特許異議申立
2021-700976
マルチピースソリッドゴルフボール
- 審判番号
- 2021-700976
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-235110
- 登録番号
- 6859682
- 請求日
- 2021年10月11日
- 審決日
- 2022年12月07日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ブリヂストンスポーツ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
- 【異議申立人】平川 弘子
- 審判長/審判官
- 審判長 吉村 尚
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 比嘉 翔一
- 分類
- P1651.113-ZDA(A63B) / P1651.121-ZDA(A63B) / P1651.537-ZDA(A63B) / P1651.851-ZDA(A63B) / P1651.853-ZDA(A63B) / P1651.857-ZDA(A63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第131条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
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事件の表示
特許第6859682号発明「マルチピースソリッドゴルフボール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6859682号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5〕、4、〔7-13〕について、訂正することを認める。
特許第6859682号の請求項1、2及び5に係る特許を取り消す。
特許第6859682号の請求項3及び6に係る特許についての申立ては却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6859682号の請求項1乃至13に係る特許についての出願は、平成28年12月2日に出願され、令和3年3月30日にその特許権の設定登録がされ、同年4月14日に特許掲載公報が発行された。その後、同年10月11日付けで特許異議申立人 平川弘子(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1乃至3、5及び6に対して特許異議の申立てがされ、令和4年1月4日付けで取消理由が通知され、同年3月8日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年5月17日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、同年6月14日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期内である同年7月14日に意見書及び訂正請求書についての手続補正書が提出され、同年8月10日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたものである。
そして、取消理由(決定の予告)に対し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
第2 訂正の適否について
1 令和4年7月14日に提出された手続補正書による訂正請求書の補正の適否について
(1)要旨変更の有無について
特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項は、訂正請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならないものと規定しているが、同項第1号により、請求の理由についてされるときはこの限りでないと規定されているから、訂正請求書の「請求の趣旨」の補正について、要旨の変更が認められていないといえる。
そして、「請求の趣旨」の要旨を変更する補正とは、「請求の趣旨」の記載を変更することによって、補正前後で請求の基礎である「訂正を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更することである。
ここで、「請求の趣旨」は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲を引用することにより、請求の内容を記載しているから、訂正特許請求の範囲の記載は、訂正請求における「請求の趣旨」と一体不可分のものであり、そうすると、訂正特許請求の範囲を補正することも、「請求の趣旨の補正」として扱われることとなる。
また、特許法第131条の2の趣旨は、審理対象の拡張変更による審理遅延を防止することにあると解されるところ、訂正事項の同一性に変更があっても、例えば、ある請求項の訂正事項を当該請求項の削除という訂正事項に変更する補正及びそれに整合させるための訂正明細書等についての訂正事項の補正、並びに請求項の削除という訂正事項を追加する補正及びそれに整合させるための訂正明細書等についての訂正事項の補正は、審理遅延を生じさせるものではないから、訂正請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものとは取り扱わない。
この点を踏まえて、令和4年7月14日に提出された手続補正書による補正について検討する。
(2)令和4年7月14日に提出された手続補正書による補正の内容
令和4年6月14日付けの訂正拒絶理由通知に対し、特許権者は、令和4年7月14日に提出された手続補正書において、訂正請求書を以下のとおり補正することを求める。
ア 訂正事項8において、引用する請求項から請求項2を削除し、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改める訂正とする。
イ 上記アの補正に伴い、訂正事項1、2、3、4、5、6における引用する請求項から請求項4を削除する。
ウ 訂正事項12において、引用する請求項から請求項2、4及び5を削除し、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改める訂正とする。
エ 訂正事項13において、明細書の記載を訂正事項12の補正に対応して補正するとともに、訂正事項1、2、3、4、5、6及び9における引用する請求項から請求項7を削除する。
(3)補正の適否
訂正事項から引用する請求項の削除という訂正事項の補正は、上記(1)に照らせば、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
したがって、令和4年7月14日に提出された手続補正書による手続補正は適法なものであり、令和4年3月8日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、下記訂正事項2(1)乃至(13)からなるものとなった。
2 本件訂正請求の内容について
本件訂正請求は、令和4年3月8日付けで提出された訂正請求書及び同年7月14日付けで提出された手続補正書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第6859682号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」とするものであり、その内容はつぎのとおりのものである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
なお、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、以下において、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」という。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「内層コアの直径が35.0mm以下であり、」
と記載されているのを、
「内層コアの直径が23.1~25mmであり、」
に訂正する(以下「訂正事項1」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、」
と記載されているのを、
「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mmであり、」
に訂正する(以下「訂正事項2」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「T1/T2の値が1.5~3.0であり、」
と記載されているのを、
「T1/T2の値が1.5~2.5であり、」
に訂正する(以下「訂正事項3」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、
「外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上」
と記載されているのを、
「外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45」
に訂正する(以下「訂正事項4」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に、
「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、」
と記載されているのを、
「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70であり、」
に訂正する(以下「訂正事項5」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に、
「酸含量が16質量%以上のアイオノマー」
と記載されているのを、
「酸含量が19~20質量%のアイオノマー」
に訂正する(以下「訂正事項6」という。)。
請求項2の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3を削除する(以下「訂正事項7」という。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に、
「内層コアのゴム組成物には、水が配合される請求項1~3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」
と記載されているのを、
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には、水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~3.0であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。」
に訂正する(以下「訂正事項8」という。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に、
「内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が22以上」
と記載されているのを、
「内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が22~29」
に訂正する(以下「訂正事項9」という。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか1項記載」
と記載されているのを、
「請求項1又は2記載」
に訂正する(以下「訂正事項10」という。)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6を削除する(以下「訂正事項11」という。)。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7に、
「上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成される請求項1~6のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」
と記載されているのを、
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~3.0であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール」
に訂正する(以下「訂正事項12」という。)。
請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8乃至13も同様に訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の段落【0009】の「従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。」以降を削除し、
