特許異議申立
2021-700948
紙製の蓋及び紙製の蓋の製造方法
- 審判番号
- 2021-700948
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-556580
- 登録番号
- 6895601
- 請求日
- 2021年10月04日
- 審決日
- 2023年02月14日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】山田 菊夫
- 【権利者代理人】片山 修平
- 【異議申立人】寺尾 康典
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 内田 博之
- 審判官 八木 誠
- 分類
- P1651.121-ZDA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6895601号発明「紙製の蓋及び紙製の蓋の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6895601号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第6895601号の請求項1、6、7、12及び13に係る特許を取り消す。
特許第6895601号の請求項2~5、8~10に係る特許を維持する。
特許第6895601号の請求項11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6895601号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2019年2月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年11月16日(US)米国 2018年11月23日(US)米国 2018年11月29日(US)米国
2018年12月3日(US)米国 2018年12月3日(JP)日本
2018年12月6日(US)米国 2018年12月14日(US)米国 2018年12月18日(US)米国 2018年12月26日(US)米国 2018年12月28日(US)米国 2018年12月31日(US)米国 2019年1月9日(US)米国 2019年1月11日(JP)日本 2019年1月18日(US)米国 2019年1月25日(US)米国 2019年1月28日(US)米国)を国際出願日としたものであって、令和3年6月10日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、特許異議申立人寺尾康典(以下、「異議申立人」という。)により、請求項1ないし13に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年10月 4日 特許異議の申立て
令和4年 3月16日付け 取消理由通知
令和4年 5月19日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 6月 3日 特許権者による令和4年5月19日の訂正請求書を補正対象とする手続補正書の提出
令和4年 7月29日 異議申立人による意見書の提出
令和4年 9月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和4年12月 5日 特許権者による意見書の提出
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和4年6月3日の手続補正書によって補正された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態である、紙製の蓋。」
との記載を、
「前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態であり、
前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である、紙製の蓋。」
に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~10、12及び13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(3)一群の請求項
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~13〕に対して請求されたものである。
2.訂正の要件
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「蓋本体部」に、「前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」との限定を付したものであり、特許請求の範囲を減縮するものといえる。
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1は、上記アのとおり、訂正前の請求項1に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
願書に添付した明細書には、
「【0089】
紙製の蓋1の寸法の一例を挙げると、直径が70mm~140mm程度であり、紙製の蓋1の全体の高さH1が12mm~20mmであり、カール部9から天蓋部2までの周壁の高さH2が3.5mm~12mmである。なお、紙製の蓋1の容量にもよるが周壁の高さH2は、飲みやすさの観点から6mm~9mmが好ましく、全体の高さH1の36%~53%程度の高さとすることでバランスのよい紙製の蓋1とすることができる。・・・(省略)・・・」
と記載されており、紙製の蓋1の高さH1「12mm~20mm」において、カール部9から天蓋部2までの周壁の高さH2「6mm~9mm」が記載されており、6/20=0.3かつ9/12=0.75であるから、H2/H1は、30%~75%が記載されたに等しい数値範囲といえる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でする訂正である。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものといえる。
よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2は、請求項11を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
訂正事項2は、請求項11を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内でする訂正である。
3.小括
