特許異議申立
2021-701252
電解用電極、電解槽、電極積層体及び電極の更新方法
- 審判番号
- 2021-701252
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-170207
- 登録番号
- 6956842
- 請求日
- 2021年12月27日
- 審決日
- 2023年07月28日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】旭化成株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】北澤 誠
- 【異議申立人】千野 肇
- 審判長/審判官
- 審判長 池渕 立
- 審判官 粟野 正明
- 審判官 山本 佳
- 分類
- P1651.113-YAA(C25B) / P1651.121-YAA(C25B) / P1651.536-YAA(C25B) / P1651.537-YAA(C25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第4号、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第6956842号発明「電解用電極、電解槽、電極積層体及び電極の更新方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6956842号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。
特許第6956842号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第6956842号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)12月28日(優先権主張 平成29年 1月13日 日本国)を国際出願日とする特願2018-561333号の一部を令和 2年10月 8日に新たな特許出願(特願2020-170207号。以下、「本願」という。)としたものであって、令和 3年10月 7日にその特許権の設定登録がされ、同年11月 2日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、その請求項1~3(全請求項)に係る特許について、令和 3年12月27日に特許異議申立人である千野 肇(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和 4年 8月 5日付けで取消理由が通知され、同年10月 7日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出され、同年11月28日に申立人から意見書が提出され、令和 5年 2月27日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年 5月 1日に特許権者から意見書が提出され、同年 6月14日に申立人から上申書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求について
1 訂正請求の趣旨、及び訂正の内容
令和 4年10月 7日提出の訂正請求書により特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6956842号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを求めるものであり、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当審が下線を付した。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stを、前記SWで除した値が、0.4以上である、請求項1又は2に記載の電解用電極。」と記載されているのを、「前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stを、前記SWで除した値が、0.4以上であり、前記電解用電極の開口率が、5%以上25%未満である、請求項1又は2に記載の電解用電極。」に訂正する。
2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1の訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項3に「前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stを、前記SWで除した値が、0.4以上である、請求項1又は2に記載の電解用電極。」と記載され、電解用電極の開口率が特定されていなかったところ、当該開口率を「5%以上25%未満」の範囲に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
(ア)訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
(イ)また、本願の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「【0021】
本実施形態に係る電解用電極において、電解用電極の開口率は、5%以上25%未満であることが好ましく、7%以上20%以下であることがより好ましく、10%以上18%以下であることが特に好ましい。電解用電極の開口率が5%以上であると、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解時に電極で発生するガスが滞留する等の悪影響を効果的に解消することができる傾向にあり、電解電圧を低減できる傾向にある。また電解用電極の開口率が25%未満であると、電解用電極の比表面積を十分に確保できる、すなわち、イオン交換膜に対向する実質的な電極表面を十分に確保できる傾向にあり、結果として見かけ上の電流密度を低くでき、電解電圧を低減できる傾向にある。」
(ウ)そうすると、訂正事項1に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(エ)したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 本件訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2の3のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1~3は、その訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~3に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、総称して「本件発明」ということがある。
「【請求項1】
有孔金属製板からなる導電性基材と、
該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、
を備える電解用電極であって、
前記電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であり、
前記電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下である、電解用電極。
【請求項2】
前記開口部を、前記第2の仮想中心線により一方の部分aと他方の部分bに区分したとき、前記部分aの面積Saを前記部分bの面積Sbで除した値が、1.15以上2.0以下である、請求項1に記載の電解用電極。
【請求項3】
前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stを、前記SWで除した値が、0.4以上であり、
前記電解用電極の開口率が、5%以上25%未満である、請求項1又は2に記載の電解用電極。」
第4 申立理由の概要
1 申立人は、証拠方法として、いずれも本件特許に係る優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである、次の甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」~「甲3」という。)を提出し、特許異議申立書において、以下の(1)~(3)の申立理由(以下、「申立理由1」等という。)により、本件特許の本件訂正前の請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証(甲1):島宗孝之、外2名、「イオン交換膜食塩電解用DSEの開発と展望」、電気化学および工業物理化学、社団法人電気化学協会、第56巻、第5号、p.306~309
甲第2号証(甲2):米国特許第3930981号明細書
甲第3号証(甲3):米国特許第4708888号明細書
(1)申立理由1(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲2に記載された発明と甲3に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正前の請求項1~3に係る発明について、以下のア~ウの点で、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に適合しないものであるから、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
ア 本件訂正前の請求項1に係る発明の電解用電極の開口部の形状が「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称」であることの技術的意義について理解することができない。
