ値と比較したHbA1c値における顕著な変化は、妊娠性糖尿病の治療における活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を実証する。 【0044】 実施例8: 妊娠性糖尿病に罹患した女性の治療 妊娠性糖尿病に罹患した患者は、妊娠後に顕性タイプ2糖尿病に罹患する顕著に増加したリスクを有する。治療は明らかなタイプ2に移行することを予防する目的と共に提供される。この目的のため、妊娠性糖尿病の病歴を有する女性は、長期間(例えば1-4年)、本発明の活性物質又は活性物質の組み合わせを用いるか、又はプラセボを用いるか、又は薬物を用いない治療を用いるか、又は他の薬物を用いて治療される。治療の間及び末期において、チェックを空腹時グルコースを決定することにより及び/又は負荷試験(例えばoGTT)により行い、何人の患者が顕性タイプ2糖尿病(空腹時グルコースレベル125mg/dl及び/又はoGTT後2時間値199mg/dl)を発現したかを観察する。異なるタイプの治療と比較して、本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合わせを用いて治療した場合、顕性タイプ2糖尿病を発現した患者の数の顕著な減少は、妊娠性糖尿病の病歴を有する女性の明らかな糖尿病を予防することにおける活性物質又は活性物質の組み合わせの効果の証拠である。 【0045】 実施例9: 微小血管又は大血管性の合併症の予防 本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合わせを用いたタイプ2糖尿病又は前糖尿病患者の治療は、微小血管の合併症(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチー、糖尿病性足病変、糖尿病性潰瘍)又は大血管性の合併症(例えば、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞障害、心筋ミオパチー、心不全、心拍障害、血管再狭窄)を予防し又は減少させる。タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者は、長期間、例えば1-6年間、本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合わせを用いて治療され、及び他の抗糖尿病薬又はプラセボを用いて治療された患者と比較される。他の抗糖尿病薬又はプラセボを用いて治療された患者と比較した治療の成功の証拠は、より少ない数の単一若しくは多数の合併症において見いだす事ができる。大血管性の事象、糖尿病性足病変及び/又は糖尿病性潰瘍の場合において、数は既往歴及び種々の試験方法によりカウントされる。糖尿病性網膜症の場合において、治療の成功は、コンピューター制御された照明及び眼のバックグラウンドの評価又は他の眼科の方法により決定される。糖尿病性神経障害の場合において、既往歴及び臨床試験に加えて、神経伝導速度を例えばキャリブレーティッドチューニングフォーク(calibrated tuning fork)を用いて測定できる。糖尿病性ネフロパチーについては、以下のパラメーターを試験の開始時、試験の間及び試験後に調査しても良い;アルブミンの分泌、クレアチニンの浄化値、血清クレアチニン値、血清クレアチニン値が2倍になるまで要する時間、透析が必要とされるまでに要する時間。 【0046】 実施例10: メタボリックシンドロームの治療 本発明の活性物質又は活性物質の組み合わせの効果は、空腹時グルコース又は空腹時ではない場合のグルコース(例えば食後又はoGTT若しくは定義した食事を用いた負荷試験後)又はHbA1c値を決定することにより、種々の実行時間(例えば12週間から6年間)での臨床試験で試験することができる。初期値と比較した又はプラセボ群と比較した、又は異なる治療を受けた群と比較した、試験の間又は試験の末期におけるこれらグルコース値又はHbA1c値の急激な低下は、メタボリックシンドロームの治療における活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を証明する。この例は、試験の開始段階の初期値と比較するか又はプラセボ若しくは異なる治療で治療された患者の群との比較における、最高血圧及び/又は最低血圧における減少、血漿トリグリセリドの低下、合計又はLDLコレステロールの減少、HDLコレステロールの増加又は体重の減少である。 【0047】 実施例11: DPP IVインヒビターフィルム被覆錠剤 顆粒化溶液を調製するため、コポビドンを精製水に室温で溶解させる。DPP IVインヒビター、マンニトール、α化デンプン及びトウモロコシデンプンを適切なミキサー中で混合し、プレミックスを調製する。プレミックスを顆粒化溶液で湿らせ、次いで高い剪断速度のミキサー中で顆粒化させる。湿らせた顆粒を1.6mmメッシュサイズのふるいを通してふるいにかける。顆粒を、2-4%の乾燥値における損失が得られるまで、流動床乾燥器で約60℃で乾燥させる。最終的な混合物を圧縮して、錠剤コアを形成する。 適切なミキサー中で、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及び酸化鉄を室温で精製水中に懸濁させ、錠剤コーティングのための懸濁液を調製する。錠剤コアを、3%の質量増加が得られるまでこの懸濁液で被覆させる。例えば、以下の錠剤組成物がこの方法で得られるであろう; 【0048】 【表1】 [図:0001428910000025.jpg] …(略)… 【0050】 実施例13: DPP IVインヒビター-メトホルミンを用いた組み合わせた治療 タイプ2糖尿病又は前糖尿病を治療するため、本発明のDPP IVインヒビターを、遊離した組み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、抗糖尿病活性物質メトホルミンを組み合わせても良い。DPP IVインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、メトホルミンの異なる投与量、例えば500mg、850mg又は1000mgの、メトホルミンの単一の投与量として合計一日投与量のメトホルミン500-2850mg、又は遅延放出形態における500mg、1000mg、1500mg又は2000mgのメトホルミンと組み合わせても良い。