2021-700974
繊維強化材料用オキサゾリジノンおよびイソシアヌレート架橋マトリックス
- 審判番号
- 2021-700974
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-551006外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6857131
- 請求日
- 2021年10月11日
- 審決日
- 2023年05月08日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
- 【権利者代理人】山崎 宏
- 【権利者代理人】森住 憲一
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 分類
- P1652.113-YAA(C08G) / P1652.121-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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特許第6857131号(請求項の数13。以下、「本件特許」という。)は、平成27年12月18日(優先権主張 平成26年12月22日 ドイツ)を国際出願日とする出願に係る特許であって、令和3年3月23日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年4月14日である。)。
その後、令和3年10月11日に、本件特許の請求項1~4、6~13に係る特許に対して、特許異議申立人である東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 2月28日付け取消理由通知書
同年 5月26日 意見書(特許権者)
同年 9月 6日付け取消理由通知書(決定の予告)
同年12月 8日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年12月22日付け通知書(申立人あて)
令和5年 2月 6日 意見書(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年12月8日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「(2)少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップとを含む方法。」と記載されているのを、
「(2)少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップとを含み、トランスファー成形(RTM)法であり、前記反応混合物は反応性射出樹脂である、方法。」に訂正する。(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2~9、11~13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11に、「請求項10に記載の方法」と記載されているのを「請求項1~9のいずれか1項に記載の方法」に訂正する。(請求項11の記載を直接または間接的に引用する請求項12~13も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12に、「請求項1~11のいずれか1項に記載の方法」と記載されているのを「請求項1~9および11のいずれか1項に記載の方法」に訂正する。(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記触媒組成物が、少なくとも1つの、式(I)(当審注:式(I)及びその説明は省略する。)
で示されるイオン性化合物を含んでなることを特徴とする、請求項4に記載の方法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4をさらに引用する請求項5を独立形式に改め、
「少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物の製造方法であって、(1)液体反応混合物を提供するステップであって、前記液体反応混合物は、(a)少なくとも1つの液体芳香族エポキシ樹脂と、(b)少なくとも1つの液体芳香族ポリイソシアネートと、続きを表示(全20行)(c)触媒組成物と、(d)ポリオールおよび液体ゴムから選択される少なくとも1つの耐衝撃性改良剤とを含んでなり、イソシアネート基に対するエポキシド基のモル当量比が少なくとも0.4となるような量で、少なくとも1つのポリイソシアネートに対して少なくとも1つのエポキシ樹脂を使用するステップと、(2)少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップとを含み、前記触媒組成物が、少なくとも1つの窒素含有塩基である、少なくとも1つの、式(I):【化2】[図:0001400408000001.jpg][式中、R1およびR3は、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルキル基、置換または非置換の炭素原子数3~20の直鎖または分岐アルケニル基、および置換または非置換の炭素原子5~20のアリール基からなる群から互いにそれぞれ独立して選択され、R2は水素であり、R4およびR5は、水素、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルキル基、置換または非置換の炭素原子数3~20の直鎖または分岐アルケニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルコキシ基、および置換または非置換の炭素原子数5~10のアリール基からなる群から互いにそれぞれ独立して選択され、または、R1およびR5および/またはR3およびR4またはR4およびR5は、それらが結合している炭素原子または窒素原子と共に、5または6員の置換または非置換のシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環を形成することができ、シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリール環は、O、N、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、アニオンXは任意のアニオンであり、「-----」は、単結合または二重結合を意味し、nは1、2、または3である]で示されるイオン性化合物を含んでなることを特徴とする、方法。」と記載し、新たに請求項14とする。
(6)一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
また、訂正後の請求項14については、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることが求められている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1において、請求項10に記載された事項を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は請求項10の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、訂正事項2で請求項10が削除されるのに伴い、請求項11が引用する請求項を、請求項10が引用する請求項1~9にし、また、請求項12が引用する請求項を、請求項1~9および11とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項1~3のいずれか1項を引用する請求項4をさらに引用する請求項5において、請求項1のみを引用する請求項4をさらに引用する請求項5に減縮するとともに、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を書き下して独立形式に改めたものであるから、特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)独立特許要件について
