2021-800003
IL-4Rアンタゴニストを投与することによるアトピー性皮膚炎を処置するための方法
- 審判番号
- 2021-800003
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2015-531149外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6353838
- 請求日
- 2021年01月15日
- 審決日
- 2023年01月13日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】科研製薬 株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
- 【被請求人】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
- 【被請求人代理人】結田 純次
- 【被請求人代理人】竹林 則幸
- 【被請求人代理人】守安 智
- 【被請求人代理人】森田 ひとみ
- 【被請求人】サノフィ・バイオテクノロジー
- 【被請求人代理人】結田 純次
- 【被請求人代理人】竹林 則幸
- 【被請求人代理人】守安 智
- 【被請求人代理人】森田 ひとみ
- 分類
- P1113.121-YAA(A61K) / P1113.536-YAA(A61K) / P1113.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第3項、特許法第131条の2第1項、特許法第123条第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第36条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 24項目
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6353838号の請求項1~16についての特許を無効とする、請求費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
訂正を認める、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
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本件の特許は、2013年9月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年9月7日 アメリカ合衆国、外8件)を国際出願日とする特願2015-531149号について、平成30年6月15日に特許第6353838号として特許権の設定登録がされたものである(以下、「本件特許」という。)。令和3年1月15日に請求人科研製薬株式会社により、本件特許の請求項1~16に係る発明についての特許を無効とすることを求める無効審判が請求された。手続の経緯及び提出された書面は、概略、以下のとおりである。
令和3年 1月15日 審判請求書、甲第1~6号証
同年 8月 4日付け 答弁書、乙第1~8号証
同年 11月18日付け 審理事項通知書
令和4年 1月18日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)、甲第7号証、口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 2月15日 口頭審理(職権による無効理由通知を含む。)
同年 3月 1日付け 上申書(請求人)、甲第8~10号証
同年 4月 5日付け 訂正請求書、意見書(被請求人)、上申書、乙第9~12号証
同年 4月22日付け 補正許否の決定
同年 5月27日付け 弁駁書(請求人)、甲第2-2、11~15号証
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
被請求人は、令和4年4月5日付け訂正請求書により、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを求めた(以下、令和4年4月5日付け訂正請求を、「本件訂正」という。)
本件訂正は、一群の請求項1~16に対しての訂正事項1と、一群の請求項11、13~16に対しての訂正事項2からなる。
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を訂正するものであるところ、請求項2~16は当該請求項を引用するものである。また、訂正事項2は、訂正前の請求項11の記載を訂正するものであるところ、請求項13~16は当該請求項を引用するものである。
したがって、訂正前の請求項1~16に対応する訂正後の請求項1~16は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
本件訂正の内容は、具体的には以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」と記載されているのを「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~16も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11の(a)~(e)に「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」と記載されているのを全て「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」に訂正する。請求項11の記載を引用する請求項13~16も同様に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」との記載中、「ヒトインターロイキン-4」はサイトカインを表す用語であり、これに続く括弧内の「IL-4R」については、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」ともいう。)の【0097】には、「本明細書で用いられる用語「IL-4R」は、ヒトインターロイキン-4受容体アルファ鎖を意味することが理解されるべきである。」と記載されている。このように、訂正前の請求項1における「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」との記載は、ヒトインターロイキン-4というサイトカインが記載された上で、当該記載に続く括弧内には、その受容体が記載されているという不整合がある結果、抗体の結合対象の特定に関し、ヒトインターロイキン-4とその受容体のいずれを指すのか不明瞭であった。
訂正事項1は、請求項1における「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」を「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」に訂正することで、上記の記載の不整合を解消し、抗体がヒトインターロイキン-4受容体に対する抗体であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正事項1は、訂正後の請求項2~16についても、訂正後の請求項1に記載された「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」との記載を引用することにより、同様に、明瞭でない記載を正すものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項について
「(IL-4R)」が「ヒトインターロイキン-4受容体」の省略形を意味することは、本件明細書の段落【0001】【0005】【0035】【0039】【0042】【0057】【0096】の「インターロイキン-4受容体(IL-4R)」との記載、及び願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1~3、19、48、49、62、93、103、110及び122における「インターロイキン-4受容体(IL-4R)」との記載及び「ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)」に対応する用語は国際出願時の明細書の原文では「interleukin-4 receptor (IL-4R)」であって、「(IL-4R)」がインターロイキン4受容体の省略形であることからも明らかである。また、【0097】には、「本明細書で用いられる用語「IL-4R」は、ヒトインターロイキン-4受容体アルファ鎖を意味することが理解されるべきである。」と記載されている。
そして、本件明細書には、たとえば【0075】に、「アトピー性皮膚炎の長期的管理のための方法 本発明は、患者における中等度から重度のADの長期的管理のための方法を含む。ある特定の実施形態においては、前記方法は、局所コルチコステロイド(TCS)のような従来の治療剤と同時にIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。さらなる実施形態においては、IL-4Rアンタゴニストは、本明細書に記載の抗IL-4R抗体であってもよい。」、【0096】に、「インターロイキン-4受容体アンタゴニスト 上記に詳細に開示されたように、本発明は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む治療組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。本明細書で用いられる場合、「IL-4Rアンタゴニスト」は、IL-4Rに結合するか、またはそれと相互作用し、IL-4Rがin vitroまたはin vivoで細胞上で発現される場合にIL-4Rの正常な生物学的シグナリング機能を阻害する任意の薬剤である。IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定例としては、低分子IL-4Rアンタゴニスト、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドに基づくIL-4Rアンタゴニスト(例えば、「ペプチボディ」分子)、およびヒトIL-4Rに特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合断片が挙げられる。」と記載されているほか、全体を通じ一貫して、抗IL-4R抗体、すなわち、ヒトインターロイキン-4受容体に特異的に結合する抗体がIL-4Rアンタゴニストとしての作用に基づき、アトピー性皮膚炎の治療のための有効成分となることが記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
上記アから明らかなように、訂正事項1は、請求項1における抗体が結合する抗原についての記載の不整合を、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載に基づいて導き出される事項の範囲内において解消することによって明瞭でない記載を正したものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に訂正前の請求項2~16の記載について何ら訂正するものではなく、訂正発明2~16のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記(1)アで請求項1について述べたのと同様に、訂正前の請求項11における「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」との記載は、ヒトインターロイキン-4というサイトカインが記載された上で、当該記載に続く括弧内には、その受容体が記載されているという不整合がある結果、抗体の結合対象の特定に関し、ヒトインターロイキン-4とその受容体のいずれを指すのか不明瞭であった。
訂正事項2は、請求項11における「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」を「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」に訂正することで、上記の不整合を解消し、抗体がヒトインターロイキン-4受容体に対する抗体であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正事項2は、訂正後の請求項13~16についても、訂正後の請求項11に記載された「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」との記載を引用することにより、同様に、明瞭でない記載を正すものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項について
上記(1)イで述べたのと同様の理由で、訂正事項2は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載に基づいて導き出される事項である。
したがって、この訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
上記アから明らかなように、訂正事項2は、請求項11における抗体が結合する抗原についての記載の不整合を、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載に基づいて導き出される事項の範囲内において解消することによって、明瞭でない記載を正したものであり、請求項11に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項11の記載以外に訂正前の請求項13~16の記載について何ら訂正するものではなく、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(3)請求人の主張に対して
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ア 請求人の主張の概要
請求人は、令和4年5月27日付け弁駁書において、本件訂正が以下の(i)及び(ii)の点で訂正要件に違反するものである旨主張している