「1.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1~25mmであり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.中間層の樹脂組成物には、酸含量が19~20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には、水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~3.0であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
5.内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が22~29である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~3.0であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記(iv)成分は、下記構造式(1)
R1-M1-R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
である上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記(iv)成分は、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛及びモノラウリル酸モノフマル酸亜鉛の群から選ばれる上記7又は8記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記(i)成分である基材ゴム100質量部に対する上記(ii)成分の配合量が10~60質量部であり、且つ上記(iv)成分の配合量が0.1~50質量部である上記7~9のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11.共架橋剤全量〔(ii)成分と(iv)成分との合計量〕に対する特定する上記(iv)成分の質量比率が1~50質量%である上記10記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
12.ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値が1.7~4.1である上記7~11のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
13.〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値が13~25である上記7~13のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。」
に訂正する(以下「訂正事項13」という。)。
(14)別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項4及び7と、訂正後の請求項7の記載を引用する請求項8乃至13について、当該請求項の訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コアの直径」について、「35.0mm以下」から「23.1~25mm」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「内層コアの直径が23.1~25mmであり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コアの直径」について、「35.0mm以下」から「23.1~25mm」に限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項1は、「内層コアの直径」について、「35.0mm以下」から「23.1~25mm」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項1に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0036】の「内層コアの直径としては、好ましくは15mm以上、より好ましくは17.5mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、上限として、35.0mm以下であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下とすることが推奨される。」及び【0089】の【表3】の実施例1乃至4の「外径(mm) 23.1」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)」について、「5.5~9.0mm」から「6.5~8.0mm」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mmであり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)」について、「5.5~9.0mm」から「6.5~8.0mm」に限定するものである。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項2は、「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)」について、「5.5~9.0mm」から「6.5~8.0mm」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項2に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0045】の「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの所定荷重変形量、即ち、たわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは4.5~10.0mm、より好ましくは5.5~9.0mm、更に好ましくは6.5~8.0mmである。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「T1/T2の値」について、「1.5~3.0」から「1.5~2.5」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「T1/T2の値が1.5~2.5であり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「T1/T2の値」について、「1.5~3.0」から「1.5~2.5」に限定するものである。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項3は、「T1/T2の値」について、「1.5~3.0」から「1.5~2.5」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項3に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0068】の「本発明のゴルフボールは、更に、以下の要件を満たすことが好適である。(I)コア、中間層被覆球体及びボールの各球体間のたわみ量の関係 内層コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体、即ち、コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.0~2.7、更に好ましくは1.5~2.5である。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「25以上」から「30~45」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「25以上」から「30~45」に限定するものである。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項4は、「外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「25以上」から「30~45」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項4に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0036】の「内層コアの直径としては、好ましくは15mm以上、より好ましくは17.5mm以上 、更に好ましくは20mm以上であり、上限として、35.0mm以下であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下とすることが推奨される。」及び【0089】の【表3】の実施例1乃至4の「外径(mm) 23.1」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度」について、「65以上」から「66~70」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70であり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度」について、「65以上」から「66~70」に限定するものである。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項5は、「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度」について、「65以上」から「66~70」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項5に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0050】の「中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは65以上、より好ましくは66以上であり、上限として、好ましくは74以下、より好ましくは72以下、更に好ましくは70以下である。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項2の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「アイオノマー」の「酸含量」について、「16質量%以上」から「19~20質量%」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5は、訂正後の請求項2の「酸含量が19~20質量%のアイオノマー」との記載を引用することにより、訂正前の請求項5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「アイオノマー」の「酸含量」について、「16質量%以上」から「19~20質量%」に限定するものである。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項6は、「アイオノマー」の「酸含量」について、「16質量%以上」から「19~20質量%」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項6に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0081】の「表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
「AM7315」:アイオノマー(酸含量20質量%)、三井・デュポンポリケミカル社製
「AD8546」:アイオノマー(酸含量19質量%)、デュポン社製」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項6は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、請求項3を削除するというものである。
そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項7は、請求項3を削除するというものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項7は、請求項3を削除するというものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項4に「内層コアのゴム組成物には、水が配合される請求項1~3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」と記載されているのを、請求項2及び3を引用しないものとし、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものである。
