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特許異議申立

2021-700932

歯科用交換部品の熱処理を行う誘導炉と方法

審判番号
2021-700932
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-544346
登録番号
6843878
請求日
2021年09月17日
審決日
2022年10月04日
公報発行日
2023年01月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
  • 【権利者代理人】高岡 亮一
  • 【権利者代理人】小田 直
  • 【権利者代理人】高橋 香元
  • 【異議申立人】藤井 正剛
  • 【異議申立人代理人】永田 元昭
審判長/審判官
  • 審判長 内藤 真徳
  • 審判官 平瀬 知明
  • 審判官 安井 寿儀
分類
P1651.121-YAA(A61C) / P1651.537-YAA(A61C) / P1651.55 -YAA(A61C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6843878号発明「歯科用交換部品の熱処理を行う誘導炉と方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6843878号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 特許第6843878号の請求項13~18に係る特許を維持する。 特許第6843878号の請求項1~12、19に係る特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6843878号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)2月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年2月24日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特許出願であって、令和3年2月26日にその特許権の設定登録がされ、令和3年3月17日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和3年9月17日に特許異議申立人 藤井 正剛(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~19)がされ、令和3年12月23日付けで取消理由が通知され、令和4年4月5日に特許権者 シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(以下「特許権者」という。)より訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたものである。 なお、本件訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、異議申立人に対し、令和4年6月7日付けで通知書を通知して、意見書を提出する機会を与えたが、異議申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求は、令和4年4月5日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正後の請求項1~19について訂正を求めるものであって、その内容は、以下のとおりである(以下、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。下線は、訂正箇所として特許権者が付したものを当審で採用した。)。 なお、本件訂正請求は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~19〕について請求するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1~12、及び19を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項13を 「誘導炉(1)を用いて歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法であって、前記誘導炉(1)は、誘導コイル(2)と、輻射ヒータ(3)と、断熱層(4)と、炉室(5)と、炉扉(10)と、を含み、前記誘導炉(1)が、液体冷却システムを備えた冷却システム(17)を有し、 前記誘導炉(1)は、前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段を備え、かつ/または 前記誘導炉(1)は、前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段を備える誘導炉(1)であり、 前記冷却システム(17)が前記誘導コイル(2)を冷却し、およびそれによって前記誘導コイル(2)に隣接して配置される前記輻射ヒータ(3)を冷却するので、前記炉室(5)の内部温度が前記冷却システム(17)によって制御されることを特徴とし、 前記炉扉(10)が閉じられているときの加熱段階(35)において、前記炉室(5)の内部温度が30℃/分~300℃/分の間の設定加熱速度で上昇し、前記炉扉(10)が閉じられているときの冷却段階(37)において、前記炉室(5)の前記内部温度が30℃/分~200℃/分の間の設定冷却速度(37)で減少するように、前記炉室(5)の前記内部温度が、前記冷却システム(17)の冷却制御によって制御されることを特徴とし、 適切な温度プロファイルが、前記歯科用交換部品(7)の公知の幾何学的パラメータおよび前記歯科用交換部品(7)の所望の色を用いてコンピュータによって自動的に決定されるか、または適切な温度プロファイルが、データベースからの広範な温度プロファイルから選択され、前記温度プロファイルが、特定の加熱速度を有する加熱段階(35)と、特定の保持温度(36)を有する保持段階と、前記炉扉が閉じられているときの特定の冷却速度を有する第1冷却段階(10)と、前記炉扉(10)が開いているときの第2冷却段階であって、始まりが前記炉扉(10)の開放温度(57)によって決定される、第2冷却段階とを含み、適切な加熱速度または冷却速度が、前記歯科用交換部品(7)の既知の幾何学的パラメータを用いて導かれ、前記冷却システム(17)の前記冷却制御が、前記所望の前記加熱速度または前記冷却速度を達成するように制御されることを特徴とする、方法。