特許異議申立
2021-700663
接着剤組成物、封止シート、及び封止体
- 審判番号
- 2021-700663
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-553809外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6814158
- 請求日
- 2021年07月12日
- 審決日
- 2022年02月01日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.161-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6814158号発明「接着剤組成物、封止シート、及び封止体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6814158号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第6814158号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6814158号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成28年11月24日(優先権主張 平成27年12月1日 日本)を国際出願日とする出願であって、令和2年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~8に係る特許に対し、令和3年7月12日に特許異議申立人 松井伸一(以下、「申立人」ともいう。)は特許異議の申立てを行い、当審は同年9月8日付けで取消理由を通知した。この取消理由通知に対して、特許権者は同年11月11日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行った。その訂正の請求に対して、申立人は指定された期間内に応答しなかった。
第2 訂正の可否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1のとおりである。なお、訂正前の請求項2~8は、訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は、一群の請求項1~8について請求されている。
(訂正事項1)
特許請求の範囲において、
「下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する接着剤組成物であって、(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%であり、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して10~100質量部である接着剤組成物。
(A)成分:不飽和カルボン酸残基の量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.2~3質量部である酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:多官能エポキシ化合物
(C)成分:イミダゾール系硬化触媒」とあるのを、
「下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する接着剤組成物であって、(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%であり、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して25~100質量部である接着剤組成物。
(A)成分:不飽和カルボン酸残基の量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.2~3質量部である酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:多官能エポキシ化合物
(C)成分:イミダゾール系硬化触媒」
と訂正する(請求項2~8についても同様に訂正する。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量の下限を10質量部から25質量部に大きくすることで、(B)成分の含有量の範囲を限定するものである。
そして、本件明細書の【0078】には、次のように記載されている。
「〔実施例1〕
変性ポリオレフィン系樹脂(α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、重量平均分子量:52,000)100部、多官能エポキシ化合物(水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、共栄社化学社製、商品名:エポライト4000)25部、及び、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、商品名:キュアゾール2E4MZ)1部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度18%の塗工液を調製した。
この塗工液を剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET382150)の剥離処理面上に塗工し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚みが25μmの接着剤層を形成し、その上に、もう1枚の剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET381031)の剥離処理面を貼り合わせて封止シート1を得た。」
この記載において、「変性ポリオレフィン系樹脂(α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、重量平均分子量:52,000)」及び「多官能エポキシ化合物(水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、共栄社化学社製、商品名:エポライト4000)」は、それぞれ、上記「(A)成分」及び「(B)成分」に相当するから、上記【0078】には、「実施例1」として、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量を25質量部とすることが記載されている。
そうすると、訂正事項1は、上記【0078】の「実施例1」に基づいて、訂正前の請求項1において(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量の下限を10質量部から25質量部にしたものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。また、請求項1を引用する、請求項2~8についても、同様である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に応じて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する接着剤組成物であって、(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%であり、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して25~100質量部である接着剤組成物。
(A)成分:不飽和カルボン酸残基の量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.2~3質量部である酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:多官能エポキシ化合物
(C)成分:イミダゾール系硬化触媒
【請求項2】
前記(C)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、下記の(D)成分を含有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