メトホルミンとのこのような組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。このため、タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者を、DPP IVインヒビターそのままを用いてか、又はメトホルミンそのままを用いてか、又はDPP IVインヒビターとメトホルミンを組み合わせて治療する。治療は2週間から6年継続する。組み合わせが適切である証拠及び効果は、DPP IVインヒビターとメトホルミンの組み合わせが、DPP IVインヒビター単独か又はメトホルミン単独よりも、空腹時グルコース及び/又は空腹ではない場合のグルコース及び/又はHbA1c値を非常に顕著に減少させた事実において見出すことができる。 【0051】 実施例14: DPP IVインヒビター-グリタゾンを用いた組み合わせた治療 タイプ2糖尿病又は前糖尿病を治療するため、本発明のDPP IVインヒビターを、遊離した組み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、グリタゾン又はチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン又はロシグリタゾン)を含む抗糖尿病活性物質群と組み合わせても良い。DPP IVインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、ピオグリタゾンの異なる投与量(15mg、30mg又は45mg)又はロシグリタゾン(1日1回か又は2回の2mg、4mg又は8mg)と組み合わせても良い。ロシグリタゾン又はピオグリタゾンのこのような組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。このため、タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者を、DPP IVインヒビターそのままを用いてか、又はロシグリタゾン若しくはピオグリタゾンをそのままを用いてか、又はDPP IVインヒビターとロシグリタゾン若しくはピオグリタゾンを組み合わせて治療する。治療は2週間から6年継続する。組み合わせが適切である証拠及び効果は、DPP IVインヒビターとロシグリタゾン若しくはピオグリタゾンの組み合わせが、DPP IVインヒビター単独か又はロシグリタゾン若しくはピオグリタゾン単独よりも、空腹時グルコース及び/又は空腹ではない場合のグルコース及び/又はHbA1c値を非常に顕著に減少させた事実において見出すことができる。 【0052】 実施例15: DPP IVインヒビター-SGLT2インヒビターを用いた組み合わせた治療 タイプ2糖尿病又は前糖尿病を治療するため、本発明のDPP IVインヒビターを、遊離した組み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、SGLT-2インヒビターを含む抗糖尿病活性物質群と組み合わせても良い。DPP IVインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、SGLT-2インヒビターの異なる投与量(0.5mgから100mg)と組み合わせても良い。SGLT-2インヒビターのこのような組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。このため、タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者を、DPP IVインヒビターそのままを用いてか、又はSGLT-2インヒビターをそのままを用いてか、又はDPP IVインヒビターとSGLT-2インヒビターを組み合わせて治療する。治療は2週間から6年で継続する。組み合わせが適切である証拠及び効果は、DPP IVインヒビターとSGLT-2インヒビターの組み合わせが、DPP IVインヒビター単独か又はSGLT-2インヒビター単独よりも、空腹時グルコース及び/又は空腹ではない場合のグルコース及び/又はHbA1c値を非常に顕著に減少させた事実において見出すことができる。 【0053】 実施例16: DPP IVインヒビター-抗高血圧薬を用いた組み合わせた治療 タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者又はメタボリックシンドロームに罹患した患者を治療するため、本発明のDPP IVインヒビターを、遊離した組み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、抗高血圧活性物質と組み合わせても良い。DPP IVインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、異なる投与量のACE-インヒビター(例えば2.5mgから15mgラミプリル)、AT-1レセプターアンタゴニスト(例えば20mgから160mgテルミサルタン)、βブロッカー(例えば50mgから200mgメトプロロール)又は利尿薬(例えば12.5mgから25mgヒドロクロロチアジド)と組み合わせても良い。抗高血圧薬のこのような組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。このため、タイプ2糖尿病又は前糖尿病又はメタボリックシンドロームに罹患した患者を、DPP IVインヒビターそのままを用いてか、又は抗高血圧薬をそのままを用いてか、又はDPP IVインヒビターと抗高血圧薬を組み合わせて治療する。治療は2週間から6年継続する。組み合わせが適切である証拠及び効果は、DPP IVインヒビターと抗高血圧薬の組み合わせが、少なくともDPP IVインヒビター単独と同じ程度、空腹時グルコース及び/又は空腹ではない場合のグルコース及び/又はHbA1c値を減少させた事実において、及びDPP IVインヒビターと抗高血圧薬の組み合わせが、最高血圧及び/又は最低血圧を少なくとも抗高血圧薬単独と同じ程度低くした場合に見出すことができる。 