特許異議申立
2021-701191
喫煙材を加熱するための装置
- 審判番号
- 2021-701191
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-506381
- 登録番号
- 6885562
- 請求日
- 2021年12月15日
- 審決日
- 2022年09月08日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
- 【権利者代理人】池田 成人
- 【権利者代理人】酒巻 順一郎
- 【権利者代理人】戸津 洋介
- 【異議申立人】リ ヒョン ソン
- 【異議申立人代理人】弁理士法人WisePlus
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 松下 聡
- 審判官 河内 誠
- 分類
- P1651.113-YAA(A24F) / P1651.121-YAA(A24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6885562号発明「喫煙材を加熱するための装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6885562号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。
特許第6885562号の請求項1-3、5-19に係る特許を維持する。
特許第6885562号の請求項4に係る特許についての特許異議申立を却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6885562号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、2016(平成28)年8月26日(優先権主張外国庁受理 2015年8月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年5月17日に特許権の設定登録がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行された。
本件異議申立の経緯は、次のとおりである。
令和3年12月15日:特許異議申立人 リ ヒョン ソン(以下、「異議申立人」という。)による請求項1ないし19に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年2月25日付け:取消理由通知書
令和4年5月30日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年6月9日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
令和4年7月29日:異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和4年5月30日の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の事項からなる(なお、下線を付した箇所は、訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
加熱領域を画定すると共に当該加熱領域の範囲を定める本体であって、当該加熱領域は、喫煙材を備える物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成されている、本体と、
変動磁場を発生させるように構成された磁場発生器と、
前記本体の端部の端部部材であって、前記加熱領域の端部を画定する端部部材と、
前記加熱領域内に突出する細長い加熱素子と、
を備え、
前記加熱素子は、加熱材を備えており、前記加熱材は、前記変動磁場の侵入によって加熱可能であり、前記加熱領域を加熱し、
前記磁場発生器が、コイルと、前記コイルに変動電流を流すように構成されたデバイスとを備え、前記コイルは、前記加熱素子及び前記加熱領域に対して固定位置にある、装置。」とあるのを、
「喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
加熱領域を画定すると共に当該加熱領域の範囲を定める本体であって、当該加熱領域は、喫煙材を備える物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成されている、本体と、
変動磁場を発生させるように構成された磁場発生器と、
前記本体の端部の端部部材であって、前記加熱領域の端部を画定する端部部材と、
前記加熱領域内に突出する細長い加熱素子と、
を備え、
前記加熱素子は、加熱材を備えており、前記加熱材は、前記変動磁場の侵入によって加熱可能であり、前記加熱領域を加熱し、
前記磁場発生器が、コイルと、前記コイルに変動電流を流すように構成されたデバイスとを備え、前記コイルは、前記加熱素子及び前記加熱領域に対して固定位置にあり、
前記加熱素子が長さ、及び前記長さに垂直な断面を有し、前記断面が幅及び奥行きを有し、前記加熱素子の前記長さが前記断面の前記幅より長く、前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きより広い、装置。」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3~7のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3、5~7のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~8のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~9のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~10のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~11のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項13に、
「請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~12のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項14に、
