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特許異議申立

2021-701063

ダイヤフラムバルブ

審判番号
2021-701063
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-140032
登録番号
6874232
請求日
2021年11月10日
審決日
2022年11月28日
公報発行日
2023年03月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】旭有機材株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】鶴田 準一
  • 【権利者代理人】南山 知広
  • 【権利者代理人】森本 有一
  • 【権利者代理人】伊藤 健太郎
  • 【権利者代理人】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
  • 【異議申立人】冨田 圭太郎
審判長/審判官
  • 審判長 窪田 治彦
  • 審判官 長馬 望
  • 審判官 山崎 孔徳
分類
P1652.113-YAA(F16K) / P1652.121-YAA(F16K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6874232号発明「ダイヤフラムバルブ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6874232号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第6874232号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6874232号の請求項1ないし5に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成28年7月15日に特許出願され、令和3年4月26日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許公報が発行された。その後、本件特許のうち、請求項1ないし3に係る特許について、令和3年11月10日に特許異議申立人冨田圭太郎(以下、「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされ、令和4年1月28日付けで取消理由が通知され、同年4月7日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年5月20日に申立人より意見書の提出がされ、同年6月10日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年7月13日に特許権者より意見書及び手続補正書が提出され、同年8月31日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月1日に特許権者より、意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。 なお、令和4年4月7日にされた訂正請求は、その後、同年11月1日に訂正請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法(以下、単に「法」という。)第120条の5第7項)。 第2 訂正請求について 1 訂正の請求の内容 令和4年11月1日にされた訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許第6874232号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は、次の訂正事項1のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 ・訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「 絶縁性材料からなり、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結されたボンネットと、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットとで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、前記ボンネットに接続された第一アース手段と、を備えていることを特徴とするダイヤフラムバルブ。」 と記載されているのを、 「 絶縁性材料からなり、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結されたボンネットと、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットとで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、前記ボンネットに接続された第一アース手段と、を備え、前記弁室と前記第一流路及び前記第二流路とを流れる流体が、絶縁性材料のみに接触することを特徴とするダイヤフラムバルブ。」 に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。) 