そうすると、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項8は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項8は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「22以上」から「22~29」に限定するものである。
そうすると、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項9は、「内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「22以上」から「22~29」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項9に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0039】の「内層コアの表面と中心との硬度差、即ち、(Cs)-(Cc)の値は、好ましくは19以上、より好ましくは21以上、更に好ましくは22以上であり、上限値としては、39以下、より好ましくは34以下、更に好ましくは29以下である。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項9は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項記載」と記載されているのを、請求項3及び4を引用しないものとし、「請求項1又は2記載」に限定するものである。
そうすると、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項10は、「請求項1~4のいずれか1項記載」と記載されているのを、請求項3及び4を引用しないものとし、「請求項1又は2記載」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項10は、引用する請求項3及び4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、請求項6を削除するというものである。
そうすると、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項11は、請求項6を削除するというものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項11は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(12)訂正事項12について
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、訂正前の請求項7に「上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成される請求項1~6のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」と記載されているのを、請求項2乃至6を引用しないものとし、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものである。
同様に、訂正後の請求項7を引用する訂正後の請求項8乃至13は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めた訂正後の請求項7の記載を引用するものである。
そうすると、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項12は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項12は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
(13)訂正事項13について
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴い、特許請求の範囲における請求項1乃至13の記載と、明細書において請求項1乃至13対応する課題を解決するための手段が記載された段落【0009】の記載との整合を図るための訂正である。
そうすると、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴い、特許請求の範囲における請求項1乃至13の記載と、明細書において請求項1乃至13に対応する課題を解決するための手段が記載された段落【0009】の記載との整合を図るための訂正であるところ、上記訂正事項1乃至12が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのであることからすれば、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴い、特許請求の範囲における請求項1乃至13の記載と、明細書において請求項1乃至13に対応する課題を解決するための手段が記載された段落【0009】の記載との整合を図るための訂正であるところ、上記訂正事項1乃至12が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであることからすれば、訂正事項13は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴うものであり、その記載内容と訂正後の請求項1、2、4、5、7乃至13の記載内容との間に実質的な差異はない。
したがって、訂正事項13は、請求項1、2、4、5、7乃至13を含む一群の請求項である請求項1乃至13に関係する訂正である。
(14)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件訂正に係る本件特許の請求項1乃至3、5及び6に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1乃至3、5及び6に係る発明については課されない。
また、本件訂正に係る本件特許の請求項4、7乃至13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同ただし書第1号または第2号に掲げる事項を目的とするものではないから、請求項4、7乃至13に係る訂正事項8、12及び13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(15)一群の請求項について
訂正前の請求項1乃至13について、請求項2乃至13は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1乃至13に対応する訂正後の請求項1乃至13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 小括
上記のとおりであるから、本件訂正は、第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号を目的とするものであり、同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲(令和4年7月14日提出の手続補正書により補正されたもの)のとおり、訂正後の請求項[1-13]について訂正することを認める。
第3 本件訂正特許発明について
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された本件特許異議の申立ての対象である請求項1、2、3、5及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」、「本件訂正特許発明2」、「本件訂正特許発明3」、「本件訂正特許発明5」及び「本件訂正特許発明6」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1~25mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
中間層の樹脂組成物には、酸含量が19~20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】(削除)
【請求項5】
内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が22~29である請求項1又は2のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】(削除)
」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
訂正後の本件訂正特許発明1、2及び5に対して、当審が令和4年8月10日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 本件訂正特許発明1、本件訂正特許発明2及び本件訂正特許発明5について
本件特許明細書には以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ドライバーフルショット時の低スピン効果が大きく飛距離増大をもたらすと共に、高いレベルのアプローチスピン性能を与えるマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、中間層及びカバーを具備したゴルフボールにおいて、コアを内層コア及び外層コアの2層に形成し、これらを異なるゴム組成物により形成し、中間層及びカバーを異なる樹脂組成物により形成し、内層コアの直径、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JISC硬度(Cc)を差し引いた値を特定範囲に設定すると共に、中間層の材料硬度を、特定範囲とし、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなるようにゴルフボールを設計することにより、ドライバー(W#1)によるフルショット時の低スピン化の効果が大きくなり、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明のゴルフボールは、特に、中・上級者及びプロが最適に使用できるように、2層コアの周囲に内硬外軟の中間層・カバーの2層の被覆層を形成することにより、フルショットで低スピン化が得られる構造にしており飛距離増大が図られると共に、ゲーム性を高めるためのアプローチした時のスピン性能が高めのレベルを得ることができる。
【0009】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1~25mmであり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.中間層の樹脂組成物には、酸含量が19~20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には、水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~3.0であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
5.内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が22~29である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5~9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~3.0であり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記(iv)成分は、下記構造式(1)
R1-M1-R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
である上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記(iv)成分は、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛及びモノラウリル酸モノフマル酸亜鉛の群から選ばれる上記7又は8記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記(i)成分である基材ゴム100質量部に対する上記(ii)成分の配合量が10~60質量部であり、且つ上記(iv)成分の配合量が0.1~50質量部である上記7~9のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11.共架橋剤全量〔(ii)成分と(iv)成分との合計量〕に対する特定する上記(iv)成分の質量比率が1~50質量%である上記10記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
