2021-700748
改善した細孔構造を有する多孔質体
- 審判番号
- 2021-700748
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-561884外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6824909
- 請求日
- 2021年07月30日
- 審決日
- 2023年03月06日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.121-YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J) / P1651.851-YAA(B01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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特許第6824909号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~27に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)6月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年6月2日(US)アメリカ合衆国、2015年6月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和3年1月15日にその特許権の設定登録がされ、同年2月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~27に係る特許に対して、令和3年7月30日に特許異議申立人佐伯圭佑(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月29日付けで取消理由が通知され、令和4年4月28日に特許権者により意見書の提出がされ、同年7月12日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月9日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年12月27日に申立人により意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和4年11月9日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~8〕、〔9~25〕、〔26、27〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積とを有し」と記載されているのを、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9において、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積とを有し」と記載されているのを、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し」に訂正する(請求項9の記載を直接又は間接に引用する請求項10~25も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項26において、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積とを有し」と記載されているのを、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し」に訂正する(請求項26の記載を引用する請求項27も同様に訂正する。)。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0040】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「多孔質体」の物性を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0040】の記載に基づき、訂正前の請求項9に記載された「銀系エチレンエポキシ化触媒」に含まれている「担体」の物性を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0040】の記載に基づき、訂正前の請求項26に記載された「触媒組成物」に含まれている「担体」の物性を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~25〕、〔26、27〕について訂正することを認める。
第3 本件特許について
1 特許請求の範囲の記載(本件発明)
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)。
「【請求項1】少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有することを特徴とする、多孔質体。【請求項2】前記細孔容積の少なくとも90%は、細孔径が20μm以下の細孔である、請求項1に記載の多孔質体。続きを表示(全57行)【請求項3】前記細孔容積の少なくとも85%は、径が1μm~6μmの細孔である、請求項1に記載の多孔質体。【請求項4】前記細孔容積の15パーセント未満が、径が1μm未満の細孔である、請求項1に記載の多孔質体。【請求項5】前記細孔容積の少なくとも80%は、径が1μm~10μmの細孔である、請求項1に記載の多孔質体。【請求項6】SiO2として測定した含有量が0.2重量%未満のシリカと、Na2Oとして測定した含有量が0.2重量%未満のナトリウムを更に含む、請求項1に記載の多孔質体。【請求項7】40ppm以下の酸浸出性ナトリウムを更に含有する、請求項1に記載の多孔質体。【請求項8】前記細孔構造は、前記屈曲度及び前記歪度を有する、請求項1に記載の多孔質体。【請求項9】少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び、30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する担体と、前記担体上及び/又は内部に沈着した触媒量の銀と、前記担体上に沈着した1種類以上の促進量の助触媒と、を含むことを特徴とする、銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項10】前記1種類以上の助触媒は、第1族アルカリ金属助触媒、1種類以上の遷移金属、1種類以上の第2族アルカリ土類金属、又は、それらの組み合わせを含む、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項11】前記1種類以上の遷移金属は、周期表において第4~10族に属する元素からなる群から選択される、請求項10に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項12】前記1種類以上の遷移金属は、モリブデン、レニウム、タングステン、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、トリウム、タンタル及びニオブからなる群から選択される、請求項11に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項13】前記1種類以上の遷移金属は、レニウム、モリブデン、タングステン、又は、それらの組み合わせを含む、請求項10に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項14】前記第1族アルカリ金属助触媒は、セシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム及びルビジウムからなる群から選択される、請求項10に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項15】前記第1族アルカリ金属助触媒は、リチウム及びセシウムを含む、請求項14に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項16】前記1種類以上の助触媒は、促進効果のあるレニウム、セシウム及びリチウムの組み合せを含む、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項17】前記銀の触媒量は、10~50重量%である、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項18】前記細孔容積の少なくとも90パーセントは、細孔径が20μm以下の細孔である、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項19】前記細孔容積の少なくとも85%は、径が1μm~6μmの細孔である、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項20】前記細孔容積の15パーセント未満が、径が1μm未満の細孔である、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項21】前記細孔容積の少なくとも80%は、径が1μm~10μmの細孔である、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項22】前記担体は、SiO2として測定した含有量が0.2重量%未満のシリカと、Na2Oとして測定した含有量が0.2重量%未満のナトリウムを含む、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項23】前記担体は、40ppm以下の水洗浄した酸浸出性ナトリウムを含む、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項24】前記担体は、血小板形態のアルミナ微結晶を20容量%未満含有する、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項25】前記細孔構造は、前記屈曲度及び前記歪度を有する、請求項9に記載の銀系エチレンエポキシ化触媒。【請求項26】少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び、30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する担体と、前記担体上及び/又は内部に沈着した少なくとも1種類の触媒量の触媒活性金属と、を含むことを特徴とする、触媒組成物。【請求項27】前記担体は、SiO2として測定した含有量が0.2重量%未満のシリカと、Na2Oとして測定した含有量が0.2重量%未満のナトリウムを含む、請求項26に記載の触媒組成物。」
2 発明の詳細な説明の記載
本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、次の事項が記載されている。