(i) 訂正前の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」との記載により、当該抗体が「何に対する抗体であるのか」が不明瞭であり特定できないから、同抗体を含む当該医薬組成物としての発明も特定できなかったのに対して、訂正事項1及び2による訂正後の記載による発明は、抗体として「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」を含む発明として特定できる。
そうすると、本件訂正により、特定ができなかった発明が特定できる発明に変更されていることになるから、訂正事項1及び2による本件訂正は、実質上特許請求の範囲を変更する訂正に相当する。
(ii) 訂正前の発明は、「抗ヒトインターロイキン-4」抗体を必須の発明特定事項として含む発明であるのに対し、訂正後の「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」の記載においては、「抗ヒトインターロイキン-4」の記載は削除され、代替する記載として「抗ヒトインターロイキン-4受容体」が書き加えられている。
そうすると、当該訂正は、訂正前の発明特定事項における直列的要素(「抗ヒトインターロイキン-4」)を削除するものであるから、訂正事項1及び2による本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張する訂正である。
イ 請求人の主張に対する判断
上記(1)アで述べたとおり、訂正事項1は、請求項1における「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」を「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」に訂正することで、請求項1と本件明細書の記載の不整合を解消し、抗体がヒトインターロイキン-4受容体に対する抗体であることを明瞭にするものである。そして、上記(1)イで述べたとおり、本件明細書には、全体を通じ一貫して、抗ヒトIL-4R抗体、すなわち、ヒトインターロイキン-4受容体に特異的に結合する抗体がIL-4Rアンタゴニストとしての作用に基づき、アトピー性皮膚炎の治療のための有効成分となることが記載されているのであるから、本件明細書の記載を参酌すれば、請求人が主張するように、本件訂正前の請求項1の記載から発明が特定できないとか、請求項1に係る発明が抗ヒトインターロイキン-4抗体を必須の発明特定事項とする発明であるなどということはできない。
したがって、訂正事項1についての請求人の上記主張は、当を得ないものである。
訂正事項2についての請求人の主張についても、同様である。
なお、本件特許無効審判においては、請求項1~16すべてが無効審判の対象とされているので、訂正事項2に関して、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを認める。
第4 本件特許の発明
上記のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の発明は、訂正後の特許請求の範囲に記載されたとおりの以下の事項により特定されるものと認められる(以下、請求項の番号によって「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」ということがある。)。
【請求項1】
患者において中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する方法に使用するための治療上有効量の抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、ここで前記患者が局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないかまたは前記局所処置が勧められない患者である前記医薬組成物。
【請求項2】
患者が、局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤での外来処置に対して十分でない応答の病歴を有し、
(i)少なくとも28日間毎日中度から重度の強度の局所コルチコステロイドを適用する処置にもかかわらず0(消失)~2(軽度)の試験責任医師包括評価(IGA)スコアを達成すのに失敗する;
(ii)少なくとも14日間毎日超高度の強度の局所コルチコステロイドを適用する処置にもかかわらず0~2のIGAスコアを達成すのに失敗する、のいずれかまたは両方を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記方法で投与される医薬組成物の各用量が、75mg~600mgの抗ヒトIL-4R抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記方法で投与される医薬組成物の各用量が、300mgの抗ヒトIL-4 R抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記方法が、医薬組成物の初期用量を患者に投与し、続いて該医薬組成物の1つまたはそれ以上の用量を患者に投与することを含み、ここで続く各用量が、直前の用量の投与の1週間または2週間後に患者に投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
初期用量が、600mgの抗ヒトIL-4R抗体またはその抗原結合断片を含み、そして続く用量が、75~300mgの抗ヒトIL-4R抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
初期用量が、その後に続く用量の2倍である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号162/164からなるアミノ酸対である重鎖可変領域/軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)内の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ、配列番号148、150、152を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列と、それぞれ、配列番号156、158および160を含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列とを含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物の投与後に患者が、下記の1つまたはそれ以上のAD関連パラメータの改善を示し、ここで、前記1つまたはそれ以上のAD関連パラメータの改善が、
(I) 試験責任医師包括評価(IGA)スコアのベースラインからの少なくとも25%の低下;
(II) 掻痒感数値評価スケール(NRS)スコアのベースラインからの少なくとも25%の低下;
(III) 湿疹面積および重症度指数(EASI)スコアのベースラインからの少なくとも45%の低下;
(IV) SCORADスコアのベースラインからの少なくとも30%の低下;
(V) 5-D掻痒感スケールのベースラインからの少なくとも15%の低下; または
(VI) アトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA)スコアのベースラインからの少なくとも35%の低下、
である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
1つまたはそれ以上のAD関連パラメータの改善が、
(a) 抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物の第1の用量の投与後、22日目までにIGAスコアのベースラインからの少なくとも35%の低下;
(b) 抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物の第1の用量の投与後、2週間の終わりまでにNRSスコアのベースラインからの少なくとも25%の低下;
(c) 抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物の第1の用量の投与後、29日目までにEASIスコアのベースラインからの少なくとも50%の低下;
(d) 抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物の第1の用量の投与後、29日目までにSCORADスコアのベースラインからの少なくとも35%の低下;または
(e) 抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物の第1の用量の投与後、85日目までに5-D掻痒感スケールのベースラインからの少なくとも25%または少なくとも30%の低下、である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
1つまたはそれ以上のAD関連パラメータの改善が、医薬組成物の第1の用量の投与後、29日目までにBSAスコアのベースラインからの少なくとも35%の低下である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1に規定する方法が、さらに局所コルチコステロイドを同時に投与することを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記方法が、抗ヒトIL-4R抗体またはその抗原結合断片並びに局所コルチコステロイドを投与する初期処置期間と、その後に続く抗ヒトIL-4R抗体またはその抗原結合断片の投与を継続しながら局所コルチコステロイドの用量を徐々に減少する期間を含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
局所コルチコステロイドの量を初期処置期間の間の用量に対して、10%、20%、30%、40%、または50%以上減少させる、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物が皮下注射により投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
第5 請求人の主張及び証拠方法
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1 請求人の主張の概要
(1)無効理由1(甲1発明に基づく進歩性の欠如)
本件訂正発明1~16は、甲1発明~甲6発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項違反により同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)無効理由2(サポート要件違反)
本件訂正発明1~16は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許は特許法第36条第6項第1号違反により、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(3)無効理由3(実施可能要件違反)
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明1~16を当業者が実施できる程度の明確かつ十分な記載がないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号違反により同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
令和4年3月1日付け上申書において新たな証拠である甲第8号証に基づいて主張された特許法第29条第2項に関する無効理由については、特許法第131条の2第1項に規定される要旨を変更する補正であり、許可しない旨の補正許否の決定が同年4月22日付けでなされている。
2 証拠方法
甲第1号証:Clinical Trials.Gov archive, History of Changes for Study: NCT 01548404, Study of REGN668 in Adult Patients With Extrinsic Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis,Last Update Posted: April 23,2012
<URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT01548404?V_2=View>
甲第2号証:Peck YONG Editorial update on emerging treatments of atopic dermatitis, Expert Opinion on Emerging Drugs,Publishedonline 11 Mar 2012,Vol.17,No.2,pp.129-133
「第2章 アトピー性皮膚炎」
<URL:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-03.pdf>
甲第2-2号証:Peck YONG Editorial update on emerging treatments of atopic dermatitis, Expert Opinion on Emerging Drugs,Publishedonline 11 Mar 2012,Vol.17,No.2,pp.129-133(甲第2号証と同じ文献である。)
第6 被請求人の主張及び証拠方法
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1 被請求人の主張の概要
本件特許には、請求人の主張する無効理由1~3はなく、本件特許は無効とされるべきものでない。
2 証拠方法
<URL:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-03.pdf>
第7 職権無効理由通知
口頭審理の際に合議体が職権により無効理由を通知した。その内容は、以下のとおりである。
・理由 特許法第123条第1号第4号(特許法第36条第6項第2号(明確性))