【0054】 実施例17: DPP IVインヒビター-高脂血症治療薬を用いた組み合わせた治療 タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者又はメタボリックシンドロームに罹患した患者又は糖尿病性異常脂質血症若しくは高脂血症に罹患した患者を治療するため、本発明のDPP IVインヒビターを、遊離した組み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、高脂血症治療薬/HDLを増加させる薬物と組み合わせても良い。DPP IVインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、異なる投与量のスタチン(例えば10mgから80mgのアトルバスタチン又は10mgから80mgのシムバスタチン)、フィブラート(例えばフェノフィブラート)、コレステロール吸収インヒビター、又はHLDを増加させる物質、例えばCETP-インヒビター(例えばトルセトラピブ1日1回の10mgから120mg又は1日2回の120mg)と組み合わせても良い。高脂血症治療薬/HLDを増加させる薬物のこのような組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。このため、タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者又はメタボリックシンドロームに罹患した患者又は糖尿病性異常脂質血症若しくは高脂血症に罹患した患者を、DPP IVインヒビターそのままを用いてか、又は高脂血症治療薬/HDLを増加させる薬物をそのままを用いてか、又はDPP IVインヒビターと高脂血症治療薬/HDLを増加させる薬物を組み合わせて治療する。治療は2週間から6年継続する。組み合わせが適切である証拠及び効果は、DPP IVインヒビターと高脂血症治療薬/HDLを増加させる薬物の組み合わせが、少なくともDPP IVインヒビター単独と同程度に、空腹時グルコース及び/又は空腹ではない場合のグルコース及び/又はHbA1c値を減少させた事実において、及びDPP IVと高脂血症治療薬/HDLを増加させる薬物の組み合わせが、少なくとも高脂血症治療薬/HDLを増加させる薬物単独と同程度に、合計コレステロール又はLDL-コレステロール又は血漿トリグリセリドを低下させ、又はHDLコレステロール値を増加させた場合に見出すことができる。 【0055】 実施例18: 心不全に罹患した患者におけるDPP IVインヒビター-BNP/BNP誘導ペプチド又はBNP融合ペプチドの組み合わせた治療 急性心不全に罹患した患者を治療するため、本発明のDPP IVインヒビターを、遊離した組み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、心不全に好ましく影響する物質と組み合わせても良い。DPP IVインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、異なる投与量のACE-インヒビター(例えば2.5mgから15mgラミプリル)、AT1-レセプター-アンタゴニスト(例えば、20mgから160mgテルミサルタン)、βブロッカー(例えば50mgから200mgメトプロロール)、組み合わせたα/βブロッカー(例えば、3.25mgから100mgカルベジロール)、利尿薬(例えば12.5mgから25mgヒドロクロロチアジド)、ミネラルオコルチコイドレセプターアンタゴニスト(例えば25mgから100mgエプレレノン;及び/又はB-タイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)(例えば、0.01μg/kg/minネシリチドに続くボーラスとしての2μg/kg))、BNP誘導ペプチド又はBNP融合生成物と組み合わせても良い。BNPとDPP IVインヒビターの組み合わせは、インビボにおけるフルレングスのBNP(1-32)のより高い濃度をもたらす。このような特定の組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。治療は1日から6年継続する。組み合わせが急性心不全の治療において有効であることの証拠は、他の治療と比較して組み合わせが臨床状況において顕著な向上(より高い心臓の放出拍出量及び/又は肺の鬱血の逆転、及び/又は肺動脈楔入圧の逆転及び/又は急性心不全で起こる死亡の減少)をもたらす事実において見出すことができる。 【0056】 実施例19: 心不全に罹患した患者におけるDPP IVインヒビターを用いた治療 本発明のDPP IVインヒビターは慢性心不全に罹患した患者を治療するために使用しても良い。この治療は、インビボにおいて内生のフルレングスのBNP(1-32)のより高い濃度をもたらす。この治療の臨床効果は、臨床試験で試験される。治療は2週間から6年継続する。組み合わせが慢性心不全の治療に効果的であることの証拠は、本発明のDPP IVインヒビターが、異なる治療又はプラセボと比較して臨床状態において顕著な向上(少ない頻度の急性心不全を原因とする入院、より長い距離を歩く能力、エルゴメトリックス(ergometrics)におけるより高い耐負荷性、より高い心臓の放出拍出量及び/又は肺の鬱血及び/又は心不全で起こる死亡の減少)をもたらすことの事実において見出すことができる。」 2 本件出願時の技術常識 上記第5に摘記した各乙号証の記載事項によれば、本件出願時、以下の事項が技術常識となっていたと認められる。 (1)2型糖尿病と微小血管合併症の予防及び治療について 糖尿病は、インスリン作用の不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群であり、2型糖尿病は、患者の95%以上を占める最も多いタイプの糖尿病である。高血糖状態が続くと、糖尿病に特有の微小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)及び糖尿病で促進される全身の動脈硬化症(心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症)の発症、進展をもたらす(摘記:乙7a~乙7c、乙8a、乙15a)。 糖尿病の治療は継続的に行われ、その治療の目的は、血糖をコントロールすることにより、高血糖状態を改善し、糖尿病の合併症の予防及び治療を行うことである(摘記:乙7c、乙7d、乙8a)。 