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特許異議申立

2021-700257

シートおよび冊子体

審判番号
2021-700257
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-168805
登録番号
6767207
請求日
2021年03月09日
審決日
2022年08月16日
公報発行日
2022年11月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ユポ・コーポレーション
  • 【権利者代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 藤本 義仁
  • 審判官 清水 康司
  • 審判官 吉村 尚
分類
P1651.121-YAA(B42F) / P1651.537-YAA(B42F) / P1651.832-YAA(B42F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6767207号発明「シートおよび冊子体」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6767207号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 特許第6767207号の請求項1,4,6,7に係る特許を維持する。 特許第6767207号の請求項2,3,5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6767207号(請求項の数7。以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成28年8月31日の出願であって,令和2年9月23日にその特許権の設定登録がされ,令和2年10月14日に特許掲載公報が発行された。 その後,令和3年3月9日に特許異議申立人(以下,「申立人」という。)より本件特許の請求項1ないし7に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされ,同年8月3日付けで取消理由が通知され,同年10月8日に特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され,同年11月4日付けで訂正拒絶理由が通知され,同年12月28日付けで取消理由通知(決定の予告)がされた。 なお,令和4年6月3日に申立人より意見書が提出されている。 第2 訂正の適否 1 訂正の趣旨 令和3年10月8日に提出された訂正請求書の請求の趣旨は,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし7について訂正することを求める,というものである(以下,当該訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)。 2 本件訂正の内容 本件訂正は,次の訂正事項からなる(下線は訂正箇所を表す。)。 (1)訂正事項1 請求項1を,「一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって, 前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり, 下記式1を満たし, 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有する,シート。」とあるのを,「少なくとも2枚以上のシートと, リングとを有し, 前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ, 重ねられた前記シートが,それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた,冊子体であって, 前記シートは,一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって, 前記シートは,前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり, 前記シートは,下記式1を満たし, 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し, 前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であり, 前記貫通孔の形状のうち,前記シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさの10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有し, 前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である,冊子体。」と訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 請求項4に「前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上である,請求項1または2に記載のシート。」とあるのを,「前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さの1.2~4倍である,請求項1に記載の冊子体。」と訂正する。 (5)訂正事項5 請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 請求項6に「請求項5に記載の冊子体。」とあるのを,「請求項1および4に記載の冊子体。」と訂正する。 (7)訂正事項7 請求項7に「請求項5に記載の冊子体。」とあるのを,「請求項1および4に記載の冊子体。」と訂正する。 3 本件訂正の可否 (1)訂正の目的について ア 訂正事項1について 訂正後の請求項1に係る発明は,実質上,訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項5に係る発明に限定事項を付加したものに該当するところ,訂正事項1は,訂正前の請求項5のうち,請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用するものを独立形式の記載に改めて,訂正後の請求項1とする訂正(以下,「訂正事項1-1」という。)と,「前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であり,」という記載を付加する訂正(以下,「訂正事項1-2」という。)と,訂正前の「補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起を有」するという記載を,「補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有」するとする訂正(以下,「訂正事項1-3」という。)と,「前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である」という記載を付加する訂正(以下,「訂正事項1-4」という。)とからなるといえる。なお,当該訂正事項1-1ないし1-4によって,訂正後の請求項1の記載を引用する請求項4,6,7にも同様の訂正がなされることになる。 