2 訂正の適否について (1)訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無について 訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1において、特定されていなかった「前記弁室と前記第一流路及び前記第二流路とを流れる流体が、絶縁性材料のみに接触する」ことを本件訂正後の請求項1に係る発明では、特定するものであるから、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、次の点が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。 ア 「【0022】 [第一の実施形態] ・・・第一の実施形態では、ダイヤフラムバルブ1は、弁本体2と、ボンネット3と、第一ダイヤフラム4と、を備え、ボンネット3の内部には第一ダイヤフラム4を上下へ駆動させる駆動部5が配置されている。また、弁本体2の上部にボンネット3が取り付けられている。 【0023】 弁本体2は、絶縁性材料であるポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)製である。弁本体2には、その上部中央に弁室6が形成されていると共に、弁室6に連通する第一流路7及び第二流路8が形成されている。」 イ 「【0036】 [第二の実施形態] ・・・第二の実施形態では、定圧弁51は、弁本体2と、ボンネット3と、第一ダイヤフラム4と、連結軸68と、第二ダイヤフラム53と、ベースプレート52と、を備えている。・・・また、弁本体2には、第一配管54と、第二配管55とが接続されている。なお、図1~3と同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施形態との相違点を主に説明する。 【0037】 弁本体2は、PTFE製である。弁本体2には、その中央部に上面および下面が開放された弁室6が形成されているとともに、弁室6に連通する第一流路7および第二流路8が形成されている。弁室6は弁室6の上部に形成される第一弁室56と、弁室6の下部に形成される第二弁室57と、第一弁室56と第二弁室57とを連通する連通流路58と、から構成されている。第一流路7は、弁本体2の一方の側面に形成された第一開口9から続き且つ第二弁室57に連通している。第二弁室57の上部には連結軸68の弁体部26が接離する弁座11が形成されている。第二流路8は、弁本体2の他方の側面に形成された第二開口10から続き且つ第一弁室56の側面に連通している。本実施形態においては、第一開口9から第一流路7、弁室6および第二流路8を経て第二開口10に至る流路を内部流路12とする。」 ウ 本件特許の願書に添付した図面には、次の【図1】及び【図4】が記載されている。なお、【図1】は第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブの閉状態を示す縦断面図であり、【図4】は、第二の実施形態に係るダイヤフラムバルブの閉状態を示す縦断面図である。 「 [図:0001395185000001.jpg] 」 上記アないしウの記載から本件特許明細書等には、弁本体2に弁室6、第一流路7及び第二流路8を形成することが記載され、さらに、この弁室6、第一流路7及び第二流路8が形成される弁本体2は、絶縁性材料製であるから、本件特許明細書等には、弁室6、第一流路7及び第二流路8を流れる流体は、絶縁性材料のみに接触するものが記載されていると理解できる。 そうすると、「前記弁室と前記第一流路及び前記第二流路とを流れる流体が、絶縁性材料のみに接触する」ことは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であり、本件訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項の追加に該当しない。 (2)独立特許要件について 上記(1)に示すとおり、訂正事項1による訂正は、法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件特許異議の申立ては、請求項1ないし3に係る特許に対してされているから、本件特許異議の申立てがされていない請求項4及び5に係る法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(法第120条の5第9項において読み替えて準用する法第126条第7項)。 そこで、本件訂正後の請求項4及び5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討すると、後記第3に示すとおり、本件訂正後の請求項1に係る発明は、特開2007-78019号公報(本件特許異議申立ての甲第1号証。以下、「引用文献1」という。)に記載された発明とはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものともいえないから、本件訂正後の請求項1に係る発明を特定するための事項をすべて含む、本件訂正後の請求項4及び5に係る発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明とはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。さらに、ほかに本件訂正後の請求項4及び5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も認められない。 そうすると、本件訂正後の請求項4及び5に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (3)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2ないし5は、請求項1の記載を引用する関係であるから、請求項1ないし5は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、請求項1ないし5について訂正することを求めるものであるから、一群の請求項ごとに訂正の請求をするものである。 (4)訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 上記第2に示すように、本件訂正の請求は認められるから、本件の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、本件訂正により訂正された願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 絶縁性材料からなり、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結されたボンネットと、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットとで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、前記ボンネットに接続された第一アース手段と、を備え、前記弁室と前記第一流路及び前記第二流路とを流れる流体が、絶縁性材料のみに接触することを特徴とするダイヤフラムバルブ。」 「【請求項2】 導電性材料からなり、前記弁本体の前記ボンネットに対向する位置に設けられたベースプレートと、導電性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットと前記ベースプレートとを貫通するとともに、前記弁本体と前記ボンネットと前記ベースプレートとを連結する連結部材と、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ベースプレートとの間に介在され、前記弁室を流れる流体に接触する第二ダイヤフラムと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。」 「【請求項3】 前記ボンネットに貫通孔が形成され、前記貫通孔には、前記連結部材が挿入されるとともに、前記第一アース手段の一端が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のダイヤフラムバルブ。」 2 取消理由の概要 請求項1ないし3に係る特許に対し、当審が令和4年8月31日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 (1)本件発明1及び2は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であって、法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)本件発明1ないし3は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(周知例として下記の引用文献2ないし4がある。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る特許は、法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献1 特開2007-78019号公報 引用文献2 実願昭52-130735号(実開昭54-57627号)のマイクロフィルム 引用文献3 特開2010-49848号公報 引用文献4 特開2006-40759号公報 3 引用文献の記載 (1)引用文献1 取消理由で通知した引用文献1には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 ボディ本体内に形成された流体を流通させるための流体流路と、該流体流路内に配置された少なくとも一以上のダイヤフラムとを備えた流体機器において、 前記ダイヤフラムの膜部近傍に耐蝕性を有する導電性部材が前記流体流路側に貫通して設置され、前記ボディ本体には前記導電性部材をアースするアース手段が設けられていることを特徴とする流体機器の絶縁破壊防止構造。」 イ 「【0001】 本発明は、流体機器の絶縁破壊防止構造に関し、特に、ダイヤフラムの絶縁破壊を防止することができる流体機器の絶縁破壊防止構造に関する。」 ウ 「【0003】 しかしながら、上記の如く超純水のスチームを移送する際には、半導体製造装置の流路内で前記超純水のスチームとの摩擦によって静電気が発生することがある。特に、調節弁や制御弁等に用いられる樹脂製のダイヤフラム弁は、弁室内の弁座をシールする弁部と薄肉の膜部を有するダイヤフラムとを備えた弁機構体が頻繁に作動するので、前記スチームとの摩擦が多く、静電気の発生箇所になりやすく、前記弁機構体が過剰に帯電するおそれがある。そのため、弁機構体におけるダイヤフラムの薄肉の膜部では、静電気が過剰に帯電することによって絶縁破壊が起こってしまう。」 エ 「【0007】 本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、ダイヤフラムの特性を妨げることなく簡易な構成によってダイヤフラムの膜部の絶縁破壊を防止することができる新規な流体機器を提供するものである。」 オ 「【0025】 図1に示す流体機器10は、ボディ本体11内に形成された流体を流通させるための流体流路20と、該流体流路20内に配置されたダイヤフラム40,50とを備える。実施例の流体機器10は、流体流路20内に形成された弁室23内に配置され該弁室23内の弁座25をシールする弁部35を有する弁機構体30に、前記ダイヤフラム40,50が一体に形成されたダイヤフラム弁である。