イ 本件訂正前の請求項2に係る発明のSa/Sb値が1.15以上2.0以下(当審注:特許異議申立書の第11頁第3行には、「Sa/Sb値を1.15mm以上1.2mm以下(構成要件ニ)」と記載されているが、「Sa/Sb値を1.15以上2.0以下(構成要件ニ)」と記載すべきところを誤記したものであることは明らかである。)の技術的意義について理解することができない。
ウ 本件訂正前の請求項3に係る発明のSt/SW値が0.4以上であることの技術的意義について理解することができない。
2 なお、申立人は、令和 4年11月28日提出の意見書とともに、以下の甲第4号証~甲第6号証を提出し、また、令和 5年 6月14日提出の上申書とともに、以下の甲第7号証、甲第8号証を提出している(以下、これらを「甲4」~「甲8」という。)。
甲第4号証(甲4):特開昭58-147576号公報
甲第5号証(甲5):特開昭56-146884号公報
甲第6号証(甲6):特開昭58-42778号公報
甲第7号証(甲7):株式会社布引製作所のウェブサイト中に紹介されたラスメタル(エクスパンドメタル)のカタログ「主な製品例 vol.6」
(https://www.nunobiki-s.co.jp/contents/product/pdf/laster.pdf)
甲第8号証(甲8):Wayback Machineにおける甲7のカタログのURLの検索結果を示すウェブサイトのスナップショット
(https://web.archive.org/web/20161115000000*/https://www.nunobiki-s.co.jp/contents/product/pdf/laster.pdf)
第5 令和 4年 8月 5日付け取消理由通知及び令和 5年 2月27日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
当審が、上記第4の1の各申立理由のうち、申立理由1を採用し、また、一部職権により、令和 4年 8月 5日付けで通知した取消理由1及び取消理由2、並びに、職権により、令和 5年 2月27日付けで通知した取消理由3の概要は、以下のとおりである。
1 取消理由1(実施可能要件:職権により発見した理由)
本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づいて、エクスパンドメタルを用いて形成される電解用電極において、当業者が「実施例1~7の電解用電極」のような本件訂正前の請求項1に係る発明の上下非対称な形状の開口部を実現しようとしても、「従来の電解用電極」等のように形状が上下対称の開口部を製造する時と、どのように製造条件を異ならせることでかかる形状の開口部が実現可能となるのかを、十分把握できるものとはいえない。
さらに、本件訂正前の請求項2に係る発明のようにSa/Sb値を1.15以上2.0以下(当審注:令和 4年 8月 5日付け取消理由通知書の第4の1.(2)オ.では、「本件発明2のようにSa/Sb値を1.15以上1.2以下とすること」と記載されているが、「本件発明2のようにSa/Sb値を1.15以上2.0以下とすること」と記載すべきところを誤記したものである。)とすること、また、本件訂正前の請求項3に係る発明のようにSt/SW値を0.4以上とすることも、発明の詳細な説明の記載に基づき、当業者が、どのように開口部の形状を調整する製造方法を採用することで実現できるのかを、具体的に把握できるものとはいえない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明には、少なくとも、当業者が本件訂正前の請求項1~3の「電解用電極」を製造することができる程度にまで、明確かつ十分な記載がなされているとはいえない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合しないものであるから、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
2 取消理由2(新規性、進歩性:申立理由1を採用)
本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
3 取消理由3(明確性:職権により発見した理由)
本件発明1に係る「電解用電極」の「開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であり」との発明特定事項は、特に、上記「電解用電極」を構成する「導電性基材」が「エクスパンドメタル」である態様について、どの方向から観察することを前提として、「左右対称」、「上下非対称」と判断されるのかが明らかでないため、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。
したがって、本件訂正後の請求項1及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2~3の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないから、同請求項に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
第6 当審の判断
以下に述べるとおり、当審は、令和 4年 8月 5日付けで通知した取消理由、令和 5年 2月27日付けで通知した取消理由(決定の予告)、及び特許異議申立ての理由のいずれによっても、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 取消理由1(実施可能要件)について
(1)本件明細書等の記載
本件明細書等には、以下の記載がある(「・・・」は、記載の省略を表す。また、下線は、当審が付したものである。以下同様。)。
ア 「【0002】
イオン交換膜法食塩電解とは、電解用電極を用いて塩水を電気分解(電解)し、苛性ソーダ、塩素、及び水素を製造する方法である。イオン交換膜法食塩電解プロセスにおいては、環境への負荷およびエネルギー問題の観点から、消費電力量削減のため、低い電解電圧を長期間に亘って維持できる技術が求められている。」
イ 「【0014】
本実施形態の第2の態様に係る電解用電極(以下、単に「第2の電解用電極」ともいう。)は、有孔金属製板からなる導電性基材と、該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、を備える電解用電極であって、前記電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であり、前記電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下である。このように構成されているため、第2の電解用電極も、電解時の電圧・消費電力量を低く抑えることができ、かつ、実用上の強度も兼ね備えている。第2の電解用電極も、特にイオン交換膜法食塩電解に好適な塩素発生用電極として用いることができる。
以下、「本実施形態に係る電解用電極」と称するときは、第1の電解用電極及び第2の電解用電極を包含するものとする。
【0015】
(導電性基材)
本実施形態に係る電解用電極において、導電性基材は、有孔金属製板からなり、飽和に近い高濃度の食塩水中で、塩素ガス発生雰囲気で用いられる。そのため、該導電性基材の材質としては、耐食性のあるバルブ金属が好ましい。バルブ金属としては、以下に限定されないが、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム等が挙げられる。該バルブ金属の中でも、経済性及び触媒層との親和性の観点からチタンが好ましい。
導電性基材の形状としては、金属製で孔を有する平坦状のものであれば特に限定されないが、例えば、エクスパンドメタル、多孔板、金網等の形状が挙げられ、本実施形態においてはエクスパンドメタルが好適に用いられる。エクスパンドメタルとは、一般的に、金属製平板や金属箔に対し、上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成し、所望の厚みまで圧延ロール掛け等により平坦化加工したものである。連続フープ加工が可能なため生産効率が高く、元の板材の廃棄ロスもなく経済性に優れており、また一体構造のため、金網と異なり完全な電気伝導度が確保され、ほどけることがない。」
ウ 「【0025】
次いで、第2の電解用電極について詳述する。第2の電解用電極は、有孔金属製板からなる導電性基材と、該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、を備える電解用電極であって、電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であり、前記電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下である。
第2の電解用電極における開口部形状の典型例を図4(A)に示す。図4(A)における開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称である。左右対称とは、第1の仮想中心線を基準として開口部を右部分と左部分に分けたとき、右部分の形状が左部分の形状に一致すること、すなわち第1の仮想中心線を基準として右部分と左部分とが線対称であることをいう。左右対称であることは、上述した画像解析により確認することができる。
さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称である。上下非対称とは、第2の仮想中心線を基準として開口部を上部分と下部分に分けたとき、上部分の形状が下部分の形状と一致しないこと、すなわち第2の仮想中心線を基準として上部分と下部分とが線対称とならないことをいう。左右対称であることは、上述した画像解析により確認することができる。例えば、図4(B)に示す例において、開口部100はメッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102を基準としたとき、上側の部分aと下側の部分bに区分でき、部分aと部分bの形状を比較することで容易に確認することができる。
【0026】
第2の電解用電極が、電解時の電圧・消費電力量を低く抑えることができる理由については明らかではないが、本発明者らは下記に起因するものと推測している。ただし、かかる推測に限定されるものではなく、上述した構成を備える電解用電極である限り、第2の電解用電極に包含される。
従来の電解用電極における開口部の典型的な形状としては、上記第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、上記第2の仮想中心線に対して上下対称であるものが挙げられる。例えば、図4(C)に示す例において、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称である。また、開口部100’において、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102を基準としたとき、仮想中心線102を基準として上側の部分aと下側の部分bとは線対称となっている。このような形状である場合、典型的には、開口部は菱形形状であり、当該開口部を構成する4辺は、当該開口部の中心点から略等距離に位置することとなる。このような従来の電解用電極において、発生するガス(典型的には球状である。)が開口部を通過しようとするとき、当該ガスが開口部を構成する4辺(すなわち4点)と接触することで通過抵抗が増加する傾向にあると推測される。すなわち、電解時に電極で発生するガスが開口部に内接して滞留し易い傾向にあり、電解液の液循環に悪影響を与えて電解電圧が上昇するといった問題が生じうる。
これに対して、第2の電解用電極は、第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、第2の仮想中心線に対して上下非対称であることにより、電極で発生するガス(典型的には球状である。)が開口部を通過しようとするときの通過抵抗が低減される傾向にあると推測される。すなわち、電解時に電極で発生するガスと開口部を構成する各辺との接触点が少なくなる傾向にあるため、ガスを効果的に脱離させることができる傾向にあり、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解電圧を低減できるものとなる。
・・・
【0028】
第2の電解用電極において、開口部を、前記第2の仮想中心線により一方の部分aと他方の部分bに区分したとき、前記部分aの面積Saを前記部分bの面積Sbで除した値(Sa/Sb)が、1.15以上2.0以下であることが好ましい。この場合、上述した加工部の上下非対称性がより顕著となる傾向にある。すなわち、電解用電極の開口部の形状が、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であることは、Sa/Sbの値からも示唆されるものといえる。また、Sa/Sbの値が1.15以上2.0以下であると、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解時に電極で発生するガスを効果的に脱離させることができる傾向にあり、電解電圧を低減できる傾向にある。Sa及びSbは、図4(B)の例において、それぞれ部分aの面積及び部分bの面積に該当し、Sa>Sbとなる。Sa及びSbの値は、上述した画像解析により測定することができる。
【0029】
第2の電解用電極において、前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stを、前記SWで除した値(St/SW)が、0.4以上であることが好ましく、0.67超1.0未満であることがより好ましい。図5に示す例において、電解用電極300には複数の開口部が形成されており、SWは、隣接する2つの開口部より、開口部のメッシュの短目方向中心間距離310により特定される。ここでの「隣接する2つの開口部」とは、ある開口部から第1の仮想中心線を伸ばしたとき、その第1の仮想中心線が最初に接する開口部を意味する。また、LWは、隣接する2つの開口部より、開口部のメッシュの長目方向中心間距離320により特定される。ここでの「隣接する2つの開口部」とは、ある開口部から第2の仮想中心線を伸ばしたとき、その第2の仮想中心線が最初に接する開口部を意味する。なお、図5では、電解用電極300において、第2の仮想中心線330は部分aと部分bとに開口部を区分するものであり、仮想中心線330を基準とし、部分a(340)と部分b(350)とが、上下非対称であることが示されている。さらに、図5では、開口部のメッシュの短目方向に隣接する2つの開口部間の距離360が、開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stに対応する。なお、開口部のメッシュの短目方向最大目開きは、図4(A)に示されている例では第1の仮想中心線101の長さに対応する。St/SWが、0.4以上であると、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解用電極の比表面積を十分に確保でき、電解電圧を低減できる傾向にある。St及びSWの値は、上述した画像解析により測定することができる。」
エ 「【0036】
(電解用電極の製造方法)
次に、本実施形態に係る電解用電極の製造方法について、導電性基材としてエクスパンドメタルを用いる場合を例にして詳細に説明する。
本実施形態に係る電解用電極は、導電性基材として、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成し、所望の厚みまで圧延ロール掛け等により圧延して平坦化加工したエクスパンドメタルを用い、該導電性基材に、上述の表面積増大化処理を施した後、該導電性基材上に、ルテニウム元素、イリジウム元素、及びチタン元素を含む触媒層を形成することにより、製造することができる。
【0037】
本実施形態におけるエクスパンドメタルの製造方法としては、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成する工程、次いで、ロール掛け等により圧延して平坦化加工する工程を経ることにより、導電性基材の表面上に少なくとも一層の触媒層を形成してなる電解用電極としたときに、厚みが0.5mm超1.2mm以下であり、かつ開口部の周辺長の総和Bを電解用電極の開口率Aで除した値C(=B/A)が2より大きく5以下となるエクスパンドメタルを製造する。
【0038】
電解用電極の厚みは、導電性基材の材料として用いるバルブ金属製平板の厚み、及びロール掛け等により圧延する平坦化加工時の圧延強度を調整することによって、本実施形態に好適な範囲に調整することができる。
また、電解用電極の開口率と、開口部のメッシュ短目方向中心間距離である短径SWは、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成する一連の工程において、上刃の上下運動に連動して送りローラーによって連続的に前方へ送る刻み幅を調整することによって、本実施形態に好適な範囲に調整することができる。すなわち、本実施形態の開口部の分散の程度を調整する観点から、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れる際の刻み幅を0.8mm以下に調整することが好ましい。また、本実施形態の開口部の形状を維持する観点から0.5mm以上が好ましい。
・・・」
オ 「【0047】
(電解槽)
本実施形態の電解槽は、本実施形態に係る電解用電極を備えるものである。すなわち、本実施形態の電解槽は、本実施形態に係る電解用電極を陽極として含む陽極室と、陰極を含む陰極室と、前記陽極室と前記陰極室とを隔離するイオン交換膜と、を備える。この電解槽は、電解する際の初期電圧が低減されたものである。本実施形態の電解槽の断面の一例を図6に模式的に示す。」
カ 「【0055】
以下に、本実施形態を実施例に基づいて更に詳細に説明する。本実施形態はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例における各評価方法について、以下に示す。
【0056】
(イオン交換膜法食塩電解試験)
電解セルとして、陽極室を有する陽極セルと、陰極室を有する陰極セルと、を具備する電解セルを用意した。
各実施例及び比較例で準備した電解用電極を所定のサイズ(95×110mm=0.01045m2)に切り出したものを試験用電極とし、該試験用電極を溶接によって陽極セルの陽極室のリブに装着して、陽極として用いた。
陰極としては、ニッケル製の金網基材の上に酸化ルテニウムの触媒被覆を行ったものを用いた。先ず、陰極セルの陰極室のリブ上に、集電体として金属ニッケル製のエキスパンド基材を、陽極と同じサイズで切り出して溶接した後、ニッケル製ワイヤーを編んだクッションマットを乗せ、その上に陰極を配置した。
ガスケットとしては、EPDM(エチレンプロピレンジエン)製のゴムガスケットを用い、陽極セルと陰極セルとの間にイオン交換膜を挟んだ。このイオン交換膜としては、食塩電解用の陽イオン交換膜「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)を用いた。