したがって、2型糖尿病において、血糖をコントロールすることにより、糖尿病の病態である高血糖状態を改善し、微小血管障害による糖尿病に特有の微小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)を予防及び治療できることは、本件出願時において技術常識となっていた。 (2)DPP IV阻害薬について 食物の摂取後に小腸から放出されるインクレチンは、膵β細胞からのインスリン分泌を惹起する消化管ホルモンの総称であり、当該インクレチンは、血中でジペプチジルペプチダーゼ-IV(di-peptidyl peptidase IV、DPP IV)により速やかに分解される。DPP IV阻害薬は、インクレチンのDPP IVによる分解を防ぐことにより、インスリン作用を増強し、高血糖状態を改善できることから、2型糖尿病の経口投与可能な治療薬として様々な開発が進行しており、本件出願時には、ヒトにおけるphase2からphase3 trialの臨床試験段階にあるDPP IV阻害薬も複数(NVP DPP728、LAF237)知られていた(摘記:乙1a~乙1d、乙5a、乙5c、乙5d、乙6a)。 したがって、DPP IV阻害薬は、2型糖尿病の経口投与可能な治療薬として使用可能であることは、本件出願時において技術常識となっていた。 (3)糖尿病における血糖コントロール、血清脂質、血圧、及び、体重コントロールについて ア 糖尿病において、単独の血糖降下薬の投与で血糖コントロールが不十分な場合には、作用機序の異なる経口血糖降下薬を併用する併用療法が技術常識となっていた(摘記:乙1e、乙7d、乙7f、乙9a、乙9b、乙10a、乙10b)。 イ また、糖尿病に特有の微小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)及び糖尿病で促進される全身の動脈硬化症(心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症)の発症、進展の阻止を図るためには、血糖コントロールのみでなく、血清脂質、血圧、体重のコントロールが必要であり、血糖コントロールと同時に、減量による肥満の解消、降圧薬や高コレステロール血症治療薬を用いた治療を併せて行うことも本件出願時の技術常識であった(摘記:乙7c、乙7g~乙7i、乙8a)。 3 無効理由1(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないと定めるところ、物の発明について実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明の記載が、当業者において、その記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。 上記第3のとおり、本件発明は「医薬」に関する物の発明であるところ、医薬の用途発明においては、一般に、物質名、化学構造等が示されることのみによっては、その有用性を予測することは困難であり、発明の詳細な説明に、有効量、投与方法等がある程度記載されていても、それだけでは、当業者は当該医薬が実際にその用途において使用をすることができるかどうかを予測することは困難であるから、医薬の用途発明において実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明において、当該医薬が当該用途に使用できることにつき薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を記載し、本件出願時の技術常識に照らして、当該医薬が当該用途の医薬として使用できることを当業者が理解できるようにする必要がある。 以下、この観点に立って検討する。 (2)実施可能要件の判断 ア 本件発明1について (ア)本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであるところ、発明の詳細な説明が本件発明1について実施可能要件を満たすというためには、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、1日あたりの経口用量が5mgの「1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)キサンチンであるDPP IVインヒビターまたは治療的に活性なその塩の一つ」(以下「本件インヒビター」という。)を含む医薬を製造することができること、及び、当該医薬により、顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療でき、微小血管の合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチー)のリスクが低下することを、当業者が理解できることが必要である。 (イ)上記1に摘記した事項によれば、発明の詳細な説明には、「背景技術」として、いくつかの選択したDPP IVインヒビターは、顕性タイプ2糖尿病などのリスクを減少させるために使用されるであろうことが記載され(【0009】【0010】)、「発明が解決しようとする課題」として、「生理的な機能障害の治療のため及び潜在的に危険な状態にある患者における機能障害の発生リスクを減少させるために選択した、DPP IVインヒビターの使用を記載する」(【0011】)とされている。 そして、発明の詳細な説明には、「本発明の選択されたDPP IVインヒビター」として「一般式(I)及び(II)」(当審注:式は省略)(【0012】)が記載されており、本件インヒビターは、特に好ましいDPP IVインヒビターとして、具体的に化学構造式が記載された12の化合物の筆頭の化合物として記載され(【0013】【化3】)、この筆頭の化合物は、「WO2004/018468,Example2(142)」、すなわち、国際公開第2004/018468号(甲1)における実施例2の(142)番化合物であり、その調製はここに記載した公報(甲1)に開示されていると記載されている(【0017】)。 