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項14を 「誘導炉(1)を用いて歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法であって、前記誘導炉(1)は、誘導コイル(2)と、輻射ヒータ(3)と、断熱層(4)と、炉室(5)と、炉扉(10)と、を含み、前記誘導炉(1)が、液体冷却システムを備えた冷却システム(17)を有し、 前記誘導炉(1)は、前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段を備え、かつ/または 前記誘導炉(1)は、前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段を備える誘導炉(1)であり、 前記冷却システム(17)が前記誘導コイル(2)を冷却し、およびそれによって前記誘導コイル(2)に隣接して配置される前記輻射ヒータ(3)を冷却するので、前記炉室(5)の内部温度が前記冷却システム(17)によって制御されることを特徴とし、 前記炉扉(10)は、設定された開放温度(57)で開放され、前記開放温度(57)が、前記歯科用交換部品(7)の所望の色の関数として設定されることを特徴とする、方法。」に訂正する。 請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15ないし18も、同様に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項1~12及び19を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、明らかである。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項13が、請求項11又は12の記載を引用するとともに、その請求項11又は12がそれぞれ請求項10又は11の記載を引用し、その請求項10が請求項1~9のいずれか1項の記載を引用するものであったところ、請求項1、10及び11の発明特定事項を全て備えるものに限定するとともに、訂正前の請求項12の発明特定事項を備えない独立請求項とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とするものである。 また、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、明らかである。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項14が、請求項10~13のいずれか1項の記載を引用するとともに、その請求項13が請求項11又は12の記載を引用し、その請求項11又は12がそれぞれ請求項10又は11の記載を引用し、その請求項10が請求項1~9のいずれか1項の記載を引用するものであったところ、請求項1及び10の発明特定事項を全て備えるものに限定するとともに、訂正前の請求項13の発明特定事項を備えない独立請求項とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とするものである。 また、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、明らかである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項13ないし18に係る発明(以下、「本件特許13」ないし「本件特許18」といい、これらを総称して「本件発明」という場合がある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項13ないし18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 誘導炉(1)を用いて歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法であって、前記誘導炉(1)は、誘導コイル(2)と、輻射ヒータ(3)と、断熱層(4)と、炉室(5)と、炉扉(10)と、を含み、前記誘導炉(1)が、液体冷却システムを備えた冷却システム(17)を有し、 前記誘導炉(1)は、前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段を備え、かつ/または 前記誘導炉(1)は、前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段を備える誘導炉(1)であり、 前記冷却システム(17)が前記誘導コイル(2)を冷却し、およびそれによって前記誘導コイル(2)に隣接して配置される前記輻射ヒータ(3)を冷却するので、前記炉室(5)の内部温度が前記冷却システム(17)によって制御されることを特徴とし、 前記炉扉(10)が閉じられているときの加熱段階(35)において、前記炉室(5)の内部温度が30℃/分~300℃/分の間の設定加熱速度で上昇し、前記炉扉(10)が閉じられているときの冷却段階(37)において、前記炉室(5)の前記内部温度が30℃/分~200℃/分の間の設定冷却速度(37)で減少するように、前記炉室(5)の前記内部温度が、前記冷却システム(17)の冷却制御によって制御されることを特徴とし、 適切な温度プロファイルが、前記歯科用交換部品(7)の公知の幾何学的パラメータおよび前記歯科用交換部品(7)の所望の色を用いてコンピュータによって自動的に決定されるか、または適切な温度プロファイルが、データベースからの広範な温度プロファイルから選択され、前記温度プロファイルが、特定の加熱速度を有する加熱段階(35)と、特定の保持温度(36)を有する保持段階と、前記炉扉が閉じられているときの特定の冷却速度を有する第1冷却段階(10)と、前記炉扉(10)が開いているときの第2冷却段階であって、始まりが前記炉扉(10)の開放温度(57)によって決定される、第2冷却段階とを含み、適切な加熱速度または冷却速度が、前記歯科用交換部品(7)の既知の幾何学的パラメータを用いて導かれ、前記冷却システム(17)の前記冷却制御が、前記所望の前記加熱速度または前記冷却速度を達成するように制御されることを特徴とする、方法。 