【0057】
電解電圧の測定は、陰極と陽極との間の電位差を測定することによって実施した。陽極の初期電解性能を測定するため、電解電圧は、電解開始5日経過後の値を測定した。電解条件は、電流密度6kA/m2、陽極セル内の塩水濃度205g/L、陰極セル内のNaOH濃度32質量%、温度90℃で行った。電解用の整流器としては、「PAD36-100LA」(菊水電子工業社製)を用いた。
【0058】
[実施例1]
導電性基材として、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.1mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3mm、板厚0.81mmのチタン製エクスパンドメタルを用いた。上記板厚は厚み計で測定した。また、SW、LW、St、開口率、及び開口部の周辺長の総和の値は、導電性基材の表面の所定範囲をマイクロスコープ等の画像観察機器で観察し、投影面を撮影した画像データを解析することにより求めた。画像データの解析方法として、米国国立衛生研究所(NIH)が開発し公有の「Image J」を画像処理に用いた。画像処理に用いた画像サイズは、導電性基材の8.0×5.3mmの範囲とした。すなわち、この範囲に存在する開口部を対象として、隣接する開口部の各々に対して特定されるメッシュの短目方向中心間距離、メッシュの長目方向中心間距離、及び、開口部のメッシュの短目方向中心間距離から前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値を測定し、これらの平均値を算出して、それぞれSW、LW及びStとした。以下、各実施例及び比較例における導電性基材及び電解用電極についても、上記と同様にSW、LW、St、開口率A、開口部の周辺長の総和B、開口部1つの周辺長、E(=B/(A×(SW2+LW2)1/2))及び厚みの値を求めることとした。このエクスパンドメタルを、大気中540℃で4時間焼成し、表面に酸化被膜を形成させた後、25質量%硫酸中において85℃で4時間酸処理を行い、導電性基材の表面に細かい凹凸を設ける前処理を施した。
次に、ルテニウムとイリジウムとチタンとの元素比(モル比)が25:25:50になるように、塩化ルテニウム水溶液(田中貴金属社製、ルテニウム濃度100g/L)をドライアイスで5℃以下に冷却及び撹拌しながら、四塩化チタン(キシダ化学社製)を少量ずつ加えた後、更に塩化イリジウム水溶液(田中貴金属社製、イリジウム濃度100g/L)を少量ずつ加えて、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液CL1を得た。一方で、ルテニウムとチタンとの元素比(モル比)が35:65になるように、上述の塩化ルテニウム水溶液と四塩化チタンを、上述と同様の混合方法によって、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液CL2を得た。
【0059】
この塗工液CL1を塗工機の液受けバット内に注入し、EPDM製スポンジロールを回転させることにより塗工液CL1を吸い上げて含浸させ、該スポンジロールの上部に接するようにPVC製ロールを配置した。そして、前記EPDM製スポンジロールと前記PVC製ロールとの間に、前処理を施した導電性基材を通して塗工した。塗工後直ちに、布を巻いた2本のEPDM製スポンジロールの間に、上記塗工後の導電性基材を通し、過剰な塗工液を拭き取った。その後、50℃において10分間乾燥した後、大気中、475℃において10分間、焼成を行った。
上記のロール塗工、乾燥、及び焼成から成るサイクルを合計7回繰り返し行い、次いで520℃における1時間の焼成を更に行うことにより、導電性基材上に黒褐色の第一触媒層を形成した。この第一触媒層を形成した基材に対して、塗工液をCL2に代える以外は、塗工液CL1を用いて塗工した時と同様にロール塗工、次いで乾燥を実施し、大気中、440℃において10分間、焼成を行った。最後に大気中、440℃において60分間焼成し、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.81mm、開口率7.4%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は4.54であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.28、StをSWで除した値は0.76であった。
【0060】
[比較例1]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が6mm、板厚1.0mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み1.0mm、開口率37.8%、電極の投影面積当たりの開口部数は13個/cm2、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は1.06であった。また、開口部の形状は図4(C)と同様の形状が観察され、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100’は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.03、StをSWで除した値は0.667であった。
【0061】
[実施例2]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.2mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が4.2mm、板厚0.8mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.80mm、開口率10.9%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は3.26であった。また 、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.64、StをSWで除した値は0.73であった。
【0062】
[実施例3]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.3mm、板厚0.83mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.83mm、開口率9.25%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は3.65であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.27、StをSWで除した値は0.70であった。
【0063】
[実施例4]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.3mm、板厚0.81mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.81mm、開口率22.1%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.05であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.28、StをSWで除した値は0.43であった。
【0064】
[実施例5]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が1.6mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.0mm、板厚0.56mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.56mm、開口率17.5%、電極の投影面積当たりの開口部数は43個/cm2、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は3.30であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.88、StをSWで除した値は0.65であった。
【0065】
[実施例6]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.1mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.1mm、板厚0.81mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.81mm、開口率15.5%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.72であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.42、StをSWで除した値は0.67であった。
【0066】
[実施例7]
実施例6と同様に作製したチタン製エクスパンドメタル(SW:2.2mm、LW:3.2mm、板厚0.82mm)に対し、実施例1における塗工液CL1を実施例1と同様の方法で塗工し、上記導電性基材上に第一触媒層を形成した。
