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特許異議申立

2025-700609

ニコチンパウチ製品

審判番号
2025-700609
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-572510
登録番号
7597742
請求日
2025年06月10日
審決日
2026年06月15日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】松田 七重
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【異議申立人】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
  • 【異議申立人代理人】池田 成人
  • 【異議申立人代理人】酒巻 順一郎
審判長/審判官
  • 審判長 大山 健
  • 審判官 鈴木 充
  • 審判官 多賀 和宏
分類
P1651.113-Y (A24B) / P1651.121-Y (A24B) / P1651.16 -Y (A24B) / P1651.536-Y (A24B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7597742号発明「ニコチンパウチ製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7597742号の請求項1~17に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7597742号(以下「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)6月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年6月7日(DK)デンマーク王国、2019年9月30日(DK)デンマーク王国、2019年9月30日(DK)デンマーク王国、2019年9月30日(DK)デンマーク王国)を国際出願日とする出願であって、令和6年12月2日に設定登録がされ、令和6年12月10日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。 令和7年6月10日 :特許異議申立人 ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド(以下「申立人」という。)による請求項1~17に係る特許に対する特許異議の申立て 令和7年8月 1日 :手続補正書(方式)の提出(申立人) 令和7年9月29日付け:取消理由通知 令和8年1月 5日 :特許権者による意見書の提出 令和8年2月16日 :手続補正書(方式)の提出(特許権者) 第2 本件発明 本件特許の請求項1~17に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明17」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 ニコチンパウチ詰め製品であって、 パウチ組成物と、 前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、 を含み、 前記パウチ組成物は: 少なくとも1つの水不溶性繊維と、 前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、 ニコチンと、 を含み、 前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む、ニコチンパウチ詰め製品。 【請求項2】 前記少なくとも1つの水不溶性繊維が、非タバコ繊維である、請求項1記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項3】 前記少なくとも1つの水不溶性繊維が粉末として提供され、前記パウチ膜は、少なくとも1つのさらなる水不溶性繊維を含む、請求項1または2に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項4】 前記パウチ詰め製品中の前記ニコチンの総含有量の少なくとも15重量%が、経口投与時に120秒以内の期間内に放出される、請求項1~3のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項5】 前記パウチ詰め製品の前記ニコチンは、ニコチン塩、イオン交換樹脂と混合された遊離塩基ニコチン、イオン交換樹脂と複合体を形成した遊離塩基ニコチン、水溶性組成物と混合された遊離塩基ニコチン、脂肪酸と関連するニコチン、およびそれらの任意の組み合わせ、から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項6】 前記パウチ詰め製品の前記ニコチンは、イオン交換樹脂と混合された遊離塩基ニコチンである、請求項1~5のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項7】 前記パウチ組成物が糖アルコールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項8】 前記パウチ組成物は、前記パウチ組成物の少なくとも1重量%の量で糖アルコールを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項9】 前記糖アルコールは、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、加水分解水添デンプン、イソマルト、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7または8に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項10】 前記パウチ詰め製品は、前記パウチ膜を、前記パウチ詰め製品の20重量%までの量で含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項11】 前記パウチ膜が不織布または織布の材料を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項12】 前記パウチ膜は繊維を含み、前記パウチ膜の繊維は前記繊維の少なくとも60重量%の量でセルロースを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項13】 前記パウチ膜に位置する前記ニコチンの量は、前記パウチ詰め製品中の前記ニコチンの総含有量の少なくとも20重量%である、請求項1~12のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項14】 前記パウチ膜中の前記さらなるニコチンは、前記パウチ組成物からニコチンを前記パウチ膜中に処理することによって提供され、 前記パウチ膜中の前記ニコチンは、フィルムコーティングまたは噴霧によって前記パウチ膜に塗布され、 前記パウチ膜中の前記ニコチンは、前記パウチ詰め製品を液体ニコチンに浸漬することによって前記パウチ膜に塗布され、または、 前記パウチ膜の製造中にさらなるニコチンが前記パウチ膜に塗布される、 請求項1~13のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項15】 前記パウチ組成物中の前記ニコチンは、前記パウチ膜中の前記さらなるニコチンと同じ形態である、請求項1~14のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項16】 前記パウチ組成物の前記水不溶性繊維は、水不溶性植物繊維、コムギ繊維、エンドウマメ繊維、コメ繊維、メイズ繊維、オートムギ繊維、トマト繊維、オオムギ繊維、ライムギ繊維、サトウダイコン繊維、ソバ繊維、ジャガイモ繊維、リンゴ繊維、カカオ繊維、竹繊維、ふすま繊維、粉末セルロース、MCC(微結晶セルロース)、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。 【請求項17】 前記パウチ組成物は、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、加水分解水添デンプン、イソマルト、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される糖アルコールを含み、 前記パウチ組成物は、前記糖アルコールを、前記パウチ組成物の1~80重量%の量で含み、 前記パウチ組成物が、前記パウチ組成物の5~50重量%の量で水不溶性繊維をさらに含み、かつ、 前記パウチ組成物が、塩基性pH制御剤であるpH制御剤を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由通知の概要 当審が令和7年9月29日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性) 本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 <引用文献(甲号証)> (1)国際公開第2018/197454号(甲第1号証であって、以下「甲1」という。) (2)実験成績証明書(甲第2号証であって、以下「甲2」という。) (3)特表2013-523163号公報(甲第3号証であって、以下「甲3」という。) 2 その他の甲号証 また、申立人は、その他の甲号証として、以下の文献を提出した。 (4)中国特許出願公開第108285441号明細書(甲第4号証であって、以下「甲4」という。) (5)米国特許出願公開第2004/0123873号明細書(甲第5号証であって、以下「甲5」という。) (6)国際公開第2015/067372号(甲第6号証であって、以下「甲6」という。) (7)国際公開第2019/110076号(甲第7号証であって、以下「甲7」という。) (8)特願2021-544612号(特表2022-519542号)(甲第8号証の2であって、以下「甲8」という。) (9)宣誓書(Christopher Keller /R.J. Reynolds Company)(甲第13号証であって、以下「甲13」という。) (10)CORESTA Guide N゜11 Technical Guide for Sample Handling of Smokeless Tobacco and Smokeless Tobacco Products May 2020 (甲第14号証であって、以下「甲14」という。) なお、甲第9号証~甲第12号証は、本件特許の優先権に係る書類である。 第4 当審の判断 1 甲号証の記載 (1)甲1 甲1には、以下の事項が記載されている。訳は、申立人が提出した「甲第1号証抄訳」を参考にした。下線は、当審が付与した。以下同様。 