図において、符号44はダイヤフラム40をボディ本体11にシールするためのフッ素樹脂ゴムからなる環状弾性部材、54はダイヤフラム50をボディ本体11にシールするためのフッ素樹脂ゴムからなる環状弾性部材、60は加圧空気によって弁機構体30を進退させる加圧手段、61はその加圧室、65はバネ等によって弁機構体30を流体流路20側に常時付勢する加圧手段、66はその加圧室、67は加圧室66内の空気の出入りを行う呼吸口である。 【0026】 ボディ本体11は、フッ素樹脂等の耐蝕性及び耐薬品性の高い樹脂からなる本体部12と、本体部12の上部に配置された金属製の上カバー部13と、本体部12の下部に配置された金属製の下カバー部14とからなる。該ボディ本体11では、上カバー部13に前記本体部12を貫通して下カバー部14まで到達し、前記上カバー部13及び下カバー部14を本体部12に一体に固定する複数の金属ボルト15が設けられている。また、下カバー部14には、アース線17によって接地されたアース部材16が設けられている。なお、前記上カバー部13及び下カバー部14は、金属製の他、導電性の樹脂等の導電性を有する適宜の材料によって構成してもよい。 【0027】 流体流路20は、ボディ本体11の本体部12内に形成され、流体の流出入のための第1開口21及び第2開口22が弁座25を有する弁室23を介して設けられている。図中の符号23Aは第1開口側の弁室、23Bは第2開口側の弁室である。 【0028】 弁機構体30は、フッ素樹脂等の耐蝕性及び耐薬品性の高い樹脂からなり、弁室23内に配置され、弁座25をシールする弁部35と、第1開口21側に配されたダイヤフラム40と、第2開口22側に配されたダイヤフラム50とを一体に有する。図において、符号31はダイヤフラム40側の弁軸、32はダイヤフラム50側の弁軸、33は弁機構体30と一体に形成されたバネによる加圧手段65のホルダーを表す。 【0029】 ダイヤフラム40は、図1及び図2に示すように、弁機構体30の弁軸31に一体に形成され、前記弁機構体30が進退する際に屈曲作動する薄肉の膜部41と、ボディ本体11に固定される外周部42とを有し、前記膜部41近傍に耐蝕性を有する導電性部材45が流体流路20(第1開口側の弁室23A)側に貫通して設置されている。図2において、符号12aはボディ本体11の本体部12に形成されたダイヤフラム40を押圧保持するための突部である。」 カ 「【0031】 また、このダイヤフラム40には、外周部42に導電性部材45を設置するための貫通穴43が形成されていて、前記貫通穴43に導電性部材45が嵌挿されるように構成される。実施例では、導電性部材45がダイヤフラム40の流体接触面41Aと面一となるように設置されているが、前記導電性部材45が流体流路20(第1開口側弁室23A)内を流通する流体と接触可能であればよく、例えば、前記液体接触面41Aから突出しても構わない。さらに、この実施例では、前記貫通穴43が導電性部材45より小径に形成されていて、請求項3の発明として規定したように、導電性部材45がダイヤフラム40に圧入によって設置されるように構成される。このように、導電性部材45をダイヤフラム40に圧入することにより、前記ダイヤフラム40に導電性部材45を容易に固定することができ、パーティクルの発生を防止するとともに、流体が前記貫通穴43から流体流路20(第1開口側弁室23A)外に漏洩することを防止することができる。特に、図示しかつ請求項4の発明として規定したように、導電性部材45を環状封止部材46によってダイヤフラム40に固定すれば、より確実に流体の漏洩を防止することができる。なお、環状封止部材46は、耐蝕性の観点からフッ素樹脂ゴムによって形成される。」 キ 「【0033】 また、ダイヤフラム50は、図1に示すように、弁機構体30の弁軸32に一体に形成され、前記弁機構体30が進退する際に屈曲作動する薄肉の膜部51と、ボディ本体11に固定される外周部52とを有し、前記膜部51近傍に耐蝕性を有する導電性部材55が流体流路20(第2開口側の弁室23B)側に貫通して設置されている。このダイヤフラム50は、前記ダイヤフラム40とほぼ同様に構成されたものであって、図中の符号53は導電性部材55が圧入される貫通穴、56は導電性部材55をダイヤフラム50に固定する環状封止部材である。なお、導電性部材55としては、前記導電性部材45と同様に、シリコンカーバイドの他、ジルコニアまたはガラス状カーボンが好適に使用されるのはいうまでもない。」 ク 「【0034】 次に、当該流体機器10の作用について説明する。この流体機器10では、超純水のスチーム等の流体との摩擦によって弁機構体30で静電気が発生した際に、ダイヤフラム40の膜部41近傍に流体流路20(第1開口側弁室23A)側に貫通して配置された導電性部材45が前記流体と接触することによって、前記静電気が導電性部材45を介して流体機器10外に放電される。その際、導電性部材45がボディ本体11の金属からなる上カバー部13と接しているため、静電気は、上カバー部13から金属ボルト15及び金属製の下カバー部14を経て、アース部材16に接続されたアース線17を介してアースされるように構成される。 【0035】 また、同様に、ダイヤフラム50の膜部51近傍に流体流路20(第2開口側の弁室23B)側に貫通して配置された導電性部材55が前記流体と接触することによって、静電気が導電性部材55から金属製の下カバー部14を経て、アース部材16に接続されたアース線17を介してアースされるように構成される。なお、この実施例にあっては、金属製の上カバー部13及び下カバー部14、金属ボルト15、アース部材16及びアース線17がアース手段として機能する。」 ケ 引用文献1には、図1及び図2として、次の図が記載されている。 「 [図:0001395185000002.jpg] 」 コ 引用文献1には、【0028】(上記オ参照。)