次に、ルテニウムとイリジウムとチタンとバナジウムとの元素比(モル比)が21.25:21.25:42.5:15になるように、硝酸ルテニウム水溶液(フルヤ金属社製、ルテニウム濃度100g/L)をドライアイスで5℃以下に冷却及び撹拌しながら、四塩化チタン(和光純薬社製)を少量ずつ加えた後、更に塩化イリジウム水溶液(田中貴金属社製、イリジウム濃度100g/L)及び塩化バナジウム(III)(キシダ化学社製)を少量ずつ加えて、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液CL3を得た。上記第一触媒層を形成した基材に対して、塗工液CL3を用いて実施例1と同様にロール塗工、乾燥、及び焼成から成るサイクルを、1回目の焼成温度を400℃とし、次いで450℃に昇温して更に3回繰り返し行い、最後に520℃における1時間の焼成を更に行うことにより、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.82mm、開口率16.1%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.73であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.38、StをSWで除した値は0.63であった。
【0067】
[比較例2]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.0mm、板厚0.6mmで、圧延ロールによる平坦化を実施していないチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.6mm、開口率43.3%、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は1.07であった。また、開口部の形状は図4(C)と同様の形状が観察され、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100’は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は0.90、StをSWで除した値は0.45であった。
【0068】
[比較例3]
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.1mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が4.0mm、板厚0.5mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.5mm、開口率35.7%、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は1.78であった。また、開口部の形状は図4(C)と同様の形状が観察され、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100’は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.10、StをSWで除した値は0.48であった。
【0069】
[イオン交換膜法食塩電解試験]
実施例1~6及び比較例1~3でそれぞれ作製した電解用電極を用いて、イオン交換膜法食塩電解試験を実施した。その結果を表1に示す。
なお表1において、導電性基材として用いるエクスパンドメタルに対し、圧延ロールによる平坦化を実施したものを「FR化○」、実施していないものを「FR化×」と記した。また、比較例1を基準とした電解電圧の低減分を「効果:ΔV」の正の値とした。
【0070】
【表1】
[図:0001402728000001.jpg]
【0071】
電流密度6kA/m2において、比較例1を基準とした電解電圧の低減分は、実施例1において35mV、実施例2において43mV、実施例3において41mV、実施例4において8mV、実施例5において42mV、実施例6において19mVであり、いずれも比較例1に対して電解電圧を低減できることが分かった。
一方、比較例2、3においては、比較例1に対してそれぞれ、23mV、19mV、電解電圧が増大した。」
キ「【図4】
[図:0001402728000002.jpg]
」
(2)乙第1号証の記載
また、特許権者が令和 4年10月 7日提出の意見書に添付して提出した乙第1号証(インターネットアーカイブのウェイバックマシンによって保存されていた、東邦ラス工業株式会社のウェブページ「エキスパンドメタルの製造方法」の2012/7/27付スナップショット(https://web.archive.org/web/20120727031340/http://www.toholath.com/method.html))には、次の記載がある。
「製造手順
[図:0001402728000003.jpg]
」
(3)ここで、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである(実施可能要件を満たす)というためには、発明の詳細な説明には、当業者がその物を製造することができ、かつ、その物を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されている必要があるといえる。
(4)以上を前提として、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載が、エクスパンドメタルの態様を含むものである、本件発明1に係る「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称」な形状の開口部を備えた「電解用電極」を製造することができ、かつ、使用することができる程度に明確かつ十分に記載したものか否かについて、以下検討する。
ア 上記(1)エに摘記したとおり、本件明細書等の【0038】には、本件発明に係る「電解用電極」の導電性基材としてエクスパンドメタルを用いた態様に関して、「電解用電極の開口率と、開口部のメッシュ短目方向中心間距離である短径SWは、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成する一連の工程において、上刃の上下運動に連動して送りローラーによって連続的に前方へ送る刻み幅を調整することによって、本実施形態に好適な範囲に調整することができる。」と記載されていることから、上記開口部の形状は、素材となるバルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成する工程において、上刃の上下運動に連動して送りローラーによって連続的に前方へ送る刻み幅を調整することによって調整できることが理解できる。
イ また、上記(2)に摘記した乙第1号証の記載によれば、上記メッシュを形成する一連の工程において、最初に上刃が上下して金属製平板にスリットを入れながら押し広げる工程によって、「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線」で区分される領域の一方の形状が定まり、次いで、上記金属製平板の材料が送られ、上刃が横に移動した後に、再度上刃が上下して上記金属製平板にスリットを入れながら押し広げる工程により、「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線」で区分される領域の他方の形状が定まることが理解でき、その際、両工程における上刃の下降速度、下降距離、材料の送り速度等を異ならせることにより、上記開口部における「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線」で区分される領域の一方と他方の形状を異ならせること、すなわち上下非対称な形状とすることは十分可能であり、これに、「ロール掛け等により圧延して平坦化加工する工程」(本件明細書等の【0037】)を施しても、上記開口部の上下非対称な形状は維持されると認められることから、エクスパンドメタルの態様であっても、本件発明1に係る「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称」な形状の開口部を備えた「電解用電極」を製造することは、当業者であれば十分可能であることが理解できる。
ウ そして、本件発明1に係る「電解用電極」が、例えば、イオン交換膜法食塩電解の電解用に使用できることは、本件明細書等の【0002】、【0047】、【0055】~【0071】の記載から明らかである。
エ したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(5)本件発明2のようにSa/Sb値を1.15以上2.0以下とすること、また、本件発明3のようにSt/SW値を0.4以上とすることについても、上記(4)において、本件発明1について検討したのと同様である。
(6)小括
以上のとおり、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に適合するものであるから、取消理由1によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由3(明確性)について
(1)上記1(1)イに摘記したとおり、本件明細書等の【0015】には、「エクスパンドメタルとは、一般的に、金属製平板や金属箔に対し、上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成し、所望の厚みまで圧延ロール掛け等により平坦化加工したものである。」との記載がある。
(2)そして、甲4には、「イオン交換膜法電解用陰極」(発明の名称)に関して、当該陰極を構成する「エクスパンドメタル電極」として、「表面を圧延等により平坦化せしめた電極」(第1頁右欄第10~11行)が提唱されていることが記載され、甲5には、「陽イオン交換膜を用いた塩化アルカリの電解方法」(発明の名称)に用いる陽極として、「平板をエクスパンドメタルにした後プレス等により平板化した」「有孔平板陽極」を用いること(特許請求の範囲、第3頁左上欄第113~17行)が記載されている。
