特許拒絶査定不服審判
2019-004829
ファイルリフィール
- 審判番号
- 2019-004829
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-173349
- 請求日
- 2019年04月11日
- 審決日
- 2019年06月28日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】テージー株式会社
- 【請求人代理人】松本 秀治
- 審判長/審判官
- 審判長 吉村 尚
- 審判官 塚本 丈二
- 審判官 尾崎 淳史
- 分類
- P18 .121-WY (B42F) / P18 .537-WY (B42F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-173349「ファイルリフィール」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日出願公開、特開2017- 47625、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月2日の出願であって、平成30年8月29日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年10月26日付けで手続補正がされ、平成31年1月7日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年4月11日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において、令和1年5月27日付けで拒絶理由通知がされ、同月28日に提出された手続補正書(以下「本件補正書」という。)により手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、本件補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
合成樹脂製の第1シートと第2シートからなり、
内側に収納部を有する袋状シート体の一側に、前記第1シートと前記第2シートとの重ね合わせ帯部を有し、
該重ね合わせ帯部に、縁からのスリットを有する4個の綴じ孔を形成すると共に、
該綴じ孔の周辺部に、第1シートと第2シートとの溶着補強部を有することで、
該重ね合わせ帯部が、溶着補強部と、溶着補強部が形成されている部分以外とで形成され、
溶着補強部が、綴じ孔の直径を1とすると、長手方向側に2~5の長さであることを特徴とする、ファイルリフィール。」
なお、本願発明2は、本願発明1を、さらに減縮した発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2000-158865号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。先ず、図1~図4に基づき第1の実施の形態について説明すると、11は合成樹脂製の2枚のシート12,13により書類収納部14が形成されてなる書類収納用ホルダーであって、平面形状が矩形を呈し、書類収納用ホルダー11の1側辺に沿って超音波融着により無数のスポット状融着部15を形成してある。詳しくは、書類収納用ホルダー11の1側部(当審注:「1側部」は「1側辺」の誤記と認められる。)において書類収納用ホルダー11を形成する合成樹脂製のシート12または/および13の端部を折り返して3層乃至4層構造とし、この3層乃至4層構造の部分にスポット状融着部15を形成してある。そして、このスポット状融着部15の範囲内で前記1側辺に沿って適当間隔おきにファイル用手段としてほぼT字状に切り込まれた係止部16を形成してある。さらに、前記書類収納用ホルダー11を立てた状態における上端の辺に前記書類収納部14に対し書類17を出し入れするための開口部18を形成してある。
【0008】上記構成において、ファイル用手段としてほぼT字状に切り込まれた係止部16は、円形を呈し外周に両側に張り出す鍔部19を持つ係止具20の前記鍔部19に係止して多数枚の書類収納用ホルダー11を脱着自在に閉じる(当審注:「閉じる」は「綴じる」の誤記と認められる。)ようになっている(図4参照)。図4において、21はファイルの表紙である。
【0009】このように、書類収納用ホルダー11の係止部16を係止具20の鍔部19に係止させるのであるが、係止部16に適度の硬さを備えていないと、係止部16は係止具20の鍔部19から簡単に外れることから、前記係止部16の形成位置に沿って超音波融着により無数のスポット状融着部15を形成して、係止部16を補強したのである。このスポット状融着部15の大きさは書類収納用ホルダー11の大きさや書類収納用ホルダー11の材料となる合成樹脂の種類などによって適宜調整され、スポット状融着部15による補強部の面積に対し、全スポット状融着部15をこの全スポット状融着部15の密度が30~75%の範囲となるように形成することが、補強部の硬さおよび腰の強さから考えて必要とされる。全スポット状融着部15の密度が30%未満であると、補強部の硬さを維持することができず、腰が弱くなり、また75%を超えると補強部が硬くなり過ぎるとともに合成樹脂の劣化が起こるという問題がある。なお、本実施の形態では書類収納用ホルダー11をポリプロピレンからなるシートを材料にして形成した。」
(2)図2
(3)図2からは、T字状に切り込まれた係止部16が、書類収納用ホルダーの縁からのスリットと、該スリットよりも幅広の半円孔からなることが看取できる。