ア「According to a first aspect of the present disclosure, there is provided an oral pouched nicotine product comprising a moist filling material and a saliva-permeable pouch of a packaging material enclosing the moist filling material, the moist filling material comprising a particulate non-tobacco material; a flavouring agent; a nicotine source; and a pH adjusting agent; wherein the moist filling material further comprises within the range of from about 0.5 to about 20% by weight, such as from about 0.5 to about 10% by weight, based on total weight of the filling material, of triglyceride. The oral pouched nicotine product may further comprise a tobacco material within the range of from about 0 wt% to about 10 wt%, based on the total weight of the moist filling material. Thus, there is provided an oral pouched nicotine product comprising a moist filling material and a saliva- permeable pouch of a packaging material enclosing the moist filling material, the moist filling material comprising a particulate non-tobacco material; a flavouring agent; a nicotine source; a pH adjusting agent; a tobacco material within the range of from about 0 wt% to about 10 wt%, based on the total weight of the moist filling material, and triglyceride within the range of from about 0.5 wt% to about 20 wt% such as from about 0.5 wt% to about 10 wt% based on the total weight of the moist filling material.」(3ページ29行~4ページ12行) [当審訳] 「本開示の第1の態様によれば、湿潤充填材と、該湿潤充填材を囲む包装材の唾液透過性ポーチとを含む経口用ポーチ入りニコチン製品が提供され、該湿潤充填材は、粒状非タバコ材料、香味料、ニコチン源、およびpH調整剤を含み、該湿潤充填材は、充填材の全重量を基準として、約0.5~約20重量%、例えば約0.5~約10重量%の範囲内のトリグリセリドをさらに含む。経口用パウチ入りニコチン製品は、さらに、湿潤充填材料の全重量を基準として、約0 重量%~約10 重量%の範囲内のタバコ材料を含んでもよい。したがって、湿潤充填材と、該湿潤充填材を囲む包装材の唾液透過性ポーチとを含む経口用ポーチ入りニコチン製品が提供され、該湿潤充填材は、粒状の非タバコ材料、香味料、ニコチン源、pH 調整剤、該湿潤充填材の総重量を基準として約 0 重量%~約 10重量%の範囲内のタバコ材料、および該湿潤充填材の総重量を基準として約 0.5 重量%~約10 重量%などのような約 0.5 重量%~約 20 重量%の範囲内のトリグリセリドを含む。」 イ「The pouch of the oral pouched product may be made of any suitable saliva- permeable (and preferably non-dissolvable) packaging material, such as non-woven. A binder may be included in the packaging material to facilitate sealing of the material by ultrasonic welding. The packaging material (herein also called pouch material) may be a nonwoven material comprising staple fibres of regenerated cellulose, such as viscose rayon staple fibres, and a binder, such as a polyacrylate. The packaging material may also comprise additional ingredients, such as flavouring agents and/or colorants.」(7ページ18~26行) [当審訳] 「経口用パウチ製品のパウチは、不織布などの、唾液透過性(好ましくは非溶解性)の任意の適切な包装材料から作製され得る。超音波溶接による材料の密封を容易にするために、包装材料にバインダーが含まれる場合がある。 包装材料(本明細書ではパウチ材料とも呼ばれる)は、再生セルロースのステープルファイバー(例えば、ビスコース レーヨン ステープル ファイバー)と、バインダー(例えば、ポリアクリレート)とを含む不織布材料であってもよい。 包装材料には、香料および/または着色料などの追加の成分も含まれ得る。」 ウ「The moist filling material of the oral pouched nicotine product as disclosed herein may have a moisture content within the range of from about 10 to about 60% by weight, such as from about 20 to about 60% by weight or from about 30 to about 60% by weight or from about 40 to about 60% by weight, from about 40 to about 55% by weight, from about 35 wt% to about 55 wt% or from about 50 wt% to about 60 wt%, based on the total weight of the moist filling material.」(8ページ26~31行) [当審訳] 「本明細書に開示される経口用パウチ入りニコチン製品の湿潤充填材は、湿潤充填材の全重量を基準として、約10~約60重量%、例えば約20~約60重量%、約30~約60重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約35重量%~約55重量%、または約50重量%~約60重量%の範囲内の水分含有量を有し得る。」 エ「In particular, the particulate non-tobacco material may comprise or consist of microcrystalline cellulose.」(10ページ20~21行) [当審訳] 「特に、粒子状非タバコ材料は、微結晶セルロースを含むか、またはそれから構成され得る。」 オ「Additionally or alternatively, the nicotine source may be nicotine bound to an ion- exchange resin. For instance, the nicotine source may be nicotine polacrilex.」(11ページ7~8行) [当審訳] 「加えてまたは代わりに、ニコチン源はイオン交換樹脂に結合したニコチンであってもよい。例えば、ニコチン源はニコチンポラクリレックスであってもよい。」 カ「 [図:0001437379000001.jpg] 」(19ページ) [当審訳] 「 [図:0001437379000002.jpg] 」 キ「The dry ingredients MCC, NaCI and nicotine bitartrate were mixed with the oil in a Kenwood mixer (Major Titanium) at minimum speed for 2 minutes. 31 g of an aqueous 50% w/w KOH solution was added to 410 g (410 ml) water in a container and stirred. The resulting aqueous KOH solution was then added to the dry ingredients during mixing for 5 minutes at speed 1 . For the reference sample, 31 g of an aqueous 50% w/w KOH solution was added to 510 g (510 ml) water in a container and stirred. The resulting aqueous KOH solution was then added to the dry ingredients during mixing for 5 minutes at speed 1. The flavour was thereafter added to the mixture and the final composition was mixed 4 minutes at minimum speed. Each of the Sample 5 composition and the reference composition was thereafter portion-packed in a semi-permeable packaging material of nonwoven using heat-melt welding thereby providing oral pouched products.」(19ページ4~16行) [当審訳] 「乾燥成分のMCC、NaCl、ニコチン酒石酸塩をKenwoodミキサー(MajorTitanium)で最低速度で2分間オイルと混合した。 31gの50%w/w KOH水溶液410gを容器内の水410g(410ml)に加え、撹拌した。得られたKOH水溶液を乾燥成分に加え、速度1で5分間混合した。 参照サンプルについては、容器内の水510g(510ml)に50%w/wKOH水溶液31gを加えて攪拌した。得られたKOH水溶液を乾燥成分に加え、速度1で5分間混合した。 その後、混合物にフレーバーを加え、最終組成物を最低速度で4分間混合した。 その後、サンプル5組成物および参照組成物のそれぞれを、熱溶融溶接を使用して不織布の半透過性包装材料に小分けして包装し、経口用パウチ製品を得た。」 