本件訂正前の請求項5は特許異議の申立てがなされていない。そして、本件訂正後の請求項5は、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、また、上記(4)で述べたとおり、本件訂正後の請求項14に係る訂正事項5も特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項5及び14に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項)。
ア 本件訂正後の請求項5について
後記第5の2(1)で述べるように、請求項1に係る発明は特許法第29条の規定に違反して特許されたものでないから、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項5に係る発明も、特許法第29条の規定に違反して特許されたものでない。また、他に特許にすることができない理由を発見しない。
イ 本件訂正後の請求項14について
本件発明14は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項4をさらに引用する請求項5に係る発明であり、本件訂正前の請求項5は特許異議の申立てがなされていない請求項であって、後記第4の1(3)及び2に示した引用文献1(甲第1号証)及び甲第2~5号証のいずれにも、本件訂正前の請求項5に記載された触媒組成物は記載されていない。
そうすると、本件発明14と引用文献1に記載された発明とは、少なくとも上記触媒組成物の点で相違し、この点は、引用文献1(甲第1号証)及び甲第2~5号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明14は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明でないし、引用文献1(甲第1号証)及び甲第2~5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明14に係る特許は、特許法第29条の規定に違反して特許されたものではない。また、他に特許にすることができない理由を発見しない。
ウ 小括
したがって、訂正後の本件発明5及び14は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
3 本件訂正の適否の判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5~7項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。
第3 本件発明
第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~14に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~14に係る発明を、項番順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。また、本件特許の明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物の製造方法であって、(1)液体反応混合物を提供するステップであって、前記液体反応混合物は、(a)少なくとも1つの液体芳香族エポキシ樹脂と、続きを表示(全71行)(b)少なくとも1つの液体芳香族ポリイソシアネートと、(c)触媒組成物と、(d)ポリオールおよび液体ゴムから選択される少なくとも1つの耐衝撃性改良剤とを含んでなり、イソシアネート基に対するエポキシド基のモル当量比が少なくとも0.4となるような量で、少なくとも1つのポリイソシアネートに対して少なくとも1つのエポキシ樹脂を使用するステップと、(2)少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップとを含み、トランスファー成形(RTM)法であり、前記反応混合物は反応性射出樹脂である、方法。【請求項2】前記少なくとも1つのエポキシ樹脂が芳香族グリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。【請求項3】前記少なくとも1つのポリイソシアネートが、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。【請求項4】前記触媒組成物が、少なくとも1つの窒素含有塩基を含んでなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。【請求項5】前記触媒組成物が、少なくとも1つの、式(I):【化1】[図:0001400408000002.jpg][式中、R1およびR3は、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルキル基、置換または非置換の炭素原子数3~20の直鎖または分岐アルケニル基、および置換または非置換の炭素原子数5~20のアリール基からなる群から互いにそれぞれ独立して選択され、R2は水素であり、R4およびR5は、水素、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルキル基、置換または非置換の炭素原子数3~20の直鎖または分岐アルケニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルコキシ基、および置換または非置換の炭素原子数5~10のアリール基からなる群から互いにそれぞれ独立して選択され、または、R1およびR5および/またはR3およびR4またはR4およびR5は、それらが結合している炭素原子または窒素原子と共に、5または6員の置換または非置換のシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環を形成することができ、シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリール環は、Ο、N、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、アニオンXは任意のアニオンであり、「-----」は、単結合または二重結合を意味し、nは1、2、または3である]で示されるイオン性化合物を含んでなることを特徴とする、請求項4に記載の方法。【請求項6】前記触媒組成物は、少なくとも1つの第三級窒素原子および/またはイミン窒素原子を含む少なくとも1つの非イオン性塩基を含んでなることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。【請求項7】前記反応混合物の総重量に基づいて0.01~10重量%の前記触媒組成物を使用することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。【請求項8】(a)前記反応混合物は、重付加反応を触媒するエポキシド硬化剤を含まない、(b)前記反応混合物は、120℃の温度で100mPa・s未満の粘度を有する、(c)硬化ポリマー組成物は、2500N/mm2を超える弾性率を有する、および/または、(d)硬化ポリマー組成物は、100℃を超えるガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。【請求項9】(a)ステップ(2)の反応混合物は、10℃~230℃の温度で0.01時間~10時間硬化され、または(b)ステップ(2)の反応混合物は、最初に50℃~130℃の温度で0.1時間~3時間硬化され、続いて110℃~190℃の温度で0.1時間~3時間硬化されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。