2021-701007
非晶質シリカ粉末及び樹脂組成物
- 審判番号
- 2021-701007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-141931外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6867539
- 請求日
- 2021年10月20日
- 審決日
- 2023年02月14日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第120条、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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特許第6867539号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」
ということがある。)についての出願は、令和2年8月25日に出願され、
令和3年4月12日にその特許権の設定登録がされ、令和3年4月28日に
特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てが
あり、次のとおりに手続きが行われた。
令和3年10月20日 特許異議申立人金田綾香(以下、「申立人」と
いう。)による請求項1~6に係る特許に対す
る特許異議の申立て
令和4年 3月30日付け 取消理由通知書
令和4年 6月 7日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 8月 8日 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年6月7日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)
による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「最頻径が1~10μm」
と記載されているのを、
「最頻径が3.0~4.2μm」
に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する
請求項であり、請求項1~6は一群の請求項であるところ、訂正事項1によ
る訂正は、その一群の請求項に対して請求されたものである。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に「最頻径が1~10μm」と記載されているの
を、「最頻径が3.0~4.2μm」と訂正し、最頻径の上限と下限が規定
された範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的
とするものである。
そして、当該訂正事項は、本件明細書の段落【0012】の「本発明の非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布において、例えば、最頻径が3.0~4.2μmの範囲内にある。」の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)独立特許要件について
本件特許の請求項1~6の全ての請求項に係る特許について特許異議の申
立てがされたので、訂正後の請求項1~6に係る発明について、特許法第1
20条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用
されない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条
の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同
条第9項において準用する同法第126条第第5項及び第6項の規定に適合
する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正
特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正すること
を認める。
第3 本件発明の認定
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特
許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明
6」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に
添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下の事項によ
り特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す)。
「【請求項1】粒子径頻度分布において最頻径が3.0~4.2μmの範囲内にあり、粒子径頻度分布において0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度が3.0%未満であり、かつ、1~12m2/gの比表面積を有することを特徴続きを表示(全19行)とする非晶質シリカ粉末。【請求項2】13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布が1質量%以下である、請求項1に記載の非晶質シリカ粉末。【請求項3】溶融化率95%以上である、請求項1または2に記載の非晶質シリカ粉末。【請求項4】ウラン元素およびトリウム元素の濃度の合計が10ppb以下である、請求項1~3いずれかに記載の非晶質シリカ粉末。【請求項5】請求項1~4いずれかに記載の非晶質シリカ粉末と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤とを含む固形封止用の樹脂組成物。【請求項6】前記非晶質シリカ粉末を80~90質量%含有してなることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂組成物。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件特許の請求項1~6に係る発明(ただし本件訂正前のもの)に対して
、当審が令和4年3月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、