請求項1、11の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」という記載は、請求項1、11に係る発明の医薬組成物が含む抗体が、何に対する抗体であるのかを不明瞭にする記載であり、その結果、請求項1、11に記載された発明が明確でない。
同様の理由で、請求項1、11を直接又は間接的に引用する請求項2~10、12~16に記載された発明も、明確でない。
したがって、請求項1~16に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願についてされたものであるから、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきものである。
第8 当審の判断
1 証拠の記載
両当事者の提出した主要な証拠には以下の記載がある。(以下、証拠について、甲号証及び乙号証の番号によって、「甲1」「乙1」などと言う。)
(1)甲号証の記載
甲1~6、8及び10には、以下の記載がある。
ア 甲1の記載
甲1は外国語で記載されているので、訳文で示す。
(甲1ア)
NIH 米国国立医学図書館
ClinicalTrials.govアーカイブ
試験に関する変更の記録:NCT01548404
外因性の中等度から重度のアトピー性皮膚炎の成人患者におけるREGN668の試験
ClinicalTrials.govの最新版(2017年11月13日提出)
・試験バージョンを表の行で表す。
・比較する2つの試験バージョンを選択する。列Aと列Bからそれぞれ1つずつ。
・「マージ(Merged)」又は「サイド-バイ-サイド(Side-by-Side)」のいずれかの比較形式を選択して、2つの試験バージョンの表示方法を指定する。サイド-バイ-サイド形式を、試験のプロトコルセクションにのみ適用する。
・「比較(compare)」をクリックして比較を行い、違いを表示する。
・バージョンの送信日リンクを選択して、そのバージョンの試験のレンダリングを表示する。
・表の黄色のA/Bの選択肢は、以下に現在比較されている試験バージョンを示す。黄色の表の行は、現在表示されている試験バージョンを示す。
・「組み入れ状況(Recruitment Status)」にカーソルを合わせると、試験の組み入れ状況がどのように変化したかを確認できる。
・試験の編集又は削除は赤で表示される。
・試験の追加は緑色で表示される。
[図:0001422769000001.jpg]
[図:0001422769000002.jpg]
試験NCT01548404
試験の識別
二次ID:
試験状況
[予測]
[予測]
QC基準を満たした初回提出:2012年3月7日
QC基準を満たした最後の更新提出:2012年4月19日
治験依頼者/共同研究者
監督
米国FDA規制薬:
米国FDA規制デバイス:
試験の説明
詳細な説明:
対象疾患
キーワード:
試験計画
群及び治療介入
[図:0001422769000003.jpg]
評価項目
主要評価項目
1.EASIスコアのパーセント変化率
主要評価項目は、ベースラインから12週目までの皮疹面積及び重症度の指標(EASI)スコアのパーセント変化である。
[時間枠:ベースライン~12週目]
副次評価項目
2.IGAスコア
12週目に治験責任医師の全体的評価(IGA)スコアが0又は1に達した患者の割合
[時間枠:12週目]
3.EASIスコアの変化
ベースライン~12週目
適格性
最高年齢:
性別ベース:
健康なボランティアの受け入れ:なし
選択基準には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
1.男性又は女性、18歳以上
2.少なくとも3年間の慢性アトピー性皮膚炎
3.スクリーニング来訪前3カ月以内のAD治療として、局所コルチコステロイドあるいはカルシニューリン阻害剤の治療に変更がなく(≧1 箇月)不十分な応答の病歴
イ 甲2の記載
甲2は外国語で記載されているので、訳文で示す。
(甲2ア)(129頁下から14行~下から13行)
ADの対症療法のために、さらに新しい治療薬が求められている。
(甲2イ)(129頁、下から6行~下から4行)
2つの医薬について、ADに対する臨床試験が、IL-4受容体を標的にして現在行われている(Aeroderm及びREGN-668)(Table 1)。
(甲2ウ)(131頁、”Table 1. Atopic dermatitis medications in research pipeline (continued)”)
REGN-688(SAR-231893) IL-4受容体に対するモノクローナル
ウ 甲3の記載
甲3は外国語で記載されているので、訳文で示す。なお、甲3の日本語対応公表公報が乙2として提出されているので、乙2における記載箇所も示す。
(甲3ア)1頁要約1行~4行、(乙2【要約】)
精製されたヒト抗体又はその抗体断片であり、ヒトインターロイキン-4受容体アルファ(hIL-4Rα)に高い親和性(KD)で結合し、hIL-4の活性及びhIL-13の活性をブロックする。
(甲3イ)カラム1、16~25行(乙2【0001】)
IL-4は、休止B細胞におけるクラスII主要組織適合複合体分子の発現を誘導し、そして刺激されたB細胞によるIgE及びIgG1アイソタイプの分泌を増強する。
(甲3ウ)カラム9、39行~カラム10、50行(乙2【0044】~【0049】)
ヒト抗体の製造
ヒト抗体を生成する方法としては、例えばUS6,596,541、Green et al.(1994) Nature Genetics 7:13-21)、US 5,545,807、US 6,787,637に記載される方法が挙げられる。
齧歯動物を当該分野で公知のいずれかの方法により免疫することができる(例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual 1988 Cold Spring Harbor Laboratory;Malik and Lillehoj (1994) Antibody Techniques、Academic Press、CAを参照のこと)。本発明の抗体は、好ましくはVELOCIMMUNETM技術(US6,596,541)を使用して製造される。内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域が対応するヒト可変領域で置き換えられているトランスジェニックマウスを、目的の抗原で攻撃し、そして抗体を発現するマウスからリンパ球(例えばB細胞)を回収する。リンパ球を骨髄腫細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を製造し得、そしてこのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニング、そして選択し、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、重鎖及び軽鎖の所望のアイソタイプ定常領域に連結し得る。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞で産生され得る。あるいは、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離され得る。
抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離してヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結する。次いでこのDNAを完全ヒト抗体を発現することができる細胞において発現させる。特定の実施態様において、細胞はCHO細胞である。
(甲3エ)カラム11、59行~カラム12、2行(乙2【0055】)
投与対象の年齢及び大きさ、対象である病気、病態、投与経路等によって用量は変えてよい。本発明の抗体を、IL-4Rが関与している種々の病態の処置及び病気に用いる際に、成人患者において利があるのは、本発明の抗体の静脈投与であり、その1回あたりの用量は通常約0.01~約20 mg/kg体重であり、より好ましくは約0.02~約7 mg/kg体重、約0.03~約5 mg/kg体重又は約0.05~約3mg/kg体重である。病態の重篤度に応じて処置の頻度及び期間を調整することができる。
(甲3オ)カラム13、1行~35行(乙2【0061】)
単剤療法及び組み合わせ療法 本発明の抗体及び抗体フラグメントは、IL-4活性を低減することにより改善、抑制又は軽減される疾患及び障害を処置するために有用である。これらの障害には、IL-4の異常若しくは過剰な発現、又はIL-4産生に対する異常な宿主応答を特徴とする障害が含まれる。本抗体又は抗体フラグメントにより処置されるIL-4関連障害としては、例えば、関節炎(化膿性関節炎を含む)、疱疹状疾患、慢性特発性蕁麻疹、強皮症、肥厚性瘢痕化、ウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、例えば喘息(軽度、中程度又は重度)、炎症性障害、例えば炎症性腸疾患、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ・ストラウス症候群、グレーブズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、線維症、及びネフローゼ(U.S.7,186,809を参照のこと)が挙げられる。
(甲3カ)カラム13、58行~カラム16、3行(乙2【0065】~【0073】)
実施例1.ヒトIL-4受容体に対するヒト抗体の作成
VELOCIMMUNETMマウス(Regeneron Pharmaceuticals、Inc.;US6,596,541)をヒトIL-4R(hIL-4R、配列番号274)、又はhIL-4R及びサル(Macaca fascicularis)のIL-4R(mfIL-4R、配列番号275)タンパク質若しくはDNAの組み合わせで免疫した。最適な免疫応答を得るために、続いて動物を3~4週ごとにブーストし、そして抗抗原応答の進行を評価するために各ブーストの10日後に採血した。
マウスが最大の免疫応答に達した場合、抗体発現B細胞を採取し、そしてマウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成した。あるいは、米国特許出願公開2007/0280945A1(参照によりその全体が本明細書に具体的に加入される)において記載されるように、抗原特異的抗体を、骨髄腫細胞への融合なしに直接B細胞から単離した。安定な組み換え抗体発現CHO細胞株を単離された適切な組換え体から樹立した。機能的に望ましいモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ又はトランスフェクトした細胞の馴化培地を特異性、抗原結合親和性及びhIL-4のhIL-4Rへの結合を遮断する効力(以下に記載される)についてスクリーニングすることにより選択した。
いくつかの抗hIL-4R抗体を前述の方法により得、これらにはH4H083P、H4H094P及びH4H095P、H4H098P及びH4H099Pと命名した典型的な抗体が含まれていた。これらの典型的な抗hIL-4R抗体、及びそれらの生物学的特性を以下の実施例においてより詳細に記載する。
実施例2.抗原結合親和性決定
25℃又は37℃のいずれかで、hIL-4Rに関して選択された抗体の結合親和性(KD)を、実時間バイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORETM2000)を使用して決定した。・・・結果を表1に示す。NB:抗体-抗原結合が実験条件下で観察されなかった。コントロール:完全ヒト抗IL-4R抗体(米国特許第7,186、809号;配列番号:10及び12)。
[図:0001422769000004.jpg]
(甲3キ)カラム14、20行~カラム16、3行(乙2【0074】~【0075】)
実施例3.インビトロでのhIL-4及びhIL-13の生物学的作用の中和
精製した抗hIL-4R抗体のhIL-4R仲介細胞機能を中和する能力をインビトロで決定するためにヒトSTAT6及びSTAT6ルシフェラーゼレポーターを含有するよう操作したHK293細胞株を使用するバイオアッセイを開発した。hIL-4R誘導ルシフェラーゼ活性の阻害を以下のように決定した:細胞を96ウェルプレートに培地中1×104細胞/ウェルで播種し、そして終夜37℃、5%CO2でインキュベートした。段階希釈で0~20nMの範囲の抗体タンパク質を、10pMのhIL-4又は40pMのhIL-13のいずれかとともに細胞に加えた。次いで細胞を37℃、5%CO2で6時間インキュベートした。細胞応答の程度をルシフェラーゼアッセイ(Promega Biotech)で測定した。結果を表3に示す。NB:ルシフェラーゼ活性が上記の実験条件下で遮断されなかった。さらに、H4H098PはmfIL-4R仲介細胞機能を360fM mfIL-4の存在下で150nMのIC50で遮断することができた。
[図:0001422769000005.jpg]
エ 甲4の記載
(甲4ア)
【0138】
PsA及び乾癬の改善は、PASI応答、DLQI及びBSAスコアを用いても決定され得る。DLQI(皮膚科学生活の質指数)は、PsA及び乾癬を含む様々な皮膚病に対して広く使用されている、健康に関連した生活の質の指標である。身体表面積(BSA;body Surface Area)スコアは、身長及び体重に基づく表面積の測定を与え、m2で表される。
オ 甲5の記載
(甲5ア)491頁本文左欄1行~4行
アトピー性皮膚炎の治療では乳児期から成人期まで幅広い年齢を対象とし患者数も多く、患者のみならず家族のQOLも含めた十分な説明が必要である
(甲5イ)492頁表1
[図:0001422769000006.jpg]
(甲5ウ)491頁右欄24行~493頁左欄2行
・・・ステロイド外用剤を中止する際には,急激に中止することなく,症状をみながら漸減あるいは間欠投与を行い徐々に中止する.・・・
(甲5エ)493頁右欄24行~31行
・・・1日1回塗るとして4日間で1本使用してください。・・・2週間すると,塗る量はずいぶん少なくなります。たとえばお母さんの手で2枚分くらいに塗る場所が狭くなると,10日間で1本です.