【請求項10】(削除)【請求項11】ステップ(1)が、繊維または半完成繊維製品(予備織物/予備成形物)がその内部に配置されている成形用具内に射出樹脂を射出するステップを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。【請求項12】請求項1~9および11のいずれか1項に記載の方法によって得られる硬化ポリマー組成物。【請求項13】前記硬化ポリマー組成物は成形部品であることを特徴とする、請求項12に記載の硬化ポリマー組成物。【請求項14】少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物の製造方法であって、(1)液体反応混合物を提供するステップであって、前記液体反応混合物は、(a)少なくとも1つの液体芳香族エポキシ樹脂と、(b)少なくとも1つの液体芳香族ポリイソシアネートと、(c)触媒組成物と、(d)ポリオールおよび液体ゴムから選択される少なくとも1つの耐衝撃性改良剤とを含んでなり、イソシアネート基に対するエポキシド基のモル当量比が少なくとも0.4となるような量で、少なくとも1つのポリイソシアネートに対して少なくとも1つのエポキシ樹脂を使用するステップと、(2)少なくとも1つのオキサゾリジノン環および少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップとを含み、前記触媒組成物が、少なくとも1つの窒素含有塩基である、少なくとも1つの、式(I):【化2】[図:0001400408000003.jpg][式中、R1およびR3は、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルキル基、置換または非置換の炭素原子数3~20の直鎖または分岐アルケニル基、および置換または非置換の炭素原子5~20のアリール基からなる群から互いにそれぞれ独立して選択され、R2は水素であり、R4およびR5は、水素、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルキル基、置換または非置換の炭素原子数3~20の直鎖または分岐アルケニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20の直鎖または分岐アルコキシ基、および置換または非置換の炭素原子数5~10のアリール基からなる群から互いにそれぞれ独立して選択され、または、R1およびR5および/またはR3およびR4またはR4およびR5は、それらが結合している炭素原子または窒素原子と共に、5または6員の置換または非置換のシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環を形成することができ、シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリール環は、O、N、およびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、アニオンXは任意のアニオンであり、「-----」は、単結合または二重結合を意味し、nは1、2、または3である]で示されるイオン性化合物を含んでなることを特徴とする、方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由について
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1 特許異議申立書に記載した申立ての理由
本件特許の請求項1~4、6~13に係る特許は、下記(1)及び(2)のとおり、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(3)の甲第1号証~甲第5号証(以下、「甲1」等という。)を提出する。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~4、6~9、12及び13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正前の請求項1~4、6~9、12及び13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲1~甲4に基づく進歩性)
本件訂正前の請求項10及び11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
2 当審が通知した令和4年2月28日付け取消理由通知及び同年9月6日付け取消理由通知(決定の予告)の理由
令和4年2月28日付け取消理由通知及び同年9月6日付け取消理由通知(決定の予告)の理由は、いずれも次のとおりのものである。
(1)取消理由1(新規性)
請求項1~4、6~9及び12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明(参考資料1~4も参照)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない発明であるから、上記請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
請求項1~4、6~9、12及び13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明並びに甲2及び甲5(参考資料1~4も参照。)に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、上記請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
(3)特許権者が令和4年5月26日提出の意見書に添付した証拠方法
第5 当審の判断
以下に述べるように、請求項10に係る特許に対する申立ては、本件訂正により請求項10が削除されたから却下する。
また、当審が通知した取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1~4、6~9、11~14に係る特許は取り消すことはできない。
1 請求項10に係る特許に対する申立ての却下
第2及び第3で示したとおり、本件特許の請求項10は本件訂正により削除され、この特許に対する申立ては、申立ての対象を欠くこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により決定をもって却下する。
2 当審が通知した取消理由について
当審が通知した令和4年2月28日付け取消理由通知、同年9月6日付け取消理由通知(決定の予告)の理由及び申立理由1は同旨であり、申立理由2も引用文献1を引用例とする理由であるから、以下に併せて検討する。
(1)引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
本件特許出願の優先日前に公知となった引用文献1には、次の事項が記載されている(摘記は、引用文献1の公表公報である甲1により行う。)。
「【背景技術】【0002】イソシアネートに基づく樹脂系は、長い間知られており、工業界において使用されることが多い。エポキシ樹脂又はポリエステル樹脂と比較して、これらのイソシアネートに基づく樹脂系の大きな不都合な点は、公知のポリウレタン系の加工時間(working time)が、最大でも約45分であり、したがって、大きな表面積の部品の充填のためには短過ぎるという事実である。ポリウレタン系において慣例的に使用される触媒システムは、特に水銀触媒の有無にかかわらず、例えば、WO2011/095440A1に記載されるように、達成される加工時間は、そのような用途には不十分である。【0003】一体成型(casting)システムにおいて、特に樹脂系が、まず第一に、幾何学的に要求が多い形状を有することが多い金型中へ、非常に低粘度状態で供給され得る必要があり、しかしながら、その後は、その系は、離型する工程、又は迅速な利用可能性が提供できるように、急速に硬化すべきである。この特徴は、一体成型システムの場合、「オープンタイム」と称される、混合後の加工がまだ可能である範囲の時間、その後、成形体が、金型から取り出され得る「離型時間(demolding time)」、及びその後、その系が、一通り完全な反応を受けている時間、いわゆる「硬化時間(setting time)」によって記載される。これらの時間を最適化することは、使用される触媒システムにおける厳しい必須要件を強いる。【0004】一連の特許は、イソシアネート及びエポキシドの組み合わせの製造、加工、及び利用に対処する。イソシアネート及びエポキシドの単純な混合は、上昇させた温度でさえ、極めて反応し難いので、工業的応用のため、このクラスの物質の使用は、困難である。文献は、オキサゾリドンが、より高温で、さらに特に120℃を超える温度で、比較的長時間後に形成され得ることを教示する。競争反応は、イソシアネートからのポリイソシアヌレート(PIR)の形成である。」
