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特許異議申立

2021-701248

シートおよび冊子体

審判番号
2021-701248
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-168806
登録番号
6936565
請求日
2021年12月27日
審決日
2023年03月24日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ユポ・コーポレーション
  • 【権利者代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 藤本 義仁
  • 審判官 松田 直也
  • 審判官 比嘉 翔一
分類
P1651.121-YAA(B42F) / P1651.537-YAA(B42F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6936565号発明「シートおよび冊子体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6936565号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~5〕について訂正することを認める。 特許第6936565号の請求項2~4に係る特許を維持する。 特許第6936565号の請求項1、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6936565号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年8月31日に出願され、令和3年8月31日にその特許権の設定登録がされ、同年9月15日に特許掲載公報が発行された。 その後、同年12月27日付けで特許異議申立人 渡辺 陽子(以下、「申立人」という。)より請求項1~5に対して特許異議の申立てがされ、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 4月26日付け 取消理由通知書(起案日) 令和4年 7月 1日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出 令和4年 8月30日付け 取消理由通知書(決定の予告)(起案日) 令和4年10月26日 意見書(特許権者)の提出 令和4年12月 2日 応対記録 令和4年12月 6日付け 取消理由通知書(起案日) 令和5年 1月13日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出 令和5年 1月31日 通知書(特許法第120条の5第5項)(起案日) 令和5年 2月22日 意見書(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 特許第6936565号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。 なお、以下、本訂正請求書でする訂正を「本件訂正」という。 2 訂正の内容 (1)訂正事項1 本件訂正前請求項1を、本件訂正により、削除する。 (2)訂正事項2 ア 訂正事項2の詳細 (訂正事項2-1) 本件訂正前請求項2の「シート」を、本件訂正により「熱可塑性樹脂シート」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3および4も同様に訂正する。)。 (訂正事項2-2) 本件訂正前請求項2の 「式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1」 を、本件訂正により 「式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」 と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3および4も同様に訂正する。)。 (訂正事項2-3) 訂正前請求項2の「前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する」を、本件訂正により、「前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3および4も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2の整理 訂正事項2-1~訂正事項2-3をまとめると、特許権者は、本件訂正前請求項2の 「少なくとも2枚以上のシートと、 リングとを有する冊子体であって、 前記シートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシー卜であり、 前記シートは、前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満であるシートであり、 前記シートが下記式1を満たし、 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 前記シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有するシートであり、 前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ、 重ねられた前記シートが、それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた、 冊子体。」を、本件訂正により、 「少なくとも2枚以上の熱可塑性樹脂シートと、 リングとを有する冊子体であって、 前記熱可塑性樹脂シートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置された熱可塑性樹脂シートであり、 前記熱可塑性樹脂シートは、前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満である熱可塑性樹脂シートであり、 前記熱可塑性樹脂シートが下記式1を満たし、 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5 前記熱可塑性樹脂シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある熱可塑性樹脂シートであり、 前記熱可塑性樹脂シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ、 重ねられた前記熱可塑性樹脂シートが、それぞれ前記貫通孔および前記熱可塑性樹脂シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた、 冊子体。」と訂正することを請求する(請求項2の記載を引用する請求項3および4も同様に訂正することを請求する。)。 (3)訂正事項3 特許権者は、本件訂正前請求項5を、本件訂正により、削除することを請求する。 3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、独立特許要件について 事案にかんがみ、独立特許要件はまとめて判断する。 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、請求項の削除であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、請求項の削除であるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2-1について ア 訂正の目的について 訂正事項2-1は、本件訂正前の請求項2の「シート」を、本件訂正により「熱可塑性樹脂シート」に訂正することで、「プラスチック-引張特性の試験方法」に関する規格である「JIS K7161:1994」との関係を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-1は、本件訂正前の請求項2の「シート」を、下位概念の「熱可塑性樹脂シート」に訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 本件特許明細書には、次の事項が記載されている。 「【0043】 -無機微粉末および有機フィラー- シートは、無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、シートの引張破壊ひずみおよびシートの引張破壊応力を上述の範囲に制御しやすい。特に、無機微粉末や有機フィラーが添加された熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなるシートは、無機微粉末や有機フィラーを核とした微細な空孔が内部に多数形成されており、シートの引張破壊ひずみを上述の範囲に制御しやすい。無機微粉末および有機フィラーの添加量が少ないと引張破壊ひずみが大きくなり、引張破壊応力が小さくなる傾向があり、時には引張破壊応力がほぼ0で伸び続ける(クリープ)ことがある。一方、無機微粉末および有機フィラーの添加量が少ないと引張破壊ひずみが小さくなり、引張破壊応力が大きくなる傾向がある。 無機微粉末および有機フィラーは、0.5~15μmの平均粒子径を有することが好ましい。 無機微粉末および有機フィラーの中では、無機微粉末であることが好ましい。 無機微粉末が、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、酸化チタン、タルク、カオリン、水酸化アルミニウムからなる群から選択される一種類以上の無機微粉末であることが好ましく、炭酸カルシウムであることがより好ましい。 本発明では、シートに無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を25~75質量%添加することが好ましく、30~70質量%添加することがより好ましく、35~65質量%添加することが特に好ましい。また、シートの引張破壊応力を上述の範囲に制御する観点から、シートは無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を30~60質量%含む層を少なくとも1層有することが好ましい。」 「【0048】 (貫通孔を設ける前のシートを製造する工程) 貫通孔を設ける前のシートを製造する工程としては、特に制限はない。 シートの材料(樹脂組成物)の溶融混練、延伸方法、延伸温度、延伸速度等は、たとえば特開2015-77791号公報の[0058]~[0066]に記載の製造工程を参照することができる。 上記の各成分を混合した樹脂組成物をシート状に成形した後、少なくとも一軸方向に延伸して貫通孔を設ける前のシートを製造することが好ましい。延伸されたシートは、引張破壊ひずみを上述の範囲に制御しやすい。また、不透明性が高く、冊子体が記録用紙である場合のシートとして好適に用いることができる。また、シートは一軸延伸層を有するようにして製造されることがより好ましい。これにより引張破壊ひずみの異方性を付与し、上記式1の範囲に制御しやすくなる。 シートの材料を溶融混練した樹脂組成物を樹脂シートに成形して、必要に応じて延伸してシートを得ることが好ましい。 シートの一側縁に直交する方向の延伸倍率は、1.1~9倍であることが好ましく、2.5~8倍であることがより好ましく、3.5~7倍であることが特に好ましい。 シートの一側縁に平行な方向の延伸倍率は、3~8倍であることが好ましく、3.5~7倍であることがより好ましく、4~6倍であることが特に好ましい。 上記の一側縁に直交する方向の延伸倍率が比較的低く、一側縁に平行な方向の延伸倍率が比較的高いことが、得られるシートの一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみと一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみを、上述の範囲に制御しやすい観点から好ましい。 なお、シート製造時のフィルム搬送方向を、シートの一側縁に直交する方向とすることが好ましい。