訂正事項1-1は,訂正前の請求項5の一部を独立形式の記載に改める訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 訂正事項1-2は,訂正前には,貫通孔どうしの間隔と,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さとの大小関係は任意だったものを,貫通孔どうしの間隔が,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であるものに限定する訂正であるから,同ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項1-3は,訂正前には,シートの一側縁に最も近い部分から一側縁に直行する方向に沿って貫通孔の大きさの10%の長さを示す補助線までの領域において,貫通孔の形状が有するのが,訂正前には,突起の一部又は全部のいずれであっても良かったものを,突起の頂点に限定する訂正であるから,同ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項1-4は,訂正前には,突起を有する貫通孔のどこからどこまでの長さのことを指すのかが明確でなかった「貫通孔の大きさ」について,貫通孔の重心と,貫通孔のうちシートの一側縁に最も近い頂点との距離であることを定義する訂正であるから,同ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項2,3について 訂正事項2,3は,それぞれ請求項2,3を削除する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 ウ 訂正事項4について 訂正後の請求項4に係る発明は,実質上,訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項5に係る発明に限定事項を付加したものに該当するところ,訂正事項4は,実質上,訂正前の請求項5のうち,請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項4の記載を引用するものを,訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項1の記載を引用する請求項4として記載する(これによって,訂正前の請求項5のうち,請求項1の記載を引用する請求項5や請求項1の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項5等が,訂正後の特許請求の範囲から除外されることとなる。)とともに,訂正前には,貫通孔どうしの間隔が,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上と規定されていたものを,貫通孔どうしの間隔が,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さの1.2~4倍であるものに限定する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。なお,当該訂正事項4により,訂正後の請求項4の記載を引用する形式で記載された請求項6,7にも同様の訂正がなされることになる。 エ 訂正事項5について 訂正事項5は,請求項5を削除する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 オ 訂正事項6,7について 訂正事項6,7は,訂正前の請求項6,7が,それぞれ請求項5を引用するものであったものを,訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項1,及び訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項4を引用するものに変更する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 カ 小括 訂正事項1ないし7は,特許法120条の5第2項ただし書1号,3号及び4号に掲げる事項を目的とするものに該当するから,訂正の目的要件に適合する。 (2)新規事項の追加について ア 訂正事項1について 訂正事項1によって訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項1に付加されることとなる発明特定事項のうち,「前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であ」る点は,訂正前の請求項4に記載された事項である。 また,訂正事項1によって訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項1に付加されることとなる発明特定事項のうち,「前記貫通孔の形状のうち,前記シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさの10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有」する点については,本件特許明細書の【0010】,【0021】,【0022】等の記載を参酌すると,本件特許明細書の【0024】の「貫通孔の形状のうち,シートの一側縁から貫通孔の10%の長さを示す補助線までの領域において,貫通孔の形状が突起を・・・有する」なる記載が,冊子体からシートを切り離す際に張力が集中して裂ける突起の頂点をどこに配置するのかについての説明であることが,技術的に明らかであることから,本件特許明細書の記載等から自明な事項である。 また,訂正事項1によって訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項1に付加されることとなる発明特定事項のうち,「前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である」点は,本件特許明細書の【0026】及び【0031】に記載された事項である。 したがって,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。 イ 訂正事項2,3,5について 訂正事項2,3,5は,それぞれ請求項2,3,5を削除する訂正であるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。 ウ 訂正事項4について 訂正事項4によって訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項5に該当する訂正後の請求項4に付加されることとなる発明特定事項は,本件特許明細書の【0035】に記載された事項であるから,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。 エ 訂正事項6,7について 訂正事項6,7は,引用する請求項を,訂正前の請求項5から,訂正前の請求項5のうち,請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用するものに限定事項を付加したものに該当する訂正後の請求項1,及び訂正前の5のうち,請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項4の記載を引用するものに限定事項を付加したものに該当する訂正後の請求項4を引用するものに変更する訂正であって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。 オ 小括 前記アないしエのとおりであるから,訂正事項1ないし7は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の実質拡張・変更について 訂正事項1は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正事項,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項,及び明瞭でない記載の釈明を目的とするから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない, 訂正事項2,3,5は,それぞれ請求項2,3,5を削除する訂正であるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。 