「【発明が解決しようとする課題】【0009】したがって、先行技術に基づいて進め、本発明の目的は、技術的応用及び適切な樹脂系のために適切である、イソシアネート及びエポキシドに基づく樹脂を製造する方法を提供することであった。その加工時間は、十分に長時間で有るべきであり、樹脂系は、適切な条件下で、同時に急速に、且つ効率的に硬化すべきである。さらに、その方法の反応条件は、技術的応用を可能にすべきである。」
「【0015】さらなる実施形態において、さらに本発明は、上記の通りの樹脂を製造する方法であって、前記方法が、少なくとも以下の工程:(i)少なくとも1種のポリイソシアネート、少なくとも1種のポリエポキシド、及び前記触媒システムを混合し、混合物(I)を得る工程、(ii)前記混合物(I)を金型中へ、又は所望の反応部位へ、注入(pouring)、噴霧(spraying)、又は供給(distributing)によって配置する工程、(iii)前記混合物(I)を、前記混合物が硬化するまで、70~100℃の範囲の温度に加熱する工程、を含む方法に関する。」
「【0028】本発明に従って、前記触媒システムは、好ましくは、25℃での樹脂系の加工時間が、45分より長く、さらに好ましくは60分より長く、好ましくは90分より長く、さらに好ましくは180分より長く、極めて好ましくは240分より長く、設定され得る。」
「【0036】本発明に従って、ポリエポキシドは、その物質だけを、又はポリエポキシド及び少なくとも1種の希釈剤を含む組成物の形態で使用され得る。当業者に公知の適切な希釈剤の例は、酢酸エチル、メチルエチルケトン、炭化水素等の非反応性溶媒、低粘度の直鎖ジ-又はトリ-エポキシド等の反応性希釈剤、フタル酸エステル、又はクエン酸エステル等の可塑剤である。下記についても、本発明の目的のための希釈剤として、理解されるべきである:例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の短鎖ジオール、若しくはトリオールに基づくモノグリシジルエーテル、又はジグリシジルエーテル、又はポリオキシプロピレングリコール等の低粘度反応性希釈剤。」
「【0057】本発明の樹脂のために期待される利用分野は、具体的には、コーティング、積層、シール、及び成形体の製造等の慣例のポリウレタン樹脂の用途に加えて、風力タービン用の動翼、船体、又は自動車用のプラスチックの車体等の、極めて高い表面積の部品が製造される用途を含む。ここで使用される加工方法は、具体的には、真空注入、及び加圧注入である。さらに考えられる用途は、自動車、建築保護、コンクリートコーティング、地域暖房、機械工学、及び海事用途の分野である。さらなる態様に従って、本発明はまた、上記の通りの本発明の方法によって得られる樹脂の、又は上記の通りの本発明の樹脂の、シールを製造するための、動翼、船体、若しくは車体部分用の部品を製造するための、又はコーティングのための使用方法にも関する。」
「【実施例】【0079】使用した出発材料は、以下の通りであった:ISO1:Lupranat(登録商標) M20(BASF Polyurethanes GmbH製)、31.5%のNCO含有量を有するポリマーMDI;続きを表示(全25行)ISO2:Prepolymer ISO137/28(BASF Polyurethanes GmbH製)、4,4’-MDI、カルボジイミド修飾MDI、及びポリプロピレングリエングリコールに基づき、18%のNCO含有量を有する;ISO3:Lupranat(登録商標) MP102(BASF Polyurethanes GmbH製)、4,4’-MDIに基づくプレポリマー、22.9%のNCO含有量を有する;ISO4:Prepolymer ISO136/144(BASF Polyurethanes GmbH製)、10%のNCO含有量を有する;エポキシド:Baxxores(登録商標)ER5400(BASF製)、ビスフェノールAエポキシド、及び反応性希釈剤に基づくエポキシド混合物、172g/eqのエポキシ当量(EEW) を有する。【0080】Cat1:トリエチレンジアミン、プロピレングリコール中の33%強度溶液;Cat2:1,8-ジアザビシクロ-5,4,0-ウンデセン-7-エン(DBU);Cat3:Polycat(登録商標)9(Airproducts製)(ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-n,n-ジメチルプロパンジアミン);Cat4:N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,N’,N’-トリメチルプロパン-1,3-ジアミン;Cat5:Thorcat535;Cat6:Addocat(登録商標)PP(Rhein Chemie製);Cat7:フェノールでブロックされた1,8-ジアザビシクロ-5,4,0-ウンデセン-7-エン;WM:Citrofol(登録商標)B1可塑剤(Jungbunzlauer製)【0081】1.実施例C1~C8、及びI1及びI2まず最初に、ポリエポキシド及び触媒の混合物を調製し、その後、イソシアネート成分を添加し、再度混合を行なった。全ての成分の温度は25℃であった。成分の粗製は、表1に開示している。オープンタイムは、室温でShyodu gel timerを使用して測定した。材料が、60分後、まだ固化していなかった場合、Shyodu gel timerによるオープンタイムの測定は、打ち切り、硬化を視覚的に評価した。材料が、まだ流動性を有していた場合、ゲル化点には、まだ到達していなかった。並行して、材料が固化するかどうかを見るため、対応する混合物を、80℃で、60分間加熱/硬化した。Cで符号化された実施例は、比較例である。【0082】【表1】[図:0001400408000004.jpg]【0083】驚くべきことに、1,8-ジアザビシクロ-5,4,0-ウンデセン-7-エンとの組み合わせにおいて、エポキシド及びイソシアネートの混合物は、室温で極めて長い時間液体のままであり、その後、適度な温度で急速に反応し、固形物を形成することが見出された。その他のアミン触媒は、先行技術から公知の典型的な挙動を示す。実験はまた、そのような挙動が、金属触媒では得られないことも示す。Thorcat535のような金属触媒の使用は、エポキシド及びイソシアネートの混合物の硬化をもたらさない。」
引用文献1には、実施例C1~C8並びにI1及びI2について、「ポリエポキシド及び触媒の混合物を調製し、その後、イソシアネート成分を添加し、再度混合を行なった。全ての成分の温度は25℃であった。…オープンタイムは、室温でShyodu gel timerを使用して測定した。材料が、60分後、まだ固化していなかった場合、Shyodu gel timerによるオープンタイムの測定は、打ち切り、硬化を視覚的に評価した。」(【0081】)と記載され、ポリエポキシドと触媒を混合し、更にイソシアネート成分を混合した混合物を調製し、これを硬化する方法、及び、上記方法により得られた硬化物が示されているといえる。