以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件訂正により、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正による訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される次のとおりである。
「【請求項1】
開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部と、
前記蓋本体部に設けられ、前記係合部の上方に位置する蓋本体部側カール部と、を有し、
前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され、
前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態であり、
前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である、紙製の蓋。
【請求項2】
前記天蓋部は飲み口を備えた請求項1記載の紙製の蓋。
【請求項3】
前記蓋本体部には、前記紙材料と前記紙材料との継ぎ目が形成されており、
前記飲み口は前記継ぎ目と干渉しない位置に設けられている請求項2記載の紙製の蓋。
【請求項4】
前記蓋本体部には、前記蓋本体部側カール部と接続された周壁部が設けられており、
前記周壁部に前記容器の内容物に関連した複数の表示が施された表示部が形成されている請求項2記載の紙製の蓋。
【請求項5】
前記蓋本体部側カール部は変形可能であり、
前記蓋本体部側カール部の変形に基づき、前記複数の表示から前記内容物を識別する請求項4記載の紙製の蓋。
【請求項6】
前記係合部は、前記容器のカール部を変形させて前記カール部に係合する請求項1記載の紙製の蓋。
【請求項7】
前記蓋本体部側カール部の大きさは、前記カール部とは異なる請求項1記載の紙製の蓋。
【請求項8】
前記天蓋部に前記容器内を視認可能な視認部を設けた請求項1記載の紙製の蓋。
【請求項9】
前記飲み口に接合される第1接合部と、前記飲み口を開口可能な摘み部と、を有したシール部を備えた請求項2記載の紙製の蓋。
【請求項10】
前記シール部は、前記天蓋部に接合される第2接合部を有し、
前記第1接合部の接合力が前記第2接合部の接合力よりも大きい請求項9記載の紙製の蓋。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
前記係合部は、円周状の凸部を備えている請求項1記載の紙製の蓋。
【請求項13】
前記蓋本体部の前記紙材料は、生分解性のフィルムがコートされている請求項1記載の紙製の蓋。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由
当審が令和4年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)
本件特許の請求項1、6、7、12及び13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1~6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである。
記
(1)引用文献1:実願平3-96272号(実開平5-37128号)のCD-ROM(異議申立人の甲第6号証。)
(2)引用文献2:意匠登録第1221905号公報(異議申立人の甲第8号証)
(3)引用文献3:特開2010-247837号公報(異議申立人の甲第3号証。)
(4)引用文献4:特開2009-280238号公報(異議申立人の甲第10号証。)
(5)引用文献5:特開2003-11287号公報
(6)引用文献6:特開2003-40242号公報
第5 当審の判断
1.引用文献
(1)引用文献1・引用発明1
ア「【0005】
第2ボックス2は、第1ボックス1と同様に、上方に向かって径が連続的に拡大したテーパー状胴部体2aと、下向き屈曲縁部21がテーパー状胴部体2aの下部に形成した立上り屈曲部20に嵌まり圧着された底部体2bを有している。前記テーパー状胴部体2aは第1ボックス1のテーパー状胴部体1aとほぼ同等のテーパ角度を有し、所要範囲が嵌合用テーパ胴部13に内嵌するとともに底面(下縁部)22が係止用段部12に接している。テーパー状胴部体2aの上端外側にはカール部24が形成されている。
蓋体3は紙管などで作られたストレートな胴部3aの上端に内向きカール部31を形成し、この内向きカール部31に蓋片3bを取付けたもので、胴部3aは前記第2ボックス2のカール部24に外嵌し得る内径を有している。」
イ「【0007】
第3実施例は、第2ボックス2を第1ボックス1に外嵌することでスタックする方式としている。このため、第2ボックス2のテーパー状胴部体2aの径を第1ボックス1のテーパー状胴部体1aよりも大きく構成し、第2ボックス2のテーパー状胴部体2a下部に設けた立上り屈曲部20に底部体1bの下向き屈曲縁部21を嵌装し圧着した凹入底部25の内径を、第1ボックス1のテーパー状胴部体上端外側に形成したカール部14の外径よりもわずか小さな寸法に構成し、第2ボックス2の凹入底部25をカール部14外側に押し込むことによって、カール部14の弾性復元力で密接させるようにしている。
なお、実施例では、第1・第2ボックス1,2および蓋体3は真円形断面であるが、長円形、楕円形などでもよいし、矩形状ないしこれに類する断面であってもよいのは勿論である。
さらに、図2の仮想線で示すように、テーパー状胴部体1aやテーパー状胴部体2aの開口径よりも小さな寸法の仕切り片6を装入すれば、周縁が胴部体のテーパー角度によって係止されるため、簡単に中仕切りを形成することができ、種類の異なる食物を分別して収容することができる。
また、スプーンやフォークなどの飲食用具5は合成樹脂製の収納袋50に収納されているが、これをアタッチメントとして装着するには、図1と図2のように蓋体3の蓋片3bに好ましくは?離紙付きの粘着層32を設けておき、これに収納袋50を貼り付け、あるいは、図3のように第2ボックス2と蓋体胴部3aの空隙に押し込んで保持させてもよい。さらには、図4のように蓋体3のカール部31の一部に切欠き310を設け、この切欠き内に差し込むようにしてもよい。」
ウ 【図2】
[図:0001399315000001.jpg]
エ 【図4】
[図:0001399315000002.jpg]
オ 【図4】から、テーパー状胴部体1a及びテーパー状胴部体2aが上方の開口部に向かって径が連続的に拡大する構成、第1ボックス1の開口部を第2ボックス2のテーパー状胴部体2aの下部の凹入底部25で閉塞した構成、テーパー状胴部体2aの上端にカール部24が形成された構成、底部体2bの外周がテーパー状胴部体2aに囲まれてる構成、凹入底部25の内周が上方に向かって径が連続的に拡大するテーパーを有する構成、及び底部体2bの下向き屈曲縁部21以外の部分は凹入底部25とカール部24の間に設けられている構成が見て取れる。