【請求項14】 誘導炉(1)を用いて歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法であって、前記誘導炉(1)は、誘導コイル(2)と、輻射ヒータ(3)と、断熱層(4)と、炉室(5)と、炉扉(10)と、を含み、前記誘導炉(1)が、液体冷却システムを備えた冷却システム(17)を有し、 前記誘導炉(1)は、前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段を備え、かつ/または 前記誘導炉(1)は、前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段を備える誘導炉(1)であり、 前記冷却システム(17)が前記誘導コイル(2)を冷却し、およびそれによって前記誘導コイル(2)に隣接して配置される前記輻射ヒータ(3)を冷却するので、前記炉室(5)の内部温度が前記冷却システム(17)によって制御されることを特徴とし、 前記炉扉(10)は、設定された開放温度(57)で開放され、前記開放温度(57)が、前記歯科用交換部品(7)の所望の色の関数として設定されることを特徴とする、方法。 【請求項15】 前記歯科用交換部品(7)が、着色剤を含む予め着色された酸化ジルコニウムからなり、淡色着色剤を含む酸化ジルコニウムの前記開放温度(57)が最大で1300℃であり、暗色着色剤を含む酸化ジルコニウムの前記開放温度(57)が最大で1100℃であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記開放温度(57)が最大で700℃であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。 【請求項17】 前記炉扉(10)が前記設定された開放温度(57)で自動的に開放されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。 【請求項18】 前記設定された開放温度(57)において、前記開放温度(57)に達したことを示すために音響信号または視覚信号が生成されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。 【請求項19】 (削除) 」 第4 申立理由の概要 申立理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由1(特許法第29条第2項違反) (1)本件訂正前の請求項1、4~7、9、11~19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正前の請求項2~3、8、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 申立理由2(特許法第36条第6項第1号違反) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記誘導炉(1)は、前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段を備え、かつ/または前記誘導炉(1)は、前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段を備える」というものであり、そのうちの「設定された開放温度(57)」という事項は、温度が上昇した後の開放温度と温度が下降した後の開放温度の双方を含むものの、発明の詳細な説明には、後者しか記載されていないから、本件訂正前の請求項1に係る発明と、これを引用する本件訂正前の請求項2~12に係る発明は、サポート要件を満たさない。 3 申立理由3(特許法第17条の2第3項違反) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記誘導炉(1)は、前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段を備え、かつ/または前記誘導炉(1)は、前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段を備える」というものであり、これらの事項は補正により追加されたものであるが、「設定された開放温度(57)」という事項は、温度が上昇した後の開放温度と温度が下降した後の開放温度の双方を含むものの、出願当初明細書等には後者しか記載されていないから、本件訂正前の請求項1について行われた補正は、新規事項の追加に該当する。 4 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2015/121364号(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開平8-29067号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:米国特許第5496017号明細書(以下「甲3」という。) 甲第4号証:実公昭48-40638号公報(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特開2014-6004号公報(以下「甲5」という。) 甲第6号証:実公昭59-20640号公報(以下「甲6」という。) 甲第7号証:実開昭59-166397号公報(以下「甲7」という。) 甲第8号証:国際公開第2012/057829号(以下「甲8」という。) 甲第9号証:特開2005-136095号公報(以下「甲9」という。) 第5 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~12及び19に係る特許に対して、当審が令和3年12月23日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由2(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [理由1について] (1)発明の詳細な説明に記載された発明の課題について 発明の詳細な説明における、背景技術の欄(【0002】~【0008】)及び段落【0049】を踏まえると、発明の詳細な説明に記載された発明の課題とは、誘導加熱することができる焼結炉(誘導炉)、及び、熱処理のための温度プロファイルが歯科用交換部品の幾何学的パラメータ及び材料パラメータの関数として選択ないし決定される焼結炉が公知技術であること、並びに、温度プロファイルが歯科用交換部品の色に影響を与えるとの知見があることを前提として、制御可能な冷却速度で歯科用交換部品の所望の色を実現するとともに、急速冷却段階を可能にする誘導炉及びその熱処理を行う方法を提供することにある、と認められる。 (2)上記(1)の課題の解決手段について 発明の詳細な説明の記載によれば、段落【0009】、【0055】~【0057】に記載の「誘導炉の構成」のほか、「歯科用交換部品の所望の色を用いて決定又は選択された開放温度」が当該解決手段に含まれるものと認められる。 