12.ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値が1.7~4.1である上記7~11のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
13.〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値が13~25である上記7~12のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。」
以上の記載から、本件訂正特許発明が解決しようとする課題は、
「ドライバーフルショット時の低スピン効果が大きく飛距離増大をもたらすと共に、高いレベルのアプローチスピン性能を与えるマルチピースソリッドゴルフボールを提供すること」
であって、その課題を解決するための手段は、上記【0009】の1.、2.、4.、5.、7.乃至13.であると認められる。
これに対し、本件特許明細書には、飛び性能及びアプローチスピン性能が判定基準を満たすマルチピースソリッドゴルフボールの実施例として、実施例1乃至4が記載されている。
そして、前記実施例1乃至4のマルチピースソリッドゴルフボールは、以下の諸元からなるものである。
(1)内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボール
(2)内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるもので
(3)内層コアの直径が23.1mmであり、
(4)内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が7.4mmであり、
(5)内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.9~2.1であり、
(6)外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が36~39であると共に、
(7)中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66であり、
(8)且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高いマルチピースソリッドゴルフボール
そうすると、本件訂正特許発明1には、実施例1乃至4により本件特許の発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない以下の範囲
(3)内層コアの直径が23.1より大きく25.0mm以下の範囲、
(4)内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~7.4mmより小さく、7.4より大きく8.0mm以下の範囲
(5)内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~1.9より小さく、2.1より大きく2.5以下の範囲
(6)外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30以上36未満、及び39より大きく45以下の範囲
(7)中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66より大きく70以下の範囲を含むものであることから、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決する手段が反映されているとはいえない。
よって、本件訂正特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
2 本件特許2について
上記1と同様に検討すると、本件訂正特許発明2には、実施例1乃至4により本件特許の発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない以下の範囲
中間層の樹脂組成物には、酸含量が20質量%のアイオノマーが50質量%及び酸含量が19質量%のアイオノマーが50質量%含有されるもの以外のものを含むものであることから、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決する手段が反映されているとはいえない。
よって、本件訂正特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
3 本件特許5について
上記1と同様に検討すると、本件訂正特許発明5には、実施例1乃至4により本件特許の発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない以下の範囲
内層コアの表面JIS-C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が22以上26未満及び26より大きく29以下の範囲を含むものであることから、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決する手段が反映されているとはいえない。
よって、本件訂正特許発明5は、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
4 まとめ
上記1乃至3で検討したとおり、本件訂正特許発明1、2及び5は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1乃至3、5及び6に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由及び取消理由の概要
取消理由(決定の予告)で採用しなかった、訂正前の請求項1、2、3、5及び6に係る特許に対する特許異議申立理由及び取消理由(決定の予告で採用しなかったもの)の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(特許法第29条第2項)
請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 取消理由3(特許法第36条第6項第1号)
請求項3及び6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第7 当審の判断
1 請求項3及び6に係る特許について
本件訂正により、請求項3及び6に係る特許は削除されたことから、当該請求項3及び6に係る特許に対する上記申立理由1、申立理由2及び取消理由1はその対象が消滅したから、当該請求項3及び6に係る発明に対する上記申立理由1、申立理由2及び取消理由1は解消した。
2 各甲号証
(1)甲第1号証(特開2012-139303号公報)
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第1号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、センター、包囲層、中間層及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールに関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットにおいて、大きな飛距離を望むゴルフプレーヤーは多い。ゴルフボールの飛行性能には、改良の余地がある。本発明の目的は、ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットにおいて大きな飛距離が得られるゴルフボールの提供にある。」
ウ 「【0021】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。コア4は、球状のセンター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。」
エ 「【0033】
ゴルフボール2の耐久性の観点から、センター10の中心硬度Hoは40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットでのスピン抑制の観点から、中心硬度Hoは80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。センター10が切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS-C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度Hoが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
…
【0035】
センター10の圧縮変形量Doは、4.0mm以上7.0mm以下が好ましい。圧縮変形量Doが4.0mm以上であるセンター10により、優れた打球感が達成されうる。このセンター10により、さらに、ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットでのスピンが抑制される。これらの観点から、圧縮変形量Doは4.5mm以上がより好ましく、4.9mm以上が特に好ましい。圧縮変形量Doが7.0mm以下であるセンター10により、優れた反発性能が達成されうる。この観点から、圧縮変形量Doは6.5mm以下が特に好ましい。
【0036】
圧縮変形量の測定では、測定対象である球体(センター10、コア4、ゴルフボール2等)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって、金属製の円柱が降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量が、測定される。」
オ 「【0047】
この包囲層12では、最内部から表面まで、硬度が徐々に大きくなる。反発性能の観点から、包囲層12の表面(すなわちコア4の表面)の硬度Heは、75以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Heは95以下が好ましく、93以下がより好ましく、92以下が特に好ましい。コア4の表面にJIS-C型硬度計が押しつけられることにより、硬度Heが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。」
カ 「【0050】
コア4の圧縮変形量Deは、2.0mm以上3.5mm以下が好ましい。圧縮変形量Deが2.0mm以上であるコア4により、ゴルフボール2の優れた打球感が達成される。この観点から、圧縮変形量Deは2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上が特に好ましい。圧縮変形量Deが3.5mm以下であるコア4により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成される。この観点から、圧縮変形量Deは3.2mm以下がより好ましく、2.9mm以下が特に好ましい。
【0051】
スピンの抑制の観点から、コア4の表面硬度Heとセンター10の中心硬度Hoとの差(He-Ho)は20以上が好ましく、25以上が特に好ましい。製造容易の観点及びコア4の反発性能の観点から、差(He-Ho)は40以下が好ましく、35以下が特に好ましい。
【0052】
センター10の圧縮変形量Doとコア4の圧縮変形量Deとの比(Do/De)は、1.5以上2.5以下が好ましい。この比(Do/De)が1.5以上であるゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されたとき、スピンが抑制されうる。この観点から、比(Do/De)は1.7以上がより好ましく、1.8以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、この比(Do/De)は2.4以下が特に好ましい。
【0053】
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドエラストマー及びポリオレフィンが例示される。
【0054】
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー8は、薄くかつ軟質である。従って、このゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されると、中間層6が大きく変形する。アイオノマー樹脂を含む中間層6は、ドライバーショット、ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットでの反発性能に寄与する。アイオノマー樹脂と他の樹脂とが、併用されてもよい。併用される場合、反発性能の観点から、基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。」
キ 「【0057】
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7320」、「ハイミランAM7329」及び「ハイミランAM7337」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。」