上記によれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 [甲1発明] 「湿潤充填材と、該湿潤充填材を囲む包装材の唾液透過性パウチとを含む経口用パウチ入りニコチン製品であって、 前記湿潤充填材は、微結晶セルロース(MCC)、酒石酸ニコチン二水和物、水酸化カリウム、水等を含み、水は湿潤充填材の総量に基づいて42%又は52%の量で存在し、 前記包装材は、再生セルロースのステープルファイバーと、バインダーを含む不織布材料である、経口用パウチ入りニコチン製品。」 (2)甲2 甲2には、以下の事項が記載されている。 ア「2.実験の目的 甲第1号証(国際公開第2018/197454号)の実施例2に記載の経口用ポーチ入りニコチン製品及び甲第8号証(国際公開第2020/157280号)の実施例3に記載の経口用袋入りニコチン製品を製造し、得られた製品におけるニコチン量を測定し、本件特許(特許第7597742号)の請求項1における「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」という要件、請求項13における「前記パウチ膜に位置する前記ニコチンの量は、前記パウチ詰め製品中の前記ニコチンの総含有量の少なくとも20重量%である」という要件、請求項14における前記「パウチ膜中の前記さらなるニコチンは、前記パウチ組成物からニコチンを前記パウチ膜中に処理することによって提供され」という要件、請求項15における「前記パウチ組成物中の前記ニコチンは、前記パウチ膜中の前記さらなるニコチンと同じ形態である」という要件を充足することを検証した。 なお、甲第1号証の実施例2及び甲第8号証の実施例3の記載の中には、具体的な操作や材料が不明である点もあったが、当業界において一般的な条件を適用して、複数の条件で実験を行った。 また、甲第1号証の実施例2及び甲第8号証の実施例3においては、製造直後、及び製造後所定の保管期間経過後に分析を行っているが、本実験においても同様に製造直後、及び製造後所定の保管期間経過後に分析を行った。」(1ページ6~23行) イ「3.甲第1号証の実施例2の再現実験 (試験方法とサンプル) 以下の組成物OT100とOT200(甲第1号証の実施例2のサンプル5と参照サンプルに対応)をそれぞれパウチ膜に封入したパウチ製品を製造した。」(1ページ24~27行) ウ「 [図:0001437379000003.jpg] 」(2ページ) エ「組成物OT100及びOT200について、標準的な市販のパウチ膜3種を用いて、以下のようにパウチ製品を調製した: (パウチ膜) ・SDH27-ビスコース100%繊維と化学バインダーを使用した不織布フリース、製造販売元: Nonwovenn Ltd, Bath Road, Bridgwater, Somerset, TA6 4NZ, United Kingdom ・Z8732-ビスコース100%繊維と化学バインダーを使用した不織フリース、製造販売元:Tenowo GmbH, Fabrikzeile 21, 95028 Hof, Germany ・Z8713-ビスコース繊維80%、ポリエステル繊維20%および化学バインダーを使用した不織フリース、製造販売元:Tenowo GmbH, Fabrikzeile 21, 95028 Hof, Germany」(2ページ1~11行) オ「検査したサンプルの詳細は以下のとおりである。」(2ページ12行) カ「 [図:0001437379000004.jpg] 」(3ページ) キ「<保管> 表2Aのサンプルに関しては、製造後(すなわち "Day Zero")、甲第1号証の実施例2に従い、オープン・コンテナ(開放容器、すなわち蓋なし)に入れ、周囲条件で10日間保管した。 表2Aのサンプル中、OT100-ABとOT200-ABに関しては、開放保管と密閉保管の比較を行うために、上記保管条件とは別に、密封容器に入れ常温で10日間保管する条件でも保管を行った。密封容器は、従来パウチ製品を入れるのに使用されていた缶を側面ラベルで密封したものである。これらのサンプルをOT100-AB-密封系およびOT200-AB-密封系と呼ぶ。」(4ページ1~9行) ク「(実験結果) 各サンプルのニコチン含有量を以下の時点で測定した: -0日(すなわち製造直後) -製造から2日後 -製造から4日後 -製造から7日後 -製造から10日後 ニコチンは以下のプロトコールに従って測定された: ・1フォーマット、1時点につき6反復サンプリング。空っぽになったフリース中のニコチン含量を3反復測定し、完全なパウチ中のニコチン含量を3反復測定した。平均値は3反復のそれぞれについて計算した。 ・フリースをカットし、粉末を取り除いた。手作業による充填粉末の除去は、手で振ったり、ガス状窒素を吹き付けたりして、粉末が見えなくなるまで行った。フリースには、目には見えないMCCパウダーが残留している可能性がある。 ・すべての複製物(空っぽのフリースと完全なパウチを含む)を、リストアクションシェーカーで1時間、5%水酸化ナトリウムで抽出した。 ・全サンプルを0.45ミクロンのPVDFフィルターでろ過し、液体クロマトグラフィーで分析した。 ・パウチ中のニコチンの総含有量に基づくニコチンの含有率(%)は、以下によって計算された:(フリース中のニコチン含有量3反復の平均値)÷(パウチ中のニコチン含有量3反復の平均値)×100。 各サンプルのパウチ膜中のニコチン量の含有率の結果を以下の表に示す:」(5ページ1~24行) ケ「 [図:0001437379000005.jpg] 」(6ページ) コ「 [図:0001437379000006.jpg] 」(8ページ) サ「 [図:0001437379000007.jpg] 」(9ページ) シ「 [図:0001437379000008.jpg] 」(11ページ) (3)甲3 甲3には、以下の事項が記載されている。 ア「【0048】 さらなる添加剤を、本発明の無煙タバコ組成物もしくは配合物の基礎を形成する組み合わせた非タバコ植物材料およびタバコ材料混合物に混ぜるまたは組み込むことができる。添加剤は人工的であってよく、あるいは草本もしくは生物学的供給源から得てもまたはこれに由来してもよい。代表的な型の添加剤には、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、天然甘味剤(例えば、フルクトース、スクロース、グルコース、マルトース、バニリン、エチルバニリン配糖体、マンノース、ガラクトース、ラクトースなど)、人口甘味剤(例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、ネオテームなど)、有機および無機充填剤(例えば、穀物、加工穀物、パフ穀物、マルトデキストリン、ブドウ糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ラクトース、マニトール、キシリトール、ソルビトール、微粒子セルロースなど)、結合剤(例えば、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の修飾セルロース型の結合剤、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、デンプン系結合剤、アラビアゴム、レシチンなど)、pH調整剤または緩衝剤(例えば、金属水酸化物、好ましくは、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ならびに金属炭酸塩、好ましくは、炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウム、または炭酸水素ナトリウムなどの金属炭酸水素塩などの他のアルカリ金属緩衝剤など)、着色剤(例えば、カラメル色素および二酸化チタンなどを含む、染料および顔料)、湿潤剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコールなど)、オーラルケア添加剤(例えば、タイム油、ユーカリ油および亜鉛)、保存剤(例えば、ソルビン酸カリウムなど)、シロップ(例えば、ハチミツ、高フルクトースコーンシロップなど)、崩壊助剤(例えば、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムデンプン、アルファ化コーンスターチなど)、香味剤および香味混合物、抗酸化剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。必要に応じて、Dube等の米国特許出願公開第2008/0029110号に示されるように、添加剤をマイクロカプセル化することができる。」 イ「実施例1 【0063】 以下のようにタバコブレンドを水で抽出し、得られた水性抽出物を回収することによりタバコ抽出物を調製する: 【0064】 約60部の葉片および約40部の茎であるタバコのブレンドを用意する。タバコのブレンドは、種々の暗色空気乾燥および日干乾燥タバコのブレンドから構成する。ブレンドのタバコを、乾燥および熟成し、これらのタバコをケーシングおよびトップドレッシングなどの添加剤の意図的適用なしで使用する。タバコを微粒子サイズ(例えば、約-18+60メッシュ)に製粉する。次いで、約1部のタバコ粒子(約10%の水分含量を有する)を、約8部の熱水(例えば、約140°F~約160°Fに加熱した水)と接触させる。約1時間後、1分当たり約40ガロンの流体流で、約2000rpmとして作動するSharples 3600 Decanter Centrifugeとして入手可能な型の遠心分離機を使用して、水中へのタバコ水可溶物の抽出液を、水不溶性パルプから分離する。結果として生じる回収したタバコ抽出液を、10ミクロンフィルターバッグを備えるSanborn(シリアル番号MC86-300、M Type 32X18 Perf.)遠心濾過器を使用して濾過する。次いで、得られた水性タバコ抽出物を、約195°Fで作動するワイパー式膜エバポレーター(wiped film evaporator)を使用して、約43%の総タバコ可溶物含量まで濃縮する。次いで、水性タバコ抽出物を密閉容器に入れ、約40°Fで冷蔵により保管する。 【0065】 水性タバコ抽出物を、大気に開いた状態で、約200°Fで約1時間加熱する一方で、混合物を、約32rpmに設定したM5 Littleford Mixerを使用して混合する。作動中、ミキサー蓋を閉めるが、ミキサーは大気にしたままとするので、このような熱処理中に水分の有意な損失は生じない。次いで、抽出液を、約170°Fに冷却する。その時点で、炭酸水素ナトリウムから構成される緩衝剤を混合物に添加する。その時点で、抽出液は、約40部のタバコ可溶物、約53部の水、および約7部の緩衝剤である。緩衝剤で処理した得られたタバコ抽出液を、およそさらに20分間、継続して混合して、約170°Fに維持する。緩衝剤混合物の添加前、タバコ抽出液のpHは約5.2であり、緩衝剤混合物の添加約20分後、抽出液のpHは約8.6である。次いで、処理したタバコ抽出液を、周囲温度に冷却する。 【0066】 水抽出テンサイパルプを以下のように用意し回収する: 【0067】 International Fiber CorporationからFibrex 610-22として入手可能な加工テンサイパルプを用意する。次いで、約10部のそのテンサイパルプ(約6%の水分含量を有する)を、混合ケトル中で約200部の熱水(例えば、約120°Fに加熱した水)に接触させる。得られた混合物を約1時間加熱およびゆっくり攪拌した後、水中へのテンサイ水可溶物の抽出液を、メッシュ靴下(例えば、U.S.50メッシュスクリーンのメッシュに匹敵するスクリーンもしくはフィルター)を通して液体を圧搾することを含む濾過工程を使用して、水不溶性パルプから分離する。