カ 上記ア、イ、エ及びオから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「開口部と、上方に向かって径が連続的に拡大するテーパー状胴部体1aとカール部14とを有した第1ボックス1に外嵌することでスタックする、紙製のテーパー状胴部体2aと、
テーパー状胴部体2aに外周を囲まれた底部体2bと、を備えた紙製の第2ボックス2であって、
紙製の第2ボックス2は、
テーパー状胴部体2aに設けられ、上方に向かって径が連続的に拡大する内周側のテーパーを有し、第1ボックス1のカール部14の外側から、第1ボックス1のカール部14を押し込んで密接するテーパー状胴部体2aの下部の凹入底部25と、
テーパー状胴部体2aに設けられ、テーパー状胴部体2aの上端に形成されたカール部24と、を有し、
底部体2bの下向き屈曲縁部21は下向きに屈曲されており、凹入底部25に嵌装されて圧着され、
底部体2bの下向き屈曲縁部21以外の部分は凹入底部25とカール部24との間に設けられ、
凹入底部25の内径を、カール部14の外径より小さな寸法に構成し、
第1ボックス1の開口部を閉塞した状態では、第1ボックス1のカール部14が凹入底部25のテーパーの内周側の面に密接した状態である、紙製の第2ボックス2。」
(2) 引用文献2・引用発明2
ア 【平面図】
[図:0001399315000003.jpg]
イ 【正面図】
[図:0001399315000004.jpg]
ウ 【左側面図】
[図:0001399315000005.jpg]
エ 【背面図】
[図:0001399315000006.jpg]
オ 【底面図】
[図:0001399315000007.jpg]
カ 【正面図中央縦断面図】
[図:0001399315000008.jpg]
キ 【斜視図】
[図:0001399315000009.jpg]
ク 引用文献2は、「2個の紙製容器を嵌合してなる容器」(【意匠に係る物品の説明】参照。)にかかるものであるところ、その【平面図】、【正面図】、【左側面図】、【右側面図】、【背面図】、【底面図】、【正面図中央縦断面図】及び【斜視図】(以下、「引用文献2の図面」という。)からは、紙製の下側容器の上端の開口を紙製の上側容器兼蓋によって閉塞した状態のものについて、以下の(ア)~(カ)の構成が見て取れる。
(ア)上端の開口と、上方に向かって径が拡大するテーパーと、上端の外周のカール部とを有した下側容器の構成。
(イ)下側容器に嵌合するように、紙製のテーパー状の側壁部と、テーパー状の側壁部に外周側を囲まれた状態の底部と、を備えた紙製の上側容器兼蓋の構成。
(ウ)紙製の上側容器兼蓋は、
テーパー状の側壁部の下側に設けられ、上方に向かって径が拡大するテーパー部を有し、下側容器のカール部の外側から下側容器のカール部に係合する部分と、
テーパー状の側壁部の上側に設けられる上側容器兼蓋のカール部と、を有する構成。
(エ)紙製の上側容器兼蓋の底部の外周は、下側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた部分はテーパー状の側壁部に接合されている構成。
(オ)紙製の上側容器兼蓋の底部の、折り曲げられた部分以外の部分は、前記係合する部分より上側に設けられるとともに、上側容器兼蓋のカール部より下側に設けられる構成。
(カ)テーパー状の側壁部の、前記係合する部分の下端の内径の寸法は、下側容器のカール部の外径よりも小さく形成され、下側容器の上端の開口を上側容器兼蓋によって閉塞した状態では、下側容器のカール部が前記係合する部分のテーパー部の内周面のテーパー状の部分に接触した状態である構成。
したがって、引用文献2の図面には、紙製の下側容器と紙製の上側容器兼蓋に関する発明として、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明2]
「上端の開口と、上方に向かって径が拡大するテーパーと、上端の外周のカール部とを有した下側容器に嵌合するように、紙製のテーパー状の側壁部と、
テーパー状の側壁部に外周側を囲まれた状態の底部と、を備えた紙製の上側容器兼蓋であって、
紙製の上側容器兼蓋は、
テーパー状の側壁部の下側に設けられ、上方に向かって径が拡大するテーパー部を有し、下側容器のカール部の外側から下側容器のカール部に係合する部分と、
テーパー状の側壁部の上側に設けられる上側容器兼蓋のカール部と、を有し、
上側容器兼蓋の底部の外周は、下側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた部分はテーパー状の側壁部に接合され、
上側容器兼蓋の底部の、折り曲げられた部分以外の部分は、前記係合する部分より上側に設けられるとともに、上側容器兼蓋のカール部より下側に設けられ、
テーパー状の側壁部の、前記係合する部分の下端の内径の寸法は、下側容器のカール部の外径よりも小さく形成され、下側容器の上端の開口を上側容器兼蓋によって閉塞した状態では、下側容器のカール部が前記係合する部分のテーパー部の内周面のテーパー状の部分に接触した状態である、紙製の上側容器兼蓋。」
2.本件発明1について
(1)引用発明1との対比、検討
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「開口部」は、本件発明1の「開口部」に相当し、以下同様に、
「上方に向かって径が連続的に拡大するテーパー状胴部体1a」は「テーパ」に、
「カール部14」は「カール部」に、
「第1ボックス1」は「容器」に、
「外嵌することでスタックする」ことは「取り付けられる」ことに、
「紙製」であることは「紙材料を有」することに、
「テーパー状胴部体2a」は「蓋本体部」に、
「底部体2b」は「天蓋部」に、
「内周側のテーパー」は「テーパー状胴部体1a」と同じ「上方に向かって径が連続的に拡大する」向きのテーパーであるから、「容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部」に、
「カール部14を押し込まれ密接する」ことは「係合する」ことに、
「凹入底部25」は「係合部」に、
「テーパー状胴部体2aの上端に形成され」ることは「係合部の上方に位置する」ことに
「カール部24」は「蓋本体部側カール部」に、
「底部体2bの下向き屈曲縁部21」は「天蓋部の外周」に、
「下向きに屈曲され」ることは「蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ」ることに、
