特許異議申立
2021-700844
透明性樹脂フィルム、及び、化粧材
- 審判番号
- 2021-700844
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-151471
- 登録番号
- 6838678
- 請求日
- 2021年09月01日
- 審決日
- 2021年11月25日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 【異議申立人】伊藤 泰和
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 奥田 雄介
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6838678号発明「透明性樹脂フィルム、及び、化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6838678号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6838678号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和2年3月19日を国際出願日とする特許出願(特願2020-547231号(優先権主張 平成31年4月18日)、以下、「原出願」という。)の一部を同年9月9日に新たな特許出願(特願2020-151471号)としたものであって、令和3年2月16日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数8)がされ、同年3月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年9月2日に特許異議申立人 伊藤 泰和(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
絵柄層を有する基材に積層される透明性樹脂フィルムであって、
前記基材に積層される側と反対側に、JIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)が、20μm以上、200μm以下である凹凸形状を有しており、
前記基材に積層される側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(2)が、15μm以下であり、
前記透明性樹脂フィルムの厚さは、前記最大高さRz(1)の値を超えている
ことを特徴とする透明性樹脂フィルム。
【請求項2】
少なくとも複層の透明性樹脂層を有する請求項1に記載の透明性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記基材に積層される側と反対側に、表面保護層を有する請求項1又は2に記載の透明性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記透明性樹脂フィルムは、難燃剤を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の透明性樹脂フィルム。
【請求項5】
前記透明性樹脂フィルムのうち前記難燃剤を含有する層は、充填剤を含有する請求項4に記載の透明性樹脂フィルム。
【請求項6】
前記表面保護層に難燃剤を含有する請求項3に記載の透明性樹脂フィルム。
【請求項7】
前記難燃剤はホスフィン酸金属塩系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤及びNOR型ヒンダードアミン系難燃剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4~6いずれか一項に記載の透明性樹脂フィルム。
【請求項8】
絵柄層を有する基材上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の透明性樹脂フィルムが積層されていることを特徴とする化粧材。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、以下の甲第1ないし5号証を提出し、本件特許に対しておおむね次の取消理由(当該取消理由を、以下、順に「申立理由1」のようにいう。)を主張している。
1 申立理由1(進歩性)
本件特許発明1ないし8は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3ないし5号証に記載の従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1ないし8において、透明性樹脂フィルムが単層の場合にはどのようにして本件特許発明を得るのか、また、本件の課題を解決するフィルムを得るのかわからない。
(2)本件特許発明1は、基材に透明性樹脂フィルムが積層されているが、積層には接着剤で接合するものを含むほか熱溶着もあり、熱溶着の場合に、Rz(2)が15μm以下であることが気泡が入り込むことを防止するために必要なのか疑問である。
3 証拠方法
甲第1号証:特表2019-511970号公報
甲第2号証:特開平7-256752号公報
甲第3号証:特開2007-106056号公報
甲第4号証:特開2007-297568号公報
甲第5号証:特開2006-77173号公報
以下、順に、「甲1」のようにいう。
第4 特許異議申立理由についての判断
1 申立理由1(進歩性)について
本件特許について優先権は認められ、その優先日は平成31年4月18日であるところ、甲1(特表2019-511970号公報)の公知日は、上記優先日後の令和1年5月9日である。
そうすると、甲1に基づく進歩性の申立理由は、そもそも理由がない。
なお、申立理由1に係る証拠のうち、甲1については、以下、職権により、甲1のパテントファミリーである国際公開第2017/144676号(国際公開日は、上記優先日前の2017年(平成29年)8月31日である。以下、「甲1P」という。)と読み替えて、検討する。
(1)甲1Pに記載された事項及び甲1Pに記載された発明
ア 甲1Pに記載された事項