訂正事項4は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。 訂正事項6,7は,引用する請求項を,訂正前の請求項5から,請求項1及び4に変更する訂正であるが(なお,訂正後の「請求項1および4に記載の」なる記載は,不明確であるが,「請求項1又は4に記載の」の意味に解しておく。),訂正後の請求項1は,実質上,訂正前の請求項1の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項5に限定事項を付加したものに相当し,訂正後の請求項4は,前述した訂正後の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5に前記限定事項を付加したものにさらなる限定事項を付加したものに相当するから,訂正前の請求項6,7が包含していなかったものを,訂正後の請求項6,7が包含することはない。したがって,訂正事項6,7は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。 以上のとおりであるから,訂正事項1ないし7は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (4)訂正単位について 訂正前の請求項2ないし7は,本件訂正によって訂正される請求項1を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項であるから,請求項1ないし7は一群の請求項である。 4 訂正の適否のまとめ 前記3(1)ア,ウ,オ及び3(3)で述べたとおり,訂正事項1ないし7は,特許法120条の5第2項ただし書1号,3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 第3 本件特許の請求項1ないし7に係る発明 前記第2 4で述べたとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1,4,6,7に係る発明(請求項2,3,5は削除された。以下,それぞれを「本件訂正発明1」,「本件訂正発明4」等といい,本件訂正発明1,4,6,7を総称して「本件訂正発明」ということがある。)は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,4,6,7に記載された事項により特定されるものと認められるところ,請求項6,7の「請求項1および4に記載の冊子体。」は明らかな誤記であり,正しくは,「請求項1又は4に記載の冊子体。」であると認められるから,本件訂正発明1,4,6,7は,当該誤記を正した次のものと認められる。 「【請求項1】 少なくとも2枚以上のシートと, リングとを有し, 前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ, 重ねられた前記シートが,それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた,冊子体であって, 前記シートは,一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって, 前記シートは,前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり, 前記シートは,下記式1を満たし, 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1 前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し, 前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であり, 前記貫通孔の形状のうち,前記シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさの10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有し, 前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である,冊子体。 【請求項4】 前記貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さの1.2~4倍である,請求項1に記載の冊子体。 【請求項6】 前記リングが一重リングである,請求項1又は4に記載の冊子体。 【請求項7】 前記リングがコイルリングである,請求項1又は4に記載の冊子体。」 第4 通知した取消理由の概要 令和3年12月28日付けで通知された取消理由は,概略,次のとおりである。 取消理由1(進歩性欠如):本件特許の請求項1ないし7に係る発明は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然と実施された発明に基づいて,本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,当該請求項1ないし7に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 取消理由2(明確性要件違反):請求項2に記載された発明特定事項中の「貫通穴の10%の長さ」及び請求項3に記載された発明特定事項中の「貫通穴の50%の長さ」や「貫通穴の110%の長さ」が,突起を含まない貫通穴の長さに対する百分率を意味しているのか,それとも,突起を含む貫通穴の長さに対する百分率を意味しているのかが,特許請求の範囲の記載からは理解できないから,本件特許の請求項2,3及び当該請求項2,3の記載を引用する形式で記載された請求項4ないし7に係る特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由1(進歩性欠如)において,引用された引用例及び公然実施物品に係る参考資料は,次のとおりである。 公然実施物品:オキナ株式会社製 耐水メモ SP(カエル) PW1532 甲1:特開2013-123865号公報 甲3:実願昭57-60138号(実開昭58-163274号)のマイクロフィルム 参考資料1:“オキナ Okina PW1532 [耐水メモ SP カエル]”,株式会社ヨドバシカメラ,[令和3年7月20日検索],インターネット<URL:https://www.yodobashi.com/product/100000001002498164/> 第5 引用例 1 公然実施物品 参考資料1に,公然実施物品について,「販売開始日:2014/09/19(販売終了商品)」と記載されていること,また,本件特許明細書(【0060】等)において,公然実施物品を比較例2として用いたことが記載されていること等からみて,公然実施物品が,本件特許の出願前に公然と販売されたものであることは明らかである。 また,参考資料1の冒頭の画像から,当該公然実施物品が,メモ用紙の一方の短辺である上縁に沿って8つの円形の貫通孔が形成され,当該8つの円形の貫通穴と一方の短辺である上縁とを通る二重リングによって綴じてなる縦長のメモ帳であることを看取できる。 また,参考資料1の「オキナ Okina PW1532 の商品スペック」欄には,「●枚数40枚 ●サイズ:75×110mm ●仕様:ストーン紙100μ/表紙PP 無地ホワイト」と記載されているところ,社会通念上,当該記載中の「枚数」とは,表紙や裏表紙を含まず,メモ用紙として使用できるシートの数を指していると解するのが相当である。また,公然実施物品のサイズが,75×110mmであること,及び参考資料1の冒頭の画像から,メモ用紙のサイズが公然実施物品とさほど変わらないことが看取されることから,メモ用紙のサイズは,概ねA7(74×105mm)程度と解される。 