特許異議申立
2021-700797
剣道用足用サポータ
- 審判番号
- 2021-700797
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-028920
- 登録番号
- 6876168
- 請求日
- 2021年08月11日
- 審決日
- 2022年06月03日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社福田武道具
- 【権利者代理人】本谷 孝夫
- 【異議申立人】山屋産業 株式会社
- 【異議申立人代理人】木森 有平
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.536-Y (A63B) / P1651.537-Y (A63B) / P1651.16 -Y (A63B) / P1651.111-Y (A63B) / P1651.113-Y (A63B) / P1651.121-Y (A63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6876168号発明「剣道用足用サポータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6876168号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6876168号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)5月9日(優先権主張 平成26年5月13日)を国際出願日として出願した特願2016-519103号の一部を、令和2年2月24日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月27日にその特許権の設定登録がされ、令和3年5月26日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯の概要は、次のとおりである。
令和3年 8月11日 :特許異議申立人山屋産業株式会社(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年10月19日 :申立人による手続補正書の提出
令和4年 2月15日付け:申立人に対する審尋
令和4年 3月 7日 :申立人による回答書の提出
以下、当該手続補正書により補正された特許異議申立書を「申立書」といい、ページ数、行数は手続補正書のものを用いる。
第2 本件発明
特許第6876168号の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~5を「本件発明」と総称することもある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータであって、
一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナーと、
前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、
踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され、
前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した
ことを特徴とする剣道用足用サポータ。
【請求項2】
足に着脱自在に装着され、伸縮性を有する素材によって、装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、足に装着した際、足趾及び踏み付け部は前記足裏被覆部に被覆されることなく露呈するように構成された本体を含む剣道用足用サポータであって、
一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナーと、
前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収材と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収材を具備し、
踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収材の厚さが前記第二の衝撃吸収材の厚さより大きくなるよう形成された
ことを特徴とする剣道用足用サポータ。
【請求項3】
前記面ファスナーは、内踝側の前記踝被覆部の表面に脱着自在である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載した剣道用足用サポータ。
【請求項4】
前記面ファスナーは、織製面ファスナーである
ことを特徴とする請求項3に記載した剣道用足用サポータ。
【請求項5】
前記本体の足の指の付け根部分側は、少なくとも3mmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した剣道用足用サポータ。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1号証~甲第9号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1~5に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。
1 申立理由1(実施可能要件)
本件特許は、次のとおり、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に適合しない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当することを理由として、取り消されるべきものである。
本件発明1及び2における「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ることを実施することができる程度に、発明の詳細な説明が記載されておらず(申立書7ページ14行~10ページ11行)、また、発明の詳細な説明(【0023】、【0024】、【0026】、【0044】)には、「第一の衝撃吸収機構部を第二の衝撃吸収機構部よりも厚く大きく構成してあるので、床面等へは必ず土踏まず部位から踵の順で足が着くようになるので、従来のように踵を中心とする大きな荷重負荷がかかることを解消できるものである。」と記載されているが、そのようなことは、剣道であったとしてもあり得ない足の運びになると考えられる(申立書10ページ12行~11ページ8行)。
2 申立理由2(明確性)
本件特許は、次のとおり、本件発明1~5が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当することを理由として、取り消されるべきものである。
(1)本件発明1及び2における「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」という発明特定事項は機能的な表現であって、不明確である(申立書7ページ14~21行)。
(2)本件発明1及び2における「踏まず部」とはどこを言うのか日本語の意味が把握できない(申立書8ページ6~12行)。
3 申立理由3(拡大先願:甲4の1、甲4の2)
本件発明1~5は、その出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明、又はその出願の日前の実用新案登録出願であって、実用新案掲載公報の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された考案と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願又は実用新案登録出願に係る上記の発明又は考案をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願又は上記実用新案登録出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(新規性:甲3の1、甲3の2、甲6、甲8の1、甲8の2)
本件発明1~5は、甲3の1に係る剣道サポータであるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法第29条第1項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
5 申立理由5(進歩性:甲3の1、甲3の2、甲6、甲8の1、甲8の2、甲9)
本件発明1~5は、甲3の1に係る剣道サポータ又は甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。
[引用文献等一覧]
甲1:特許第6876168号公報(本件特許公報)
甲2の1:福田一成代理人本谷孝夫から申立人宛通知書
甲2の2:弁護士河部康弘及び弁理士本谷孝夫から申立人宛通知書
甲2の3:原告(特許権者)の訴状、及び当該訴状とともに提出された甲第9号証
甲3の1:剣道用サポータの写真