(3)また、特許権者が令和 5年 5月 1日提出の意見書に添付して提出した乙第4号証(インターネットアーカイブのウェイバックマシンによって保存されていた、株式会社サンクメタルのウェブページ「エキスパンドメタル(マテリアル)」の2017/7/2付スナップショット(https://web.archive.org/web/20170702124933/http://www.thank-metal.com/j/material/))には、次の記載がある。
「エキスパンドの種類
[図:0001402728000004.jpg]
」
(4)ここで、上記乙第4号証は、2017年(平成29年)7月2日付けのものであって、本願の優先権主張の日である平成29年1月13日より後に公知となった資料ではあるものの、その記載からすると、本願の優先権主張の日においても、平坦化された、フラットタイプのエクスパンドメタルとは、エクスパンドメタルを加工の前の板厚まで圧延し、網目全体が同一平面となるように加工されたものを意味すると解するのが自然であったと認められる。
(5)そうすると、本件明細書等に記載された「エクスパンドメタル」、甲4に記載された「エクスパンドメタル電極」、又は甲5に記載された「平板をエクスパンドメタルにした後プレス等により平板化した」「有孔平板陽極」のように、エクスパンドメタルを圧延やプレス等により「平坦化」又は「平板化」したものについても、加工前の板厚まで圧延し、全体が同一平面となるようにまで加工されたものを意味することを当業者が明確に把握できるといえる。
(6)そして、本件発明に係る「電解用電極」を構成する「導電性基材」が「エクスパンドメタル」である態様についても、当該エクスパンドメタルが、「平坦化加工」を経て全体が同一平面となるように加工されたものであることは明確であり、そのようなエクスパンドメタルであれば、その開口部の形状について、「左右対称」又は「上下非対称」と判断することは、観察する方向を特定しなくても十分可能であるから、本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項2、3の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえる。
(7)この点について、申立人は、令和 5年 6月14日提出の上申書の「(2-3)取消理由3について」において、以下ア、イのとおり主張している。
ア 甲1の図3に開示されているエクスパンドメタルは、開口部の一方(下縁)のみが上刃によって押し広げられて伸長され、他方(上縁)が伸長しないことにより上下非対称となるものであり、開口部の上縁と下縁との長さの違いから、エクスパンドメタルの製造過程において、伸長した側の領域が上方に膨出して断面が上方に向けられるため、このようなエクスパンドメタルであると、ロール掛けして平坦化しようとしても、開口部における上縁と下縁との長さの違いから、開口部の傾斜は簡単には解消されず、これは、本件発明の実施形態においても同様である。
イ 乙第4号証に開示された開口率の大きい上下対称のエクスパンドメタルと、本件特許や甲1の図3に開示された開口率の低いエクスパンドメタルとは、そもそも全く異なる形態のエクスパンドメタルであることが明らかであり、仮に、乙第4号証に、エクスパンドメタルが平坦化処理を経ることで、開口部の傾斜が解消されていることが示されているとしても、本件発明に係る実施形態や、甲1、甲7に開示されている開口率の小さいエクスパンドメタルの開口部の傾斜も同様に解消される証拠にはならず、結局、本件発明1~3のエクスパンドメタルがどの程度まで平坦化される構成を含むのか不明である。
(8)そこで、上記(7)ア、イの主張について検討するに、申立人は、本件発明に係る実施形態や、甲1、甲7に開示されている開口率の小さいエクスパンドメタルの開口部の傾斜が平坦化処理によっても、乙第4号証に開示された開口率の大きい上下対称のエクスパンドメタルと同様に解消されるとはいえないことの根拠を何ら示しておらず、そもそもこのような主張は根拠を欠くものといわざるを得ない。むしろ、開口率の大小を問わず、乙第4号証に示されるような十分な平坦化加工を施せば、エクスパンドメタルの全体が同一平面となるように加工することは十分可能であると認められる。
したがって、上記(7)ア、イの主張は採用しない。
(9)また、申立人は、令和 5年 6月14日提出の上申書の「(2-3)取消理由3について」において、さらに、本件発明1の「前記電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称である」との発明特定事項が、本件発明1において果たす働きや役割が理解できず、出願時の技術常識や発明の詳細な説明を考慮したとしても、本件発明が解決しようとする課題を解決するための発明特定事項が不足していることが明らかであり、一の請求項から発明が明確に把握されることが必要である特許請求の範囲の機能を確保しているとは到底いえず、明確性要件を満たしていないことは明らかである旨主張している。
(10)そこで、上記(9)の主張についても検討するに、この主張は、実質的に新たな理由を提示しているものであって、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由である場合や、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合には該当しないものであるから、採用しない。
(11)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、取消理由3によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由2(申立理由1:甲1を主たる引用例とする新規性、進歩性)について
(1)甲1の記載、及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲1には、以下の記載がある。
(ア)「日本は世界に先がけてイオン交換膜法食塩電解という新技術とその実績を持つ国となった。その開発の過程においてDSE(Dimensionally Stable Electrode)の果たした役割は大きい。」(第306頁 「1 はじめに」欄の第1~4行)
(イ)「DSEはいわゆる弁金属基体上に貴金属酸化物を主触媒とする導電性酸化物被覆を施した不溶性金属電極である。」(第306頁 「2 電極触媒」欄の第1~3行)
(ウ)「DSE基体には少なくとも1mm前後の厚みが必要となる。」(第308頁 「3 電極形状」欄の第15~16行)
(エ)「一般的なDSEの極面形状には図3に示すようなExpanded MeshやPunched Plate等があり豊富な形状やサイズの中から選ぶことができる。」(第308頁 「3 電極形状」欄の第17~19行)
(オ)「
[図:0001402728000005.jpg]
」(第308頁 図3 EXPANDED MESH)
イ 甲1に記載された発明
そして、上記ア(ア)~(オ)を踏まえると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「弁金属基体上に貴金属酸化物を主触媒とする導電性酸化物被覆を施した不溶性金属電極であるDSE(Dimensionally Stable Electrode)であって、
極面形状が以下に図示するExpanded Meshであり、
基体の厚みが少なくとも1mm前後であるイオン交換膜法食塩電解用DSE。
[図:0001402728000006.jpg]
」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「不溶性金属電極」及び「DSE(Dimensionally Stable Electrode)」は、「イオン交換膜法食塩電解用」のものであるから、いずれも本件発明1の「電解用電極」に相当する。
(イ)甲1発明における「弁金属基体」及び「貴金属酸化物を主触媒とする導電性酸化物被覆」は、それぞれ本件発明1の「導電性基材」及び「少なくとも一層の触媒層」に相当する。また、甲1発明のように「弁金属基体上に貴金属酸化物を主触媒とする導電性酸化物被覆を施」すことは、本件発明1のように「導電性基材の表面上」に「少なくとも一層の触媒層」を「形成」することに相当する。
(ウ)また、甲1発明のDESの極面形状が「Expanded Mesh」であるということは、本件発明1と同様に、「電解用電極」が「開口部」を有することを意味するとともに、実質的にはDSEを構成する「弁金属基体」が「有孔金属製板」に相当することをも意味する。
(エ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「有孔金属製板からなる導電性基材と、
該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、
を備える電解用電極。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るのに対して、甲1発明は、「不溶性金属電極であるDSE(Dimensionally Stable Electrode)」が開口部を有するものではあるものの、その開口部の形状が「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るか否か不明な点。
<相違点2>