また,本件特許明細書の【0060】には,「オキナ株式会社から市販されている耐水メモSP(品番:PW1532)を用いた。耐水メモSPは,一側縁に平行な方向に8個の貫通孔が並んで配置されたシートとリングとを有する冊子体である。シート(本体)の材質は,台湾で製造され,株式会社TBMが輸入販売するストーン紙「Keeplus」であり,石灰石(炭酸カルシウム)および樹脂である。耐水メモSPのシート物性を,下記表1に示した。貫通孔の形状は,円形であり,突起を有していない(1μm未満の長さの円周の凹凸は,突起としてみなさないこととした)。貫通孔どうしの間隔は,貫通孔の幅未満である。リングはスチール製であり,二重リングである。」と記載され,【0069】の【表1】には,比較例2すなわち公然実施物品に用いられているシートについて,一側縁直交方向の引張破壊ひずみが404.3%であること及び一側縁平行方向の引張破壊ひずみが344.5%であることが示され,【0058】には,当該引張破壊ひずみが,JIS K7161:1994に従って測定した値であることが記載されている。 以上を踏まえると,本件特許の出願前に,公然実施物品に係る発明として,次の発明が,本件特許の出願前に公然と実施されたものと認めることができる。 「40枚のメモ用紙を,各メモ用紙の一方の短辺に沿って形成された8つの円形の貫通穴と前記一方の短辺とを通る二重リングによって綴じてなるメモ帳であって, 前記各メモ用紙は,サイズがA7(74×105mm)程度であり, 前記8つの円形の貫通穴は,前記貫通穴の幅未満の間隔で形成されており, 前記各メモ用紙は,JIS K7161:1994に従って測定した前記一方の短辺に直交する方向の引張破壊ひずみが404.3%であり,前記一方の短辺に平行な方向の引張破壊ひずみが344.5%である, 縦長のメモ帳。」(以下,「公然実施発明」という。) 2 甲1 (1)甲1の記載 甲1は,本件特許の出願前である平成25年6月24日に頒布された刊行物であるところ,当該甲1には次の記載がある。 ア 「【請求項1】 用紙の綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に配置された綴じ孔列を備えた紙製品であって, 前記綴じ孔は,長手方向と短手方向に所定の長さを有し,前記綴じ孔の長手方向が前記綴じ込み側端縁と略平行の方向であることを特徴とする紙製品。 【請求項2】 請求項1記載の綴じ孔列を備えた紙製品において, 前記綴じ孔が,略楕円弧と任意の多角線又は略直線との組合せからなることを特徴とする紙製品。 ・・・(中略)・・・ 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の綴じ孔列を備えた紙製品において, 前記綴じ孔列を構成する綴じ孔縁部と隣接する綴じ孔縁部の最接近部分の間隔が0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間となるように穿孔されていることを特徴とする紙製品。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は,紙製品の綴じ孔部分において容易に効率よく破断することができる紙製品に関する。 【背景技術】 【0002】 ノートブックやカレンダー等のスパイラルリングやダブルリング等といった各種の綴じ部材を備えた紙製品において,綴じられた紙製品を破り取る行為が広く行われている。そして,この種の綴じ部材を備えた紙製品として,従来から種々の構造のものが知られている。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 ・・・(中略)・・・ 【0012】 本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり,用紙を容易に取り外すことができる綴じ部材を備えた紙製品の製作工程を1段階にすることができ,かつ,取り外した用紙の残りの部分を容易に取り除くことができるような綴じ部材を備えた紙製品を提供することを目的とする。」 ウ 「【発明の効果】 【0010】 本発明によれば,リングで綴じられて冊子体にされた場合に一側縁に直交する方向に切れにくく,かつ,一側縁に平行な方向に切れやすいシート,および,このシートを有する冊子体を提供できる。」 エ 「【図面の簡単な説明】 【0024】 【図1】本発明に係る綴じ孔列を備えた紙製品の一実施例を示し,三角形の綴じ孔列を備えた紙製品の要部拡大図である。 【図2】図1において用紙と綴じ部材を組み合わせた状態の要部拡大図である。 ・・・(中略)・・・ 【図4】図1において用紙を綴じ孔列に沿って破断した場合の綴じ部材側に残った用紙の要部拡大図である。 ・・・(中略)・・・ 【図9】従来の円形の綴じ孔列に沿って用紙を破断した場合に綴じ部材側に残った用紙を綴じ部材から引き出す場合の要部拡大図である。」 オ 「【実施例1】 【0026】 図1乃至図5は本発明に係る綴じ孔列を備えた紙製品の一実施例を示す。 これらの図において,全体を符号10で示すものは本発明を特徴づける綴じ孔列を備えた紙製品である。 【0027】 図1において,符号11は,本発明に係る綴じ孔列を備えた紙製品10を構成する用紙であり,該紙製品10はこの用紙11に綴じ孔を穿孔することにより構成される。 【0028】 前記用紙11には,綴じ孔20が穿孔されており,前記綴じ孔20はこの用紙11の一辺と略平行に1列に穿孔されている。 【0029】 また,この綴じ孔20には,前記用紙11の綴じ孔列を備える一辺と平行な略直線からなる縁部21が設けられている。 【0030】 前記綴じ孔列を備えた紙製品10は,前記1列に穿孔された綴じ穴20に綴じ部材24を介して綴じられるように構成されている。この綴じ部材24にはスパイラルリング,ダブルリングなどの綴じ孔の中を湾曲した部材が貫通する構造のものを用いることができる。 【0031】 この綴じ孔列を備えた紙製品10の綴じ部材24を設けた一辺の縁部を把持し,用紙11の綴じ孔縁部21の方向に伸張した位置の一辺を把持して綴じ孔20の方向へ引いて破断すると,前記縁部21の部分は略直線のおっペンとなり縁部21と隣接する縁部21との間の不規則に突出した部分は短い上に直線に近い形状になりやすい。 【0032】 前記綴じ孔20の縁部と隣接する綴じ孔20の縁部の最短距離が0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間であればこのような破断部分を形成することができる。この最短距離は0.15ミリメートルから2.0ミリメートルの間であることが望ましく,0.2ミリメートルから0.9ミリメートルの間であればさらに望ましい。 【0033】 なお,従来の円形の綴じ孔を備えるスケッチブック等の用紙を綴じ部材から破り取るように破断した場合,図9のようにこのようにして前記紙製品10を破断した場合,綴じ部材の中に残った破断片の破断部分が不規則に突出した形状となり,この突出部が綴じ部材に引っかかるため破断片を綴じ部材から抜いて捨てることが困難である。」 カ 「【図1】 [図:0001390541000001.jpg] 【図2】 [図:0001390541000002.jpg] ・・・(中略)・・・ 【図4】 [図:0001390541000003.jpg] ・・・(中略)・・・ 【図9】 [図:0001390541000004.jpg] 」 (2)甲1の記載から把握される技術事項 前記(1)カの図1から,綴じ孔20の形状が,綴じ込み側端縁となる一辺と略平行な縁部21を底辺とし,前記底辺よりも前記綴じ込み側端縁となる一辺側に頂角を有する三角形であることが看取されるから,前記(1)アないしカで摘記した記載から,甲1に次の技術事項が記載されていると認められる。 