「請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~12のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項15に、
「請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~14のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項16に、
「請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~15のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項17に、
「請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。」とあるのを、「請求項1~3、5~16のいずれか一項に記載の装置。」と訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項18に、
「請求項1~17のいずれか一項に記載の装置」とあるのを、「請求項1~3、5~17のいずれか一項に記載の装置」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「加熱素子」に対して、「長さ、及び前記長さに垂直な断面を有し、前記断面が幅及び奥行きを有し、」「前記長さが前記断面の前記幅より長く、前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きより広い」ことを限定したものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4及び明細書の段落【0006】に記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上、特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1の記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上、特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのように本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3ないし15
ア 訂正の目的について
訂正事項3ないし15は、上記訂正事項2による請求項4の削除に伴い、請求項5、6、及び8ないし18が択一的に引用する請求項から請求項4を削除することにより引用請求項数を削減するとともに、本件訂正後の請求項4との関係において生じる不合理を正すものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3ないし15は、上記アのとおり、択一的に引用する請求項から請求項4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項3ないし15は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上、特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3ないし15は、上記アのとおり、択一的に引用する請求項から請求項4を削除するというものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項3ないし15は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし19について、請求項2ないし19はそれぞれ請求項1を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、訂正前の請求項〔1~19〕の一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし19に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明19」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された次の事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
加熱領域を画定すると共に当該加熱領域の範囲を定める本体であって、当該加熱領域は、喫煙材を備える物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成されている、本体と、
変動磁場を発生させるように構成された磁場発生器と、
前記本体の端部の端部部材であって、前記加熱領域の端部を画定する端部部材と、
前記加熱領域内に突出する細長い加熱素子と、
を備え、
前記加熱素子は、加熱材を備えており、前記加熱材は、前記変動磁場の侵入によって加熱可能であり、前記加熱領域を加熱し、
前記磁場発生器が、コイルと、前記コイルに変動電流を流すように構成されたデバイスとを備え、前記コイルは、前記加熱素子及び前記加熱領域に対して固定位置にあり、
前記加熱素子が長さ、及び前記長さに垂直な断面を有し、前記断面が幅及び奥行きを有し、前記加熱素子の前記長さが前記断面の前記幅より長く、前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きより広い、装置。
【請求項2】
前記加熱領域を画定する本体をさらに備え、前記本体には、前記変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材がない、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加熱領域が細長く、前記細長い加熱素子が、前記加熱領域の長手方向軸と実質的に一致する長手方向軸に沿って延在している、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記加熱素子が実質的に平面状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記加熱領域の第1の端部に設けられ、前記物品の前記少なくとも一部分を受け入れるように構成された開口をさらに備え、