「下向き屈曲縁部21」が「テーパー状胴部体2a」の「凹入底部25に嵌装されて圧着され」ることは「折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され」ることに、
「底部体2bの下向き屈曲縁部21以外の部分」は「天蓋部の外周以外の部分」に、
「凹入底部25とカール部24の間」は「前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間」に、
「第1ボックス1の開口部を閉塞した状態」は「容器の開口部を閉塞した状態」に、
「第1ボックス1のカール部14が凹入底部25のテーパーの内周側の面に密接した状態」は「前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1の「紙製の第2ボックス2」は、スタックした状態では第1ボックス1に対して蓋となっていることが明らかであるから、本件発明1の「紙製の蓋」に相当する。
また、引用発明1において「凹入底部25」は「上方に向かって径が連続的に拡大する内周側のテーパー」を有しており、また、引用発明1の「凹入底部25」のテーパーの下端は、本件発明1の「テーパ部の先端」に相当するので、引用発明1が、「凹入底部25の内径を、カール部14の外径より小さな寸法」とする構成であれば、「凹入底部25」のテーパーの下端の「内径」も、「カール部14の外径より小さな寸法」となることから、この構成は本件発明1の「前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され」る構成に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、
「開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部と、
前記蓋本体部に設けられ、前記係合部の上方に位置する蓋本体部カール部とを有し、
前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され、
前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態である、紙製の蓋。」
の点で一致し、以下の相違点1で相違する。
[相違点1]
本件発明1の蓋は、「前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」のに対し、引用発明1の第2ボックス2は、このような構成を有しない点。
イ 相違点1の検討
上記相違点1について検討する。
引用発明1の第2ボックス2は、第1ボックス1と同様に食品等の内容物を収容することを想定している(引用文献1の段落【0002】や【図4】参照。)ところ、内容物の大きさ(例えば引用文献1の【図2】の副食Bの縦方向の大きさ等参照)によっては、さほど高さがなくても、食品等の内容物を収容することに支障を来さない。
そうであれば、引用発明1において、食物を収容可能な範囲で、内容物を収容する空間の高さ(テーパー状胴部体2aの上端から底部体2bまでの高さ)を相当程度小さくすることで、テーパー状胴部体2aの高さの30~75%とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項といえる。
なお、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項には、飲み口となる構成が蓋に設けられる旨の事項も、蓋のカール部も、蓋のカール部から天蓋部までの周壁の高さを6~9mmとする特定もないので、「飲みやすさの観点から6~9mmが好まし」い(本件の明細書の【0089】参照)とする作用・効果は、本件発明1の発明特定事項からは期待できない。
したがって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、本件発明1に係る特許は取り消すべきものである。
(2)引用発明2との対比、検討
ア 対比
本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「上端の開口」は、本件発明1の「開口部」に相当し、以下同様に、
「上方に向かって径が拡大するテーパー」は「テーパ」に、
「上端の外周のカール部」は「カール部」に、
「下側容器」は「容器」に、
「嵌合する」ことは「取り付けられる」ことに、
「紙製」であることは「紙材料を有」することに、
「テーパー状の側壁部」は「蓋本体部」に、
「外周側」は「外周」に、
「底部」は「天蓋部」に、
「紙製の上側容器兼蓋」は「紙製の蓋」に、それぞれ相当する。
引用発明2の「テーパー部」は下側容器の「テーパー」と同じ「上方に向かって径が拡大する」向きのテーパーであるから、本件発明1の「容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部」に相当する。
引用発明2の「係合する部分」は、本件発明1の「係合する係合部」に相当する。
引用発明2において「下側容器のカール部に係合する部分」は「テーパー状の側壁部の下側に設けられ」ているから、引用発明2の「テーパー状の側壁部の上端に位置する」ことは、本件発明2の「係合部の上方に位置する」ことに相当する。
引用発明2の「上側容器兼蓋のカール部」は、本件発明1の「蓋本体部側カール部」に相当する。
引用発明2の「上側容器兼蓋の底部の外周」は、本件発明1の「天蓋部の外周」に相当する。
引用発明2の「上側容器兼蓋のカール部」は「テーパー状の側壁部の上側に設けられる」から、引用発明2の、上側容器兼蓋の底部の外周が「下側に向けて折り曲げられ」る構成は、本件発明1の天蓋部の外周が「蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ」る構成に相当する。
引用発明2の「折り曲げられた部分はテーパー状の側壁部に接合され」ることは、本件発明1の「折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され」ることに相当する。
引用発明2の「折り曲げられた部分以外の部分」は、本件発明1の「天蓋部の外周以外の部分」に相当する。
引用発明2の「前記係合する部分より上側に設けられるとともに、上側容器兼蓋のカール部より下側に設けられ」ることは、本件発明1の「前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間に設けられ」ることに相当する。
引用発明2の「テーパー状の側壁部の、前記係合する部分の下端の内径の寸法」は、本件発明1の「前記テーパ部の先端の内径の寸法」に相当する。
引用発明2の「下側容器のカール部の外径寄りも小さく形成」することは、本件発明1の「容器のカール部外径よりも小さく形成」することに相当し、以下同様に、