甲3の2:山屋産業株式会社から(有)ネットウイング、ふくだ企画、松勘工業(株)、(有)林藤武道具店のそれぞれに宛てた納品書
甲4の1:登録実用新案第3191411号公報(本件特許の優先日後に発行された実用新案掲載公報)
甲4の2:特開2014-128544号公報(本件特許の優先日後に出願公開がされた特許公報)
甲5の1:特開2002-112803号公報(周知技術を示す文献)
甲5の2:登録実用新案第3108236号公報(周知技術を示す文献)
甲5の3:実願昭47-92705号(実開昭49-50149号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
甲6:剣道用サポータの写真と本件特許公報の図1
甲7の1:本件特許公報の図3に補足を加えた図
甲7の2:本件特許公報の図2に補足を加えた図
甲7の3:本件特許公報の図5に補足を加えた図
甲8の1:剣道用サポータの写真
甲8の2:山屋産業株式会社から(株)ヒロヤ、(株)ミツボシのそれぞれに宛てた納品書
甲9:特開平11-206946号公報、及び甲9の図1、図3、及び、図4にそれぞれ補足を加えた図
第4 引用文献等の記載
1 甲3の1
(1)甲3の1は、次の写真が記載されている。
[図:0001386139000001.jpg]
(2)甲3の1の写真から、被写体は、次のものを備えたものであることが、把握できる。
[図:0001386139000002.jpg]
(3)上記(2)から、次の事項が認められる。
ア 右下部が弧状になった略横長の黒色の布状物からなる本体を備えている。
イ 本体の左側端に、縦方向に延びる左端縁が設けられ、本体の上端右側に、本体の横幅の半分程度の長さの右上縁が設けられている。
ウ 右上縁は、上方が開口する環状となっており、左端縁は、左方が開口する環状となっている。
エ 横方向に右上縁の半分程度の長さ、縦方向に布状物の半分程度の長さの面状片が、右上縁に沿って設けられ、面状片は、右側端で本体に縫着されており、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されている。
2 甲3の2
甲3の2は、「山屋産業株式会社」が右上部に印刷された「納品書」及び「納品書(控)」の写しである。
「
[図:0001386139000003.jpg]
」
「
[図:0001386139000004.jpg]
」
「
[図:0001386139000005.jpg]
」
「
[図:0001386139000006.jpg]
」
「
[図:0001386139000007.jpg]
」
「
[図:0001386139000008.jpg]
」
「
[図:0001386139000009.jpg]
」
「
[図:0001386139000010.jpg]
」
3 甲4の1
(1)甲4の1の記載から、実願2014-1866号に係る実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面(以下「甲4の1明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
「【考案が解決しようとする課題】
【0007】
本考案は、上記の通り効率のよい歩き方・走り方であるミッドフット着地を容易に行える靴を提供することを目的とする。」
「【考案の効果】
【0012】
上記のように構成される本考案が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。
【0013】
図1は本考案に係る靴10の正面図を示すものである。図示されるようにアウトソール11の中足部位12は仮想線Gで示される地面側に向けて膨出している。
【0014】
かような形状であるがゆえに、歩行時等に自然と中足部位12から接地することになり、殊更ミッドフット着地を意図しなくとも自然とミッドフット着地が実現するものである。
【0015】
更には、本考案に係る靴10は、踵部位13が球面状、すなわち図1,図3に示されるように靴の前後方向(図中左右方向)及び図6に示されるように靴の幅方向(図中左右方向)いずれにも湾曲形状を呈している。かような形状ゆえに、一般人が無意識に行っている踵着地を行おうとしても踵が着地せず、必然的にミッドフット着地が行われることになるものである。
【0016】
更には高反発素材のインソールを装備していることから、歩行時等に足裏がインソールに沈み込んでから、元の位置に押し上げる反発力が生み出され、その結果歩幅が伸びるという効果も認められるものである。」
「【考案を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい考案の一実施形態につき、図面を参照しながら概説する。なお、本考案の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本考案の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0019】
本考案に係る靴10は、図1に示すようにアウトソール11と、アッパー20、及びアウトソール11上に装備されるインソール30より成るものである。
【0020】
アウトソール11は、爪先部位14は図4に示すようにほぼ平坦状の一般的なアウトソールと同様の形状を呈するものである。
【0021】
中足部位12は図5に示すように肉厚に形成されており、その結果図1や図3に示すように接地面側に向かって膨出した形状となるものである。
【0022】
踵部位13は、図1や図3に示されるように靴の前後方向(図中左右方向)及び図6に示されるように靴の幅方向(図中左右方向)いずれにも湾曲形状を呈している。
【0023】
アウトソール14(当審注:「アウトソール11」の誤記と認める。)の素材は、一般的な靴のアウトソールに使用される素材、例えば合成ゴムや合成樹脂、発泡したポリウレタン樹脂、革、天然ゴムに加硫したラバー等を使用可能である。
【0024】
アッパー20は皮革、合成樹脂、布等、一般的な靴に使用される任意の素材を用いて、一般的な靴のアッパーと同様の形状で構成される。
【0025】
インソール30は形状的には一般的なインソールの形状、すなわちアウトソールと略相似形な形状を呈するが、素材として高反発素材、例えば高反発ウレタンなどを使用可能である。」
「【図1】
[図:0001386139000011.jpg]
」
「【図2】
[図:0001386139000012.jpg]
」
「【図3】
[図:0001386139000013.jpg]
」
(2)上記(1)から、甲4の1明細書等には、次の考案(以下「甲4の1考案」)が記載されている。
「アウトソール11と、アッパー20、及びアウトソール11上に装備されるインソール30より成る靴10であって、
アウトソール11は、爪先部位14はほぼ平坦状の一般的なアウトソールと同様の形状を呈し、中足部位12は肉厚に形成されており、その結果接地面側に向かって膨出した形状となり、踵部位13は、靴の前後方向及び靴の幅方向いずれにも湾曲形状を呈しており、
アウトソール11の素材は、一般的な靴のアウトソールに使用される素材、例えば合成ゴムや合成樹脂、発泡したポリウレタン樹脂、革、天然ゴムに加硫したラバー等を使用可能であり、
アッパー20は皮革、合成樹脂、布等、一般的な靴に使用される任意の素材を用いて、一般的な靴のアッパーと同様の形状で構成される
靴。」
4 甲4の2
(1)特願2013-93001号に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲4の2明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
中敷きの底面両側部に凹欠部を設け、前記中敷きの底面長手方向略中間部に凸起部を形成し、前記中敷きの上面は緩やかに弧を描くように形成することを特徴とする中敷き及びその中敷きを装着した履物。
【請求項2】
前記凸起部は弾力部材または空気室で形成されることを特徴とする請求項1に記載の中敷き及びその中敷きを装着した履物。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0005】
本発明は、足を地面に着地させるたびに足の指が広がる構造となる中敷き及びその中敷きを装着した履物とする。」
「【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明の中敷き及びその中敷きを装着した履物は、拇指球側と小指球側に相当する中敷きの底面両側部に凹欠部を設け、中敷きの底面長手方向略中間部に凸起部を形成し、さらに、中敷きの上面を弧を描くように丸く形成することにより、本発明の中敷き及びその中敷きを装着した履物を履いて歩行をした際に、本発明の中敷きを介して足裏に地面からの押し上げが加わるように形成することができる。凹欠部と丸い上面の役割は、拇指球側と小指側のそれぞれの指を横に広げるためのものである。また、凸起部の役割は足の甲を上に押し上げるためのものである。足の指を広げ、通常より足の甲を高く上に持ち上げることで、足全体に刺激を与えることができ、足の脛などの筋肉に広く負荷をかけて歩くことができるという優れた効果を発揮するものである。