カ 甲6の記載
甲6は外国語で記載されているので、訳文で示す。
(甲6ア)3頁2行~3行
アレルギー性疾患及び免疫疾患のためのターゲットであるインターロイキン-4受容体(IL-4R)に対する抗体であるREGN668は、アトピー性皮膚炎に罹患している患者を対象としたフェーズ1b試験を実施中である。
キ 甲8の記載
甲8は外国語で記載されているので、訳文(乙12)で示す。
(甲8ア)S105右欄下から2行~S106左欄7行
IL-4とIL-13は、IgEアイソタイプスイッチの誘導、Th2リンパ球の分化、内皮を通過する好酸球遊走の促進など、アレルギー性疾患において重複する役割を果たす。IL-4はIL-4Rαと共通のγ鎖で構成されるI型受容体を介して、およびIL4RαとIL13Rα1サブユニットで構成されるII型受容体を介してシグナルを伝達する一方、IL-4とIL-13どちらもII型受容体を介したシグナルを伝達することができる。
(甲8イ)S106左欄24行~26行
ケモカインTARCとエオタキシン-3はアトピーのバイオマーカーとして報告されている。
ク 甲10の記載
(甲10ア)10頁右欄1行~11頁左欄31行
アトピー性皮膚炎の客観的な重症度評価
1)血清TARCによるアトピー性皮膚炎の重症度評価
TARCは、CCligand17(CCL17)とも呼ばれ、CCケモカインの1つで、その受容体CC chemokine receptor 4(CCR4)はTh2好塩基球に発現している。また、アトピー性皮膚炎の病変部では、主として表皮角化細胞、血管内皮細胞、浸潤T細胞にTARCの発現が強く認められ、CCR4を発現したTh2リンパ球を遊走させることによりアトピー性皮膚炎の病態形成に深く関与していると考えられている。・・・血清TARC値は、アトピー性皮膚炎の重症度スコアであるSeverity おf Atopic Dermatitis index(AD)SCORAD)やEczema Area and Severity Index(EASI)とも有意な相関を示している。さらに治療によりSCOEADやEASIの変化と一致して変化し、他のマーカーであるLDHや好酸球、IgEと比較して最も鋭敏に変動するため、アトピー性皮膚炎ガイドラインにおいても短期的な病勢のマーカーであり、鋭敏に病勢を反映すると記載されている。・・・また、血清TARCはアトピー性皮膚炎の重症度や治療効果を患者に伝えて、認識を患者と共有する客観的な指標として有用であり、患者とのコミュニケーションツールの1つとしても活用されている。
なお、血清TARCの高値はアトピー性皮膚炎に特に特異性が高いことが示されているが、他の疾患では蕁麻疹や炎症性角化証、皮膚T細胞リンパ腫、水疱性類天疱瘡などで高値の報告がある。・・・なお、血清TARCの測定は2008年よりアトピー性皮膚炎に保険適用となっている。
(2)乙号証の記載
乙1、3~8には、以下の記載がある。
ア 乙1の記載
乙1は外国語で記載されているので、訳文で示す。
(乙1ア)7頁3行~5行
以前の医薬品開発フェーズ移行の成功率の研究と一致して、フェーズIIの成功率は他のどのフェーズよりもはるかに低く、フェーズIはフェーズIIIよりわずかに高いことがわかった。
(乙1イ)7頁10行~12行
フェーズIIからの移行の成功率(30.7%、n=3,862)はフェーズIよりもかなり低く、検討した4つのフェーズのうち最も低かった。一般に、実証という概念を人間の被験者で慎重にテストするための最初の段階であるため、フェーズIIは一貫してすべてのフェーズの中で最も低い成功率を示した。
(乙1ウ)10頁図3
[図:0001422769000007.jpg]
イ 乙3の記載
乙3は外国語で記載されているので、訳文で示す。
(乙3ア)Abstract10行~16行
TH細胞応答に関しては、皮膚のアレルゲンに対する湿疹応答の明確な二分法が観察された。開始段階では、TH2及びTH0細胞によるIL-4産生は、TH1及びTH0細胞によるインターフェロンガンマ産生よりも優勢である。後期及び慢性期では、状況が逆転し、TH1及びTH0細胞によるインターフェロンガンマ産生が、TH2及びTH0細胞によるIL-4産生よりも優勢になる。観察された二相性反応と、ADの臨床症状との関係を理解することは、治療戦略の開発にとって重要である。
ウ 乙4の記載
乙4は外国語で記載されているので、訳文で示す。
(乙4ア)652頁 図1の説明8行~11行
ADの炎症は、急性皮膚病変におけるTh2細胞の増加と関連しているが、慢性のADは、炎症性IDEC、マクロファージ(Mφ)、及び好酸球の浸潤を引き起こす。これらのさまざまな細胞型によるIL-12産生は、IFNγ発現の増加に関連するTh1型サイトカイン環境への切り替えをもたらす。
(乙4イ)652頁左欄1行~4行
AD患者の正常な皮膚又は関与していない皮膚と比較した場合、急性皮膚病変は、IL-4、IL-5、及びIL-13mTNA発現細胞の数が有意に多いが、IFNγ又はIL-12mRNA発現細胞はほとんどない。
(乙4ウ)652頁左欄15行~20行
慢性AD皮膚病変は、IL-4及びIL-13mRNA発現細胞が有意に少ないが、急性ADよりもIL-5、GM-CSF、IL-12及びIFNγmRNA発現細胞の数が多い。最近の研究は、慢性AD中のコラーゲン沈着は、線維化促進性サイトカインであるIL-11の遺伝子発現の増加によるものであることを示唆している。
(乙4エ)656頁左欄31行~35行
特定の細胞とサイトカインがADで果たす役割についての洞察は、標的療法の開発の機会を生み出す。しかし、関与する生物学的プロセスの複雑さを考えると、これまでにテストされた化合物のどれも特効薬であることが証明されていない。
(乙4オ)656頁右欄5行~12行
私たちの将来の課題は、ADの治療においてより効果的で安全な薬剤を開発することである。ADにつながる免疫経路の複雑さを考えると、より選択的な抗炎症剤又は免疫抑制剤の効果はより低い可能性がある。したがって、ADの表現型が異なると、治療薬の効果も異なる可能性があるので、ADのさまざまな表現型をもたらす主要な免疫経路の特徴を明らかにすることが重要である。
エ 乙5の記載
(乙5ア)24頁右欄13行~25頁左欄2行
アレルギー疾患患者では反復するアレルゲンの侵入によってTh2優位な状態がつくり出され、維持されるものと推定されている。したがって、Th1/Th2バランスを定常状態あるいはTh1細胞優位な状態へ矯正することがアレルギー疾患の治療に有効であると考えられ、基礎研究においてはTh1/Th2バランスの矯正に有効性を示す漢方方剤も確認されている。Thepenらはアトピー性皮膚炎患者の皮膚試験の組織化学的解析から、初期に観察されるTh2細胞優位の状態が次第にTh1細胞優位の状態へ移行することを示しており、Th1/Th2 バランスが比較的限局された部位においても、また、病期によっても変化し、さらに、同一個体内の部位によってバランスが異なる可能性もあり、Th1/Th2バランスのみでアレルギー疾患を理解することには無理もあるように思われる。
オ 乙6の記載
(乙6ア)129頁左欄17行~22行
アレルギー的側面では、Th2細胞優位によりIL-4、IL-5、IL-10などの産生によりIgE値上昇、好酸球増多などを認める。またアトピー性皮膚炎は、炎症の強い急性期ではTh2細胞が優位になるが、慢性状態になるとTh1細胞優位となり、Th2細胞とTh1細胞間で揺れ動く。
カ 乙7の記載
(乙7ア)137頁表題
抗真菌薬はアトピー性皮膚炎患者T細胞のIL-4、IL-5産生を抑制する
(乙7イ)141頁左欄下から4行~右欄5行
したがって、抗真菌薬はin vivoでも生理的濃度でIL-4、IL-5の産生を抑制すると考えられる。IL-4、IL-5等、Th2系サイトカインはアトピー性皮膚炎の急性期の炎症を惹起し、一方、慢性期ではIFNγを産生するTh1細胞が炎症の増幅を司っていると考えられている。したがって、抗真菌薬は、すでに起こっている炎症を鎮静化するのではなく、新たな炎症性病変の新生を抑制すると考えられる。
キ 乙8の記載
(乙8ア)18頁5行~19頁21行
1)アトピー性皮膚炎の炎症に関与する細胞
(1)T細胞
T細胞はアトピー性皮膚炎の炎症において中心的な役割をもつリンパ球の1つである。T細胞は産生するサイトカインの種類によって大きくTh1細胞とTh2細胞に分類される。アトピー性皮膚炎の急性期の病巣部位にはIL-4やIL-13と呼ばれるサイトカインを産生するTh2細胞が多く集まりIFNγを産生するTh1細胞はあまりみられないことから、アトピー性皮膚炎の初期炎症ではTh2細胞が重要な役割をもっていると考えられている。慢性期の炎症部位ではIFNγを産生するTh1細胞も増加するといわれている。
アトピー性皮膚炎の炎症に関与するサイトカインは他の細胞からも産生されるが、急性期の病巣部位ではIL-4、IL-5、IL-13などを産生する細胞が多く集まり、慢性期の病巣部位ではIL-5、GMCSF、IL-12、IFNγなどを産生する細胞も出現してくることが知られている。なお、本症では臨床的に症状がみられない部位でもTh2細胞の出現がみられるといわれている。
(2)抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞、樹状細胞)
アトピー性皮膚炎の皮膚では、高親和性IgE受容体(FcεRI)を多く発現しIgEを結合しているランゲルハンス細胞(LC)あるいは樹状細胞(IDEC)が多く存在することが知られている。これらの細胞は免疫・アレルギー反応の中心をなす細胞であるが、FcεRI+/IgE+LCは皮膚に湿疹病変が生じることに重要な働きをしていると考えられている。
(3)ケラチノサイト(角化細胞)
皮膚の最上層に存在する表皮のケラチノサイトの機能は角化して角層を形成することであるが、皮膚の炎症に関与する様々な物質も産生することが分かってきた。例えば、引っ掻くなどの機械的刺激やTNF-αやIFNγなどのサイトカインの刺激を受けるとRANTESなどの炎症に関与する物質を産生したり、また樹状細胞を活性化するTSLP(thymic stromal Lymphopoietin)を産生する。
・・・
(4)マスト細胞、好酸球、好中球、単球など
マスト細胞はIgE抗体を付着して抗原と反応するとヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症性化学伝達物質を遊離したりサイトカインを産生して炎症に関与する。急性期の炎症の場に浸潤してきた好酸球はIL-12を産生して慢性期のTh1細胞の出現を誘導していると考えられている。
このようにアトピー性皮膚炎の炎症には、様々な細胞やそれらが産生・遊離する化学伝達物質、サイトカイン、ケモカインなどが総合的に関与している。
2 無効理由1(進歩性)について
(1)無効理由1(進歩性)についての請求人の主張の要点
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 甲2及び甲6より、甲1に記載のREGN668は抗ヒトIL-4R抗体であることが理解できるから、甲1には「患者において中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する方法に使用するための抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体を含む医薬組成物であって、 ここで前記患者が局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないか又は前記局所処置が勧められない患者である 前記医薬組成物。」の発明が記載されている。
一方、本件訂正発明1は「治療上有効量の」抗体又は抗原結合断片を含む点において、甲1記載の上記発明と文言上は一応相違している。
しかしながら、薬効を確認するための臨床試験において試験される治験薬の量は、治療上有効な量であること、又は当該有効成分の量を治療上有効量とすることは、当業者が容易に想起することである。そして、甲3における医薬組成物中の有効成分の用量についての記載に照らせば、相違点にかかる構成を甲1発明において具備するものとすることは、当業者が容易になしえたことである。