(4)上記(1)で摘記した段落【0007】の「このスポット状融着部15の範囲内で・・・係止部16を形成してある。」という記載について、図2を参酌すれば、係止部16が形成されている範囲は、「無数のスポット状融着部15が形成されている領域の範囲」の意味であることは明らかである。
(4)図5
(6)図4からは、係止具20がファイルの一部であることが看取できる。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「合成樹脂製の2枚のシート12,13により書類収納部14が形成されてなり、平面形状が矩形を呈し、書類収納用ホルダー11の1側辺において書類収納用ホルダー11を形成する合成樹脂製のシート12または/および13の端部を折り返して3層乃至4層構造とし、この3層乃至4層構造の部分に無数のスポット状融着部15を形成してあり、無数のスポット状融着部15が形成された形成された領域の範囲内で前記1側辺に沿って適当間隔おきにファイル用手段としてほぼT字状に切り込まれ、前記書類収納用ホルダー11の縁からのスリットと、該スリットよりも幅広の半円孔からなる係止部16を形成してあり、さらに、前記書類収納用ホルダー11を立てた状態における上端の辺に前記書類収納部14に対し書類17を出し入れするための開口部18を形成してあり、係止部16がファイルの係止具20の鍔部19に係止され、着脱自在に綴じられる書類収納用ホルダーであって、係止部16に適度の硬さを備えていないと、係止部16は係止具20の鍔部19から簡単に外れることから、前記係止部16の形成位置に沿って超音波融着により無数のスポット状融着部15を形成して、係止部16を補強した書類収納用ホルダー11。」
2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(実願昭52-64152号(実開昭53-159730号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「本考案は第1図に示すごとく綴代1.に綴込用穴2.を設けてなる台紙3.において,綴込用穴2.から綴代1の端縁4.に至って辺込5.(当審注:「辺込5.」は「切込5.」の誤記と認められる。)を設けたことを特徴とする綴込台紙である。
すなわち,本考案の綴込台紙は第2図に示すごとく,ルーズリーフ式バインダー7.の台紙綴込用金具8.への着脱に際して綴込台紙3.を綴込用穴2.から綴代1.の端縁4.に至る切込5.に平行なAA'方向に移動せしめるだけで切込5.のスリットが台紙綴込用金具8.を通過するため,従来のごとく台紙綴込用金具8.を開閉することなく,まことに簡単迅速に綴込台紙の着脱ができるものである。
本考案の綴込台紙は,ルーズリーフ式バインダーへのファイル中にあっては,台紙綴込用金具に保持されていることが絶対不可欠の条件であり,押す,引くの力のみによって着脱され,かつ押す,引くの繰り返しによって綴込用穴及び綴代が破損されるようなことがあってはならない。
したがって,本考案の綴込台紙の素材は適度の柔軟性を有すると同時に腰のあるものでなければならない。したがって最も好ましい素材はプラスチックスであるが,適宜厚さの厚紙であっても,この条件を満すことができる。特にプラスチックスを素材とする場合には第1図Cに示すごとく,綴込用穴2の周縁及び綴込用穴2.から綴代1.の端縁4.に至る切込5.の周縁を熱溶融によって強化することができる利点がある。」(第2頁第17行-第3頁第12行)
(2)第1図C
(3)第1図Cからは、綴込台紙3.の綴代1.に沿って熱溶融によって強化された部分と、熱溶融されていない部分とが形成されていることが看取できる。
したがって、上記引用文献2には、ルーズリーフ式バインダー7.の台紙綴込用金具8.への着脱に際して、綴込用穴2.から綴代1.の端縁4.に至る切込5.に平行な方向に移動せしめられる綴込台紙3.は、押す、引くの力のみによって着脱され、かつ押す、引くの繰り返しによって綴込用穴及び綴代が破損されるようなことがないように、最も好ましい素材がプラスチックスであり、プラスチックスを素材とする場合には、綴込用穴2.の周縁及び綴込用穴2.から綴代1.の端縁4.に至る切込5.の周縁を熱溶融によって強化することができるという技術的事項が記載されていると認められる。
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明は、「合成樹脂製の2枚のシート12,13により書類収納部14が形成されてなり」、「前記書類収納用ホルダー11を立てた状態における上端の辺に前記書類収納部14に対し書類17を出し入れするための開口部18を形成してあ」ることから、「袋状」の構成を有するといえる。
したがって、引用発明の「合成樹脂製の2枚のシート12,13により書類収納部14が形成されてなり、平面形状が矩形を呈し、書類収納用ホルダー11の1側辺において書類収納用ホルダー11を形成する合成樹脂製のシート12または/および13の端部を折り返して3層乃至4層構造とし、この3層乃至4層構造の部分」は、本願発明1の「合成樹脂製の第1シートと第2シートからなり、内側に収納部を有する袋状シート体の一側」の「前記第1シートと前記第2シートとの重ね合わせ帯部」に相当する。
イ 引用発明の「書類収納用ホルダー11の縁からのスリットと、該スリットよりも幅広の半円孔からなる係止部16」は、本願発明1の「縁からのスリットを有する」「綴じ孔」に相当する。