(D)成分:シランカップリング剤
【請求項4】
2枚の剥離フィルムと、これらの剥離フィルムに挟持された接着剤層とからなる封止シートであって、
前記接着剤層が、請求項1に記載の接着剤組成物を用いて形成された、熱硬化性を有す
るものである封止シート。
【請求項5】
剥離フィルム、ガスバリア性フィルム、及び、前記剥離フィルムとガスバリア性フィルムに挟持された接着剤層からなる封止シートであって、
前記接着剤層が、請求項1に記載の接着剤組成物を用いて形成された、熱硬化性を有するものである封止シート。
【請求項6】
前記ガスバリア性フィルムが、金属箔、樹脂製フィルム、又は薄膜ガラスである請求項5に記載の封止シート。
【請求項7】
被封止物が、請求項4又は5に記載の封止シートで封止されてなる封止体。
【請求項8】
前記被封止物が、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、又は太陽電池素子である、請求項7に記載の封止体。」
第4 取消理由通知の概要
当審が、本件訂正前の請求項1~8に係る発明に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「(拡大先願)本件の請求項1~8に係る発明は、その出願の優先権主張の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた日本語特許出願(甲第1号証(以下、「甲1」という。):PCT/JP2015/072455号(国際公開第2016/047289号))の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)ものであるから、本件の請求項1~8に係る発明は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。」
第5 取消理由についての当審の判断
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
a「[0001] 本発明は、接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体に関する。更に詳しくは、電子部品等の接着用途、特に、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」ともいう)の関連製品の製造に適した接着剤組成物、及び接着剤層付き積層体に関する。」
b「[0009] 本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、ポリイミド樹脂等からなる基材フィルムや銅箔に対する接着性が良好であり、かつ、優れた電気特性を有する接着剤組成物を提供することを目的とする。また、接着剤層がBステージ状のときの積層体の反りが少なく、積層体の貯蔵安定性も良好な接着剤層付き積層体を提供することを目的とする。」
c「[0010] 本発明者らは、変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂とを含有する接着剤組成物において、前記変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂が特定の含有量である場合に、接着性及び電気特性に優れることを見出した。また、この接着剤組成物を用いて得られる接着剤付き積層体であって、接着剤層がBステージ状である場合に、接着性に優れるだけでなく、積層体の反りがほとんどなく、貯蔵安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0011] すなわち、本発明に係る接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体は以下の通りである。
1.変性ポリオレフィン系樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する接着剤組成物であって、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、未変性のポリオレフィン樹脂がα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量が、接着剤組成物の固形分100質量部に対して50質量部以上であり、かつ、前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1~20質量部であり、周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電率が2.5未満であることを特徴とする接着剤組成物。
(中略)
4.上記α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合が、上記変性ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して0.1~20質量%である上記1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。
(中略)
9.上記1.~8.のいずれかに記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、前記接着剤層はBステージ状であることを特徴とする接着剤層付き積層体。
10.上記接着剤層が、上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを、上記基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、該樹脂ワニス層から前記溶媒を除去することにより形成されたものである上記9.に記載の接着剤層付き積層体。
(中略)
12.上記基材フィルムが、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテンフィルム、及びフッ素系樹脂フィルムよりなる群から選択される少なくとも1種である上記9.~11.のいずれかに記載の接着剤層付き積層体。
(中略)
17.上記9.~16.のいずれかに記載の接着剤層付き積層体の接着剤層に、銅箔を貼り合せてなることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。」
d「[0012] 本発明の接着剤組成物は、ポリイミド樹脂等からなる基材フィルムや銅箔に対する接着性、樹脂の流れ出し性、及び電気特性(低誘電率、及び低誘電正接)に優れる。また、本発明の接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体は、反りがほとんどないため、各種部品の製造工程において作業性に優れ、積層体の貯蔵安定性も良好である。従って、本発明の接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体は、FPC関連製品の製造等に好適である。」
e「[0023] 上記変性ポリオレフィン系樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分を有する。上記変性ポリオレフィン系樹脂において、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分のグラフト質量は、接着性の観点から、変性ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して0.1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~18質量%である。グラフト質量が0.1質量%以上であると、溶媒に対する溶解性に優れ、金属等からなる被着体に対する接着性に特に優れる。また、グラフト質量が20質量%以下であると、樹脂等からなる被着体に対する十分な接着性を得ることができる。」
f「[0031] 変成ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して50質量部以上であることが必要であり、60質量部以上であることが好ましい。この含有量が50質量部未満では、接着剤層の柔軟性が不足し、積層体に反りが生じる。