次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件違反)
取消理由1は、要するに、本件の発明の課題は「固形封止用に好適な、流
動性に優れる非晶質シリカ粉末及び該非晶質シリカ粉末を含む樹脂組成物を
提供する」ことであると認められるところ(段落【0005】)、下記ア、
イの点で設定登録時の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。
記
ア 設定登録時の請求項1、3~6
本件明細書に記載された「実施例」は、「比較例」よりも樹脂組成物の流
動性が優れていることを把握することができるが、上記「実施例」及び「比
較例」は、すべて設定登録時の請求項2に係る発明の特定事項である「13
μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布が1質量%以下である」こと
を充足する非晶質シリカ粉末のみであって、13μm以上のような大きな粒
子径の粉末を所定量以上含む非晶質シリカ粉末では、これを含む液状封止剤
(樹脂組成物)の流動性が悪化すると予測される。
そうすると、「13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布」を特
定されていない同請求項1、3~6に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が、発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるということはできないから、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
イ 設定登録時の請求項1~6
アと同様であって、上記「実施例」の記載からすると、設定登録時の請求
項1~6に係る発明は、「実施例」の最頻径の値の範囲より大幅に広い「最
頻径が1~10μm」の範囲まで、「実施例」と同様に本件の発明の課題を
解決できるとは認識することができず、同請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるということはできないから、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
2 取消理由に対する当審の判断
(1)取消理由1の判断
ア サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範
囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載され
た発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載
又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲
のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技
術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討
して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。
イ 特許請求の範囲の記載について
本件特許の特許請求の範囲の記載は、第3に記載のとおりである。
ウ 発明の詳細な説明の記載について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明に関する説明として以下の記
載がある(下線部は、当審が付与した。)。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】【0005】本発明は、固形封止用に好適な、流動性に優れる非晶質シリカ粉末及び該非晶質シリカ粉末を含む樹脂組成物を提供することである。」
(イ)「【0011】<非晶質シリカ粉末>本発明の非晶質シリカ粉末は、粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲内にあり、粒子径頻度分布において0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度が3.0%未満であることで、流動性を改善できる。【0012】続きを表示(全26行)本発明の非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布において、最頻径が1~10μmの範囲内にある。非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布における最頻径が10μmを超えると、上記の問題が生じる。一方、粒子径頻度分布における最頻径が1μm未満といった粒径の小さい粉末では半導体封止材の粘度が高くなりすぎ、粉末の充填量を高くすることができなくなる。下限値は1.5μm以上であってよく、2.0μm以上であってよく、2.5μm以上であってよく、3.0μm以上であってよく、3.2μm以上であってよい。上限値は8.0μm以下であってよく、7.0μm以下であってよく、6.0μm以下であってよく、5.0μm以下であってよく、4.2μm以下であってよく、4.0μm以下であってよい。本発明の非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布において、例えば、最頻径が3.0~4.2μmの範囲内にある。ここでいう最頻径とは、粉末の後述する測定方法により得られる粒子径分布において最も高い頻度を示す粒子径のことである。なお、原料となる非晶質シリカ粉末の最頻径が10μmを超えている場合、分級を行って、粒子径分布を調整する。【0013】また、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークにおいて、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を3.0体積%未満とすれば、非晶質シリカ粉末の流動性をより高めることができる。より好ましくは2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下であり、0.0%であってよい。0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を3.0%未満にする方法は、従来公知の方法を採用でき、例えば、精密風力分級機を用いて粗粉側、微粉側をカットする方法を例示できる。