前記加熱素子が、前記第1の端部の反対側の前記加熱領域の第2の端部から前記加熱領域内に突出し、前記加熱素子が、前記加熱領域の前記第2の端部から遠位にある自由端を有し、前記自由端は、前記物品が前記加熱領域内に挿入されると前記自由端が前記物品に入るように前記開口に対して配置されている、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱素子の前記自由端が先細である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記本体の内面、又は前記本体の外面の熱放射率が0.1以下である、請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3、5~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記コイルが前記加熱領域を取り囲む、請求項1~3、5~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記コイルが、前記加熱素子の長手方向軸と実質的に一致する長手方向軸に沿って延在する、請求項1~3、5~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記コイルのインピーダンスが、前記加熱素子のインピーダンスと等しい又は実質的に等しい、請求項1~3、5~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記加熱材が、導電性材料、磁性材料、及び非磁性材料からなる群から選択された1つ以上の材料を備える、請求項1~3、5~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記加熱材が、金属又は金属合金を備える、請求項1~3、5~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記加熱材が、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を備える、請求項1~3、5~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記加熱材が、前記加熱材が前記変動磁場によって貫通されているときに前記加熱材に誘導される渦電流の影響を受けやすい、請求項1~3、5~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記加熱素子が、加熱されると形状を変えるように構成されている、請求項1~3、5~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記加熱材が前記加熱領域に対して露出している、請求項1~3、5~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
請求項1~3、5~17のいずれか一項に記載の装置と、
前記装置とともに使用するための物品であって、前記喫煙材を備える物品と、
を備える、システム。
【請求項19】
前記物品が、喫煙材の塊と、前記喫煙材の塊に接続されたワイパーとを備え、前記加熱素子が、前記ワイパーと接触しながら前記喫煙材の塊内に挿入可能である、請求項18に記載のシステム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし18に係る特許に対して令和4年2月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[理由1](新規性)
本件特許の請求項1ないし3、6、9、10、12ないし18に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[理由2](進歩性)
本件特許の請求項1ないし18に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明又は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
<甲号証>
1.甲第1号証:中国特許出願公開第104095291号明細書
2.甲第2号証:特表2015-506170号公報
(当審注:以下、甲第1号証、甲第2号証をそれぞれ「甲1」、「甲2」という。)
2 各甲号証の記載
(1)甲1
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
(ア)
[請求項1]
[図:0001392038000001.jpg]
(当審訳:1.電磁加熱によるたばこ喫煙システムであって、エンドキャップ(1)と、ヒータ(2)と、電磁誘導システムとを含み、前記エンドキャップ(1)は着脱可能にヒータ(2)に接続され、前記エンドキャップ(1)はラウンドキャップ(11)とラウンドキャップ(11)に配置されたフィルタ(13)とを含み、前記ラウンドキャップ(11)には空気入口(12)が設けられ、前記ヒータ(2)は外側ケーシング(21)と、いずれも外側ケーシング(21)内部に設けられた内側ライナ(23)、底板(24)及び円柱形鉄心(25)とを含み、前記底板(24)は内側ライナ(23)の底端に連接し、前記底板(24)と内側ライナ(23)との間に、底端が封止され頂端がフィルタ(13)と連通する加熱キャビティ(26)が形成され、前記円柱形鉄心(25)は加熱キャビティ(26)内部に位置し底板(24)と連接し、前記底板(24)に、空気入口(12)及び加熱キャビティ(26)にそれぞれ連通する通気口(27)が設けられ、前記電磁誘導システムは、内側ライナ(23)、底板(24)及び円柱形鉄心(25)を加熱する誘導コイルと、温度制御回路とを含み、前記温度制御回路は、誘導コイルと直列に接続された電源と、スイッチと、コントローラとを含むことを特徴とする、電磁加熱によるたばこ喫煙システム。)
(イ)
[図:0001392038000002.jpg]
(当審訳:[0020](1)本発明は構造が簡単であるばかりかその上、コストは安く、電磁誘導システムによって内側ライナ、底板及び円柱形鉄心に対した加熱は加熱速度と熱効率の高さを高めることができ、また瞬時加熱を実現することができ、これにより吸引口の感じをより良くすることができる;前記円柱形鉄心の設置はタバコに対した均一加熱を実現することができ、タバコを十分加熱することができ、すなわちタバコの加熱が不十分であることによる無駄を引き起こすことを防止することができる。)
(ウ)
[図:0001392038000003.jpg]