また、発明の詳細な説明には、投与経路の1つとして経口投与が記載され、その場合の投与量については、「0.5mgから100mg、好ましくは2.5mgから50mgであり、各場合において一日1~4回投与される」ことが記載され(【0018】)、実施例11(【0046】~【0047】)には、DPP IVインヒビター(具体的化合物名は不明)を0.500mg~10.000mg含有するフィルム被覆錠剤の組成例が示されている。 さらに、発明の詳細な説明には、効果について、「好ましい薬理学的な特性、レセプター選択性及び好ましい副作用特性と優秀な効能及び長く持続する効果を組み合わせ、又は他の医薬活性物質と組み合わせた場合に予想外の治療の利点又は改良をもたらす」(【0017】)との定性的な記載がある。 そして、発明の詳細な説明には、いずれも、実験結果のない試験方法又は組成例のみが「実施例1~18」として記載され(【0037】~【0056】)、顕性タイプ2糖尿病の予防(実施例2)、タイプ2糖尿病の治療(実施例3)、微小血管の合併症(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチーなどの予防(実施例9))の試験方法が記載されている。 (ウ)発明の詳細な説明に記載された国際公開第2004/018468号(甲1)(【0013】))には一般式Iで表される新規な置換されたキサンチン(摘記:甲1a)が、「DPP-IV活性の阻害によって影響される可能性のある状態、又は疾病」、「例えば、タイプI及びタイプII真性糖尿病、糖尿病合併症」等の「予防及び治療に適したものであると予想される」(摘記:甲1d)ことが記載され、上記一般式Iで表される化合物群に含まれる化合物の1つである、「1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン」が特に好ましい化合物とされ(摘記:甲1bの(13)番化合物)、実施例2の(142)番化合物として合成され(摘記:甲1f。当審注:甲1bの(13)番化合物と甲1fの(142)番化合物は同一化合物であり、共に「本件インヒビター」に相当。)、甲1の実施例中で最もDPP IV阻害活性が高い値(IC50 1nM)を示す化合物のうちの1つである(摘記:甲1c)ことが記載されている。 そうすると、発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、甲1の記載を参照して、「本件インヒビター」を合成し、1日あたりの経口用量が5mgの「本件インヒビター」を含む医薬を製造することができる。 (エ)上記(イ)のとおり、発明の詳細な説明には、「本件インヒビター」を包含する式(I)又は式(II)により記載される「本発明の選択されたDPP IVインヒビター」の経口投与量の範囲、1日あたりの投与回数、及びこれを含有する錠剤の組成例が記載されているものの、「本件インヒビター」をタイプ2糖尿病患者に適用した薬理試験結果は示されていない。 そこで、発明の詳細な説明に上記の薬理試験結果が記載されていなくても、本件出願時の技術常識に照らし、当業者が、1日あたりの経口用量が5mgの「本件インヒビター」を含む医薬により、顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療でき、微小血管の合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチー)のリスクが低下することを、理解できるかを検討する。 上記(ウ)のとおり甲1において具体的に確認されているように、「本件インヒビター」は、DPP IV阻害活性が高い化合物である。 そして、上記2(1)及び(2)で記載したとおり、2型糖尿病において、血糖をコントロールすることにより、糖尿病の病態である高血糖状態を改善し、糖尿病に特有の合併症(網膜症、腎症、神経障害)を予防及び治療できることが技術常識となっており、また、DPP IV阻害薬が、2型糖尿病の経口投与可能な治療薬として使用可能であることも本件出願時の技術常識であった。 ここで、本件発明1の「微小血管の合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチー」(当審注:「nephropathy:ネフロパチー」は腎症を意味する。「研究社 新英和大辞典」、株式会社研究社、第6版第5刷、2007年11月、p.1659を参照)は、「糖尿病に特有の微小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)」と同義である。 また、本件発明1の「タイプ2糖尿病」は、「2型糖尿病」と同義である。 さらに、発明の詳細な説明には、「タイプ2の糖尿病は、・・・(省略)・・・血漿1dl当たり125mgのグルコースを超える空腹時血糖レベルで現れ」(【0003】)、「患者が顕性タイプ2糖尿病を示すか」どうかは「>125mg/dlの空腹時グルコースレベル及び/又は199mg/dlのGTT」「を示すことを決定することで行われる」(【0038】)と記載されているから、本件発明1の「顕性タイプ2糖尿病」は、血糖値レベルが「>125mg/dlの空腹時グルコースレベル及び/又は199mg/dlのGTT」を示すようになった「2型糖尿病」を意味する。 そうすると、上記本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載及び甲1の記載を考慮すれば、「本件インヒビター」は、DPP IV阻害活性が高いDPP IV阻害薬として機能し、発明の詳細な説明に記載された範囲内の投与量である「一日あたり経口用量が5mg」とすれば、顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療でき、微小血管の合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチー)の予防ができる、すなわち、リスクを低下できることを、当業者であれば合理的に理解することができる。 そして、この理解に反する技術常識や本件出願時の知見などは見いだせない。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1において「他の抗糖尿病薬;血糖レベルを下げる活性物質;血液中の脂質レベルを下げる活性物質;血液中のHDLレベルを上昇させる活性物質;血圧を下げる活性物質;アテローム性動脈硬化又は肥満の治療において適応とされる活性物質;および心不全の治療用活性物質、の中から選択される活性物質と併用される」ことを特定するものである。 