なお、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度は後述する粒度分布の測定方法にて得られる値とする。・・・・・【0016】比表面積を1~12m2/gとすることが好ましい。特に、本発明では、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を3.0%未満とするため、比表面積が低下する傾向にある。そこで、0.5μm以下の超微粉を添加して比表面積を高めることが好ましい。好ましい超微粉のサイズは中位径で0.1~0.5μmである。非晶質シリカ粉末の比表面積が12m2/gを超える場合には、微粒子間の凝集傾向が増して半導体封止材の流動性が低下する。上限は10.5m2/g以下であってよく、9m2/g以下であってよく、8m2/g以下であってよい。一方、比表面積が1m2/g未満の場合には、粉末が最密充填構造を形成しにくくなるために、半導体封止材の流動性が低下する。2m2/g以上がより好ましく、3m2/g以上がさらに好ましい。・・・・・【0018】本発明の非晶質シリカ粉末は、13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布を1質量%以下、0質量%とすることができる。粗粒子が少ないことにより、非晶質シリカ粉末がさらに最密充填構造を形成しやすくすることが可能となり、半導体封止材の流動性が向上する。」
(ウ)「【実施例】【0036】<非晶質シリカ粉末の調製>本発明の調製例の非晶質シリカ粉末は、以下の手順で調製した。なお、原続きを表示(全45行)料には市販の非晶質シリカを用いた。なお、この原料は、1~10μmの範囲に、最頻径のピーク1個がある。【0037】[粗粉分級]本実施例においては、原料非晶質シリカ粉末は、大きな粒子径を除外するために粗粉分級した。13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布を表2に示した。なお、実施例において、13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布は0.0質量%である。【0038】[微粉分級]次に、精密風力分級機を用いて微粉側をカットする方法にて、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の累積値を調整した。0.50~1.83μmの粒子径の粒子の累積値は表2に示す通りである。なお、実施例において、1~10μmの範囲の最頻径における頻度は9.3~14.3体積%である。【0039】[超微粉配合]次に、微粉分級までの工程で得られた非晶質シリカ粉末に対して、粒子径の小さな非晶質シリカ粉体(中位径が0.19、0.28または0.37μmの超微粉)を、表2に示す内添加比率で配合した。【0040】<樹脂組成物の調製>表1に示す配合(質量%)にて、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤及びその他の材料を混合し、均一化した後、80℃に加熱した2軸ロールで加熱、混練して、押し出し、冷却固化後、粉砕機で所定の粒度に粉砕して、常温で固体状の粉状のエポキシ樹脂組成物を調製した。【0041】【表1】[図:0001397160000001.jpg]・・・・・【0049】[樹脂組成物の評価]調製した粉状のエポキシ樹脂組成物を用い、次の条件でトランスファ成形を行うことによって、スパイラルフロー及び狭隙充填性の評価を行った。【0050】(5)スパイラルフロー(条件)・金型サイズ:φ3mmのスパイラル形状・金型温度:175℃・注入圧力:65kgf/cm2・成形時間:90秒【0051】(6)狭隙充填性(条件)・金型サイズ:5×60×0.02mm・金型温度:175℃・注入圧力:65kgf/cm2・成形時間:90秒【0052】[評価結果]表2に、各非晶質シリカ粉末の調製条件(粉体分級条件、配合)、粉末特性および各非晶質シリカ粉末を用いた樹脂組成物の流動特性(スパイラルフロー、狭隙充填性)の物性値を示す。【0053】【表2】[図:0001397160000002.jpg]」
エ 本件特許における発明が解決しようとする課題について
本件発明の課題は、上記ウ(ア)によると、「固形封止用に好適な、流動
性に優れる非晶質シリカ粉末及び該非晶質シリカ粉末を含む樹脂組成物を提
供する」ことであるといえる。
オ 発明の詳細な説明に記載された粒子径頻度分布及び実施例について
(ア)粒子径頻度分布について
本件発明1に係る「粒子径頻度分布」における「最頻径が3.0~4.2μmの範囲内」との発明特定事項に関して、発明の詳細な説明には、ウ(イ)によると「粒子径頻度分布における最頻径が1μm未満といった粒径の小さい粉末では半導体封止材の粘度が高くなりすぎ、粉末の充填量を高くすることができなくなる。・・・本発明の非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布において、例えば、最頻径が3.0~4.2μmの範囲内にある。」(段落【0012】)と記載されている。
また、同じく「粒子径頻度分布」における「0.50~1.83μmの粒
子径の粒子の頻度を3.0体積%未満」との発明特定事項に関して、発明の詳細な説明には、ウ(イ)によると、「0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を3.0体積%未満とすれば、非晶質シリカ粉末の流動性をより高めることができる。」(段落【0013】)と記載されている。
そして、「13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布」に関して
は、当該篩上積算分布を「1質量%以下、0質量%とすることができる。粗
粒子が少ないことにより、非晶質シリカ粉末がさらに最密充填構造を形成し
やすくすることが可能となり、半導体封止材の流動性が向上する。」(【0
018】)と記載されている。
(イ)実施例について
上記ウ(ウ)の段落【0036】~【0039】及び表2によると、粗粉分級及び微粉分級、並びに超微粉の配合により、「最頻径(μm)」、「比表面積(m2/g)」及び「0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度(%)」などの非晶質シリカ粉末の粉末特性を調整することができることが理解できる。
上記表2によると、「実施例1~11」は、「最頻径」が「3.2~3.