得られた湿ったパルプを、140°Fの温度に設定したオーブン中、金属シート上で一晩乾燥させる。約7部の得られた水抽出パルプ(約1%の水分含量を有する)を回収する。 【0068】 タバコ製品を以下のようにタバコ抽出液および水抽出テンサイパルプから製造する: 【0069】 約60部(乾燥重量基準で)の乾燥した、抽出テンサイパルプを、約32部(乾燥重量基準で)のタバコ抽出液と接触させる。この混合物に、約1.3部の塩化ナトリウムを添加する。次いで、約3.5部のプロピレングリコール、1.5部のスクラロースおよび約2部の香味混合物を含む香味パッケージを添加する。前記の各々は、最終製品の水分含量を約25%まで上げるのに十分な水中にある。こうして加工した非タバコ植物材料は、吸収される水性タバコ抽出物を保有する基質を提供する。得られたタバコ製品を、約40°Fの冷蔵下で約3日間熟成する。次いで、スヌース型のタバコ製品を提供するために、約0.6gのタバコ製品を、R.J.Reynolds Tobacco CompanyによりCamel Snus Frostの製造のために使用されている型のフリースパウチの中に入れる。 【0070】 得られたタバコ製品を以下のように使用する: 【0071】 約15個のスヌース型パウチを、従来の型のスヌースブリキ容器に入れる。使用時に、硬質容器を開けて、そこからパウチを取り出し、消費者がパウチを楽しむ。硬質容器は手動で再び閉め、必要に応じて消費者がその容器から追加のパウチを取り出す。必要に応じて、開けた容器を再び閉じる際に優れた密閉がもたらされるよう、容器に適当なシールまたはグロメットを装備させることができる。 【0072】 スヌース形態を有する無煙タバコ製品は、典型的には、無煙タバコ組成物を含む1個のパウチを、ヒト被験体の口に入れることにより使用する。使用中、使用者の口の中の唾液が、無煙タバコ配合物の成分のいくつかに水透過性パウチを通過させ、使用者の口の中に入れる。好ましくはパウチは噛まれず、飲み込まれない。使用者は、タバコ香味および満足感を提供され、タバコ配合物のいかなる部分も吐き出すことを要求されない。使用し楽しんだ約10分~約60分、好ましくは約15分~約45分後、相当量の無煙タバコ組成物が、ヒト被験体により消化され、廃棄するためにヒト被験体の口からパウチを取り出すことができる。 実施例2 【0073】 実施例1に示す一般的な型のタバコ製品を以下のように用意する: 【0074】 水性タバコ抽出物を、一般的に実施例1に示す様式で用意する。International Fiber CorporationからFibrex 610-22として入手可能な加工テンサイパルプを用意し、さらに加工することなく使用する(例えば、加工テンサイパルプを水抽出に供さない)。次いで、タバコ抽出液およびテンサイパルプからタバコ製品を製造する。 【0075】 約60部(乾燥重量基準で)のテンサイパルプを、約32部(乾燥重量基準で)のタバコ抽出液(液体形態である)と接触させる。この混合物に、約1.3部の塩化ナトリウムを添加する。次いで、約3.5部のプロピレングリコール、1.5部のスクラロースおよび約2部の香味混合物を添加する。前記の各々は、最終製品の水分含量を約25%まで上げるのに十分な水中にある。得られたタバコ製品を、約40°Fの冷蔵下で約3日間熟成する。次いで、約0.6gのタバコ製品を、フリースパウチの型の中に入れ、実施例1に示す様式で使用する。」 甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。 [甲3発明] 「フリースパウチの中に入れたタバコ製品であって、 タバコ製品を入れるフリースパウチを含み、 タバコ製品は、水抽出テンサイパルプと、 タバコ製品の約25%の水分と、 タバコブレンドを水で抽出した水性タバコ抽出物とを含んだ、 フリースパウチの中に入れたタバコ製品。」 (4)甲4 甲4には、以下の事項が記載されている。訳は、申立人が提出した「甲第4号証抄訳」を参考にした。 ア「 [図:0001437379000009.jpg] [図:0001437379000010.jpg] 」 [当審訳] 「[0021] 前記タバコ製品が袋入り口腔用タバコである場合、さらにセルロース、水、塩化ナトリウム、芳香剤、pH 調整剤、味修正剤、保湿剤および酸化防止剤を含む; そのうち、前記セルロースは天然繊維、微結晶セルロース、セルロース誘導体のいずれかまたは複数から選ばれ、その重量百分率は45~60%である;前記水の重量百分率は10~30%である;前記塩化ナトリウムの重量百分率は3~5%である;前記芳香剤はレモン、ミント、コーヒー、イチゴ、ブルーベリー、パイナップル、モモ、リンゴ、オレンジ、スイカ、ナツメ、烏梅、オリーブフレーバーのいずれかまたは複数から選ばれ、その重量百分率は5~20%である;前記pH 調整剤は炭酸水素ナトリウムまたは炭酸ナトリウムのいずれかまたは両方から選ばれ、その重量百分率は1~5%である;前記味修正剤は単糖、二糖、三糖、多糖、ポリオール、甘味料のいずれかまたは複数から選ばれ、その重量百分率は1~15%である;前記保湿剤はプロピレングリコールまたはグリセロールのいずれかまたは両方から選ばれ、その重量百分率は1~5%である;前記酸化防止剤はビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、茶ポリフェノールのいずれかまたは複数から選ばれ、その重量百分率は1~5%である;前記ニコチン-マンデル酸塩複合体結晶の重量百分率は1~20%である;」 イ「 [図:0001437379000011.jpg] 」 [当審訳] 「[0023] タバコ製品が加熱式非燃焼型タバコである場合、さらに繊維、発煙剤、不燃性無機充填剤、結合剤、燃焼促進剤、香料およびフレーバーを含む;ここで、繊維は植物繊維、人工繊維、合成繊維および鉱物繊維からなる群から選択される1種以上であり、その重量百分率は30~70%である;発煙剤は、ポリオール、プロピレングリコール、グリセロール、トリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エチレングリコール、エステルおよびアルカンからなる群から選択される1種以上であり、その重量百分率は10~30%である;不燃性無機充填剤は、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、二酸化ケイ素、チョーク、パーライト、珪藻土および不燃性無機充填剤からなる群から選択される1種以上であり、その重量百分率は10~50%である;結合剤は、有機結合剤および不燃性無機結合剤のいずれか一方または両方であり、その重量百分率は5~20%である;燃焼促進剤はカリウム塩であり、その重量百分率は1~3%である;香料およびフレーバーは、甘草エキス、コーヒーエキス、バニリン、マクログリコロン、ソラノン、甘草、コーヒー、β-ダマスコン、タバコ抽出物からなる群から選択され、その重量パーセントは1~20%とする;前記ニコチン-マンデル酸塩複合体結晶の重量パーセントは1~20%とする。」 ウ「 [図:0001437379000012.jpg] [図:0001437379000013.jpg] 」 [当審訳] 「[0058] 実施例3 [0059] 1. ニコチン-マンデル酸塩複合体結晶を含む袋入り口腔用タバコの製造 [0060] a. 微結晶セルロース45%、レモン香料5%、プロピレングリコール5%、ニコチン-マンデル酸塩複合体15%を用意する。 [0061] b. 材料を均一に混合し、20 メッシュでふるい分けた後、均一に混合し、焼成およびバッチ消毒鍋で加熱処理を行う。その後、水15%、塩化ナトリウム3%、炭酸ナトリウム2%を加えて均一に混合し、12 時間冷蔵する。次に、蜂蜜4%、グルコース4%、アバス甘味料1%、ビタミンE1%を噴霧し、密封して24 時間冷蔵する。3 時間紫外線殺菌を行い、分包して完成品とする。 [0062] 2. ニコチンの体外溶出試験 [0063] ステップ1 で得られた製品、純ニコチン含有の袋入り口腔用タバコ、刻みタバコ含有の袋入り口腔用タバコについて、それぞれニコチンの体外溶出試験を行った。 [0064] 本発明では、口腔シミュレーターを用いて上記3 種の袋入り口腔用タバコ製品のニコチン体外溶出試験を行った。 [0065] 試験方法:表4 の組成で調製した人工唾液を貯液ボトルに入れ、恒温水槽で37℃に保つ。装置の温度を37℃に設定し、表5 に従って溶出装置のパラメータを設定する。 ガムベース型噛みタバコサンプルを溶液皿に入れ、モーター駆動で咀嚼機械手およびシミュレーション口腔の左右開閉回転ユニットが作動し、設定した咀嚼回数に達するとモーターが停止する。直ちに溶液が排出され、ペリスタポンプで抽出液を回収し、抽出液中のニコチン含有量を測定した(図1 参照)。 [0066] 表4 人工唾液配合 [0067] [図:0001437379000014.jpg] [0068] 表5 模擬咀嚼パラメータ [0069] [図:0001437379000015.jpg] [0070] 結果:ニコチン-マンデル酸塩複合体結晶をニコチンの導入形式(製品3)とした場合、ニコチンの放出速度が明らかに遅くなり、徐放効果が得られた。特に使用開始後10 分間は放出速度が緩やかで、直接ニコチンを添加した製品(製品1)やタバコ材料を添加した製品(製品2)よりもはるかに低かった。関係者による評価の結果、ニコチン-マンデル酸塩複合体を添加した製品は、持続的な口当たりと満足感を提供し、消化管への刺激も他の2 製品より明らかに低かった。」 上記によれば、甲4には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。 [甲4発明] 「袋入り口腔用タバコ製品であって、 材料と、 材料を入れる袋と、を含み、 材料は、微結晶セルロースと、水15%と、ニコチン-マンデル酸塩複合体とを含む、 袋入り口腔用タバコ製品。」 (5)甲5 甲5には、以下の事項が記載されている。訳は、申立人が提出した「甲第5号証抄訳」を参考にした。 ア「 [図:0001437379000016.jpg] 」 [当審訳] 「[0064] f. ニコチン含有ノンタバコ湿式スナッフ組成 表12 ニコチン含有ノンタバコ湿式スナッフ組成 クラシックおよびニコチンフレーバー 全組成に対する重量百分率での成分 [図:0001437379000017.jpg] 」 イ「[0070] The resulting moist snuff composition is sealed for a Storage/tempering/curing time of about 6 hours to about 12 hours before beginning the packing process. During this time, the casing component more fully blends with the herbal component resulting in a proper consistency for packaging. The finalized non-tobacco moist Snuff composition may be packaged in any Suitable container, Such as in a tin, in a plurality of individual mesh pouches, or any other package known in the art.」 [当審訳] 「[0070] 得られたモイストスナッフ組成物は、包装工程を開始する前に、約6 時間から約12 時間の間、保存/調整/熟成のために密封される。この間に、ケーシング成分がハーブ成分とより十分に混ざり合い、包装に適した適切な一貫性が得られる。最終的な非タバコモイストスナッフ組成物は、缶、複数の個別メッシュパウチ、または当業者に知られているその他のいかなる包装容器にも包装することができる。」 上記によれば、甲5には以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。 [甲5発明] 「包装容器により包装したモイストスナッフ組成物であって、 モイストスナッフ組成物と、モイストスナッフ組成物を包装する包装容器と、を含み、 モイストスナッフ組成物は、トウモロコシのひげと、15重量%の水と、ニコチンとを含む、 包装容器により包装したモイストスナッフ組成物。」 (6)甲6 甲6には、以下の事項が記載されている。訳は、申立人が提出した「甲第6号証抄訳」を参考にした。 ア「 [図:0001437379000018.jpg] [図:0001437379000019.jpg] 」 (14ページ5行~15ページ3行) [当審訳] 「実施例1:キシリトールおよびフッ素(F)を含有するポーション包装タバコスヌース製品20kg のスヌースは、Gothia Tek(登録商標)規格に従って製造された。 粉砕タバコ、塩化ナトリウム、非タバコ系バンブーファイバーBAF400DV(特許出願WO 2013/152918 に準拠)、および水の混合物を、100℃で2 時間加熱処理し、その後100℃から70℃まで温度を下げながら8 時間加熱した。混合物はその後、室温まで冷却された。 冷却した混合物に、快い香りと味のための香料、湿度調整用の水、キシリトール(DuPont-Denison Xavier C またはCM グレード)、およびフッ化ナトリウム(純度99%以上、ACS 試薬粉末、Acros Organics 社、ベルギー・ヘール)を水に溶解した後に添加した。混合物はさらに混合された。 スヌース混合物は、SM NYPS 機(米国特許第6,135,120 号「微細分割加湿タバコ材料の包装装置」、Lofman 他)を用いてポーションに包装された。スヌースポーションの包装材には、標準的なビスコース系不織布が使用された。各パウチ(パウチ紙を含む)の重量は0.9g であり、組成は表1 のとおりである。 [図:0001437379000020.jpg] *9.4%はパウチ(紙を含む)に基づく分析値。純粋なスヌースのレシピでは9.9%であり、以下の実施例ではこのサンプルを9.9%キシリトールと呼ぶ。 **0.022% w/w F に相当」 (7)甲7 甲7には、以下の事項が記載されている。訳は、申立人が提出した「甲第7号証抄訳」を参考にした。 ア「 [図:0001437379000021.jpg] [図:0001437379000022.jpg] [図:0001437379000023.jpg] [図:0001437379000024.jpg] [図:0001437379000025.jpg] [図:0001437379000026.jpg] [図:0001437379000027.jpg] 」 (47ページ9行~52ページ3行) [当審訳] 「表8Gに示す粉末組成物PPC1を含む経口用パウチを調製する。パウチは以下のように作製する。 ここで使用されるニコチン樹脂複合体は、水、ニコチン、樹脂(Amberlite(登録商標)IRP64)、グリセリンを混合して作られている。均一な溶液が得られ、すべてのニコチンがイオン交換樹脂に結合したら、圧力を下げ、得られた混合物を真空中で高温で濃縮して、粉末として目的の複合体を得る。ニコチン樹脂複合体をふるいにかける。 原則的には、任意のカチオンイオン交換樹脂複合体(非イオン性医薬品グレードの樹脂が望ましい)を使用できる。この樹脂はイオン交換部位で陰イオン分子を結合することができる。 得られたニコチン樹脂複合粉末を、ターブラミキサーを使用して残りの成分と6分間(速度49rpm)混合して、最終的な粉末組成物を得る。 最終的な粉末組成物をポーチに充填する(目標充填重量は1ポーチあたり400mgの粉末)。 長繊維紙で作られた以下のポーチを使用する。 パウチの材質は、長繊維紙などの熱シール可能な非織布セルロースである。本発明では、セルロース不織布の形態ではないポーチも使用することができる。 粉末は袋に充填され、密封されて袋の中に保持される。 例えば糖アルコール以外の他の保湿剤を少量含める場合、これらの他の保湿剤はステアリン酸マグネシウムと同じ方法で添加される。 [図:0001437379000028.jpg] 表8Hに示す粉末組成物PPC2~7を含み、ニコチンポラクリレックス樹脂(NPR)またはニコチン酒石酸塩(NBT)を含む残留物を有する速溶性パウチを調製する。 表8Iに示す粉末組成物PPC8~13を含み、ニコチンポラクリレックス樹脂(NPR)またはニコチン酒石酸塩(NBT)を含む残留物を有さない速溶性パウチを調製する。 パウチは以下の方法で作製する。 PPC6および8~10については、PPC1で用いた方法に準じた方法を用いる。 PPC2~5、7および11~13については、以下の方法を用いる。 ニコチン酒石酸塩xH2Oを、Turbulaミキサーを用いて他の成分とともに6分間(49rpm)混合し、最終的な粉末組成物を得る。 最終的な粉末組成物はパウチに充填する(目標充填量は1パウチあたり400mgの粉末とする)。パウチ材料には、実施例2の長繊維紙製のものを用いる。粉末はパウチに充填され、シールによってパウチ内に保持される。 パウチの材質は、長繊維紙などの熱シール可能な非織布セルロースである。本発明では、セルロース不織布以外の形態のパウチも使用可能である。 粉末はパウチに充填され、シールによってパウチ内に保持される。 例えば糖アルコール以外の他の保湿剤を少量加える場合、これらの保湿剤はステアリン酸マグネシウムと同様の方法で添加する。 [図:0001437379000029.jpg] [図:0001437379000030.jpg] [図:0001437379000031.jpg] イ「 [図:0001437379000032.jpg] 」 (53ページ11~13行) [当審訳] 「シュガーレス甘味料には、一般的に、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、イソマルトなどの糖アルコール(ポリオールと呼ばれることもある)が含まれるが、これらに限定されるものではない。」 (8)甲8 甲8には以下の事項が記載されている。 ア「【0015】 本開示は、充填材料、及び充填材料を包み込む包装用材料からなる唾液透過性袋を含む経口用袋入りニコチン製品であって、充填材料が、以下のもの: - 微粒子非タバコ材料と、 - ニコチン源と、 - 充填材料の総質量に基づいて、1質量%~45質量%の範囲内の量の水と。 - pH調整剤であって、以下のもの: (i) Na2CO3、K2CO3、NaHCO3及び/又はKHCO3、並びに (ii) 式(I): M2+(An-)m 式I (式中、 M2+は、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+、及びFe2+からなる群から選択され、 An-は、塩化物イオン、乳酸イオン、リンゴ酸イオン、コハク酸イオン、クエン酸イオン、アスコルビン酸イオン、酒石酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、グルコン酸イオン、アルギン酸イオン、アンモニウムイオン、シュウ酸イオン、アスパラギン酸イオン、グリシン酸イオン、ピコリン酸イオン、酸化物イオン、システイン酸イオン、グルタミン酸イオン、水酸化物イオン、ラウリン酸イオン、ステアリン酸イオン、パルミチン酸イオン、ウンデシレン酸イオン、グルセプチン酸イオン、グリセロリン酸イオン、グルビオン酸イオン、グルコヘプトン酸イオン、グアニル酸イオン、イノシン酸イオン、プロピオン酸イオン、ソルビン酸イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、エリソルビン酸イオン、ギ酸イオン、ヨウ化物イオン、パンガミン酸イオン及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される陰イオンであり、 nは、1又は2であり、 mは、1又は2であり、 -(nxm)=-2である) の塩又は前記塩の水和物であり、 前記塩が、充填材料の総質量に基づいて、0.05質量%~5質量%の範囲内の量で存在し、 前記塩が、約0.04M以上、及び/又は1g/L以上の水溶解度を有する、 塩又は前記塩の水和物 を含む又はこれらのみからなる、pH調整剤と、 - 任意選択により場合によっては、充填材料の総質量に基づいて、0.05質量%~10質量%の範囲内の量のタバコ材料と を含む又はこれらのみからなる、経口用袋入りニコチン製品を提供する。」 イ「【0035】 経口用袋入りニコチン製品の袋は、不織材料等の、任意の好適な唾液透過性(及び好ましくは非水溶性)包装用材料から作製され得る。包装用材料(本明細書において、袋材料をとも呼ばれる)は、ビスコースレーヨンステープルファイバー等の再生されたセルロースのステープルファイバー及びポリアクリレート等の結合剤を含む、不織材料とすることができる。」 ウ「【0058】 あるいは、本明細書に記載されている経口用袋入りニコチン製品の充填材料の水分含量は、充填材料の総質量に基づいて、約20質量%~約50質量%、例えば20質量%~45質量%の範囲内とすることができる。水の量が、本明細書に記載されている通り、約20質量%~約45質量%の範囲内にある場合、本経口用袋入りニコチン製品は、湿潤している、すなわち湿潤経口用袋入りニコチン製品と見なすことができる。」 エ「【0073】 本明細書に記載されている経口用袋入りニコチン製品の充填材料は、充填材料の総質量に基づいて、約30質量%~約90質量%、例えば約30質量%~約85質量%、例えば約30質量%~約80質量%、例えば約60質量%~約90質量%の範囲内の微粒子非タバコ材料を含んでもよい。更に、本明細書に記載されている充填材料は、水不溶性充填材料であってもよく、場合により水溶性充填材料を更に含んでもよい。したがって、本明細書に記載されている経口用袋入りニコチン製品の充填材料の少なくとも一部は、水不溶性、例えば室温及び/又は大気圧において水不溶性であることができる。」 オ「【0075】 微粒子非タバコ材料は、糖アルコール、例えばマルチトール、並びに/又はセルロース、例えばマイクロクリスタリンセルロース及び/若しくは粉末セルロースを含んでもよく、又はそれのみからなってもよい。例えば、微粒子非タバコ材料は、マルチトール及び/又はマイクロクリスタリンセルロースを含んでもよい。 【0076】 更に又はそれに代えて、本明細書に記載されている経口用袋入りニコチン製品の充填材料は、トウモロコシ繊維、オート麦繊維、トマト繊維、大麦繊維、ライ麦繊維、テンサイ繊維、ソバ繊維、小麦繊維、マメ繊維、じゃがいも繊維、リンゴ繊維、ココア繊維、竹繊維、柑橘繊維及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、1種又は複数の水不溶性繊維を含んでもよい。一例では、水不溶性繊維は、非タバコ微粒子材料の一部を形成することができる。」 カ「【0079】 ニコチン源は、ニコチン塩及び/又はニコチン塩基とすることができる。