また、変成ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して99質量部以下であることが好ましい。」
g「[0035] 本発明に用いるエポキシ樹脂としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。変成ポリオレフィン系樹脂との反応で架橋構造を形成し、高い耐熱性を発現させることができるからである。また、エポキシ基が2個以上のエポキシ樹脂を用いた場合、変成ポリオレフィン系樹脂との架橋度が十分であり、十分な耐熱性が得られる。
[0036] 上記エポキシ樹脂(B)の含有量は、上記変成ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1~20質量部であることが必要である。前記含有量は、3~15質量部であることが好ましい。この含有量が1質量部未満であると、十分な接着性と耐熱性が得られない場合がある。一方、この含有量が20質量部を超えると、はく離接着強さや電気特性が低下する場合がある。」
h「[0038] 上記接着剤組成物には、変成ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)に加えて、変成ポリオレフィン系樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、難燃剤、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、熱老化防止剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、顔料、及び溶媒等を、接着剤組成物の機能に影響を与えない程度に含有することができる。」
i「[0043] 上記硬化促進剤は、変成ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との反応を促進させる目的で使用するものであり、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤等を使用することができる。」
j「[0046] イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
[0047] 接着剤組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、2~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が前記範囲内であれば、優れた接着性及び耐熱性を有する。
[0048] また、上記カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
k「[0053] 2.接着剤層付き積層体
本発明に係る接着剤層付き積層体は、上記接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、前記接着剤層がBステージ状であることを特徴とする。ここで、接着剤層がBステージ状であるとは、接着剤組成物の一部が硬化し始めた半硬化状態をいい、加熱等により、接着剤組成物の硬化が更に進行する状態をいう。
[0054] 本発明に係る接着剤層付き積層体の一態様として、カバーレイフィルムが挙げられる。カバーレイフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に接着剤層が形成されているものであり、基材フィルムと接着剤層のはく離が困難な積層体である。
[0055] 接着剤層付き積層体がカバーレイフィルムの場合の基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。これらの中でも、接着性及び電気特性の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルムが好ましい。」
l「[0057] カバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを、ポリイミドフィルム等の基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、該樹脂ワニス層から前記溶媒を除去することにより、Bステージ状の接着剤層が形成されたカバーレイフィルムを製造することができる。
前記溶媒を除去するときの乾燥温度は、40~250℃であることが好ましく、70~170℃であることがより好ましい。乾燥は、接着剤組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行われる。
なお、必要に応じて、接着剤層の表面には、保管等のため、離型性フィルムを積層してもよい。前記離型性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等の公知のものが用いられる。
[0058] 接着剤層付き積層体の別の態様としては、ボンディングシートが挙げられる。ボンディングシートも、基材フィルムの表面に上記接着剤層が形成されたものであるが、基材フィルムは離型性フィルムが用いられる。また、ボンディングシートは、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。ボンディングシートを使用するときに、離型性フィルムをはく離して使用する。離型性フィルムは、上記と同様なものを用いることができる。」
m「[0065] 3.フレキシブル銅張積層板
本発明のフレキシブル銅張積層板は、上記接着剤層付き積層体を用いて、基材フィルムと銅箔とが貼り合わされていることを特徴とする。即ち、本発明のフレキシブル銅張積層板は、基材フィルム、接着層及び銅箔の順に構成されたものである。なお、接着層及び銅箔は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明のフレキシブル銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。」
n「[0067] 4.フレキシブルフラットケーブル(FFC)
本発明のフレキシブルフラットケーブルは、上記接着剤層付き積層体を用いて、基材フィルムと銅配線とが貼り合わされていることを特徴とする。即ち、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、基材フィルム、接着層及び銅配線の順に構成されたものである。なお、接着層及び銅配線は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、一体化物として安定性に優れる。
[0068] 本発明のフレキシブルフラットケーブルを製造する方法としては、例えば、上記積層体の接着剤層と銅配線とを接触させ、80℃~150℃で熱ラミネートを行い、更にアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法がある。アフターキュアの条件は、例えば、100℃~200℃、30分~4時間とすることができる。上記銅配線の形状は、特に限定されず、所望に応じ、適宜形状等を選択すればよい。」
o「実施例
[0069] 本発明を、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。」
p「[0081] (3)変性ポリオレフィン系樹脂a3
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン-エチレンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸1.5質量部、メタクリル酸ラウリル0.8質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド1.2質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、変性ポリオレフィン系樹脂a3を製造した。変性ポリオレフィン系樹脂a3は、重量平均分子量が13万、酸価が15mgKOH/gであった。