シート製造時のフィルム搬送方向に直交する方向を、シートの一側縁に平行な方向とすることが好ましい。」 と記載されている(下線は当審決で付した。)。 このように、本件特許明細書には、「シート」として「熱可塑性樹脂シート」を用いることが記載されている。 したがって、訂正事項2-1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項2-2について ア 訂正の目的について 訂正事項2-2は、本件訂正前の請求項2の 「式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1」と記載されているのを、本件訂正により、 「式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」 と減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-2は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 本件特許明細書には、次の事項が記載されている。 「【0040】 本発明のシートは、下記式1を満たす。 式1 一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 式1を満たすことで、リングで綴じられて冊子体にされた場合にシートが一側縁に平行な方向に裂けやすくなる。 一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみの値は、1.5~15であることが好ましく、2~12であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましい。伸びやすいシートに筆記したとき、シートが伸びて筆記しにくくなることがあるため、一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみの値が上限値以下であることが、筆記性の観点から好ましい。」 と記載されている。」(下線は当審決で付した。) このように、本件特許明細書には、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ」の下限値を「1.5」とすることが記載されている。 したがって、訂正事項2-2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項2-3について ア 訂正の目的について 訂正事項2-3は、本件訂正前の請求項2の「前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する」を、本件訂正により、「前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-3は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 本件特許明細書には、次の事項が記載されている。 「【0021】 図3に、本発明の冊子体の一例から、一側縁に直交する方向にシートを引っ張って切る場合の概略図を示した。また、図4は、図3の拡大図である。 図3では、シートの一側縁に直交する方向に向けて手で引っ張った態様を示す。図3および図4に示した冊子体をシートの一側縁に直交する方向に引っ張る場合、貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する形状であるため、シートの一側縁に最も近い(リングに最も近い)突起部分のみに手とリングとの間の張力が集中してかかり、一側縁に平行な向きにシートが裂けることによって突起部分からシートの一側縁に向けて切込みが入る。そのため、シートは貫通孔ごとに1点のみで切れやすく、シート切れ端のリング残りを抑制できる。具体的には、図3および図4では、シート(1枚目)の裏面1Aに配置された1番目の貫通孔2Aは、1番目のリング3Aに最も近い突起部分の1点のみからシートの一側縁に向けて切込みが入る態様が示されている。同様に、2番目の貫通孔2Bおよび3番目の貫通孔2Cは、それぞれ、2番目のリング3Bおよび3番目のリング3Cに最も近い突起部分の1点のみからシートの一側縁に向けて切込みが入る態様が示されている。 なお、貫通孔ごとに2点以上で切れたり、隣合う貫通孔どうしが繋がるように切れたりすると、シート切れ端のリング残りが生じやすい。 シート(2枚目)11以降の重なっている複数のシートは、重ねられているために張力が各シートに分散される。そのため、シート(1枚目)1側が、シート(2枚目)11以降の重なっている複数のシートよりも、先に切れることとなる。」 「 [図:0001398228000001.jpg] 」(【図4】) 「【0022】 図5に、本発明の冊子体の一例から、一側縁に平行な方向にシートを切る場合の概略図を示した。また、図6は、図5の拡大図である。 図5では、一側縁に平行な方向にシートを切る場合の自然な人間の手の動きとして、シートをシート面に対して垂直方向にめくるように持ち上げつつ、シート(1枚目)の裏面1Aを一側縁に平行な方向に向けて手で引っ張った態様を示す。 図5および図6に示した冊子体を、シートをめくるように一側縁に平行な方向に引っ張る場合も同様に、貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する形状であるため、シートの一側縁に最も近い(リングに最も近い)突起部分のみに手とリングとの間の張力が集中してかかり、一側縁に平行な向きにシートが裂けることによって突起部分からシートの一側縁に向けて切込みが入る。そのため、シートは貫通孔ごとに1点のみで切れやすく、シート切れ端のリング残りを抑制できる。具体的には、図5および図6では、シート(1枚目)の裏面1Aに配置された1番目の貫通孔2Aは、1番目のリング3Aに最も近い突起部分の1点のみからシートの一側縁に向けて切込みが入った態様が示されている。図5および図6には示していないが、2番目の貫通孔2Bおよび3番目の貫通孔2Cも、それぞれ、2番目のリング3Bおよび3番目のリング3Cに最も近い突起部分の1点のみからシートの一側縁に向けて切込みが入ることとなる。 特に従来の貫通孔の形状が突起を有さない形状(例えば円形)の場合は、一側縁に平行な方向にシートを切るときに貫通孔ごとに2点以上で切れたり、隣合う貫通孔どうしが繋がるように切れたりしやすく、シート切れ端のリング残りが生じやすい。」 「 [図:0001398228000002.jpg] 」(【図6】) このように、本件特許明細書等には、少なくとも1つの突起が一側縁側にあることが記載されている。 したがって、訂正事項2-3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、請求項の削除であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、請求項の削除であるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (6)独立特許要件が課されないこと 本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~5について、請求項3~5は、それぞれ請求項2を引用するものであって、訂正事項2によって、記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項2~5に対応する本件訂正後の請求項2~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 小括 上記のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されないので、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明5」といい、これらをまとめて「本件訂正発明」という。)のうち、削除されていない本件訂正発明2~4は、訂正特許請求の範囲の請求項2~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は、訂正請求人(特許権者)が付与した。 [本件訂正発明2] 少なくとも2枚以上の熱可塑性樹脂シートと、 リングとを有する冊子体であって、 前記熱可塑性樹脂シートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置された熱可塑性樹脂シートであり、 前記シートは、前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満であるシートであり、 前記熱可塑性樹脂シートが下記式1を満たし、 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5 前記熱可塑性樹脂シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある熱可塑性樹脂シートであり、 前記熱可塑性樹脂シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ、 重ねられた前記熱可塑性樹脂シートが、それぞれ前記貫通孔および前記熱可塑性樹脂シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた、 冊子体。 [本件訂正発明3] 前記リングが二重リングである、請求項2に記載の冊子体。 [本件訂正発明4] 前記リングがコイルリングである、請求項2に記載の冊子体。 第4 取消理由の概要 本件特許の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和4年4月26日付け取消理由通知書で、特許権者に通知した取消理由の概要、並びに、本件訂正後の請求項1~5に係る特許に対して、当審が同年8月30日付け取消理由通知書(決定の予告)及び同年12月6日付け取消理由通知書で、特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 なお、令和4年12月6日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由は、同年4月26日付け取消理由通知書で指摘すべきであった事項である。 1 令和4年4月26日付け取消理由通知の概要 (1)取消理由1(特許法第36条第6項第2号違反)について 「1 本件特許発明1について (1)本件特許発明1には、・・・「貫通孔の○○%の長さを示す補助線」との記載では、補助線がどこに位置付けられるのかが本件特許明細書の記載を参酌しても不明確であり、さらに、「前記シートの前記一側縁から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の10%の長さを示す補助線までの領域」及び「前記シートの前記貫通孔の50%の長さを示す補助線から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の110%の長さを示す補助線までの領域」・・・これらの領域がどのように特定されるのか不明である・・・。 そして、当該仮定が誤りであるとした場合、「貫通孔の50%の長さ」が何を意味するのか不明である。 また、本件特許発明1には、シートに配置される2個以上の貫通孔の形状がそれぞれ異なる場合・・・いずれの貫通孔を基準として上記の各「補助線」が設定されるのかが不明である。」 以下、「理由1(1)」という。 「(2)本件特許発明1には、・・・「JIS K7161:1994」は、「プラスチック-引張特性の試験方法」・・・その中で、「引張破壊ひずみ」を規定したものであるから、・・・「プラスチック」以外のものである場合、・・・当該JIS規格との技術的な関係が不明である・・・。 「2 本件特許発明2乃至5について (1)本件特許発明5も、・・・上記1(1)と同様の理由により、明確でない。 (2)また、本件特許発明2も上記1(2)と同様の理由により、明確でなく、・・・本件特許発明3乃至5についても、同様に明確でない。」 以下、「理由1(2)」という。 (2)取消理由2(特許法第36条第6項第1号違反)について 「1 本件特許発明が解決しようとする課題と,その課題を解決するための手段について ・・・ 2 本件特許発明1について (1)発明の詳細な説明には、・・・【表1】の実験例のみが示されている。 そして、【表1】の実験例は、 (a)4.0≦一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≦4.9 の範囲のみで行われている。」 そうすると、本件特許発明1は、【表1】の実験例により、発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない上記(a)以外の範囲、・・・も含むものであることから、・・・上述した課題を解決できていることは、本件特許明細書には説明されているとはいえ・・・ない。」 「(2)(1)で指摘したように、発明の詳細な説明には、・・・【表1】の実験例は、貫通孔の形状が「ひし形」または「円周に複数の突起を有する」形状であるもののみについて行われたものとなっている。 一方、本件特許発明1の・・・「円周に複数の突起を有する」とは、・・・「ひし形」や「円周に複数の突起を有する」形状は、本件特許発明1の「貫通孔の形状」・・・には包含されないものと認められる。 そうすると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において課題を解決するものとして記載されたものではないと認められる。」 以下、「理由2(1)」という。 「3 本件特許発明2乃至5について 本件特許発明2も、上記2(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではなく、・・・本件特許発明3乃至5についても、同様に、発明の詳細な説明に記載したものではない。」 以下、「理由2(2)」という。 2 令和4年8月30日付け取消理由通知(決定の予告)の概要 「1 本件訂正特許発明2について ・・・ そうすると、本件明細書に接する当業者において、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」であれば、上記課題を解決する冊子体を得ることが裏付けられていると認識することは、本件出願時の技術常識を参酌しても、不可能というべきであり、本件明細書の発明の詳細な説明における記載だけでは、本件出願時の技術常識を参酌して、当該数式が示す範囲内であれば,上記課題を解決すると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載しているとはいえず,本件訂正特許発明2の記載が,サポート要件に適合するということはできない。」 なお、この理由は、上記1(2)の「理由2(1)」と同じである。 「 本件訂正特許発明3及び4も、本件訂正特許発明2と同様に、 「1.5≦一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ<4.0」という数値範囲を含むものであり、本件訂正特許発明3及び4も、上記課題を解決し得ない範囲を含むものである。 してみると、本件訂正特許発明3及び4は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」 なお、この理由は、上記1(2)の「理由2(2)」と同じである。 「 ・・・本件訂正特許発明2乃至4は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正特許発明2乃至4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。」 3 令和4年12月6日付け取消理由通知の概要 「●理由1(サポート要件)について ・請求項 2~4 ・・・ 訂正特許請求の範囲の請求項2は、突起について、「前記熱可塑性樹脂シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する熱可塑性樹脂シートであり」とするのみで、配置について特定されていないため、当該請求項2の冊子体のシートを、図4や図6のように引っ張ったときに、シート切れ端のリング残りが抑制されるとはいえない。」 以下、「理由3」という。 第5 取消理由に対する当審の判断 1 理由1(1)について 本件訂正により、請求項1は削除されたことから、当該理由は解消した。 2 理由1(2)について (1)本件訂正後の請求項1について 本件訂正により、請求項1は削除されたことから、当該理由は解消した。 (2)本件訂正後の請求項2~4について 本件訂正前の請求項2の「シート」は、本件訂正により、「熱可塑性樹脂シート」に訂正された。これにより、本件訂正後の請求項2の「熱可塑性樹脂シート」と「プラスチック-引張特性の試験方法」に関する規格である「JIS K7161:1994」との技術的な関係は明確になった。 これにより、本件訂正後の請求項2を引用する請求項3、4も明確になった。 よって、当該理由は解消した。 (3)本件訂正後の請求項5について 本件訂正により、請求項5は削除されたことから、当該理由は解消した。 3 理由2(1)について 本件訂正により、請求項1は削除されたことから、当該理由は解消した。 4 理由2(2)について (1)本件訂正後の請求項2について ア 本件明細書の記載事項 本件特許明細書には以下のとおり記載されている。 「【背景技術】 【0002】 ノートおよびシステム手帳などの冊子体として、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートを重ね合わせてリングで綴じた冊子体が知られている(特許文献1および2参照)。 【0003】 特許文献1には、冊子体のサイズと、貫通孔のピッチを特定の範囲にした冊子体が記載されている。 特許文献1によればこのような構成により、一種類の簡単な貫通孔付き冊子体で多様なファイルに綴じることができることが記載されている。また、特許文献1には、種々の補強対策により用紙の貫通孔部が損傷することを防止できると記載されている。 【0004】 特許文献2には、フィルムとノート用紙を交互に綴じたノートであって、ノート用紙を切り離し可能にするためにリング等によって綴じるフィルムと、ノート用紙を交互に綴じたノートが記載されている。 特許文献2によればこのような構成により、ノート用紙と透明フィルムを交互に綴じれば、ノート用紙に記載されているものを添削するとき、透明フィルムに添削内容を記載し、ノート用紙が汚れることを防ぐことができると記載されている。また、ノート用紙は、リングから破り切り離すことができることも記載されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】実開平1-145461号公報 【特許文献2】実用新案登録第3182721号 【特許文献3】実開昭63-093173号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明者が、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートを重ね合わせてリングで綴じた冊子体から、シートを切り取ろうとしたところ、一側縁に平行な方向(貫通孔が並んでいる方向)にシートを引っ張ると非常に切り取りにくいことがわかった。このとき、シートが伸びて貫通孔が変形していた。 さらに、シートが切れた場合にシート切れ端のリング残りが多く生じることもあった。 【0007】 本発明が解決しようとする課題は、リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に切れやすく、かつ、切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できるシート、および、このシートを有する冊子体を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らが鋭意検討を進めたところ、一側縁に沿って貫通孔が並んで配置されたシートの一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみを特定の範囲に制御し、一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみと一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみと の比率を特定の範囲に制御し、かつ貫通孔の形状が突起を有する形状である場合に、リングで綴じられて冊子体にされたとき、一側縁に平行な方向に破断して冊子体とシートとが分離しやすく、かつ、分離した場合にシート切れ端のリング残りを抑制できることを見出すに至った。 なお、特許文献3には、ノートに正方形、矩形、三角、丸、ハート等の形状の貫通孔を設けることが記載されているものの、シートの貫通孔をリングで綴じて冊子体にすること、およびシートの貫通孔を起点としてシートを破断することにより冊子体から切り離すことは検討されていない。 【0009】 上記の課題を解決するための具体的な手段である本発明と本発明の好ましい態様は以下のとおりである。 [1] 一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって、 一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満であり、 下記式1を満たし、 式1 一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有するシート。 [2] 貫通孔の形状のうち、シートの一側縁から一側縁に直交する方向に沿って貫通孔の10%の長さを示す補助線までの領域において、貫通孔の形状が突起を有する、[1]に記載のシート。 [3] 貫通孔の形状のうち、シートの貫通孔の50%の長さを示す補助線から一側縁に直交する方向に沿って貫通孔の110%の長さを示す補助線までの領域において、貫通孔の形状が突起を有しない、[2]に記載のシート。 [4] 貫通孔どうしの間隔が、貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上である、[1]または[2]に記載のシート。 [5] 少なくとも2枚以上の[1]~[4]のいずれか一項に記載のシートと、 リングとを有し、 シートは互いに貫通孔の位置を一致させて重ねられ、 重ねられたシートが、それぞれ貫通孔およびシートの一側縁を通るリングで綴じられた、冊子体。 [6] リングが二重リングである、[5]に記載の冊子体。 [7] リングがコイルリングである、[5]に記載の冊子体。 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に裂けやすいため冊子体からシートを切り取りやすく、かつ、冊子体からシートを切り取った場合にシート切れ端のリング残りを抑制できるシート、および、このシートを有する冊子体を提供できる。」 「【0013】 [シートおよび冊子体] 本発明のシートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって、 一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満であり、 下記式1を満たし、 式1 一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有するシートである。 このような構成により、リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に裂けることによって冊子体からシートを切り取りやすく、かつ、冊子体からシートを切り取った場合にシート切れ端のリング残りを抑制できるシートを提供することができる。 【0014】 本発明の冊子体は、少なくとも2枚以上の本発明のシートと、 リングとを有し、 シートは互いに貫通孔の位置を一致させて重ねられ、 重ねられたシートが、それぞれ貫通孔およびシートの一側縁を通るリングで綴じられた、冊子体である。 以下、本発明のシートおよび冊子体の好ましい態様について説明する。」 「【0022】 図5に、本発明の冊子体の一例から、一側縁に平行な方向にシートを切る場合の概略図を示した。また、図6は、図5の拡大図である。 