本件明細書において実施例において具体的に試験結果が示されているのは「mAb1」なる抗体のみであり、本件訂正発明1に包含される態様のうち、効果が示されていない発明にかかる態様が大部分であるから、本件訂正発明1の効果は何ら格別なものではなく、甲1~3号及び甲6における記載から当業者が予測できるものにすぎない。
本件訂正発明1は、甲1~3及び甲6に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件訂正発明2~9、13、16も、甲1~3及び甲6に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ IGA及びEASIは、いずれもREGN668の効能を評価するための指標として甲1に記載され、BSAスコアも甲4に記載されているとおり、本件特許出願の最先の優先日前に知られていたパラメータであることからすれば、本件訂正発明10~12は、甲1~4及び甲6に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 甲5には、局所コルチコステロイドの用量を徐々に減少させること等についての記載があることからすれば、本件訂正発明14、15は、甲1~3、甲5及び甲6に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)無効理由1(進歩性)についての当審の判断
ア 本件訂正発明1について
(ア)引用発明
甲1は、米国FDAの監督下で行われる臨床試験の情報データベースであるClinicalTrials.govに掲載された情報を出力したものであって、その内容は、表題及び試験記録バージョンの選択表示からみて、NCT01548404と呼ばれる外因性の中等度から重度のアトピー性皮膚炎の成人患者におけるREGN668の試験臨床試験に関し、2012年4月19日に提出されたバージョンの情報を表示したものであると認められる。甲1には、固有プロトコルID:R668-AD-1117についての情報として、「試験の識別」の項目における「正式なタイトル:外因性の中等度から重度のアトピー性皮膚炎の成人患者における皮下投与されたREGN668の有効性、安全性、忍容性及び薬力学の無作為化二重盲検プラセボ対照複数回用量による試験」と記載されていることからみて、甲1に記載された、試験NCT01548404における固有プロトコルID:R668-AD-1117による試験は、REGN668が特定の患者に対して有効性等を有するか否かを評価するための試験であると認められる。
また、甲1の「適格性」の項目における「基準:選択基準:」として「選択基準には、以下が含まれるが、これらに限定されない:」として、「1.男性又は女性、18歳以上 2.少なくとも3年間の慢性アトピー性皮膚炎 3.スクリーニング来訪前3カ月以内のAD治療として、局所コルチコステロイドあるいはカルシニューリン阻害剤の治療に変更がなく(≧1箇月)不十分な応答の病歴」が記載されていることから、甲1に記載された上記試験において、投与対象は、18歳以上で、少なくとも3年間の慢性アトピー性皮膚炎を患っており、局所コルチコステロイドあるいはカルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない患者であると認められる。
甲1における試験NCT01548404における固有プロトコルID:R668-AD-1117についての上記記載から、当該プロトコルに用いる治験薬組成物として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)患者に対する効果、安全性などを評価するための試験に使用される、REGN668を含む治験薬組成物であって、ここで前記患者が18歳以上で、少なくとも3年間の慢性アトピー性皮膚炎を患っており、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない患者である前記治験薬組成物。」
(イ)対比
甲2には、ADに対する臨床試験が、IL-4受容体を標的にして行われており、その一つはREGN-668であることが記載され(甲2イ、ウ)、甲6には、REGN668は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)に対する抗体であるところ、アレルギー性疾患及び免疫疾患のためのターゲットであるインターロイキン-4受容体(IL-4R)に対する抗体であるREGN668について、アトピー性皮膚炎に罹患している患者を対象としたフェーズ1bの臨床試験を実施中であるとの記載があるから(甲6ア)、REGN668は抗IL-4R抗体であることが理解できる。また、引用発明の組成物はヒトを投与対象とするものであるから、REGN668は抗ヒトIL-4R抗体であると認められる。
そうすると、本件訂正発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
抗ヒトIL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む組成物であって、中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)であって、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない患者に投与されるものである点。
(相違点)
本件訂正発明1は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)であって、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない患者を処置する方法に使用するための、治療上有効な量の抗ヒトIL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物であるのに対し、引用発明は、治験薬組成物である点。
(ウ)判断
a 甲1~甲6の記載内容について
甲1には、REGN668を含む治験組成物が、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)に対する有効性などを評価するために、該当の患者に投与されることが記載されているが、投与した結果については、何ら記載されていない。
上記(イ)で指摘したとおり、甲2及び甲6には、インターロイキン-4受容体(IL-4R)に対する抗体であるREGN668は、アトピー性皮膚炎に罹患している患者について臨床試験中であることが記載されている(甲2イ、甲6ア)。しかしながら、甲2及び甲6のいずれにも、当該試験の結果や、インターロイキン-4受容体に対する抗体であるREGN668のアトピー性皮膚炎に対する有効性については、何ら記載されていない。
甲3は、医薬組成物として、hIL-4R、すなわち、ヒトIL-4Rに特異的に結合する組み換えヒト抗体及び許容可能なキャリアーを含むものを特徴とする発明に関する特許文献であって、ヒトインターロイキン-4受容体アルファ(hIL-4Rα)に高い親和性(KD)で結合し、hIL-4の活性及びhIL-13の活性をブロックする抗体についての記載があり(甲3ア、甲3カ、甲3キ)、抗hIL-4R抗体が適用できる多くのIL-4関連障害の1つとしてアトピー性皮膚炎が挙げられ(甲3オ)、適用が検討されると見込まれる用量の広範な範囲を示している(甲3エ)。しかしながら、甲3には、hIL-4の活性及びhIL-13の活性をブロックする抗体の適用により、実際にアトピー性皮膚炎に対して治療効果があったことを示すような具体的な試験結果等は記載されておらず、この抗hIL-4R抗体が中等度から重度の段階のADに対して有効であるのか、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して応答しないADに対しても有効であるのかについては何ら記載がない。
甲4は、皮膚病の臨床評価に用いられるスコアとしてDLQI及びBSAスコアがあること(甲4ア)、甲5は、アトピー性皮膚炎の治療において用いられる各種ステロイドの使用方法(甲5ア~エ)を記載したもので、甲4及び甲5の記載も、抗ヒトIL-4R抗体が中等度から重度の慢性アトピー性皮膚炎の治療に有効であることの予測や、抗ヒトIL-4R抗体を中等度から重度の慢性アトピー性皮膚炎の治療のために用いることに対する動機づけを与えるものではない。
b 本件特許の優先日におけるアトピー性皮膚炎に関する技術常識について
アトピー性皮膚炎におけるサイトカインの役割に関し、本件特許の優先日前の文献には、皮膚のアレルゲンに対する湿疹応答の開始段階では、TH2及びTH0細胞によるIL-4産生は、TH1及びTH0細胞によるインターフェロンガンマ産生よりも優勢であるのに対し、後期及び慢性期では、TH1及びTH0細胞によるインターフェロンガンマ産生が、TH2及びTH0細胞によるIL-4産生よりも優勢になること(乙3ア)、AD患者の正常な皮膚又は関与していない皮膚と比較した場合、急性皮膚病変は、IL-4、IL-5、及びIL-13mTNA発現細胞の数が有意に多く(乙4ア)、慢性AD皮膚病変は、IL-4及びIL-13mRNA発現細胞が有意に少ないが、急性ADよりもIL-5、GM-CSF、IL-12及びIFNγmRNA発現細胞の数が多いこと(乙4イ)、IL-4、IL-5等、Th2系サイトカインはアトピー性皮膚炎の急性期の炎症を惹起し、一方、慢性期ではIFNγを産生するTh1細胞が炎症の増幅を司っていると考えられている(乙7イ)との記載がある。そして、同じく、本件特許の優先日前の文献の記載として、アトピー性皮膚炎患者の皮膚試験の組織化学的解析から、初期に観察されるTh2細胞優位の状態が次第にTh1細胞優位の状態へ移行することを示す報告があるものの、Th1/Th2バランスが比較的限局された部位においても、また、病期によっても変化し、さらに、同一個体内の部位によってバランスが異なる可能性もあること(乙5ア)、アレルギー的側面では、Th2細胞優位によりIL-4、IL-5、IL-10などの産生によりIgE値上昇、好酸球増多などを認め、アトピー性皮膚炎は、炎症の強い急性期ではTh2細胞が優位になるが、慢性状態になるとTh1細胞優位となり、Th2細胞とTh1細胞間で揺れ動くとの知見があった(乙6ア)。
これらのことからみて、アトピー性皮膚炎では、病期や部位により複雑にTh1/Th2バランスが変化し、急性期ではIL-4、IL-13などのTh2系サイトカインの産生が優勢であるが、慢性期に入ると、IL-4などのTh2系サイトカインよりもインターフェロンガンマ、IL-12産生が優勢となることが本件特許の優先日おける技術常識であったと認められる。
c 相違点の容易想到性について
甲3に、抗IL-4R抗体が適用できる多くのIL-4関連障害の1つとしてアトピー性皮膚炎が挙げられ、本件訂正発明における用量を包含する広範な用量の範囲が示されているとしても、甲3には、hIL-4の活性及びhIL-13の活性をブロックする抗体の適用により、実際にアトピー性皮膚炎に対して治療効果があったことを示すような具体的な試験結果等は記載されておらず、甲3の記載から、抗ヒトIL-4R抗体が中等度から重度の段階のADに対して有効であることや、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して応答しないADに対しても有効であることを認識することはできない。
甲1の試験はフェーズ2臨床試験であるところ、フェーズ2の前に行われるフェーズ1臨床試験は、通常少数の健康人に対し治験薬の安全性や薬物動態を調査するものであり、患者に対する有効性の確認はフェーズ2臨床試験から始められることが技術常識である。そして、乙1によれば、フェーズ2臨床試験の成功の確率は他のどのフェーズよりもはるかに低く(乙1ア)、アレルギー疾患の場合、33%程度であり(乙1イ)、このことからすると、フェーズ2臨床試験が行われていることから直ちに、当該治験薬が試験結果を見るまでもなく当然に治療上有効であると当業者が理解するとはいえない。
また、甲2~6を検討しても、本件特許の優先日前に、アトピー性皮膚炎患者に抗ヒトIL-4R抗体が投与されて、実際に治療効果が得られたことを示す証拠はない。