ウ 引用発明の「無数のスポット状融着部15」は、「3層乃至4層構造の部分」に形成されたものであり、「3層乃至4層構造の部分」が、本願発明1の「重ね合わせ帯部」に相当することは、上記アで検討したとおりである。
したがって、引用発明の「無数のスポット状融着部15が形成された範囲内で」、「前記書類収納用ホルダー11の縁からのスリットと、該スリットよりも幅広の半円孔からなる係止部16を形成してあ」ることは、本願発明1の「該重ね合わせ帯部に、縁からのスリットを有する」「綴じ孔を形成する」ことに相当する。
エ 引用発明の「無数のスポット状融着部15」は、「3層乃至4層構造の部分」に形成されて「係止部16を補強」する機能を果たしていることから、引用発明の「無数のスポット状融着部15が形成された領域」は、本願発明1の「第1シートと第2シートの溶着補強部」に相当する。
また、引用発明の「係止部16」が、「無数のスポット状融着部15が形成された領域の範囲内で」形成されることから、「無数のスポット状融着部15」は、「係止部16」の周辺部を含めて形成されているものと認められる。
よって、本願発明1と引用発明とは、少なくとも、綴じ孔の周辺部に、第1シートと第2シートとの溶着補強部を有する点で共通する。
オ 本願発明1の「ファイルリフィール」の対比にあたり、本願明細書の記載を参酌すると、本願明細書の段落[0001]に、「ファイルリフィール」は、「リングファイル等に綴じるために使用する」ものと定義されている。
引用発明の「書類収納用ホルダー11」は、「係止部16がファイルの係止具20の鍔部19に係止され、着脱自在に綴じられる」ものであるから、上記本願明細書の定義に照らせば、本願発明1の「ファイルリフィール」に相当するものといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「合成樹脂製の第1シートと第2シートからなり、
内側に収納部を有する袋状シート体の一側に、前記第1シートと前記第2シートとの重ね合わせ帯部を有し、
該重ね合わせ帯部に、縁からのスリットを有する綴じ孔を形成すると共に、
少なくとも、該綴じ孔の周辺部に、第1シートと第2シートとの溶着補強部を有する、ファイルリフィール。」
[相違点1]
本願発明1では、「綴じ孔」の数が「4個」であるのに対して、引用発明では、具体的な個数が特定されていない点。
[相違点2]
本願発明1では、「重ね合わせ帯部が、溶着補強部と、溶着補強部が形成されている部分以外とで形成され、溶着補強部が、綴じ孔の直径を1とすると、長手方向側に2~5の長さである」のに対して、引用発明では、「3層乃至4層構造の部分」全体に「無数のスポット状融着部15」が形成されており、「3層乃至4層構造の部分」に、「無数のスポット状融着部15」が形成されていない部分がなく、結果として、綴じ孔の直径と、溶着補強部の長さも、本願発明1の関係を満たさない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。
引用文献2には、第3の2に説示したとおりの技術的事項が記載されているが、綴込用穴2の周縁及び綴込用穴2.から綴代1.の端縁4.に至る切込5.の周縁を熱溶融によって強化することしか記載されておらず、熱溶融によって強化する範囲を、綴込用穴2.の直径を1とすると、長手方向に2~5の長さとすることは、引用文献2に記載されていない。
したがって、引用発明に対して、引用文献2に記載された技術的事項を適用しても、直ちに、上記相違点2に係る、本願発明1の発明特定事項を導き出すことはできない。
また、熱溶融によって強化する範囲を、綴込用穴2.の直径を1とすると、長手方向に2~5の長さとすることが、本願出願時の周知技術であることを示す証拠もない。
そして、本願発明1は、溶着補強部を、綴じ孔の周辺部の一定範囲にのみ設けることで、「綴じ込みや取り外しの作業を行う際にも、溶着補強部9が形成されている部分以外は、シート材としての柔軟性があるのでしなりやすく、容易に綴じ込みや取り外し作業を行うことができる。」(段落[0019])という、引用文献1及び2に記載も示唆もされていない効果を奏する。
したがって、上記相違点2に係る、本願発明1の発明特定事項を導き出すことは、当業者が適宜なし得た設計変更ということはできない。
よって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「該重ね合わせ帯部が、溶着補強部と、溶着補強部が形成されている部分以外とで形成され、溶着補強部が、綴じ孔の直径を1とすると、長手方向側に2~5の長さである」という同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1及び2について上記引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、審判請求時の補正により、本願発明1及び2は、「該重ね合わせ帯部が、溶着補強部と、溶着補強部が形成されている部分以外とで形成され、溶着補強部が、綴じ孔の直径を1とすると、長手方向側に2~5の長さである」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1及び2は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の「一側帯」という記載の意味が不明確であるとの拒絶理由を通知しているが、本件補正書による補正において、「一側」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-004829