(1) 「【発明が解決しようとする課題】【0005】一部の用途では、多孔質体は、反応又は分離空間に供給されることから、所望の反応物質をより多く充填及び分散するために、また、反応又は分離を起こすことができる表面積を大きくするために、細孔容積が大であること及び/又は表面積が大であることが望ましい。また、こういった用途では、運搬又は配置の際に損傷しない、すなわち、破砕したり、欠けたり、割れたりしないような設備の健全性を必要となる。しかし、多孔質体において高機械的強度と高細孔容積の組み合せを達成することは容易ではない。気孔率が高くなるほど、強度は急激に低下するからである。【0006】上記を考慮して、流体輸送特性、特に、ガス拡散特性が高く、設備の健全性も高い細孔構造を有する多孔質体を提供する必要がある。」
(2) 「【0023】また、多孔質体の屈曲度、歪度及び浸透率などの他の細孔構造パラメータも、以下のように水銀圧入データから計算した。【0024】屈曲度ξは、Davgを加重平均孔径、kを浸透率、ρを物質の真密度、Itotを全比細孔容積とする式2から計算した(AutoPore V Operator Manual, Micromeritics,2014参照)。続きを表示(全15行)【数2】[図:0001398215000001.jpg]【0025】歪度σは、Carnigliaの式から計算したξを屈曲度、τを屈曲度係数とする式3から計算した(AutoPore V Operator Manual, Micromeritics,2014参照)。【数3】[図:0001398215000002.jpg]【0026】ダルシーの法則(上記の式1)で定義される浸透率は、ダルシーとポアズイユの式を組み合わせることによって計算することができる(例えば、Lowell et al.「Characterization of Porous Solids and Powders」Springer,2006参照)。任意の細孔形状係数をfとすると、浸透率kは、τを屈曲度係数、Pを材料の気孔率、dを細孔直径とする式4によって表される。【数4】[図:0001398215000003.jpg]」
(3) 「【0034】上述したように、本発明は、流体輸送特性が高く、且つ、設備の健全性も高い細孔構造を有する多孔質体を提供する。本発明の多孔質体は、α-アルミナ粒子を主成分として含有するため、多孔質セラミック体と呼んでもよい。典型例では、本発明の多孔質体は、少なくとも80%がα-アルミナを含み、残部は他の酸化物及び/又は非酸化物及び不可避的不純物である。より典型的には、本発明の多孔質体は、85%~99%がα-アルミナを含み、残部は他の酸化物及び/又は非酸化物及び不可避的不純物である。【0035】本発明の多孔質体は、典型例では、細孔容積が0.3mL/g~1.2mL/gである。より典型的には、本発明の多孔質体は、細孔容積が0.35mL/g~0.9mL/gである。本発明の一部の実施形態では、本発明の多孔質体は、吸水率が30%~120%であり、より典型的には35%~90%の範囲にある。続きを表示(全16行)【0036】本発明の多孔質体は、典型例では、表面積が0.3m2/g~3.0m2/gである。一実施形態では、本発明の多孔質体は、表面積が0.5m2/g~1.2m2/gである。別の実施形態では、本発明の多孔質体は、表面積が1.2m2/gよりも大きく3.0m2/g以下である。【0037】本発明の多孔質体は、単峰性であっても多峰性であってもよく、例えば、二峰性とすることができる。本発明の多孔質体は、少なくとも1つの細孔モード径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔径分布を有する。本発明の一実施形態では、多孔質体の細孔容積の少なくとも90%が、細孔径が20μm以下の細孔である。本発明の更に別の実施形態では、多孔質体の細孔容積の少なくとも85%が、径が1μm~6μmの細孔である。本発明のまた更なる実施形態では、多孔質体の細孔容積の15パーセント未満、好ましくは10%未満が、径が1μm未満の細孔である。本発明の更に別の実施形態では、多孔質体の細孔容積の少なくとも80%が、径が1μm~10μmの細孔である。本発明の特定の態様では、1μmより小さい細孔は基本的に存在しない。・・・【0039】本発明の多孔質体は、典型例では、全気孔率が55%~83%である。より典型的には、本発明の多孔質体は、全気孔率が58%~78%である。【0040】本発明の多孔質体は、典型例では、平均粒子圧壊強度が10N~150Nである。より典型的には、本発明の多孔質体は、平均粒子圧壊強度が40N~105Nである。一部の実施形態では、本発明の多孔質体は、摩耗値を40%未満、好ましくは25%未満とすることができる。本発明の一部の実施形態では、多孔質体は、摩耗を10%未満とすることができる。・・・【0045】上記の物性に加え、本発明の多孔質体は、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び、30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する。かかる細孔構造を有する多孔質体は、流体輸送特性が高く、且つ、設備の健全性も高い。一部の実施形態では、かかる細孔構造を有する多孔質体は、銀系エポキシ化触媒の担体として使用される場合、高い触媒特性を示すことができる。典型例では、本発明の多孔質体の細孔構造は、7.0以下の屈曲度及び/又は4以下の歪度を有する。」
(4) 「【0050】本発明の多孔質体の調製には、まず、α-アルミナ粉末、非シリケート結合剤、燃焼材、溶媒及び潤滑剤からなる前駆体混合物を準備する。非シリケート結合剤は、例えば、ベーマイト(γ-AlOOH)である。通常、非シリケート結合剤は、脱イオン水又は他の溶媒中に分散される。本発明では、前駆体混合物に使用されるα-アルミナ粉末は、粒径が0.1μm~6μmの粉砕α-アルミナ粉末である。多孔体前駆体混合物の全ての成分を均質に混合する。【0051】本発明で使用することができる主な燃焼材は、粒径が1μm~10μmの任意の従来の燃焼材からなる。主な燃焼材として使用できる燃焼材の例の一部としては、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどの置換セルロース、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸メチルやステアリン酸エチルなどの有機ステアリン酸エステル)、ワックス、粒状ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、クルミ殻粉等があり、多孔質体の調製に用いられる焼成温度で分解可能なものである。一例として、粒径が3μm~8μmのポリエチレンを、主な燃焼材として使用することができる。別の例としては、粒径が1μm~9μmのパラフィン又はPTFEを主な燃焼材として使用することができる。続きを表示(全14行)【0052】一部の実施形態では、未粉砕のα-アルミナ粉末を前駆体混合物に添加してもよい。他の実施形態では、未粉砕のα-アルミナ粉末は、粉砕α-アルミナ粉末と共に上記の前駆体混合物に添加することができる。本発明で使用することができる未粉砕のα-アルミナ粉末は、平均粒径を10μm~100μmの範囲としてもよい。未粉砕のα-アルミナ粉末を使用する場合、粉砕α-アルミナ粉末と未粉砕の-アルミナ粉末の重量比は、約0.25:1~約5:1とすることができる。【0053】必要であれば、補助燃焼材を前駆体混合物に添加することができる。補助燃焼材を使用する場合、その粒径は、上記の主な燃焼材の粒径よりも大きい。補助燃焼材は、主な燃焼材と同じ燃焼材であっても、異なる燃焼材であってもよい。一例として、粒径が3μm~10μmのグラファイトを補助燃焼材として使用することができる。別の例としては、粒径が1μm~9μmのパラフィン又はPTFEを補助燃焼材として使用することができる。補助燃焼材を用いる場合、主な燃焼材と補助燃焼材の重量比は、1.1~5.4の範囲とすることができる。【0054】上記前駆体混合物には、従来の潤滑剤、例えば、ペトロラタムなどを使用することができる。本発明のこの時点で加えることができる潤滑剤の量は、本発明の多孔質体の形成に使用される潤滑剤の量の全体であっても一部であってもよい。【0055】本発明の一部の実施形態では、前述の未粉砕のα-アルミナ粉末よりも粒径が大きい別の未粉砕のα-アルミナ粉末を前駆体混合物に添加してもよい。別の未粉砕のα-アルミナ粉末を用いる場合、粉砕α-アルミナ粉末と別の未粉砕のα-アルミナ粉末の重量比は、約0.2:1~約5:1とすることができる。一部の実施形態では、別の潤滑剤を前駆体混合物に添加することができる。【0056】次に、上記の前駆体混合物を、所望の形状の多孔質体に形成する。形状は多様に変更してもよく、最終的に形成して得られる多孔質体の所望の用途に基づいて選択することができる。前駆体混合物は、通常、プレス、押出、成形、キャスティング成形などによって形成される。本発明の一実施形態では、中空円筒形状を形成できる押出機ダイを使用して押し出しを行い、これを略等しい長さに切断してもよい。そして、切断後の押出物を、いずれかの従来の乾燥手段により乾燥する。続いて、乾燥した押出物は、水分を取り除き、燃焼材と他に存在する充填剤の大部分を燃尽させるために、加熱炉に移すことができる。燃焼材の種類に応じ、10℃/h~100℃/hの間で加熱速度を変えて100℃~1000℃の温度で熱処理を行うことができまる。その後、押出物を焼結させることができる。一例として、1200℃~1600℃の温度の流動空気中で焼結を行ってもよい。焼結後、得られた多孔質体を室温まで冷却する。加熱速度及び冷却速度は、1℃/min~5℃/minまでの範囲内とすることができる。本発明においては、0.5℃/min~20℃/minまでの範囲内の加熱速度及び冷却速度で多孔質体を製造することもできる。」
(5) 「【0058】本発明の一実施形態では、上記多孔質体は、多孔質体上及び/又は内部に沈着した1種類以上の触媒活性材料、通常金属を含む触媒担体(すなわち触媒担持体)として使用することができる。1種類以上の触媒活性材料は、特定の反応を触媒することができる当技術分野で周知のものである。一部の実施形態では、触媒活性材料は、周期表において第3~14族に属する元素及び/又はランタノイドのうちの1種類以上の遷移金属を含む。このような用途では、1種類以上の助触媒となる化学種(すなわち、特定の反応を補助する化学種)も、本発明の多孔質体上及び/又は内部に沈着することができる。1種類以上の助触媒となる化学種は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び/又は元素周期表において第15~17族に属する元素であってもよい。」