【0010】
また、本発明の中敷きの略中間部を山状に凸起させることにより、登り坂を歩く時のような負荷が下半身に加わり、通常より歩行時の運動量が大きくなることが期待できる。その理由は、歩行による足の離着地時に、地面と足裏との接地角度が大きくなり、フクラハギやスネなどに通常より負荷が加わるためである。これにより、平地を歩く時よりも筋活動を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明の中敷き及びその中敷きを装着した履物は、凸起部を弾力部材または空気室で形成することにより振動衝撃を吸収することができるとともに、地向に足を着地した際に足の指が広がりやすくなる構造とするものである。足の指が通常より広がった状態で歩行することで筋肉に加わる負荷を増大させることができるという優れた効果を発揮するものである。」
「【0019】
図5は、本発明の中敷き及びその中敷きを装着した履物の中敷き部分の第2の実施例である。中敷き部分7、中敷き部分7の上面に形成する凸起部8、中敷き部分7に形成する欠切部9、10、空気室11から構成される。空気室11は、全体を弾力部材や発泡材などで形成することも可能である。
【0020】
図6は、本発明の中敷き及びその中敷きを装着した履物の中敷き部分の第2の実施例の側面断面図である。第2の実施例7、空気室11から構成される。凸起部8の高さは、空気室11の大きさや欠切部9、10の形状を変えることで随意調整することが可能である。高さを変えることで、足に加わる負荷の度合いが変わり、高くなるほど負荷が大きく、低くなるほど負荷が小さくなる。中敷き部分7の高さ、素材は対象年齢、用途などにより随意設定することができる。」
「【図5】
[図:0001386139000014.jpg]
」
「【図6】
[図:0001386139000015.jpg]
」
(2)上記(1)から、甲4の2明細書等には、次の発明(以下「甲4の2発明」という。)が記載されている。
「中敷きの底面両側部に凹欠部を設け、中敷きの底面長手方向略中間部に凸起部を形成し、中敷きの上面は緩やかに弧を描くように形成した中敷きを装着した履物であって、
凸起部は弾力部材または空気室で形成することにより振動衝撃を吸収することができる
履物。」
5 甲5の1
甲5の1には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、足底板、中敷き、及び履物に係り、詳しくは扁平足、外反足及び内反足を矯正する足底板、中敷き、及び履物に関するものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0006】本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、単一の矯正具により扁平足の矯正と内反足及び外反足のうち少なくとも何れか一方の矯正とを良好な使用感のもと同時に実現できることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、足底板に係る請求項1の発明では、土踏まず支持部と踵支持部が前後方向へ連続するように足底板本体を形成し、同足底板本体の側縁の所定部位に外反足防止壁及び内反足防止壁のうち少なくとも何れか一方を立ち上げ形成し、前記土踏まず支持部の略中央部分を上面が滑らかに盛り上がるように形成したことを要旨とした。」
「【図1】
[図:0001386139000016.jpg]
」
6 甲5の2
甲5の2には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本考案は、特に、正しい足の発育形成を促進して、歩行の正常化と足の異常な変形を抑制する矯正フットパッドに関するものである。」
「【考案が解決しようとする課題】
・・・
【0005】
そこで、案出されたのが本考案であって、正しい足の発育形成を促進して、歩行の正常化と足の異常な変形を抑制する矯正フットパッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の矯正フットパッドに係る請求項1の考案は、上面が前方部,中間部及び後方部領域に分けられた中底と、前記中底の中央に向けて傾斜する傾斜面を有する前足ブロック,中足ブロック及び後足ブロックからなる結合部材とからなり、前記結合部材を中底の各領域にそれぞれ着脱自在に設けたことを特徴とする。」
「【0013】
この考案の図1及び図2に示すように、本考案に係る矯正フットパッドは靴の中底に使用されるもので、中底10の上面の所定位置に配設される結合部材20から構成される。前記中底10は扁平な上面11と下面15を有し、該上面11が足裏に対応した前方部12と中間部13と後方部14領域とに分けられている。又、この第1実施例では前記結合部材20が中底10の上面11に取付けられているが、下面15に設けることも可能である。」
「【図1】
[図:0001386139000017.jpg]
」
7 甲5の3
甲5の3には、次の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
ゴム又は合成樹脂等の弾性体で成形したアーチ形状素材を、一方より他方に緩傾斜を以て薄部とした花弁形の隆起物底部に、挿着突起を設け、該挿着突起に合致する受孔を中敷本体に多数穿設してなることを特徴とする土踏まずサポーター。」(明細書第1ページ4~8行)
「これによつて靴着用者の土踏まず部は、対応した隆起物(1)の表面丘部の小突起(2)、(2)……により刺激され、さらに隆起物(1)裏面の空洞若しくはクツシヨン体(3)によりサポーターの伸縮性が良好であるので快適感と共に歩行の疲労を軽減し健康増進に役立ち、加えて中敷本体(b)の踵部に突縁(6)を形成したことにより突縁(6)内部が空隙を形成しクツシヨン的効果があるので、歩行着地の場合も直接足部の距骨に振動衝撃が加えられず、脳神経に及ぼす効果もきわめて大なるものがある。」(明細書4ページ5~14行)
「第1図
[図:0001386139000018.jpg]
」
「第3図
[図:0001386139000019.jpg]
」
8 甲6
(1)甲6には、次の写真、及び本件特許公報の【図1】が記載されている。
[図:0001386139000020.jpg]
(2)甲6の上記写真から、被写体は、次のものを備えたものであることが、把握できる。
[図:0001386139000021.jpg]
(3)上記(2)から、次の事項が認められる。
ア 装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成される本体を含む装着物である。
イ 本体が足に着脱自在に装着される。
ウ 踝被覆部に、面状片が設けられ、面状片は、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されている。
エ 装着物の足への装着時、足の指の付け根部分近傍は本体にて被覆されることなく露呈状態である。
9 甲7の1
甲7の1には、次の図面が記載されている。
[図:0001386139000022.jpg]
10 甲7の2
甲7の2には、次の図面が記載されている。
[図:0001386139000023.jpg]
11 甲7の3
甲7の3には、次の図面が記載されている。
[図:0001386139000024.jpg]
12 甲8の1
甲8の1には、次の写真が記載されている。
[図:0001386139000025.jpg]
13 甲8の2
甲8の2は、「山屋産業株式会社」が右上部に印刷された「納品書」及び「納品書(控)」の写しである。
「
[図:0001386139000026.jpg]
」
「
[図:0001386139000027.jpg]
」
「
[図:0001386139000028.jpg]
」
「
[図:0001386139000029.jpg]
」
14 甲9
(1)甲9には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 メリヤス編みにて筒状に編成されたサポーター本体の内面において、足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分にクッション材を装着したことを特徴とする足用サポーター。」
「【0002】
【従来の技術】従来から、メリヤス編みにて筒状に編成された足用サポーターは種々知られているが、足裏の踵部および土踏まず部に緩衝効果を与えるべくクッション材を装着したものは知られていない。
【0003】従って、従来の足用サポーターを着用しても足裏の踵部および土踏まず部に緩衝効果を与えることは殆ど期待することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような課題を解決するもので、足裏の踵部および土踏まず部に緩衝効果を与えることのできる足用サポーターを提供することを目的とするものである。」