「用紙11にその綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に1列に綴じ孔20を穿孔することにより構成された紙製品10を,綴じ孔20の中を貫通するスパイラルリング,ダブルリングなどの綴じ部材24によって綴じたノートブックやカレンダー等の冊子体において, 前記綴じ孔20の形状を,前記綴じ込み側端縁となる一辺と平行な縁部21を底辺とし,前記底辺よりも前記綴じ込み側端縁となる一辺側に頂角を有する三角形とし, 前記綴じ孔20の縁部と隣接する綴じ孔20の縁部の最短距離を0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間に設定することによって, 前記紙製品10の綴じ部材24を設けた一辺の縁部を把持し,用紙11の綴じ孔縁部21の方向に伸張した位置の一辺を把持して綴じ孔20の方向へ引いて破断すると,前記縁部21と隣接する縁部21との間の部分が短い上に直線に近い形状になりやすいため,用紙を容易に取り外すことができ,かつ,取り外した用紙の残りの部分を容易に取り除くことができるようにする技術。」(以下,「甲1技術事項」という。) 3 甲3 (1)甲3の記載 甲3は,本件特許の出願前である昭和58年10月31日に頒布された刊行物であるところ,当該甲3には次の記載がある。 ア 「2 実用新案登録請求の範囲 各綴具用穴(3)より紙面外側に向かってミシン目を入れたノート。」(明細書1ページ4ないし6行) イ 「3 考案の詳細な説明 本考案は必要に応じてノート本体よりノート紙面を切離すことができるようにミシン目を入れたノート紙面に関する。 従来の切離すことができるようにしたノート紙面には第1図のようにノート紙面左側に多数の穴3をあけ,その穴に対応した針金スパイラル状のノート綴具2が貫通しており,その右側にミシン目切取部1がある。そして,ノート紙面を切離すときは,左手でノート左側上端のミシン目外側を指で押さえ,右手でノート紙面右側をつかんでミシン目を切離していく。この時,ミシン目にそって上手に切離して行くには,順次左手で押さえる部分を上から下へ移動させ,切り目部分が横へそらないように注意してしなければならず,その為に切離すのに多少時間がかかった。又,ミシン目より左側の部分は切離した後もノートに残り,この部分の紙の利用が不十分であった。 本考案は以上の従来の欠点の改良を目ざしたものである。」(明細書1ページ7行ないし2ページ6行) ウ 「本考案のミシン目の入ったノート紙面の実施例を説明すると,第2図のごとく,ノート紙面の各綴部用穴3より,紙面外側に向かって,ミシン目が入っている。すなわち,切込みが穴3より出て,紙面外側に向かい,その中間点くらいまで伸びている。そこで,わずかの距離をおいて又切込みが始まり,紙面外側まで至る。中間部の切込みのない部分はツナギ部分として,ノート綴金具からノート紙面がヌケない為である。この切込部及びツナギ部は穴3と紙面外側との距離により長さ及び数を増やしてもよい。本考案のノート紙面は以上のごとく,綴用の穴3にミシン目を上述のようにつけてある。このノート紙面が一定枚数綴用金具をとおして綴られて,ノートを成す。綴金具としては独立リング状針金でもよいし,スパイラル状針金でもよい。」(明細書2ページ7行ないし3ページ2行) エ 「ノート紙面を切離すときは,ノート紙面を持って綴金具と反対方向に引張る。そうすると,綴金具がノート紙面の穴3の切込み部にくい込み,更にツナギ部分を切って,又,切込み部を通り,紙面外側に出る。すなわち,綴金具よりノート紙面が分離したことになる。 このように,ノート紙面を持って引張ればよいのであるから,きわめて簡単に,紙面綴部よりノート紙面を切離すことができる。すなわち,小児でも簡単に熟練も要らず,目的を達することができる。又,ノート紙面の切離した後の切口面の仕上げ程度については,最初の切口は穴3よりの切込み,又,出口は切込みがつけてあるので,綴金具移動切口はきれいに穴3より紙面外に向かって直線に切れ,切離した紙面もきれいである。また,従来のように綴穴3より右に距離を置いてミシン目をタテに入れる必要がない為,その分紙面を有効に利用できる。」(3ページ3ないし末行) オ 「4 図面の簡単な説明 第1図は平面図 第2図は平面図 ・・・(中略)・・・ 図面 [図:0001390541000005.jpg] 」 (2)甲3の記載から把握される技術事項 前記(1)オの第2図から,各綴具用穴(3)より切込みが出る位置が,最も紙面外側に近い位置であることが看取されるところ,前記(1)アないしオで摘記した記載から,甲3に次の技術事項が記載されていると認められる。 「一定枚数のノート紙面が綴用金具をとおして綴られたノートにおいて, 切込みが各綴具用穴(3)の最も紙面外側に近い位置より出て,紙面外側に向かい,その中間点くらいまで伸び,そこで,わずかの距離をおいて又切込みが始まり,紙面外側まで至るようなミシン目を形成することによって, ノート紙面を切離すときに,ノート紙面を持って綴金具と反対方向に引張ると,綴金具がノート紙面の穴3の切込み部にくい込み,更にツナギ部分を切って,又,切込み部を通り,紙面外側に出るため,きわめて簡単に,紙面綴部よりノート紙面を切離すことができるとともに,切離した紙面もきれいにできる技術。」以下,「甲3技術事項」という。) 第6 判断 1 取消理由1(進歩性欠如)について (1)本件訂正発明1に対して ア 本件訂正発明1と公然実施発明の対比 (ア) 公然実施発明の「メモ用紙」,「二重リング」,「貫通穴」,「一方の短辺」及び「メモ帳」は,技術的にみて,本件訂正発明1の「シート」,「リング」,「貫通孔」,「一側縁」及び「冊子体」にそれぞれ対応する。 (イ) 公然実施発明は,40枚の「メモ用紙」(本件訂正発明1の「シート」に対応する。以下,「ア 本件訂正発明1と公然実施発明の対比」欄において,「」で囲まれた公然実施発明の構成に続く()中の文言は,前記公然実施発明の構成に対応する本件訂正発明1の発明特定事項を表す。)を「二重リング」(リング)によって綴じてなる「メモ帳」(冊子体)であるから,「少なくとも2枚以上のシートと,リングとを有」する「冊子体であ」るとの本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備している。 (ウ) 公然実施発明は,40枚のメモ用紙を,各メモ用紙の一方の短辺に沿って形成された8つの円形の貫通穴と前記一方の短辺とを通る二重リングによって綴じてなるメモ帳であるから,重ねられた「メモ用紙」(シート)が,それぞれ「貫通穴」(貫通孔)及び「メモ用紙」(シート)の「一方の短編」(一側縁)を通る二重リングで綴じられたものといえる。 また,公然実施発明において,各メモ用紙の各貫通穴を二重リングが通っていることから,「メモ用紙」(シート)が互いに「貫通穴」(貫通孔)を一致させて重ねられていることは自明である。 したがって,公然実施発明は,「前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ,重ねられた前記シートが,それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた」との本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備している。 (エ) 公然実施発明の各「メモ用紙」(シート)の一方の短辺には,8つの円形の「貫通穴」(貫通孔)が形成されているから,公然実施発明は,「前記シートは,一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであ」るとの本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備している。 (オ) 公然実施発明の各「メモ用紙」(シート)は,JIS K7161:1994に従って測定した「一方の短辺」(一側縁)に直交する方向の引張破壊ひずみが404.3%であり,「一方の短辺」(一側縁)に平行な方向の引張破壊ひずみが344.5%であるから,「前記シートは,前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり, 前記シートは,下記式1を満たし, 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1」との本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備している。 (カ) 前記(ア)ないし(オ)に照らせば,本件訂正発明1と公然実施発明は, 「少なくとも2枚以上のシートと, リングとを有し, 前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ, 重ねられた前記シートが,それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた,冊子体であって, 前記シートは,一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって, 前記シートは,前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり, 前記シートは,下記式1を満たす,冊子体。 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1」 である点で一致し,次の点で相違する。 相違点1-1: 本件訂正発明1の貫通孔の形状が,少なくとも1つの突起を有し,前記貫通孔の形状のうち,シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさ(貫通孔の重心と,貫通孔のうちシートの一側縁に最も近い頂点との距離)の10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有するのに対して, 公然実施発明の貫通穴の形状は,円形であって,突起を有しておらず,当然本件訂正発明1のような領域に,突起の頂点を有してもいない点。 相違点1-2: 本件訂正発明1では,貫通孔どうしの間隔が,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であるのに対して, 公然実施発明では,8つの円形の貫通穴は,貫通穴の幅未満の間隔で形成されている点。 イ 相違点1-1の容易想到性について (ア)容易想到性(その1) 前記第5 2(2)で認定したように,甲1には,「用紙11にその綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に1列に綴じ孔20を穿孔することにより構成された紙製品10を,綴じ孔20の中を貫通するスパイラルリング,ダブルリングなどの綴じ部材24によって綴じたノートブックやカレンダー等の冊子体において, 前記綴じ孔20の形状を,前記綴じ込み側端縁となる一辺と平行な縁部21を底辺とし,前記底辺よりも前記綴じ込み側端縁となる一辺側に頂角を有する三角形とし, 前記綴じ孔20の縁部と隣接する綴じ孔20の縁部の最短距離を0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間に設定することによって, 前記紙製品10の綴じ部材24を設けた一辺の縁部を把持し,用紙11の綴じ孔縁部21の方向に伸張した位置の一辺を把持して綴じ孔20の方向へ引いて破断すると,前記縁部21と前記隣接する縁部21との間の部分が短い上に直線に近い形状になりやすいため,用紙を容易に取り外すことができ,かつ,取り外した用紙の残りの部分を容易に取り除くことができるようにする技術。」(甲1技術事項)が記載されているところ,公然実施発明においても,メモ帳からメモ用紙を切り取って使用できると便利であり,そして,切り取る際に,メモ用紙を容易に取り外すことができ,かつ,取り外したメモ用紙の残りの部分を容易に取り除くことができたほうが好ましいことは,当業者に自明であるから,公然実施発明の各メモ用紙に形成する8つの円形の貫通穴を,それぞれ,一方の短辺と平行な底辺を有するとともに,前記底辺よりも前記一方の短辺側に頂角を有する三角形の貫通穴に変更し,前記貫通穴の底辺と隣接する貫通穴の底辺の最短距離を0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間に設定することは,甲1の記載に接した当業者が容易に想到し得たことというほかない。 ここで,当該構成の変更を行った公然実施発明において,各貫通穴は三角形であって,3つの突起を有しており,そのうちの一つの頂点は,貫通穴のうちメモ用紙の一方の短辺に最も近い部分に位置しているから,前述した構成の変更を行った公然実施発明は,相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備することになる。 したがって,公然実施発明において,相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,甲1技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。 (イ)容易想到性(その2) 前記第5 3(2)で認定したように,甲3には,「一定枚数のノート紙面が綴用金具をとおして綴られたノートにおいて, 切込みが各綴具用穴(3)の最も紙面外側に近い位置より出て,紙面外側に向かい,その中間点くらいまで伸び,そこで,わずかの距離をおいて又切込みが始まり,紙面外側まで至るようなミシン目を形成することによって, ノート紙面を切離すときに,ノート紙面を持って綴金具と反対方向に引張ると,綴金具がノート紙面の穴3の切込み部にくい込み,更にツナギ部分を切って,又,切込み部を通り,紙面外側に出るため,きわめて簡単に,紙面綴部よりノート紙面を切離すことができるとともに,切離した紙面もきれいにできる技術。」(甲3技術事項)が記載されているところ,公然実施発明においても,メモ帳からメモ用紙を切離して使用できると便利であり,そして,切離す際に,メモ用紙を簡単に切離すことができ,かつ,切離したメモ用紙の紙面もきれいであるほうが好ましいことは,当業者に自明であるから,公然実施発明において,切込みが各貫通穴の最も一方の短辺に近い位置より出て,一方の短辺側に向かい,その中間点くらいまで伸び,そこで,わずかの距離をおいて又切込みが始まり,紙面外側まで至るようなミシン目を各メモ用紙に形成することは,甲3の記載に接した当業者が容易に想到し得たことというほかない。 ここで,各貫通穴より出て中間点まで伸びた切込みの中間点側の先端は,貫通穴に形成された突起の頂点といえ,当該突起の頂点は,貫通穴のうちメモ用紙の一方の短辺に最も近い部分に位置しているから,前述した構成の変更を行った公然実施発明は,相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備することになる。 したがって,公然実施発明において,相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,甲3技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 相違点1-2の容易想到性について 例えば,「JIS Z 8303:2008 帳票の設計基準」(申立人が提出した参考資料1を参照。)に, 「11.2 とじ穴 とじ穴は,次による。 a) 穴をあけてとじることが前提となっているものは,穴をあけておくか,穴あけ機用の中心線及び穴の位置又は中心線だけを印刷しておく。 穴の寸法は,次による。 直径 6±0.5mm 間隔(穴の中心から中心まで) 80±0.5mm 紙の端から穴の中心まで 12±1.0mm なお,穴は,紙の中央線に対し,対称の位置に置く。」 