ク 「【0061】
中間層6の硬度Hmは、90以上が好ましい。硬度Hmが90以上である中間層6により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成される。硬度Hmが90以上である中間層6により、コア4及び中間層6からなる球の外剛内柔構造が達成されうる。外剛内柔構造を有する球は、ゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されたときのスピンを抑制する。これらの観点から、硬度Hmは92以上が特に好ましい。打球感及び耐久性の観点から、硬度Hmは98以下が好ましく、97以下が特に好ましい。スピン抑制の観点から、中間層6の硬度Hmがコア4の表面硬度Heより大きく、かつ、コア4の表面硬度Heがセンター10の表面硬度より大きいことが好ましい。
【0062】
硬度Hmは、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたJIS-C型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。中間層6の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが、測定に用いられる。」
ケ 「【0065】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンが用いられたカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。ポリウレタンからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。」
コ 「【0103】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型にコアを投入した。樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。」
サ 「【0106】
[実施例2及び3並びに比較例1から3]
センター、包囲層及びカバーの仕様を下記の表4及び5に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び3並びに比較例1から3のゴルフボールを得た。センターのゴム組成物の詳細が、下記の表1に示されている。包囲層のゴム組成物の詳細が、下記の表2に示されている。カバーの樹脂組成物の詳細が、下記の表3に示されている。」
シ 「【0112】
【表1】
[図:0001396258000001.jpg]
【0113】
【表2】
[図:0001396258000002.jpg]
【0114】
【表3】
[図:0001396258000003.jpg]
」
ス 「【0116】
【表4】
[図:0001396258000004.jpg]
」
また、上記記載事項から、以下の事項が認められる。
セ 実施例3は、球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えた球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、18質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.7質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、37質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビス(パンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、50質量部のアイオノマー樹脂(「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(「ハイミランAM7329」)からなり、
カバーは、100質量部のポリウレタン#1及び4質量部の二酸化チタンからなり、
センターの直径が18mmであり、
センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmであり、
センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32であり、
包囲層の表面JIS-C硬度(He)からセンターの中心JIS-C硬度(Ho)を差し引いた値が31.7であると共に、
中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS-C硬度が94以上である、マルチピースソリッドゴルフボールであると認められる。
上記ア乃至スの記載事項及び認定事項セによれば、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えた球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、18質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.7質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、37質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビス(パンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、50質量部のアイオノマー樹脂(「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(「ハイミランAM7329」)からなり、
カバーは、100質量部のポリウレタン#1及び4質量部の二酸化チタンからなり、
中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるもの、
センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmであり、
センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32であり、
包囲層の表面JIS-C硬度(He)からセンターの中心JIS-C硬度(Ho)を差し引いた値が31.7であると共に、
中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS-C硬度が94である、
且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなるマルチピースソリッドゴルフボール。」
(2)甲第2号証(特開2010-162323号公報)
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第2号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、センター、包囲層、中間層及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールに関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中間層に酸の含有量が高いアイオノマー樹脂が用いられたゴルフボールは、耐久性に劣る。中間層に中和度が高いアイオノマー樹脂を含む組成物は、成形性に劣る。
【0009】
ゴルフボールに対するゴルファーの要求は、ますますエスカレートしている。本発明の目的は、諸性能に優れたゴルフボールの提供にある。」
ウ 「【0018】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。コア4は、球状のセンター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。ゴルフボール2が、包囲層12と中間層6との間に他の層を備えてもよい。ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に他の層を備えてもよい。」
エ 「【0029】
耐久性の観点から、センター10の中心硬度H1は25以上が好ましく、30以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。スピン抑制の観点から、中心硬度H1は55以下が好ましく、50以下がより好ましく、45以下が特に好ましい。センター10が切断されて得られる半球の切断面中心点に、ショアD型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度H1が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0030】
反発性能の観点から、センター10の表面硬度H2は35以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。打球感の観点から、表面硬度H2は65以下が好ましく、60以下がより好ましく、55以下が特に好ましい。センター10の表面にショアD型硬度計が押しつけられることにより、表面硬度H2が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0031】
スピンの抑制の観点から、表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2-H1)は7以上が好ましく、10以上がより好ましく、13以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、差(H2-H1)は25以下が好ましく、20以下がより好ましく、16以下が特に好ましい。
【0032】
後述されるように、包囲層12はゴム組成物又は樹脂組成物からなる。包囲層12がゴム組成物からなる場合、センター10の直径は、5mm以上35mm以下が好ましい。直径が5mm以上であるセンター10により、ドライバーショットでのスピンが抑制されうる。この観点から、この直径は10mm以上が特に好ましい。この直径が35mm以下であるゴルフボール2では、十分な厚みを有する包囲層12、中間層6及びカバー8が成形されうる。この観点から、直径は30mm以下が特に好ましい。
【0033】
包囲層12が樹脂組成物からなる場合、センター10の直径は、31mm以上41mm以下が好ましい。直径が31mm以上であるセンター10は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、直径は35mm以上が特に好ましい。この直径が41mm以下であるゴルフボール2では、十分な厚みを有する包囲層12、中間層6及びカバー8が成形されうる。この観点から、直径は40mm以下が特に好ましい。
【0034】
包囲層12がゴム組成物からなる場合、センター10の圧縮変形量は4.0mm以上10.0mm以下が好ましい。圧縮変形量が4.0mm以上であるセンター10は、ゴルフボール2の打球感に寄与する。この観点から、圧縮変形量は4.5mm以上が特に好ましい。圧縮変形量が10.0mm以下であるセンター10は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、圧縮変形量は8.0mm以下が特に好ましい。
【0035】
包囲層12が樹脂組成物からなる場合、センター10の圧縮変形量は2.0mm以上5.0mm以下が好ましい。圧縮変形量が2.0mm以上であるセンター10は、ゴルフボール2の打球感に寄与する。この観点から、圧縮変形量は2.5mm以上が特に好ましい。圧縮変形量が5.0mm以下であるセンター10は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、圧縮変形量は4.0mm以下が特に好ましい。
【0036】
圧縮変形量の測定では、球(センター10、コア4、ゴルフボール2等)が金属製の剛板の上に置かれる。この球に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球は、変形する。球に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量である。」
オ 「【0049】
コア4の表面の硬度H4は、45以上65以下が好ましい。硬度H4が45以上であるコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。この観点から、硬度H4は47以上がより好ましく、48以上が特に好ましい。硬度H4が65以下であるコア4により、中間層6を含む球の外剛内柔構造が達成されうる。この観点から、硬度H4は63以下がより好ましく、60以下が特に好ましい。コア4の表面(すなわち包囲層12の表面)にショアD型硬度計が押しつけられることにより、硬度H4が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0050】