図5では、一側縁に平行な方向にシートを切る場合の自然な人間の手の動きとして、シートをシート面に対して垂直方向にめくるように持ち上げつつ、シート(1枚目)の裏面1Aを一側縁に平行な方向に向けて手で引っ張った態様を示す。 図5および図6に示した冊子体を、シートをめくるように一側縁に平行な方向に引っ張る場合も同様に、貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する形状であるため、シートの一側縁に最も近い(リングに最も近い)突起部分のみに手とリングとの間の張力が集中してかかり、一側縁に平行な向きにシートが裂けることによって突起部分からシートの一側縁に向けて切込みが入る。そのため、シートは貫通孔ごとに1点のみで切れやすく、シート切れ端のリング残りを抑制できる。具体的には、図5および図6では、シート(1枚目)の裏面1Aに配置された1番目の貫通孔2Aは、1番目のリング3Aに最も近い突起部分の1点のみからシートの一側縁に向けて切込みが入った態様が示されている。図5および図6には示していないが、2番目の貫通孔2Bおよび3番目の貫通孔2Cも、それぞれ、2番目のリング3Bおよび3番目のリング3Cに最も近い突起部分の1点のみからシートの一側縁に向けて切込みが入ることとなる。 特に従来の貫通孔の形状が突起を有さない形状(例えば円形)の場合は、一側縁に平行な方向にシートを切るときに貫通孔ごとに2点以上で切れたり、隣合う貫通孔どうしが繋がるように切れたりしやすく、シート切れ端のリング残りが生じやすい。」 「【0038】 (シートの引張破壊ひずみ) 本発明のシートは、一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満であり、100%以上、200%未満であることが好ましく、150~190%であることがより好ましい。一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみが上限値以下であることが、リングで綴じられて冊子体にされた場合にシートが一側縁に直交する方向に裂けやすく、シートが切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できる観点から好ましい。一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみが下限値以上であることが、通常の使用態様におけるシートの切れにくさの観点から好ましい。 【0039】 本発明のシートは、一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみが15~150%であることが好ましく、20~100%であることがより好ましく、30~50%であることが特に好ましい。一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみが上限値以下であることが、リングで綴じられて冊子体にされた場合にシートが一側縁に平行な方向に裂けやすく、シートが切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できる観点から好ましい。一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみが下限値以上であることが、通常の使用態様におけるシートの切れにくさの観点から好ましい。 【0040】 本発明のシートは、下記式1を満たす。 式1 一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 式1を満たすことで、リングで綴じられて冊子体にされた場合にシートが一側縁に平行な方向に裂けやすくなる。 一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみの値は、1.5~15であることが好ましく、2~12であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましい。伸びやすいシートに筆記したとき、シートが伸びて筆記しにくくなることがあるため、一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみの値が上限値以下であることが、筆記性の観点から好ましい。」 「【実施例】 【0053】 以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。 【0054】 [測定方法] <引張破壊ひずみおよび引張破壊応力> シートの引張破壊ひずみおよび引張破壊応力を、JIS K7161:1994に従って測定した。 【0055】 [比較例1] (株)大創産業から市販されている耐水メモ帳80枚を用いた。耐水メモ帳80枚は、一側縁に平行な方向に7個の貫通孔が並んで配置されたシートとリングとを有する冊子体である。 シート(本体)の材質は、炭酸カルシウムおよびHDPE(High Density Polyethylene、高密度ポリエチレン)樹脂である。耐水メモ帳80枚を構成するシートの物性を測定し、下記表1に示した。 貫通孔の形状は、円形であり、突起を有していない(5μm未満の長さの円周の凹凸は、突起としてみなさないこととした)。 貫通孔どうしの間隔は、貫通孔の幅未満である。 リングはスチール製であり、二重リングのコイルリングである。 【0056】 [実施例1] <シートの製造> 熱可塑性樹脂としては次のものを使用した。 (1)プロピレン単独重合体1:商品名「ノバテックPP MA-8」、日本ポリプロ社製、融点164℃ (2)プロピレン単独重合体2:商品名「ノバテックPP MA-3」、日本ポリプロ社製、融点165℃ プロピレン単独重合体1を67質量%、高密度ポリエチレン10質量%、および平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末23質量%よりなる樹脂組成物(a)を、押出機を用いて260℃で溶融混練したのち、ダイよりフィルム状に押し出し、約50℃の温度となるまでフィルムを冷却した。このフィルムを約140℃に再度加熱したのち、ロール群の周速度を利用してフィルム搬送方向(縦方向)に5倍延伸して、コア層となる一軸延伸フィルムを得た。 一方、プロピレン単独重合体2を51.5質量%、高密度ポリエチレン3.5質量%、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末42質量%、および平均粒径0.8μmの酸化チタン粉末3質量%よりなる樹脂組成物(b)を別の押出機を用いて250℃で溶融混練し、これを上記一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、表面層/コア層(b/a)の積層体を得た。 さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物(b)を250℃で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(b/a)のコア層(a)側の面に積層して、表面層/コア層/裏面層の三層構造の積層体(b/a/b)を得た。 この三層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に9倍延伸し、次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃迄冷却し耳部をスリットして厚さ60μmの熱可塑性樹脂フィルム(貫通孔無しのシート(I))を得た。貫通孔無しのシート(I)の空孔率は、34%であった。 得られた厚さ60μmの貫通孔無しのシート(I)の物性を測定し、実施例1のシートの物性として下記表1に示した。 貫通孔無しのシート(I)に対し、1辺が4mm、向かい合う頂点の角度が60°および120°のひし形の貫通孔を、貫通孔がシート一側縁に平行な方向に7個並んで配置されるように、パンチ機で設けた。パンチ機には、ひし形形状の刃がついており、貫通孔無しのシート(I)を10枚重ね、円周にひし形形状の刃を押し当てて貫通させることにより、上述の形状の貫通孔を形成した。 このひし形の貫通孔は、貫通孔の形状のうち、シートの一側縁から貫通孔の10%の長さまでの領域において、貫通孔の形状が突起を1つのみ有する形状であった。また、一側縁に平行な方向の対角線が一側縁に直交する方向の対角線よりも短いひし形となるように貫通孔を設けた。ひし形の貫通孔の形状の概略は、図2の貫通孔2の形状のとおりであった。 このひし形の貫通孔は、貫通孔の形状のうち、シートの一側縁から貫通孔の10%の長さまでの領域において、貫通孔の形状が突起を1つのみ有する形状であった。また、一側縁に平行な方向の対角線が一側縁に直交する方向の対角線よりも短いひし形となるように貫通孔を設けた。ひし形の貫通孔の形状の概略は、図2の貫通孔2の形状のとおりであった。 得られたシートを実施例1のシートとした。 【0057】 <冊子体の製造> 10枚の実施例1のシートを互いに貫通孔の位置を一致させて重ね、二重リングのコイルリングで綴じて、冊子体を製造した。 得られた冊子体を実施例1の冊子体とした。 【0058】 [実施例2~4] 実施例1の貫通孔無しのシート(I)の製造において、各層押出機の吐出量を変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ80μmの貫通孔無しのシート(II)を得た。 実施例1の貫通孔無しのシート(I)の製造において、各層押出機の吐出量および正系速度を変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ95μmの貫通孔無しのシート(III)および厚さ110μmの貫通孔無しのシート(IV)を得た。 得られた貫通孔無しのシート(II)~(IV)の物性を測定し、下記表1に示した。 貫通孔無しのシート(I)の代わりに、貫通孔無しのシート(II)~(IV)を用いた以外は実施例1と同様にして貫通孔を設け、実施例2~4のシートを得た。 実施例1のシートの代わりに、実施例2~4のシートを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の冊子体を得た。 【0059】 [実施例1A] 貫通孔無しのシート(I)に対し、貫通孔の形状が円周に複数の突起を有する形状であり、突起の長さが20.0μmである貫通孔を、貫通孔が一側縁に平行な方向に7個並んで配置されるように、パンチ機で設けた。 パンチ機には、円周に複数の突起を有する形状の刃がついており、貫通孔無しのシート(I)を10枚重ね、円周に複数の突起を有する形状の刃を押し当てて貫通させることにより、上述の形状の貫通孔を形成した。 上述の形状の貫通孔は、貫通孔の形状のうち、シートの一側縁から貫通孔の10%の長さまでの領域において、貫通孔の形状が突起を2つ以上有する形状であった。上述の形状の貫通孔の形状の概略は、図1の貫通孔2の形状のとおりであり、ぎざぎざの略円形状であった。 得られたシートを実施例1Aのシートとした。 【0060】 10枚の実施例1Aのシートを互いに貫通孔の位置を一致させて重ね、それぞれの貫通孔を独立した一重リングで綴じて、冊子体を製造した。 得られた冊子体を実施例1Aの冊子体とした。 【0061】 [実施例2A~4A] 貫通孔無しのシート(I)の代わりに、貫通孔無しのシート(II)~(IV)を用いた以外は実施例1Aと同様にして貫通孔を設け、実施例2A~4Aのシートを得た。 実施例1Aのシートの代わりに、実施例2A~4Aのシートを用いた以外は実施例1Aと同様にして、実施例2A~4Aの冊子体を得た。 【0062】 [評価] <切れやすさ> (一側縁に直交する方向) 各実施例および比較例の冊子体から、1枚のシート1を、図3に示すようにシートの一側縁に直交する方向に向けて、手で引っ張った。 「切れやすい」:出来るだけ多くの貫通孔に応力がかかるようにした状態から一気に引っ張る方法で5回シートを引っ張った際に4回以上、切れる。 「切れにくい」:出来るだけ多くの貫通孔に応力がかかるようにした状態から一気に引っ張る方法で5回シートを引っ張った際に4回未満しか切れない。 引っ張るときの速度はおおむね100~150m/minである。 得られた結果を、下記表1に記載した。 