甲1Pには、次の記載がある。なお、甲1Pは外国語で記載されているため、以下、訳文のみ摘記し、下線は当審で付したものである。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接に連続し、且つ互いに結合する次の層であるA層-B層-C層-D層を少なくとも含み、
A:視認側における、層中で分散された、1つ以上のイオノマー、及び任意の1つ以上の充填材料、及び/または機能的な添加剤を含む機能層
B:5-95重量%の押出可能なイオノマー、押出可能なイオノマー混合物、または押出可能なイオノマーブレンド、及び95-5重量%のポリオレフィンから構成される混合物を含む中間ポリマー層
C:接着のために、1つ以上の改質されたプラスチックを含むタイ層
D:基板側における、化粧層
前記A層、前記B層及び前記C層で構成される層状複合材料が共押出で形成されており、前記層状複合材料の融合温度を超える温度で、基板側における前記化粧層を用いて、ホットメルトでラミネートされていることを特徴とする化粧板。」
・「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
各層の間に非常に良好な結合を示し、実質的に有害物質を含有しない、特に塩化ビニル単量体を含まず、接着剤及び溶剤を最小限しか必要とせず、または、理想的には接着剤または溶剤を含有せず、また、優れた操作上の耐性を示す化粧板を提供するという問題は、まだ十分に解決されていない。本発明の別の目的は、構造化された化粧板の製造における穿孔の問題をさらに最小限にすることである。
【0011】
床仕上げ材になされる特定の要求には、帯電に対する保護が含まれる。DIN EN 1815:2016-12に従って、歩行の電圧の基準を維持することにより、皮膚を介した不快な放電を避けることができ、または、粉塵のないことが確実にされる。帯電防止の効果の特定の標準は、電子部品を製造するための部屋の床の前提条件である。静電の化粧フィルムはまた、例えば床仕上げ材ラミネートの製造において、問題を引き起こす可能性がある。効果を得るために、帯電防止剤は、従来、床仕上げ材ラミネート及び床仕上げ材積層体の視認側の最上層のポリマー熱可塑性層に提供されている。磨耗から保護するために、このような帯電防止ラミネートは、従来、保護ワニスが提供されており、ワニス塗りには、装置が要され、原則的に望ましくない製造工程が追加され、追加のコスト及び溶剤放出を引き起こす可能性がある。
【0012】
したがって、本発明の別の目的は、可能である場合には標準に従って、耐摩耗性及び/または永久的に帯電防止性を有し、ワニス層を必要とせず、単一の工程で連続的に製造できる化粧板、その使用方法及びその製造方法、並びに、それを含む積層体、床仕上げ材を提供することである。」
・「【0021】
上述の機能層のA層の充填材料は、本発明に従って、コランダム、酸化チタン、砂、タルク、チョーク、シリカ、ガラスビーズ及びこれらの混合物からなる群から有利に選択することができる。機能層のA層の構成要素となり得る機能的な添加剤としては、UV安定剤、UV吸収剤、着色顔料、ワックス、滑剤、滑り止め添加剤、帯電防止剤、抗菌及び粘着作用(dehesively acting)剤、難燃剤及びこれらの混合物が含まれる。特に好ましい実施形態では、機能層の機能的な添加剤は1つ以上の帯電防止剤を含み、特に0と25重量%の間の量、好ましくは1-25重量%、特に2-20重量%、より好ましくは3-10重量%、最も好ましくは4-6重量%の範囲である。」
・「【0036】
無次元のエンボスの深さの指数IPは、選択されたエンボスローラー(パターン、彫刻押型の表面粗さRZ)を使用して達成される「穿孔」の1つの尺度を表す。これは、基板側の穿孔に対する、視認側のエンボスの深さの比から計算され、
平均表面粗さRZ(DIN EN ISO 4287:2010-07)としてそれぞれが測定され、構造化され化粧板の厚さで割り、1000を掛けたものであり、全ての値はマイクロメートルである。
IP=RZ(視認側)×1000/(RZ(基板側)×厚さ(化粧板))」
・「【0049】
F層は、有利には、以下の層の1つ以上を含むことができる:1つ以上の追加のイオノマー層、被覆層、UV保護層、ワニス層、防汚層、湿気保護層、機械的保護層、帯電防止層、滑りを防止する層、または(熱溶融)接着層、そして、F層の各々は、上述の機能の1つ以上を示し、対応する機能的な添加剤を含むことができる。F層または2つ以上の層が含まれるF層は、透明であってもよく、及び/または表面形状を含むことができる。好ましくは60-100重量%のイオノマー並びに適用可能な充填材料が含まれる、イオノマーを含有する少なくとも1つのF層が、本発明によれば特に好ましい。F層は、特に、80-98重量%または90-95重量%、特に好ましくは少なくとも97重量%のイオノマー並びに適用可能な充填材料を含むことができる。100重量%のイオノマーが理想的であり得る。」
・「【0055】
本発明の最も特に好ましい実施形態において、化粧板は、層状構造F層-A層-B層-C層-D層を有し、機能層のA層は、イオノマーまたはイオノマー混合物に加えて、特に10-30重量%の量の非移動性(永続的)帯電防止剤を含有する。そして、追加のF層は視認側の最上層であり、90重量%-100重量%の1つ以上のイオノマーを含み、適用可能な場合には10重量%までの充填材料、特に95-100重量%の1つ以上のイオノマーと、該当する場合には3-5重量%の充填材料とを含む。最も好ましい帯電防止剤は、ポリエステル及びポリアミドまたは熱可塑性コポリアミド、例えばポリエーテルアミドを含む。既に上述したように、本発明による化粧板は、ワニスまたはコーティングを含まないことが好ましい。このようにして、F層及びA層からなる層、並びにB層及びC層からなる層も完全に、または、ほぼ完全に透明及び中間色であり、したがって、化粧層上に視界を遮る、または曇らせないことを確実にできる。これは、例えば、黒鉛、無煙炭、金属粒子、すす、カーボンブラック、導電性ナノ粒子または導電性繊維、例えば炭素繊維またはメッシュ、またはこれらの複合材料のような、従来の永続的帯電防止剤を使用する場合には当てはまらない。互いに適合して、直接に連続する層であるF層-A層-B層-C層を選択することにより、本発明の方法による共押出し、及び、つなぎ材の使用を最小限にした及び接着剤(及び関連する欠点)の使用をなしにした最適な接着も可能になる。本発明によれば、化粧層のD層に帯電防止効果を有する添加剤を提供することを控えることも可能である。これにより、より高い印刷及び画質を達成することが可能になり、化粧層と隣接するC層またはE層との間の結合に生じる可能性のある不都合が回避される。」