また、引用文献1には、比較例である実施例C1として、上記ポリエポキシドであるエポキシド(Baxxores(登録商標)ER5400、ビスフェノールAエポキシド、及び反応性希釈剤に基づくエポキシド混合物、172g/eqのエポキシ当量(EEW))99.85g、上記イソシアネート成分であるISO1(Lupranate(登録商標) M20、31.5%のNCO含有量を有するポリマーMDI)77.4g、及び、上記触媒であるCat1(トリエチレンジアミン、プロピレングリコール中の33%強度溶液)0.15gからなる混合物を調製したことが記載されている(【0079】、【0080】、【0082】の表1)。
そうすると、引用文献1には、実施例C1に着目して、以下の発明が記載されているといえる。
「ポリエポキシドであるエポキシド(Baxxores(登録商標)ER5400、ビスフェノールAエポキシド及び反応性希釈剤に基づくエポキシド混合物、172g/eqのエポキシ当量(EEW))99.85g、及び触媒であるCat1(トリエチレンジアミン、プロピレングリコール中の33%強度溶液)0.15gを混合し、その後、イソシアネート成分であるISO1(Lupranate(登録商標) M20、31.5%のNCO含有量を有するポリマーMDI)77.4gを添加し、再度混合して混合物を調製し、上記混合物を硬化する、硬化物の製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)
「引用発明1の方法によって得られる硬化体。」(以下、「引用発明2」という。)
(2)甲2に記載された事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート化合物(a)よりなるA液と、2個以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリオール化合物(b)、2個以上のエポキシ基を有する少なくとも1種の弾性エポキシ化合物(c)及び硬化触媒(d)よりなるB液との組合せよりなり、かつAB両液における上記各成分の配合割合が、ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基100当量に対しポリオール化合物(b)中のヒドロキシ基が10~40当量、弾性エポキシ化合物(c)中のエポキシ基が5~20当量で、かつヒドロキシ基とエポキシ基との和がイソシアネート基100当量に対し15~45当量となる範囲内にあることを特徴とする多液型熱硬化性樹脂組成物。」
「【0010】【発明が解決しようとする課題】それ故、本発明の1つの目的は、上述の如き、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリエポキシ化合物及び硬化触媒からなる組成物において、良好な耐衝撃性を維持しながら耐熱性にすぐれた硬化樹脂成形物を安定にかつ再現性よく製造し得る組成物を提供することにある。」
「【0042】弾性エポキシ化合物(c)中のエポキシ基は、ポリイソシアネートと反応してオキサゾリドン環を形成する。このオキサゾリドン環は耐熱性の高い環であり、またエポキシ基とイソシアネート基は網目構造でなく、線状構造で反応して行くので、このオキサゾリドン環生成は、硬化樹脂の耐熱性の面からも耐衝撃性の面からも好ましいが、ポリウレタン生成あるいはイソシアネートの3量化にイソシアヌレート環生成より高い反応温度を必要とするため、硬化中にあってはポリウレタン生成やイソシアヌレート環生成より遅れる。そこでエポキシ基を多くすると未反応のエポキシ基が多くなるため、硬化樹脂の耐熱性特に熱変性温度が上らない。本発明者らの検討の結果、組成物中のエポキシ基の量はポリイソシアネート基100当量に対し5~20当量が好ましく特に7~18当量となる量が好適であることが判った。【0043】そして、組成物中の全ヒドロキシ基とエポキシ基との和は45当量以下とする必要がある。この和が45当量を越えると、イソシアネート基の3量化(環化)の割合が減るため、硬化樹脂の耐熱性が低くなる。特に好ましいのは35当量以下である。一方、ヒドロキシ基とエポキシ基との和の最小は15当量であり、それ未満であるとイソシアネートの3量化による架橋構造が増し、硬化樹脂の耐熱性は上るが、脆くなる。【0044】また、本発明に用いられる硬化触媒(d)としては、ポリイソシアネート化合物(a)の3量化(環化)触媒として機能する触媒が有効である。【0045】かかる触媒の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N,N′-ジメチルピペラジン、N,N′,N″-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、トリエチレンメラミン、1,4-ジアザビシクロ-2,2,2-オクタン、N,N-ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N′,N″-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジンなどの第3級アミン化合物や1-エチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールの如きイミダゾール化合物、あるいはナトリウムメトキシド、ナフテン酸鉛、サリチルアルデヒドとカリウムのキレート化合物等の金属系化合物をあげることができる。また、下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩も好適である。」
「【0057】本発明の多液型熱硬化性樹脂組成物から硬化樹脂成形物を製造するにあたっては、上記各反応成分及び硬化触媒を、A液(第1成分)としてポリイソシアネート化合物(a)の液状物、B液(第2成分)としてポリオール化合物(b)、弾性エポキシ化合物(c)及び硬化触媒(d)の液状混合物、の2種の液状物に分けて、これらを別々に調製、保存し、成形する直前又は成形と同時に両者を急速に混合して所定の型内に注入し、加熱反応硬化せしめるか、あるいは、A液としてポリイソシアネート化合物(a)の液状物、B液の第1液(i)としてポリオール化合物(b)の一部と弾性エポキシ化合物(c)全量との液状混合物、B液の第2液(ii)としてポリオール化合物(b)の残りと硬化触媒(d)との液状混合物の3種の液状物に分け、同様に成形する直前又は成形と同時に、全部を一度に、もしくはあらかじめB(i)液とB(ii)液とを混合してB液とし、これにA液を急速に混合して、所定の型内に注入し加熱反応硬化せしめる方法が、液の貯蔵安定性の面から好ましい。」
「【0066】本発明の組成物は、成形時に各液を混合する点を除き、通常用いられる方法で成形しうる。成形法としては、例えば圧縮成形、注型成形、トランスファー成形(RTM)、真空成形、遠心成形、射出成形、反応射出成形(RIM)及びストラクチェラルRIM(S-RIM)等があげられる。これらの中でもトランスファー成形(RTM)、反射射出成形(RIM)及びS-RIM法が好ましく用いられる。【0067】本発明の多液型熱硬化性樹脂組成物を構成する一方又は両方の液に、必要に応じ熱可塑性ポリマーの繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維状補強材、各種フィラー、充填材、顔料、着色剤、酸化安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を含有することができる。また、繊維状補強材を使用する場合、短繊維又は長繊維からなる繊維補強材を必要に応じて織物、マット等の形にして成形用の型内にあらかじめ挿入しておき、その上に本発明の組成物を適用することができる。このような場合において、本発明における各成分の加熱反応は例えば繊維状補強材の存在下に実施されることになり、これら補強材を含有する硬化樹脂成形物すなわち複合材料が得られる。」