「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1~図4において、1は綿、ウールなどの天然繊維や合成繊維を素材としてメリヤス編みにて筒状に編成されたサポーター本体で、このサポーター本体1の内面において、足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分にそれぞれ例えばアクリル樹脂の発泡体からなるクッション材2および3が装着されている。詳しくはクッション材2および3はサポーター本体1の内面の足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分に当てがわれ、綿を素材とする平織生地4で覆うとともに、クッション材2および3の周辺からはみ出す平織生地4の周辺部をサポーター本体1の内面に接着剤を用いるなどにより接着させている。
【0008】上記のようにサポーター本体1の内面において、足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分にクッション材2および3を装着してあるので、このサポーターを使用することにより、足裏の踵部および土踏まず部に緩衝効果を与えることができ、足裏の踵部の疲れや土踏まず部の疲れが非常に少なくなる。」
「【図1】
[図:0001386139000030.jpg]
」
「【図2】
[図:0001386139000031.jpg]
」
「
[図:0001386139000032.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、次の事項が認定できる。
ア 図1を参照すると、足用サポーターの足先側が開放している。
イ 図1を参照すると、サポーター本体1は、装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部、足裏部位に相対する足裏被覆部及び足首部位に相対する足首被覆部とから構成される。
(3)上記(1)及び(2)から、甲9には、次の発明(以下「甲9発明」)が記載されている。
「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部、足裏部位に相対する足裏被覆部及び足首部位に相対する足首被覆部とから構成され、綿、ウールなどの天然繊維や合成繊維を素材としてメリヤス編みにて筒状に編成されたサポーター本体1の内面において、足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分にそれぞれクッション材2およびクッション材3が装着され、足先側が開放しており、足に着用される足用サポーター。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(実施可能要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載
本件発明1における「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ることに関して、本件特許の発明の詳細な説明及び図面には次の記載がある。
「【0017】
(1)装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータであって、
一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナーと、
前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、
踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され、
前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した
ことを特徴とする剣道用足用サポータである。」
「【0023】
本発明によれば、踏み込み時に瞬間的に生ずる大きな荷重負荷を吸収できるので、足裏及び踵部位への衝撃を軽減し、競技や稽古への悪影響を解消できるものである。しかも、第一の衝撃吸収機構部を第二の衝撃吸収機構部よりも厚く大きく構成してあるので、床面等へは必ず土踏まず部位から踵の順で足が着くようになるので、踵を中心とする大きな荷重負荷がかかることを解消できるものである。
また、本発明によれば、大きな荷重負荷による足裏及び踵部位への衝撃を軽減できるので、怪我等の防止及び安全性の向上を図れるという実用的な優れた効果を奏する。しかも、本発明によれば、足の指の付け根部分近傍は被覆されることなく露呈状態となるよう構成されているので、競技や稽古の際に装着者は滑ることなく動作に支障を来すこともなく思い通りの確実な動作を実現でき、実用的且つ有用なものである。」
「【0029】
踵被覆部140は、本体100を着脱自在に足に装着すると、足の踵部位を密着して覆うよう形成されている。この踵被覆部140の上面側(本体100の内側)には、熱可塑性合成樹脂の一つであるEVA(Ethylene-Vinyl Acetate:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)から成る第二の衝撃吸収材300を設けている。
【0030】
足背被覆部160は、本体100を着脱自在に足に装着すると、足背部位、所謂足の甲を密着して覆うよう形成されている。
【0031】
足裏被覆部180は、本体100を着脱自在に足に装着すると、足裏部位を密着して覆うよう形成されている。この足裏被覆部180の上面側(本体100の内側)で足の土踏まずに対応する部位(土踏まず部位)182には、第二の衝撃吸収材300と同様、EVAから成る第一の衝撃吸収材200を設けている。
【0032】
第二の衝撃吸収材300は、上面が三日月状で、本体100を着脱自在に足に装着すると、踵を包み込むように密着し、その厚さT2は10mm程度ある。また、第二の衝撃吸収材300は、その下面部300aが踵被覆部140の上面部140a側に位置して固着されるとともに、他の外面部が伸縮性を有する素材により圧着されて固定されているものである。なお、本実施形態では第二の衝撃吸収材300の形状を三日月状としたが、形状はこれに限定される訳ではない。その形状は、半月状や楕円状等踵を包み込むような種々の他の形状でも良いことは勿論である。
【0033】
第一の衝撃吸収材200は、本体100を着脱自在に足に装着すると、足の土踏まずに対応する部位(土踏まず部位)182の上面部182a側に位置して固着されるとともに、他の外面部が伸縮性を有する素材により圧着されて固定されているものである。而して、第一の衝撃吸収材200は第二の衝撃吸収材300よりもその表面積が大きくなるよう形成されており、第一の衝撃吸収材200の厚さT1は、第二の衝撃吸収材300の厚さT2の約1.1倍~1.2倍程度のおおよそ12mm程度ある。また、第一の衝撃吸収材200の体積V1は、第二の衝撃吸収材300の体積V2より大きくなるよう形成されている。これは、第一の衝撃吸収材200の方が第二の衝撃吸収材300よりも、大きな衝撃による荷重負荷を受けることを考慮したことによる。
なお、各衝撃吸収材200,300の厚さT1,T2は、前記数値に限定される訳ではなく、他にT1=7mmのときT2=5.8mm、T1=5mmのときT2=4.5mm、といったように、厚さに関しT1>T2の関係となればよいものである。
【0034】
前記構成につき、その作用を以下に述べる。
【0035】
本体100の内側に踏み込み足を入れ、踝被覆部120が踝に、踵被覆部140が踵に、足背被覆部160が甲に、そして足裏被覆部180が足裏に密着した状態で、フラップ型の織製面ファスナー122の一端部122aを引張って踝被覆部120の表面に取着すると、剣道用足用サポータが装着される。而して、第一の衝撃吸収材200は踏まず部(中足部、所謂土踏まず部位)F3に位置するとともに、第二の衝撃吸収材300は踵部(後足部)F4に位置することになる(図5参照)。また、足趾(足の指)F1及び踏み付け部(前足部)F2は、本体100に被覆されることなく露呈することになる(図4及び図5参照)。
【0036】
打突のために装着者が勢いよく剣道用足用サポータを装着した足を踏み込むと、本体100に被覆されることなく露呈状態にある足趾F1及び踏み付け部F2が床面等との摩擦により、滑ることなく、しっかりとした踏み込みが行えるものである。そして、踏み込み足は、土踏まず部位F3から踵部F4にかけて床面に着くことになる。
【0037】
踏み込み足にかかる荷重は、先ず土踏まず部位182に設けられた第一の衝撃吸収材200に大きな荷重がかかり、続いて踵被覆部140に設けられた第二の衝撃吸収材300に荷重がかかることになる。即ち、第一の衝撃吸収材200で大きな荷重負荷が吸収され、第二の衝撃吸収材300にてさらに荷重負荷が吸収されることになる。これにより、剣道用足用サポータの装着者にかかる荷重負荷が著しく軽減されることになる。」
「【図1】
[図:0001386139000033.jpg]
」
「【図2】
[図:0001386139000034.jpg]
」
「【図3】
[図:0001386139000035.jpg]
」
「【図4】
[図:0001386139000036.jpg]