9μm」、「0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度」が「0.0~
2.4%」及び「比表面積」が「2.4~10.1m2/g」の範囲にあ
り、本件発明1の特定事項を充足するが、「比較例1、2」は、「最頻径」
及び「比表面積」は、本件発明1で特定した範囲を充足するものの、「0
.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度」が、それぞれ「4.7%」及
び「6.7%」であり、本件発明1の特定した範囲を充足しないものである
ところ、「実施例1~11」は、「比較例1、2」よりも、各非晶質シリカ
粉末を用いた流動性(スパイラルフロー)及び充填性(狭隙充填性)が優れ
ていることが具体的に示されていると認められる。
なお、実施例及び比較例において、「13μm以上の粒子径を有する粒子
の篩上積算分布」は、0質量%である。
カ 本件発明に係る特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対
比(本件発明と、発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲との関係について)
(ア)「13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布」(「取消理由1 ア」)の特定について
上記オ(ア)によると、本件発明において、特に粒子径頻度分布において
「最頻径」が「3.0~4.2μmの範囲内」にあること及び「0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度が3.0%未満」であることにより、非
晶質シリカ粉末の流動性を高めることができ、これに加えて、「13μm以
上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布」の上限を規定することにより、さ
らに非晶質シリカ粉末がさらに細密充填構造を形成しやすくなることが可能
となって流動性がより改善されるということを理解することができる。
これについて、実施例をみると、上記オ(イ)のとおり、「13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布」が0質量%である場合において、「最頻径」が「3.0~4.2μの範囲内」である非晶質シリカ粉末について、最頻径の近傍である「0.50~1.83μm」の粒子径の「粒子の頻度が3.0%未満」となるように調整することで、流動性が優れた非晶質シリカ粉末とすることができることを把握することができる。
そして、上記実施例と比較例との対比から、「13μm以上の粒子径を有
する粒子」が含まれている非晶質シリカ粉末であったとしても、本件発明1
で特定するように粒子径頻度分布の「最頻径」及び「0.50~1.83μ
mの粒子の頻度」を調整することで、このような粒子径頻度分布を充足しな
い非晶質シリカ粉末よりも流動性が向上することを当業者であれば理解する
ことができる。
したがって、本件発明1において、さらに「13μm以上の粒子径を有す
る粒子の篩上積算分布」の上限を規定することは、上記発明の課題を解決す
る上で必須の事項であるとまではいえない。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3~6についても
同様である。
(イ)「最頻径」(「取消理由1 イ」)の特定について
本件発明1は、「最頻径」が「3.0~4.2μm」であることが特定さ
れているところ、当該特定事項は、上記(ア)のとおり、本件発明1におい
て、この「最頻径」を含む粒子径頻度分布を調整することが肝要であること
が理解でき、実施例においても当該「最頻経」の範囲について具体的に裏付
けられている。そして、上記範囲を逸脱すると、半導体封止材の流動性に影
響することが技術常識から理解できるところ、当該実施例からみて、本件発明で特定した「最頻径」であれば、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識し得る範囲のものであるといえる。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~6についても
同様である。
キ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載さ
れたものであって、サポート要件に適合するといえるから、取消理由1に理
由はない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由のうち、前記第4の取消理由において
採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
移におけるアルカリ金属酸化物の影響”,Journal of the C
eramic Society of Japan,1997,Vol.105,No.5,p.385-390
(以下、「甲第1号証」を「甲1」などという。)
(1)甲1を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如(以下、「申立理由1」という。)
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であって
特許法第29条第1項3号に該当し、また、設定登録時の請求項1~6に係
る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に
発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(2)甲2を主たる証拠とした進歩性欠如(以下、「申立理由2」という。)
設定登録時の請求項1~6に係る発明は、甲2に記載された発明及び周知
技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)サポート要件違反(以下、「申立理由3」という。)