・「【実施例】
【0070】
(実施例1)
以下の層の順序を示す構造化された化粧板が、本発明による方法に従って製造された。A層、B層及びC層が、250℃で共押出され、ポリプロピレンのD層(カゼインインクで木目模様が印刷され、プライマーが供給された)を用いて、依然として230℃及び14.5kN/m(145N/cm)の線圧で、直ちにホットメルトラミネートされた。プラスチックの木目模様(エンボスローラーの彫刻押型の表面粗さRZは120μmであった)が視認側にエンボス加工され、このようにして、本発明による構造化された化粧板が得られた。
【0071】
A層(50μm)イオノマー(サーリン(登録商標)1706、デュポン社製)95重量%、2-50μm(95%)の粒径を有するシリカ5重量%;
B層(230μm)イオノマー(サーリン(登録商標)1706、デュポン社製)85重量%及びメタロセンポリエチレン15重量%;
C層(20μm)接着のための改質されたプラスチックとして無水マレイン酸変性ポリエチレン;
D層(120μm、最大10μmのプライマーを含む)カゼインインクを用いて印刷し、プライマーでコーティングしたポリプロピレンフィルム。
【0072】
表1は、実施例1及び比較例2の多層複合フィルムを特徴付けるためのいくつかのパラメータを列挙する。」
・「【0079】
【表1】
[図:0001384186000001.jpg]
」
・「【0085】
【表2】
[図:0001384186000002.jpg]
」
イ 甲1Pに記載された発明
甲1Pに記載された事項、特に実施例1として記載されている化粧板におけるA層、B層及びC層で構成される層状複合材料の部分及び化粧板として、甲1Pには次の発明が記載されていると認める。
<甲1層状複合材料発明>
「下記のD層にA層-B層-C層-D層の順となるようにホットメルトラミネートされているA層、B層及びC層で構成される層状複合材料であって、
250℃で共押出され、D層にラミネートされた後に、彫刻押型の表面粗さRZ120μmのエンボスローラにより木目模様が視認側にエンボス加工されていて、視認側の平均表面粗さRZ(DIN EN ISO 4287:2010-07)が47.52μmであるA層、B層及びC層で構成される層状複合材料。
A層(50μm)イオノマー(サーリン(登録商標)1706、デュポン社製)95重量%、2-50μm(95%)の粒径を有するシリカ5重量%;
B層(230μm)イオノマー(サーリン(登録商標)1706、デュポン社製)85重量%及びメタロセンポリエチレン15重量%;
C層(20μm)接着のための改質されたプラスチックとして無水マレイン酸変性ポリエチレン;
D層(120μm、最大10μmのプライマーを含む)カゼインインクを用いて木目模様を印刷し、プライマーでコーティングしたポリプロピレンフィルム。」
<甲1化粧板発明>
「下記のA層、B層及びC層で構成される層状複合材料が下記のD層にA層-B層-C層-D層の順となるようにホットメルトラミネートされている化粧板であって、上記層状複合材料が250℃で共押出され、D層に230℃及び14.5kN/m(145N/cm)の線圧でホットメルトラミネートされた後、彫刻押型の表面粗さRZ120μmのエンボスローラにより木目模様が視認側にエンボス加工されており、全体厚さ420μmで、視認側のRZが47.52μm、基板側のRZが8.35μmの化粧板。
A層(50μm)イオノマー(サーリン(登録商標)1706、デュポン社製)95重量%、2-50μm(95%)の粒径を有するシリカ5重量%;
B層(230μm)イオノマー(サーリン(登録商標)1706、デュポン社製)85重量%及びメタロセンポリエチレン15重量%;
C層(20μm)接着のための改質されたプラスチックとして無水マレイン酸変性ポリエチレン;
D層(120μm、最大10μmのプライマーを含む)カゼインインクを用いて木目模様を印刷し、プライマーでコーティングしたポリプロピレンフィルム。」
(2)甲2に記載された事項
甲2には、おおむね次の事項が記載されている。
ア 甲2に記載された事項
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】押出機より押し出された溶融した熱可塑性樹脂に凹凸を付与する凹凸模様の付与された冷却ロールにおいて、冷却ロールの凸部の周辺部が他の部分よりも凹んでいることを特徴とする冷却ロール。
【請求項2】押出機より押し出された溶融した熱可塑性樹脂に凹凸を付与する凹凸模様の付与された冷却ロールにおいて、冷却ロールの凸部の周辺部が他の部分と同じであることを特徴とする冷却ロール。
【請求項3】溶融した透明熱可塑性樹脂を押出機を用いて凹凸模様の付与された冷却ロール上に押し出して裏面をコロナ処理して上台シートを作成し、予め印刷を施した熱可塑性樹脂からなる着色シートと少なくとも一方の面に接着剤を塗布して積層する化粧シートにおいて、請求項1または2の冷却ロールを用いることを特徴とする化粧シート。
【請求項4】請求項3の化粧シートの表面に、更にワイピング、コロナ処理、トップコートなどの処理を施すことを特徴とする透明シートの厚みより深い凹凸をもつ化粧シート。
【請求項5】請求項1、2、3または4の熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー樹脂であることを特徴とする化粧シート。
【請求項6】請求項3のシートの積層において、金属ロールと弾性体ロールの少なくとも一方が加熱されているロールであることを特徴とする化粧シート。」