」
「【図5】
[図:0001386139000037.jpg]
」
(2)発明の詳細な説明に記載された実施形態について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0013】~【0015】)、当該課題を解決するための手段(【0016】~【0022】)、本件発明の効果(【0023】)、本件発明を実施するための形態(【0025】~【0044】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
申立人が主張する点(上記第3の1)について検討すると、上記発明の詳細な説明の【0029】~【0033】の記載及び図2、3から、本件発明の「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」の構成は自ずと理解できる。
(3)小括
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
2 申立理由2(明確性)について
本件発明1及び2の「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」るとの記載は、「剣道用足用サポータ」に係る発明特定事項であるところ、「剣道」における足の「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着く」ようにするため、踏まず部に位置する「第一の衝撃吸収機構部」の厚さを、踵部に位置する「第二の衝撃吸収機構部」の厚さより大きくすること、すなわち、床面に最初に着く部分の厚さを大きくすることを特定するものである。
したがって、「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」という発明特定事項は明確である。
また、本件発明1及び2の「踏まず部」について、まず「踏む」とは、「足のうらで押し付ける。」(広辞苑第六版)という意味であるから、「踏まず部」とは、足のうらで押し付けない部分、すなわち、足の土踏まずの部分であることが理解できる。そして、その理解は、本件特許明細書には、「足の土踏まずに対応する部位(土踏まず部位)182の上面部182a」(【0033】)、「第一の衝撃吸収材200は踏まず部(中足部、所謂土踏まず部位)F3に位置するとともに」(【0035】)と記載されていることと整合する。
よって、本件発明1~5は明確である。
3 申立理由3(拡大先願)について
(1)甲4の1考案に基づく理由について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4の1考案とを対比する。
甲4の1考案に係る「靴」が足に着脱自在であることは自明であること、及び「アウトソール11」と「アッパー20」とを合わせたものが「靴」の本体といえることから、甲4の1考案の「アウトソール11と、アッパー20、及びアウトソール11上に装備されるインソール30より成る靴10」と本件発明1の「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータ」とは、「足に着脱自在に装着される本体を含む装着物」の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲4の1考案とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「足に着脱自在に装着される本体を含む装着物。」
[相違点A-1]
足に着脱自在に装着される本体を含む装着物に関して、本件発明1は、「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータ」であるのに対して、甲4の1考案は、「アウトソール11と、アッパー20、及びアウトソール11上に装備されるインソール30より成る靴10」であって、「アッパー20は皮革、合成樹脂、布等、一般的な靴に使用される任意の素材を用いて、一般的な靴のアッパーと同様の形状で構成され」る点。
[相違点A-2]
本件発明1は、「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、甲4の1考案は、その点が不明である点。
[相違点A-3]
本件発明1は、「前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」るのに対して、甲4の1考案は、「アウトソール11は、爪先部位14はほぼ平坦状の一般的なアウトソールと同様の形状を呈し、中足部位12は肉厚に形成されており、その結果接地面側に向かって膨出した形状となり、踵部位13は、靴の前後方向及び靴の幅方向いずれにも湾曲形状を呈しており、アウトソール11の素材は、一般的な靴のアウトソールに使用される素材、例えば合成ゴムや合成樹脂、発泡したポリウレタン樹脂、革、天然ゴムに加硫したラバー等を使用可能である」点。
[相違点A-4]
本件発明1は、「前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した」のに対して、甲4の1考案は、そのように構成されていない点。
(イ)判断
相違点A-1について検討する。
甲4の1考案は、「歩行時或るいは走行時に、ミッドフット着地を容易に行うことを可能とする靴」(甲4の1明細書等の【0001】)であるから、甲4の1考案の靴を剣道用サポータとして用いることはないため、相違点A-1は実質的なものである。
よって、本件発明1は甲4の1考案と同一ではない。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲4の1考案とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「足に着脱自在に装着される本体を含む装着物。」
[相違点B-1]
足に着脱自在に装着される本体を含む装着物に関して、本件発明2は、「足に着脱自在に装着され、伸縮性を有する素材によって、装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、足に装着した際、足趾及び踏み付け部は前記足裏被覆部に被覆されることなく露呈するように構成された本体を含む剣道用足用サポータ」であるのに対して、甲4の1考案は、「アウトソール11と、アッパー20、及びアウトソール11上に装備されるインソール30より成る靴10」であって、「アッパー20は皮革、合成樹脂、布等、一般的な靴に使用される任意の素材を用いて、一般的な靴のアッパーと同様の形状で構成され」る点。
[相違点B-2]
本件発明2は、「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、甲4の1考案は、その点が不明である点。
[相違点B-3]
本件発明2は、「前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収材と、前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収材を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収材の厚さが前記第二の衝撃吸収材の厚さより大きくなるよう形成され」るのに対して、甲4の1考案は、「アウトソール11は、爪先部位14はほぼ平坦状の一般的なアウトソールと同様の形状を呈し、中足部位12は肉厚に形成されており、その結果接地面側に向かって膨出した形状となり、踵部位13は、靴の前後方向及び靴の幅方向いずれにも湾曲形状を呈しており、アウトソール11の素材は、一般的な靴のアウトソールに使用される素材、例えば合成ゴムや合成樹脂、発泡したポリウレタン樹脂、革、天然ゴムに加硫したラバー等を使用可能である」点。
(イ)判断
相違点B-1について検討する。
甲4の1考案は、「歩行時或るいは走行時に、ミッドフット着地を容易に行うことを可能とする靴」(甲4の1明細書等の【0001】)であるから、甲4の1考案の靴を剣道用サポータとして用いることはないため、相違点B-1は実質的なものである。
よって、本件発明2は甲4の1考案と同一ではない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、直接的あるいは間接的に本件発明1又は2を引用し、本件発明1又は2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、上記したとおり、本件発明1又は2は、甲4の1考案と同一ではないから、本件発明3~5は、甲4の1考案と同一ではない。
(2)甲4の2発明に基づく理由について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4の2発明とを対比する。
甲4の2発明に係る「履物」が足に着脱自在であることは自明であること、及び「履物」自体が本体といえることから、甲4の2発明の「履物」と本件発明1の「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータ」とは、「足に着脱自在に装着される本体を含む装着物」の限りで一致する。