設定登録時の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記
「2(4)ア(ア)、(イ)」の点で不備のため、特許法第36条第6項第
1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)実施可能要件違反(以下、「申立理由4」という。)
設定登録時の請求項1~6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が後記
「2(5)ア」 の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定す
る要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 当審の判断
(1)各証拠の記載事項
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ア 甲1の記載事項
(ア)「【0022】本発明に係わる非孔性球状シリカの粒径はレーザー回折散乱方式(Coulter社製LS-130)により測定された値である。平均粒径はメディアン径を意味する。本発明の非孔性球状シリカはアンダーフィル等の狭い隙間に流し込む続きを表示(全11行)用途等に使用するため最大粒径が平均粒径の4倍以下であることが望ましい。樹脂配合時の粘度を下げるためには、粒度分布の広さを示す粒子の変動係数は15%以上が好ましい。単に分布が狭いということではなく、平均粒径より小さな粒子群をある程度含みながらも、平均粒径より大きな粗粒側の含有量が少ない分布であることが樹脂配合時の低粘度化、狭隙間への浸透性の点で好ましい。【0023】変動係数は大きすぎると微粉を多く含むことを意味するため、15~100%の範囲が好ましい。さらには25~60%の範囲が好ましい。粒子の変動係数(Cv)とは粒径のバラツキを表す指標であり、標準偏差σと平均粒径d[μm]との比で式(I)で表される。【0024】式(I):Cv=100×σ/d・・・・・ 」
(イ)「【0088】比較例1アイソゾール400を180g、乳化剤2g、純水60g及び安息香酸0.15gを混合し、40℃で攪拌した。次いでテトラメチルオルソシリケート60gを1時間で添加した。さらに40℃で2時間攪拌した後、100℃まで加温した。反応液を濾過し、シリカゲルを得た。得られたシリカゲルは純水を用いて洗浄し、150℃で乾燥させた。得られたシリカゲルを950℃で2時間焼成した。【0089】実施例1~4、比較例1で得られたシリカ粒子の物性を表1、2に示す。粒径はCoulter社製LS-130を用いて測定した。メディアン値を平均粒径とした。樹脂配合粘度は油化シェルエポキシ株式会社製エピコート815とシリカをシリカ配合率70質量%(シリカ粒子28gとエピコート81512gを混合)で混合した際の粘度であり、50℃で測定した。」
(ウ)「【表1】[図:0001397160000003.jpg]」
イ 甲2の記載事項
(ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】シラノール基を有し、平均粒子径が1~10μmであり、且つ下式で表わされる粒度分布の幾何標準偏差σが1.5以下であることを特徴とする球状シリカ。【数1】[図:0001397160000004.jpg]」
(イ)「【0021】【実施例】以下に実施例によって、本発明を具体的に説明する。[実施例1]200L反応器にドデシルベンゼン90kg、乳化剤(日光ケミカルズ(株)製Hexaglyn PR-15)0.8kg、純水30kgおよび氷酢酸0.2kgを仕込み、液温を45℃に保持して100rpmで攪拌しつつテトラメトキシシラン(コルコート(株)製 メチルシリケート39)35kgを5分以内に供給した。その後、45℃で2時間保持した後、150℃まで加温した。そして、反応液をろ別、アセトンにより洗浄し、400℃で4時間焼成して白色粉末を得た。この粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところそれぞれ独立した球状であった。【0022】この粉末を純水に分散してレーザー回折式粒度分布計(堀場(株)製粒度分布計LA-900)によって粒度分布を測定した所、平均粒径は3.9μmでσは1.37であり、カップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)との反応により測定したシラノール基の含有量は1.4mmol/gであった。【0023】[実施例2]焼成温度を600℃とした以外は実施例1と同じ方法で球状シリカを製造した。実施例1と同様にして測定した、球状シリカのシラノール基の含有量、平均粒径およびσを表1に示す。【0024】[実施例3]焼成温度を980℃とした以外は実施例1と同じ方法で球状シリカを製造した。実施例1と同様に球状シリカのシラノール基の含有量を測定した所、0.3mmol/gと1mmol/gより小さい数字を示したため、より正確な測定をするためにFT-IR拡散反射赤外分光法により、波長3740cm-1のシラノール基吸収強度を基に標準添加法でシラノール基の量を測定し直した所、10μmol/gという値であった。表1に示す平均粒径およびσは実施例1と同じ方法で測定した。」
(ウ)「【0027】 【表1】[図:0001397160000005.jpg]」
ウ 甲3の記載事項
甲3には、結晶化度が0.0%(非晶質率100.0%)の半導体封止材用球状シリカ質粉末について記載されている(段落【0018】)。
エ 甲4の記載事項
甲4には、球状無機質粉末がシリカであり、その用途が半導体封止樹脂用フィラーである場合、溶融率が98%以上であることが好ましいことが記載されている(段落【0020】)。
オ 甲5の記載事項
甲5には、半導体封止材に用いられる球状シリカ粉末は、溶融率が95%
以上であることが好ましいことが記載されている(段落【0013】)。
カ 甲6の記載事項
甲6には、溶融球状シリカなどの無機充填材の比表面積は、下限値が1m