【0063】 (一側縁に平行な方向) 各実施例および比較例の冊子体から、1枚のシート1を、図5に示すようにシートの一側縁に平行な方向に向けて、右手で左から右に引っ張った。 「切れやすい」:最も左の貫通孔に応力がかかるようにした状態から一気に引っ張る方法で5回シートを引っ張った際に4回以上、切れる。 「切れにくい」:最も左の貫通孔に応力がかかるようにした状態から一気に引っ張る方法で5回シートを引っ張った際に4回未満しか切れない。 引っ張るときの速度はおおむね100~150m/minである。 得られた結果を、下記表1に記載した。 【0064】 <シート切れ端のリング残り> 切れやすさの評価を行った際に、切れたシートの切れ端がリングに残るか否かを、目視にて観察した。 「あり」:10回シートを引っ張った際に1回以上、切れたシートの切れ端がリングに残る。 「なし」:10回シートを引っ張った際に0回、切れたシートの切れ端がリングに残る。 得られた結果を、下記表1に記載した。」 「【0065】 【表1】 [図:0001398228000003.jpg] 」 「【0066】 上記表1より、本発明のシートは、リングで綴じられて冊子体にされた場合に、一側縁に直交する方向にも一側縁に平行な方向にも切れやすく、かつ、シートが切れた場合にシート切れ端のリング残りが無いことがわかった。 一方、比較例1より、貫通孔の形状が突起を有さない円状であり、式1を満たさない場合は、リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に裂けにくく、シートが伸びながら貫通孔が変形して切れ、かつ、シートが切れた場合にシート切れ端のリング残りがあることがわかった。 なお、実施例1~4において、二重リングの代わりにコイルリングを用いた場合も、それぞれ実施例1~4と同じ傾向の結果であった。」 イ 発明が解決しようとする課題及び解決手段について 上記アで摘記した本件特許明細書の記載(特に、段落【0006】~【0008】)によれば、従来の、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートを重ね合わせてリングで綴じた冊子体では、シートを切り取ろうとしたところ、一側縁に平行な方向(貫通孔が並んでいる方向)にシートを引っ張ると非常に切り取りにくいとの問題を発明が解決しようとする課題とし(【0006】。以下、「本件課題」という。)、従来技術におけるこのような本件課題の存在にかんがみ、リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に切れやすく、かつ、切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できるシート、および、このシートを有する冊子体を提供することであり、一側縁に沿って貫通孔が並んで配置されたシートの一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみを特定の範囲に制御し、一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみと一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみとの比率を特定の範囲に制御し、かつ貫通孔の形状が突起を有する形状とすることで、当該本件課題を解決することができることを見い出したことが記載されていると認められる。 そして、段落【0053】~【0066】に、一側縁に直交する方向及び一側縁に平行な方向に切れやすく、シート切れ端のリング残りが無い冊子体が得られる実施例として、一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみが4.0以上の実施例(実施例1では4.8、実施例2では4.3、実施例3では4.0、実施例4では4.9、実施例1Aでは、4.8、実施例2Aでは4.3、実施例3Aでは4.0、実施例4Aでは4.9)が記載されており、一側縁に平行な方向に切れにくく、シート切れ端のリング残りがある冊子体となる比較例として、一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみが0.3の場合の比較例1が記載されている。 ウ 令和4年10月26日提出の意見書でする特許権者の釈明 「このように、訂正請求項2に記載される発明(以下、「訂正発明2」という)は、熱可塑性樹脂シートの「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊」が1.5以上であることにより、該シートが、一側縁に直交する方向よりも平行な方向に切れやすい(裂けやすい)点に特徴があり、こうした構成により、「リングで綴じられて冊子体にされた場合に、一側縁に平行な方向に切れやすく、かつ、切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できる」という課題を解決できるものです。そして、このことは、本件特許明細書において、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ」を4.0以上とした実施例1~4、実施例1A~4Aで実際に確認されています。一方、「1.5≦一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ<4.0」の範囲については、明細書に実施例は示されておりませんが、この範囲に含まれるシートも、一側縁に直交する方向よりも平行な方向の方が切れやすいという点で、各実施例のシートと共通しています。そのため、段落[0040]の数値範囲についての記載も参照すれば、「1.5≦一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ<4.0」の範囲においても、各実施例と同様に、上記のメカニズムが働いて「一側縁に平行な方向に切れやすく、かつ、切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できる」という効果が得られると、合理的に推測することができます。そして、本意見書とともに提出した実験成績証明書においては、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」の下限値「1.5」を採用した追試1のシートが、下限値を下回る「1.1」を採用した比較追試1のシートとは異なり、引っ張る方向に関わらずシートを確実に切ることができ、シートが切れた場合にシート切れ端のリング残りが抑えられることが実験により立証されています。この実験結果から、訂正請求項2で規定している「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」の全範囲において、訂正発明2の課題が解決されることは明らかです。」 「 [図:0001398228000004.jpg] 」(乙第1号証の表A) エ 発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明との関係 (ア)パラメータ発明のサポート要件について 特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには、明細書の発明の詳細な説明に、当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきところ、本件訂正特許発明2は、特性値を表す技術的な変数(パラメータ)を用いた一定の数式により示される範囲をもって特定した物を構成要件とするものであり、いわゆるパラメータ発明に関するものであるところ、このような発明において、特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するためには、発明の詳細な説明は、その数式が示す範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的な意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数式が示す範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である。 (イ)上記(ア)の要件の検討 そこで、本件特許明細書の記載が、本件訂正特許発明2の記載との関係で、上記(ア)のサポート要件に適合するか否かについてみると、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ」というパラメータは、値が大きいほど、リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に切れやすく、かつ、切れた場合にシート切れ端のリング残りを抑制できることは明らかであるから、上限値を限定することには意味はない。また、下限値についても、実施例1~4、実施例1A~4Aと同じ製造方法で、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ」のみを異ならせる場合、1.5~4.0の間のものについて、その一部の値において、「切れやすさ」が「一側縁直行方向」、「一側縁平行方向」のいずれの方向についても、「切れにくい」とならないことは当業者であれば理解できる。そして、【0040】に「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみの値は、1.5~15であることが好ましく」とあることから、本件特許明細書において、「一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ」が「1.5」の場合は考慮されているといえる。そうすると、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されているといえ、特許権者が、令和4年10月26日提出の意見書でする釈明(補足的に乙第1号証の実験証明書を用いてする釈明)には理由がある。 そうすると、本件訂正後の請求項2は、特許明細書等に記載された範囲内の事項のものである。 よって、本件訂正により、当該理由は解消した。 (2)本件訂正後の請求項3、4について 本件訂正特許発明2を引用する本件訂正特許発明3及び4も、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 (3)本件訂正後の請求項5について 本件訂正により、請求項5は削除されたことから、当該理由は解消した。 5 理由3について (1)理由3を解消したことについて 本件特許明細書等には、【0021】、【0022】と共に【図4】、【図6】が記載されている(上記「第2」3(4)ウ参照)。 このように、本件訂正発明2によって、「前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある」ことで、上記4(1)イの本件課題を解決することができることは明らかである。 よって、本件訂正により、当該理由は解消した。 (2)申立人の主張について ア 申立人の主張の概要 申立人は、上記理由3に関し、本件訂正後の請求項2について、次のように主張する。 シート切れ端のリング残りを抑制するためには、突起の配置について、「前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある」点だけではなく、一側縁に最も近い突起を起点にシートが裂ける点等の規定を要すると思料する。(主張1) 「少なくとも1つの突起」を有する貫通孔の形状が「ひし形」である場合、冊子体を、「シートをめくるように一側縁に平行な方向に引っ張る」と、一側縁に平行な力の方向に沿って、「シートの一側縁に最も近い(リングに最も近い)突起部分」ではなく、一側縁と直交する方向の側縁に最も近い突起のみ(参考図の赤丸部)に力がかかり、そこから一側縁に平行な向きにシートが裂けるはずである。その結果、一側縁側にはシート切れ端のリング残りが生じ得る。そうすると、シート切れ端のリング残りを抑制するためには、突起が配置される部位だけではなく、突起が配置されない部位の特定をも要すると思料する。