(6) 「【0081】[実施例1]多孔質体の調製と特徴分析【0082】本発明の多孔質体の前駆体混合物の典型的な組成を表1に示す。本発明の多孔質体は、典型的には、(i)結合剤を水に分散し、(ii)粉砕及び/又は未粉砕α-アルミナ粉末を添加し、(iii)燃焼材1があれば添加し、(iv)燃焼材2があれば添加し、(v)潤滑剤を添加し、絶えず攪拌して調製する。本発明の各前駆体混合物の個々の成分の量及び種類の詳細を表1に示す。次に、ダイが1本の2インチBonnot押し出し機を用いて混合物を押し出し、中空円筒形状の押出物を製造した。押出物を等長に切断し、加熱灯の下で1時間乾燥させた。その後、切断し乾燥させた押出物を炉に移し、(i)平均加熱速度23℃/hで16時間800℃の流動空気中で燃焼材を熱分解し、次に(ii)加熱及び冷却速度を2.0℃/分として12時間1250~1550℃で焼結することで熱処理を行った。続きを表示(全27行)【0083】本発明の典型例である多孔質体PB1~PB7を上述した一般的方法を用いて調製し、得られた多孔質体を上述の方法を用いて特性分析した。PB8は、基準となる銀系エポキシ化触媒用担体である。【0084】表2は、多孔質体PB1~PB8の異なる細孔構造に由来する特性を表にしたものであり、表3は、様々な多孔質体PB1~PB8で測定された物理特性を示す。PB1~PB7で測定された不純物は、[SiO2]が0.02~1.0重量%、[Na2O]が0.01~0.10重量%、酸浸出性ナトリウムが5~35ppmであった。PB8の不純物は、[SiO2]=4.5重量%、[Na2O]=0.2重量%であり、酸浸出性ナトリウムが約100ppmであった。【0085】図1Aは水銀圧入ポロシメトリによって測定されたPB1及びPB3の積算細孔容積曲線を示し、図1Bはlog微分細孔容積曲線を示す。両曲線は測定精度内で重っているが、PB1とPB3は、図2A、図2B、図3A及び図3B並びに表2に示すように、非常に異なる多孔質構造を持ち、別の特性を有している。PB1は、厚い壁で隔てられた少数の大きな細孔を含み、PB3よりも屈曲度と歪度が大きい。逆に、PB3は、薄い壁で隔てられた多数の小さい細孔を含み、PB1よりも屈曲度と歪度が小さい。PB1とPB3の浸透率は同等である。これら測定値に基づくと、PB3では、屈曲度と歪度の値が小さいことから、触媒ペレット内での拡散性ガス輸送が改善している(すなわち、有効拡散率が高くなっている)。【0086】図4Aは水銀圧入ポロシメトリによって測定されたPB1及びPB4の積算細孔容積曲線を示し、図4Bはlog微分細孔容積曲線を示す。log微分細孔容積曲線は一致している。先行技術の教示では、これらは、固有の性能を持つ同じ多孔質構造を示しているということになる。しかし、PB1及びPB4は、図2A、図2B、図5A及び図5B並びに表2に示すように、非常に異なる多孔質構造を持ち、別の特性を有している。PB1は、厚い壁で隔てられた少数の大きな細孔を含み、PB4よりも屈曲度と歪度が大きく、浸透率が低い。逆に、PB4は、非常に厚い壁で隔てられた非常に少数の非常に大きな細孔を含み、PB1よりも屈曲度と歪度が小さく、浸透率が高い。これら測定値に基づくと、PB4では、屈曲度と歪度の値が小さいことから、触媒ペレット内での拡散性ガス輸送が改善している(すなわち、有効拡散率が高くなっている)。また、PB4では、圧力が低下した際のガス流特性も向上している。【0087】図6Aは水銀圧入ポロシメトリによって測定されたPB5及びPB6の積算細孔容積曲線を示し、図6Bはlog微分細孔容積曲線を示す。積算細孔容積曲線とlog微分細孔容積はいずれも非常に似ているが、完全には重なっていない。B5とPB6は、図7A、図7B、図8A及び図8B並びに表2に示すように、非常に異なる多孔質構造を持ち、別の特性を有している。PB5は、厚い壁で隔てられた少数の大きな細孔を含み、PB6よりも屈曲度と歪度が小さい。逆に、PB6は、間に壁を有さない非常に大きな細孔を含み、PB5よりも屈曲度と歪度が大きい。PB5とPB6の浸透率は同等である。これら測定値に基づくと、PB5では、屈曲度と歪度の値が小さいことから、触媒ペレット内での拡散性ガス輸送が改善している(すなわち、有効拡散率が高くなっている)。【0088】表1:多孔体前駆体の組成の範囲【表1】[図:0001398215000004.jpg]【0089】表2:各多孔質体の特性の比較【表2】[図:0001398215000005.jpg]【0090】表3:各多孔質体の特性の範囲【表3】[図:0001398215000006.jpg]」
(7) 「【0091】[実施例2]本発明の触媒1と比較例の触媒1の調製【0092】銀系エチレンオキシド触媒用の銀原液:277.5gの脱イオン水を冷却槽に入れ、調製中は一貫して温度を50度に維持した。撹拌し続けながら、過熱を避けるために221.9gのエチレンジアミンを少量ずつ加えた。次に、174.1gのシュウ酸二水和物を水-エチレンジアミン溶液に少量ずつ加えた。シュウ酸を全て溶解した後、326.5gの高純度酸化銀を溶液に少量ずつ加えた。溶液は、酸化銀を全て溶解し、約35℃まで冷却した後、冷却槽から取り出した。濾過後の溶液は約30重量%の銀を含み、比重は1.55g/mLであった。続きを表示(全28行)【0093】本実施例では、本発明の多孔質体PB2を本発明の触媒1の担体として選択し、多孔質体PB8を比較例の触媒1の担体として選択した。銀と他の助触媒を担体に導入する前に、前述の担体をそれぞれ洗浄した。【0094】[触媒1の調製]300gのPB2をフラスコに入れ、含浸する前に約0.1torrまで真空排気した。最終触媒のCs含有量が0ppm~1800ppm、最終触媒のレニウム含有量が0ppm~900ppm、銀(Ag)含有量が10~30重量%となる触媒組成物を調製するのに十分な濃度で、水酸化セシウムをセシウム(Cs)として、過レニウム酸をレニウム(Re)として、水酸化物を少なくとも1種類の別のアルカリ金属として含む助触媒水溶液を上記銀溶液に添加した。完全に混合した後、圧力を約0.1torrに保ちながら、促進された銀溶液を真空のフラスコ内に吸引し、担体を覆った。約5分後に真空を開放して大気圧に戻し、迅速に溶液を細孔内に完全に浸透させた。その後、含浸担体から余分な含浸溶液を排除した。【0095】湿った触媒を、移動ベルトか焼炉で焼成した。この装置では、湿った触媒をステンレススチールベルト上に載せて搬送し、マルチゾーン型加熱炉を通過させた。加熱炉のすべてのゾーンを予熱した窒素で連続的にパージ(浄化)し、触媒が1つのゾーンから次のゾーンへと通過するごとに温度が徐々に上昇するようにした。触媒に与えられた熱は、炉壁及び予熱された窒素から発散された。この例では、湿った触媒が周囲温度で加熱炉に入れられた。そして、触媒が加熱ゾーンを通過するごとに温度を徐々に上げ、最大約450℃までにした。最後の(冷却)ゾーンでは、焼成された触媒が大気中に出てくる前に、直ちに温度を100℃未満まで下げた。炉内の総滞留時間は約45分であった。【0096】本発明の触媒1及び比較例の触媒1に対し、上述した含浸及び焼成の両工程を、1回、或いは、2回、3回又は複数回連続で行い、触媒を調製した。【0097】比較例の触媒1は、担体としてPB2の代わりにPB8を使用したこと以外は、本発明の触媒1と全く同じ方法で調製し、焼成した。【0098】最大の性能を引き出すため、すなわち、最高の選択性と最高の活性の組合せを得るため、担体PB2及びPB8上の触媒組成物をそれぞれの担体上で最適化した。エチレンからエチレンオキシドへのエポキシ化で、最適化した触媒のみを比較した。【0099】[実施例3]エチレンからエチレンオキシドへのエポキシ化における本発明の触媒1及び比較例の触媒1の使用【0100】本発明の触媒1を、実験用マイクロリアクタを用い、ΔEO3.8mol%、仕事率355kgEO/m3cat/hで、約2000時間の操業に使用した。使用した供給組成物は、[C2H4]=30%、[O2]=7%、[CO2]=1%であり、残部がN2ガスであった。比較例1は、本発明の触媒1について上述したものと全く同じ条件で使用した。【0101】エチレンのエポキシ化に担体としてのPB2を用いた本発明の触媒1と担体としてPB8を用いた比較例の触媒1について、触媒性能の比較を表4に示す。選択性及び触媒安定性に関しては、担体としてPB2を用いた本発明の触媒1では、性能に向上が見られた。PB8よりも低い屈曲度と歪度を有することでガス拡散性が向上したPB2では、より高い選択性と安定性を得ることができた(表2参照)。PB8よりも純度が高いPB2では、性能も改善していた。このように、本発明の新規多孔質体が有する向上した輸送特性(すなわち、屈曲度と歪度が低く、有効拡散率が高いこと)と高純度の組み合わせは、エチレンのエポキシ化において非常に重要であるといえる。【0102】表4:担持体として使用された選ばれた多孔質セラミック上のEO触媒の性能【表4】[図:0001398215000007.jpg]」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が特許権者に通知した、令和3年11月29日付けの取消理由、及び、令和4年7月12日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が後記2(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2) 取消理由2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 取消理由3(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由1(実施可能要件違反)に対する当審の判断
(1) 具体的な指摘事項
取消理由1は、要するに、発明の詳細な説明の実施例1(前記第3の2(6)の【0082】~【0090】参照)において、(i)当該実施例の多孔質体PB1~PB7を得るために使用した原料や製造条件が具体的に記載されていないこと、及び、(ii)当該多孔質体PB1~PB7の屈曲度、歪度及び浸透率がそれぞれ単一の値(【表2】)であるのに対して、吸水率、細孔容積、全気孔率、BET表面積及び平均圧壊強度が幅をもった数値範囲(【表3】)であるため、これらの関係が理解できないことを論拠にして、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない、というものである。
(2) 取消理由1についての検討
ア 実施可能要件の判断手法
発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に係る規定(実施可能要件)に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要すると解される。そして、この規定のいう「実施」とは、物の発明においては、当該発明にかかる物の生産、使用等をいうものであるから、実施可能要件を満たすといえるためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならないから、以下、この観点に立って改めて検討する。
イ 本件発明1~8について
(ア) 本件発明1は、前記第3の1に示したとおり、「少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する」ことが特定された「多孔質体」の発明である。
(イ) これに対して、前記第3の2(6)に摘記した発明の詳細な説明の実施例1(段落【0082】~【0090】)には、「本発明の実施例」として多孔質体PB1~PB7が記載され、その製造方法に関して、【0082】には、「本発明の多孔質体の前駆体混合物の典型的な組成を表1に示す。本発明の多孔質体は、典型的には、(i)結合剤を水に分散し、(ii)粉砕及び/又は未粉砕α-アルミナ粉末を添加し、(iii)燃焼材1があれば添加し、(iv)燃焼材2があれば添加し、(v)潤滑剤を添加し、絶えず攪拌して調製する。本発明の各前駆体混合物の個々の成分の量及び種類の詳細を表1に示す。次に、ダイが1本の2インチBonnot押し出し機を用いて混合物を押し出し、中空円筒形状の押出物を製造した。押出物を等長に切断し、加熱灯の下で1時間乾燥させた。その後、切断し乾燥させた押出物を炉に移し、(i)平均加熱速度23℃/hで16時間800℃の流動空気中で燃焼材を熱分解し、次に(ii)加熱及び冷却速度を2.0℃/分として12時間1250~1550℃で焼結することで熱処理を行った。」こと、及び、【0088】の【表1】には、前駆体混合物の個々の成分の量が記載されているものの、「未粉砕α-アルミナ粉末」及び「粉砕α-アルミナ粉末」の粒径、並びに、「結合剤」、「潤滑剤」、「燃焼材1」及び「燃焼材2」の具体的な成分が特定されていない。