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面に印刷模様とシートの厚みより深い凹凸模様を有する化粧シートおよび押出機用の凹凸模様の付与された冷却ロールに関し、このシートの厚みより深い凹凸模様を有する化粧シートは、木質系ボードや無機質ボード、鋼板の表面に接着剤で貼り合わせて化粧板として用いられるものである。」
・「【0012】C.凹凸付与および積層
図2に示すように、ポリオレフィン系樹脂を押出機のT型ダイス(2)より、凹凸を付与する冷却ロール(1)とニップロール(3)の間に押出し、シートに凹凸を付与したあと、図示していないが裏面にコロナ処理して凹凸上台(5)とする。次にウレタン樹脂系などの接着剤を3~9g/m2 (DRY)塗布した印刷済の着色下台(4)と凹凸上台(5)とを、金属性ヒーターロールと弾性体ニップロールでドライラミネートする。ヒーターロールの温度は40℃~100℃、圧力は5kgf/cm~20kgf/cm程度が望ましい。スピードは5m/min~50m/minが望ましい。なお、積層の際の加熱は、上記のごとく金属性ヒーターロールでなくとも、弾性体ニップロールを加熱しても、若しくは双方を加熱しても良い。以上により図3に示したような、透明上台(5)の厚みよりも深いエンボスをもった化粧シートが得られる。次にシート表面をワイピングし、更にコロナ処理して公知の方法でトップコートすることもできる。」
・「【0016】<実施例2>着色下台シートとして、
ポリオレフィン熱可塑性エラストマー樹脂(日本石油化学株式会社製)
‥‥100部
着色剤(東洋インキ製造株式会社製上記樹脂40部 顔料60部) ‥‥11部
を混合して220℃でT型ダイスから押出機で厚み100μmの着色下台シートを押し出し、ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ製造株式会社製ラミスター)で木目柄を印刷した。
【0017】次に、上記ポリオレフィン熱可塑性エラストマー樹脂T型ダイスから押出機で実施例1に示した凹凸冷却ロールとゴム製ニップロールの間に落とし凹凸を付与したあと、裏面をコロナ処理して、上記着色下台にウレタン接着剤を5g/m2(DRY)塗布、乾燥して100℃、15kgf/cm、20m/minの条件で金属製ヒーターロールとゴム製ニップロールでドライラミして、上台透明シートの厚みより深い凹凸をもつ化粧シートを得た。尚、上台透明シートの厚みは80μmで、凹部深さはシートから盛り上がった部分を含めて100μmであった。次に、更に公知の方法でワイピング、コロナ処理、トップコートした。
【0018】
【発明の効果】本発明は熱可塑性樹脂を押出機で押出してシート化したり、押し出しながら凹凸模様の付与された冷却ロールに押出し凹凸を付与するため、凹凸再現性が良く、かつ、凹部がシートの裏側へ裏抜けすることはない裏面の平らなシートができる。さらに、上台シートの厚みよりも深い凹部を作ることができる。また、シートの凹部が薄くならないため、積層時にエアーが残らないという効果を奏する。」
・「【図2】
[図:0001384186000003.jpg]
」
(3)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1層状複合材料発明を対比する。
甲1層状複合材料発明の「D層」はカゼインインクを用いて木目模様を印刷し、プライマーでコーティングしたポリプロピレンフィルムであって、本件特許発明1における「絵柄層を有する基材」に相当し、甲1層状複合材料発明の「A層、B層及びC層で構成される層状複合材料」は、本件特許発明1の「絵柄層を有する基材に積層される透明性樹脂フィルム」といえる。
甲1層状複合材料発明は、D層にラミネートされた後に、彫刻押型の表面粗さRZ120μmのエンボスローラにより木目模様が視認側にエンボス加工されていて、視認側の平均表面粗さRZ(DIN EN ISO 4287:2010-07)が47.52μmの凹凸形状を有するものであり、A層、B層、C層の厚みは、それぞれ50μm、230μm、20μmであって、層状複合材料の厚みが前記凹凸形状の最大高さの値を超えているのは明らかであるといえるから、甲1層状複合材料発明は、「基材に積層される側と反対側に凹凸形状を有し」ており、「透明性樹脂フィルムの厚さは、前記最大高さRz(1)の値を超えている」との限りにおいて本件特許発明1の構成を満足している。
そうすると、本件特許発明1と甲1層状複合材料発明は、
「絵柄層を有する基材に積層される透明性樹脂フィルムであって、
前記基材に積層される側と反対側に、凹凸形状を有しており、
前記透明性樹脂フィルムの厚さは、上記凹凸形状の最大高さRz(1)の値を超えている透明性樹脂フィルム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
基材に積層される側と反対側の凹凸形状の最大高さRz(1)について、本件特許発明1は「JIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)が、20μm以上、200μm以下である」と特定するのに対して、甲1層状複合材料発明は、平均表面粗さRZ(DIN EN ISO 4287:2010-07)が47.52μmである点。
<相違点2>
基材に積層される側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(2)について、本件特許発明1は、「15μm以下であり」と特定するのに対し、甲1層状複合材料発明は、この点が明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲1層状複合材料発明におけるD層(本件特許発明1の「基材」)に積層される側の凹凸形状についての記載は甲1Pにはなく、また、当該凹凸形状のRZ(2)がどの程度であるかを示す証拠もない。
そして、甲1層状複合材料発明はD層に対してホットメルトでラミネートされてからエンボス加工されるものであることからすると、甲1層状複合材料発明において、D層と直接接している側の形状に着目し、例えば、RZ(2)を特定の値に設定しようとする動機付けはないといわざるをえない。このことは、たとえ、甲2において、エンボス成形時においてエンボス加工の裏面側を平滑にすることが記載されているにしても変わらない。