上記bのアトピー性皮膚炎の急性期と慢性期におけるサイトカインの役割に関する本件特許出願の優先日における技術常識を踏まえると、甲1で使用されているREGN668(抗ヒトIL-4R抗体)が、甲3における抗体と同様、IL-4活性及びIL―13活性を遮断する能力を有するものであるとしても、少なくとも3年間の慢性アトピー性皮膚炎を患っており、IL-4が優勢である急性期とは異なり、IL-4よりもインターフェロンガンマ、IL-12産生が優勢となっていると考えられる引用発明における患者に対し、REGN668(抗ヒトIL-4R抗体)を治療上有効に用いることを当業者が想到し得たとはいえず、また、臨床症状の改善をもたらすことを容易に予測はできない状況であったと認められる。
また、乙4に、特定の細胞とサイトカインがADで果たす役割についての洞察は、標的療法の開発の機会を生み出すが、関与する生物学的プロセスの複雑さを考えると、これまでにテストされた化合物のどれも特効薬であることが証明されておらず、ADにつながる免疫経路の複雑さを考えると、より選択的な抗炎症剤又は免疫抑制剤の効果はより低い可能性がある(乙4エ、乙4オ)と記載されるように、アトピー性皮膚炎における免疫経路の複雑さを考慮すると、IL-4の作用の遮断という、本件特許の優先日において、アトピー性皮膚炎の治療に対する使用実績のない特定のメカニズムに基づく治療薬について、臨床試験の結果を待つことなく、中等度から重度のアトピー性皮膚炎に対して治療効果が得られると予測をすることは困難であると認められる。
これに対し、本件明細書においては、以下の3(2)ウに示すとおり、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者に対する抗ヒトIL-4R抗体の効果を確認した試験において、実際にアトピー性皮膚炎の臨床症状が改善したことが記載されている。
そうすると、引用発明について、中等度から重度のアトピー性皮膚炎であって、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない患者を処置する方法に使用するための、治療上有効な量の抗ヒトIL-4R抗体を含む医薬組成物であるという相違点に係る構成を備え、本件訂正発明1に該当する患者において、実際に本件明細書に示されたアトピー性皮膚炎の臨床症状の改善効果を示すものとすることは、甲1~6の記載から当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
d 請求人の主張に対して
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(i) 請求人は、一貫して、甲1に局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないか又は前記局所処置が勧められない患者において中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する方法に使用するための抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体を含む医薬組成物が記載されている旨を主張する。
しかし、甲1には、REGN668を含む治験組成物が、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しない中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)に対する有効性などを評価するために、該当の患者に投与されることが記載されているが、投与した結果については、何ら記載されておらず、治験薬組成物が記載されるに留まることは、上記aのとおりであって、請求人が主張する医薬組成物が記載されているとはいえない。
(ii) 請求人は、令和4年5月27日付け弁駁書において、甲12~14の記載を根拠に、慢性期にIL-4の関与がなくなる訳ではないから、抗ヒトIL-4R抗体が慢性のアトピー性皮膚炎にも有効であると理解するし、そもそも、甲14に記載されるように、アトピー性皮膚炎自体が慢性疾患であるから、本件訂正発明1の効果は、当業者が甲1~甲6の記載に基づき予測し得たものであるなどと主張する。
しかし、慢性期のアトピー性皮膚炎では、IL-4の関与がなくならないとしても、IL-4よりもインターフェロンγなどの産生の方が優勢となることが技術常識であることは上記bのとおりであるのに加え、IL-4の作用の遮断という、本件特許の優先日において、アトピー性皮膚炎の治療に対する使用実績のない特定のメカニズムに基づく治療薬について、本件訂正発明1に該当する患者において、実際に本件明細書に示されたアトピー性皮膚炎の臨床症状の改善効果を示すものとすることは、甲1~6の記載から当業者が容易になし得たことであるとはいえないことは、上記cのとおりである。
(iii) 請求人は、また、上記弁駁書において、本件特許出願の国際公開公報である甲11の[005]において、患者は単数形で記載され、「ある一人の患者」という特定されない単数の患者を意味するから、あらゆる患者に有効な用量である必要はなく、80名の患者が投与対象とされた甲1の試験において、治療上有効量が存在していた蓋然性が高く、甲1~甲3の記載から当業者が想起する用量が、本件訂正発明における治療有効量に相当することは明らかであると主張する。
しかしながら、上記cのとおり、抗ヒトIL-4R抗体又はその抗原結合性断片を、実際にアトピー性皮膚炎に対し有効な医薬組成物とすること自体、甲1~甲6から当業者が想到し得なかったのであるから、請求人が主張するように甲1~甲3の記載から当業者が想起する用量が、本件訂正発明における治療有効量に相当するとはいえない。
e まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、引用発明及び甲1~甲6の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
イ 本件訂正発明2~16について
本件訂正発明2~16は、本件訂正発明1をさらに限定した発明であり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~甲6の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないのであるから、本件訂正発明2~16も、甲1に記載された発明及び甲1~甲6の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないことは明らかである。
ウ 小括
以上より、訂正請求項1~16に係る発明に特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、無効理由1によって無効とされるべきものでない。
3 無効理由2(サポート要件)について
(1)無効理由2(サポート要件)についての請求人の主張の概要
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ア 本件訂正発明1~7、10~16において含むとされる「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」のアミノ酸配列は何ら特定されていないが、本件明細書中の発明の詳細な説明に開示された薬理試験結果は、表1でH1H098-bと表示されたmAb1に関するもののみであって、mAb1以外の抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体又はその抗原結合断片については、発明の詳細な説明において医薬組成物として使用可能であることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。したがって、本件訂正発明1~7、10~16は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
イ 本件特許はAD(アトピー性皮膚炎)のための局所ローション、局所コルチコステロイド軟膏等の典型的な処置が提供する症状の緩和は一時的かつ不完全であることを前提に、ADの処置・防止のための医薬組成物を提供することを課題とし、課題が解決されたといえるためには、本件特許に係る医薬組成物が、典型的な処置の提供する一時的かつ不完全な症状の緩和を超えるレベルの症状の緩和を提供する必要がある。
ところが本件明細書には、典型的な処置を続けた場合と、本件訂正発明1~16にかかる医薬組成物を使用した場合の比較を行った薬理試験結果は何ら記載されていないから、本件訂正発明1~16に係る医薬組成物が、典型的な処置が提供する一時的かつ不完全な症状の緩和を超えるレベルの症状緩和を提供することを当業者は認識することができない。
したがって、本件訂正発明1~16は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
ウ 本件訂正発明1~16は、「ここで前記患者が局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないかまたは前記局所処置が勧められない患者である」との発明特定事項を含んでいるが、「前記局所処置が勧められない患者」については、本件明細書に何らの薬理試験結果も記載されていない。
(2)無効理由2(サポート要件)についての当審の判断
ア サポート要件について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件訂正発明の課題
本件明細書【0004】の「ADのための典型的な処置は、局所ローションおよび保湿剤、局所コルチコステロイド軟膏、クリームまたは注射を含む。しかしながら、多くの処置選択肢は、一時的な、不完全な、症状の緩和を提供するに過ぎない。さらに、中等度から重度のADを有する多くの患者は、局所コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤による処置に対して耐性になる。かくして、ADの処置および/または防止のための新規標的療法が当業界で必要である。」との記載及び特許請求の範囲の記載からみて、本件訂正発明の課題は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)患者であって、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないか又は前記局所処置が勧められない患者を処置する方法に使用するための、治療上有効な医薬組成物を提供することであると認められる。
ウ サポート要件の判断
(ア)本件明細書には、実施例1として、「ヒトIL-4Rに対するヒト抗体の作成」が記載され、ヒト抗hIL-4R抗体を、米国特許第7,608,693号(甲3)に記載のように作製したことが記載され、表1には選択された抗ヒトIL-4R抗体及びその対応する抗体名の重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列対とCDRアミノ酸配列に関する配列識別子が記載され(【0153】~【0155】)、実施例で例示的IL-4Rアンタゴニストとして用いるヒト抗IL4R抗体であるmAb1は、H1H098-bであると記載されている(【0156】)。H1H098-bの重鎖のアミノ酸配列は配列番号162、軽鎖のアミノ酸配列は配列番号164である(【0154】表1)。
なお、本件明細書【0153】で、抗体の作成方法に関し引用されている甲3には、抗体の作成方法についての一般的な説明が記載され(甲3ウ)、実施例1には、抗ヒトIL-4R抗体の作成、実施例2には、得られた抗体の抗原結合の親和性の測定が記載され(甲3カ)、実施例3には、得られた抗体のhIL-4及びhIL-13の中和活性とその結果のIC50の値が示されている(甲3キ)。甲3のカラム4 3行~7行には、mAb1と同じ重鎖のアミノ酸配列は配列番号162、軽鎖のアミノ酸配列は配列番号164である抗ヒトIL-4R抗体が記載されている。
(イ)本件明細書には、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者に対する抗ヒトIL-4R抗体の効果を確認した以下の試験が記載されている。
a 実施例10「中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者における皮下投与された抗ヒトIL-4R抗体(mAb1)の反復用量臨床試験」