「【0076】【実施例1】カルボジイミド変性4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(イソシアネート当量6.90×10-3当量/g)からなるA液を用意した。一方、分子量の異なる2種のポリエーテルポリオールを混合した混合ポリエーテルポリオール(OH当量2.20×10-3当量/g)40部と弾性エポキシ(横浜ゴム製「FEX-0116」エポキシ当量1.52×10-3当量/g)20部とからなるB(i)液を調製した。さらに上記ポリエーテルポリオール(OH当量3.70×10-3当量/g)60部とN,N-ジメチルベンジルアミン0.96部とからなるB(ii)液を調製した。【0077】この3種の液を用い、RTM成形機を利用し、A液200部、B(i)液60部、B(ii)液60部となるように供給し、スタティックミキサーで混合し、直ちに140℃の金型に供給した。30分後に金型より取り出し、180℃で5時間ポストキュアーすることにより、赤褐色~茶褐色の15mm厚の樹脂板を得た。この樹脂板の熱変形温度(HDT)は230℃、ノッチ付アイゾット衝撃強度は7.2kg・cm/cmであった。」
(3)甲3に記載された事項
甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 少なくとも1種のポリイソシアネート化合物(a)よりなるA液と、(β-メチル)グリシジル(メタ)アクリレート(b)及び少なくとも1種の成環触媒(c)よりなるB液との組合せよりなり、A液及び/又はB液に少なくとも1種のラジカル触媒(d)を含有する多液型熱硬化性樹脂組成物。」
「【0045】一方、成環触媒(c)としては、イソシアネート化合物の環化3量化(3環化)触媒及びイソシアネート化合物とエポキシ化合物を反応させてポリオキサゾリドン環を形成する触媒が最も有効であり、第3級アミン系化合物や第4級アンモニウム塩等があげられる。【0046】第3級アミン系触媒の例としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N′-ジメチルピペラジン、N-グリシジル-N,N-ジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピリジン、N,N,N′,N′-テトラグリシジルメチレンジアニリン、1-(N,N-ジグリシジルアミノ)-4-グリシジロキシベンゼン、N,N,N′,N′-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N′,N′-テトラグリシジル-p-キシリレンジアミン等の第3級アミノ化合物;イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;N-メチルモルホリン等のモルホリン誘導体;N,N′,N″-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等のヘキサヒドロ-S-トリアジン類、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の如きジアザビシクロ化合物が例示しうる。」
「【0058】上述の第3級アミンはエポキシ基と共存させ熟成することにより成環触媒としての能力が上がり、硬化反応は非常に速くなる。従って、この触媒を含む組成物は、樹脂液の供給能力が高い場合には、成形のサイクルアップが可能で、好ましい組成物である。これに対し上述の如き第4級アンモニウム塩を用いた組成物では、第3級アミン系触媒を用いた場合より反応が遅く、しかし反応性が安定しているため、樹脂液の供給能力がそれ程高くない装置にも適用が可能であり、また例えばRTMのように硬化速度があまり大きくない方が好ましい場合にも有用である。」
「【0065】2液法の場合、ポリイソシアネート化合物(a)をA液とし、これとは別に(β-メチル)グリシジル(メタ)アクリレート(b)、成環触媒(c)及び必要に応じて加えるポリオール化合物(e)及び/又はポリエポキシ化合物(f)を一緒に混合し溶解せしめたものをB液となし、かつ、これらの少くとも一方にラジカル触媒(d)を含有させたA,B2液を調製し、成形まではA,B各液を分けて保存するのが貯蔵安定性がよいので好ましい。ただしラジカル触媒(d)の種類によっては一部をA液側に溶解した方が貯蔵安定性が好ましく改善される場合もある。このようにA,B2液タイプに分けた場合は、成形直前又は成形中に2液を均一に混合して、反応成形を行うのが好ましい。」
「【0074】なお、硬化に供する上記の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じ、熱可塑性ポリマーの繊維、アラミド繊維、無機繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の繊維状補強材、各種フィラー、エラストマーや充填剤、顔料、着色剤、酸化安定剤、紫外線吸収剤、離型剤さらには熱可塑性ポリマー、ビシクロ化合物、スピロ化合物等の低収縮化剤、エラストマー等を含有することができる。例えば繊維状補強材の場合、上記繊維状補強材を必要に応じて織物、マット等の形にして反応型内にあらかじめ挿入しておき、その上に上記の熱硬化性樹脂組成物を適用することができる。このような場合、各成分の加熱反応は、例えば繊維状補強材の存在下に実施されることになり、熱硬化樹脂はこれらの補強材を含有する樹脂例えば複合材料として得ることができる。【0075】【発明の効果】本発明によれば、室温では液状である熱硬化性樹脂組成物を用いるため、低圧で金型等へ注入でき、さらに補強繊維を用いた場合の含浸性に優れており、またフィラーの充填量を増やしうる等、作業性、取扱性に優れている。しかも反応硬化した樹脂はイソシアネートの環化3量化(3環化)によって形成するイソシアヌレート構造とイソシアネートとエポキシの反応によって形成されるオキサゾリドン環構造を有するため、耐熱性、耐薬品性および機械的特性に優れた成形物を与えることができる。さらにポリオール化合物を加えた場合、反応硬化した樹脂はイソシアネートとヒドロキシ基の反応により形成されるウレタン構造を有し、又、ポリエポキシ化合物を加えた場合、反応硬化した樹脂はイソシアネートとエポキシの反応によって形成されるオキサゾリドン環構造が増加するため、耐熱性及び靭性の如き機械的特性に優れた成形物を与えることができる。」
「【0105】【実施例21】グリシジルメタクリレート350gにベンジルジメチルアミン5.3g、BPOB(表1記載のものと同じ)10.6gを加え溶解した溶液をB液とする。【0106】これと別にカルボジイミド変性4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(イソシアネート当量6.90×10-3当量/g)710gをA液とする。【0107】上記A,B2液を予め真空脱泡し、スタティックミキサーを設置した導入管を通し予め100℃に予熱した38cm×48cm厚み3mmの金型内部に平織りガラスクロス(目付195.6g/m2)を15枚設置した金型中に圧入した。この際必要とした圧力は2.5kg/cm2で本発明の樹脂組成物が低粘度で低圧注入が可能であることがわかった。液注入後20分で脱型し厚さ3mmの全くボイドのない含浸が良好なガラス繊維強化複合材料を得た。この板を180℃で2時間後硬化(ポストキュア)した。」
「【0174】【実施例48~52、比較例3】カルボジイミド変性4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(イソシアネート当量6.90×10-3当量/g)284gをA液とし、これとは別にグリシジルメタクリレート140gに表13に示した各種のポリエポキシ化合物及びN,N′,N″-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン2.1g及び1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン4.2gを加え溶解した溶液を調製し、これをB液とした。【0175】上記A,B2液を予め真空脱泡し、これをスタティックミキサーを設置した導入管を通し、その中で混合しつつ室温(約30℃)の3mm厚の金型に注入した。30分後に金型からとりだし3mm厚の成形板を得た。得られた成形板をさらに150℃で5時間後硬化した。【0176】この成形板を東洋精機製作所製HDT&VSPテスターを用い測定した熱変形温度(HDT)を測定し、その結果を表13に示したが、何れも耐熱性の高い硬化樹脂であることがわかった。【0177】【表13】[図:0001400408000005.jpg]」