そうすると、相違点2は、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点2に係る発明特定事項を有することにより、本件特許明細書の【0011】に記載されているように、「基材と積層される側の面が極めて平滑であるので、基材との接着時に気泡が入り込むことを防止することができ、かつ、基材と積層される側と反対側の凹凸形状により意匠性を向上することができる」という甲1層状複合材料発明並びに甲2ないし5に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。
以上のことから、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1層状複合材料発明、すなわち甲1Pに記載された発明及び甲2ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を引用し、請求項1に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1Pに記載された発明及び甲2ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明8と甲1化粧板発明との対比
本件特許発明8と甲1化粧板発明とを対比すると、上記(3)での対比と同様であるから、両者は、
「絵柄層を有する基材上に、前記基材に積層される側と反対側に凹凸形状を有しており、前記透明性樹脂フィルムの厚さは、前記最大高さRz(1)の値を超えている透明性樹脂フィルムが積層されている化粧材」
である点で一致し、上記(3)の相違点1及び2で相違する。そして、相違点2の判断は上記(3)のとおりである。
そうすると、本件特許発明1ないし7と同様に、本件特許発明8は、甲1Pに記載された発明及び甲2ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由1(進歩性)についてのむすび
よって、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
物の発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度の記載があることを要する。
(2)発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性樹脂フィルム、及び、化粧材に関する。」
・「【0005】
従来、熱可塑性樹脂フィルムにエンボス加工を施すと、エンボス加工を施した面側の凹凸形状に追従して、エンボス加工を施した面と反対側の面にも多少の凹凸形状が賦形されてしまう場合があった。
そのため、接着剤等により、熱可塑性樹脂フィルムと基材とを貼り合わせる際に、熱可塑性樹脂フィルムと接着剤との間に気泡が入り込みやすく、意匠性の低下や、接着強度の低下を招く場合があり、改善の余地があった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、基材と積層される側の面が極めて平滑であるので、基材との接着時に気泡が入り込むことを防止することができ、かつ、基材と積層される側と反対側の凹凸形状により意匠性を向上することができる透明性樹脂フィルム、該透明性樹脂フィルムの製造方法、及び、化粧材を提供することを目的とする。」
・「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討し、透明性樹脂フィルムの特性に着目した。
基材と積層される側と反対側に所定の凹凸形状を有しつつ、上記基材と積層される側を極めて平滑な構造とすることにより、気泡が入り込むことを防止することができ、かつ、意匠性をも付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、絵柄層を有する基材に積層される透明性樹脂フィルムであって、上記基材に積層される側と反対側に、JIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)が、20μm以上、200μm以下である凹凸形状を有しており、上記基材に積層される側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(2)が、15μm以下であることを特徴とする。」
・「【発明の効果】
【0011】
本発明は、基材と積層される側の面が極めて平滑であるので、基材との接着時に気泡が入り込むことを防止することができ、かつ、基材と積層される側と反対側の凹凸形状により意匠性を向上することができる透明性樹脂フィルム、該透明性樹脂フィルムの製造方法、及び、化粧材を提供することができる。」
・「【0013】
<透明性樹脂フィルム>
まずは、本発明の透明性樹脂フィルムについて説明する。
なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
図1は、本発明の透明性樹脂フィルムの一態様を示す断面図である。
図1に記載のように、本発明の透明性樹脂フィルム10は、基材に積層される側と反対側に凹凸形状を有する。
上記凹凸形状は、JIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)が20μm以上、200μm以下である。
透明性樹脂フィルム10は、上記凹凸形状を有することにより、意匠性を向上することができる。
一方、上記最大高さRz(1)が20μm未満であると、意匠性を十分に付与できないことがあり、200μmを超えると、上記凹凸形状に追従して基材と積層される側にも凹凸形状が賦形されてしまい、気泡が入り込んでしまう。
上記最大高さRz(1)は、40μm以上、180μm以下であることが好ましく、60μm以上、160μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、JIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)及び(2)は、表面粗さ測定器(「SURFCOM-FLEX-50A」、東京精密社製)を用い、下記の条件で測定することにより得ることができる。