(ウ) しかしながら、発明の詳細な説明には、前記第3の2(4)に摘記したとおり、「本発明の多孔質体の調製」に関して、「本発明では、前駆体混合物に使用されるα-アルミナ粉末は、粒径が0.1μm~6μmの粉砕α-アルミナ粉末である。」(【0050】)、「本発明で使用することができる未粉砕のα-アルミナ粉末は、平均粒径を10μm~100μmの範囲としてもよい。」(【0052】)、「非シリケート結合剤は、例えば、ベーマイト(γ-AlOOH)である。」(【0050】)、「上記前駆体混合物には、従来の潤滑剤、例えば、ペトロラタムなどを使用することができる。」(【0054】)、「一例として、粒径が3μm~8μmのポリエチレンを、主な燃焼材として使用することができる。別の例としては、粒径が1μm~9μmのパラフィン又はPTFEを主な燃焼材として使用することができる。」(【0051】)、「補助燃焼材を使用する場合、その粒径は、上記の主な燃焼材の粒径よりも大きい。・・・一例として、粒径が3μm~10μmのグラファイトを補助燃焼材として使用することができる。別の例としては、粒径が1μm~9μmのパラフィン又はPTFEを補助燃焼材として使用することができる。補助燃焼材を用いる場合、主な燃焼材と補助燃焼材の重量比は、1.1~5.4の範囲とすることができる。」(【0053】)ことが記載され、「未粉砕α-アルミナ粉末」及び「粉砕α-アルミナ粉末」の粒径の範囲や、「結合剤」、「潤滑剤」、「燃焼材1」及び「燃焼材2」に対応する成分が例示されているから、これらの記載を参酌して、「未粉砕α-アルミナ粉末」及び「粉砕α-アルミナ粉末」の粒径の範囲、「結合剤」、「潤滑剤」、「燃焼材1」及び「燃焼材2」の各成分を選択するとともに、【0082】に記載の焼成温度や【表1】の前駆体混合物の各成分量を選択して、実施例1の製造方法を行うことは、当業者の過度な試行錯誤を要するとは言い難い。
(エ) また、【表2】及び【表3】(前記第3の2(6)参照)において、当該多孔質体PB1~PB7の屈曲度、歪度及び浸透率がそれぞれ単一の値であるのに対して、吸水率、細孔容積、全気孔率、BET表面積及び平均圧壊強度が幅をもった数値範囲となっているものの、【表2】及び【表3】の数値は、各多孔質体PB1~PB7に対して複数回の実験を行った結果について、各数値のばらつきを含めて示した数値であると当業者であれば理解できるため、【表2】及び【表3】に示された物性は、実施例1で製造された多孔質体PB1~PB7のそれぞれの物性を示していることも理解できる。
(オ) したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~8に係る「多孔質体」を当業者が製造できる程度に記載されているといえるから、前記アの判断手法に照らせば、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~8に対して実施可能要件を満足する。
ウ 本件発明9~27について
本件発明9及び27は、前記第3の1に示したとおり、「少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する」ことが特定された「担体」を含む「銀系エチレンエポキシ化触媒」及び「触媒組成物」の発明である。
そこで、これらの発明に対する実施可能要件を検討すると、当該発明の「担体」に関しては、上記イで検討した「多孔質体」と事情は同じである。
加えて、発明の詳細な説明には、前記第3の2(7)に摘記したとおり、実施例2(【0091】~【0098】)として、多孔質体PB2(実施例)を使用して、銀、セシウム及びレニウムが含有する「触媒組成物」又は「銀系エチレンオキシド触媒」を製造することも記載されているから、発明の詳細な説明には、本件発明9及びこれを引用する本件発明10~25に係る「銀系エチレンエポキシ化触媒」、並びに、本件発明26及びこれを引用する本件発明27に係る「触媒組成物」を製造できる程度に記載されているといえる。
したがって、前記アの判断手法に照らせば、発明の詳細な説明の記載は、本件発明9~27に対しても、実施可能要件を満足する。
(3) 申立人の主張についての検討
ア 申立人の主張の概要
申立人は、(i)発明の詳細な説明に記載された比較例の製造方法が不明であり、比較例から本件発明の製造条件を類推できないこと、(ii)発明の詳細な説明には、屈曲度、歪度、浸透率のいずれか1つのみを満たす多孔質体を得るための手段が記載されていないこと、(iii)アルミナ粉体の粒子サイズや結合剤等の種類が多孔質体の細孔分布に影響することを考慮すると、発明の詳細な説明の【0050】~【0054】に記載された膨大な組合せから適切な組合せに至るまでには、当業者の過度の試行錯誤を要することを論拠にして、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満足しない旨を主張している(特許異議申立書第48頁第6行~第51頁第19行、令和4年12月27日付け意見書第5頁第2行~第9頁第17行)。
イ (i)の論拠について
前記(2)イ及びウで検討したとおり、発明の詳細な説明の実施例1及び【0050】~【0054】(前記第3の2(4)及び(6)参照)の記載に基づいて、当業者において、本件発明1~27の「多孔質体」又は「担体」を製造できることを理解できるため、比較例の製造方法が記載されていないことは、実施可能要件違反の理由にならない。
よって、前記(i)の論拠は採用できない。
ウ (ii)の論拠について
発明の詳細な説明の実施例1(前記第3の2(6)参照)は、屈曲度ξ、歪度σ及び浸透率kの満たす多孔質体に関するものであり、当該多孔質体を製造できることは、前記(2)イで検討したとおり、当業者であれば発明の詳細な説明の記載に基づき理解できるものである。また、屈曲度ξ、歪度σ及び浸透率kは、いずれも細孔構造に係る特性であるし、さらに、発明の詳細な説明の【0024】及び【0025】に記載された、屈曲度ξの算出式(式2)及び歪度σの算出式(式3)(前記第3の2(2)参照)によれば、屈曲度ξ、歪度σ及び浸透率kの値は連動して変化するものであるから、発明の詳細な説明に、屈曲度ξ、歪度σ及び浸透率kのいずれか1つのみを満たす多孔質体を得るための手段が記載されていないことが、実施可能要件違反の理由にはならない。
よって、前記(ii)の論拠は採用できない。
エ (iii)の論拠について
申立人の提出した甲第12号証(特開平6-47278号公報)、甲第13号証(特表2009-504375号公報)及び甲第14号証(特開2001-157839号公報)に記載されているように、アルミナ粉体の粒子サイズや結合剤等の種類が多孔質体の細孔分布に影響するにしても、前記(2)イで検討したとおり、発明の詳細な説明の実施例1及び【0050】~【0054】の記載(前記第3の2(4)及び(6)参照)に基づき、前駆体混合物の成分や製造条件を導くことは、当業者の過度な試行錯誤を要することなく実施できるといえる。
よって、前記(iii)の論拠は採用できない。
(4) 取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。
3 取消理由2(サポート要件違反)に対する当審の判断
(1) 具体的な指摘事項
取消理由2は、要するに、発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【0005】及び【0006】の記載(前記第3の2(1)参照)からして、「流体輸送特性、特に、ガス拡散特性が高く、設備の健全性も高い細孔構造を有する多孔質体を提供する必要がある。」といえるところ、(i)発明の詳細な説明の実施例1の多孔質体PB1~PB4及びPB6の平均圧壊強度が、比較例である多孔質体PB8の平均圧壊強度よりも小さくなっていること、及び、(ii)設定登録時の請求項1~27に係る発明は、「平均圧壊強度」を特定してないことを論拠にして、設定登録時の請求項1~27は、当該課題を解決できると認識できる範囲のものでないため、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない、というものである。
(2) 取消理由2についての検討
ア サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って改めて検討する。
イ 本件発明1~8について
(ア) 本件発明の課題は、前記(1)で指摘したとおり、「流体輸送特性、特に、ガス拡散特性が高く、設備の健全性も高い細孔構造を有する多孔質体を提供する必要がある。」(【0006】)ことといえる。
(イ) これに対して、発明の詳細な説明の実施例1(【0081】~【0090】)には、前記第3の2(6)に摘記したとおり、「本発明の実施例」として多孔質体PB1~PB7、「比較例」として多孔質体PB8が記載され、さらに、多孔質体PB1~PB8について、「屈曲度」、「歪度」、「透過率」、「細孔容積」、「BET表面積」及び「平均圧壊強度」が記載されている(【表2】、【表3】)。
そして、多孔質体PB1~PB7は、PB8(比較例)に対して、「屈曲度」が小さく、「歪度」が小さく、また、「透過率」が大きくなっている。
加えて、特許権者が提出した乙第2号証(米国特許出願公開第2018/0161761号明細書)の[0107]には、「The crush strength of a fluoride-mineralized carrier suitable for use herein is not narrowly critical, although it should have a crush strength sufficient to allow for its use in the commercial production of ethylene oxide. Typically, the crush strength of a fluoride-mineralized carrier suitable for use herein may be, for example, at least 1.8 N/mm, or at least 2 N/mm, or at least 3.5 N/mm, or at least 5 N/mm and frequently as much as 40 N/mm, or as much as 25 N/mm, or as much as 15 N/mm.」(当審仮訳:ここでの使用に適したフッ化-ミネラル化された担体の圧壊強度は、エチレンオキシドの商業的な生産に使用されるために十分に許容される圧壊強度を持っていなければならないものの、限定された決定的なものではない。典型的には、少なくとも1.8N/mm、又は少なくとも2N/mm、又は少なくとも3.5N/mm、又は少なくとも5N/mm、及び頻繁には40N/mm程度、又は25N/mm程度、又は15N/mm程度であり得る。)と記載され、当該記載によれば、エポキシ化触媒用の担体の設備健全性に必要とされる最低限の圧壊強度が1.8N程度であるといえるから、当該圧壊強度より大きな値の平均圧壊強度を有する多孔質体PB1~PB7は、高い設備健全性を有しているといえる。