「下側容器の上端の開口を上側容器兼蓋によって閉塞した状態」は「容器の開口部を閉塞した状態」に、
「下側容器のカール部が前記係合する部分のテーパー部の内周面のテーパー状の部分に接触した状態」は「前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、
「開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部と、
前記蓋本体部に設けられ、前記係合部の上方に位置する蓋本体部カール部とを有し、
前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され、
前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態である、紙製の蓋。」
の点で一致し、以下の相違点2で相違する。
[相違点2]
本件発明1の蓋は、「前記蓋本体部の前記反対側の端部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」のに対し、引用発明2の上側容器兼蓋は、このような構成を有しない点。
イ 相違点2の検討
上記相違点2について検討する。
引用発明2の上側容器兼蓋は、包装用の容器の一部であり、内容物を収容することを想定しているところ、内容物の大きさ(例えば引用文献1の【図2】の副食Bの縦方向の大きさ等参照)によっては、さほど高さがなくても、内容物を収容することに支障を来さない。
そうであれば、引用発明2において、食物を収容可能な範囲で、内容物を収容する空間の高さ(テーパー状の側壁部の上端から底部までの高さ)を相当程度小さくすることで、テーパー状の側壁部の高さの30~75%とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項といえる。
なお、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項には、飲み口となる構成が蓋に設けられる旨の事項も、蓋のカール部も、蓋のカール部から天蓋部までの周壁の高さを6~9mmとする特定もないので、「飲みやすさの観点から6~9mmが好まし」い(本件の明細書の段落【0089】参照)とする作用・効果は、本件発明1の発明特定事項からは期待できない。
したがって、本件発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、本件発明1に係る特許は取り消すべきものである。
3.本件発明6について
係合時に引用発明1のカール部14及び引用発明2の下側容器のカール部を変形させることは自明である。
したがって、本件発明6は、引用発明1または2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、本件発明6に係る特許は取り消すべきものである。
4.本件発明7について
引用文献1の【図4】から、上方に向かって径が連続的に拡大するテーパー状胴部体1aの上端の径は下部の凹入底部25の径より大きいこと、テーパー状胴部体1aの上端側の外側に設けられるカール部14の径はテーパー状胴部体1aの上端の径より大きいこと、テーパー状胴部体1aの下部の凹入底部25に係合するカール部24の径は下部の凹入底部25の径より小さいことが読みとれる。そうすると、カール部14の径はカール部24の径より大きいといえるから、カール部14とカール部24の大きさが異なることが理解できる。
同様に、引用文献2の【正面図中央縦断面図】から、引用発明2の下側容器のカール部と上側容器兼蓋のカール部の大きさが異なることが理解できる。
したがって、本件発明7は、引用発明1または2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、本件発明7に係る特許は取り消すべきものである。
5.本件発明12について
引用文献3には、紙蓋1の内周に環状の係合凸部7を設けて容器の開口部のカール部に係合させる構成(段落【0024】、【図1】等参照。)が記載されており、この係合凸部7の構成を、引用発明1の凹入底部25または引用発明2のテーパー状の側壁部の下端を内周側に折り返した部分に適用することに困難性は認められない。
したがって、本件発明12は、引用発明1または2並びに引用文献3に記載された構成に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明12に係る特許は取り消すべきものである。
6.本件発明13について
容器の技術分野において、紙に生分解性の膜をコートすることは周知技術(必要であれば、引用文献4の段落【0055】、引用文献5の段落【0005】、引用文献6の段落【0007】等参照。)であり、引用発明1の紙製の第2ボックス2または引用発明2の紙製の上側容器兼蓋に、当該周知技術を適用することに困難性は認められない。
したがって、本件発明13は、引用発明1または2並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明13に係る特許は取り消すべきものである。
7.特許権者の主張について
(1)特許権者は、令和4年12月5日付け意見書において、上記相違点1、2に係る数値範囲は、蓋の形状に全体的に歪みを生じさせることができ、かつ、側壁を歪ませてもその歪みが蓋に残存しにくくするという観点から、天蓋の位置を基準に基準として蓋本体部側カール部までの距離(距離A)と、天蓋の位置を基準として側壁の下端までの距離(距離B)とのバランスをとったものである旨主張する。
しかしながら、蓋の形状に全体的に歪みを生じさせることができ、かつ、側壁を歪ませてもその歪みが蓋に残存しにくくするという観点から、天蓋の位置を基準に基準として蓋本体部側カール部までの距離(距離A)と側壁の下端までの距離(距離B)との比を決めることは、本件明細書に記載も示唆もされていない。
また、側壁を歪ませてもその歪みが蓋に残存しないかどうかは、蓋の実際の大きさ、蓋を構成する紙の厚さや種類、蓋の側壁の傾斜角度、容器のカール部の大きさや柔軟性等にも大きく依存しており、また、天蓋の位置を基準として蓋本体部側カール部までの距離(距離A)と側壁の下端までの距離(距離B)とのバランスによって決まるといった事項は技術常識に照らしても明らかでなく、上記相違点1、2に係る数値範囲によって、側壁を歪ませてもその歪みが蓋に残存しにくくなるといった効果は直ちには期待できないから、特許権者の上記の主張は採用できない。