上記アにおける検討に加え、発明の詳細な説明には、「診断された機能障害によってDPP IVインヒビターを他の高糖尿病物質から選択した活性物質、特に血液中の血糖レベル又は脂質レベルを低下させ、血液中のHDLレベルを上げ、血圧を下げ又はアテローム性動脈硬化又は肥満の治療で指示される活性物質と組み合わせた場合、改良した治療の結果が得られるであろう。」(【0017】)と記載され、その組み合わせる各活性物質の具体例として、「抗糖尿病薬の組み合わせ」(【0031】)、「血液中の脂質レベルを低くする組み合わせ」(【0031】)、「血圧を低くする組み合わせ」(【0032】)、「血液中のHDLレベルを増加する組み合わせ」及び「肥満の治療のための組み合わせ」(【0033】)、「アテローム性動脈硬化を治療するための組み合わせ」及び「心不全の治療のための組み合わせ」(【0034】)が記載され、実施例13~18としてタイプ2糖尿病の治療のためのDPP IVインヒビターとメトホルミン(抗糖尿病薬)、グリタゾン(抗糖尿病薬)、SGLT2インヒビター(抗糖尿病薬)、抗高血圧薬、高脂血症治療薬、BNP/BNP誘導ペプチド又はBNP融合ペプチド(心不全の治療薬)との組み合わせ(【0050】~【0055】)が、それぞれ記載されている。 そして、上記2(3)アに記載したとおり、糖尿病において、単独の血糖降下薬の投与で血糖コントロールが不十分な場合には、作用機序の異なる経口血糖降下薬を併用する併用療法は、本件出願時の技術常識であり、また、上記2(3)イに記載したとおり、糖尿病に特有の微小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)の発症、進展の阻止を図るためには、血糖コントロールのみでなく、血清脂質、血圧、体重のコントロールが必要であり、血糖コントロールと同時に、減量による肥満の解消、降圧薬や高コレステロール血症治療薬を用いた治療を併せて行うことも、本件出願時の技術常識であった。 そうすると、上記本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者は、本件発明1の医薬に対し、「他の抗糖尿病薬;血糖レベルを下げる活性物質;血液中の脂質レベルを下げる活性物質;血液中のHDLレベルを上昇させる活性物質;血圧を下げる活性物質;アテローム性動脈硬化又は肥満の治療において適応とされる活性物質;および心不全の治療用活性物質の中から選択される活性物質」と併用できることを、理解することができる。 したがって、上記アにおいて本件発明1について説示したものと同様に、発明の詳細な説明の記載は、本件発明2の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 ウ 本件発明3について 本件発明3は、本件発明2において、「メトホルミン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼブロッカー、インシュリンまたはインシュリン類似体、GLP-1またはGLP-1類似体、ACEインヒビター、アンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)、βブロッカー又は利尿薬から選択される他の糖尿病薬または血圧低下活性物質と併用される」ことを特定するものである。 ここで、発明の詳細な説明には、抗糖尿病薬又は血圧低下活性物質の組合せパートナーとして、メトホルミン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン、α―グルコシダーゼブロッカー、インシュリン又はインシュリン類似体、GLP-1又はGLP-1類自体、ACEインヒビター、アンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)、βブロッカー又は利尿薬を用いることができることが記載されている(【0022】、【0032】、【0034】~【0035】)。 そして、これらの物質は、本件出願時に、抗糖尿病薬又は血圧低下活性物質として使用されていたものである(摘記:乙1e、乙7e、乙7f、乙7g)。 そうすると、上記本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者は、本件発明2の医薬に対し、「メトホルミン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼブロッカー、インシュリンまたはインシュリン類似体、GLP-1またはGLP-1類似体、ACEインヒビター、アンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)、βブロッカーまたは利尿薬から選択される他の糖尿病薬または血圧低下活性物質」と併用できることを、理解することができる。 したがって、上記イにおいて本件発明2について説示したものと同様に、発明の詳細な説明の記載は、本件発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 エ 本件発明4について 本件発明4は、上記第3に記載したとおりのものであって、本件発明1とは、本件インヒビターの「一日あたりの経口用量が5mg」である医薬の点で共通し、本件発明1が「顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療するための医薬であって、微小血管の合併症のリスクが前記医薬の使用により低下することを特徴とし、」「前記微小血管の合併症が糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、および糖尿病ネフロパチーから選ばれる」と特定しているのに対し、本件発明4は、「タイプ2糖尿病患者における微小血管の合併症を予防または低下させるための」医薬と特定したものである。 そして、上記アにおいて検討した内容を踏まえると、「顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療するための医薬であって、微小血管の合併症のリスクが前記医薬の使用により低下することを特徴とし、」「前記微小血管の合併症が糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、および糖尿病ネフロパチーから選ばれる」医薬であれば、実質的に、「タイプ2糖尿病患者における微小血管の合併症を予防または低下させる」医薬となるといえる。 