したがって、実施例1の多孔質体PB1~PB7であれば、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる。
(ウ) また、発明の詳細な説明には、前記第3の2(3)によれば、「本発明の多孔質体」は、「少なくとも80%がα-アルミナを含み」(【0034】)、「細孔容積が0.3mL/g~1.2mL/g」(【0035】)、「表面積が0.3m2/g~3.0m2/g(【0036】)」、「少なくとも1つの細孔モード径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔径分布」(【0037】)、「全気孔率が55%~83%」(【0039】)、「平均粒子圧壊強度が10N~150N」(【0040】)との物性に加えて、「7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び、30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する」(【0045】)」ことで、「流体輸送特性が高く、且つ、設備の健全性も高い」(【0045】)」ことが記載されているから、これら物性を満たす多孔質体についても、多孔質体PB1~PB7と同様に、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲といえる。
(エ) 他方、本件発明1は、前記第3の1に示したとおり、「0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する」ことが特定された「少なくとも80%がα-アルミナを含」む「多孔質体」であることから、前記(イ)及び(ウ)での検討をふまえると、当業者において、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
そして、本件発明1を引用する本件発明2~8についても事情は同じである。
したがって、前記アの判断手法に照らせば、本件発明1~8に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満足する。
ウ 本件発明9~27に対する判断
本件発明9及び26は、前記第3の1に示したとおり、それぞれ、「少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造を有する担体」を使用した、「銀」と「助触媒」を含む「銀系エチレンエポキシ化触媒」、及び、「触媒活性金属」を含む「触媒組成物」の発明である。
そこで、これら発明に対するサポート要件を検討すると、これら発明の「担体」に関しては、上記イで検討した「多孔質体」と事情は同じである。
加えて、本件発明9の「銀」と「助触媒」を含む「銀系エチレンエポキシ化触媒」、及び、本件発明26の「触媒活性金属」を含む「触媒組成物」に関して、発明の詳細な説明には、前記第3の2(7)に摘記したとおり、実施例2及び3(【0091】~【0102】)として、多孔質体PB2(実施例)及びPB8(比較例)を使用して、銀、セシウム及びレニウムが含有する「触媒組成物」又は「銀系エチレンオキシド触媒」及びその性能が記載され、さらに、【0058】(前記第3の2(5)参照)には、「触媒活性材料」及び「助触媒」についても記載されている。
したがって、これらの事項を併せ考えれば、本件発明9及び26についても、当業者において、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
そして、本件発明9を引用する本件発明10~25、及び、本件発明26を引用する本件発明27についても事情は同じである。
したがって、前記アの判断手法に照らせば、本件発明9~27に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満足する。
(3) 申立人の主張についての検討
ア 申立人の主張の概要
申立人は、(i)発明の詳細な説明の実施例1には、屈曲度、歪度、浸透率の全てを満たす多孔質体が記載されているのみであり、これらのいずれか1つのみを満たす多孔質体の具体例が存在しないこと、(ii)当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明に係る多孔質体を製造できないため、発明の詳細な説明には、本件発明の具体的な裏付けがないこと、及び、(iii)本件発明の「平均粒子圧壊強度」の上限値が特定されていないところ、発明の詳細な説明には、150Nを超える平均粒子圧壊強度を有する多孔質体の裏付けがないことを論拠にして、本件発明1~27に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件を充足しない旨を主張している(特許異議申立書第51頁第27行~第52頁第27行、令和4年12月27日付け意見書第10頁第17行~第13頁第21行)。
イ (i)の論拠について
前記2(3)ウで検討したとおり、屈曲度ξ、歪度σ及び浸透率kは、いずれも細孔構造に係る特性であって、これらの値は連動して変化するものであるし、また、本件発明1~27は、前記(2)イ及びウで検討したとおり、発明に詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると認識できる範囲ものであるから、発明の詳細な説明に、屈曲度、歪度及び浸透率のいずれか1つのみを満たす多孔質体の具体例が存在しないことは、サポート要件違反の理由にならない。
よって、前記(i)の論拠は採用できない。
ウ (ii)の論拠について
本件発明1~27は、前記2(2)イ及びウで検討したとおり、発明の詳細な説明の記載に基づき当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施でき、具体的な裏付けは十分にされているから、前記(ii)の論拠は採用できない。
エ (iii)の論拠について
本件発明1~27の多孔質体又は担体において、α-アルミナ含有量、細孔容積、表面積、並びに、屈曲度、歪度、及び浸透率のうち少なくとも1つの細孔構造が特定されることで、多孔質体又は担体の強度を上限は自ずと定まるものであるし、また、本件発明1~27は、前記(2)イ及びウで検討したとおり、発明に詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると認識できる範囲ものであるから、発明の詳細な説明に150Nを超える平均粒子圧壊強度を有する多孔質体の具体例が存在しないことは、サポート要件違反の理由にならない。
よって、前記(iii)の論拠は採用できない。
(4) 取消理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。
4 取消理由3(明確性要件)に対する当審の判断
(1) 具体的な指摘事項
取消理由3は、要するに、設定登録時の請求項1、9及び26に係る発明における「屈曲度」、「歪度」及び「透過率」に関して、発明の詳細な説明の【0024】~【0026】(前記第3の2(2)の参照)には、これらの算出式(式2)~(式4)が記載されているものの、当該算出式で使用する「屈曲度係数τ」及び「細孔形状係数f」の具体的な数値が記載していないし、また、当該係数の数値が技術常識であるとの証拠もないため、「屈曲度」、「歪度」及び「透過率」の値を一義的に決定できないことを論拠にして、特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない、というものである。
(2) 取消理由3についての検討
ア 「屈曲度係数τ」について
発明の詳細な説明の【0025】(前記第3の2(2)の参照)には、「歪度σは、Carnigliaの式から計算したξを屈曲度、τを屈曲度係数とする式3から計算した(AutoPore V Operator Manual, Micromeritics,2014参照)。」と記載されている。
そして、当該記載において参照されている文献(AutoPore V Operator Manual, Micromeritics, 2014, C-1~E-2(乙第3号証))のD-14頁には、
「The tortuosity factor is calculated as:[図:0001398215000008.jpg]・・・S = user-entered BET surface areali = specific intrusion volume for the ith pointDi = pore diameter for the ith point」
(当審仮訳:屈曲度係数は次のように計算される:
[図:0001398215000009.jpg]
・・・
S = ユーザが入力したBET比表面積
li = i点における特定圧入体積
Di = i点における細孔直径)
と記載され、屈曲度係数が、水銀圧入ポロシメトリ測定から得られる数値により算出されるものであることが示されている。
したがって、当業者であれば、発明の詳細な説明の【0025】及び同段落で明示的に参照されている乙第3号証の記載に基づいて、容易に屈曲度係数τを決定できることを理解できる。
イ 「細孔形状係数f」について
発明の詳細な説明の【0026】(前記第3の2(2)の参照)には、「ダルシーの法則(上記の式1)で定義される浸透率は、ダルシーとポアズイユの式を組み合わせることによって計算することができる(例えば、Lowell et al.「Characterization of Porous Solids and Powders」Springer,2006参照)。任意の細孔形状係数をfとすると、浸透率kは、τを屈曲度係数、Pを材料の気孔率、dを細孔直径とする式4によって表される。」と記載されている。
そして、当該記載において参照されている文献(Lowell el al., ”Characterization of Porous Solids and Powders”, Springer, 2006, p.200-205(乙第4号証))の第202頁には、
「So, on average[図:0001398215000010.jpg]Such that f=2 for cylindrical pores of circular cross section, i.e. τ=1 (cf 11.55)」
(当審仮訳:したがって、平均すると
[図:0001398215000011.jpg]
ここで、断面が円形の円柱状の細孔ではf=2、すなわちτ=1となる(11.55参照))
と記載され、円筒状の孔に対する細孔形状係数の値として2を使用することが示されている。
したがって、当業者であれば、発明の詳細な説明の【0026】及び同段落で明示的に参照されている乙第4号証の記載に基づいて、細孔形状係数fの値が、乙第4号証で使用されている「2」であることを理解できる。
ウ 小括
前記ア及びイで検討したとおり、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載等を参酌して、屈曲度係数τ及び細孔形状係数fの値を決定するとともに、「屈曲度」、「歪度」及び「透過率」の値を一義的に決定することは可能であるから、本件発明1~27に係る特許請求の範囲の記載は、明確性要件を満足する。