(主張2) イ 申立人の主張の検討 主張1について、本件訂正後の請求項2は、「前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満である」「少なくとも2枚以上の熱可塑性樹脂シートと、リングとを有する冊子体」であって、「前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」を基本構成とするものである。これにより、本件特許の【図5】、【図6】のように、一側縁に直交する方向に、熱可塑性シートが避けやすくなるものである。そして、本件特許明細書【0021】、【0022】、【図5】、【図6】(上記「第2」3(4)ウ参照)のように引っ張ると、一側縁側にある突起に手とリングとの間の張力が集中してかかり、上記4(1)イの本件課題を解決することができることは明らかである。 よって、請求人の、一側縁に最も近い突起を起点にシートが裂ける点等の規定を要するとの主張に、理由はない。 主張2について、本件訂正後の請求項2は、「物」の発明であって、冊子体のシートの引っ張り方に関する方法の発明ではない。また、本件特許明細書では、【0022】、【図5】、【図6】の説明のような引っ張り方を想定しており、このような引っ張り方をすることで、上記4(1)イの本件課題を解決することができることは明らかである。 よって、申立人の主張に理由はない。 第6 特許異議申立人の主張について 1 申立書における主張の概要 当審の取消理由で採用しなかった、申立人の取消理由は、次のとおりである。 (1)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証~甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正前の請求項2~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証~甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特開2013-123865号公報 甲第2号証:特開平7-32764号公報 甲第3号証:実願昭57-60138号(実開昭58-163274号)のマイクロフィルム 甲第4号証:特開2015-77791号公報 「甲第1号証」~「甲第4号証」を、以下、それぞれ「甲1」~「甲4」という。 3 甲号証に記載されている事項 (1)甲1について ア 甲1に記載されている事項 甲1には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 用紙の綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に配置された綴じ孔列を備えた紙製品であって、 前記綴じ孔は、長手方向と短手方向に所定の長さを有し、前記綴じ孔の長手方向が前記綴じ込み側端縁と略平行の方向であることを特徴とする紙製品。 【請求項2】 請求項1記載の綴じ孔列を備えた紙製品において、 前記綴じ孔が、略楕円弧と任意の多角線又は略直線との組合せからなることを特徴とする紙製品。」 「【0001】 本発明は、紙製品の綴じ孔部分において容易に効率よく破断することができる紙製品に関する。 【背景技術】 【0002】 ノートブックやカレンダー等のスパイラルリングやダブルリング等といった各種の綴じ部材を備えた紙製品において、綴じられた紙製品を破り取る行為が広く行われている。そして、この種の綴じ部材を備えた紙製品として、従来から種々の構造のものが知られている。」 「【課題を解決するための手段】 【0013】 このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る綴じ孔列を備えた紙製品は、用紙の綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に配置された綴じ孔列を備えた紙製品であって、前記綴じ孔は、長手方向と短手方向に所定の長さを有し、前記綴じ孔の長手方向が前記綴じ込み側端縁と略平行の方向であることを特徴とする。」 「【0024】 【図1】本発明に係る綴じ孔列を備えた紙製品の一実施例を示し、三角形の綴じ孔列を備えた紙製品の要部拡大図である。 【図2】図1において用紙と綴じ部材を組み合わせた状態の要部拡大図である。 ・・・」 「【0027】 図1において、符号11は、本発明に係る綴じ孔列を備えた紙製品10を構成する用紙であり、該紙製品10はこの用紙11に綴じ孔を穿孔することにより構成される。 【0028】 前記用紙11には、綴じ孔20が穿孔されており、前記綴じ孔20はこの用紙11の一辺と略平行に1列に穿孔されている。 【0029】 また、この綴じ孔20には、前記用紙11の綴じ孔列を備える一辺と平行な略直線からなる縁部21が設けられている。 【0030】 前記綴じ孔列を備えた紙製品10は、前記1列に穿孔された綴じ穴20に綴じ部材24を介して綴じられるように構成されている。この綴じ部材24にはスパイラルリング、ダブルリングなどの綴じ孔の中を湾曲した部材が貫通する構造のものを用いることができる。」 「 [図:0001398228000005.jpg] 」(【図1】) 「 [図:0001398228000006.jpg] 」(【図2】) 【図1】及び【図2】から、用紙は、三角形の綴じ孔の略直角の角の部分が、用紙の縁部側にある用紙であることが看取される。 【0030】の記載、【図2】から、甲1には、用紙は互いに綴じ孔の位置を一致させて重ねられ、重ねられた用紙がそれぞれ綴じ孔および用紙の縁部を通る綴じ部材で綴じられること記載されているといえる。 イ 甲1に記載されている発明 上記アの記載から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「 用紙の綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に配置された綴じ孔列を備えた紙製品であって(【請求項1】)、 綴じ孔は、長手方向と短手方向に所定の長さを有し、綴じ孔の長手方向が綴じ込み側端縁と略平行の方向であり(【請求項1】)、 綴じ孔が、略楕円弧と任意の多角線又は略直線との組合せからなり(【請求項2】)、 綴じ孔列を備えた紙製品を構成する用紙であり、この用紙に綴じ孔を穿孔することにより構成され(【0027】)、 用紙には、綴じ孔が穿孔されており、綴じ孔はこの用紙の一辺と略平行に1列に穿孔され(【0027】)、 綴じ孔には、用紙の綴じ孔列を備える一辺と平行な略直線からなる縁部が設けられ(【0028】)、 1列に穿孔された綴じ穴に綴じ部材を介して綴じられ、この綴じ部材にはスパイラルリング、ダブルリングなどの綴じ孔の中を湾曲した部材が貫通する構造のものが用いられ(【0030】)、 用紙は、三角形の綴じ孔の略直角の角の部分が、用紙の縁部側にある用紙であり(【図1】、【図2】)、 用紙は互いに綴じ孔の位置を一致させて重ねられ、重ねられた用紙がそれぞれ綴じ孔および用紙の縁部を通る綴じ部材で綴じられる(【0030】、【図2】)、 紙製品10。」 (2)甲2について ア 甲2に記載されている事項 甲2には、次の事項が記載されている。 「【0006】 【作用及び効果】本発明においては、多数の長形の孔が孔列をなしており、且つ、1つの孔の両端を通ってその一端から外方に延びる直線が隣接する孔の両端を結ぶ直線と交るように、孔がチドリがけ状に配置されているため、前記孔の一端から外方に延びる線にほぼそってシートの破断が生じて隣接する孔に対するので、シートを容易に切り離すことができる。」 「【0008】 【実施例】次に、図面に言及しながら本発明をさらに具体的に説明する。図1は、本発明の記録票組の全体を示す斜視図であり、個々の記録票1が多数、好ましくはその裏面に塗布された粘着剤により、相互に付着されている。粘着剤塗布部2は記録票の一部分をなし、好ましく帯状である。」 「【0010】多数の孔によって構成される孔列15に対してほぼ直角方向(図3における矢印Yの方向)に記録票(シート)を引っ張った場合、シートの破断はほぼ線6にそって生じ、隣接する孔に達する。この破断が順次進行することにより、シートの破断は全体として図3における矢印Xの方向に生ずる。但し、この逆の方向には生じない。」 「【0012】本発明において、シートに形成する孔は長形であり、且つ中心部が端部より幅広の、いわゆる中太状であれば、その形状は限定されず、長円形のほかに例えば図5に示すように種々の形状をとることができる。図5において、例えば4番に示す形状のごとく、1つの端側に複数の末端が存在する場合には、その内隣接する孔に近い方の末端を、本発明における末端と考えればよい。」 「 [図:0001398228000007.jpg] 」(【図1】) 「 [図:0001398228000008.jpg] 」(【図3】) 「 [図:0001398228000009.jpg] 」(【図5】) イ 甲2に記載されている技術的事項 上記アの記載から、甲2には、次の技術的事項(以下、「技術的事項2」という。)が記載されているといえる。 「 個々の記録票1が多数、好ましくはその裏面に塗布された粘着剤により、相互に付着されている記録票組であって(【0008】、【図1】)、多数の孔によって構成される孔列15に対してほぼ直角方向(図3における矢印Yの方向)に記録票(シート)を引っ張った場合、シートの破断はほぼ線6にそって生じ、隣接する孔に達し(【0010】、【図3】)、 シートに形成する孔は長形であり、長円形のほかに種々の形状をとることができること(【0012】、【図5】)。」 (3)甲3について ア 甲3に記載されている事項 甲3には、次の事項が記載されている。 「各綴具用穴(3)より紙面外側に向かってミシン目を入れたノート。」(実用新案登録請求の範囲) 「本考案のミシン目の入ったノート紙面の実施例を説明すると、第2図のごとく、ノート紙面の各綴部用穴3より、紙面外側に向かって、ミシン目が入っている。」(2頁7~10行) 「このノート紙面が一定枚数綴用金具をとおして綴られて、ノートを成す。綴金具としては独立リング状針金でもよいし、スパイラル状針金でもよい。 ノート紙面を切り離すときは、ノート紙面を持って綴金具と反対方向に引張る。そうすると、綴金具がノート紙面の穴3の切込み部にくい込み、更にツナギ部分を切って、又、切込み部を通り、紙面外側に出る。すなわち、綴金具よりノート紙面が分離したことになる。 このように、ノート紙面を持って引張ればよいのであるから、きわめて簡単に、紙面綴部よりノート紙面を切離すことができる。」(2頁19行~3頁11行) 「 [図:0001398228000010.jpg] 」(第2図) イ 甲3に記載されている技術的事項 上記アの記載から、甲3には、次の技術的事項(以下、「技術的事項3」という。)が記載されているといえる。 「 各綴具用穴より紙面外側に向かってミシン目を入れたノートであって、 ノート紙面が一定枚数独立綴用金具をとおして綴られており、 ノート紙面の各綴部用穴より、紙面外側に向かって、ミシン目が入っており、 ノート紙面を切り離すときは、ノート紙面を持って綴金具と反対方向に引張ると、綴金具がノート紙面の穴の切込み部にくい込み、更にツナギ部分を切って、又、切込み部を通り、紙面外側に出ること。」 (4)甲4について ア 甲4に記載されている事項 甲4には、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、記録用紙、および該記録用紙を用いたラベルに関し、特に、熱可塑性樹脂を主材料とする支持体を有する記録用紙、および該記録用紙を用いたラベルに関する。」 「【0032】 <支持体> 支持体は、記録用紙に機械強度やコシ等の印刷適性、耐水性、耐薬品性を付与するとともに、必要に応じて不透明性等を付与するものである。 本発明では、熱可塑性樹脂を主材料として支持体を構成する。 ここで、「熱可塑性樹脂を主材料とする」とは、支持体全量に対する熱可塑性樹脂の含有率が50質量%以上であることを意味する。支持体の主材料が熱可塑性樹脂であることにより、印刷適性および耐薬品性を有し、特に耐水性に優れた支持体を得ることができる。 【0033】 (熱可塑性樹脂) 支持体に用いられる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1~8)等の(メタ)アクリル酸誘導体のホモポリマー及び共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。 