に弁機構体30はダイヤフラム40とダイヤフラム50を有し、フッ素樹脂等の樹脂からなることが示されているから、ダイヤフラム40とダイヤフラム50もフッ素樹脂等の樹脂からなるといえる。また、【0029】(上記オ参照。)には、このダイヤフラム40を本体部12に形成した突部12aが押圧保持することが示されているところ、突部12aがダイヤフラム40を押圧保持するためには、突部12aの反対側からダイヤフラム40を押圧することが必要である。この点について、図2の記載をみると、ダイヤフラム40の突部12aの反対側には上カバー部13が配置されているから、ダイヤフラム40は、本体部12と上カバー部13とで押圧保持されているといえる。さらに、「ダイヤフラム50は、ダイヤフラム40とほぼ同様に構成されたものであ」(【0033】上記キ参照。)るから、図1の記載とあわせてみると、ダイヤフラム50は、本体部12と下カバー部14との間に押圧保持されているといえる。 サ 【0034】(上記ク参照。)には、上カバー部13の静電気が、金属ボルト15及び下カバー部14を経て、アース部材16に接続されたアース線17を介してアースされることが記載され、引用文献1には、「なお、この実施例にあっては、金属製の上カバー部13及び下カバー部14、金属ボルト15、アース部材16及びアース線17がアース手段として機能する。」(【0035】上記ク参照。)と記載されていることも考慮すると、上カバー部13の静電気をアースに流す手段として、下カバー部14、及び前記下カバー部14に設けられ、アース線17によって接地されるアース部材16、並びに上カバー部13及び下カバー部14を本体部12に一体に固定する金属ボルト15が記載されているといえる。 引用文献1の【0031】(上記カ参照。)の記載から、ダイヤフラム40には、流体接触面41Aがあることがわかり、図1及び2の記載をふまえると、ダイヤフラム40は、弁室23を流れる流体に接触しているといえる。 シ 引用文献1の【0031】(上記カ参照。)の記載から、導電性部材45は、流体流路20内を流通する流体と接触していることがわかり、【0033】(上記キ参照。)の記載から、導電性部材55も流体流路20内を流通する流体と接触しているといえる。そして、引用文献1の【0034】(上記ク参照。)の記載より、導電性部材45は、上カバー部13と接し、【0035】(上記ク参照。)の記載より、導電性部材55は、下カバー部14と接しているといえる。 ス 以上のことをふまえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。 引用発明1-1 フッ素樹脂等の樹脂からなり、流体流路20内の弁室23と前記弁室23と連通する流体流路20の第1開口21側及び流体流路20の第2開口22側とが形成された本体部12と、金属製または導電性の樹脂等によって構成され、前記本体部12の上部に配置された上カバー部13と、フッ素樹脂等の樹脂からなり、前記本体部12と前記上カバー部13とで押圧保持され、前記弁室23を流れる流体に接触するダイヤフラム40と、下カバー部14、及び前記下カバー部14に設けられ、アース線17によって接地されるアース部材16、並びに上カバー部13及び下カバー部14を本体部12に一体に固定する金属ボルト15と、を備え、前記流体流路20内を流通する流体が、上カバー部13と接している導電性部材45と下カバー部14と接している導電性部材55に接触している流体機器。 セ さらに、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1-1’」という。)が記載されていると認められる。 引用発明1-1’ フッ素樹脂等の樹脂からなり、流体流路20内の弁室23と前記弁室23と連通する流体流路20の第1開口21側及び流体流路20の第2開口22側とが形成された本体部12と、金属製または導電性の樹脂等によって構成され、前記本体部12の下部に配置された下カバー部14と、フッ素樹脂等の樹脂からなり、前記本体部12と前記下カバー部14とで押圧保持され、前記弁室23を流れる流体に接触するダイヤフラム50と、前記下カバー部14に設けられたアース線17によって接地されるアース部材16と、を備え、前記流体流路20内を流通する流体が、上カバー部13と接している導電性部材45と下カバー部14と接している導電性部材55に接触している流体機器。 (2)引用文献2 取消理由で通知した引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア 「本考案は、石油、ガソリン、液化プロパンガスその他の可燃物貯蔵タンク等の弁装置に関するものである。」(1ページ12行ないし同ページ14行) イ 「22はアース線であつて、一端は弁体(5、10、16)の金属部に接続され、他端は弁筐本体1等アース側に接続される。実施例においては上記支持腕8、13に接続した。また、アース線22は耐錆性、耐薬品性等の理由からステンレススチール線コイル(ボンド線)を用い、しかも充分に弛ませることにより弁体の作動に抵抗を与えないようにした。23はアース線取付けのためのボルト、24はワツシヤを示している。」(5ページ5行ないし同ページ14行) ウ 引用文献2には、第3図として、次の図が記載されている。 「 [図:0001395185000003.jpg] 」 (3)引用文献3 取消理由で通知した引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、自動車、例えば貨物用自動車において、エンジン或いはバッテリーからのアース用ケーブルとフレームとを電気的に接続する技術に関する。」 イ 「【0004】 図10で示す1点固定方式では、スタータモータ側のアースケーブル2(2M)の端部及びバッテリー20側のアースケーブル2(2B)の端部が、1個のアースターミナル1Jによって、フレーム3の内側にボルト・ナット等によって取付けられる。 