(3) 申立人の主張についての検討
申立人は、甲第10号証(「多孔質体の性質とその応用技術」、初版第1刷、株式会社フジ・テクノシステム、1999年、第335~337頁)、及び、甲第11号証(Lowell el al., ”Characterization of Porous Solids and Powders”, Springer, 2006, p.189-212)の記載を根拠にして、「屈曲度係数τ」及び「細孔形状係数f」の数値が不明である旨を主張している(特許異議申立書第54頁第14行~第55頁第25行)。
しかしながら、前記(2)で検討したとおり、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載等を参酌して、屈曲度係数τ及び細孔形状係数fの値を決定できるから、申立人の上記主張は採用できない。
(4) 取消理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由3に理由はない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 標記の特許異議申立理由の概要
標記の特許異議申立理由(以下、「申立理由」という。)は、要するに、後記の甲第1号証~甲第9号証を証拠として、設定登録時の請求項1、8~17、25及び26に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第9号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。
(証拠方法一覧)
甲第1号証 「粉体工学会誌、第35巻、第8号」のウェブページ、[令
和3年7月20日検索],インターネット、<URL:http://
www.jstage.jst.go,jp/browse/sptj/35/8/_content/-char/j
p>
甲第2号証 朝木美保他、“水銀圧入法(ポロシメトリー)による多孔
性材料の特性評価”、粉体工学会誌、1998年、第35巻
、第8号、第566~572頁
甲第3号証 国際公開第2014/124095号(甲第3号証の1)及
び、特表2016-513005号公報(甲第3号証の2)
甲第4号証 特表2013-534465号公報
甲第5号証 特表2013-533103号公報
甲第6号証 特表2011-528611号公報
甲第7号証 特表2005-518927号公報
甲第8号証 特表2001-502968号公報
甲第9号証 特表平10-503709号公報
なお、甲第1号証は、甲第2号証の発行日を示す証拠として、また、甲第3号証の2は、甲第3号証の1の日本語訳として提出されたものである。
2 各甲号証の記載内容について
(1) 甲第2号証の記載事項
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甲第2号証には、「水銀圧入法(ポロシメトリー)による多孔性材料の特性評価」(表題)に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下、同様である。)。
ア 「1.はじめに水銀圧入法(以下,水銀ポロシメトリー)は多孔性材料のキャラクタリゼーション技術として確立され,理論的に極めて興味深い分野である。このことは,IUPACの“Recommendations for the Characterization of Porous Solids”に記載されている次の文からも分かる。「水銀ポロシメトリーは,マクロ細孔(>0.05μm)からメソ細孔(0.05~0.002μm)領域の全細孔容積,および細孔径分布の模範的測定法として広く受け入れられている。ここ数十年の間に,水銀ポロシメトリーは,触媒や吸着剤,セラミックス,鉱物,石炭,土壌など多種多様の素材を扱う産業にとって,なくてはならない重要な位置を占めるようになってきている。」1) さらに,国際的に認知されているASTM,DINにも深く関わりを持ち,これらの発展にも貢献している。実際水銀ポロシメトリーの活用分野は大変幅広く,試料の種類も多岐におよぶ。例えば,触媒や触媒担体は細孔部分が利用されるため,細孔の特性評価が不可欠である。またセラミックス製造工程では,製品の細孔容積を制御する技術が大きい役割を占める。高温焼結前の多孔体の空隙は原料粒子径と添加物の性質や大きさ,加工条件よって決まり,焼結後は細孔容積と平均細孔径が減少してセラミック片全体が収縮する。こうした現象を水銀ポロシメトリーでは簡単に定量化することができる。堆積鉱物や,石炭,土壌,石油などの地質標本に豊富に含まれる細孔の網状構造は,水分保持,凍結融解耐久性(風化)や気体・液体の含有量といった諸特性を評価する上で重要な要素である。地質標本の細孔分布は非常に広範囲にわたる場合があるため,水銀ポロシメトリーはこれらに対して非常に望ましい評価技術と言える。ここに挙げた例は水銀ポロシメトリーの利用の一部に過ぎないが,固体の機械的,熱的,電気的性能や,液体中の拡散輸送における挙動が物質そのものの構造や気孔率に支配されているということを知れば納得いく話であろう。水銀ポロシメトリーのデータは設計段階で多孔質体を最適化し,製造過程では目的とする性能を付与するのに役立てることができるのである。」(第566頁左欄第1行~右欄第15行)
イ 「4.水銀ポロシメトリーデータ解釈の展開水銀ポロシメトリーにおける従来の解析項目と,今回ソフトに入れた解析項目の比較を表2に示す。これまで,水銀ポロシメトリーから細孔分布以外の情報を獲得しようという試みはほとんどされていない。しかし一度の測定からより多くの情報を導き出すことは誰もが望むことであり,浸入/排出曲線の解釈を展開しようというのが筆者らの目的である4)。」(第568頁左欄第3~10行)
ウ 「[図:0001398215000012.jpg]」(第567頁)
エ 「4.7.1 細孔屈曲度多孔性固体中での流体の拡散について考える際,細孔の屈曲状態によって,実測拡散率Deffが理論上の拡散率Dbから外れてくる14)。Deff=(Dbθc)/τ (11)τは細孔屈曲度,θcは細孔容積フラクションである。拡散孔路が真っ直ぐである場合からの全てのずれを,無次元の一つのパラメータとして表したのがτで,交差しない円筒型の細孔の場合,τ=2で,7までの値をとる。」(第571頁左欄第13~22行)
オ 「4.7.2 透過率透過率Kを固体に固有の,しかも簡単に測定できる細孔径や気孔率といった物性値に関連づけるモデルが考案されている。Darcyの式とPoiseuilleの法則を組み合わせ,次式の透過率を定義する16)。K=φdp2/16τ (14)φは粉体床の気孔率,dpは細孔の平均直径,またτは細孔の不均一性を補正するための細孔屈曲度である。」(第571頁右欄第2~10行)
(2) 甲第3号証(甲第3号証の1)の記載事項
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甲第3号証の1には、「MODIFIED CARRIER FOR SILVER BASED ETHYLENE OXIDE CATALYST」(当審仮訳:銀ベース酸化エチレン触媒のための改質された担体)(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「[0002] The present disclosure relates to silver based ethylene oxide catalysts, and more particularly, to carriers for such catalysts.」
(当審仮訳:[0002] 本願は、銀ベース酸化エチレン触媒及び特にこのような触媒のための担体に関する。)
イ 「[0021] The modified alumina carriers of the present disclosure comprise a plurality of bound alumina particles, wherein each alumina particle contains a plurality of cavities located within a surface of the alumina particle, wherein each cavity has a dimension from 2 nm to 5 microns. In some embodiments of the present disclosure, the dimension of each cavity is from 50 nm to 2 microns. In either embodiment, the dimension of the cavities is sufficient to trap at least one silver particle when a catalyst containing the carrier of the present disclosure is used in an epoxidation process. Other dimensions that are lesser than or greater than the above ranges can also be employed as long as the cavities that are intentionally formed are capable of trapping at least one silver particle when a catalyst containing the carrier of the present disclosure is used in an epoxidation process. In some embodiments and in which non-alumina particles are used to form other carriers besides alumina carriers, the other carriers that can be formed in the present disclosure include a plurality of bound non-alumina particles (i.e., silica), wherein each non-alumina particle contains a plurality of cavities located within a surface of the non-alumina particle, wherein each cavity has a dimension from 2 nm to 5 microns.」
(当審仮訳:[0021] 本願の前記改質されたアルミナ担体は、複数の結合されたアルミナ粒子を含み、ここで、それぞれのアルミナ粒子は、前記アルミナ粒子の表面内に位置する複数の空洞を含有し、ここで、それぞれの空洞は2nm~5μmの大きさ(dimension)を有する。本願の一部の具体例において、それぞれの空洞の大きさは、50nm~2μmである。一具体例において、本願の前記担体を含有する触媒がエポキシ化工程で用いられるとき、前記空洞の大きさは、少なくとも一つの銀粒子をトラップするのに十分である。本願の前記担体を含有する触媒がエポキシ化工程の間に用いられるとき、意図的に形成された空洞が少なくとも一つの銀粒子をトラッピング(trapping)することができる限り、前記範囲未満または超過の他の大きさも採用されることができる。一部の具体例において、非アルミナ(non-alumina)粒子がアルミナ担体以外に他の担体を形成するために用いられる場合、本願において形成できる前記他の担体は、複数の結合された非アルミナ粒子(すなわち、シリカ)を含み、ここで、それぞれの非アルミナ粒子は、前記非アルミナ粒子の表面内に位置した複数の空洞を含有し、ここで、それぞれの空洞は2nm~5μmの大きさを有する。)