(当審訳:[0025](6)本発明の保温断熱層とラウンドキャップとは、いずれも非磁性の保温断熱素材からなり、熱損失を回避可能であると同時に、渦電流の加熱効果が引き起こすラウンドキャップ及び外側ケーシングの過熱によるやけどなどの事故を回避することができる。)
(エ)
[図:0001392038000004.jpg]
(当審訳:[0027](8)本発明の内側ライナ、底板及び円柱形鉄心は一体的構造とし、内側ライナと底板及び円柱形鉄心相互間の熱伝導効率を高めることができ、これによって加熱キャビティ内のたばこに対する均一加熱を実現する。)
(オ)
[図:0001392038000005.jpg]
(当審訳:[0040]図1~3に示すように、電磁加熱によるたばこ喫煙システムは、たばこ粉末、細断たばこ及び円環形のたばこ製品を非燃焼加熱するのに適しており、エンドキャップ1、ヒータ2、及び電磁誘導システムを含む。本発明は、電磁誘導システムによってヒータ2の加熱を実現する。すなわち、ヒータ2によって当該ヒータ2内部のたばこを加熱することができる。前記エンドキャップ1は、たばこを入れたり交換したりしやすいよう、ヒータ2に取り外し可能に接続されている。具体的には、前記エンドキャップはラウンドキャップ11とフィルタ13とを含み、前記ラウンドキャップ11は、全体が円柱形であり、前記フィルタ13は、ラウンドキャップ11上に設置され、当該フィルタ13全体も円柱形であり、当該フィルタ13の中軸線は、ラウンドキャップ11の中軸線と重なり合う。前記ラウンドキャップ11の中央には貫通孔があり、つまり、当該ラウンドキャップ11の横断面は円環状であり、当該貫通穴を介して、ヒータ2内の煙をフィルタ13に入れることができる。)
(カ)
[図:0001392038000006.jpg]
(当審訳:[0042]内側ライナ23、底板24、及び円柱形鉄心25は、いずれも外側ケーシング21の空洞内に設置されている。具体的には、前記内側ライナ23は中空の円柱構造、つまり当該内側ライナ23は横断面が円環形である。前記底板24は外側ケーシング1の底部に位置し、底板24全体は円形であり、当該底板24の直径は内側ライナ23の外径と等しく、かつ当該底板24は内側ライナ23の底端に設置されて内側ライナ23の底端の開口を封止することができ、前記底板24と内側ライナ23との間に、底端が封止され頂端が開口した加熟キャビティ26が形成され、当該加熱キャビティ26はフィルタ13と連通する。ラウンドキャップ11が接続スナップ14を介して外側ケーシング21に連結されると、前記内側ライナ23の頂端がラウンドキャップ11の下面と接触し、それによってたばこの芳香がラウンドキャップ11と内側ライナ23との隙間から漏れ出るのを防止できる。すなわち、たばこの芳香を、フィルタを介して完全かつ十分に喫煙者の口に入れることができる。
[0043]たばこを加熱キャビティ26内に入れ、たばこを加熱すれば、フィルタ13を吸ってたばこの芳香を得ることができる。たばこの芳香が得られるよう、前記底板24にはいくつかの通気口27が設けられ、前記通気口27は、底板24を貫通する貫通孔であって、図2に示すように、当該通気口27は、空気入口12及び加熱キャビティ26とそれぞれ連通する。フィルタ13を吸うと、空気入口12、通気口27を介して外気を加熱キャビティ26に引き込むことができ、たばこが加熱された後、たばこの芳香が加熱キャビティ26内の空気に混合され、フィルタ13を吸えばたばこの芳香を得ることができる。
[0044]前記円柱形鉄心25は円柱構造であり、当該円柱形鉄心25の底端は底板24に接続され、当該円柱形鉄心25は、図2に示すように、全体が加熱キャビティ26の内部に位置している。前記円柱形鉄心25は、加熱キャビティ26の中央に設置されている。すなわち、当該円柱形鉄心25の中軸線は、底板24の中軸線及び内側ライナ23の中軸線の両方と重なり合う。当該円柱形鉄心25を設置することで、加熱キャビティ26中央部分にあるたばこの加熱が便利になり、当該円柱形鉄心25の高さは内側ライナ23よりも低く、たばこのセッティング・交換や、灰の掃除がしやすい。本発明の内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25はすべて鉄、コバルト、ニッケルなど良好な導電性及び透磁性を有する強磁性金属素材からなり、かつ、前記内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25は一体構造である。
[0045]加熱キャビティ26を加熱する際に断熱保温がしやすいよう、図2に示すように、前記外側ケーシング21の内部には、内側ライナ23の外面を覆う保温断熱層22がさらに設けられる。前記保温断熱層22は、非磁性体保温断熱素材からなり、具体的には、本実施例の保温断熱層22は、非磁性断熱素材であるナノベースの断熱ソフトフェルトを用いて作成している。同時に、前記ラウンドキャップ11も保温断熱層22と同じ非磁性断熱素材のナノベース断熱ソフトフェルトを用いて作成しており、これにより、加熱時のエネルギー損失を防止でき、エネルギーの節約になる。本発明の保温断熱層22と外側ケーシング21との間には、空気流路28がさらに形成され、図2に示すように、当該空気流路28は、空気入口12及び通気ロ27とそれぞれ連通し、外気は、空気入口12から空気流路28に入った後、通気口27を経て加熱キャビティ26に入り、最後に喫煙者がフィルタ13を吸うとフィルタを通って喫煙者の口に入る。
[0046]前記電磁誘導システムは、誘導コイルと温度制御回路とを含み、前記誘導コイルは、保温断熱層22上にらせん状に巻かれ、前記温度制御回路は、図2に示すように、誘導コイルに接続される。前記温度制御回路は、誘導コイルと直列に接続された電源と、スイッチと、コントローラとを含み、前記外側ケーシング21には操作パネル29がさらに設けられ、前記操作パネル29はスイッチ及びコントローラにそれぞれ電気的に接続され、操作パネル29によってスイッチやコントローラの操作が実現される。本発明は、温度制御回路の制御のもと、正確な加熱温度制御を容易に実現できるため、誘導コイルを介してたばこの瞬間加熱を実現することができ、喫煙時の口当たりに対するニーズをよりよく満たすことができる。)
(キ)
[図:0001392038000007.jpg]
(当審訳:[0048]本発明は、電磁誘導システムによって内側ライナ23、底板24、及び円柱形鉄心25を加熱する。すなわち、交番磁界で発生する磁力線が強磁性金属素材を通過するときに、無数の環状渦電流を発生させることができ、渦電流の熱効果により金属素材自体が急速に熱を発し、これによって、加熱速度を向上させ、熱効率を高めることができる。)