8.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)異議申立人は、異議申立書とともに、証拠として上記第4の引用文献1(甲第6号証)及び引用文献2(甲第8号証)の他に、以下の甲第1~5、7、9~12号証を提出し、上記訂正前の請求項2、4、5及び8に係る発明は、甲第1~8号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり、上記訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1~8及び11号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり、上記訂正前の請求項9及び10に係る発明は、甲第1~9号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり、上記訂正前の請求項11に係る発明は、甲第1~8及び12号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである旨主張する。
また、異議申立人は、令和4年7月29日付け意見書において、参考資料1~6を提出し、本件発明2、4、5、8は、甲第1~8号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明3は、甲第1~11号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明9及び10は、甲第1~9号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである旨主張する。
甲第1号証 :特開2006-248530号公報
甲第2号証 :特表2007-522045号公報
甲第3号証 :特開2010-247837号公報
甲第4号証 :実願平2-114600号(実開平4-71610号)のマイクロフィルム
甲第5号証 :実公平7-16597号公報
甲第7号証 :意匠登録第1221728号公報
甲第9号証 :特開2015-67331号公報
甲第10号証:特開2009-280238号公報
甲第11号証:特許第6320384号公報
甲第12号証:特開2011-46450号公報
参考資料1 :実願平1-93260号(実開平3-32063号)のマイクロフィルム
参考資料2 :実公昭52-10679号公報
参考資料3 :米国特許出願公開第2007/0181591号明細書
参考資料4 :特開2011-46450号公報
参考資料5 :米国特許出願公開第2010/0252555号明細書
参考資料6 :特表2007-537940号公報
(2)甲1発明について
甲第1号証の【図2】から、紙製容器50の本体部51の上縁部に、紙製容器50の開口が設けられていることが見て取れるから、甲第1号証の段落【0034】、【0041】~【0044】、【0052】及び【図1】、【図2】、【図5】の記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「円錐状の本体部51の上縁部の開口と円錐状のテーパとカール部52とを有した紙製容器50に装着されるように、紙製蓋16の壁面部33と、
壁面部33に縁部分15aの外側が接触する天蓋部15と、を備えた紙製蓋16であって、
紙製蓋16は、
壁面部33に設けられた蓋カール部33cを有し、
縁部分15aは、下に向けて絞り加工され、絞り加工された縁部分15aが壁面部33に接着される、紙製蓋16であって、
天蓋部15は飲み口となる穴を形成した紙製蓋16。」
(3)甲2発明について
甲第2号証の【図2】から、カップ1は、上端の口と、テーパ状の外皮3を有することが見て取れる。
甲第2号証の段落【0015】~【0017】及び【図1】~【図2】の記載事項から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
「上端の口とテーパ状の外皮3と口ロール5とを有したカップ1に装着されるように、厚紙で作成した枠7と、
周囲が枠7に密封される円板状中心6と、を備えた厚紙で作成した蓋2であって、
厚紙で作成した蓋2は、
枠7の上側の縁に口ロール8を備えた、
厚紙で作成した蓋2。」
(4)甲7発明について
甲第7号証には、引用発明2と同様に、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲7発明]
「上端の開口と、上方に向かって径が拡大するテーパーと、上端の外周のカール部とを有した下側容器に嵌合するように、紙製のテーパー状の側壁部と、
テーパー状の側壁部に外周側を囲まれた状態の底部と、を備えた紙製の上側容器兼蓋であって、
紙製の上側容器兼蓋は、
テーパー状の側壁部の下側に設けられ、上方に向かって径が拡大するテーパー部を有し、下側容器のカール部の外側から下側容器のカール部に係合する部分と、
テーパー状の側壁部の上側に設けられる上側容器兼蓋のカール部と、を有し、
上側容器兼蓋の底部の外周は、下側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた部分はテーパー状の側壁部に接合され、
上側容器兼蓋の底部の、折り曲げられた部分以外の部分は、前記係合する部分より上側に設けられるとともに、上側容器兼蓋のカール部より下側に設けられ、
テーパー状の側壁部の、前記係合する部分の下端の内径の寸法は、下側容器のカール部の外径よりも小さく形成され、下側容器の上端の開口を上側容器兼蓋によって閉塞した状態では、下側容器のカール部が前記係合する部分のテーパー部の内周面のテーパー状の部分に接触した状態である、紙製の上側容器兼蓋。」
(5)甲1~5号証と、本件発明2~5及び8~10について(進歩性)
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「円錐状の本体部51の上縁部の開口」は、本件発明2の「開口部」に相当し、以下同様に、
「円錐状のテーパ」は「テーパ」に、
「カール部52」は「容器」の「カール部」に、
「紙製容器50」は「容器」に、
「装着される」ことは「取り付けられる」ことに、
「紙製」であることは「紙材料を有」することに、
「紙製蓋16の壁面部33」は「蓋本体部」に、
「天蓋部15」は「天蓋部」に、
「紙製蓋16」は「紙製の蓋」に、
「蓋カール部33c」は「蓋本体部側カール部」に
「天蓋部15」の「縁部分15a」は「天蓋部」の「外周」に、
「縁部分15aの外側が接触する」ことは「外周を囲まれた状態」に、
「下に向けて絞り加工され」ることは「容器に取り付けられる側の端部側に向けて折り曲げられ」ることに、
「接着され」ることは「接合され」ることに、
「飲み口となる穴を形成」することは「飲み口を備え」ることに、
それぞれ相当する。
したがって、本件発明2と甲1発明とは、
「開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられた蓋本体部側カール部、を有し、
前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合される、紙製の蓋であって、