[0082] (4)変性ポリオレフィン系樹脂a4
プロピレン/1-ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1-ブテン=70/30)100質量部を4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸3.0質量部とラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド2.5質量部をそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、更に同様の方法で樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して変性ポリオレフィン系樹脂a4を得た。変性ポリオレフィン系樹脂a4は、重量平均分子量が10万、酸価が30mgKOH/gであった。」
q「[0086] 3-2.エポキシ樹脂
(1)エポキシ樹脂b1
DIC(株)製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂)を用いた。
(2)エポキシ樹脂b2
DIC(株)製 商品名「EPICLON N-655EXP」(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)を用いた。
(3)エポキシ樹脂b3
三菱ガス化学(株)製 商品名「TETRAD-C」(グリシジルアミノ系エポキシ樹脂)を用いた。
[0087] 3-3.その他
(1)硬化促進剤
四国化成工業(株)製 商品名「キュアゾールC11-Z」(イミダゾール系硬化促進剤)を用いた。
(2)無機充填剤
(株)トクヤマ製 商品名「エクセリカSE-1」(シリカ)を用いた。
(3)溶剤
トルエン及びメチルエチルケトンからなる混合溶媒(質量比=90:10)を用いた。
[0088] 4.接着剤組成物の製造及び評価
撹拌装置付きフラスコに、上記の原料を表1に示す割合で添加し、室温(25℃)下で6時間撹拌して溶解することにより、固形分濃度20%の液状接着剤組成物を調製した。結果を表2に示す。」
r「[0090]
[表1]
[図:0001384144000001.jpg]
」
s「[0092] 上記表2の結果より、実施例1~10の接着剤組成物は、接着性、樹脂流れ出し性、及び電気特性にも優れたものであることが分かる。また、これらの接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体は、反りが少なく、FPC関連製品の製造工程において作業性が良好である。一方、比較例1のように、接着剤組成物が変性ポリオレフィン系樹脂を所定量含有しない場合には、電気特性が低下するとともに、積層体に反りが生じる。また、比較例2及び3は、エポキシ樹脂の含有量が本発明の範囲から外れるため、接着性や電気特性に劣る。」
t「請求の範囲
[請求項1] 変性ポリオレフィン系樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する接着剤組成物であって、
前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、未変性のポリオレフィン樹脂がα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、
前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量が、接着剤組成物の固形分100質量部に対して50質量部以上であり、かつ、前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1~20質量部であり、
周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電率が2.5未満であることを特徴とする接着剤組成物。
(中略)
[請求項4] 上記α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合が、上記変性ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して0]1~20質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
(中略)
[請求項9] 上記請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、
前記接着剤層はBステージ状であることを特徴とする接着剤層付き積層体。
[請求項10] 上記接着剤層が、上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを、上記基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、該樹脂ワニス層から前記溶媒を除去することにより形成されたものである請求項9に記載の接着剤層付き積層体。
(中略)
[請求項12] 上記基材フィルムが、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテンフィルム、及びフッ素系樹脂フィルムよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項9~11のいずれか1項に記載の接着剤層付き積層体。
(中略)
[請求項17] 請求項9~16のいずれか1項に記載の接着剤層付き積層体の接着剤層に、銅箔を貼り合せてなることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。」
2 甲1に記載された発明(甲1発明1、2)
甲1の[0090]の表1に記載された実施例3、4に係る接着剤組成物([0088])について、「変性ポリオレフィン系樹脂a3」は[0081]に記載されたものであり、「変性ポリオレフィン系樹脂a4」は、[0082]に記載されたものであり、[0086]から、「硬化促進剤」は「DIC(株)製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂)」であり、[0087]から、「硬化促進剤」は「四国化成工業(株)製 商品名「キュアゾールC11-Z」(イミダゾール系硬化促進剤)」であるところ、上記実施例3、4に係る接着剤組成物は、次の成分からなるものであると認められる。
(1)実施例3に係る接着剤組成物(以下、「甲1発明1」という。):
「変性ポリオレフィン系樹脂a3 100質量部、
エポキシ樹脂b1(DIC(株)製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂)) 10質量部、
硬化促進剤(四国化成工業(株)製 商品名「キュアゾールC11-Z」(イミダゾール系硬化促進剤)) 0.3質量部、及び、
溶媒 400質量部からなる接着剤組成物。
ただし、変性ポリオレフィン系樹脂a3は、メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン-エチレンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸1.5質量部、メタクリル酸ラウリル0.8質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド1.2質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応し、その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、製造された変性ポリオレフィン系樹脂a3(重量平均分子量が13万、酸価が15mgKOH/g)」
(2)実施例4に係る接着剤組成物(以下、「甲1発明2」という。):
「変性ポリオレフィン系樹脂a4 100質量部、
エポキシ樹脂b1(DIC(株)製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂)) 15質量部、