(測定条件)
測定回数:n=5(任意の5点)
算出規格:JIS’01
測定種別:粗さ測定
評価長さ:12.5mm
カットオフ値:2.5mm
測定速度:0.60mm/s
フィルタ種別:ガウシアン
形状所去:直線
λs値:8.0μm
凹凸形状に方向性がある木目導管やヘアライン調の場合には、流れ方向とその垂直方向に測定し、両者で数値の大きなものを最大高さ(Rz)とする。
その際、測定箇所は凹凸形状があるところを選定し測定する。
【0014】
透明性樹脂フィルム10は、基材に積層される側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(2)が、15μm以下である。
このように、透明性樹脂フィルム10は、上記基材と積層される側が極めて平滑であるため、上記基材との接着時に気泡が入り込むことを防止することができる。
気泡の入り込みを防止する観点から、上記最大高さRz(2)は、13μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0015】
透明性樹脂フィルム10の厚さは、500μm以下であることが好ましい。
透明性樹脂フィルム10の厚さは、500μmを超えると、透明性樹脂フィルムの表裏で温度差が生じ、エンボスで加熱された側の溶融樹脂の縮む力が強いためにフィルム全体が湾曲することより、透明性樹脂フィルムの側端部が折れ曲がってしまうことがある。
透明性樹脂フィルム10の厚さは、上記の観点から、460μm以下であることがより好ましく、420μm以下であることが更に好ましい。
なお、凹部が貫通することによる意匠性の低下を防止する観点から、透明性樹脂フィルム10の厚さは、上記Rz(1)の値を超えていることが必要である。」
・「【0021】
(透明性樹脂層)
透明性樹脂フィルム10は、少なくとも複層の透明性樹脂層を有することが好ましい。
図2は、本発明の透明性樹脂フィルムの別の一態様を示す断面図である。
図2に示すように、本発明の透明性樹脂フィルム10は、少なくとも、複層の透明性樹脂層(ベース層1とトップ層2)を有することが好ましく、基材に積層される側と反対側に、表面保護層3を有することが好ましい。
【0022】
上記透明性樹脂層としては、基材に備えられた絵柄層を可視できれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含み、材質は限定されないが、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、又は、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、又は、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アイオノマー、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
また、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、絵柄層の印刷適性及びエンボス加工適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
【0024】
上記透明性樹脂層の厚みは、特に限定されないが、90μm以上300μm以下であることが好ましく、150μm以上300μm以下がより好ましく、200μm以上250μm以下が更に好ましい。」
・「【0069】
(透明性樹脂フィルムの製造方法)
本発明は、絵柄層を有する基材に積層される透明性樹脂フィルムの製造方法であって、上記少なくとも複層の透明性樹脂層を熱ラミネートにより積層するのと同時に、上記基材に積層される側と反対側にエンボス加工を行い、上記基材に積層される側と反対側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)が、20μm以上、200μm以下の凹凸形状を形成する工程を有し、上記透明性樹脂フィルムは、上記基材に積層される側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(2)が、15μm以下であることを特徴とする透明性樹脂フィルムの製造方法でもある。
【0070】
本発明の透明性樹脂フィルムの製造方法では、少なくとも複層の透明性樹脂層(ベース層1、トップ層2)を有しており、上記少なくとも複層の透明性樹脂層を熱ラミネートにより積層するのと同時に、上記基材に積層される側と反対側にエンボス加工を行う工程を有する。
【0071】
上記熱ラミネートをする際の温度としては、溶融樹脂にエンボス加工を施すと同時に冷却し賦形を固定化させるという観点から、20℃以上、60℃以下であることが好ましく、30℃以上、50℃以下の条件であることがより好ましい。
なお、溶融樹脂を冷却する方法としては特に限定されないが、例えば、冷却用チルロールにより冷却する方法等が挙げられる。
【0072】
上記熱ラミネートをする方法としては、Tダイを用いた溶融共押出し法等の公知の方法を用いることができる。
【0073】
上記エンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法が挙げられ、例えば、シート温度120℃~160℃、10~40kg/cm2の圧力にて凹凸パターンを転写すればよい。
【0074】
上記エンボス加工を行う際のプレスロールのJIS K 6253-3(2012)に規定されるタイプDデュロメータの硬度としては、エンボス加工を施した面と反対側に凹凸形状が賦形されることを好適に抑制する観点から、25以上、50以下であることが好ましく、30以上、45以下であることがより好ましい。プレスロールが軟らかすぎると賦形が裏面まで裏抜けし、硬すぎると機械の振動により溶融樹脂の厚みが著しく変化して厚みの変動が生じやすい。
なお、上記硬度の測定は、プレスロールの曲面部にタイプDのデュロメータの押針を押しつけて変形を与え、ロールの抵抗力とスプリングの力がバランスした状態での押針の押込み深さをもとに、硬度を測定するものとする。」