ニコチン塩基等のニコチン源はイオン交換樹脂、例えばポラクリレックスに、例えば塩架橋によって結合していてもよい。それに代えて又は更に、イオン交換樹脂は、ニコチン源、例えばニコチン塩基のための固体支持体として機能することができる。」 キ「【0130】 実施例3:湿潤経口用タバコ不含ニコチン製品 湿潤経口用ニコチン製品の2つのバッチ(Ang-124及びAng-125)を、表3A中の組成に従い、実験室スケール(1バッチあたり500g)で調製した。乾燥成分(ニコチン酒石酸水素塩、炭酸ナトリウム、塩化カルシウム(Ang-124の場合だけ)、セルロース、塩化ナトリウム及び甘味剤)を、実験室用ミキサー(Kenwood社)中で混合して、均一な粉末ブレンド物にした。水、グリセロール、及び植物油を添加し、次いで連続混合した。水は、この組成物の総量に基づいて約30~40質量%の量で存在した。 【0131】 この後に、フレーバー及び甘味剤を添加し、そのブレンド物を混合して、最終的な経口用ニコチンブレンドにした。pHは、本明細書において記載されている方法を使用して、保管前に新しい試料について解析した。 【0132】 【表4】 [図:0001437379000033.jpg] 【0133】 経口ニコチンブレンド物の2つの試料を、経口用袋入りニコチン製品のために好適なプラスチック缶中に分配した。この後、保管するために、側面ラベルを用いてこのプラスチック缶を密封し、気候キャビネットに移した。プラスチック缶は、ノルウェー第085548号の意匠登録に示されている通りであった。キャビネットの条件は、22℃及び60%RHに設定した。保管は、15週間行った。2、4、8、10、及び15週間後、各試料からの缶を気候キャビネットから取り出し、袋のpHを本明細書において規定されている方法を使用して分析した。」 上記によれば、甲8には以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。 [甲8発明] 「経口用袋入りニコチン製品であって、 充填材料と、充填材料を包み込む唾液透過性袋と、を含み、 充填材料は、微粒子非タバコ材料と、 充填材料の総質量に基づく、1質量%~45質量%の範囲内の量の水と、 ニコチン源とを含む、 経口用袋入りニコチン製品。」 2 対比・判断 以下では、取消理由(上記第3の1)及び取消理由で採用しなかった申立理由についての対比・判断を合わせて示す。 (1)甲1を主引用例とした取消理由(特許法第29条第2項)及び、申立理由(特許法第29条第1項第3号)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構成又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1発明の「湿潤充填材」は、本件発明1の「パウチ組成物」に相当し、以下同様に、「湿潤充填材を囲む」ことは「パウチ組成物を封入する」ことに、「包装材の唾液透過性パウチ」は「パウチ膜」に、「経口用パウチ入りニコチン製品」は「ニコチンパウチ詰め製品」に、それぞれ相当する。そうすると、甲1発明の「湿潤充填材と、該湿潤充填材を囲む包装材の唾液透過性パウチとを含む経口用パウチ入りニコチン製品」は、本件発明1の「ニコチンパウチ詰め製品であって、パウチ組成物と、前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、を含」むものに相当する。 甲1発明の「微結晶セルロース(MCC)」は、本件発明1の「少なくとも1つの水不溶性繊維」に相当し、以下同様に、「酒石酸ニコチン二水和物」は「ニコチン」に、「水は湿潤充填材の総量に基づいて42%又は52%の量で存在」することは「前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水」を含むことに、それぞれ相当する。そうすると、甲1発明の「前記湿潤充填材は、微結晶セルロース(MCC)、酒石酸ニコチン二水和物、水酸化カリウム、水等を含み、水は湿潤充填材の総量に基づいて42%又は52%の量で存在」することは、本件発明1の「前記パウチ組成物は:少なくとも1つの水不溶性繊維と、前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、ニコチンと、を含」むことに相当する。 よって、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点1] 「ニコチンパウチ詰め製品であって、 パウチ組成物と、 前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、 を含み、 前記パウチ組成物は: 少なくとも1つの水不溶性繊維と、 前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、 ニコチンと、 を含む、ニコチンパウチ詰め製品。」 [相違点1] 本件発明1は「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」のに対して、甲1発明は「再生セルロースのステープルファイバーと、バインダーを含む不織布材料である」、「包装材」が、ニコチンを含むものであるか不明である点。 上記相違点1について検討すると、甲1には、包装材の再生セルロースのステープルファイバーと、バインダーを含む不織布材料が、経口用パウチ入りニコチン製品の少なくとも15重量%のニコチンを含むものであることについては記載も示唆もされていない。 甲2は、甲1の実施例2の再現実験を行った(上記1(2)を参照。)ものであるが、パウチ膜の種類(SDH27,Z8732,Z8713)、MCC粒子径(20μm、50μm)、製造後日数(0、2、4、7、10日)は、甲1に記載のない仮定の条件を含むものであり、実験に用いたパウチ膜の種類、MCC粒子径、製造後の日数の組み合わせにより、パウチ膜中のニコチン量の含有率が有意に変化し得ることを示している。 そして、パウチ膜のニコチン含有率が15重量%を下回る結果も複数示されている(例えば、表3A サンプルOT100-AA 製造後日数が10日(14.11%)、表3C サンプルOT100-BC-NW 製造後日数が0日(14.66%)、2日(13.13%)、4日(13.41%)、表3C サンプルOT100-C-NW 製造後の日数0日(10.53%)、表3D サンプルOT200-D-NW 製造後日数が7日(14.22%))。 そうすると、甲2に示された実験結果をもって、甲1発明が、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことは、当業者にとって自明であるとはいえない。 したがって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。 また、甲1には、再生セルロースのステープルファイバーと、バインダーを含む不織布材料である包装材を、経口用パウチ入りニコチン製品の少なくとも15重量%のニコチンを含むものとすることについては記載も示唆もないのであるから、甲2のような実験結果が示されたとしても、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易なし得たということはできない。 さらに、上記1(3)~(7)において示した他の提示された証拠である甲3~甲7及びその他の甲号証においても、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項について記載も示唆もされておらず、設計事項であるともいえない。 そして、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項により、本件発明1は、ニコチンの比較的迅速な放出が促進されるという、本件特許の明細書の段落【0006】~【0008】に記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明2~17について 本件特許の請求項2~17は、請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであり、本件発明2~17は、本件発明1の発明特定事項を全て含む。 そして、本件発明1は、上記アで判断したとおり、甲1発明であるとはいえず、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件発明2~17は、本件発明1と同様に、甲1発明であるとはいえず、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)取消理由に採用しなかった申立理由(甲3を主引用例とした特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲3発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲3発明の「タバコ製品」は、本件発明1の「パウチ組成物」に相当し、以下同様に、「フリースパウチ」は「パウチ膜」に、「水抽出テンサイパルプ」は「少なくとも1つの水不溶性繊維」に、「タバコ製品の約25%の水分」は「パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水分」に、「タバコブレンドを水で抽出した水性タバコ抽出物」は「ニコチン」に、それぞれ相当する。 そして、甲3発明の「フリースパウチの中に入れたタバコ製品」は、タバコブレンドを水で抽出した水性タバコ抽出物を含んだものであるから、本件発明1の「ニコチンパウチ詰め製品」に相当する。 よって、本件発明1と甲3発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点2] 「ニコチンパウチ詰め製品であって、 パウチ組成物と、 前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、 を含み、 前記パウチ組成物は: 少なくとも1つの水不溶性繊維と、 前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、 ニコチンと、 を含む、ニコチンパウチ詰め製品。」 [相違点2] 本件発明1は「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」のに対して、甲3発明は「フリースパウチ」が、ニコチンを含むかについては不明である点。 上記相違点2について検討すると、甲3には、タバコ製品を入れるフリースパウチが、タバコ製品とフリースパウチを併せたものにおけるニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンを含むことについては記載も示唆もされていない。 そして、甲2に示された実験は、甲第1号証及び甲第8号証の実施例について行ったものであり、また、上記(1)アで述べたように、実験に用いたパウチ膜の種類、MCC粒子径、製造後の日数の組み合わせにより、パウチ膜中のニコチン量の含有率が有意に変化し得ることを示しており、パウチ膜のニコチン含有率が15重量%を下回る結果も複数示されているから、甲2に示された実験結果をもって、甲3発明が、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことは、当業者にとって自明であるとはいえない。 したがって、上記相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3発明ではない。 