したがって、上記アにおいて本件発明1について説示したものと同様に、発明の詳細な説明の記載は、本件発明4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 オ 本件発明5について 本件発明5は、本件発明4において「他の活性物質と併用される」ことを特定するものである。上記他の活性物質は、どのような活性を有する物質であるのか、特定されていないところ、本件発明2及び3において特定された他の糖尿病薬ないし血圧低下物質を包含するものである。 したがって、上記イ~エにおいて本件発明2~4について説示したものと同様の理由により、発明の詳細な説明は、本件発明5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 カ 本件発明6について 本件発明6は、本件発明4又は5において「患者が1~6年の長期間治療される」ことを特定するものである。 上記エ及びオにおける検討に加えて、発明の詳細な説明には、実施例3として、顕性タイプ2糖尿病の治療において、1~6年の長期間治療されることが記載されている(【0039】)。 また、上記2(1)において記載したとおり、糖尿病の治療は継続的に行われ、治療が長期にわたるものであることも当業者における本件出願時の技術常識である。 そうすると、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明により、当業者は、本件発明4又は5の医薬を、1~6年の長期治療に使用できることを、理解することができる。 したがって、上記エ、オにおいて本件発明4、5について説示したものと同様に、発明の詳細な説明は、本件発明6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 キ 本件発明7について 本件発明7は、本件発明4、5又は6において「微小血管の合併症が糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、および糖尿病性ネフロパチーから選ばれる」ことを特定するものである。 そうすると、上記エ~カにおいて本件発明4、5又は6について説示したものと同様に、発明の詳細な説明は、本件発明7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 ク 本件発明8について 本件発明8は、本件発明1又は5において「テルミサルタンとの併用療法のため」と特定するものである。 上記ア、オにおける検討に加え、発明の詳細な説明には、実施例16として、タイプ2糖尿病の治療のためのDPP IVインヒビターと抗高血圧薬であるテルミサルタンが使用されることが記載されている(【0053】)。 そして、上記2(3)イに記載したとおり、糖尿病においては、血糖コントロールと同時に、降圧薬(抗高血圧薬)を用いた治療を併せて行うことも、本件出願時の技術常識である。 そうすると、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者は、本件発明1、5の医薬を、テルミサルタンとの併用療法に使用することができることを、理解することができる。 したがって、上記内容を踏まえると、発明の詳細な説明は、本件発明8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (3)請求人の主張について ア 請求人は、本件発明は「1日当たり5mg用量の経口投与」を発明特定事項とするが、本件明細書には具体的な投与量及び投与回数の記載がなく、医薬用途を裏付ける実施例として薬理試験結果の記載もないため、本件明細書は実施可能要件を充足しない旨を主張する(審判請求書第35頁、口頭審理陳述要領書第11頁)。 しかしながら、上記(2)に説示したとおり、発明の詳細な説明に薬理試験結果が記載されていなくても、本件出願時の技術常識に照らせば、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足するといえる。 なお、当該DPP IV阻害薬の2型糖尿病患者に対する必要投与用量に関しては、第5の2にあるように、本願出願前において臨床段階であったDPP IV阻害薬の2型糖尿病患者に対する投与量は、NVP-DPP728が150mg(1日2回)又は100mg(1日3回)であり、LAF237が、100mg(1日1回)であった(摘記:乙1c、乙1d)。 また、これら化合物のDPP IV阻害活性を示すIC50値は、NVP-DPP728が53±8nM、LAF237が51±10nMであったことも、本願出願時に当業者において知られるところであった(必要であれば、J.Med.Chem.,2006,Vol.49,No.1,pp.373-380(特に、p.373 Fig.1及びp.374 Table.1)参照)。 他方、上記(2)アにおいて記したとおり、本件インヒビターは、そのIC50値が1nM(摘記:甲1c)であったことも、本願出願時において既に知られていたものである。 このように、IC50値が50nM程度のNVP-DPP728やLAF237が、2型糖尿病患者に対し、150mg(1日2回)又は100mg(1日3回、1日1回)、1日あたりでは100~300mgで経口投与されていたところ、NVP-DPP728やLAF237の約50分の1の濃度で同程度のDPP IV阻害活性を示す本件インヒビターが、約20分の1~60分の1の用量である1日あたり5mgの経口用量で、2型糖尿病の治療に使用でき、微小血管の合併症のリスクを低下することは、当業者において合理的に推認できるものであるといえる。 イ 請求人は、その構成が公知技術(甲1)に見いだせる選択肢の組合せの発明である本件発明の実施可能要件の充足を認めることは、先願主義の潜脱を許しかねず、パブリックドメインとなったはずの発明について、実質的にその権利期間を延長することになりかねないから、本件明細書のように「薬理試験結果の記載」がないにもかかわらず、糖尿病治療薬として公知のリナグリプチン(本件インヒビター)を、公知の投与経路・投与量で、公知の治療対象である糖尿病性合併症の治療に用いる限りは、その治療効果を当業者は予想し、理解できるとして、実施可能要件の充足を認めてはならない旨を主張する(審判請求書第39頁、口頭審理陳述要領書第8頁)。 