中敷きは履物の足裏を被覆する箇所に設けられるクッションであること、及び甲4の2発明の「凸起部」は、「中敷きの底面長手方向略中間部」に形成されており、また、「弾力部材または空気室で形成することにより振動衝撃を吸収することができる」ものであることから、甲4の2発明の「凸起部」は、本件発明1の「前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部」に相当し、甲4の2発明の「中敷き」の踵部に位置する部分は、本件発明1の「前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4の2発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「足に着脱自在に装着される本体を含む装着物であって、
前記本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備した
装着物」
[相違点C-1]
足に着脱自在に装着される本体を含む装着物に関して、本件発明1は、「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータ」であるのに対して、甲4の2発明は「履物」である点。
[相違点C-2]
本件発明1は、「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、甲4の2発明は、その点が不明である点。
[相違点C-3]
本件発明1は、「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」るのに対して、甲4の2発明は、その点が不明である点。
[相違点C-4]
本件発明1は、「前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した」のに対して、甲4の2発明は、その点が不明である点。
(イ)判断
相違点C-1について検討する。
甲4の2発明は、「足の指を広げて歩くことができる中敷き」を「装着した履物」(甲4の2明細書等の【0001】)であるから、甲4の2発明の履物を剣道用サポータとして用いることはないため、相違点C-1は実質的なものである。
よって、本件発明1は甲4の2発明と同一ではない。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲4の2発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「足に着脱自在に装着される本体を含む装着物であって、
前記本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備した
装着物」
[相違点D-1]
足に着脱自在に装着される本体を含む装着物に関して、本件発明2は、「足に着脱自在に装着され、伸縮性を有する素材によって、装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、足に装着した際、足趾及び踏み付け部は前記足裏被覆部に被覆されることなく露呈するように構成された本体を含む剣道用足用サポータ」であるのに対して、甲4の2発明は「履物」である点。
[相違点D-2]
本件発明2は、「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、甲4の2発明は、その点が不明である点。
[相違点D-3]
本件発明2は、「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収材の厚さが前記第二の衝撃吸収材の厚さより大きくなるよう形成され」るのに対して、甲4の2発明は、その点が不明である点。
(イ)判断
相違点D-1について検討する。
甲4の2発明は、「足の指を広げて歩くことができる中敷き」を「装着した履物」(甲4の2明細書等の【0001】)であるから、甲4の2発明の履物を剣道用サポータとして用いることはないため、相違点D-1は実質的なものである。
よって、本件発明2は甲4の2発明と同一ではない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、上記したとおり、本件発明1又は2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明1又は2は、甲4の2発明と同一ではないから、本件発明3~5は、甲4の2発明と同一ではない。
4 申立理由4(新規性)、申立理由5(進歩性)について(甲3の1、甲3の2、甲6、甲8の1、甲8の2)
(1)申立人主張の剣道用サポータについて
ア 申立人主張の剣道用サポータの構成
申立人は、甲3の1、甲6、甲8の1の写真を山屋製品に係る剣道用サポータを写したものとして、甲3の1の剣道用サポータの構成1~4について、次のとおり認定している。
「1.装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータであって、
2.一端部が踵被服(当審注:「踝被覆部」の誤記と認められる。)の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踵被覆部(当審注:「踝被覆部」の誤記と認められる。)の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナーと、
3.前記本体の前記足裏被覆部における、上記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部かけて配される第二の衝撃吸収機構部が一体的に形成された衝撃吸収機構部を具備し、
4.前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した
剣道用サポータ」(申立書14ページ15行~下から2行)
イ 申立人主張の各構成について
(ア)構成1について
「本体」が「伸縮性を有する素材から成る」ものとしているが、甲3の1、甲6、甲8の1の写真からは、本体の素材が不明であるため、申立人による認定は採用できない。
(イ)構成2について
甲3の1、甲6、甲8の1の写真からは、「面ファスナー」であることが明らかなものが認められないため、申立人による認定は採用できない。
(ウ)構成3について
甲3の1、甲6、甲8の1の写真からは、「第一の衝撃吸収機構部」及び「第二の衝撃吸収機構部」であることが明らかなものが認められないため、申立人による認定は採用できない。
(エ)小括
上記(ア)~(ウ)のとおり、甲3の1、甲3の2、甲6、甲8の1、甲8の2の剣道用サポータについての申立人の認定は採用できない。
ウ 甲3の1、甲3の2、甲6、甲8の1、甲8の2から認定できる装着物について
甲3の1から認定できる事項は上記第4の1(3)、甲6から認定できる事項は上記第4の8(3)のとおりであるから、甲3の1、甲3の2、甲6、甲8の1、甲8の2から、当審が認定できる装着物(以下「引用装着物」という。)は次のとおりである。
「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、足に着脱自在に構成される本体を含む装着物であって、
踝被覆部に、面状片が設けられ、面状片は、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されており、
装着物の足への装着時、足の指の付け根部分近傍は本体にて被覆されることなく露呈状態である装着物。」
エ 公知日について
(ア)申立人の主張
甲3の1、甲6及び甲8の1の剣道用サポータの公知性に関して、申立人は次のとおり述べている。
「(7-1)まず、甲第3号証の1(山屋製品)は、山屋産業が20年以上も前から製造販売してきているものである(甲第3号証の2参照)。」(申立書14ページ12~13行)
「なお、山屋産業の製品の甲第8号証の1と甲第8号証の2の剣道用サポータは、山屋産業が20年以上も前から製造販売してきている剣道用サポータであるが、・・・」(申立書15ページ下から4~3行)
(イ)当審の判断
申立人が提出した証拠説明書によると、甲3の1の写真の撮影日は令和3年7月26日、甲6の写真の撮影日は令和3年8月10日、甲8の1の写真の撮影日は令和3年7月30日であるから、本件特許の出願後においては、甲3の1、甲6、甲8の1の写真に写った物が存在していたことは認められる。
しかしながら、甲3の1、甲6、甲8の1の写真に写った物が、いつの時点で、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られたものであるかについては、申立人の主張及び証拠からは明らかではない。