スピン抑制の観点から、コア4の表面硬度H4とセンター10の中心硬度H1との差(H4-H1)は18以上が好ましく、20以上がより好ましく、25以上が特に好ましい。製造容易の観点及び耐久性の観点から、差(H4-H1)は65以下が好ましく、60以下がより好ましく、51以下が特に好ましい。
【0051】
コア4の圧縮変形量は2.0mm以上4.5mm以下が好ましい。圧縮変形量が2.0mm以上であるコア4は、ドライバーショットでのスピンを抑制しうる。この観点から、圧縮変形量は2.2mm以上がより好ましく、2.3mm以上が特に好ましい。圧縮変形量が4.5mm以下であるコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、圧縮変形量は4.0mm以下がより好ましく、3.5mm以下が特に好ましい。」
カ 「【0063】
この共重合体(B)の、(メタ)アクリル酸成分の量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が特に好ましい。この量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が特に好ましい。」
キ 「【0068】
この共重合体(B)の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6320」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。2種以上の樹脂が併用されてもよい。
【0069】
中間層6の樹脂組成物における共重合体(B)の含有率は、16質量%以上78質量%以下が好ましい。この含有率が16質量%以上である中間層6は、ゴルフボール2の反発性能及び耐久性に寄与しうる。この観点から、含有率は20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。この含有率が78質量%以下である中間層6により、外剛内柔構造が達成されうる。この観点から、含有率は75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。」
ク 「【0081】
中間層6の硬度H5は、65以上75以下が好ましい。硬度H5が65以上である中間層6により、外剛内柔構造が達成される。この観点から、硬度H5は66以上がより好ましく、67以上が特に好ましい。硬度H5が75以下である中間層6は、ゴルフボール2の打球感及び耐久性を阻害しない。この観点から、硬度H5は73以下がより好ましく、71以下が特に好ましい。」
ケ 「【0089】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンが用いられたカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。ポリウレタンからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。」
コ 「【0099】
カバー8の硬度H7は、10以上50以下が好ましい。硬度H7が10以上であるカバー8は、ゴルフボール2の反発性能を阻害しない。この観点から、硬度H7は15以上がより好ましく、25以上が特に好ましい。硬度H7が50以下であるカバー8は、ゴルフボール2のコントロール性能に寄与する。この観点から、硬度H7は45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。硬度H7の測定には、カバー8の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが用いられる。測定方法は、中間層6の硬度H5の測定方法と同様である。」
サ 「【0108】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(i)を得た。このゴム組成物(i)を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で30分間加熱して、直径が20.1mmであるセンターを得た。ボール質量が45.4gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0109】
100質量部のハイシスポリブタジエン(前述の「BR-730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(a)を得た。このゴム組成物(a)から、ハーフシェルを成形した。上記センターを2枚のハーフシェルで被覆した。このセンター及びハーフシェルを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で30分間加熱して、包囲層を形成した。センター及び包囲層からなるコアの直径は、39.7mmである。
【0110】
20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(前述の「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(前述の「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(前述の「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(前述の「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(d)を得た。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型にコアを投入した。樹脂組成物(d)を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
【0111】
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の酸化チタンとからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、40℃雰囲気下で24時間保持して、補強層を得た。補強層の厚みは、10μmであった。
【0112】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(前述の「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(x)を得た。この樹脂組成物(x)から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球を被覆した。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなり、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に、上記球及びハーフシェルを投入した。圧縮成形法にて、カバーを得た。このカバーの厚みは、0.5mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmである実施例1のゴルフボールを得た。」
シ 「【0119】
【表1】
[図:0001396258000005.jpg]
【0120】
【表2】
[図:0001396258000006.jpg]
【0121】
【表3】
[図:0001396258000007.jpg]
【0122】
【表4】
[図:0001396258000008.jpg]
【0123】
【表5】
[図:0001396258000009.jpg]
【0124】
【表6】
[図:0001396258000010.jpg]
【0125】
【表7】
[図:0001396258000011.jpg]
」
また、上記記載事項から、以下の事項が認められる。
ス 実施例1は、球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えている球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(「BR-730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
カバーは、100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
センターの直径が20.1mmであり、
センターに対して、球に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの圧縮変形量(mm)が5.8mmであり、
表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2-H1)は7以上、25以下であり、
コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32であると共に、
中間層の材料硬度(H5)は、そのショアD硬度が67であり、
コアと中間層とからなる球のショアD硬度は69であり、カバーのショアD硬度は32である、
マルチピースソリッドゴルフボール、であると認められる。
上記ア乃至シの記載事項及び認定事項スによれば、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えている球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(「BR-730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
カバーは、100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
センターの直径が20.1mmであり、
センターに対して、球に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの圧縮変形量(mm)が5.8mmであり、
表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2-H1)は7以上、25以下であり、
コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32であると共に、
中間層の材料硬度(H5)は、そのショアD硬度が67であり、
コアと中間層とからなる球のショアD硬度は69であり、カバーのショアD硬度は32である、
マルチピースソリッドゴルフボール。」
(3)甲第3号証
本件特許に係る出願の出願前の2002年7月22日~26日に開催された「World Scientific Congress ofGolf」の会報「Science and Golf IV」に掲載された「Compression by Any Other Name」と題する論文には、つぎの事項が記載されている。
ア 「
[図:0001396258000012.jpg]
」(9頁)
(当審訳:Atti法と圧縮変形測定方法との換算は以下のとおりであることが判明した。
Atti法と100kg圧縮の変換 100kg圧縮変形量=-0.0349(Atti)+5.8948
Atti法と130-10kg圧縮の変換 103(当審注:130の誤記と認める)-10kg圧縮変形量=-0.0342(Atti)+5.7294)
(4)甲第4号証
テュポン社から発行されている 「JIS-C and Shore D/ Shore AHardness value s」と題する技術資料で、JIS-C硬度とショアDまたはショアA硬度の換算を示す資料であり、JIS-C硬度とショアDの換算式として、以下の式が開示されている。発行日は不明であるが、米国特許6210293号の再審査請求R E 95/000120において、2007年5月29日に証拠文献として米国特許庁に提出された文献である。本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第4号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「When evaluating golf ball cover materials, it is often desirable to understand how hardness values from one testing protocol correlate with those from another. Specifically, the recent proliferation of Japanese patents has left many U.S. manufacturers and materials suppliers wondering how Japanese hardness values (which are measured as “JIS C”)correspond to Shore D and Shore A values commonly used in the United States (per ASTM D-2240).