(4)甲4に記載された事項
本件特許出願の優先日前に公知となった国際公開第2014/029701号には、次の事項が記載されている(摘記は、その公表公報である甲4により行う。)。
「【特許請求の範囲】【請求項1】ポリイソシアヌレート及びポリウレタンを基剤とし、ポリウレタン及びポリイソシアヌレートで含浸した一つ以上の繊維層を含んでなる繊維複合材料成分であって、前記ポリウレタン及び前記ポリイソシアヌレートが、A)一種以上のポリイソシアネート、続きを表示(全23行)B)一種以上のポリオール、C)一種以上のポリエポキシド、D)一種以上の潜在性触媒、E)任意成分である添加剤、及びF)任意成分である繊維材料からなる反応混合物から得られ、前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が20~500mPas、好ましくは50~400mPas、より好ましくは60~350mPasであり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が10:1~16:1、好ましくは11:1~14:1であり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が2:1~25:1、好ましくは7:1~15:1、最も好ましくは10:1~14:1であり、前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が1.1:1~12:1、好ましくは3:1~10:1、最も好ましくは5:1~7:1である、繊維複合材料成分。【請求項2】請求項1に記載の繊維複合材料成分の製造方法であって、a)A)一種以上のポリイソシアネート、B)一種以上のポリオール、C)一種以上のポリエポキシド、D)一種以上の潜在性触媒、E)任意成分である添加剤、F)任意成分である繊維材料の混合物であって、前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が20~500mPas、好ましくは50~400mPas、より好ましくは60~350mPasであり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が10:1~16:1、好ましくは11:1~14:1であり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が2:1~25:1、好ましくは7:1~15:1、最も好ましくは10:1~14:1であり、前記混合物における成分C)中のエポキシ基の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対するモル比が1.1:1~12:1、好ましくは3:1~10:1、最も好ましくは5:1~7:1である混合物を製造し、b)所望により、最初に繊維材料を型の一方の半分に装填し、c)a)で製造した前記混合物を前記型の中に導入し、工程b)で最初に装填した繊維材料を含浸し、d)工程a)における、又は工程b)における、又は工程a)及びb)の両方における前記混合物中の繊維材料を使用して、前記混合物を50℃~170℃、好ましくは110℃~140℃の温度で硬化させる、方法。」
「【0012】ポリウレタン/ポリイソシアヌレートは、原則的に、オキサゾリジノン基を全く含まない。予想に反して、オキサゾリジノン基が、ポリウレタン/ポリイソシアヌレート中に、僅かな副反応の結果、実際に生じた場合、その含有量は、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートに対して5重量%未満である。オキサゾリジノン基は、ポリイソシアネートがエポキシドと反応した時に生じる。オキサゾリジノン基は、繊維複合材料成分中で分解しない。」
「【0020】好ましいRTM方法(樹脂トランスファー成形)では、繊維材料を型の中に挿入した後、型を、型の反対側の半分で閉じ、型の中を減圧にし、次いで、反応混合物を圧力下で導入する。必要であれば、フローエイド(例えば圧力に対して安定した、ただし樹脂を透過できるマット)と呼ばれるものを、型の半分と繊維材料との間に導入し、これを硬化後に取り出す。」
(5)甲5に記載された事項
甲5には、次の事項が記載されている(摘記は、甲5の訳文により行う。)。
「[図:0001400408000006.jpg]」
(6)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1の「ポリエポキシドであるエポキシド(Baxxores(登録商標)ER5400、ビスフェノールAエポキシド及び反応性希釈剤に基づくエポキシド混合物、172g/eqのエポキシ当量(EEW))」は、ビスフェノールAエポキシド、すなわちビスフェノールAエポキシ樹脂を、反応性希釈剤により希釈した混合物であり、上記ビスフェノールAエポキシドは芳香族エポキシ樹脂であると解されるから、引用発明1の「ビスフェノールAエポキシド」は、「芳香族エポキシ樹脂」である限りにおいて、本件発明1の「液体芳香族エポキシ樹脂」と一致する。
引用発明1の「ISO1:Lupranat(登録商標)M20」(当審注:「Lupranat」は、Lupranateの誤記であると解される。)に関して、甲5には、Lupranate○R M20 Isocyanate」は、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)であり、その外観は液体であることが記載されているから(「TYPICAL PROPERTIES」の「Appearance」)、引用発明1の「ISO1:Lupranat(登録商標)M20」は、本件発明1の「液体芳香族ポリイソシアネート」に相当する。
引用発明1の「Cat1:トリエチレンジアミン、プロピレングリコール中の33%強度溶液」に関して、上記トリエチレンジアミンがポリイソシアネート化合物の3量化(環化)触媒であることは、本件優先日時点の技術常識であるから(甲2の【0044】及び【0045】を参照。)、引用発明1の「Cat1」は、本件発明1の「触媒組成物」に相当する。
そして、引用発明1と同じエポキシド及びイソシアネートを用いた他の実施例に関するものであるが、「エポキシド及びイソシアネートの混合物は、室温で極めて長い時間液体のままであり」(【0083】)との記載を参照すると、引用発明1の「ポリエポキシドであるエポキシド」、「ISO1」及び「Cat1」を混合した「混合物」も液体であると解されるし、当該「混合物」は硬化する前は流動性を有し、液体であると解されるから、引用発明1の「混合物」は本件発明1の「液体反応混合物」に相当する。また、引用発明1の「混合物」は、「エポキシド」であるビスフェノールAエポキシドと「ISO1」であるポリメリックMDIとが反応して「硬化物」になるものであるから、引用発明1の「硬化物」は本件発明1の「硬化ポリマー組成物」に相当するといえる。これらのことから、引用発明1の「混合物を調製し、上記混合物を硬化する」工程は、本件発明1の「硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップ」に相当するといえる。
更に、引用発明1において、「エポキシド」の質量(99.85g)及び「ISO1」の質量(77.4g)、「エポキシド」のエポキシ当量(172g/eq)、「ISO1」のNCO含有量(31.5%)及びNCOの分子量(42g)を基に、「ISO1」のイソシアネート基に対する「エポキシド」のエポキシド基のモル当量比を算出すると、大凡1.0となり、これは本件発明1の「少なくとも0.4となる」を満たすものである。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、「硬化ポリマー組成物の製造方法であって、