ウ 「[0023] The surface modified carrier of the present disclosure is typically porous and has a B.E.T. surface area of at most 20 m2/g. More typically, the B.E.T. surface area of the carrier of the present disclosure is in the range from about 0.1 to about 10 m2/g, and even more typically the B.E.T. surface area of the carrier of the present disclosure is from about 0.2 to about 3 m2/g. In other embodiments, the surface modified carriers of the present disclosure are characterized by having a B.E.T. surface area from about 0.3 m2/g to about 3 m2/g, and preferably from about 0.5 m2/g to about 2.0 m2/g. The B.E.T. surface area described herein can be measured by any suitable method, but is more preferably obtained by the method described in Brunauer, S., et al., J. Am. Chem. Soc, 60, 309-16 (1938).[0024] The carriers of the present disclosure can also be characterized as having a water pore volume from about 0.10 cc/g to about 0.80 cc/g. More typically, the carriers of the present disclosure can also be characterized as having a water pore volume from about 0.20 cc/g to about 0.60 cc/g.」
(当審仮訳:[0023] 本願の前記表面改質された担体は典型的に多孔性であり、最大20m2/gのB.E.T.表面積を有する。より典型的に、本願の前記担体のB.E.T.表面積は、約0.1~約10m2/gの範囲であり、さらに典型的に、本願の前記担体のB.E.T.表面積は、約0.2~約3m2/gの範囲である。他の具体例において、本願の前記表面改質された担体は、約0.3m2/g~約3m2/gの範囲、好ましくは約0.5m2/g~約2.0m2/gの範囲のB.E.T.表面積を有することを特徴とする。本願において前記B.E.T.表面積は、任意の適切な方法によって測定できるが、より好ましくは、Brunauer, S., et al., J. Am. Chem. Soc, 60, 309-16 (1938)で記述された方法によって得られることができる。
[0024] 本願の前記担体は、さらに約0.10cc/g~約0.80cc/gの水分細孔容積を有することを特徴とすることができる。より典型的に、本願の前記担体は、さらに約0.20cc/g~約0.60cc/gの水分細孔容積を有することを特徴とすることができる。)
(3) 甲第4号証の記載事項
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甲第4号証には、「酸化エチレン触媒用のキャリア」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】本発明は、銀系酸化エチレン触媒に関し、特に、かかる触媒用のキャリアに関する。」
イ 「【0016】アルミナ粒子は、エチレン酸化触媒での使用が本分野で知られるいずれかの耐熱アルミナ成分からなることが好ましい。アルミナがα-アルミナであることが好ましい。本発明のα-アルミナは、非常に高純度、即ち、約95wt%以上であることが好ましく、98wt%以上のα-アルミナであることがより好ましい。α-アルミナは、低ソーダアルミナ又は低ソーダ反応性アルミナであることが好ましい。本明細書で使用される「反応性アルミナ」という用語は、一般に、易焼結性が良好で、粒径が非常に微細、即ち、一般に2ミクロン以下のα-アルミナを意味する。一般に、「低ソーダアルミナ」材料は、0.1%以下の量のナトリウムを含有する。代替的に、又は追加で、「低ソーダアルミナ」は、ナトリウムが0.1mg以下のアルミナ材料を意味することもある。良好な易焼結性は、一般に、2ミクロン以下の粒径で得られる。」
ウ 「【0026】本発明のキャリアは、好ましくは多孔質であり、通常は最大20m2/gのBET表面積を有する。BET表面積の範囲は、更に一般的には約0.1~約10m2/gであり、より一般的には1~5m2/gである。別の実施形態において、本発明のキャリアは、約0.3m2/g~約3m2/g、好ましくは約0.6m2/g~約2.5m2/g、より好ましくは約0.7m2/g~約2.0m2/gのBET表面積を有することを特徴としている。本明細書に記載されるBET表面積は、いずれの適切な方法でも測定できるが、Brunauer, S., et al., J. Am. Chem. Soc., 60, 309-16 (1938) に記載の方法により得ることがより好ましい。完成した担体の吸水値は、一般的には約0.2cc/g~約0.8cc/g、更に一般的には約0.25cc/g~約0.6cc/gの範囲にある。」
(4) 甲第5号証の記載事項
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甲第5号証には、「エポキシ化触媒の調製方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0002】本発明は、アルキレンオキシドの製造に有用な銀触媒、その調製、及びアルキレンオキシド工程におけるその使用に関する。特に、本発明は、気相中で酸素含有ガスを用いてアルケン、好ましくはエチレンを酸化し、高効率及び高選択性でアルキレンオキシド、好ましくは酸化エチレンを製造することが可能な金属促進担持銀触媒の調製方法に関する。」
イ 「【0022】これらの触媒に使用される担体又はキャリアは、エチレン酸化供給材料、生成物の存在下及び反応条件下では比較的不活性な多孔質耐熱触媒担体又は担体材料であってもよい。かかる従来の材料は当業者に周知であり、天然又は合成由来であってもよく、また、マクロ多孔性構造、即ち、表面積が約10m2/g以下、好ましくは約3m2/g以下の構造であることが好ましい。本発明の酸化エチレン触媒の担体として有用な担体の例として、酸化アルミニウム、特にα-アルミナ、炭、軽石、マグネシア、ジルコニア、珪藻土、酸性白土、炭化ケイ素、シリカ及び/又は炭化ケイ素を含む多孔質凝集体、シリカ、マグネシア、選ばれた粘土類、人工ゼオライト、天然ゼオライト及びセラミック類がある。好適な触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ‐アルミナ又はそれらの組み合わせを含む担体で作ることができる。【0023】最も好適な担体は、主にα-アルミナを含むものであり、特に最大約15wt%までのシリカを含有するものである。α-アルミナ含有担体の場合、BET法によって測定された表面積が約0.03m2/g~約10m2/g、好ましくは約0.05m2/g~約5m2/g、更に好ましくは約0.1m2/g~約3m2/gであり、従来の吸水技術で測定された水孔容積が約0.1cc/g~約0.75cc/g、好ましくは約0.25cc/g~約0.55cc/gであるものが好ましい。特定の表面積を決定するBET法は、Brunauer, S., Emmett, P. H. and Teller, E., J. Am. Chem. Soc., 60, 309-16 (1938)に詳細に記載されている。細孔容積と細孔径分布は、従来の水銀ポロシメータ法で測定される。Drake and Ritter, Ind. Eng. Chem. Anal. Ed., 17, 787 (1945)参照。このようなキャリアは、例えばNorton Company社をはじめとする様々なキャリア業者から市販されている。」
(5) 甲第6号証の記載事項
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甲第6号証には、「酸化エチレン触媒用ムライト含有担体」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】本発明は、銀系酸化エチレン触媒に関し、特に、そのような触媒用の担体に関する。」
イ 「【0022】本発明の担体は、ムライトと、エチレン酸化触媒に用いる当分野で周知のいずれかの耐熱性アルミナ成分から構成されている。しかし、好適な担体のベースはα-アルミナとムライトである。通常、触媒は、結合剤により結びついたα-アルミナ及びムライト粒子からなる。本発明の担体に用いられるα-アルミナは、非常に高純度、即ち、約95%以上、更に好ましくは、98重量%以上のα-アルミナであることが好ましい。残りの成分は、別の相のアルミナ、シリカ、アルカリ金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム)、及び、その他微量の金属含有及び/又は金属非含有添加剤又は不純物であってもよい。適切なアルミナ成分は、日本の名古屋に所在のNoritake社、及び、Akron, Ohioに所在のNorPro Company社で製造及び/又は市販されている。」
ウ 「【0027】本発明の担体は好ましくは多孔質であり、そのBET表面積は通常多くて20m2/gである。BET表面積は、更に一般的には約0.1から約10m2/gの範囲にあり、より一般的には1から5m2/gの範囲にある。別の実施形態において、本発明の担体は、約0.3m2/gから約3m2/g、好ましくは約0.6m2/gから約2.5m2/g、より好ましくは約0.7m2/gから約2.0m2/gのBET表面積を有することを特徴としている。本明細書に記載されるBET表面積は、いずれの適切な方法でも測定できるが、Brunauer, S., et al., J. Am. Chem. Soc., 60, 309-16 (1938)に記載の方法から得ることがより好ましい。完成した触媒の吸水値は、一般的には約0.2cc/gから約0.8cc/g、更に一般的には約0.25cc/gから約0.6cc/gの範囲にある。」
(6) 甲第7号証の記載事項