と記載されていること等からみて,冊子体において,シートに形成する貫通孔どうしの間隔を,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上に設定することは,本件特許に係る出願の出願前に周知技術であったと認められる。 一方で,「JIS Z 8303:2008 帳票の設計基準」には,前記記載とともに, 「b) ルーズリーフ式帳簿は,多穴式を用い,穴の寸法は,次による。 直径 6±0.5mm 間隔(穴の中心から中心まで) 9.5±1.0mm 紙の端から穴の中心まで 6.5±0.5mm なお,穴は,紙の中央線に対し,対称の位置に置く。」 という記載,すなわち,シートの形成する貫通孔どうしの間隔を,貫通穴の一側縁の平行な長さ未満に設定することの記載も存在するところ,当該「JIS Z 8303:2008 帳票の設計基準」には,a)の方式でのとじ孔の位置が,b)の方式でのとじ孔の位置に比べて,何らかの長所が存在することが記載されているわけではない。 また,申立人が提出した甲1ないし甲3,参考資料1,2を含め,冊子体において,シートに形成する貫通孔どうしの間隔を,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上に設定したものが,貫通穴の一側縁の平行な長さ未満に設定したものに対して,何らかの長所を有していることが,本件特許に係る出願の出願前に当業者に知られていたことを示す証拠は見当たらない。 そうすると,公然実施発明において,シートに形成する貫通孔どうしの間隔について,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ未満に設定するのに代えて,周知技術のように,貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上に設定することによって,公然実施発明を改善することができると,当業者が認識することはないのであるから,公然実施発明に,前記周知技術を適用することには,動機付けが存在しないというべきである。 そして,本件訂正発明1は,相違点1-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することで,シートを切る場合に,隣合う貫通孔どうしが繋がって切れることを抑制し,シート切れ端のリング残りを抑制できるという効果を奏するものであり,かつ,本件明細書の【0069】の表1に示されているように,当該発明特定事項と,「前記シートは,前記一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり, 前記シートは,下記式1を満たし, 式1 前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1」という発明特定事項と,「貫通孔の形状が,少なくとも1つの突起を有し,前記貫通孔の形状のうち,シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさ(貫通孔の重心と,貫通孔のうちシートの一側縁に最も近い頂点との距離)の10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有」するという発明特定事項とが相まって,シートについて,一側縁に直行する方向に切れにくく,かつ,一側縁に平行な方向に切れやすいような冊子体とすることができるものと認められる。 したがって,公然実施発明において,相違点1-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することが,単なる設計変更にすぎないということもできない。 以上のとおりであるから,たとえ前記周知技術が存在するとしても,公然実施発明において,相違点1-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することが,当業者が容易に想到し得たことということはできない。 エ 小括 以上のとおり,本件訂正発明1は,公然実施発明,甲1技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,公然実施発明,甲3技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから,取消理由1によって,本件訂正発明1の特許を取り消すことはできない。 (2)本件訂正発明4,6,7に対して 本件訂正後の請求項4,6,7は,本件訂正後の請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明4,6,7は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものであるから,本件訂正発明1が公然実施発明,甲1技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,公然実施発明,甲1技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上,本件訂正発明4,6,7も,同様の理由で,公然実施発明,甲1技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,公然実施発明,甲1技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 したがって,取消理由1によって,本件訂正発明4,6,7の特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(明確性要件違反)について 請求項2,3は,本件訂正により削除された。 また,本件訂正後の請求項1には,「貫通孔の大きさの10%の長さ」という取消理由2に係る記載と同様の記載が導入されたが,本件訂正によって,当該記載とともに,「前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である」との記載も導入されたことから,「貫通孔の大きさの10%の長さ」とは,貫通孔の重心と,貫通孔のうちシートの一側縁に最も近い頂点との距離の10%分の長さであることが明確となっている。 したがって,本件訂正によって,取消理由2は解消された。 第7 採用しなかった申立理由について 1 申立人が主張する申立理由の概要 申立書において,申立人は,概略,次の申立理由で,本件特許を取り消すべき旨主張している。 申立理由1 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は,甲1に記載された発明に,公然実施発明を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,当該請求項1ないし7に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 2 甲1に記載された発明 前記第5 2(1)アないしカで摘記した甲1の記載から,甲1に次の発明が記載されていると認められる。 「用紙11にその綴じ込み側端縁となる一辺と略平行に1列に綴じ孔20を穿孔することにより構成された紙製品10を,綴じ孔20の中を貫通するスパイラルリング,ダブルリングなどの綴じ部材24によって綴じたノートブックやカレンダー等の冊子体であって, 前記綴じ孔20の形状を,前記綴じ込み側端縁となる一辺と平行な縁部21を底辺とし,前記底辺よりも前記綴じ込み側端縁となる一辺側に頂角を有する三角形とし, 前記綴じ孔20の縁部と隣接する前記綴じ孔20の縁部の最短距離を,0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間に設定することによって, 前記紙製品10の綴じ部材24を設けた一辺の縁部を把持し,用紙11の綴じ孔縁部21の方向に伸張した位置の一辺を把持して綴じ孔20の方向へ引いて破断すると,前記縁部21と前記隣接する縁部21との間の部分が短い上に直線に近い形状になりやすいため,用紙を容易に取り外すことができ,かつ,取り外した用紙の残りの部分を容易に取り除くことができるようにした, 冊子体。」