【0034】 これらの熱可塑性樹脂の中でも、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂等のように、融点が130~280℃の範囲の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、耐水性や耐薬品性、生産コスト等の観点からポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましく、フィルムの成形性の観点からポリプロピレン系樹脂を用いることが特に好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体、シンジオタクティック重合体等を用いることが好ましい。またプロピレンを主体とし、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンとを共重合させた様々な立体規則性を有する共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。 【0035】 (無機微粉末および有機フィラー) 支持体は、無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、支持体を白色化、不透明化させることができ、文字や画像等を印刷するのに好適な記録用紙を得ることができる。特に、無機微細粉末や有機フィラーが添加された熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる支持体は、無機微細粉末や有機フィラーを核とした微細な空孔が内部に多数形成されており、これによって白色化および不透明化の度合いが大きく、しかも軽量であるという利点を有する。 【0036】 無機微細粉末としては、特に限定されないが、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、硫酸バリウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素等を挙げることができる。また、これらの無機微細粉末を、脂肪酸、高分子界面活性剤、帯電防止剤等で表面処理したものであってもよい。これらの中でも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルクが、空孔成形性が良く、安価であることから好ましい。 【0037】 有機フィラーとしては、特に限定されないが、支持体に用いる熱可塑性樹脂と非相溶であり、融点が120~300℃、ガラス転移温度が120~280℃であり、さらに熱可塑性樹脂との溶融混練条件下で微分散するものであることが好ましい。例えば、支持体に用いる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等を挙げることができる。また、メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂の微粉末を有機フィラーとして用いてもよい。 これらの無機微細粉末および有機フィラーは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、無機微細粉末と有機フィラーとを組み合わせて使用してもよい。 【0038】 無機微細粉末及び有機フィラーの体積平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。特に、体積平均粒子径が0.1μm以上であることにより、無機微細粉末又は有機フィラーと、熱可塑性樹脂との混合を容易に行うことが可能になる。一方、無機微粉末や有機フィラーを添加した熱可塑性フィルムを延伸する際、シート切れや表面層の強度低下等を抑える観点からは、無微細粉末及び有機フィラーの体積平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。 ここで、無機微細粉末及び有機フィラーの体積平均粒子径とは、粒子計測装置により測定した粒度分布において、累積体積が全体積の50%に当たる座標点での粒子径(累積50%粒径)である。粒子径測定装置としては、例えば、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(日機装社製、商品名)を用いることができる。 また、熱可塑性樹脂フィルム中に分散した有機フィラーの平均粒子径は、熱可塑性樹脂フィルムの断面を電子顕微鏡によって観察し、その観察領域に存在する有機フィラーの少なくとも10個の粒子径を計測し、その平均値を算出することによって求めることができる。 【0039】 支持体が無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含む場合、支持体における無機微細粉末および有機フィラーの総含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、支持体に十分な不透明性を付与することができる。また、支持体における無機微細粉末および有機フィラーの総含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、支持体に適度な強度を付与して記録用紙を取扱い易いものにすることができる。 また、支持体の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、支持体は、ポリプロピレン系樹脂を50~80質量%含み、無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を20~50質量%含むことが好ましい。 【0040】 (分散剤) 支持体には、必要に応じて、無機微細粉末および有機フィラーの分散性を向上させる分散剤を添加してもよい。 分散剤としては、支持体に用いられる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、酸変性ポリオレフィン、シラノール変性ポリオレフィン等を挙げることができる。この中でも、分散剤としては、酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸をランダム共重合又はグラフト共重合した無水カルボン酸基含有ポリオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸をランダム共重合又はグラフト共重合したカルボン酸基含有ポリオレフィン、グリシジルメタクリレートをランダム共重合又はグラフト共重合したエポキシ基含有ポリオレフィン等を挙げることができる。 分散剤の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、エチレン-メタクリル酸ランダム共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレートランダム共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレートグラフト共重合体、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン等を挙げることができる。この中でも無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが熱可塑性樹脂への相溶性や無機微細粉末等を分散させ易いことから好ましい。 【0041】 (その他の添加剤) 支持体には、必要に応じて公知の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料、可塑剤、結晶核剤、離型剤、難燃剤等を挙げることができる。特に、支持体を耐久資材として使用する場合には酸化防止剤や光安定剤等を添加することが好ましい。 酸化防止剤としては、立体障害フェノール系化合物等を挙げることができる。熱安定剤としては、リン系、アミン系の化合物が挙げられる。光安定剤としては、立体障害アミン化合物等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の化合物等を挙げることができる。スリップ剤としては、脂肪酸アミド等を挙げることができる。 これらの添加剤は、支持体と表面処理層との密着を阻害しない範囲で添加することが好ましい。例えば、酸化防止剤を用いる場合、支持体における酸化防止剤の添加量は0.001~1質量%であることが好ましい。また、光安定剤を用いる場合、支持体における光安定剤の添加量は、0.001~1質量%であることが好ましい。 【0042】 (延伸) 支持体は、上記の各成分を混合した樹脂組成物をシート状に成形した後、少なくとも一軸方向に延伸したものであることが好ましい。延伸された支持体は、不透明性が高く、記録用紙の支持体として好適に用いることができる。延伸の方法は、後述する記録用紙の製造方法の欄の(1)支持体製造工程を参照することができる。 【0043】 (層構成) 支持体は単層構造であってもよいし、多層構造であってもよいが、異なる性質を付与した複数の熱可塑性樹脂フィルムを積層した多層構造であることが好ましい。 例えば、支持体を表面層/コア層/表面層の3層の熱可塑性樹脂フィルムよりなる多層構造とし、一方の表面層側の熱可塑性樹脂フィルムに、表面処理層および後述する感熱記録層を設けるのに適した特性を付与し、他方の表面層側の熱可塑性樹脂フィルムに、粘着剤層を設けるのに適した特性を付与することで、感熱記録用紙の支持体と粘着ラベルの支持体を兼ねた支持体として好適なものにすることができる。 また、一方の表面層と他方の表面層の組成や厚さ等を適宜設計することで、支持体自体のカールや、該支持体に表面処理層や感熱記録層を設けた記録用紙のカールを特定の範囲内に制御することができる。また、このような制御によれば、記録用紙に記録面側が反るようなカールを付与することもでき、これによりプリンタでの記録用紙の通紙性を改善することできる。 さらに多層構造の支持体は、その少なくとも1層を、ベタ印刷層や顔料含有層等の隠蔽層にして含むものでもよい。これにより、一方の表面に記録された印刷画像が他方の表面から透けて見えることが抑えられ、また、印刷画像の視認性を向上させることもできる。 また、多層構造の支持体は、そのうち少なくとも一層が延伸フィルムであることが好ましい。これにより、支持体に不透明性を付与することができる。 【0044】 (厚さ) 支持体の厚さは、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。これにより、大型のポスター等として屋外掲示する用途においても十分な剛度が得ることができる。また、支持体の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。これにより、記録用紙が重くなり過ぎることを回避することができる。 【0045】 (空孔率) 本明細書中において支持体の空孔率とは、支持体を厚さ方向に切断した切断面を走査型電子顕微鏡で観察し、その観察領域の全面積に対する空孔が占める割合のことを言う。この空孔率は、具体的には以下のようにして求めることができる。 まず、支持体から任意の一部をサンプルとして切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて、面方向に対する垂直方向(厚さ方向)にサンプルを切断する。そして、その切断面が観察面になるように、サンプルが包埋されたエポキシ樹脂を観察試料台に貼り付け、その観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着する。続いて、走査型電子顕微鏡によって、任意の倍率(例えば、500倍~3000倍)で切断面の空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んで画像処理を行い、観察領域の全面積に対する空孔が占める割合(空孔率)を求める。 そして、本発明では同様の手法で、支持体の任意の10箇所以上、30箇所以内からサンプルを切り取って空孔率を測定し、その平均値を算出して、これを支持体の空孔率とした。 