(ク)
図1
[図:0001392038000008.jpg]
図2
[図:0001392038000009.jpg]
図3
[図:0001392038000010.jpg]
イ 甲1の記載から分かること
(ア)上記アにおける図1、図3、【0027】、【0043】、及び【0048】の記載によると、外側ケーシング21及び保温断熱層22は、その内部に、交番磁界で発生する磁力線により加熱され、一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25と、内側ライナ23内部に形成された、たばこを受け入れる加熱キャビティ26を収容するものであるから、たばこを加熱する領域を定めるとともに、たばこを加熱する領域の範囲を定めるものであって、さらに、たばこを受け入れるように構成されたものであるといえる。
(イ)図1の記載から、外側ケーシング21の端部が、たばこを加熱する領域の端部に位置していることが分かる。
(ウ)図1の記載から、誘導コイルは、円柱形鉄心25及びたばこを加熱する領域を内部に定める外側ケーシング21及び保温断熱層22に対して固定位置にあることが分かる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイから、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「たばこを加熱して、たばこの芳香を得るためのたばこ喫煙システムであって、
たばこを加熱する領域を定めるとともに、たばこを加熱する領域の範囲を定める外側ケーシング21及び保温断熱層22であって、たばこを加熱する領域は、たばこを受け入れるように構成されている、外側ケーシング21及び保温断熱層22と、
交番磁界を発生させる装置と、
外側ケーシング21の端部であって、たばこを加熱する領域の端部を定める外側ケーシング21の端部と、
たばこを加熱する領域に設けられた、一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25と、
を備え、
一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25は、交番磁界による環状渦電流の発生によって加熱可能であり、たばこを加熱する領域を加熱し、
交番磁界を発生させる装置が、誘導コイルと、コントローラとを備え、誘導コイルは、一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25並びにたばこを加熱する領域に対して固定位置にある、たばこ喫煙システム。」
(2)甲2
ア 甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
エアロゾル発生装置であって、
エアロゾル形成基材を収容するように構成された基材収容キャビティと、
前記基材収容キャビティ内に配置される内部加熱器と、
前記基材収容キャビティの周囲の周りに配置される外部加熱器と、
前記外部加熱器の温度が前記内部加熱器の温度よりも低いように、前記内部加熱器又は前記外部加熱器の一方に又は前記内部加熱器及び前記外部加熱器の両方に電力を供給するように構成されたコントローラと、を備えるエアロゾル発生装置。」
(イ)「【0008】
本明細書で用いる場合、「エアロゾル発生物品」又は「喫煙物品」は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出することができるエアロゾル形成基材を備える物品を指す。例えば、エアロゾル発生物品は、ユーザの口腔を通してユーザの肺に直接吸入されるエアロゾルを形成する喫煙物品とすることができる。エアロゾル発生物品は、廃棄することができる。用語「喫煙物品」は、以下で一般に用いる。喫煙物品は、タバコスティックであり又はこれを含むことができる。」
(ウ)「【0019】
エアロゾル発生装置は、電気加熱式喫煙システムとすることができ、電気式内部及び外部加熱器を備えることができる。
【0020】
電気加熱要素は、電気抵抗材料を含むことができる。適切な電気抵抗材料としては、限定されるものではないが、ドープセラミックスのような半導体、導電性セラミックス(例えば、二珪化モリブデン)、炭素、グラファイト、金属、金属合金、及びセラミック材料及び金属材料から作られる複合材料を挙げることができる。このような複合材料は、ドープ又は非ドープセラミックスを含むことができる。適切なドープセラミックスの例としてはドープ炭化ケイ素を挙げることができる。適切な金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、金、銀、及び白金族金属を挙げることができる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル-、コバルト-、クロム-、アルミニウム-チタニウム-ジルコニウム-、ハフニウム-、ニオビウム-、モリブデン-、タンタル-、タングステン-、錫-、ガリウム-、マンガン、金-、及び鉄含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timetal(登録商標)、及び鉄-マンガン-アルミニウムベースの合金をベースにした超合金を挙げることができる。複合材料において、随意的にエネルギ伝達の動力学及び所要の外部物理化学的特性に基づいて、電気抵抗材料は、絶縁材料に埋め込むこと、封入すること、又はそれでコーティングすること、又はその逆とすることができる。代替的に、電気加熱器は、赤外線加熱要素、光学的ソース、又は誘導加熱要素を含むことができる。
【0021】
内部加熱器は、任意の適切な形態とすることができる。例えば、内部加熱器は、加熱ブレードの形態とできる。代替的に、内部加熱器は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基材、又は電気抵抗性の金属管体の形態とすることができる。代替的に、内部加熱器は、エアロゾル形成基材の中心を貫通する1つ又はそれ以上の加熱ニードル又はロッドとすることができる。別の代替例として、例えば、Ni-Cr(ニッケル-クロム)、白金、金、銀、タングステン、又は合金ワイヤである加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートを含む。随意的に、内部加熱要素は、硬質担体材料上に堆積させることができる。このような1つの実施形態において、電気抵抗加熱器は、温度と抵抗率との間に所定の関係を有する金属を用いて形成することができる。このような例示的な装置において、セラミック材料のような適切な絶縁材料上に金属トラックを形成し、次にガラスのような他の絶縁材料でサンドイッチすることができる。このようにして形成された加熱器は、作動時に加熱器を加熱すると共に温度を監視するために使用することができる。」