すなわち、上記「誘導炉の構成」に加えて、「歯科用交換部品の所望の色により設定された開放温度」が特定されることによって、段落【0048】の「炉扉が閉じられているときの特定の冷却速度を有する第1冷却段階と、炉扉が開いているときの第2冷却段階であって、始まりが炉扉の開放温度によって決定される」温度プロファイルが実現されることとなり、ひいては、上記(1)の課題が解決されるものと認められる。 (3)請求項1に記載された発明との対比 上記(2)によれば、請求項1に記載された発明は、上記(2)の「誘導炉の構成」を含むものの、上記(2)の「歯科用交換部品の所望の色を用いて決定又は選択された開放温度」を特定するものではないから、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 よって、請求項1の記載は,サポート要件に適合するものとはいえない。 (4)請求項2~12及び19について 請求項1を引用する請求項2~12及び19(請求項13~18を引用するものは除く。)の記載についても、上記(3)と同様の理由により、サポート要件に適合するものとはいえない。 [理由2について] (1)本件訂正前の請求項1、3~12及び19に係る発明は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 取消理由についての判断 上記第5に示した当審で通知した取消理由の理由1及び2は、本件訂正前の請求項1~12及び19に係る特許を対象とするものであるところ、上記第2に示したとおり、本件訂正により、上記取消理由1及び2の対象であった請求項1~12及び19は、削除された。 したがって、本件訂正により、上記取消理由1及び2は、いずれも解消した。 第7 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由についての判断 当審が上記第5の取消理由通知書において採用しなかった第4の申立理由は、請求項13~18に対する申立理由1(進歩性)及び申立理由3(新規事項)である。なお、請求項1~12及び19に対する申立理由1(進歩性)及び申立理由2は、その対象である請求項が削除された。 1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)各甲号証について ア 甲1に記載された事項及び甲1発明 甲1には、次の事項が記載されている。和訳は、甲第1号証の1(特表2017-505191号公報)による。 (ア)請求項1 [図:0001393069000001.jpg] (訳:焼結材料製部材(15)、詳細には歯科用部材及び特にセラミック製部材(16)のための焼結炉(1)であり、炉室容積(VK)を有する炉室(2)を備え、該炉室(2)の中には、加熱装置(5)と、前記炉室容積(VK)内にあって前記加熱装置(5)により境界されている総容積(VB)を有する収納スペース(9)と、前記総容積(VB)内にある有効容積(VN)を有する使用領域(10)とが配置されており、前記炉室(2)は複数の壁から成る外壁(3)を有し、該外壁には、物体容積(VO)を有する焼結部材(15)を前記収納スペース(9)に入れるために開くようになっている少なくとも1つの壁部分(7)が設けられている焼結炉(1)であって、 前記炉室(2)内の前記加熱装置(5)が、放熱野(13)を有する放熱器(6)を有し、 前記放熱器(6)が、前記収納スペース(9)の少なくとも1つの側面に配置されており、 少なくとも前記収納スペース(9)に配置されている前記有効容積(VN)が、前記放熱器(6)の直接的な前記放熱野(13)の中に配置されており、 前記焼結部材(15)と前記放熱器(6)の最大間隔(d)が、最も大きい場合で、最大有効容積(VN)の二番目に大きい寸法(Dy)に該当することを特徴とする焼結炉(1)。) (イ)第7頁第19行~第8頁第4行 [図:0001393069000002.jpg] [図:0001393069000003.jpg] (訳:図1は、炉室容積VKを有する炉室2を有する焼結炉1の部分図であり、炉室の壁3には、高温の炉室2を周辺から遮断するための絶縁材4が設けられている。炉室2を加熱するため、炉室2の中には2つの放熱器6を備える加熱装置5が配置されている。炉室2は、焼結部材15を炉室2の中に入れるために開くようになっている壁部分7を有し、ここではその壁部分が下方の壁部分、すなわち炉室2の底面になっている。底面7も同様に絶縁材4を有しており、この絶縁材の上には焼結部材15のための下敷き8が置かれ、これはキャリア8とも呼ばれる。部材15を載せるキャリア8としては、セラミック又は耐火金属製の湾曲フレーム又はカップ又は垂直に立てられたピンも考えられる。) (ウ)第8頁第29行~第9頁第9行 [図:0001393069000004.jpg] [図:0001393069000005.jpg] (訳:焼結する物体15の加熱は、例えば抵抗又は誘導によって行うことができる。図2A及び図2Bには、例えば誘導式加熱器6が加熱装置5として図示されている。この加熱器6は、例えばMoSi2又はSiC製のカップ11として、少なくとも1つの周縁コイル12と一緒に誘導加熱のために形成されており、このとき、カップ11の放射、すなわち放熱13が矢印で示されている。この例では、収納スペース9がカップの内部によって形成される。使用領域10も同様にカップ11の内部にあり、このとき、使用領域10の有効容積VNの、収納スペース9の総容積VBに対する比は1:1である。) (エ)第1図 [図:0001393069000006.jpg] (オ)第2A図、及び第2B図 [図:0001393069000007.jpg] [図:0001393069000008.jpg] 上記(ア)~(オ)の記載事項からみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「歯科用部材のための焼結炉であって、炉室容積を有する炉室と、前記炉室の高温の熱を周辺から遮断するための絶縁材を備え、前記炉室の中には、加熱装置と、前記炉室容積内にあって前記加熱装置により境界されている総容積を有する収納スペースと、前記総容積内にある有効容積を有する使用領域とが配置されており、前記炉室が複数の壁から成る外壁を有し、前記外壁には、前記歯科用部材を前記収納スペースに入れるために開くようになっている少なくとも1つの壁部分が設けられており、前記加熱装置が、MoSi2製のカップとして周縁コイルと一緒に誘導加熱のために形成された放熱器を有し、前記少なくとも1つの壁部分が前記炉室の底面になっており、前記底面の上には前記歯科用部材を載せるキャリアが置かれている、焼結炉。」 