(1)液体反応混合物を提供するステップであって、前記液体反応混合物は、
(a)少なくとも1つの芳香族エポキシ樹脂と、
(b)少なくとも1つの液体芳香族ポリイソシアネートと、
(c)触媒組成物と、
とを含んでなり、
イソシアネート基に対するエポキシド基のモル当量比が少なくとも0.4となるような量で、少なくとも1つのポリイソシアネートに対して少なくとも1つのエポキシ樹脂を使用するステップと、
(2)硬化ポリマー組成物を得るように前記反応混合物を硬化させるステップ
とを含む方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。
相違点2:「芳香族エポキシ樹脂」が、本件発明1では「液体」であるのに対して、引用発明1では、「ポリエポキシドであるエポキシド(Baxxores(登録商標)ER5400、ビスフェノールAエポキシド及び反応性希釈剤に基づくエポキシド混合物、172g/eqのエポキシ当量(EEW))」の「ビスフェノールAエポキシド」が、液体であるか不明である点
イ 検討
事案に鑑みて、相違点4から検討する。
(ア)新規性の判断について
まず、引用文献1には、トランスファー成形(RTM)法について記載されておらず、引用発明1がトランスファー成形(RTM)法であるとはいえないから、相違点4は実質的な相違点であり、本件発明1は、引用文献1(甲1)に記載された発明ではない。
(イ)容易想到性(進歩性)の判断について
次に、容易想到性について検討する。
引用文献1には、公知のポリウレタン系の加工時間は最大でも約45分であって大きな表面積の部品の充填のためには短過ぎるため(【0002】)、加工時間が十分に長時間であり、適切な条件下で急速に且つ効率的に硬化する樹脂の製造方法の提供を目的とすることが記載されている(【0009】、【0010】)。
また、引用文献1には、ポリイソシアネートとポリエポキシドを、1,8-ジアザビシクロ-5,4,0-ウンデンセン-7-エン又はその誘導体である触媒システムの存在下で混合して製造される樹脂は、25℃での粘度が45分間でほとんど変化せず(【0018】)、25℃での加工時間が45分より長いものであり(【0028】)、その具体例である実施例I1及びI2は、室温でのオープンタイム(混合後の加工がまだ可能である範囲の時間(【0003】))が24時間超であるのに対して、引用発明1は比較例であって上記オープンタイムが5分であること(表1)がそれぞれ記載されており、これらの記載から、引用発明1は、引用文献1の上記目的を達成する上で好ましい液体反応混合物ではないといえる。
そして、引用文献1には、金型中へ上記混合物を真空注入や加圧注入といった注入(pouring)によって配置することは記載されているものの(【0015】、【0057】)、上述のように、引用発明1は、実施例I1及びI2よりもオープンタイムが短い比較例であり、他に、引用文献1には、引用発明1の液体反応混合物が、注入に適した粘度である等の、当業者が引用発明1を注入等の成形に使用する契機となる記載は見当たらない。
そうすると、引用発明1に係る硬化物の製造方法を、引用文献1の記載に基づき、上記注入による成形とすることが動機付けられるとはいえず、ましてや、引用文献1に明示的に記載されていないトランスファー成形(RTM)法で硬化させることが動機付けられるとはいえない。また、引用文献1(甲1)及び甲2~甲5の記載を見ても、引用発明1において、「トランスファー成形(RTM)法であ」ることが動機付けられるとはいえない。
ウ 申立人の意見について
申立人は、令和5年2月6日提出の意見書において、要するに、甲2には、トランスファー成形(RTM)であり、反応性混合物は反応性の樹脂であることが記載ないし示唆されており、引用文献1(甲1)に記載された発明及び甲2に記載された発明は、ポリイソシアネートとポリエポキシドを含む樹脂に関する発明であって技術分野は共通するし、成型方法としてトランスファー成形(RTM)法は、甲3及び甲4にも記載された本件特許出願の優先日前に周知技術であり、新たな効果を奏するものでもないから、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する。
しかしながら、引用文献1(甲1)及び甲2に記載された発明の技術分野が共通するとしても、引用発明1は、上記イ(イ)で述べたとおり、混合後の加工が可能なオープンタイムが短い比較例であり、引用発明1の「混合物」は注入による成形に適したものとはいえないものであるから、これを甲2に記載のトランスファー成形(RTM)に使用することが動機付けられるとは解せない。
また、樹脂の成型方法としてトランスファー成形(RTM)法が本件特許出願の優先日前に周知技術であるとしても、そのことのみをもって、引用発明1に係る硬化物の製造方法に上記周知技術を適用することが、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
エ 本件発明1の効果について
本件明細書には、「高いガラス転移温度および高い機械的耐久性を有し、したがって自動車部品、特に炭素繊維強化プラスチック成形部品の製造に特に適しているオキサゾリジノンおよびイソシアヌレート架橋ポリマー組成物を生成することが見出された」(【0007】)という効果に加え、「組成物は、好ましくは耐衝撃性改良剤、好ましくは上記のような耐衝撃性改良剤を含有する。耐衝撃性改質剤を追加で使用する場合、K1c値は有意に増加し、意外なことに、Tg値は全く変化しないか、またはわずかしか変化しない。」(【0067】)と記載されている。
そして、特許権者は、審査段階における令和2年2月13日提出の意見書に、次のとおりの実験データを添付し、この実験データは、液体反応混合物が成分(d)に相当するポリプロピレングリコールを含むことにより、臨界応力拡大係数K1cは有意に増加する一方でガラス転移温度Tgはほとんど変化しなかったことを示すことを説明している。
「[図:0001400408000007.jpg]」
一方、引用文献1には、本件発明1によって奏される効果について記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1の効果は、引用文献1の記載から予測し得るとはいえないものである。
オ 小括
したがって、本件発明1は、引用文献1(甲1)に記載された発明でないし、引用文献1(甲1)に記載された発明並びに引用文献1(甲1)及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(7)本件発明2~4、6~9、11~13について
本件発明2~4、6~9、11~13は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(6)で述べたのと同じ理由により、本件発明2~4、6~9、12及び13は、引用文献1(甲1)に記載された発明でないし、本件発明2~4,6~9、11~13は、引用文献1(甲1)に記載された発明並びに引用文献1(甲1)及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(8)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~4、6~9、12及び13は引用文献1(甲1)に記載された発明でないし、本件発明1~4、6~9及び11~13は、引用文献1(甲1)に記載された発明並びに引用文献1(甲1)及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 むすび
したがって、請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
また、本件発明1~4、6~9及び11~13に係る特許は、当審が通知した取消理由及び申立人がした申立理由によっては、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700974