ここで、1点固定方式の場合には、フレーム3に貫通孔35を形成して、バッテリー20側のアースケーブル2(2B)を、貫通孔35を貫通してバッテリーに接続する必要がある。」 ウ 引用文献3には、図10として、次の図が記載されている。 「 [図:0001395185000004.jpg] 」 (4)引用文献4 取消理由で通知した引用文献4には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、アース用組合せ端子部材に関するものである。」 イ 「【0022】 かかるアース用組合せ端子部材Aは、接地部材Eの上面に第1アース用端子金具10Aの本体部11Aを面接触状に載置するとともに、回り止め部14の係止片14bを接地部材Eに形成されている回り止め孔Eaに差し込む。そして、上からアース用端子金具10A~10Dのボルト孔12及び接地部材Eのボルト孔EbにボルトBを差し込み、接地部材Eの下面側においてボルトBにナットNを螺合して締め付ける。このとき、ボルトBの頭部BaとナットNが摩擦によって本体部11A~11Dを回転させようとするのであるが、回り止め部14が接地部材Eの回り止め孔Eaに係止されているので、本体部11A~11D(アース用端子金具10A~10D)が接地部材Eに対して回転することはない。ボルトBとナットNの締付けが完了すると、アース用組合せ端子部材Aが接地部材Eに対して導通可能に固定される。」 ウ 引用文献4には、図3として、次の図が記載されている。 「 [図:0001395185000005.jpg] 」 4 当審の判断 (1)本件発明1について ア 引用文献1に記載のダイヤフラム40が本件発明1の第一ダイヤフラムに相当するとした場合(引用発明1-1を主引用発明とした場合)について 本件発明1と引用発明1-1とを対比すると、引用発明1-1の「フッ素樹脂等の樹脂」は、絶縁性の樹脂であるから、本件発明1の「絶縁性材料」に相当し、引用発明1-1の「流体流路20内の弁室23」及び「流体流路20の第1開口21側」、「流体流路20の第2開口22側」は、それぞれ、本件発明1の「弁室」及び「第一流路」、「第二流路」に相当し、引用発明1-1の「本体部12」は、本件発明1の「弁本体」に相当する。 また、引用発明1-1の「金属製または導電性の樹脂等によって構成され」は、本件発明1の「導電性材料からなり」に相当し、引用発明1-1の「本体部12の上部に配置された」、「上カバー部13」は、それぞれ、本件発明1の「弁本体に連結された」、「ボンネット」に相当し、引用発明1-1の「押圧保持」、「ダイヤフラム40」は、それぞれ本件発明1の「挟持」、「第一ダイヤフラム」に相当する。 さらに、引用発明1-1の「流体機器」は、ダイヤフラム弁である(前記3(1)オ参照)から、本件発明1の「ダイヤフラムバルブ」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1-1とは、次の一致点を有し、相違点1及び2の点で相違する。 [一致点] 絶縁性材料からなり、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結されたボンネットと、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットとで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、を備えているダイヤフラムバルブ。 [相違点1] 本件発明1のダイヤフラムバルブは、「ボンネットに接続された第一アース手段」を備えているのに対し、引用発明1-1の流体機器は、「下カバー部14、及び前記下カバー部14に設けられ、アース線17によって接地されるアース部材16、並びに上カバー部13及び下カバー部14を本体部12に一体に固定する金属ボルト15」を備えている点。 [相違点2] 本件発明1のダイヤフラムバルブは、「前記弁室と前記第一流路及び前記第二流路とを流れる流体が、絶縁性材料のみに接触する」のに対し、引用発明1-1の流体機器は、「前記流体流路20内を流通する流体が、上カバー部13と接している導電性部材45と下カバー部14と接している導電性部材55に接触している」点。 次に、事案に鑑み、相違点2について検討する。 相違点2に係る引用発明1-1の特定事項は、本件発明1の「弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路」に相当する「流体流路20内の弁室23と前記弁室23と連通する流体流路20の第1開口21側及び流体流路20の第2開口22側」を流れる流体が導電性部材45及び導電性部材55に接触しているというものであって、導電性部材55に接触する引用発明1-1は、絶縁性材料のみに接触するとはいえないから、相違点2は、実質的な相違点である。したがって、本件発明1と引用発明1-1とは、相違点2において異なるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえない。 また、引用文献1には、「この流体機器10では、超純水のスチーム等の流体との摩擦によって弁機構体30で静電気が発生した際に、ダイヤフラム40の膜部41近傍に流体流路20(第1開口側弁室23A)側に貫通して配置された導電性部材45が前記流体と接触することによって、前記静電気が導電性部材45を介して流体機器10外に放電される。」(【0034】(上記3(1)ク参照。)と記載され、また、「同様に、ダイヤフラム50の膜部51近傍に流体流路20(第2開口側の弁室23B)側に貫通して配置された導電性部材55が前記流体と接触することによって、静電気が導電性部材55から金属製の下カバー部14を経て、アース部材16に接続されたアース線17を介してアースされるように構成される。」