With regression analysis, it is possible to “translate”JIS C values into Shore D and Shore A values. Using golf ball cover materials with hardness values ranging from 45 to 91 JIS C, DuPont took corresponding measurements with Shore D and Shore A gauges(Table I and II). The resulting trendline plots (Figures 1 and 2, reverse side) can be used to read the equivalent Shore D or Shore A value for any JIs C value in this range.」(当審訳:ゴルフボールのカバー材料を評価する際に、一つのテストプロトコルから得られた硬度の値が、他のものから得られたものにどのように相関するのかを理解することがしばしば必要になる。特に、最近の日本の特許の急増により、多くの米国の製造業者および材料メーカーは、(JIS-Cで測定された)日本の硬度の値が、米国で慣用的に使用されているショアDおよびショアAの値(ASTM D-2240)にどのように対応するのかどうかを知りたいと思っていた。
回帰分析により、JIS-Cの値をショアDおよびショアAの値に「翻訳」することができる。JIS-C硬度が45~91の範囲の硬度を有するゴルフボールカバー材料を用いて、デュポンは、ショアDおよびショアAの測定器を用いて、対応する測定を行った。結果として得られたトレンドラインプロット(次ページ、図1および図2 )は、この範囲のJ I S一Cの値から対応するショアDおよびショアA硬度を読み取るのに使うことができる。)
(5)甲第5号証(特開2016-116627号公報)
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第5号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「【0100】【表4】
[図:0001396258000013.jpg]
」
3 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)甲第1号証に基づく申立理由1について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
a 甲1発明の「センター」、「包囲層」、「『センター』と、『包囲層とを備えた球状のコア』」、「カバー」、「中間層」及び「マルチピースソリッドゴルフボール」は、それぞれ、本件訂正特許発明1の「内層コア」、「外層コア」、「2層のコア」、「カバー」、「中間層」及び「マルチピースソリッドゴルフボール」に相当する。
b 甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」は、コアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールとの概念で一致する。
c 甲1発明の「センター」は100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、18質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.7質量部のジクミルパーオキサイドからなり、「包囲層」は、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、37質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビス(パンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成されているものとの概念で一致する。
d 甲1発明の「中間層」は、50質量部のアイオノマー樹脂(「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(「ハイミランAM7329」)からなり、「カバー」は、100質量部のポリウレタン#1及び4質量部の二酸化チタンからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものとの概念で一致する。
e 甲1発明の「包囲層の表面JIS-C硬度(He)からセンターの中心JIS-C硬度(Ho)を差し引いた値」が31.7であるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が31.7である点で一致する。
そうすると、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が31.7であるマルチピースソリッドゴルフボール。」
[相違点1-1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は「23.1~25mm以下」であるのに対し、甲1発明は18.0mmである点。
[相違点1-2]
本件訂正特許発明1が、「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mm」であるのに対し、甲1発明は、センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmである点。
[相違点1-3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5」であるのに対し、甲1発明は、センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32である点。
[相違点1-4]
本件訂正特許発明1が、「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70」であるのに対し、甲1発明は、中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS-C硬度が94以上である点。
[相違点1-5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲1発明は、その点が定かでない点。
(イ)判断
以上のとおり、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、[相違点1-1]乃至[相違点1-5]において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲1発明とは、少なくとも上記[相違点1-1]乃至[相違点1-5]において相違するものである。
したがって、本件訂正特許発明2及び5は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(2)甲第2号証に基づく申立理由1について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
ア 甲2発明の「センター」、「包囲層」、「『センター』と、『包囲層とを備えた球状のコア』」、「カバー」、「中間層」及び「ゴルフボール」は、それぞれ、本件訂正特許発明1の「内層コア」、「外層コア」、「2層のコア」、「カバー」、「中間層」及び「マルチピースソリッドゴルフボール」に相当する。
イ 甲2発明の「ゴルフボール」は、コアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールとの概念で一致する。
ウ 甲2発明の「センター」は100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、「包囲層」は、100質量部のハイシスポリブタジエン(「BR-730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成されているものとの概念で一致する。
エ 甲2発明の「中間層」は、20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、「カバー」は、00質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものとの概念で一致する。
オ 甲2発明の「中間層」の材料硬度(H5)は、そのショアD硬度が67であるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が67である点で一致する。
そうすると、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、一応相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が67であり、であるマルチピースソリッドゴルフボール。」
[相違点2-1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は、「23.1~25mm以下」であるのに対し、甲2発明は、20.1mmである点。
[相違点2-2]
内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が、本件訂正特許発明1が、「6.5~8.0mm」であるのに対し、甲2発明は、5.8mmである点。
[相違点2-3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5」であるのに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。
[相違点2-4]
本件訂正特許発明1が、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45であるのに対し、甲2発明は、コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32である点。