・「【0076】
<化粧材>
本発明は、絵柄層を有する基材上に、透明性樹脂フィルム10が積層されていることを特徴とする化粧材でもある。
図3は、本発明の化粧材の一態様を示す断面図である。
図3に示すように、本発明の化粧材20は、絵柄層を有する基材11上に透明性樹脂フィルム10が積層された構成を有する。透明性樹脂フィルム10は、絵柄層を有する基材11側から順に、ベース層1、トップ層2、及び、表面保護層3を有することが好ましい。
【0077】
絵柄層を有する基材11(以下、単に基材11ともいう)は、例えば、基材シート及び絵柄層を有する。
また、基材11は、後述する支持体と絵柄層とを有する化粧板であってもよいし、後述する絵柄層を有する被着材であってもよい。
すなわち、本発明の化粧材20は、例えば、厚み方向において順に、少なくとも、基材シート、絵柄層、及び、透明性樹脂フィルム10が積層された構成(1)、少なくとも、支持体と絵柄層とを有する化粧板、及び、透明性樹脂フィルム10が積層された構成(2)、少なくとも、絵柄層を有する被着材、及び、透明性樹脂フィルム10が積層された構成(3)を含むものである。
以下、本発明の化粧材20を構成する基材11について詳細に説明する。
【0078】
(基材シート)
上記基材シートとしては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、又は、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、又は、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等、またスチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどの非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニルが挙げられる。
また、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、絵柄層の印刷適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。」
・「【0101】
<化粧板>
本発明の化粧材20は、例えば、厚み方向において順に、少なくとも、支持体、絵柄層、及び、透明性樹脂フィルム10が積層された構成を有する化粧板であっても良い。
この場合、基材11は、少なくとも支持体と、絵柄層とを有することが好ましい。
なお、上記絵柄層としては、上述した絵柄層を好適に用いることができる。」
・「【0102】
(支持体)
上記支持体としては特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、木材等の木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。」
・「【0122】
本発明の透明性樹脂フィルム10は、基材と積層される側の面が極めて平滑であるので、基材との接着時に気泡が入り込むことを防止することができ、かつ、基材と積層される側と反対側の凹凸形状により意匠性を向上することができる。
本発明の透明性樹脂フィルム10を用いた化粧材20は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材;窓枠、扉、手すり等の建具;家具;家電製品、OA機器等の筐体;玄関ドア等の外装材として好適に用いることができる。」
・「【実施例】
【0123】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
ベース層として、ポリプロピレン系樹脂(厚さ60μm)を用意し、ベース層の一方の面に、プライマー剤(厚さ2μm)を塗工した。その後、ベース層のもう一方の面にポリプロピレン系樹脂(厚さ60μm、トップ層)を押出し熱ラミネート方式で積層すると同時に、プレスロール(硬度:25)で賦形しながら冷却し、エンボス賦形を施した。該エンボス賦形を施した表面にコロナ処理を施した後、プライマー剤(厚さ2μm)を塗工した。その表面に電離放射線硬化型樹脂(塗布量15μm)をグラビアコート方式で塗工した後、電子照射装置を用いて加速電圧165keV、5Mradの条件で電子線を照射し表面保護層を形成し、透明性樹脂フィルムを作製した。
このとき、透明性樹脂フィルムの表面保護層を有する側の最大高さRz(1)は、20μmであり、もう一方の面の最大高さRz(2)は、15μmであった。
その後、透明性樹脂フィルムのベース層を有する側のプライマー剤を塗工した面に、エステル系接着剤(塗布量5g/m2)を塗工し、絵柄層を有するMDFの絵柄層側に積層した後、20℃、10kg/m2の圧力を掛けて3日間要請し、化粧材を作製した。
その後、気泡の有無について確認した。
【0125】
(実施例2)
プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:40)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は20μm、最大高さRz(2)は10μmであった。
【0126】
(実施例3)
押出し熱ラミネート方式で積層する透明性樹脂フィルムの厚さを240μmにし、プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:40)を変更した以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は200μm、最大高さRz(2)は15μmであった。
【0127】
(実施例4)
押出し熱ラミネート方式で積層する透明性樹脂フィルムの厚さを240μmにし、プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:50)を変更した以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は200μm、最大高さRz(2)は10μmであった。