しかしながら、実施可能要件の判断基準は上記(1)において記載したとおりであるから、本件インヒビターが本件出願時に糖尿病治療薬として公知であったかどうか等により、実施可能要件の充足性の判断基準が左右されるものではなく、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かの判断に何ら影響を及ぼさない。 ウ 以上のとおりであるから、請求人の主張はいずれも採用することはできない。 (4)小括 以上のとおり、発明の詳細な説明は、本件発明1~8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、本件発明1~8に係る特許は、無効理由1により、無効とすることはできない。 4 無効理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に沿って検討する。 (2)発明の課題について 発明の詳細な説明には、【背景技術】として、「DPP-IVインヒビターは、ペプチドGLP-1を含んだ生物活性ペプチドの血漿レベルに影響し、糖尿病の治療を大いに促進する分子である」(【0002】)こと、「いくつかの選択したDPP IVインヒビター」が、「特に前糖尿病、耐糖能障害(障害のある耐糖能)、…(略)…から選択される医学的又は生理学的な機能障害であると診断された患者の治療上の処置のための薬物の調製に特に適している。」(【0009】)こと、及び、「これらの薬物は、…(略)…顕性タイプ2糖尿病…(略)…ためにも使用されるであろう。」(【0010】)ことが記載されている。 また、【発明が解決しようとする課題】として、「生理的な機能障害の治療のため及び潜在的に危険な状態にある患者における機能障害の発生リスクを減少させるために選択した、DPP IVインヒビターの使用を記載する」(【0011】)との記載がある。 上記記載に加え、請求項1、4の記載を参酌すると、上記「機能障害」(【0011】)とは、(顕性)タイプ2糖尿病及びその微小血管の合併症を意味すると解されることから、本件発明1~8の課題(以下「発明の課題」という。)は、「本件インヒビターを含み、(顕性)タイプ2糖尿病と診断された患者を治療するための医薬であって、微小血管の合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、及び糖尿病性ネフロパチー)のリスクを低下させる医薬、あるいは、微小血管合併症を予防又は低下させるための医薬の提供」であると認められる。 (3)サポート要件についての判断 ア 本件発明1及び4について 上記3(2)ア及びエのとおり、1日あたりの経口用量が5mgの「本件インヒビター」を含む医薬により、顕性タイプ2糖尿病と診断された患者を治療でき、微小血管の合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパチー)のリスクが低下すること、あるいは、タイプ2糖尿病患者における微小血管の合併症を予防又は低下させることができることを、当業者が合理的に理解することができる。 そうすると、1日あたりの経口用量が5mgの「本件インヒビター」を含む医薬である本件発明1及び4は、上記(2)の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるといえる。 したがって、本件発明1及び4は、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 イ 本件発明2、3、5~8について 本件発明2、3、5~8は、本件発明1又は4を引用して更に特定するものであって、本件発明1又は4の特定事項を全て含むものである。 そうすると、上記アと同様の理由により、本件発明2、3、5~8は、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 ウ したがって、本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載されたものであって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1~8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (4)請求人の主張について 請求人は、本件明細書の【0011】及び【0017】の記載を併せ読めば、発明の課題は、「より治療効果に優れた医薬の提供」であると認められるところ、本件発明の医薬用途が薬理試験の結果によって裏付けられていないのであるから、請求項1~8は、発明の詳細な説明に記載も示唆もない医薬用途を記載し、発明の詳細な説明に記載した課題を解決する手段を記載しておらず、審査基準におけるサポート要件を充足しない類型の第1及び第4の場合に該当し、特許請求の範囲はサポート要件の充足を欠くものである旨を主張する(審判請求書第41~44頁)。 しかしながら、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合することは、上記(3)に説示したとおりであって、請求人が指摘する【0017】の記載は、本件インヒビターを含む複数のDPP IVインヒビターが有する効果について説明をしたものであり、当該記載を根拠にして本件発明が解決しようとする課題を抽出することは適切でない。 したがって、請求人の上記主張は採用することはできない。 (5)小括 以上のとおり、本件発明1~8は、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件発明1~8に係る特許は、無効理由2により、無効とすることはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~8に係る特許は、無効理由1及び2によっては無効とすることはできない。 審判費用は、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800033

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