「mAb1」と呼ばれる、抗IL-4R mAbの28週間の無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験において、109人の患者を1:1の比で無作為化して、プラセボの54人および300mgの抗体の55人に分けて試験を実施し(【0352】)、患者の組入れ基準には、「(2)スクリーニング来院前に少なくとも3年間存在していた、Hannif inおよびRajkaのEichenfield改訂基準により診断された、慢性AD; (3)スクリーニングおよびベースライン来院時に16以上のEASIスコア;(4)スクリーニングおよびベースライン来院時に3 以上のIGA スコア; (5)スクリーニングおよびベースライン来院時に10% 以上のAD病変のBSA; (6)スクリーニング来院より前の最後の3カ月以内のADのための処置としての局所コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤を用いる安定(1カ月以上)なレジメンに対する不十分な応答の履歴」が含まれていること(【0354】)、患者を12週間にわたって週1回、300mgの皮下mAb1、又はプラセボで処置した結果が、図23~33および表27~35に示されていることが記載されている(【0378】)。
その上で、試験で得られた結論として、【0389】には以下の記載がある。
「 H.結論中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者への抗ヒトIL-4R抗体(mAb1)の皮下投与は、12週間の300mgの投与後に一般に安全であり、良好に忍容された。300mgでのmAb1の投与は、ベースラインと比較した場合、平均ならびに絶対変化および変化率の両方において85日目までにIGA、EASI、BSA、SCORADおよびNRS掻痒感の有意な改善をもたらした(表27~33を参照されたい)。300mg群について85日目で0または1のIGAスコアを達成する患者の割合は40.0%であったが、プラセボに関する同じ数は7.4%であった(表34)。85日目で、EASIスコアの50%の低下率(「EASI-50」)を達成した患者の割合は、300mg群については85.5%であったが、85日目でのプラセボ処置された患者のEASI-50は35.2%であった(表35)。mAb1のベースラインから12週目までのEASIスコアの変化率は、プラセボ群とは統計的有意差があった(-74.0%と-23.0%、p値<0.0001)。処置群は、全ての副次的効能評価項目においてプラセボ群と統計的に有意に異なっていた。以下は、それぞれ、IGA応答者(0または1)(<0.0001)、EASI応答者(<0.0001)、ベースラインからのEASI絶対変化(<0.0001)、ベースラインからのIGAの絶対変化(<0.0001)、ベースラインからのIGAの変化率(<0.0001)、BSAの絶対変化(<0.0001)、SCORADの絶対変化(<0.0001)、掻痒感NRSの絶対変化(<0.0001)、およびベースラインから12週目までの5-D掻痒感スケールの絶対変化(<0.0001)のp値であった。」
なお、実施例10で用いられた効能変数について、本件明細書には、試験責任医師包括評価(IGA)は、0(消失)から5(非常に重篤)までの6点の範囲でADの重症度および処置に対する臨床応答を決定するための評価スケールであること(【0060】)、アトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA)は、身体のそれぞれの主要な部分(頭部、胴体、腕および脚)について、組み合わせた全ての主要な身体部分のパーセンテージとして報告されるものであること(【0061】)、湿疹面積および重症度指数(EASI)は、ADの重症度および程度を評価するために、4つのAD疾患特性が、0(なし)から3(重篤)までのスケールで医療専門家によって重症度について評価され、さらに、AD病変の面積が、頭部、胴体、腕および脚の体面積によりパーセンテージとして評価されてから0~6のスコアに変換されるものであること(【0062】)、アトピー性皮膚炎スコアリング(SCORAD)は、アトピー性皮膚炎の重症度の臨床評価であり、その計算においては、ADの程度を、それぞれ定義される体面積のパーセンテージとして評価される「A」、ADの6つの特異的症状の重症度を、なし(0)、軽度(1)、中等度(2)、又は重度(3)を用いて評価した最大18の合計点である「B」、痒みおよび不眠の主観的評価した最大可能スコアは20である「C」に基づき、A/5+7B/2+Cとして計算されるものであること(【0063】)、掻痒感数値評価スケール(NRS)は、1~10のスケールで前の12時間における対象の最悪の痒みを評価する評価ツールであること(【0065】)が記載されている。上記の記載より、IGA、EASI、BSA、SCORADおよびNRS掻痒感は、いずれもスコアの低下が症状改善を表すものと理解できる。
b 実施例12の「C.中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する対象へのmAb1の反復投与」
実施例12C.には、実施例10に対応する、12回の週用量で300mgのmAb1又はプラセボを投与した中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する対象を含む実施例10の臨床試験に由来する試料中のIgE及びTARC(胸腺及び活性化調節ケモカイン)レベルを測定し(【0441】)、TARCに対するmAb1の薬力学的効果(【0441】)及び総IgEに対するmAb1の薬力学的効果(【0442】)について評価した結果、初期の臨床試験から得られた結果と一致して、TARC及びIgEレベルは低下し、16週間の処置後フォローアップ期間までベースラインより下に抑制されたままであったことが記載されている(【0444】、図55~56)。
なお、TARC及びIgEは、アトピー性皮膚炎のバイオマーカーである(甲8イ、甲10ア)。血清TARC値は、アトピー性皮膚炎の重症度スコアであるSeverity of Atopic Dermatitis index(AD)SCORAD)やEczema Area and Severity Index(EASI)とも有意な相関を示し、治療によりSCOEADやEASIの変化と一致して変化し、他のマーカーであるLDHや好酸球、IgEと比較して最も鋭敏に変動するため、アトピー性皮膚炎ガイドラインにおいても、短期的な病勢のマーカーであり、鋭敏に病勢を反映すると記載されているものであって、蕁麻疹等の疾患でも高値の報告があるものの、血清TARCの高値はアトピー性皮膚炎に特に特異性が高いことが示されており(甲10ア)、ADの疾患重症度と強く関係するものであるとされている(【0441】、甲8イ)。また、総IgEレベルの上昇はAD重症度と相関するとされ、発症にも関与することがわかっている(甲10、【0442】)。
(ウ)上記の実施例10の試験の対象患者は、組み入れ基準(6)の「スクリーニング来院より前の最後の3カ月以内のADのための処置としての局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤を用いる安定(1カ月以上)なレジメンに対する不十分な応答の履歴」(【0354】)を満たす中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者であるから、実施例10には、本件訂正発明における対象患者に対し、実際に抗IL-4RであるmAb1を投与した試験において、アトピー性皮膚炎の重症度を臨床的に評価する指標であるIGA、EASI、BSA、SCORADおよびNRS掻痒IGA、EASI、BSA、SCORADおよびNRS掻痒感の有意な改善をもたらしたことが確認して記載されており(【0389】)、実施例12では、同じ対象について、アトピー性皮膚炎のバイオマーカーであり、重症度を反映して上昇することが知られているTARC(甲8イ、甲10)及び同じくアトピー性皮膚炎のバイオマーカーである総IgE(甲10、【0442】)の低下を確認し、臨床症状の改善と矛盾のない結果を得ているといえる。
(エ)本件明細書の【0096】に「本明細書で用いられる場合、「IL-4Rアンタゴニスト」は、IL-4Rに結合するか、またはそれと相互作用し、IL-4Rがin vitroまたはin vivoにおいて細胞上で発現される場合にIL-4Rの正常な生物学的シグナリング機能を阻害する任意の薬剤である。IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定例としては、・・・低分子IL-4Rアンタゴニスト、・・・およびヒトIL-4Rに特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合断片が挙げられる。」と記載されるように、本件訂正発明における抗ヒトIL-4R抗体は、IL-4Rの正常な生物学的シグナリング機能を阻害するIL-4Rアンタゴニストとして作用する抗体を意味すると解され、mAb1も、当該作用を有するものである。そして、IL-4がIgEの産生・分泌を促進するものであることが本願出願日時点の技術常識であると認められるから(甲3イ、甲8ア)、実施例10のmAb1を投与された患者における総IgEレベルの抑制は、mAb1のIL-4遮断作用によるものと推認される。
そうすると、本件明細書におけるこれらの記載から、当業者は、mAb1のAD疾患に対する症状の改善は、IL-4/IL-13の作用の遮断によるもの、すなわち抗ヒトIL-4R抗体としての作用によるものであると理解するのが自然である。そして、上記のとおり、【0096】の記載からみて、本件訂正発明における抗ヒトIL-4R抗体は、IL-4Rの正常な生物学的シグナリング機能を阻害するIL-4Rアンタゴニストとして作用する抗体を意味すると解されるから、本件訂正発明における、ヒトIL-4Rに特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合断片は、これらが全てmAb1と同様にAD疾患に対する症状の改善を示すといえる。
(オ)また、本件明細書には、局所コルチコステロイド又は等を投与する典型的な処置を続けた状態の患者とmAb1で処置した患者と比較した試験結果は記載されていないが、本件訂正発明が対象とする患者である実施例10における患者は、いずれもスクリーニング来院より前の最後の3カ月以内のADのための処置としての局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤を用いる安定(1カ月以上)なレジメンに対する不十分な応答の履歴(【0354】)を有する者であり、本件明細書に記載の実施例10の試験結果によって、当該患者に対して、臨床症状の改善が示され、本件訂正発明の上記課題が解決できることが認識できる。
(カ)実施例10では、抗ヒトIL-4R抗体が局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤に対する不十分な応答の病歴を持つ慢性のAD患者特定の患者に対し、局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤を使用しない状態で臨床試験を行い、mAb1が症状の改善をすることを明らかにしている。そして、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置が勧められない患者のアトピー性皮膚炎について、抗ヒトIL-4R抗体が奏功しないと予測させるような具体的根拠も見当たらず、当業者であれば、局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤を使用しない状態で行われた実施例8及び10の臨床試験の結果からみて、mAb1が、局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤による処置が勧められない患者に対しても有効に作用するであろうと当然に理解する。
(3)請求人の主張に対して