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甲第7号証には、「エチレンオキシド触媒担体の調製」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】本発明は、エチレンをエチレンオキシドに酸化する銀触媒、特に、その担体を含む触媒の有用性が増すように特性が改良された触媒担体(carrier)または支持体(support)の調製に関する。」
イ 【0013】
本発明に従って処理される担体は、主にアルファ-アルミナを含むもの、特に、約15wt%までのシリカを含むものである。特に好ましい担体は、約0.1~1.0cc/g、好ましくは約0.2~0.7cc/gの多孔度をもつ。好ましい担体はまた、比較的小さい表面積、すなわち、BET法(J.Am.Chem.Soc.60,3098-16(1938)を参照)により求めた場合、約0.2~2.0m2/g、好ましくは0.4~1.6m2/g、最も好ましくは0.5~1.3m2/gをもつ。多孔度は水銀ポロシメータ法(Drake and Ritter,Ind.Eng.Chem.anal.Ed.,17,787(1945)を参照)により求められる。細孔および細孔径分布は表面積と見掛け(apparent)多孔度測定値から求められる。」
(7) 甲第8号証の記載事項
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甲第8号証には、「助触媒添加銀触媒」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「技術分野本発明は、レニウムを含まず、アルカリ金属と、ジルコニウムまたはハフニウムのような第4b族の成分とを助触媒として含む、エチレンをエチレンオキサイドに酸化するのに用いられる銀触媒、およびこの触媒の調製方法に関する。」(第3頁第4~7行)
イ 「本発明に従い調製された好ましい触媒は、多孔質耐火性担体の表面および細孔表面に析出させた、金属として約30重量%までの銀を含む。全触媒重量の20%よりも高い銀含有量が効果的であるが、これは不必要に高価な触媒を与える。金属として全触媒重量の約5~20%の銀含有量が好ましいが、8~15%の銀含有量が特に好ましい。」(第5頁第13~17行)
ウ 「好ましい担体は、主としてα-アルミナを含むもの、中でも約15重量%までのシリカを含むものである。特に好ましい担体は、約0.1~1.0cc/g、そして好ましくは約0.2~0.7cc/gの空隙率を有する。好ましい担体はまた、比較的低い表面積、すなわちBET法による測定で約0.2~2.0m2/g、好ましくは0.4~1.6m2/g、そして最も好ましくは0.5~1.3m2/gをも有する[J.A.Chem.Soc.,60,3098-16(1938)参照]。」(第6頁第25行~第7頁第2行)
(8) 甲第9号証の記載事項
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甲第9号証には、「銀触媒の調製法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「発明の分野本発明は、一般に、エチレンをエチレンオキシドに気相酸化するのに有効な担持銀触媒に関する。より詳細には、本発明は、セシウムを後含浸させるすぐれた担持銀触媒の調製法に関する。」(第4頁第4~7行)
イ 「触媒はアルミナ、シリカ、シリカ-アルミナまたはこれらの混合物を含む担体を用いてつくることができる。好ましい担体は、主にアルファアルミナを含有するもの、とくに最大約15重量%のシリカを含有するものである。とくに好ましい担体は約0.1-1.0cc/g、好ましくは約0.2-0.7cc/gの多孔度を有する。好ましい担体は、また、比較的小さい表面積、すなわちBET法で測定して、約0.2-2.0m2/g、好ましくは0.4-1.6m2/g、もつと好ましくは0.5-1.3m2/gの表面積を有する。」(第8頁第17~23行)
3 申立理由に対する当審の判断
(1) 甲第2号証に記載された発明(甲2発明)
甲第2号証には、前記2(1)アによれば、触媒や触媒担体の細孔の特性評価に、水銀ポロシメトリーを使用すること、さらに、前記2(1)1イ~オによれば、その解析項目として、従来の細孔容積及び比表面積(表2の「従来の解析」)に加えて、細孔構造を示す細孔屈曲度及び透過率(表2の「ソフトに取り入れた解析」)を導き出せることが記載されている。
これら記載を「触媒担体」に注目して整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「水銀ポロシメトリーを使用して、細孔容積、比表面積、並びに、細孔屈曲度及び透過率の細孔構造により細孔の特性が評価された触媒担体。」
(2) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明の対比
甲2発明の「触媒担体」は、特性が評価されている細孔を有しているから、本件発明1の「多孔質体」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「多孔質体」の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本件発明1では、「少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造」を有しているのに対して、甲2発明では、「水銀ポロシメトリーを使用して、細孔容積、比表面積、並びに、細孔屈曲度及び透過率の細孔構造により細孔の特性が評価され」ているものの、その具体的な数値は明らかでなく、また、触媒担体の材質や平均粒子圧壊強度が特定されていない点。
イ 相違点の検討
甲第2号証には、前記2(1)のとおり、「水位銀圧入法(ポロシメトリー)による多孔性材料の特性評価」(表題)に関する事項が記載されているにすぎず、甲2発明の「細孔容積」、「比表面積」、「細孔屈曲度」及び「透過率」を調整する動機付けとなるような記載は見当たらない。
また、甲第3号証~甲第9号証の記載(前記2(2)~(8)参照)によれば、触媒担体として、α-アルミナを含み、0.1~1.0mL/gの細孔容積、0.3~3m2/gのBET比表面を有する多孔質体を用いることは、本件特許出願の優先日における周知技術といえる。しかしながら、このようなα-アルミナを含む多孔質体において、細孔容積を0.3~1.2mL/gの範囲内、及び、BET比表面を0.3~3m2/gの範囲内にしつつ、平均粒子圧壊強度を10N以上とし、さらに、屈曲度を7以下、歪度を4以下、又は、浸透率を30mdarcys以上とすることは、甲第3号証~甲第9号証のいずれにも記載されていないし、また、このようなことが技術常識であるという証拠も見当たらない。
したがって、これらの点を併せ考えれば、甲2発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1の特定事項を全て含むものであり、少なくとも上記相違点1で相違するから、前記(2)で検討した理由により、本件発明8は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4) 本件発明9について
ア 本件発明9と甲2発明の対比
甲2発明の「触媒担体」は、本件発明9の「担体」に相当する。
したがって、本件発明9と甲2発明とは、「担体」の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点2)
本件発明9の「担体」は、「少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造」を有しているのに対して、甲2発明の「触媒担体」は、「水銀ポロシメトリーを使用して、細孔容積、比表面積、並びに、細孔屈曲度及び透過率の細孔構造により細孔の特性が評価され」ているものの、その具体的な数値は明らかでなく、また、材質や平均粒子圧壊強度が特定されていない点。
(相違点3)
本件発明9は、「担体」の上及び/又は内部に「触媒量の銀」、及び、「担体」の上に「1種類以上の促進量の助触媒」を沈着した「銀系エチレンエポキシ化触媒」であるのに対して、甲2発明は、その点が明らかでない点。
イ 相違点の検討
事案に鑑み、相違点2について検討すると、前記(2)イでの検討と同様に、甲2発明において、相違点2に係る本件発明9の構成とすることは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。
ウ 小括
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明9は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5) 本件発明10~17、25について
本件発明10~17、25は、本件発明9の特定事項を全て含むものであり、少なくとも上記相違点2で相違するから、前記(4)で検討した理由により、本件発明10~17、25は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6) 本件発明26について
ア 本件発明9と甲2発明の対比
甲2発明の「触媒担体」は、本件発明26の「担体」に相当する。
したがって、本件発明26と甲2発明とは、「担体」の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点4)
本件発明26の「担体」は、「少なくとも80%がα-アルミナを含み、0.3mL/g~1.2mL/gの細孔容積と0.3m2/g~3.0m2/gの表面積と10N以上の平均粒子圧壊強度とを有し、7以下の屈曲度、4以下の歪度、及び30mdarcys(約2.96×10-14m2)以上の浸透率のうち少なくとも1つを備えた細孔構造」を有しているのに対して、甲2発明の「触媒担体」は、「水銀ポロシメトリーを使用して、細孔容積、比表面積、並びに、細孔屈曲度及び透過率の細孔構造により細孔の特性が評価され」ているものの、その具体的な数値は明らかでなく、また、材質や平均粒子圧壊強度が特定されていない点。
(相違点5)
本件発明26は、「担体」の上及び/又は内部に「1種類以上の触媒量の触媒活性金属」を沈着した「触媒組成物」であるのに対して、甲2発明は、その点が明らかでない点。
イ 相違点の検討
事案に鑑み、相違点4について検討すると、前記(2)イでの検討と同様に、甲2発明において、相違点4に係る本件発明26の構成とすることは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。
ウ 小括
したがって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明26は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7) 申立理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由に理由はない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~27に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に当該請求項1~27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700748