また、甲3の2の納品書から、2013年(平成25年)の1月、4月に、山屋産業株式会社から(有)ネットウイング、ふくだ企画、松勘工業(株)、(有)林藤武道具店に、「ネオガード帆布 かかと L」、「ネオガード帆布 かかと M」、「剣道用ゼッケン」、「かかとサポーター 紺 LHYS-2-B L 5mm」、「ネオガード皮付 かかと L」、「ネオガード帆布 かかと LL」、「柔道用ゼッケン」、「剣道用 ひじ M」、「剣道用 手首 L」、「ネオガード皮付 かかと LL」の品名の物が納品されたことが看取され、また、甲8の2の納品書から、2013年(平成25年)の1月、2014年(平成26年)6月に、山屋産業株式会社から(株)ヒロヤ、(株)ミツボシに、「かかとに クッション エアー L」、「剣道用ゼッケン」、「ヘッドギア 白 M」、「ヘッドギア 黒 S」、「ヘッドギア 黒 M」、「剣道用 足先(左足用)フリーサイズ」、「武道用バンテージ 幅7.5cm」が納品されたことが看取される。
しかしながら、甲3の1の写真に写った物、甲8の1の写真に写った物が、当該納品書に記載されたどの品名の物であるのか、また、当該納品書によって納品された物であるのか否かが不明である。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、引用装着物は、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえない。
(2)予備的検討
上記(1)で示したとおり、引用装着物は、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえないが、仮に、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとして以下、予備的に、検討する。
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用装着物とを対比する。
引用装着物の「装着物」と本件発明1の「剣道用足用サポータ」とは、「装着物」の限りで一致する。
引用装着物において「踝被覆部に、面状片が設けられ、面状片は、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されて」いることと、本件発明1において「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備することとは、踝被覆部の表面に設けられる面状片を具備する限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用装着物とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、足に着脱自在に装着される本体を含む装着物であって、
踝被覆部の表面に設けられる面状片を具備し、
本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう本体を構成した
装着物。」
[相違点E-1]
本件発明1は、「本体」が「伸縮性を有する素材から成る」のに対して、引用装着物は、その点が不明である点。
[相違点E-2]
装着物に関して、本件発明1は「剣道用足用サポータ」であるのに対して、引用装着物は「装着物」である点。
[相違点E-3]
踝被覆部の表面に設けられる面状片を具備することに関して、本件発明1は「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、引用装着物は「踝被覆部に、面状片が設けられ、面状片は、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されて」いる点。
[相違点E-4]
本件発明1は「前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ているのに対して、引用装着物はその点が不明である点。
(イ)新規性についての判断
相違点E-4について検討する。
甲3の1の写真、甲6の写真、甲8の1の写真からは、本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部及び踵部に、衝撃吸収機構部を具備している点について確認することができないから、相違点E-4は実質的な相違点であるため、本件発明1は引用装着物ではない。
(ウ)進歩性についての判断
相違点E-4について検討する。
靴の中底に、踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部とを備えることは、甲5の1(上記第4の5)、甲5の2(上記第4の6)、甲5の3(上記第4の7)に示されるように、周知の事項であるが、これら周知例はいずれも、剣道において、急激に大きな荷重が加わる際に発生する大きな衝撃力に対して足裏の土踏まず部位から踵の順で足がつくようにして保護するものではない。
また、剣道用足用サポータにおいて、本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、本体の踵被覆部における、足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、第一の衝撃吸収機構部の厚さが第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成する点について、他の甲号証には記載もないし示唆する記載もなく、また、周知技術であるともいえない。
したがって、引用装着物において、相違点E-4に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が引用装着物に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と引用装着物とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「足に着脱自在に装着され、装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、足に装着した際、足趾及び踏み付け部は前記足裏被覆部に被覆されることなく露呈するように構成された本体を含む装着物であって、
踝被覆部の表面に設けられる面状片を具備する
装着物。」
[相違点F-1]
本件発明2は、「本体」が「伸縮性を有する素材」によって構成されるのに対して、引用装着物は、その点が不明である点。
[相違点F-2]
装着物に関して、本件発明2は「剣道用足用サポータ」であるのに対して、引用装着物は「装着物」である点。
[相違点F-3]
踝被覆部の表面に設けられる面状片を具備することに関して、本件発明2は「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、引用装着物は「踝被覆部に、面状片が設けられ、面状片は、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されて」いる点。
[相違点F-4]
本件発明2は「前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ているのに対して、引用装着物はその点が不明である点。
(イ)新規性についての判断
相違点F-4について検討する。
甲3の1の写真、甲6の写真、甲8の1の写真からは、本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部及び踵部に、衝撃吸収機構部を具備している点について確認することができないから、相違点F-4は実質的な相違点であるため、本件発明2は引用装着物ではない。
(ウ)進歩性についての判断
相違点F-4について検討する。
靴の中底に、踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部とを備えることは、甲5の1(上記第4の5)、甲5の2(上記第4の6)、甲5の3(上記第4の7)に示されるように、周知の事項であるが、これら周知例はいずれも、剣道において、急激に大きな荷重が加わる際に発生する大きな衝撃力に対して足裏の土踏まず部位から踵の順で足がつくようにして保護するものではない。
また、剣道用足用サポータにおいて、本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、本体の踵被覆部における、足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、第一の衝撃吸収機構部の厚さが第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成する点について、他の甲号証には記載もないし示唆する記載もなく、また、周知技術であるともいえない。
したがって、引用装着物において、相違点F-4に係る本件発明2の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、当業者が引用装着物に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、上記したとおり、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1又は2を限定するものであるから、上記ア又はイで検討したのと同じ理由により、引用装着物に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由5(進歩性)について(甲9)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲9発明とを対比する。