(以下,「甲1発明」という。) 3 判断 (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲1発明の対比 甲1発明の「紙製品10」,「綴じ部材24」,「綴じ孔20」,「綴じ込み側端縁となる一辺」及び「冊子体」が,本件訂正発明1の「シート」,「リング」,「貫通孔」,「一側縁」及び「冊子体」にそれぞれ対応し,甲1発明の綴じ孔20の形状が,綴じ込み側端縁となる一辺と平行な縁部21を底辺とし,前記底辺よりも前記綴じ込み側端縁となる一辺側に頂角を有する三角形であることは,本件訂正発明1の「貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有」すること,及び「前記貫通孔の形状のうち,前記シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさの10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有し,前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である」ことに相当するから,両者は, 「少なくとも2枚以上のシートと, リングとを有し, 前記シートは互いに前記貫通孔の位置を一致させて重ねられ, 重ねられた前記シートが,それぞれ前記貫通孔および前記シートの一側縁を通る前記リングで綴じられた,冊子体であって, 前記シートは,一側縁に沿って2個以上の貫通孔が並んで配置されたシートであって, 前記貫通孔の形状が少なくとも1つの突起を有し, 前記貫通孔の形状のうち,前記シートの一側縁に最も近い部分から前記一側縁に直交する方向に沿って前記貫通孔の大きさの10%の長さを示す補助線までの領域において,前記貫通孔の形状が突起の頂点を有し, 前記貫通孔の大きさが,前記貫通孔の重心と,前記貫通孔のうち前記シートの一側縁に最も近い頂点との距離である,冊子体。」 である点で一致し,次の点で相違する。 相違点2-1: 本件訂正発明1のシートは,一側縁に直交する方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが200%以上であり,前記一側縁に直交する方向の引張破壊ひずみ/前記一側縁に平行な方向の引張破壊ひずみ>1を満たすのに対して, 甲1発明の紙製品10は,綴じ込み側端縁となる一辺と直交する方向及び平行な方向のJIS K7161:1994で規定される引張破壊ひずみが不明である点。 相違点2-2: 本件訂正発明1では,貫通孔どうしの間隔が,前記貫通孔の一側縁に平行な方向の長さ以上であるのに対して, 甲1発明では,綴じ孔20の縁部と隣接する綴じ孔20の縁部の最短距離を,0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間に設定しており,綴じ孔20における綴じ込み側端縁となる一辺と平行な方向の大きさとの大小関係は特定されていない点。 イ 相違点2-2の容易想到性について 事案に鑑み,まず相違点2-2について検討する。 甲1発明において,「綴じ孔20の縁部と隣接する綴じ孔20の縁部の最短距離」(以下,便宜上「綴じ孔間隔」という。)を,0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間に設定しているのは,紙製品10の綴じ部材24を設けた一辺の縁部を把持し,用紙11の綴じ孔縁部21の方向に伸張した位置の一辺を把持して綴じ孔20の方向へ引いて破断する際に,縁部21と隣接する縁部21との間の部分が,直線に近い形状で破断するようにして,用紙を容易に取り外すことができるとともに,取り外した用紙の残りの部分を容易に取り除くことができるようにするためである。 したがって,甲1発明において,綴じ孔間隔を,0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間という範囲とは大きく異なる値に設定することは,甲1発明の目的に反することであって,当該設定の変更には,阻害要因が存在する。 一方,「JIS Z 8303:2008 帳票の設計基準」によれば,冊子体における貫通穴(円形)の直径は,一般的に,6mm程度と認められるところ,公然実施発明及び申立人が提出した甲1ないし甲3,参考資料1,2を検討しても,甲1発明の三角形の形状を有する綴じ孔20の大きさとして,前記一般的な貫通穴(円形)の大きさとは大きく異なる値を採用する理由は見当たらないから,当業者は,甲1発明の三角形の形状を有する綴じ孔20の底辺の大きさを6mm程度に設定するのが自然である。このことは,甲1の図1や図2において,0.1ミリメートルから3.0ミリメートルの間という範囲に設定された綴じ孔間隔に比べて,綴じ孔20の底辺の長さがきわめて大きく描かれていることからも理解できることである。 そうすると,当業者は,甲1発明において,綴じ孔間隔を,綴じ孔20の底辺の長さ(すなわち,綴じ孔20における綴じ込み側端縁となる一辺と平行な方向の大きさ)以上の値に設定しようとはしないというべきであるから,甲1発明において,相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 前記イで述べたとおり,甲1発明において,相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではないから,相違点2-1について検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲1発明及び公然実施発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって,申立理由1によって,本件訂正発明1の特許を取り消すことはできない。 (2)本件訂正発明4,6,7について 本件訂正後の請求項4,6,7は,本件訂正後の請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明4,6,7は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものであるから,本件訂正発明1が甲1発明及び公然実施発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件訂正発明4,6,7も,同様の理由で,甲1発明及び公然実施発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,申立理由1によって,本件訂正発明4,6,7の特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知書に記載された取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては,請求項1,4,6,7に係る特許を取り消すことはできない。さらに,他に請求項1,4,6,7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また,請求項2,3,5は,本件訂正によって削除されたため,これら請求項に係る特許についての,特許異議の申立ての対象は,存在しないものとなった。したがって,請求項2,3,5に係る特許についての特許異議の申立ては,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって,結論のとおり決定する。

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2021-700257

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