2/g、上限値として10m2/gが好ましいことが記載されている(段
落【0044】、【0045】)。
キ 甲7の記載事項
半導体封止用エポキシ樹脂組成物に用いる溶融シリカであって、平均粒径
5~40μmの溶融シリカの比表面積は、0.8~3.5m2/gが好ま
しく、平均粒径0.1~3μmの溶融シリカの比表面積は、3.5~7.0
m2/gが好ましいことが記載されている(特許請求の範囲、段落【00
15】)。
ク 甲8の記載事項
甲8には、無機充填材の比表面積としては、流動性及び成形性の観点から
、0.7m2/g~4.0m2/gであることが好ましいことが記載され
ている(段落[0032])。
ケ 甲9の記載事項
甲9には、高純度シリカを電子材料等の原料として使用する場合は、U及
びThの合計が10ppb以下であることが好ましいことが記載されている
(段落【0065】)。
コ 甲10の記載事項
甲10には、トリウム及びウランの濃度がともに1ppb以下の高純度の
シリカからなる無機フィラーが記載されている(段落【0011】、実施例
)。
サ 甲11の記載事項
甲11には、樹脂封止剤フィラーとして用いる高純度のシリカは、ウラン
などの放射性物質のメタル合計量は10ppb以下が好ましいことが記載さ
れている(2頁右下欄9行~3頁左上欄1行)。
シ 甲12の記載事項
甲12には、アルカリ金属酸化物を無添加の球状シリカ成形体は、600
~1200℃、6hの焼成を施しても非晶質を示したことが記載されている
(386頁左欄4~13行)。
ス 甲13の記載事項
甲13には、シリカ粒子を800℃以上1200℃以下で焼成することで
非晶質シリカを得ることができることが記載されている(段落[0052]
)。
(2) 申立理由1(甲1を主たる証拠とする新規性・進歩性欠如)の検討
ア 甲1に記載された発明
上記(1)アの(ア)~(ウ)の記載から、表1に記載された比較例1の
シリカ粒子に着目して整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明
」という。)が記載されていると認められる。
「平均粒径が4.1μmであり、粒子径の変動係数が43.8%であり、2.3m2/gの比表面積を有するシリカ粒子。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「シリカ粒子」は、本
件発明1の「シリカ粉末」に相当し、甲1発明が「2.3m2/gの比表
面積を有する」点は、本件発明1の「1~12m2/gの比表面積を有す
る」ことに相当する。
そうすると、両者は、「1~12m2/gの比表面積を有するシリカ粉
末」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1は、「粒子径頻度分布において最頻径が3.0~4.2μmの
範囲内」であることが特定されているのに対して、甲1発明は、「平均粒径
が4.1μm」であることが規定されている点。
<相違点1-2>
本件発明1は、「粒子径頻度分布において0.50~1.83μmの粒子
径の粒子の頻度が3.0%未満」であることが特定されているのに対して、
甲1発明は、平均粒径が4.1μmであり、粒子径の変動係数が43.8%
であることが規定されているものの具体的な粒子径頻度分布は明らかでない
点。
<相違点1-3>
本件発明1は、シリカ粉末が非晶質であることが特定されているのに対
して、甲1発明は、シリカ粒子が非晶質であることは明らかでない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み相違点1-2から検討する。
甲1には、粒子径頻度分布において0.50~1.83μmの粒子径の粒
子の頻度について何ら直接的な記載はなく、また、甲1発明の平均粒径及び
粒子の変動係数、及び甲1のその他の記載からは、当該粒子の頻度が導出で
きるものではなく、甲1発明に係るシリカ粒子が本件発明1と同じ上記粒子
の頻度を有しているとはいえない。
したがって、上記相違点1-2は、実質的な相違点である。
また、甲1には、甲1発明におけるシリカ粒子の上記粒子の頻度を上記相
違点1-2に係る範囲とする動機付けはなく、さらに、甲2~甲12の記載
事項を考慮しても同様である。
したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は
、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明及び甲1~甲12に記載
の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、甲1発明として認定した比較例1に
係るシリカ粒子は、その製造方法((1)ア(イ)【0088】)は一般的
なものであるから、当該シリカ粒子の粒子径は正規分布に近似するとして、
その平均粒径及び粒子径の変動係数から平均径頻度分布を得ることができ、
甲1発明は、上記相違点1-2に係る粒子の頻度を充足する旨主張している
(14頁下から5行~15頁下から3行)。
しかし、上記主張の前提とする甲1発明に係るシリカ粒子の粒子径が正規
分布に従うという根拠は、単に製造方法が一般的なものであるということに
とどまり、証拠等をもって具体的な根拠は示されていない。
したがって、申立人の上記の主張は採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明とはいえず、また、甲1発明及び甲1~甲12に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~6と甲1発明とをそれぞれ対比すると、上記イ(ア)と同じ相違点を有するものであって、この相違点についての判断も上記イ(イ)と同様である。
したがって、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえず、ま
た、本件発明2~6は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業