[相違点2-5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。
(イ)判断
以上のとおり、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、[相違点2-1]乃至[相違点2-5]において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲2発明とは、少なくとも上記[相違点2-1]乃至[相違点2-5]において相違するものである。
したがって、本件訂正特許発明2及び5は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(3)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1、2及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、上記申立理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1、2及び5に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由2(特許法第29条第2項)について
請求項1、2及び5に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(1)甲第1号証に基づく申立理由2について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
上記「3 (1) ア (ア)対比」からすると、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が31.7であるマルチピースソリッドゴルフボール。」
[相違点1-1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は「23.1~25mm以下」であるのに対し、甲1発明は「内18.0mm」である点。
[相違点1-2]
本件訂正特許発明1が、「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5~8.0mm」であるのに対し、甲1発明は、センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmである点。
[相違点1-3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5」であるのに対し、甲1発明は、センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32である点。
[相違点1-4]
本件訂正特許発明1が、「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66~70」であるのに対し、甲1発明は、中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS-C硬度が94以上である点。
[相違点1-5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲1発明は、その点が定かでない点。
(イ)判断
まず、[相違点1-1]について、検討する。
特許異議申立人が提出したいずれの甲号証にも、内層コアの直径が23.1~25mm以下であることが記載されていないし、示唆もされていない。
また、甲1発明には、段落【0037】に「センター10の直径は、10mm以上20mm以下が好ましい。直径が10mm以上であるセンター10により、優れた打球感が達成されうる。この観点から、直径は12mm以上がより好ましく、13mm以上が特に好ましい。直径が20mm以下であるセンター10により、厚みが十分に大きな包囲層12が形成されうる。この観点から、直径は18mm以下が特に好ましい。」と記載されているように、甲1発明のセンター10の直径は、最大でも20mmであって、20mmを超える直径は何ら想定されていないことが明らかといえることからすると、甲1発明のセンターの直径を20mmより大きくすることは阻害要因があるといえる。
してみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件訂正特許発明1とすることは、当業者が容易に想到し得るものということはできない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲1発明とは、少なくとも上記[相違点1-1]乃至[相違点1-5]において相違するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないのであるから、同様の理由により、本件訂正特許発明2及び5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)甲第2号証に基づく申立理由2について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
上記「3 (2) ア (ア)対比」からすると、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、一応相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が67であり、であるマルチピースソリッドゴルフボール。」
[相違点2-1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は、「23.1~25mm以下」であるのに対し、甲2発明は、20.1mmである点。
[相違点2-2]
内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が、本件訂正特許発明1が、「6.5~8.0mm」であるのに対し、甲2発明は、5.8mmである点。
[相違点2-3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5~2.5」であるのに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。
[相違点2-4]
本件訂正特許発明1が、外層コアの表面JIS-C硬度(Css)から内層コアの中心JIS-C硬度(Cc)を差し引いた値が30~45であるのに対し、甲2発明は、コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32である点。
[相違点2-5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。
(イ)判断
上記各相違点について、以下検討する。
a [相違点2-1]について
上記「2 (2) エ 【0032】」のとおり、甲第2号証には、「包囲層12はゴム組成物又は樹脂組成物からなる。包囲層12がゴム組成物からなる場合、センター10の直径は、5mm以上35mm以下が好ましい。直径が5mm以上であるセンター10により、ドライバーショットでのスピンが抑制されうる。この観点から、この直径は10mm以上が特に好ましい。この直径が35mm以下であるゴルフボール2では、十分な厚みを有する包囲層12、中間層6及びカバー8が成形されうる。この観点から、直径は30mm以下が特に好ましい。」と記載されている。
しかし、「2 (2) シ 【0123】乃至【0125】」のとおり、甲第2号証に記載された実施例としては、センターの直径が20.1mmか37.7mmのゴルフボールしか示されていない。
上述のように、センター10の直径は、5mm以上35mm以下が好ましい、と記載されているものの、センターの直径が20.1mmか37.7mmのゴルフボールしか示されていないことからすると、甲2発明のセンターの直径20、1mmを23.1~25mm以下とすること、すなわち、甲2発明において、相違点2-1に係る本件訂正特許発明1とすることは、当業者が容易に想到し得るものということはできない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲2発明とは、少なくとも上記[相違点2-1]乃至[相違点2-5]において相違するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないのであるから、同様の理由により、本件訂正特許発明2及び5は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)申立理由2(特許法第29条第2項)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1、2及び5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできないから、上記申立理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1、2及び5に係る特許を取り消すことはできない。
第8 まとめ
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第6859682号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2、5]、4、[7-13]について訂正することを認める。
そして、本件訂正請求により、本件特許請求の範囲の請求項3及び6に係る発明は、削除されたから、本件特許異議申立のうち、本件特許請求の範囲の請求項3及び6に係る特許についての申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
そして、上記第5のとおり、本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
よって、上記のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700976