(【0035】(上記3(1)ク参照。)と記載されており、これらの記載から引用発明1-1の流体機器は、流体流路20を流れる流体から静電気が導電性部材45及び導電性部材55を介して、外部に静電気を放電するものであると理解できる。 そして、引用発明1-1の流体機器は、静電気を放電することにより、「弁機構体におけるダイヤフラムの薄肉の膜部では、静電気が過剰に帯電することによって絶縁破壊が起こってしまう」(【0003】(上記3(1)ウ参照。)という従来技術に対し、「ダイヤフラムの特性を妨げることなく簡易な構成によってダイヤフラムの膜部の絶縁破壊を防止することができる新規な流体機器を提供する」(【0007】(上記3(1)エ参照。)という課題を解決するものと引用文献1の記載から理解できる。 そうすると、引用発明1-1において、流体流路20内を流通する流体が導電性部材45及び導電性部材55に接触していることは、流体流路20を流れる流体から、外部に静電気を放電し、ダイヤフラムの膜部の絶縁破壊を防止するという引用文献1に記載された課題を解決するために必要な事項であり、引用発明1-1において、流体流路20を流れる流体が導電性部材45及び導電性部材55に接触しないようにし、絶縁性材料のみに接触するようにすることには、阻害要因があるといえる。 また、引用文献2ないし4をみても、これらの文献から、アース手段を、ボルト等を利用して導電性部材の適宜の箇所に取り付けることが周知技術であるとはいえるが、弁本体に形成された弁室と、この弁室に連通する通路を流れる流体が絶縁性材料のみに接触することは示されておらず、仮にこのような事項が周知技術であったとしても、引用発明1-1に適用することには、上記のように阻害要因があるから、当業者であっても本件発明1の相違点2に係る発明特定事項を得ることが容易であるとはいえない。 以上のことから、相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-1であるとは、いえず、また、引用発明1-1及び引用文献2ないし4に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 イ 引用文献1に記載のダイヤフラム50が本件発明1の第一ダイヤフラムに相当するとした場合(引用発明1-1’を主引用発明とした場合)について 本件発明1と引用発明1-1’とを対比すると、引用発明1-1’の「フッ素樹脂等の樹脂」は、絶縁性の樹脂であるから、本件発明1の「絶縁性材料」に相当し、引用発明1-1’の「流体流路20内の弁室23」、及び「流体流路20の第1開口21側」、「流体流路20の第2開口22側」は、それぞれ、本件発明1の「弁室」、及び「第一流路」、「第二流路」に相当し、引用発明1-1’の「本体部12」は、本件発明1の「弁本体」に相当する。 また、引用発明1-1’の「金属製または導電性の樹脂等によって構成され」は、本件発明1の「導電性材料からなり」に相当し、引用発明1-1’の「本体部12の下部に配置された」は、本件発明1の「弁本体に連結された」に相当し、引用発明1-1’の「下カバー部14」は、本件発明1の「ボンネット」と第一隣接部材である点で共通する。 さらに、引用発明1-1’の「押圧保持」、「ダイヤフラム50」は、それぞれ本件発明1の「挟持」、「第一ダイヤフラム」に相当する。 引用発明1-1’の「設けられた」、「アース線17によって接地されるアース部材16」は、それぞれ、本件発明1の「接続された」、「第一アース手段」に相当する。 引用発明1-1’の「流体機器」は、ダイヤフラム弁である(前記3(1)オ参照)から、本件発明1の「ダイヤフラムバルブ」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1-1’とは、次の一致点を有し、相違点3及び4の点で相違する。 [一致点] 絶縁性材料からなり、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結された第一隣接部材と、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記第一隣接部材とで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、前記第一隣接部材に接続された第一アース手段と、を備えているダイヤフラムバルブ。 [相違点3] 第一隣接部材が、本件発明1では、「ボンネット」であるのに対し、引用発明1-1’では、「下カバー部14」である点。すなわち、ボンネットとは、語意として覆いという意味があることから、本件発明1の「ボンネット」は、弁本体の上側から弁本体を覆うものであるのに対し、引用発明1-1’の「下カバー部14」は、本体部12の下側にある点。 [相違点4] 本件発明1のダイヤフラムバルブは、「前記弁室と前記第一流路及び前記第二流路とを流れる流体が、絶縁性材料のみに接触する」のに対し、引用発明1-1’の流体機器は、「前記流体流路20内を流通する流体が、上カバー部13と接している導電性部材45と下カバー部14と接している導電性部材55に接触している」点。 次に、事案に鑑み、相違点4について検討する。 相違点4は、本件発明1と引用発明1-1との相違点である上記相違点2と同様の相違点であり、相違点2が実質的な相違点であるのと同様の理由により、相違点4も実質的な相違点であるから、本件発明1は、引用発明1-1’であるとはいえない。 