甲9発明の「サポーター本体1」は、本件発明1の「本体」に相当する。
甲9発明において、「サポーター本体1」が「綿、ウールなどの天然繊維や合成繊維を素材としてメリヤス編みにて筒状に編成され」、「足に着用される」ことは、本件発明1において、「本体」が「伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される」ことに相当する
甲9発明における「サポーター本体1の内面において」、「足裏の踵部」に「位置する部分」に装着された「クッション材2」は、本件発明1における「前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部」に相当し、甲9発明における「サポーター本体1の内面において」、「土踏まず部に位置する部分」に装着された「クッション材3」は、本件発明1における「前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部」に相当する。
甲9発明において、「足先側が開放して」いることは、本件発明1において、「前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した」ことに相当する。
甲9発明の「足用サポーター」と本件発明1の「剣道用足用サポータ」とは、「足用サポータ」の限りで一致する。
甲9発明において、「サポーター本体1の内面」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部、足裏部位に相対する足裏被覆部及び足首部位に相対する足首被覆部とから構成され」ることと、本件発明1において、「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され」ることとは、「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部」を有する限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲9発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部を有し、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む足用サポータであって、
前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、
前記本体の足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は前記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう前記本体を構成した
足用サポータ。」
[相違点G-1]
「足用サポータ」に関して、本件発明1は「剣道用足用サポータ」であるのに対して、甲9発明は「足用サポーター」である点。
[相違点G-2]
「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部」を有することに関して、本件発明1では、「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され」るのに対して、甲9発明では、「足首部位に相対する足首被覆部」が付加されている点。
[相違点G-3]
本件発明1は、「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、甲9発明はそのような面ファスナーを具備していない点。
[相違点G-4]
本件発明1は、「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ているのに対して、甲9発明は、「クッション材2」及び「クッション材3」がそのように構成されているか不明である点。
イ 判断
相違点G-4について検討する。
甲9発明は、サポーター本体1の内面において、足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分にそれぞれクッション材2およびクッション材3が装着されるものであるが、剣道において、急激に大きな荷重が加わる際に発生する大きな衝撃力に対して足裏の土踏まず部位から踵の順で足がつくようにして保護するものではない。
また、剣道用足用サポータにおいて、本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、本体の踵被覆部における、足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、第一の衝撃吸収機構部の厚さが第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成する点について、他の甲号証には記載もないし示唆する記載もなく、また、周知技術であるともいえない。
したがって、甲9発明において、相違点G-4に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲9発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲9発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「足に着脱自在に装着され、伸縮性を有する素材によって構成され、装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部を有し、足に装着した際、足趾及び踏み付け部は前記足裏被覆部に被覆されることなく露呈するように構成された本体を含む足用サポータであって、
前記本体の前記足裏被覆部における、前記足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収材と、
前記本体の前記踵被覆部における、前記足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収材を具備した
足用サポータ。」
[相違点H-1]
「足用サポータ」に関して、本件発明2は「剣道用足用サポータ」であるのに対して、甲9発明は「足用サポーター」である点。
[相違点H-2]
「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部」を有することに関して、本件発明2では、「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され」るのに対して、甲9発明では、「足首部位に相対する足首被覆部」が付加されている点。
[相違点H-3]
本件発明2は、「一端部が踝被覆部の表面に貼着によって着脱自在に構成され、他端部が前記踝被覆部の後部側上部に取付けられ、前記踝被覆部を前記踝部位に密着させる面ファスナー」を具備するのに対して、甲9発明はそのような面ファスナーを具備していない点。
[相違点H-4]
本件発明2は、「踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ているのに対して、甲9発明は、「クッション材2」及び「クッション材3」がそのように構成されているか不明である点。
イ 判断
相違点H-4について検討する。
甲9発明は、サポーター本体1の内面において、足裏の踵部および土踏まず部に位置する部分にそれぞれクッション材2およびクッション材3が装着されるものであるが、剣道において、急激に大きな荷重が加わる際に発生する大きな衝撃力に対して足裏の土踏まず部位から踵の順で足がつくようにして保護するものではない。
また、剣道用足用サポータにおいて、本体の足裏被覆部における、足裏部位の踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、本体の踵被覆部における、足裏部位の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部を具備し、踏み込み時に床面へは踏まず部位から踵の順で足が着くように、第一の衝撃吸収機構部の厚さが第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成する点について、他の甲号証には記載もないし示唆する記載もなく、また、周知技術であるともいえない。
したがって、甲9発明において、相違点H-4に係る本件発明2の構成とすることを、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、当業者が甲9発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1又は2を限定するものであるから、上記(1)又は(2)で検討したのと同じ理由により、甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700797