さらに、上記1(1)、(4)~(7)において示した他の提示された証拠である甲1、甲4~甲7及びその他の甲号証においても、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことについて記載も示唆もされておらず、設計事項であるともいえない。 そして、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項により、本件発明1は、ニコチンの比較的迅速な放出が促進されるという、本件特許の明細書の段落【0006】~【0008】に記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲3発明であるとはいえず、甲3発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明2、4、7~11、13~16について 本件特許の請求項2、4、7~11、13~16は、請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであり、本件発明2、4、7~11、13~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含む。 そして、本件発明1は、上記アで判断したとおり、甲3発明であるとはいえず、甲3発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件発明2、4、7~11、13~16は、本件発明1と同様に、甲3発明であるとはいえず、甲3発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)取消理由に採用しなかった申立理由(甲4を主引用例とした特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲4発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲4発明の「材料」は本件発明1の「パウチ組成物」に相当し、以下同様に、「袋」は「パウチ膜」に、「材料を入れる袋」は「パウチ組成物を封入するパウチ膜」に、「微結晶セルロース」は「少なくとも1つの水不溶性繊維」に、「水15%」は「パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水」に、「ニコチン-マンデル酸塩複合体」は「ニコチン」に、それぞれ相当する。 そして、甲4発明の「袋入り口腔用タバコ製品」は、ニコチン-マンデル酸塩複合体を含む材料を袋に入れたものであるから、本件発明1の「ニコチンパウチ詰め製品」に相当する。 よって、本件発明1と甲4発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点3] 「ニコチンパウチ詰め製品であって、 パウチ組成物と、 前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、 を含み、 前記パウチ組成物は: 少なくとも1つの水不溶性繊維と、 前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、 ニコチンと、 を含む、ニコチンパウチ詰め製品。」 [相違点3] 本件発明1は「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」のに対して、甲4発明は「材料を入れる袋」がニコチンを含むかについては不明である点。 上記相違点3について検討すると、甲4には、袋が袋入り口腔用タバコ製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンを含むことについては記載も示唆もされていない。 そして、甲2に示された実験は、甲第1号証及び甲第8号証の実施例について行ったものであり、また、上記(1)アで述べたように、実験に用いたパウチ膜の種類、MCC粒子径、製造後の日数の組み合わせにより、パウチ膜中のニコチン量の含有率が有意に変化し得ることを示しており、パウチ膜のニコチン含有率が15重量%を下回る結果も複数示されているから、甲2に示された実験結果をもって、甲4発明が、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことは、当業者にとって自明であるとはいえない。 したがって、上記相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲4発明ではない。 さらに、上記1(1)、(3)、(5)~(7)において示した他の提示された証拠である甲1、甲3、甲5~甲7及びその他の甲号証においても、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことについて記載も示唆もされておらず、設計事項であるともいえない。 そして、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項により、本件発明1は、ニコチンの比較的迅速な放出が促進されるという、本件特許の明細書の段落【0006】~【0008】に記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲4発明であるとはいえず、甲4発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明2、4、5、7~10、13~16について 本件特許の請求項2、4、5、7~10、13~16は、請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであり、本件発明2、4、5、7~10、13~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含む。 そして、本件発明1は、上記アで判断したとおり、甲4発明であるとはいえず、甲4発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件発明2、4、5、7~10、13~16は、本件発明1と同様に、甲4発明であるとはいえず、甲4発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)取消理由に採用しなかった申立理由(甲5を主引用例とした特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲5発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲5発明の「モイストスナッフ組成物」は本件発明1の「パウチ組成物」に相当し、以下同様に、「包装容器」は「パウチ膜」に、「包装する」は「封入する」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲5発明の「モイストスナッフ組成物を包装する包装容器」は本件発明1の「パウチ組成物を封入するパウチ膜」に相当する。 甲5発明の「トウモロコシのひげ」は本件発明1の「少なくとも1つの水不溶性繊維」に相当し、以下同様に、「15重量%の水」は「パウチ組成物の少なくとも15重量%の水」に、「ニコチン」は「ニコチン」に、それぞれ相当する。 甲5発明の「包装容器により包装したモイストスナッフ組成物」は、モイストスナッフ組成物はニコチンを含むものであるから、本件発明1の「ニコチンパウチ詰め製品」に相当する。 よって、本件発明1と甲5発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点4] 「ニコチンパウチ詰め製品であって、 パウチ組成物と、 前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、 を含み、 前記パウチ組成物は: 少なくとも1つの水不溶性繊維と、 前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、 ニコチンと、 を含む、ニコチンパウチ詰め製品。」 [相違点4] 本件発明1は「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」のに対して、甲5発明は「モイストスナッフ組成物を包装する包装容器」がニコチンを含むかについては不明である点。 上記相違点4について検討すると、甲5には、モイストスナッフ組成物を包装する包装容器が、包装容器とモイストスナッフ組成物とのニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンを含むことについては記載も示唆もされていない。 そして、甲2に示された実験は、甲第1号証及び甲第8号証の実施例について行ったものであり、また、上記(1)アで述べたように、実験に用いたパウチ膜の種類、MCC粒子径、製造後の日数の組み合わせにより、パウチ膜中のニコチン量の含有率が有意に変化し得ることを示しており、パウチ膜のニコチン含有率が15重量%を下回る結果も複数示されているから、甲2に示された実験結果をもって、甲5発明が、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことは、当業者にとって自明であるとはいえない。 したがって、上記相違点4は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲5発明ではない。 さらに、上記1(1)、(3)、(4)、(6)、(7)において示した他の提示された証拠である甲1、甲3、甲4、甲6、甲7及びその他の甲号証においても、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことについて記載も示唆もされておらず、設計事項であるともいえない。 そして、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項により、本件発明1は、ニコチンの比較的迅速な放出が促進されるという、本件特許の明細書の段落【0006】~【0008】に記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲5発明であるとはいえず、甲5発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明2、4、13~15について 本件特許の請求項2、4、13~15は、請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであり、本件発明2、4、13~15は、本件発明1の発明特定事項を全て含む。 そして、本件発明1は、上記アで判断したとおり、甲4発明であるとはいえず、甲4発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件発明2、4、13~15は、本件発明1と同様に、甲4発明であるとはいえず、甲4発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)取消理由に採用しなかった申立理由(甲8を先願発明とした特許法第29条の2)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲8発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲8発明の「充填材料」は本件発明1の「パウチ組成物」に相当し、以下同様に、「唾液透過性袋」は「パウチ膜」に、「包み込む」は「封入する」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲8発明の「充填材料を包み込む唾液透過性袋」は本件発明1の「パウチ組成物を封入するパウチ膜」に相当する。 