者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は、理由がない。
(3)申立理由2(甲2を主たる証拠とする進歩性欠如)の検討
ア 甲2に記載された発明
上記(1)イの(ア)~(ウ)の記載から、表1に記載されたシリカ粒子
(実施例1~3)に着目して整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲
2発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均粒径が3.9μmであり、粒度分布の幾何標準偏差σが1.37である球状シリカ。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「球状シリカ」は、本
件発明1の「シリカ粉末」に相当する。
そうすると、両者は、「シリカ粉末」の点で一致し、以下の点で相違する
。
<相違点2-1>
本件発明1は、「粒子径頻度分布において最頻径が3.0~4.2μmの
範囲内」であることが特定されているのに対して、甲2発明は、「平均粒径
が3.9μm」であることが規定されている点。
<相違点2-2>
本件発明1は、「粒子径頻度分布において0.50~1.83μmの粒子
径の粒子の頻度が3.0%未満」であることが特定されているのに対して、
甲2発明は、平均粒径が3.9μmであり、粒度分布の幾何標準偏差σが1
.37であることが規定されているものの具体的な粒子径頻度分布は明らか
でない点。
<相違点2-3>
本件発明1は、「1~12m2/gの比表面積」であることが特定され
ているのに対して、甲2発明は、比表面積が明らかでない点。
<相違点2-4>
本件発明1は、シリカ粉末が非晶質であることが特定されているのに対
して、甲2発明は、球状シリカが非晶質であることは明らかでない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み相違点2-2から検討する。
甲2には、粒子径頻度分布において0.50~1.83μmの粒子径の粒
子の頻度について何ら直接的な記載はなく、また、甲2発明の平均粒径及び
粒度分布の幾何標準偏差σ、及び甲2のその他の記載からは、当該粒子の頻
度が導出できるものではなく、甲2発明に係るシリカ粒子が本件発明1と同
じ上記粒子の頻度を有しているとはいえない。
したがって、上記相違点2-2は、実質的な相違点である。
また、甲2には、甲2発明におけるシリカ粒子の上記粒子の頻度を上記相
違点2-2に係る範囲とする動機付けはなく、さらに、甲1、甲3~甲12
の記載事項を考慮しても同様である。
したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は
、甲2発明及び甲1~甲12に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に想
到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、甲2発明として認定した実施例1等
に係る球状シリカは、その製造方法((1)イ(イ)【0021】)は一般
的なものであるから、当該球状シリカの粒子径は正規分布に近似するとして
、その平均粒径及び粒度分布の幾何標準偏差σから平均径頻度分布を得るこ
とができ、甲2発明は、上記相違点2-2に係る粒子の頻度を充足する旨主
張している(18頁5行~19頁4行)。
しかし、上記主張の前提とする甲2発明に係るシリカ粒子の粒子径が正規
分布に従うという理由は、単に製造方法が一般的なものであると言及するにとどまり、証拠等をもって具体的な根拠は示されていない。
したがって、申立人の上記の主張は採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明及び周知技術に基づい
て、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるか
ら、本件発明2~6と甲2発明とをそれぞれ対比すると、上記イ(ア)と同
じ相違点を有するものであって、この相違点についての判断も上記イ(イ)
と同様である。
したがって、本件発明2~6は、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者
が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2は、理由がない。
(4)申立理由3(サポート要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
申立理由3のうち、取消理由に採用しなかった指摘事項は、以下の通りで
ある。
(ア)設定登録時の請求項1~6に係る発明は、非晶質シリカ粉末の比表面
積の範囲について「1~12m2/g」と規定しているが、本件明細書の
実施例は、比表面積が「2.4~10.1m2/g」となる非晶質シリカ
粉末のみ示されており、2.4m2/g未満又は10.1m2/gを超え
る比表面積を有する非晶質シリカ粉末についても、本件明細書の課題に示さ
れる「固形封止用に好適な、流動性に優れる非晶質シリカ粉末」であるのか
当業者から見ても不明であるから、設定登録時の請求項1~6に係る発明は
、本件明細書に記載した範囲を超えるものである。
(イ)本件明細書の段落【0016】には、0.50~1.83μmの粒子
径の粒子の頻度3.0%未満を充足しながら、比表面積を1~12m2/
gも充足するために、粒子径が0.5μm以下の超微粉を添加することが記
載され、実施例でも、超微粉配合が行われているから、設定登録時の請求項
1~6に係る発明には超微粉の添加が必要であると認められるが、当該発明は、超微粉については何ら規定していないから、本件明細書に記載した範囲を超えるものである。
イ 申立理由3についての検討
(ア)「比表面積」(上記「ア(ア)」)の特定について
上記「第4 2(1)取消理由1の判断」について検討したとおり、本件
発明においては、粒子径頻度分布における「最頻径」及び「0.50~1.