本件発明1は、「電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下」とされているのに対して、甲1発明は、「不溶性金属電極であるDSE」の「基体の厚みが少なくとも1mm前後」とされてはいるものの、「DSE」の厚みが、「0.5mm超1.2mm以下」の範囲であるか否か不明な点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点1について検討する。
(ア)甲1には、上記(1)ア(オ)に摘記した図3の「Expanded Mesh」の例に関しては、「一般的なDSEの極面形状には図3に示すようなExpanded MeshやPunched Plate等があり豊富な形状やサイズの中から選ぶことができる。」(上記(1)ア(エ)参照。)と記載されるのみで、当該「Expanded Mesh」が平坦化加工を経て全体が同一平面となるように加工されたものであるか否か、又どの方向から観察したものであるのかは、いずれも不明である。
なお、この点について、申立人は、令和 5年 6月14日提出の上申書の「(2-1)「(ア)甲第1号証の分析が不適切であること」に関する主張について」において、甲1の図3に示されている写真においては、撮像されているエクスパンドメタルにおける上下方向に並ぶ複数個の開口部の寸法は全て実質上同一であること、及び撮像されたエクスパンドメタルの倍率を示す「2mm」が表示されていることに留意すれば、甲1の図3に示されている写真はエクスパンドメタルの表面に対して傾斜することなく垂直な方向に撮像された写真、即ちエクスパンドメタルの正面視にほかならないことが明らかである旨主張しているが、上述のとおり、甲1の記載からは、図3の写真の具体的な撮像条件(どの方向から観察したものであるかなど)は不明であるといわざるを得ず、また、撮像されているエクスパンドメタルにおける上下方向に並ぶ複数個の開口部の寸法は全て実質上同一であると断定できる根拠もなく、さらに、撮像されたエクスパンドメタルの倍率である「2mm」が写真の中に表示されていることのみをもって、甲1の図3に示されている写真がエクスパンドメタルの表面に対して傾斜することなく垂直な方向に撮像された写真であると断定することも困難であるから、このような主張は採用しない。
(イ)一方、本件発明1の「電解用電極」については、上記2(6)において検討したとおり、全体が同一平面となるように加工されたものであることを前提として、「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」ることを特定したものである。
(ウ)そうすると、甲1の図3から、開口部に相当すると思われる白い領域の形状が、一見、「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」ることが見て取れるとしても、上記(ア)のとおり、上記図3の「Expanded Mesh」が平坦化加工を経て全体が同一平面となるように加工されたものであるかは不明であり、又どの方向から観察したものであるのかも不明であるから、上記図3の「Expanded Mesh」をその表面に対して垂直な方向から撮像した場合に上記図3と同様に「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」ることが見て取れるとはかぎらないし、仮に全体が同一平面となるように加工された場合に上記白い領域(開口部)の形状が「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るとの形態が維持されるとまでは断言できない。
(エ)したがって、上記相違点1は、実質的な相違点である。
(オ)次に、上記相違点1の容易想到性についても検討するに、甲1の記載や本願の優先権主張日当時の技術常識を参酌しても、甲1の図3における白い領域の形状を「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るとの構成にする動機付けを見出すことはできない。
(カ)したがって、甲1発明に基づいて、上記相違点1に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(キ)なお、本件発明1について、本件明細書等の【0026】には、「これに対して、第2の電解用電極は、第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、第2の仮想中心線に対して上下非対称であることにより、電極で発生するガス(典型的には球状である。)が開口部を通過しようとするときの通過抵抗が低減される傾向にあると推測される。すなわち、電解時に電極で発生するガスと開口部を構成する各辺との接触点が少なくなる傾向にあるため、ガスを効果的に脱離させることができる傾向にあり、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解電圧を低減できるものとなる。」との記載があり、また、本件明細書等に記載された実施例において、開口部が第2の仮想中心線に対して上下対称とされた比較例1~3に対して、上下非対称とされた実施例1~6の電解電圧が低減されていること(【0055】~【0071】参照。)からすると、本件発明1の上記の効果は、甲1発明から予測される範囲を超える顕著なものと認められる。
ウ よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、同様に、本件発明2、3も、甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)申立人の上申書における主張について
ア 申立人は、令和 5年 6月14日提出の上申書の「(2-2)「(イ)取消理由2について」に関する主張について」において、概略、以下のとおり主張している。
(ア)開口率の小さいエクスパンドメタルを用いて甲1の図3に示すような電解用電極を製造する場合は、当然の帰結として、開口部において上下が非対称になること(甲7のカタログ中の正面視で捉えた画像である「品番LS11」、「品番LS12」の写真からも同様であることは明らか)。
(イ)電解用電極を形成するエクスパンドメタルにおいて、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下対称になるように開口部が形成されるのは、乙第4号証に例示されるような、開口率が大きく、開口部の面積に対してストランド幅が極めて細く、且つストランド結合部が開口部の面積に対して極めて小さい形状であって、エクスパンドメタルを製造する際の上刃による切込み時に、開口部の下縁と上縁を形成するストランド全体が同時に均等に長手方向に延ばされる場合に限定されること。
(ウ)以上のとおりの、本件特許の出願時において当業者にとって周知の事実によれば、甲1の図3は、このような開口率の低い周知のエクスパンドメタルの形態を開示したものであり、事実上、このような周知の形状のエクスパンドメタルを特定したに過ぎない本件特許が特許権として許可されることは、断じて許されないこと。
イ そこで、上記アの主張について検討するに、仮に、甲1の図3や、甲7の「品番LS11」、「品番LS12」に示されるエクスパンドメタルが、開口部において上下非対称になっているものと認められるとしても、それらは、平坦化加工されたものか否かが不明であるから、本件発明に係る「電解用電極」に包含される、平坦化加工を経て全体が同一平面となるように加工されたエクスパンドメタルの態様に該当するとはいえない。
したがって、上記アの主張は、採用しない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1~3は、甲1に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないものであり、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、取消理由2によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由2(甲2を主たる引用例とする進歩性)について
(1)甲2、甲3の記載、及び甲2に記載された発明
ア 甲2の記載
本願の優先権主張の日前に外国において頒布された刊行物である甲2には、「BIPOLAR ELECTROLYSIS CELLS WITH PERFORATE METAL ANODES AND BAFFLES TO DEFLECT ANODIC GASES AWAY FROM THE INTERELECTRODIC GAP(当審訳:電極間ギャップから陽極ガスを遠ざける方向に偏向させるために有孔金属陽極とそらせ装置とを備えた二極電解槽)」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「
[図:0001402728000007.jpg]
」
(第8欄第23~30行)
(当審訳:
[図:0001402728000008.jpg]
)
(イ)「
[図:0001402728000009.jpg]
」(第10図、第11図)
(ウ)「
[図:0001402728000010.jpg]
」
(第3欄第49~55行)
(当審訳:第10図(各菱形開口の上方部分を陽極面の平面の前方へ傾斜させ、下方部分を陽極面の平面の後方へ傾斜させた菱形開口を有する網状金属陽極の正面図)、第11図(第10図の線11-11に沿う断面図))
イ 甲2に記載された発明
そして、上記ア(ア)~(イ)を踏まえると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「チタン、タンタル又はその他のバルブメタルで形成し且つ少なくとも一方向に導電性電気触媒被覆を設けた膨張薄板型の陽極であって、