【0046】 支持体の空孔率は、支持体に十分な不透明性を付与する観点から、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。また、支持体の空孔率は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、42%以下であることがさらに好ましく、40%以下であることが特に好ましい。 また記録用紙に、印刷画像の視認性以上に、支持体の透明性に由来する意匠性や機能性を求める場合、支持体の空孔率は10%未満であっても良い。」 「【0091】 上記で得た材料を用いて、以下のとおり実施例1~15および比較例1~6の記録用紙を得て、物性測定や評価に供した。 [実施例1] 第4級アンモニウム塩型共重合体1の固形分濃度2質量%、およびエチレンイミン系重合体の変性体8の固形分濃度0.3質量%を含む水溶液(表面処理層形成用の溶液)を調製した。 上記支持体1の両面に30W/m2/分の強度でコロナ放電処理を施し、次いで支持体1の両面に、上記表面処理層形成用の溶液を、ロールコーターを用いて片面の単位面積(m2)当たり乾燥後の固形分が0.02gとなるように塗工し、60℃のオーブンを介して乾燥させて表面処理層を設けて、実施例1の記録用紙を得た。この記録用紙は長尺のものを得てワインダーにて巻き取り、最終的にはロール状の記録用紙とした。 【0092】 [実施例2~10] 実施例1において、表面処理層(表面処理層形成用の溶液)に用いる第4級アンモニウム塩型共重合体ならびにポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の種類、ならびにこれらの配合量を表2に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に製造して実施例2~10の記録用紙を得た。 【0093】 [実施例11~14] 実施例4において、用いる支持体の種類を表2に記載のものに変更した以外は、実施例4と同様に製造して実施例11~14の記録用紙を得た。」 イ 甲4に記載されている技術的事項 上記アの記載から、甲4には、次の技術的事項(以下、「技術的事項4」という。)が記載されているといえる。 「 支持体を有する記録用紙であって、 支持体には、 熱可塑性樹脂が用いられ、 無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方が含まれ、 必要に応じて、無機微細粉末および有機フィラーの分散性を向上させる分散剤が添加され、 支持体は、上記の各成分を混合した樹脂組成物をシート状に成形した後、少なくとも一軸方向に延伸したものであること。」 4 当審の判断 (1)本件訂正発明1について 本件訂正により削除されたことから、申立ての対象が存在しなくなった。 (2)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2と甲1発明との対比 (ア)甲1発明の「用紙」は、綴じられることから、複数あることは明らかであるから、本件訂正発明2の「少なくとも2枚以上の熱可塑性シート」と、「少なくとも2枚以上のシート」である点で共通する。 (イ)甲1発明の「スパイラルリング、ダブルリングなどの綴じ孔の中を湾曲した部材が貫通する構造のもの」である「綴じ部材」は、本件訂正発明2の「リング」に相当する。 (ウ)甲1発明の「綴じ孔」は、本件訂正発明2の「貫通孔」に相当し、甲1発明の「用紙の綴じ孔列を備える一辺と平行な略直線からなる縁部」は、本件訂正発明2の「一側縁」に相当する。そして甲1発明の「用紙には、綴じ孔が穿孔されており、綴じ孔はこの用紙の一辺と略平行に1列に穿孔され」は、本件訂正発明2の「前記熱可塑性樹脂シートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置された」と、「前記シートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置された」である点で共通する。 (エ)甲1発明の「三角形の綴じ孔の略直角の角の部分」は、本件訂正発明2の「1つの突起」に相当する。甲1発明の「三角形の綴じ孔の略直角の角の部分は、用紙の縁部側にあ」ることは、本件訂正発明2の「前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある」ことに相当する。そして、甲1発明の「用紙は、三角形の綴じ孔の略直角の角の部分が、用紙の縁部側にある用紙であり」は、本件訂正発明2の「前記熱可塑性樹脂シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にある熱可塑性樹脂シートであり」と、「前記シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にあるシートであり」との点で共通する。 (オ)甲1発明の「用紙は互いに綴じ孔の位置を一致させて重ねられ」と、本件訂正発明2の「前記熱可塑性樹脂シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ」とは、「前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ」との点で共通する。 (カ)甲1発明の「重ねられた用紙がそれぞれ綴じ孔および用紙の縁部を通る綴じ部材で綴じられる」と、本件訂正発明2の「重ねられた前記熱可塑性樹脂シートが、それぞれ前記貫通孔および前記熱可塑性樹脂シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた」とは、「重ねられた前記シートが、それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた」との点で共通する。 (キ)甲1発明の「紙製品」は、本件訂正発明2の「冊子体」と、「シートを綴じた物」との点で共通する。 (ク)そうすると、本件訂正発明2と甲1発明とは、次の点で、一致又は相違する。 <一致点> 少なくとも2枚以上のシートと、 リングとを有するシートを綴じた物であって、 前記シートは、一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであり、 前記シートは、前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起が前記一側縁側にあるシートであり、 前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ、 重ねられた前記シートが、それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた、 シートを綴じた物。 <相違点> (相違点1) シートが、本件訂正発明2では、「熱可塑性シート」であるのに対し、甲1発明では「用紙」であって、熱可塑性シートではない点。 (相違点2) 本件訂正発明2は、「前記熱可塑性樹脂シートは、前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満である熱可塑性樹脂シート」であるのに対し、甲1発明は、用紙が、「前記熱可塑性樹脂シートは、前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満である熱可塑性樹脂シート」ではない点。 (相違点3) 本件訂正発明2は、「前記熱可塑性樹脂シート」が「前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」を満たすのに対し、甲1発明は、用紙が「前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ≧1.5」を満すものではない点。 (相違点4) シートを綴じた物が、本件訂正発明2では、「熱可塑性樹脂シート」を有する「冊子体」であるのに対し、甲1発明では、「用紙」を有する「紙製品」である点。 イ 相違点の判断 (ア)相違点1について 技術的事項2及び技術的事項3は、それぞれ、上記3(2)イ及び3(3)イのとおり、どちらも「熱可塑性シート」に関するものではない。このため、甲1発明に、技術的事項2及び技術的事項3を適用しても、上記相違点1の構成には至らない。 また、技術的事項4は、上記3(4)イのとおり、熱可塑性の記録用紙に関するものである。このため、「紙製品」に関する発明である甲1発明と技術分野が異なる。そうすると、甲1発明に、甲4技術的事項を適用する動機付けはない。 そうすると、相違点1の構成は、甲1発明及び技術的事項2~4に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。 また、念のため、技術的事項2を主たる引用発明として、甲1発明及び技術的事項3を適用しても、又は、技術的事項3を主たる引用発明として、甲1発明及び技術的事項2を適用しても、上記相違点1の構成には至らず、さらに、技術的事項4を適用する動機付けはない。また、技術的事項4を主たる引用発明であるとしても、技術分野の異なる甲1発明、技術的事項2、3を適用する動機付けはない。 (イ)相違点2~4について 上記(ア)のとおり、本件訂正発明2の「熱可塑性シート」の点は、甲1発明及び技術的事項2~4に基づいて、当業者が容易に想到することができた事項ではないから、「熱可塑性シート」を相違点の前提とする相違点2~4の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものではないことは明らかである。 (ウ)効果について 本件訂正発明2は、上記相違点1~4の構成とすることで、「リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に平行な方向に裂けやすいため冊子体からシートを切り取りやすく、かつ、冊子体からシートを切り取った場合にシート切れ端のリング残りを抑制できるシート、および、このシートを有する冊子体を提供できる」(本件特許明細書【0010】)という、特有の効果を奏するものである。 (エ)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書で、「前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%未満であるシート」は、甲4のように、本件特許の出願日前に公知であった旨主張する(申立書33~34頁)。しかしながら、本件訂正により、「シート」は、「熱可塑性シート」に減縮されたことから、JIS規格との関係も明確になり、JIS規格とは関係のない「紙製品」の発明である甲1発明との相違が明確になった。そして、甲1発明には、「紙製品」を「熱可塑性シート」を有する冊子体にしようとする動機もないから、申立人の当該主張に理由はない。 ウ 小括 したがって、本件訂正発明2は、甲1発明及び技術的事項2~4に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件訂正発明3~5について 本件訂正発明2を引用する本件訂正発明3、4も、本件訂正発明2の「熱可塑性シート」を備えるものであるから、本件訂正発明2と同じ理由により、甲1発明及び技術的事項2~4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件訂正発明5は、本件訂正により削除されたことから、申立ての対象が存在しなくなった。 5 小括 よって、申立人の進歩性の主張に、理由はない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。 また、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、本件訂正前請求項1及び5は、上記のとおり削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。

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2021-701248

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