83μmの粒子径の粒子の頻度」を特定することが肝要である。
そして、本件発明に係る「1~12m2/gの比表面積」の発明特定事
項に関して、本件明細書の段落【0016】(第4 2(2)ウ(イ))に
よると、「比表面積を1~12m2/gとすることが好ましい。特に、本
発明では、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を3.0%未満と
するため、比表面積が低下する傾向にある。そこで、0.5μm以下の超微
粉を添加して比表面積を高めることが好ましい。 ・・・・・ 非晶質シリカ
粉末の比表面積が12m2/gを超える場合には、微粒子間の凝集傾向が
増して半導体封止材の流動性が低下する。 ・・・・・ 一方、比表面積が1
m2/g未満の場合には、粉末が最密充填構造を形成しにくくなるために
、半導体封止材の流動性が低下する。」と記載されている。
そうすると、粒子径分布に応じて比表面積は調整され、その増減による流
動性との関係も明らかであるから、「1~12m2/gの比表面積」を特
定事項とする本件発明は、サポート要件に適合するということができる。
(イ) 超微粉の添加(上記「ア(イ)」)について
上記本件明細書の段落【0016】の「本発明では、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を3.0%未満とするため、比表面積が低下する傾向にある。そこで、0.5μm以下の超微粉を添加して比表面積を高めることが好ましい。」との記載は、超微粉を任意に添加することで比表面積を調整できることを意味すると認められ、実施例では、超微粉を添加するものの他、超微粉の内添率が0%の例も示されているから(実施例9、11)、超微粉の添加が必ずしも必要であるとはいえない。
また、本件特許の非晶質シリカ粉末に係る発明は、物の発明であるから、
超微粉を添加するという製造方法における一工程を特定する必要もない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、上記申立理由3(ア)、(イ)に理由はない。
(5)申立理由4(実施可能要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
申立理由4は、設定登録時の請求項1~6に係る発明は、粒子径が0.5
μm以下の超微粉の添加が必要であると認められるところ、本件明細書を参
照しても、実施例に最終的な超微粉の内添率が記載されているのみであり、
粒度分布と比表面積とを本件発明1の規定範囲内に制御するために、超微粉
の添加量をどのように決定すればよいのか理解できないから、本件明細書は
、当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである
とはいえない、というものである。
イ 申立理由4についての検討
実施例において、超微粉の内添率を0~37%の範囲で設定することで、
非晶質シリカ粉末の比表面積を2.4~10.1m2/gの範囲で調整し
たことが記載されているから、当業者であれば、超微粉の添加量の決定方法
の記載がなくとも、実施例の記載(第4 2(1)ウ(ウ))にしたがって、非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布を調節することができる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明について
、当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる
。
ウ 小括
以上のとおりであるから、申立理由4に理由はない。
第6 申立人の意見書における主張について
令和4年8月8日に申立人が提出した意見書において、(1)「13μm
以上の粒子径を有する粒子」の含有量が本件発明1、3~6において特定さ
れていないこと、(2)「最頻径」及び(3)「比表面積」の範囲が、実施
例により十分に裏付けられたものでないことから、本件発明は、発明の詳細
な説明に記載したものではなく、依然としてサポート要件に適合していない
旨主張している。
しかし、(1)については、上記「第4 2(1)カ(ア)」に記載したとおりであり、また、(2)、(3)の主張は、要するに「最頻径」及び「比表面積」が、実施例で開示された範囲よりも本件発明で特定した数値範囲が広すぎるというものであるが、これらの判断については、上記「第4 2(1)カ(イ)」及び「第5 2(4)イ(ア)」の検討のとおりであるから、本件発明はサポート要件に適合するものである。
したがって、申立人の意見書における主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に
記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取
り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701007