また、引用発明1-1において、流体流路20を流れる流体が導電性部材45及び導電性部材55に接触しないようにし、絶縁性材料のみに接触するようにすることには、阻害要因があるのと同様の理由により、引用発明1-1’において、流体流路20を流れる流体が導電性部材45及び導電性部材55に接触しないようにし、絶縁性材料のみに接触するようにすることには、阻害要因があるといえる。 また、引用文献2ないし4をみても、弁本体に形成された弁室と、この弁室に連通する通路を流れる流体が絶縁性材料のみに接触することは示されておらず、仮にこのような事項が周知技術であったとしても、引用発明1-1’に適用することには、阻害要因があるから、当業者であっても本件発明1の相違点2に係る発明特定事項を得ることが容易であるとはいえない。 以上のことから、相違点3について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-1’であるとは、いえず、また、引用発明1-1’及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ 申立人の意見について 申立人は、引用文献1の【0005】の記載を根拠として、「引用文献1には、従来技術として、内部流路を流れる流体が絶縁性材料のみに接触している点が記載されていると認められる。」(令和4年5月20日意見書3ページ5行ないし同ページ6行)と主張している。 申立人が主張の根拠とする引用文献1の【0005】の記載は、次のとおりである。 「ところで、従来では、樹脂製の部材の帯電を防止するものとして、例えば、樹脂製のチューブ本体の外周面(流体との非接触面)に所定の間隔で導電性物質が含有された導電性部材を形成した帯電防止チューブが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、樹脂製のダイヤフラム弁においては、ダイヤフラムの膜部は薄肉に形成されて屈曲作動可能に構成される必要があるため、前記帯電防止チューブの如く、ダイヤフラムの膜部裏面(流体との非接触面)側に導電性物質が含有された導電性部材を配置するには適していない。」 この記載によれば、樹脂製の部材の帯電を防止するものとして、樹脂製のチューブ本体の外周面(流体との非接触面)に所定の間隔で導電性物質が含有された導電性部材を形成した帯電防止チューブが知られていることが示され、これは、帯電防止チューブの内部を流れる流体が絶縁性材料のみに接触していると解されるが、上記引用発明1-1及び引用発明1-1’は、この帯電防止チューブを用いたものではなく、また、流体流路20は、本体部12に形成されたものであって、チューブではないから、引用発明1-1及び引用発明1-1’が帯電防止チューブを用いて、流体流路20を流れる流体が絶縁性材料のみに接触するようにされているとはいえない。さらに、引用発明1-1及び引用発明1-1’において、上記相違点2及び4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることに阻害要因があるのは、上記のとおりであるから、引用文献1に内部を流れる流体が絶縁性材料のみに接触している帯電防止チューブが示されているとしても、これを引用発明1-1及び引用発明1-1’に適用することは当業者であっても容易であるとはいえない。 また、申立人は、「内部流路を流れる流体が絶縁性材料のみと接触していることは、甲第5号証および甲第6号証に示すように技術常識である」(令和4年5月20日意見書3ページ14行ないし同ページ16行)とも主張するが、引用発明1-1及び引用発明1-1’において、上記相違点2及び4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることに阻害要因があるのは、上記のとおりであるから、仮に、内部流路を流れる流体が絶縁性材料のみと接触していることが技術常識であるとしても、引用発明1-1及び引用発明1-1’において、相違点2及び4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者であっても容易ではない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、相違点1及び相違点3について判断するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるとは、いえず、また、引用発明1-1又は引用発明1-1’及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (2)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1に対して、さらに限定した発明である。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び3は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、引用発明1-1又は引用発明1-1’及び周知技術に基いて当業者が容易になし得たものともいえない。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明1及び2は、引用文献1に記載された発明とはいえず、引用文献1に記載された発明(引用発明1-1又は引用発明1-1’)及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、また、本件発明3は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した理由によっては、請求項1ないし3係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701063

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