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ア 請求人は、令和4年1月18日付け口頭審理陳述要領書において、医薬発明においては、化合物等の構造・名称だけから特定の医薬用途に使用し得るかどうかを予測することは困難であるところ、本件訂正発明1~7、10~16の抗ヒトIL-4R抗体又はその結合性断片は、無数にあるCDRのアミノ酸配列を有する抗体を包含するものであり、甲7から理解できるように、同じ抗原に対して産生される抗体であっても、活性の異なるものが得られることが技術常識であり、全てのIL-4R抗体が、mAb1と同程度のIL-4Rの正常なシグナリングの阻害活性を有するとはいえないにもかかわらず、本件明細書には、mAb1を用いた実施例しか記載されていないから、本件訂正発明1~7、10~16は、発明の詳細な説明に本願発明の課題が解決できるように記載された範囲を超えていると主張する。
請求人の主張について検討する。本件特許の出願日において、同一の抗原に対し、アミノ酸配列の異なる複数のモノクローナル抗体が得られることは、本件特許の出願時の技術常識である。甲3は、本件明細書の実施例(実施例1)に、当該文献の記載のとおり、「ヒトIL-4Rに対するヒト抗体の作成」を作製したと記載されている文献であり、IL-4Rについても実際にアミノ酸配列の異なる複数のモノクローナル抗体が得られることは、甲3の実施例1(甲3カ)にも記載されているとおりである。そして、本件明細書に記載された実施例において、mAb1のAD疾患に対する症状の改善は、IL-4/IL-13の作用の遮断によるもの、すなわち抗ヒトIL-4R抗体としての作用によるものであることが理解することができることは、上記(2)ウ(エ)のとおりである。そして、甲3の実施例3(甲3キ)には、hIL-4Rに結合し、hIL-4及びhIL-13の生物学的作用を中和することができる抗体について、その選択方法も含めて記載され、実際にアミノ酸配列の異なるものが複数得られている。
これらのことからみれば、当業者は、本件特許出願時の技術常識を考慮して、発明の詳細な説明の記載から、mAb1以外の本件訂正発明における患者の治療に有効な抗ヒトIL-4R抗体を得ることができると認められる。
イ 請求人は、また、弁駁書において、甲15には、ある抗ヒトIL-4R抗体がある疾患に対して有効であっても、別の抗ヒトIL-4R抗体も有効でなかったことが記載されているから、mAb1の試験結果から他の抗ヒトIL-4R抗体が有効であるとはいえない旨も主張している。
しかしながら、甲15に記載されているのは、ヒト化抗ヒトIL-4受容体α鎖抗体であるデュピルマブが重症喘息に有効であるのに対し、別のヒト化抗ヒトIL-4受容体α鎖抗体であるAMG317は成人喘息において肺機能を改善しなかったことから、全てのヒト化抗ヒトIL-4受容体α鎖抗体が喘息治療に適用できるわけではないことが示唆されたという、アトピー性皮膚炎とは異なる疾患である喘息に対するAMG317という特定の抗体の効果に関するものである。甲15に記載されたそのような技術的事項が本願出願時に知られていたからといって、技術常識を考慮しても、本件明細書の記載から、当業者が本件訂正発明において、mAb1以外の抗ヒトIL-4R抗体では目的とする効果が得られることが認識できないことにはならない。
ウ 請求人はまた、令和4年3月1日付け上申書において、TARC及び総IgEは、あくまでアトピー性皮膚炎を患っている状態を反映するバイオマーカーであって、抗ヒトIL-4R抗体以外のアトピー性皮膚炎治療薬でも低下することが公知であったことに鑑みれば、バイオマーカーの1種であるTARC及び総IgEの血中濃度低下という現象が、当該抗体が有するIL-4シグナリングの遮断作用のみに起因すると断定することはできず、mAb1で確認された効果を抗ヒトIL-4R抗体全体にまで拡張することができない旨を主張する。
しかしながら、本件明細書の試験においては、他のアトピー性皮膚炎治療薬を用いない状態で、IgEの産生を増大させることが知られているサイトカインであるIL-4と、その受容体であるヒトIL-4Rの作用を遮断するアンタゴニストである抗ヒトIL-4R抗体を投与した患者において、臨床症状の改善、TARC及び総IgEの低下が確認されたのであるから、当業者は、当該効果は、抗ヒトIL-4R抗体がヒトIL-4Rの作用を遮断する作用に基づくものであると考えることは、上記(2)ウ(エ)で述べたとおりであるから、請求人の主張は妥当なものではない。
(4)小括
以上より、訂正請求項1~16に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、無効理由2によって無効とされるべきものでない。
4 無効理由3(実施可能要件)について
(1)無効理由3(実施可能要件)についての請求人の主張の概要
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ア 本件明細書には、局所ローション、局所コルチコステロイド軟膏等の典型的な処置を続けた場合と、本件訂正発明1~16にかかる医薬組成物を使用した場合を比較した薬理試験結果は何ら記載されていない。したがって、本件訂正発明1~16にかかる医薬組成物が、典型的な処置が提供する症状の緩和を超えるレベルの症状緩和を提供することを当業者は認識することができず、本件明細書には当業者が本件訂正発明1~16を実施できる程度の明確かつ十分な薬理試験結果が開示されていない。
イ 「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」には様々なアミノ酸配列を有するものがあり得るが、本件明細書中の発明の詳細な説明に開示された薬理試験結果は「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」としてmAb1を用いたもののみである。本件明細書にはmAb1およびその他の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」がそれぞれヒトインターロイキン-4受容体にどのように作用するのか、さらにいかなる作用機序で「局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないかまたは前記局所処置が勧められない患者」の症状を緩和させるのかにつき開示されておらず、mAb1に関する薬理試験結果をmAb1以外の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」にも適用できるとする根拠は存在しない。結局、mAb1以外の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」につき実際に使用し得ることを確認するためには、ヒトでの臨床試験を行う他ないが、これは当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。
したがって、mAb1以外の「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体またはその抗原結合断片」を含む医薬組成物を包含する本件訂正発明1~7、10~16については、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度の明確かつ十分な記載がない。
ウ 本件訂正発明1~16は、「ここで前記患者が局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないかまたは前記局所処置が勧められない患者である」との患者を限定する発明特定事項を含むが、「前記局所処置が勧められない患者」については、本件明細書中に何らの薬理試験結果も記載されていない。
(2)無効理由3(実施可能要件)についての当審の判断
ア 実施可能要件について
特許法36条4項1号は、発明の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないことを規定するものであり、同号の要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。
そして、本件訂正発明は、特定の用途を有する物の発明であるので、本件訂正発明の実施をすることができるというためには、本件訂正発明の物を製造することができ、本件訂正発明における用途に使用することができることが必要である。そこで、以下、その観点から検討する。
イ 本件訂正発明の物を製造できることについて
上記3(2)ウ(ア)及び(3)アで述べたとおり、本件特許の出願時における技術常識であったモノクローナル抗体作製技術によって、甲3に記載されたように、hIL-4及びhIL-13の生物学的作用を中和することができる抗体として、実際にアミノ酸配列の異なるものが複数得られていることからすれば、当業者は、本件特許出願時の技術常識を考慮して、発明の詳細な説明の記載から、mAb1以外の本件訂正発明における患者の治療に有効な抗ヒトIL-4R抗体を得ることができると認められるから、技術常識を考慮して、本件明細書の記載に接した当業者は、本件訂正発明における有効成分である抗ヒトIL-4R抗体を得て、本件訂正発明の医薬組成物を製造することができるといえる。
ウ 本件訂正発明の物を使用できることについて
上記3(2)ウ(ウ)~(カ)で述べたとおり、本件明細書の記載から、当業者は、抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体又はその抗原結合断片を治療上有効量で含む医薬組成物であれば、局所コルチコステロイド又は局所カルシニューリン阻害剤による処置に対して十分に応答しないか又は前記局所処置が勧められない中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)患者の治療に有効であることを理解するのであるから、本件特許出願時の技術常識を考慮して、本件明細書の記載に接した当業者は、本件訂正発明の医薬組成物を使用することができるといえる。
請求人が主張する無効理由3の実施可能要件違反の内容である上記4(1)のア、イ、ウは、それぞれ順に、請求人が主張する無効理由2のサポート要件違反の内容である上記3(1)のイ、ア、ウに対応するものであって、実質的には、無効理由2のサポート要件違反において、発明の課題が解決できることを、使用できることの観点で言い換えたものである。これに対し、請求人の主張を考慮しても、本件特許出願時の技術常識を考慮して、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件訂正発明の医薬組成物を使用することができるといえることは、上記のとおりである。
エ 実施可能要件の判断
上記イ及びウのとおり、本件明細書の発明の詳細な記載から、当業者は、本件訂正発明の医薬組成物を製造することができ、使用することができる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
オ 小括
訂正請求項1~16に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、無効理由3によって無効とされるべきものでない。
5 職権で通知した無効理由(明確性)について
本件訂正により、請求項1、11における「抗ヒトインターロイキン-4(IL-4R)抗体」との記載は、「抗ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)抗体」と訂正された。訂正後の請求項1、11の記載は、医薬組成物が含む抗体がヒトインターロイキン-4受容体に対する抗体であることが明確であり、請求項1、11に記載された発明は明確である。
したがって、訂正請求項1~16に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、無効理由通知の理由によって無効とすべきものではない。
第9 むすび
以上のとおり、本件訂正は適法であり、訂正請求項1~16に係る発明についての特許は、請求人が主張する無効理由1~3及び無効理由通知における無効理由のいずれによっても無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり、審決する。
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2021-800003