陽極には複数の菱形開口が設けられ、
陽極の被覆面を電解槽中で陰極に対向させて取り付けられ、
各菱形開口の上方部分を陽極面の平面の前方へ傾斜させ、下方部分を陽極面の平面の後方へ傾斜させた菱形開口を有する網状金属陽極の正面図が以下の第10図であり、
第10図の線11-11に沿う断面図が以下の第11図である、陽極。
[図:0001402728000011.jpg]
」
ウ 甲3の記載
本願の優先権主張の日前に外国において頒布された刊行物である甲3には、「COATING METAL MESH(当審訳:被覆金属メッシュ)」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「
[図:0001402728000012.jpg]
」
(第2欄第19~23行)
(当審訳:
本発明は、広義には、・・・実質上ダイヤモンド形状のボイドが形成されたバルブ金属メッシュからなる電気化学プロセス用電極の製造方法に関するものであり、・・・)
(イ)「
[図:0001402728000013.jpg]
」
(第6欄第21~26行)
(当審訳:
金属シートからメッシュを拡張させる場合、相互連結された金属ストランドは、元の平面状シートまたはコイルの厚みに対応する厚み寸法を有するであろう。通常、この厚みは約0.05センチメートル乃至約0.125センチメートルの範囲内であろう。)
)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「膨張薄板型の陽極」は、「チタン、タンタル又はその他のバルブメタルで形成」され、「菱形開口」を有するものであって、その「少なくとも一方向に導電性電気触媒被覆を設けた」ものであり、しかも、その「被覆面を電解槽中で陰極に対向させて取り付けられ」るものであるから、本件発明1の「有孔金属製板からなる導電性基材と、該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、を備える電解用電極」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「有孔金属製板からなる導電性基材と、
該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、
を備える電解用電極。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、「電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るのに対して、甲2発明の「膨張薄板型の陽極」の「菱形開口」の形状が「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るか否か不明な点。
<相違点4>
本件発明1は、「電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下」とされているのに対して、甲2発明の「膨張薄板型の陽極」の厚みが、「0.5mm超1.2mm以下」の範囲であるか否か不明な点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
(ア)甲2の第10図は、各菱形開口の上方部分を陽極面の平面の前方へ傾斜させ、下方部分を陽極面の平面の後方へ傾斜させた菱形開口を有する網状金属陽極の正面図であり、第11図は、第10図の線11-11に沿う断面図であり、特に、第11図からすると、甲2発明の「膨張薄板型陽極」は、平坦化加工を経て全体が同一平面となるように加工されたものではない。
(イ)一方、本件発明1の「電解用電極」については、上記2(6)において検討したとおり、全体が同一平面となるように加工されたものであることを前提として、「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」ることを特定したものである。
(ウ)そうすると、上記(ア)のとおり、上記第10図及び第11図に示された甲2発明の「膨張薄板型の陽極」が平坦化加工を経て全体が同一平面となるように加工されたものではないことから、上記「膨張薄板型の陽極」の菱形開口の形状が「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るとはいえない。
(エ)したがって、上記相違点3は、実質的な相違点である。
(オ)次に、上記相違点3の容易想到性についても検討するに、甲2、甲3の記載や本願の優先主張日当時の技術常識を参酌しても、甲2発明の「膨張薄板型の陽極」の菱形開口の形状を「メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であ」るとの構成にする動機付けを見出すことはできない。
(カ)したがって、甲2発明に基づいて、上記相違点3に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(キ)なお、本件発明1について、本件明細書等の【0026】には、「これに対して、第2の電解用電極は、第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、第2の仮想中心線に対して上下非対称であることにより、電極で発生するガス(典型的には球状である。)が開口部を通過しようとするときの通過抵抗が低減される傾向にあると推測される。すなわち、電解時に電極で発生するガスと開口部を構成する各辺との接触点が少なくなる傾向にあるため、ガスを効果的に脱離させることができる傾向にあり、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解電圧を低減できるものとなる。」との記載があり、また、本件明細書等に記載された実施例において、開口部が第2の仮想中心線に対して上下対称とされた比較例1~3に対して、上下非対称とされた実施例1~6の電解電圧が低減されていること(【0055】~【0071】参照。)からすると、本件発明1の上記の効果は、甲2発明及び甲3の記載事項から予測される範囲を超える顕著なものと認められる。
ウ よって、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、同様に、本件発明2、3も、甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1~3は、甲2に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないものであり、また、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、申立理由2によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由3(実施可能要件)について
(1)上記1(3)のとおり、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである(実施可能要件を満たす)というためには、発明の詳細な説明には、当業者がその物を製造することができ、かつ、その物を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されている必要がある。
(2)そして、上記(1)の観点から検討した結果、上記1(6)のとおり、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に適合するものであるといえる。
(3)なお、申立人は、特許異議申立書の第9~11頁において、上記第4の1(3)ア~ウのとおり、本件発明1の電解用電極の開口部の形状が「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称」であること、本件発明2のSa/Sb値が「1.15以上2.0以下」であること、及び本件発明3のSt/SW値が「0.4以上」であることの、それぞれの技術的意義について理解することができないことを根拠として、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合しない旨主張しているが、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足するものであるか否かは、上記(1)のとおりの観点から検討すべきものであるから、申立人の上記主張は根拠を欠くものといわざるを得ず、採用しない。
(4)また、上記1(1)ウに摘記したとおり、本件明細書等の【0026】、【0028】及び【0029】の記載を参照すれば、本件発明1の電解用電極の開口部の形状が「メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称」であること、本件発明2のSa/Sb値が「1.15以上2.0以下」であること、及び本件発明3のSt/SW値が「0.4以上」であることの、それぞれの技術的意義については十分に理解可能なものといえるから、その意味においても、申立人の上記主張は根拠を欠いているから、採用しない。
(5)小括
以上のとおり、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に適合するものであるから、申立理由3によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、令和 4年 8月 5日付けで通知した取消理由、令和 5年 2月27日付け取消理由(決定の予告)、及び特許異議の申立ての理由のいずれによっても、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701252