【0128】
(実施例5)
押出し熱ラミネート方式で積層する透明性樹脂フィルムの厚さを240μmにし、プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:55)を変更した以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は200μm、最大高さRz(2)は5μmであった。
【0129】
(実施例6)
押出し熱ラミネート方式で積層するポリプロピレン系樹脂として、難燃剤(ホスフィン酸金属塩系難燃剤、製品名Pekoflam STC、アークロマ社製、透明性樹脂層の質量の合計を100質量%として、含有量4.4質量%)含有ポリプロピレン系樹脂(厚さ60μm、トップ層)を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
【0130】
(実施例7)
押し出し熱ラミネート方式により積層するポリプロピレン系樹脂として、難燃剤(ホスフィン酸金属塩系難燃剤、製品名Pekoflam STC、アークロマ社製、透明性樹脂層の質量の合計を100質量%として、含有量4.5質量%)、及び、親水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製 AEROSIL 50、透明性樹脂層の質量の合計を100質量%として、含有量4.5質量%)を含有するポリプロピレン系樹脂(厚さ60μm、透明性樹脂層)を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
【0131】
(比較例1)
プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:20)を変更した以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は20μm、最大高さRz(2)は18μmであった。
【0132】
(比較例2)
プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:40)を変更した以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は15μm、最大高さRz(2)は5μmであった。
【0133】
(比較例3)
押出し熱ラミネート方式で積層する透明性樹脂フィルムの厚さを240μmにし、プレスロールの凹凸形状及び硬度(硬度:40)を変更した以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルム及び化粧材を作製した。
透明性樹脂フィルムの最大高さRz(1)は210μm、最大高さRz(2)は18μmであった。
【0134】
(比較例4)
ベース層として、ポリプロピレン系樹脂(厚さ60μm)を用意し、ベース層の一方の面に、プライマー剤(厚さ2μm)を塗工した。その後、ベース層のもう一方の面にポリプロピレン系樹脂(厚さ240μm、トップ層)を押出し熱ラミネート方式で積層した。その後、トップ層のベース層が積層された側と反対側にプライマー剤(厚さ2μm)を塗工した。その表面に電離放射線硬化型樹脂(塗布量15μm)をグラビアコート方式で塗工した後、電子照射装置を用いて加速電圧165keV、5Mradの条件で電子線を照射し表面保護層を形成した。
その後、表面保護層を有する面に対して、エンボスロール(硬度:40)を用いてエンボス賦形を施し、透明性樹脂フィルムを作製した。
このとき、最大高さRz(1)は、20μmであり、最大高さRz(2)は、18μmであった。
その後、透明性樹脂フィルムのベース層を有する側のプライマー剤を塗工した面に、エステル系接着剤(塗布量5g/m2)を塗工し、絵柄層を有するMDFの絵柄層側に積層した後、20℃、10kg/m2の圧力を掛けて3日間要請し、化粧材を作製した。
その後、気泡の有無について確認した。」
(3)検討
以下、検討する。
上記(2)によると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の発明特定事項である「絵柄層を有する基材」、「透明性樹脂フィルム」について、それぞれ、どのようなものであるか記載され、「前記基材に積層される側と反対側に、JIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(1)が、20μm以上、200μm以下である凹凸形状を有しており、基材に積層される側のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さRz(2)が、15μm以下であ」る「透明性樹脂フィルム」の製造方法として、具体的に段落【0069】~【0074】に記載されていて、さらに、具体的な実施例も記載されている。
そうすると、本件特許発明1について、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用をすることができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし8についても同様である。
(4)特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、上記第3 2(1)及び(2)のように主張する。
主張(1)については、本件特許発明の透明性樹脂フィルムの製造方法について段落【0069】~【0074】に具体的な記載があるから、単層の場合であっても過度の試行錯誤を要することなく製造できるものといえ、当該主張は失当であって採用できない。
主張(2)については、実施可能要件は、上記(1)によって判断されるものであり、効果を奏するものが得られるどうかは関係がない。当該主張は失当であって採用できない。
(5)申立理由2についてのむすび
よって、申立理由2によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
第5 結語
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700844