(エ)「【0027】
喫煙物品の全長は、約30mmから約100mmとすることができる。喫煙物品の外径は、約5mmから約12mmとすることができる。喫煙物品はフィルタプラグを備えることができる。フィルタプラグは、喫煙物品の下流端に設けることができる。フィルタプラグは、セルロースアセテートフィルタプラグとすることができる。1つの実施形態において、フィルタプラグの長さは約7mmであるが、約5mmから約10mmの長さをもつことができる。」
(オ)「【0041】
外部加熱器は、温度が125℃から175℃の間になるように制御することができる。内部加熱器は、温度が200℃から450℃の間となるように制御することができる。使用時、外部加熱器の温度は、エアロゾル形成基材の温度よりも低いが、周囲温度よりも高くすることができる。」
(カ)「【0049】
図2は、1つの実施形態による加熱器構成の概略断面図である。図2は、基材が挿入される装置の前側部分のみを示す。ハウジングは、端部が開放され、エアロゾル形成基材2(破線で示す)を挿入できる基材収容キャビティを規定する。キャビティは、ユーザが吸煙する喫煙物品の形態とされた円筒形基材を収容するように構成されている。
【0050】
加熱器は、3つの別体の加熱要素である、内部加熱要素22及び2つの外部加熱要素24、26を備える。内部加熱器22は、基部21に支持されたブレードの形態であり、図3aにより明確に示されている。内部加熱要素22は、基材の内部に収容されるように構成されている。図3bにより明確に示された外部加熱要素24及び26は、喫煙物品の外面に近接又は接触する状態で配置される。外部加熱要素24、26は、弓形の横断面を有し、キャビティの周囲の周りに延びる。
【0051】
外部加熱器は、ハウジング10内の支持構造部50に取り付けられる。支持構造部は、図3cにより明確に示され、内部に形成された複数の孔を有する円筒形シェル52を備える。外部加熱要素24及び26は、該加熱要素24、26から支持構造部50及びハウジング10への伝熱損失を抑制するために、シェル上のらせん内部リブ構造部56上に支持される。キャップ構造部58は加熱器を所定位置に固定するために設けられる。
【0052】
図3aには、支持基部21の内部加熱要素22が示されている。内部加熱器は、白金トラックが堆積されたセラミック材料で形成されたブレードの形態である。加熱器は、白金トラックの両端に電圧を流すことで作動する。ブレードは、エアロゾル形成基材2に対して容易に挿入及び除去できるような形状とされる。
【0053】
図3bは、図3aの内部加熱要素22の斜視図であり、外部加熱要素24、26が内部加熱要素22及び基部21の一部の周りに配置されている。図3bに示すように、外部加熱要素は、基材収容キャビティの周囲の周りに延びる湾曲した又は弓形のシートから形成される。外部加熱要素は、可撓性ポリイミドシートから形成され、該ポリイミドシート間に抵抗加熱トラックが形成される。このタイプの可撓性加熱器は、米国ミネソタ州ミネアポリス市コマースレーン7300所在のMincoから入手することができる。」
(キ)「【0063】
内部加熱要素74は、スリーブ73の内面上に形成され、スリーブの周囲の周りに延びる。内部加熱要素は、取出スリーブ上に形成された電気抵抗性トラックであり、白金製とすることができる。外部加熱要素74に電力を供給するために電気接点75が設けられており、この電気接点75により、スリーブ73の内面上の抵抗性トラックと、スリーブ73の外面の接触領域との間が電気的に接続される。接点75は、スリーブ73が完全に挿入位置にある場合にハウジング接点76と接触する。ハウジング接点76は、図1を参照して説明したエアロゾル発生装置のコントローラ及びバッテリに電気的に接続される。」
(ク)
[図:0001392038000011.jpg]
[図:0001392038000012.jpg]
イ 甲2の記載から分かること
図2、図3aないし図3c、及び図5から、内部加熱器22が、長さに垂直な断面が矩形であって、幅と奥行きを有し、内部加熱器22の長さが幅より長く、断面の幅が断面の奥行きより広い形状を有していることが分かる。
ウ 甲2に記載された技術
上記ア及びイから、甲2には、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。
「基材収容キャビティ内に配置される内部加熱器22と、基材収容キャビティの周囲に配置される外部加熱器24、26からなるエアロゾル発生装置において、内部加熱器22、外部加熱器24、26の3つの加熱器はそれぞれが別体となるように形成するとともに、内部加熱器22の形状を、内部加熱器22の長さに垂直な断面が矩形であって、幅と奥行きを有し、内部加熱器22の長さが幅より長く、断面の幅が断面の奥行きより広い形状とする技術。」
3 当審の判断
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明における「たばこ」は、本件訂正発明1における「喫煙材」に相当し、甲1発明における「たばこの芳香を得るための」、「たばこ喫煙システム」は、本件訂正発明1における「喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための」、「装置」に相当する。
イ 甲1発明における「たばこを加熱する領域」は、本件訂正発明1における「加熱領域」に相当し、甲1発明における「たばこを加熱する領域を定めるとともに、たばこを加熱する領域の範囲を定める」こと及び「外側ケーシング21及び保温断熱層22」は、本件訂正発明1における「加熱領域を画定すると共に当該加熱領域の範囲を定める」こと及び「本体」に相当し、甲1発明における「たばこを加熱する領域は、たばこを受け入れるように構成されている」ことは、本件訂正発明1における「当該加熱領域は、喫煙材を備える物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成されている」ことに相当する。
ウ 甲1発明における「交番磁界」は、本件訂正発明1における「変動磁場」に相当し、甲1発明における「交番磁界を発生させる装置」は、本件訂正発明1における「変動磁場を発生させるように構成された」、「磁場発生器」に相当する。