イ 甲2に記載された事項及び甲2記載事項 (ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、セラミックコンデンサ等の電子部品を構成するセラミック素体を焼成するために用いられる縦形焼成炉に関する。」 (イ)「【0015】次に、シャッタ7を開くことにより、ヒータ6の放射熱が、断熱板9を介して脱脂室5に伝導する。そして、シャッタ7を開く度合いを調整するとともに、断熱板9の上下位置を調整することにより、伝導する熱量を制御でき、匣11上のセラミック素体の温度は、例えば400℃のまま維持される。…」 (ウ)「【0016】このようにして、セラミック素体の脱脂が行われた後、シャッタ7が全開し、続いて断熱板9を支持する支持棒8が上昇移動することにより、断熱板9が焼成室4の上方に移動する。こうして、昇降棒10の進路が空けられたところへ、昇降棒10が上昇移動することにより、セラミック素体が焼成室4に入れられる。…このように、低温の脱脂室5から高温の焼成室4に移されることにより、セラミック素体は急速に加熱され、例えば毎秒5℃ずつ昇温する。そして、セラミック素体は、例えば1300℃のトップ温度まで昇温された後、例えば1000℃まで降温される。」 (エ)「【0017】こうして、本焼成が完了すると、シャッタ7が再び開いて、昇降棒10が下降移動することにより、セラミック素体が再び脱脂室5に入れられる。ここで、…脱脂室5に入れられたセラミック素体は急速に冷却され、例えば100℃以下の低温となり、その後、昇降棒10がさらに下降移動することより、セラミック素体が炉外に出され、焼成が完了するものである。」 上記(ア)~(エ)の記載事項からみて、甲2には、次の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。 「セラミック素体を焼成するための縦形焼成炉において、脱脂室にて、セラミック素体の温度を400℃のまま維持することで脱脂を行った後、焼成室に移動して、毎秒5℃ずつ昇温してセラミック素体を急速に加熱し、1300℃のトップ温度まで昇温した後、1000℃まで降温して本焼成を完了し、その後、再び脱脂室に移動して、100℃以下の低温となるまでセラミック素体を急速に冷却して、焼成を完了すること。」 ウ 甲3に記載された事項及び甲3記載事項 (ア)第2欄第1~5行 「A specific object of the present invention is to provide a kiln or firing and cooling device for ceramic material mounted on a metal support that allows one to perform both firing and subsequent cooling in a controlled atmosphere in a very short time.」 (当審訳:本発明の具体的な目的は、非常に短い時間で制御された雰囲気内で焼成及びその後の冷却を行うことを可能にする金属支持体上に、取り付けられたセラミック材料のための焼成炉又は焼成及び冷却装置を提供することにある。) (イ)第4欄第40~45行 「The cooling chamber 68 is instead surrounded by a metal coil 72 whose ends are connected to a circuit, generally designated by the reference numeral 73, for the forced circulation of a heat-transferring liquid, for example water or diathermic oil, which is passed through a heat sink 74 outside the chamber 68.」 (当審訳:冷却室68は、その端部が、全体的に参照番号73で示される回路に接続された金属コイル72によって囲まれており、この金属コイル72は、チャンバ68外のヒートシンク74を通過する熱伝達液体、例えば水又は透熱性オイルを強制的に循環させるためのものである。) (ウ)第4欄第63行~第5欄第5行 「The door 81 furthermore supports, on the side directed towards the opening 76, one or more part holders, for example a pan 83, on which it is possible to load a dental prosthesis 84 formed by a cast-titanium support and by false teeth made of a ceramic material, which must be fired in the titanium support. More specifically, the pan 83 is fixed at the tip of a stem 85 which is mounted so that it can slide through the door and can be actuated by a double-action jack 86 arranged on the other side of the door and rigidly coupled thereto.」 (当審訳:ドア81はさらに、開口76に向けられた側で、鋳造チタン支持体によって形成された歯科補綴物84を装填することが可能なパン83、及びチタン支持体中で焼成されなければならないセラミック材料から作られた偽歯を支持する。具体的には、パン83は、ドアを介してスライド可能に装着されたステム85の先端に固定され、ドアの他方の側に配置された複動ジャッキ86によって作動可能であり、これに剛結合されている。) (エ)第5欄第48~50行 「At this point the forced circulation of heat-transferring fluid (diathermic oil) through the cooling system 73, and thus through the coil 72, is activated.」 (当審訳:この点で、冷却システム73を介して、伝熱流体(透熱性オイル)を強制的に循環させ、コイル72を通過させる。) (オ)第5欄第54~61行 「Cooling can be total or partial, i.e. below the oxidation temperature of titanium, which is approximately 250℃. Once that has been achieved, the forced circulation of oil through the system 73 is interrupted and the jacks 77 and 78 are activated, moving the door 81 into the open position, where the prosthesis 84 can be easily recovered and a new loading, firing and cooling cycle can begin.」 (当審訳:冷却は、全体的であっても部分的であってもよく、すなわち、チタンの酸化温度である約250℃以下であり、これが達成されると、システム73を通るオイルの強制循環が中断され、ジャッキ77及び78が作動され、ドア81を開放位置に移動させ、プロテーゼ84を容易に回収することができ、新しいローディング、焼成及び冷却サイクルを開始することができる。) 上記(ア)~(オ)の記載事項からみて、甲3には以下の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。 「歯科補綴物の焼成及び冷却装置において、冷却室を囲う金属コイルに、熱伝達液体を強制的に循環させて通過させる冷却システムを設けるとともに、チタンの酸化温度が達成されると、前記冷却システムを通る前記熱伝達液体の強制循環が中断され、前記装置のドアが開放位置に移動し、前記歯科補綴物を回収すること。」 エ 甲4に記載された事項及び甲4記載事項 (ア)第1欄第17~19行 「本考案は歯科用歯冠補綴物に用いる陶材冠を焼成する場合に使用する歯科用電気炉に関するものであり…。」 (イ)第5欄第20~22行 「(10) 設定時間経過と共に加熱回路が切れて放冷が始まり、設定した温度まで下降した際に焼成台が下降する。」 (ウ)第5欄第28~30行 「必要ある場合には作業終了と同時にブザーが警報するように設備してある。」 (エ)実用新案登録請求の範囲 「焼成温度指示調整と加熱速度調整ボリウムとを連動せしめ、かつ焼成台がリフト中段にまで上昇した時、該位置にけい留する時間および焼成温度にけい留する焼成時間を自動調節するタイマーと加熱回路を連動させ、なお焼成台の炉内上昇により加熱が開始され、加熱停止後一定温度に放冷された時点に焼成台が下降する昇降装置と炉内を真空にするための機構および真空操作時間タイマーおよび、必要に応じて加熱停止を報ずる警報装置とを具備することを特徴とする完全自動歯科用電気炉。」 上記(ア)~(エ)の記載事項からみて、甲4には以下の事項(以下「甲4事項」という。)が記載されていると認められる。 「歯科用歯冠補綴物を焼成する歯科用電気炉において、加熱停止後、一定温度(設定温度)に放冷された時点に焼成台が下降するとともに、必要に応じて加熱停止ないし作業終了をブザーにより報ずること。」 オ 甲5に記載された事項及び甲5記載事項 (ア)「【0014】1.第1の実施形態 図1には、実施形態の誘導加熱炉100の側面透視図(A)と正面透視図(B)が示されている。…」 (イ)「【0017】軸方向(図1(B)の視点)から見た炉殻101の両側の側面および半円形に湾曲した上面を覆うように誘導加熱コイル104が配置されている。…誘導加熱コイル104は中空パイプであり、その内部に冷却水を供給し、自身の過熱を防ぐ構成となっている。」 上記(ア)及び(イ)の記載事項によれば、甲5には、次の事項(以下「甲5事項」という。)が記載されていると認められる。 「誘導加熱炉の誘導加熱コイルを中空パイプとし、その内部に冷却水を供給して、自身の過熱を防ぐ構成としたこと。」 カ 甲6に記載された事項 「周知のように、誘導炉は鋼管により構成される誘導コイルに大電流を流し、誘導エネルギーにより金属を溶解又は加熱する装置であるが、一般に誘導コイルに流す電流密度は数10A/mm2にも達するため、この誘導コイル内に発生する銅損による発熱を吸収する手段として誘導コイル銅管内に水を流して冷却する方法が採用されている。」(第1欄第31~37行) キ 甲7に記載された事項 「内部に冷却水を流通して冷却されるコイル鋼管を有する誘導加熱装置本体と、前記コイル鋼管を流通する冷却水の排水温度を検出する排水温度検出機構と、これにより検出した排水温度が、設定した低レベルの設定温度より高くなった時に、この検出信号に基づいて冷却水を増量する冷却水量調整機構または/および冷却水の温度を低下させる給水温度調整機構とから成ることを特徴とする誘導加熱装置。」(実用新案登録請求の範囲) ク 甲8に記載された事項 「Moreover, as shown in the block diagram of FIG.1 , the supply should be connected to a source of coolant such as water. The coolant flows through the copper tube of the coil during the heating process. The flow of coolant in the induction source and coil should be up to 2 to 3 gallons per minute to keep the copper tube sufficiently cool to prevent deformation from the heating effect of the current which can be high enough to instantaneously melt the coil.」(第7頁第10~15行) (当審訳:さらに、図1のブロック図に示すように、供給源は、水のような冷却剤の供給源に接続されるべきである。冷却剤は、加熱プロセス中にコイルの銅管を通って流れる。誘導源及びコイル内の冷却剤の流れは、銅管を十分に冷却し、コイルを瞬時に溶融させるのに十分に高い電流の加熱効果からの変形を防止するために、毎分2~3ガロンまででなければならない。) ケ 甲9に記載された事項 「【0006】この発明の目的は、誘導加熱炉において誘導加熱コイルを冷却するための水冷構造を用いて、被加熱物を収納したプロセスチャンバを冷却できるようにし、プロセスチャンバの均熱化が容易でプロセスチャンバを急速に昇温及び降温させることができ、比較的低い温度域での短時間の熱処理におけるスループットの向上を実現できる半導体製造装置、及び、半導体製造方法を提供することにある。」 (2)本件発明13について ア 対比 本件発明13と甲1発明を対比すると、後者の「誘導加熱のため」の「周縁コイル」は前者の「誘導コイル(2)」に相当し、以下同様に、「MoSi2製のカップとして周縁コイルと一緒に誘導加熱のために形成された放熱器」を有する「加熱装置」は「輻射ヒータ(3)」に、「前記炉室の高温の熱を周辺から遮断するための絶縁材」は「断熱層(4)」に、「炉室容積を有する炉室」は「炉室(5)」に、「前記歯科用部材を前記収納スペースに入れるために開くようになっている少なくとも1つの壁部分」は「炉扉(10)」に、「歯科用部材」は「歯科用交換部品(7)」に、「誘導加熱」を行う「歯科用部材のための焼結炉」は「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う誘導炉(1)」に、それぞれ相当する。 そうすると、両者は、次の点で一致し、相違するものと認められる。 (一致点) 誘導コイルと、輻射ヒータと、断熱層と、炉室と、炉扉とを含む歯科用交換部品の熱処理を行う誘導炉。 (相違点1) 本件発明13の「誘導炉(1)」は「液体冷却システムを備えた冷却システム(17)」を有するのに対して、甲1発明の「焼結炉」は、それに相当する構成を有していない点。 (相違点2) 本件発明13の「誘導炉(1)」は、「前記炉扉(10)が設定された開放温度(57)で自動的に開放されるような手段」及び/又は「前記開放温度(57)に達したときに、音響信号または光信号が生成されて前記開放温度(57)に到達したことを示す手段」を備えるのに対して、甲1発明の「焼結炉」は、それに相当する構成を有していない点。 (相違点3-1) 本件発明13は、「誘導炉(1)を用いて歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」の発明であって、当該方法につき、「前記冷却システム(17)が前記誘導コイル(2)を冷却し、およびそれによって前記誘導コイル(2)に隣接して配置される前記輻射ヒータ(3)を冷却するので、前記炉室(5)の内部温度が前記冷却システム(17)によって制御されることを特徴と」するのに対して、 甲1発明は、「焼結炉」の発明であって、「焼結炉」を用いて「歯科用部材」の熱処理を行う方法についての冷却の制御は何ら特定されていない点。 (相違点3-2) 本件発明13は、「前記炉扉(10)が閉じられているときの加熱段階(35)において、前記炉室(5)の内部温度が30℃/分~300℃/分の間の設定加熱速度で上昇し、前記炉扉(10)が閉じられているときの冷却段階(37)において、前記炉室(5)の前記内部温度が30℃/分~200℃/分の間の設定冷却速度(37)で減少するように、前記炉室(5)の前記内部温度が、前記冷却システム(17)の冷却制御によって制御されることを特徴とし、適切な温度プロファイルが、前記歯科用交換部品(7)の公知の幾何学的パラメータおよび前記歯科用交換部品(7)の所望の色を用いてコンピュータによって自動的に決定されるか、または適切な温度プロファイルが、データベースからの広範な温度プロファイルから選択され、前記温度プロファイルが、特定の加熱速度を有する加熱段階(35)と、特定の保持温度(36)を有する保持段階と、前記炉扉が閉じられているときの特定の冷却速度を有する第1冷却段階(10)と、前記炉扉(10)が開いているときの第2冷却段階であって、始まりが前記炉扉(10)の開放温度(57)によって決定される、第2冷却段階とを含み、適切な加熱速度または冷却速度が、前記歯科用交換部品(7)の既知の幾何学的パラメータを用いて導かれ、前記冷却システム(17)の前記冷却制御が、前記所望の前記加熱速度または前記冷却速度を達成するように制御されることを特徴とする」のに対して、 甲1発明は、「焼結炉」の発明であって、「焼結炉」を用いて「歯科用部材」の熱処理を行う方法については何ら特定されておらず、「歯科用部材」の加熱及び冷却の態様が不明である点。 イ 相違点の検討 (ア)事案に鑑み、相違点3-2について検討する。 (イ)相違点3-2に係る本件発明13の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」については、当該「方法」の一部は、甲2事項及び甲3事項に開示されている。 すなわち、甲2事項の「毎秒5℃ずつ昇温してセラミック素体を急速に加熱」する態様は、本件発明13の「加熱段階(35)において」「設定加熱速度で上昇」する態様、又は「特定の加熱速度を有する加熱段階(35)」に相当する。以下同様に、前者の「1300℃のトップ温度まで昇温した」態様は、後者の「特定の保持温度(36)を有する保持段階」に、前者の「1000℃まで降温して本焼成を完了」する態様は、後者の「前記炉室(5)の内部温度」が「減少する」態様、又は「第1冷却段階(10)」に、前者の「100℃以下の低温となるまでセラミック素体を急速に冷却して、焼成を完了する」態様は、後者の「第2冷却段階」に、それぞれ相当する。 したがって、甲2事項には、当該「方法」のうち、「前記炉室(5)の内部温度」につき「加熱段階(35)において」「設定加熱速度で上昇し」「冷却段階(37)において」「減少する」とともに、「温度プロファイルが、特定の加熱速度を有する加熱段階(35)と、特定の保持温度(36)を有する保持段階と」「第1冷却段階(10)と」「第2冷却段階とを含」む点が開示されている。 また、甲3事項の「焼成及び冷却装置」「のドア」は、本件発明13の「炉扉(10)」に相当し、以下同様に、前者の「前記冷却システムを通る前記熱伝達液体の強制循環が中断され、前記装置のドアが開放位置に移動」する態様は、後者の「前記炉扉(10)が開いているときの第2冷却段階」に、前者の「チタンの酸化温度が達成されると」「前記装置のドアが開放位置に移動」する態様は、後者の「第2冷却段階」の「始まりが前記炉扉(10)の開放温度(57)によって決定される」態様に、それぞれ相当する。 したがって、甲3事項には、当該「方法」のうち、「前記炉扉(10)が開いているときの第2冷却段階であって、始まりが前記炉扉(10)の開放温度(57)によって決定される、第2冷却段階」が開示されている。 (ウ)しかしながら、当該「方法」のうち、少なくとも、「前記炉扉(10)が閉じられているときの冷却段階(37)において、前記炉室(5)の前記内部温度が30℃/分~200℃/分の間の設定冷却速度(37)で減少するように、前記炉室(5)の前記内部温度が、前記冷却システム(17)の冷却制御によって制御されることを特徴と」する点、及び、「適切な温度プロファイルが、前記歯科用交換部品(7)の公知の幾何学的パラメータおよび前記歯科用交換部品(7)の所望の色を用いてコンピュータによって自動的に決定される」点は、甲2~甲9のいずれにも開示されていない。 