天蓋部は飲み口を備えた紙製の蓋。」
の点で一致し、以下の相違点3で相違すると認められる。
[相違点3]
本件発明2は「前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部」を有し、
「蓋本体部側カール部」が「前記係合部の上方に位置する」構成であり、
「前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態であり、
前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」のに対し、甲1発明は、このような構成を有しない点。
次に、相違点3について検討する。
甲1発明は紙製蓋16の壁面部33の外側側面を、紙製容器50の上縁部の開口の内側面に装着する構成を前提としており、容器の開口のカール部の外側に紙製蓋16を装着することは想定されておらず、仮に甲第2~5号証に、相違点3に係る本件発明2の構成の一部と同様の、容器の開口のカール部の外側に蓋を係合することに関する発明が記載されていたとしても、当該発明を組み合わせることに阻害要因があるといえるから、当業者といえども、甲1発明及び甲第2~5号証に記載された発明の構成から上記相違点3に係る本件発明の構成に至ることはできない。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲第2~5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
そして、本件発明3~5、9及び10は、本件発明2に係る全ての構成を含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記のとおり本件発明2について検討したのと同様に、本件発明3~5、9及び10は、甲1発明及び甲2~5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
次に、本件発明8と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「円錐状の本体部51の上縁部の開口」は、本件発明8の「開口部」に相当し、以下同様に、
「円錐状のテーパ」は「テーパ」に、
「カール部52」は「容器」の「カール部」に、
「紙製容器50」は「容器」に、
「装着される」ことは「取り付けられる」ことに、
「紙製」であることは「紙材料を有」することに、
「紙製蓋16の壁面部33」は「蓋本体部」に、
「天蓋部15」は「天蓋部」に、
「紙製蓋16」は「紙製の蓋」に、
「蓋カール部33c」は「蓋本体部側カール部」に
「天蓋部15」の「縁部分15a」は「天蓋部」の「外周」に、
「縁部分15aの外側が接触する」ことは「外周を囲まれた状態」に、
「下に向けて絞り加工され」ることは「容器に取り付けられる側の端部側に向けて折り曲げられ」ることに、
「接着され」ることは「接合され」ることに、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「飲み口となる穴を形成」した構成は、その穴を通して紙製容器50の内部を視認できることが自明であるから、本件発明8の「容器内を視認可能な視認部を設けた」構成に相当する。
したがって、本件発明8と甲1発明とは、
「開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられた蓋本体部側カール部、を有し、
前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合される、紙製の蓋であって、
天蓋部は容器内を視認可能な視認部を設けた飲み口を備えた紙製の蓋。」
の点で一致し、以下の相違点4で相違すると認められる。
[相違点4]
本件発明8は「前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部」を有し、
「蓋本体部側カール部」が「前記係合部の上方に位置する」構成であり、
「前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態であり、
前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」のに対し、甲1発明は、このような構成を有しない点。
上記相違点4について検討すると、上記相違点3と実質的に同様の内容であり、その判断についても同様である。
したがって、本件発明8は、甲1発明及び甲第2~5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
次に、本件発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「上端の口」は、本件発明の「開口部」に相当し、以下同様に、
「テーパ状の外皮3」は「テーパ」に、
「口ロール5」は「容器」の「カール部」に、
「カップ1」は「容器」に、
「装着される」ことは「取り付けられる」ことに、
「厚紙で作成した」ことは「紙材料を有」することに、
「枠7」は「蓋本体部」に、
「周囲が枠7に密封される」ことは「蓋本体部」に「外周を囲まれた状態」に、
「円板状中心6」は「天蓋部」に、
「厚紙で作成した蓋2」は「紙製の蓋」に、
「口ロール8」は「蓋本体部側カール部」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明2と甲2発明とは、
「開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられる蓋本体部側カール部を有する、
紙製の蓋。」
の点で一致し、以下の相違点5及び6で相違すると認められる。
[相違点5]
本件発明2は「前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部」を有し、
「蓋本体部側カール部」は「係合部の上方に位置する」ものであり、
「前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され、
前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態であり、
前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」のに対し、甲2発明は、このような構成を有しない点。
[相違点6]
本件発明2は「前記天蓋部に前記容器内を視認可能な視認部を設けた」のに対し、甲2発明は、このような構成を有しない点。
上記相違点5について検討すると、甲2発明は蓋2がカップ1の内面に保持される構成を前提としており、カップ1の上端の口ロール5の外側に蓋2が保持される構成は想定されていない。