甲8発明の「微粒子非タバコ材料」は本件発明1の「少なくとも1つの水不溶性繊維」に相当し、甲8発明の「充填材料の総質量に基づく、1質量%~45質量%の範囲内の量の水」は、充填材料の総質量に基づいた水の質量%が15質量%~45質量%の範囲のものを含むから、本件発明1の「パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水」に相当する。 甲8発明の「ニコチン源」は本件発明1の「ニコチン」に相当し、甲8発明の「経口用袋入りニコチン製品」は本件発明1の「ニコチンパウチ詰め製品」に相当する。 よって、本件発明1と甲8発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点5] 「ニコチンパウチ詰め製品であって、 パウチ組成物と、 前記パウチ組成物を封入するパウチ膜と、 を含み、 前記パウチ組成物は: 少なくとも1つの水不溶性繊維と、 前記パウチ組成物の少なくとも15重量%の量の水と、 ニコチンと、 を含む、ニコチンパウチ詰め製品。」 [相違点5] 本件発明1は「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」のに対して、甲8発明は「充填材料を包み込む唾液透過性袋」がニコチンを含むかについては不明である点。 上記相違点5について検討すると、甲8には、充填材料を包み込む唾液透過性袋が経口用袋入りニコチン製品のニコチン総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンを含むものであることについては記載も示唆もされていない。 また、甲2は、甲8の実施例3の再現実験を行った(上記1(2)を参照)ものであるが、実験に用いたパウチ膜の種類(SDH27,Z8732,Z8713)、製造後日数(0、3、7、14、28、56、70日)、組成物OT300、OT400の水、グリセロール、植物油の各々における重量%(甲8段落【0132】の表4には、試料Ang-124、Ang-125の水、グリセロール、植物油の重量%の合計値が示されるのみである。)、組成物OT300、OT400のセルロース、塩化ナトリウム、フレーバー、甘味料の各々における重量%(甲8の段落【0132】の表4には、試料Ang-124、Ang-125のセルロース、塩化ナトリウム、フレーバー、甘味料の重量%の合計値が示されるのみである。)は、甲8に記載のない仮定の条件を含むものであり、実験に用いたパウチ膜の種類、製造後日数の組み合わせにより、パウチ膜中のニコチン含有量が有意に変化し得ることを示している。 そして、パウチ膜のニコチン含有率が15重量%を下回る結果も示されている(例えば、表6A サンプルOT300-AA 製造後日数が0日(12.00%))。 そうすると、甲2に示された実験結果をもって、上記相違点5に係る本件発明1の発明特定事項である「パウチ膜は、パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」ことは、当業者にとって自明であるとはいえない。 したがって、上記相違点5は実質的な相違点であり、本件発明1は、先願発明である甲8発明と同一であるとはいえない。 イ 本件発明2~17について 本件特許の請求項2~17は、請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであり、本件発明2~17は、本件発明1の発明特定事項を全て含む。 そして、本件発明1は、上記アで判断したとおり、甲8発明と同一ではないから、本件発明2~17は、本件発明1と同様に、甲1発明と同一であるとはいえない。 (6)取消理由に採用しなかった申立理由(特許法第36条第4項第1号)について 申立人は、本件特許の実施可能要件について、令和7年8月1日提出の手続補正書(方式)により補正された異議申立書(96ページ)において以下のとおり主張している。 「本件発明1~17は、『前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む』ことを特定しているが、パウチ膜におけるニコチン含有量の上限が特定されていない。すなわち、パウチ膜が例えば99重量%のニコチンを含む場合も本件発明1~17の範囲に包含される。しかし、パウチ膜にこれほど高い割合のニコチンを含有させる製品をどのように実現するかについて、本件特許には何ら開示がない。毛管現象や拡散に関する科学的原理に基づけば、パウチ組成物からパウチ膜への水分やニコチンの移行は、本件発明1が許容するようにパウチ組成物中に1重量%しかニコチンが残らない状態になるまで続くものではないことは技術常識である。具体的には、パウチ製品を一定期間放置すれば、最終的には濃度勾配がゼロとなる平衡状態に達し、パウチ組成物からパウチ膜へのニコチンの移行は停止する。パウチ膜中に99重量%のニコチンを含有させる方法については、何ら開示されていない。 したがって、本件発明1~17はその範囲全体にわたって実施可能なものではないから、実施可能要件を満たしていない。」 上記申立人の主張について検討する。 パウチ膜へニコチンを含有させる方法について本件特許明細書には、以下のとおり記載されている。 「【0248】 実施例4A-パウチ膜へのニコチンの処理 ニコチンパウチを約25℃の温度にて、密閉された処理容器内に置いた。容器を密閉状態に維持しながら、14日間、ニコチンパウチの温度を一定に保った。 【0249】 14日間の処理後、容器を開け、パウチ膜およびパウチ組成物のニコチン含量を調べた。 実施例4B-パウチ膜へのニコチンの塗布 パウチ詰め製品を液体ニコチン(プロピレングリコールで約20%のニコチン濃度に希釈)に浸し、パウチ膜にニコチンを塗布した。 【0250】 浸漬プロセスは約5分間続けた。 その後、パウチ膜およびパウチ組成物について、ニコチン含量を調べた。 実施例4C-噴霧によるニコチンの塗布 液体ニコチン溶液(プロピレングリコールで約20%のニコチン濃度に希釈)をパウチ詰め製品に噴霧により塗布した。」 上記本件特許明細書の記載を参酌すると、パウチ膜にニコチンを含有させる方法として、実施例4Aに示されるニコチンパウチを約25℃の温度にて、密閉された処理容器内に置く方法のほか、実施例4Bのパウチ詰め製品を液体ニコチンに浸すことにより、パウチ膜にニコチンを塗布する方法、実施例4Cの液体ニコチン溶液をパウチ詰め製品に噴霧により塗布する方法が提示されており、実施例4B、実施例4Cの方法は、パウチ組成物からパウチ膜への水分やニコチンの移行によるものではないから、申立人が主張するようなパウチ組成物からパウチ膜への水分やニコチンの移行の際に濃度勾配がゼロとなる平衡状態に達し、パウチ組成物からパウチ膜へのニコチンの移行が停止する現象は生じない。 また、実施例4B、実施例4Cの方法によれば、パウチ膜とパウチ組成物の素材や量等によりそれぞれのニコチン含有量を各々定め得るから、パウチ膜中にパウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の99重量%のニコチンを含有させることが不可能であるとまではいえない。 さらに、本件発明14は、ニコチンパウチ詰め製品のパウチ膜にニコチンを含有させるためのプロセスとして、 「『前記パウチ膜中の前記さらなるニコチンは、前記パウチ組成物からニコチンを前記パウチ膜中に処理することによって提供され、』(実施例4Aに対応) 『前記パウチ膜中の前記ニコチンは、フィルムコーティングまたは噴霧によって前記パウチ膜に塗布され、』(実施例4Cに対応) 『前記パウチ膜中の前記ニコチンは、前記パウチ詰め製品を液体ニコチンに浸漬することによって前記パウチ膜に塗布され、』(実施例4Bに対応) または、 『前記パウチ膜の製造中にさらなるニコチンが前記パウチ膜に塗布される、』 請求項1~13のいずれか一項に記載のニコチンパウチ詰め製品。」 と、実施例4Aに対応するもののみではなく、実施例4B、実施例4Cに対応するものを選択的に採用しうる態様となっている。 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~17のニコチンパウチ詰め製品について、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく、それを生産し、かつ、使用することができる程度の記載があるといえる。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~17について、当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (7)申立人による本件特許の優先権主張に関する主張について 申立人は、令和7年8月1日提出の手続補正書(方式)により補正された異議申立書(27ページ)において以下のとおり主張している。 「b.優先権主張の効果 本件特許は、デンマークを出願国とする4件の先の出願(PA201900698、PA201970610、PA201970611及びPA201970612)に基づく優先権を主張するものである。しかしながら、本件特許の請求項1が特定事項とする「前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む」は、PA201900698、PA201970610、PA201970611及びPA201970612の願書に最初に添付された明細書等に記載されたものではない。 したがって、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~17に係る本件発明1~17には、PA201900698、PA201970610、PA201970611及びPA201970612を基礎とする優先権主張の効果は認められず、本件の審理における各種特許要件の判断時は本件の現実の出願日である令和2年6月5日となる。 なお、PA201900698、PA201970610、PA201970611及びPA201970612の願書に最初に添付された明細書等は優先権証明書として入手可能である。これらの優先権証明書を甲第9~12号証として添付する。甲第9~12号証には、『前記パウチ膜は、前記パウチ詰め製品中のニコチンの総含有量の少なくとも15重量%の量でニコチンをさらに含む』という特定事項が記載されておらず、さらには本件特許においてパウチ膜中のニコチン量が確認されている実施例4及び5も記載されていない。」 上記申立人の主張によれば、本件の審理における各種特許要件の判断基準時は本件特許の現実の出願日である令和2年6月5日となる。 しかしながら、仮に優先権主張の効果が認められないとしても、上記2(1)~(5)で判断したとおり、本件発明1~17は各甲号証全てを採用したとしても特許性が認められるものであるから、優先権主張の認否は結論に影響を及ぼすものではない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては本件特許の請求項1~17に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700609

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