そうすると、甲1発明と甲2~甲9に記載された事項をどのように組み合わせたとしても、相違点3-2に係る本件発明13の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」に到達することはできない。 (エ)これに対して、異議申立人は、相違点3-2に係る本件発明13の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」につき、「当業者によって通常行われる設計事項である」(特許異議申立書第59頁第13行)と主張するが、本件発明13は、「適切な温度プロファイルが、前記歯科用交換部品(7)の公知の幾何学的パラメータおよび前記歯科用交換部品(7)の所望の色を用いてコンピュータによって自動的に決定される」点を有することで、制御可能な冷却速度で歯科用交換部品の所望の色を実現するとともに、急速冷却段階を可能にする誘導炉及びその熱処理を行う方法を提供する(上記第5[理由1について]参照)という技術的意義を有することに照らすと、その主張を採用することはできない。 (オ)したがって、相違点1、2及び3-1について検討するまでもなく、本件発明13は、甲1発明、及び、甲2事項ないし甲5事項又は甲2~甲9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)本件発明14について ア 対比 本件発明14は、本件発明13から、上記相違点3-2に係る本件発明13の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」の事項を削除するとともに、「前記炉扉(10)は、設定された開放温度(57)で開放され、前記開放温度(57)が、前記歯科用交換部品(7)の所望の色の関数として設定されることを特徴とする」との事項を追加したものである。 そうすると、上記(2)アの対比を踏まえると、本件発明14と甲1発明とは、上記(一致点)で一致するとともに、上記相違点1、2及び3-1に加えて、次の相違点で相違する。 (相違点3-3) 本件発明14は、「前記炉扉(10)は、設定された開放温度(57)で開放され、前記開放温度(57)が、前記歯科用交換部品(7)の所望の色の関数として設定されることを特徴とする」のに対して、 甲1発明は、「焼結炉」の発明であって、「焼結炉」を用いて「歯科用部材」の熱処理を行う方法については何ら特定されておらず、「歯科用部材」の冷却の態様が不明である点。 イ 相違点の判断 事案に鑑み、相違点3-3について検討する。 相違点3-3に係る本件発明14の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」については、「前記炉扉(10)は、設定された開放温度(57)で開放され」る態様は、甲3事項に開示されているといえるものの(上記(2)イ参照)、「前記開放温度(57)が、前記歯科用交換部品(7)の所望の色の関数として設定されること」は、甲2事項及び甲3事項を含め、甲2~甲9のいずれにも開示されていない。 そうすると、甲1発明と甲2~甲9に記載された事項をどのように組み合わせたとしても、相違点3-3に係る本件発明14の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」に到達することはできない。 これに対して、異議申立人は、相違点3-3に係る本件発明14の「歯科用交換部品(7)の熱処理を行う方法」につき、「当然の事項であり…当業者が適宜行う設計事項である」(特許異議申立書第60頁第10~12行)と主張するが、本件発明14は、「前記開放温度(57)が、前記歯科用交換部品(7)の所望の色の関数として設定されること」を有することで、制御可能な冷却速度で歯科用交換部品の所望の色を実現するとともに、急速冷却段階を可能にする誘導炉及びその熱処理を行う方法を提供する(上記第5[理由1について]参照)という技術的意義を有することに照らすと、その主張を採用することはできない。 したがって、相違点1、2及び3-1について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明、及び、甲2事項ないし甲5事項又は甲2~甲9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)本件発明15~18について 本件発明15~18は、本件発明14の発明特定事項を全て備え、更に発明特定事項を付加した発明であるから、上記(3)と同様の理由により、甲1発明、及び、甲2事項ないし甲5事項又は甲2~甲9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 申立理由3(新規事項)について 異議申立人は、令和2年12月7日の手続補正により請求項1に追加された事項につき、「設定された開放温度(57)」は、温度が上昇した後の開放温度と、温度が下降した後の開放温度の双方を含むものの、出願当初明細書等には後者しか記載されていないから、当該請求項1について行われた補正は、新規事項の追加に該当する旨主張する(特許異議申立書第65頁第1~14行)。 しかしながら、出願当初明細書等(本件特許の国際出願日における明細書等の翻訳文)の特許請求の範囲の請求項1、10、14及び17には、液体冷却システムを備えた誘導炉を用いて歯科用交換部品の熱処理を行う方法であって、炉扉の開放温度(57)が歯科用交換部品の所望の色の関数として設定されるとともに、炉扉が「設定された開放温度(57)」で自動的に開放されることを特徴とする方法が記載されている。 したがって、申立理由3には理由がない。 第8 むすび 上記第6及び第7のとおり、本件特許の請求項13~18に係る特許は、取消理由通知書で通知した取消理由及び異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項13~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項1~12、19に係る特許は、訂正により削除されたため、異議申立人による請求項1~12、19に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700932

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