したがって、仮に甲第1、3~5号証に、相違点5に係る本件発明2の構成の一部と同様の、容器の開口のカール部の外側に蓋を係合することに関する発明が記載されていたとしても、甲2発明には当該発明を採用することに阻害要因があるといえるから、当業者といえども、甲2発明及び甲第3~5号証に移載された発明の構成から上記相違点5に係る本件発明2の構成に至ることはできない。
したがって、上記相違点6について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明及び甲第1、3~5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
そして、本件発明3~5、9及び10は、本件発明2に係る全ての構成を含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記のとおり本件発明2について検討したのと同様に、本件発明3~5、9及び10は、甲2発明及び甲1、3~5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
次に、本件発明8と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「上端の口」は、本件発明8の「開口部」に相当し、以下同様に、
「テーパ状の外皮3」は「テーパ」に、
「口ロール5」は「容器」の「カール部」に、
「カップ1」は「容器」に、
「装着される」ことは「取り付けられる」ことに、
「厚紙で作成した」ことは「紙材料を有」することに、
「枠7」は「蓋本体部」に、
「周囲が枠7に密封される」ことは「蓋本体部」に「外周を囲まれた状態」に、
「円板状中心6」は「天蓋部」に、
「厚紙で作成した蓋2」は「紙製の蓋」に、
「口ロール8」は「蓋本体部側カール部」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明8と甲2発明とは、
「開口部とテーパとカール部とを有した容器に取り付けられるように、紙材料を有した蓋本体部と、
前記蓋本体部に外周を囲まれた状態の天蓋部と、を備えた紙製の蓋であって、
前記紙製の蓋は、
前記蓋本体部に設けられる蓋本体部側カール部を有する、
紙製の蓋。」
の点で一致し、以下の相違点7及び8で相違すると認められる。
[相違点7]
本件発明8は「前記蓋本体部に設けられ、前記容器のテーパの向きと同じ向きのテーパ部を有し、前記容器のカール部の外側から前記容器のカール部に係合する係合部」を有し、
「蓋本体部側カール部」は「係合部の上方に位置する」ものであり、
「前記天蓋部の外周は、前記蓋本体部側カール部とは反対側に向けて折り曲げられ、折り曲げられた箇所が前記蓋本体部に接合され、
前記天蓋部の外周以外の部分は、前記係合部と前記蓋本体部側カール部との間に設けられ、
前記テーパ部の先端の内径の寸法は、前記容器のカール部外径よりも小さく形成され、前記容器の開口部を閉塞した状態では、前記容器の前記カール部が前記係合部の前記テーパ部内面側のテーパ状部に接触した状態であり、
前記蓋本体部側カール部から前記天蓋部までの高さは、前記蓋本体部の高さの30~75%である」のに対し、甲2発明は、このような構成を有しない点。
[相違点8]
本件発明8は「前記天蓋部に前記容器内を視認可能な視認部を設けた」のに対し、甲2発明は、このような構成を有しない点。
上記相違点7について検討すると、上記相違点5と実質的に同様の内容であり、その判断についても同様である。
したがって、上記相違点8について検討するまでもなく、本件発明8は、甲2発明及び甲第1、3~5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
(6)引用発明1、2及び甲7発明と、本件発明2~5及び8~10について(進歩性)
本件発明2について検討する。
引用発明1は、持ち帰り用弁当箱用の「紙製の第2ボックス2」であり、引用発明2及び甲7発明は、包装用容器の「上側容器」であり、いずれも飲み口を設けるという課題がないため、甲第1号証の図5に、飲み口となる切り込み線15cを形成した天蓋部15(紙製蓋16)の構成が開示されており、同様の構成が他の証拠に記載されているとしても、当該構成を引用発明1、引用発明2又は甲7発明に適用する動機付けはないから、本件発明2は、引用発明1、引用発明2又は甲7発明並びに甲第1号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
次に、本件発明3~5、9及び10について検討する。
本件発明3~5、9及び10は、少なくとも本件発明2に係る全ての構成を含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記のとおり本件発明2について検討したのと同様に、本件発明3~5、9及び10は、引用発明1、引用発明2又は甲7発明並びに甲第1~12号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
次に、本件発明8について検討する。
引用発明1は、持ち帰り用弁当箱用の「紙製の第2ボックス2」であり、引用発明2及び甲7発明は、包装用容器の「上側容器」であり、いずれも上下の容器を重ねたまま、上側の容器の底を通して下側の容器の内容物を視認する状況は想定されず、甲第1号証に、図16(a)の円形状の窓部18を設ける構成や、段落【0054】の透明の樹脂シートを設ける構成が開示され、同様の構成が他の証拠に記載されているとしても、当該構成を引用発明1、引用発明2又は甲7発明に適用することが容易であるとは認められないから、本件発明8は、引用発明1、引用発明2又は甲7発明並びに甲第1号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(7)小括
本件発明2~5及び8~10は、甲第1~12号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1、6、7、12及び13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消すべきものである。
また、本件請求項2~5及び8~10に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項2~5及び8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件の請求項11は、本件訂正の請求により削除されたため、異議申立人による特許異議の申立てにおける請求項11に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700948