エ 甲1発明における「外側ケーシング21の端部」は、本件訂正発明1における「本体の端部の端部部材」に相当し、甲1発明における「たばこを加熱する領域の端部を定める」ことは、本件訂正発明1における「加熱領域の端部を画定する」ことに相当する。
オ 甲1発明における「一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25」は、「交番磁界による環状渦電流の発生によって加熱可能であり、たばこを加熱する領域を加熱」するものであるから、甲1発明における「一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25」と、本件訂正発明1における「加熱領域内に突出する細長い加熱素子」とは、「加熱部材」という限りにおいて一致する。
カ 甲1発明における「一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25」は、「交番磁界による環状渦電流の発生によって加熱可能」なものであるから、「一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25」自体が加熱材であるから、本件訂正発明1における「加熱材を備えて」いるものに相当する。
そして、甲1発明における「交番磁界による環状渦電流の発生によって加熱可能であ」ることは、本件訂正発明1における「変動磁場の侵入によって加熱可能」であることに相当する。
キ 甲1発明における「誘導コイル」は、本件訂正発明1における「コイル」に相当し、甲1発明における「コントローラ」は、交番磁界を発生させるものであるから、本件訂正発明1における「コイルに変動電流を流すように構成されたデバイス」に相当する。
ク 甲1発明における「誘導コイルは、一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25並びにたばこを加熱する領域に対して固定位置にある」ことと、本件訂正発明1における「前記コイルは、前記加熱素子及び前記加熱領域に対して固定位置にあ」ることとは、「前記コイルは、前記加熱部材及び前記加熱領域に対して固定位置にある」こと、という限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
加熱領域を画定すると共に当該加熱領域の範囲を定める本体であって、当該加熱領域は、喫煙材を備える物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成されている、本体と、
変動磁場を発生させるように構成された磁場発生器と、
前記本体の端部の端部部材であって、前記加熱領域の端部を画定する端部部材と、
加熱部材と、
を備え、
前記加熱部材は、加熱材を備えており、前記加熱材は、前記変動磁場の侵入によって加熱可能であり、前記加熱領域を加熱し、
前記磁場発生器が、コイルと、前記コイルに変動電流を流すように構成されたデバイスとを備え、前記コイルは、前記加熱部材及び前記加熱領域に対して固定位置にある、装置。」
[相違点]
「加熱部材」が、本件訂正発明1においては、「加熱領域内に突出する細長い加熱素子」であって、「前記加熱素子が長さ、及び前記長さに垂直な断面を有し、前記断面が幅及び奥行きを有し、前記加熱素子の前記長さが前記断面の前記幅より長く、前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きより広い」のに対して、甲1発明においては、「一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25」であって、「長さ、及び前記長さに垂直な断面を有し、前記断面が幅及び奥行きを有し」、「前記長さが前記断面の前記幅より長く、前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きより広い」形状の「加熱素子」を有しない点。
以下、相違点について検討する。
[相違点について]
甲2技術は、「基材収容キャビティ内に配置される内部加熱器22と、基材収容キャビティの周囲に配置される外部加熱器24、26からなるエアロゾル発生装置において、内部加熱器22、外部加熱器24、26の3つの加熱器はそれぞれが別体となるように形成するとともに、内部加熱器22の形状を、内部加熱器22の長さに垂直な断面が矩形であって、幅と奥行きを有し、内部加熱器22の長さが幅より長く、断面の幅が断面の奥行きより広い形状とする技術」であって、基材収容キャビティ内に配置される内部加熱器22の形状は、「内部加熱器22の長さに垂直な断面が矩形であって、幅と奥行きを有し、内部加熱器22の長さが幅より長く、断面の幅が断面の奥行きより広い形状」である。
ここで、甲1発明における「一体的構造となっている内側ライナ23、底板24及び円柱形鉄心25」に関する記載について検討すると、甲1には、
「円柱形鉄心25は円柱構造であり、当該円柱形鉄心25の底端は底板24に接続され、当該円柱形鉄心25は、図2に示すように、全体が加熱キャビティ26の内部に位置している」(上記2(1)ア(カ)段落[0044])、
「円柱形鉄心の設置はタバコに対した均一加熱を実現することができ、タバコを十分加熱することができ」る(上記2(1)ア(イ)段落[0020])、
「内側ライナ23は中空の円柱構造、つまり当該内側ライナ23は横断面が円環形である」(上記2(1)ア(カ)段落[0042])
「本発明の内側ライナ、底板及び円柱形鉄心は一体的構造とし、内側ライナと底板及び円柱形鉄心相互間の熱伝導効率を高めることができ、これによって加熱キャビティ内のたばこに対する均一加熱を実現する」(上記2(1)ア(エ)段落[0027])
「図1~3に示すように、電磁加熱によるたばこ喫煙システムは、たばこ粉末、細断たばこ及び円環形のたばこ製品を非燃焼加熱するのに適して」(上記2(1)ア(オ)段落[0040])いることが記載されている。
そして、これらの記載を総合すると、甲1発明の加熱部材における「円柱形鉄心25」は、円柱構造であることにより、内側ライナ23の横断面を円環形とするものであって、円環形のたばこ製品を加熱することを可能とするものであり、円柱形鉄心25を、内側ライナ23、底板24と一体的に構成するとともに、内側ライナ23の内部に設けることによって均一加熱を実現するものであるといえる。
また、内側ライナ23の横断面を円環形とするため、内側ライナ23の内部の中心付近に設けられた円柱形鉄心25を円柱構造とすること(上記2(1)ア(ク)図3)は、円柱形鉄心25の外周面から内側ライナ23の内周面までの距離をいずれの部分でも等しくなることから、タバコに対する均一加熱の実現のために必要な事項であると認められる。
よって、甲1発明において、加熱部材における円柱形鉄心25が円柱構造を有することは、上記「均一加熱を実現する」ということとの対応において前提となる構成というべきである。
一方、甲2技術における加熱器は、「3つの別体の加熱要素である、内部加熱要素22及び2つの外部加熱要素24、26を備える」ものであり、「内部加熱器22は、基部21に支持されたブレードの形態」(上記2(2)ア(カ)段落【0050】)であって、内部加熱器22は、抵抗加熱要素からなるものである(上記2(2)ア(ウ)段落【0021】)。なお、上記2(2)ア(ウ)段落【0020】末行には「電気加熱器は、・・誘導加熱要素を含むことができる」と記載されているが、当該記載は、電気加熱器に対する一般的な例示にすぎず、内部加熱器22の具体例として誘導加熱要素が記載されているものではない。
そうすると、甲1発明における「円柱形鉄心25」は、円柱構造であることが前提となる構成であるばかりか、甲2技術における、加熱要素が、それぞれが別体となるように形成された内部加熱器22と2つの外部加熱器24、26からなり、抵抗加熱要素からなる「内部加熱器22」と、甲1発明における、内側ライナ23、底板24とともに一体的構造となっており、交番磁界による環状渦電流の発生によって加熱可能な「円柱形鉄心25」とは、加熱原理や基本構成において互いに異なるものであるから、甲1発明における円柱形鉄心25に代えて、甲2技術における内部加熱器22を採用する動機付けを見いだすことはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明あるいは、甲1発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明2、3及び5ないし18について
本件訂正発明2、3及び5ないし18は、請求項の記載を他の記載に置き換えることなく本件訂正発明1を直接的あるいは間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件訂正発明2、3及び5ないし18は、甲1発明との対比において上記相違点を含むものである。
したがって、本件訂正発明2、3及び5ないし18は、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明ではなく、甲1発明あるいは、甲1発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和4年7月29日提出の意見書において、概ね次のとおりの主張をしている。
(1)主張1:「甲1発明が備える円柱形鉄心25は、鉄心全体が均一に熱を発しているのではなく、表面に近い部分ほど熱をより多く発していることは当業者であれば明らかであるため、甲1発明が備える円柱形鉄心25において、より急速に熱を発することを目的として、甲1発明が備える鉄心25の表面積を増加させることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、甲1発明が備える鉄心25の表面積を増加させて、誘起される渦電流量を増大し、より大きなジュール熱を生じさせ、より急速に熱を発することが可能となるように、甲1発明が備える円柱形状の鉄心25を、円柱形状に比べて表面積が大きい甲第2号証などに記載されたようなブレード形状に変更することは、当業者が容易に想到し得たことである。」(意見書第6ページ第21行ないし第7ページ第1行)
(2)主張2:「甲1発明が備える円柱形鉄心25は、鉄心全体が均一に熱を発しているのではなく、表面に近い部分ほど熱をより多く発していることは当業者であれば明らかであるため、甲1発明が備える円柱形状の鉄心25を、円柱形状に比べて表面積が大きい甲第2号証に記載されたようなブレード形状に変更することにより、甲1発明が備える鉄心25の表面積が増加し、誘起される渦電流量が増大し、より大きなジュール熱が発生し、より急速に熱を発することが可能となることは、甲第1号証及び本件特許出願時の技術常識から容易に予測できる。」(意見書第7ページ第20ないし27行)
(3)主張1及び2について
上記3(1)で判断したとおり、甲2技術における内部加熱器22が、内部加熱器22の長さ方向に垂直な断面が矩形であって、幅と奥行きを有し、内部加熱器22の長さが幅より長く、断面の幅が断面の奥行きより広い形状を有するものであったとしても、甲1発明における円柱形鉄心25とは加熱原理や基本構成において異なるものである以上、甲1発明における円柱形鉄心25に代えて、甲2技術における内部加熱器22を採用する動機付けを見いだすことはできない。
よって、上記異議申立人の主張1及び2は採用できない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
[理由3](進歩性)
本件訂正による請求項19に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[理由3についての判断]
本件訂正発明19は、請求項の記載を他の記載に置き換えることなく本件訂正発明1を間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件訂正発明19は、甲1発明との対比において上記相違点を含むものである。
したがって、本件訂正発明19は、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲2の記載(上記2(2)ア(エ)【0027】、(ク)図1、図2)によると、フィルタプラグは喫煙物品の下流側に設けられるものであり、喫煙物品の上流側に挿入される内部加熱器22とは接触せず、ワイパーとして機能しないことは明らかであるから、本件訂正発明19は、甲1発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由、並びに各証拠によっては、請求項1-3、5-19に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1-3、5-19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、請求項4に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701191