硬化促進剤(四国化成工業(株)製 商品名「キュアゾールC11-Z」(イミダゾール系硬化促進剤)) 0.4質量部、及び、
溶媒 400質量部からなる接着剤組成物。
ただし、変性オレフィンa4は、プロピレン/1-ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1-ブテン=70/30)100質量部を4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸3.0質量部とラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド2.5質量部をそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させ、反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させ、この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工し、次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄し、樹脂を回収後、更に同様の方法で樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去し、洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して得られた変性ポリオレフィン系樹脂a4(重量平均分子量が10万、酸価が30mgKOH/g)」
3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「変性ポリオレフィン系樹脂a3」は、「プロピレン-エチレンランダム共重合体」を「無水マレイン酸」によって変性したものであるから、本件発明1の「(A)成分」の「酸変性ポリオレフィン系樹脂」に相当する。
また、本件発明1の「(B)成分:多官能エポキシ化合物」と、甲1発明1の「エポキシ樹脂b1」とは、「エポキシ化合物」である点で共通する。
そして、甲1発明1の「硬化促進剤」は、本件発明1の「(C)成分:イミダゾール系硬化触媒」に相当する。
また、甲1発明1においては、「エポキシ樹脂b1」の含有量は100質量部であり、「変性ポリオレフィン系樹脂a3」は10質量部であり、硬化促進剤は0.3質量部であり、これらで接着剤組成物の固形分全量をなすといえるところ、「エポキシ樹脂b1」の含有量は接着剤組成物の固形分全量に対して、約91質量%(=100/(100+10+0.3))と求められるから、甲1発明は、「(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%」を充足する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、「下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する接着剤組成物であって、(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%である接着剤組成物。
(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:エポキシ化合物
(C)成分:イミダゾール系硬化触媒」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
「(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂」について、本件発明1では、「不飽和カルボン酸残基の量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.2~3質量部である」点が特定されているのに対し、甲1発明1の「変性ポリオレフィン系樹脂a3」は、そのようなものかどうか不明な点。
(相違点2)
「(B)成分:エポキシ化合物」について、本件発明1では、「多官能」であることが特定されているのに対し、甲1発明1の「エポキシ樹脂b1(DIC(株)製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂))」は、そのようなものかどうか不明な点。
(相違点3)
本件発明1は、「(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して25~100質量部」であることが特定されているのに対し、甲1発明1においては、「変性ポリオレフィン系樹脂a3」の含有量は、「変性ポリオレフィン系樹脂a3」100質量部に対して、10質量部であり、本件発明1の範囲に含まれない点。
ここで、事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
上記相違点3は、「(B)成分の含有量:エポキシ化合物」の(A)成分に対する含有量に関するものであり、「(B)成分」の「(A)成分」に対する含有量が異なれば、接着剤組成物の硬化物の接着強度や水蒸気遮断性等の特性が異なるものとなることは明らかである。
また、上記1gに摘記した甲1の[0036]には、「この含有量が20質量部を超えると、はく離接着強さや電気特性が低下する場合がある」と記載されていることから、相違点3に係る本件発明1の構成が甲1に記載されているに等しい事項ということもできない。
したがって、上記相違点3は実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1と甲1発明1とは、同一ではない。
イ 本件発明1と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「変性ポリオレフィン系樹脂a4」は、「プロピレン-1-ブテン共重合体」を「無水マレイン酸」によって変性したものといえるから、本件発明1の「(A)成分」の「酸変性ポリオレフィン系樹脂」に相当する。
また、本件発明1の「(B)成分:多官能エポキシ化合物」と、甲1発明2の「エポキシ樹脂b1」とは、「エポキシ化合物」である点で共通する。
そして、甲1発明2の「硬化促進剤」は、本件発明1の「(C)成分:イミダゾール系硬化触媒」に相当する。
また、甲1発明2において、「変性ポリオレフィン系樹脂a4」は100質量部であり、「エポキシ樹脂b1」は15質量部であり、これらで接着剤組成物の固形分全量をなすといえるところ、「変性ポリオレフィン系樹脂a4」の含有量は接着剤組成物の固形分全量に対して、約87質量%(=100/(100+15))と求められるから、甲1発明2は、「(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%」を充足する。
そうすると、本件発明1と甲1発明2とは、「下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する接着剤組成物であって、(A)成分の含有量が、接着剤組成物の固形分全量に対して45~95質量%である接着剤組成物。
(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:エポキシ化合物
(C)成分:イミダゾール系硬化触媒」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点4)
「(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂」について、本件発明1では、「不飽和カルボン酸残基の量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.2~3質量部である」点が特定されているのに対し、甲1発明2の「変性ポリオレフィン系樹脂a4」は、そのようなものかどうか不明な点。
(相違点5)
「(B)成分:エポキシ化合物」について、本件発明1では、「多官能」であることが特定されているのに対し、甲1発明2の「エポキシ樹脂b1(DIC(株)製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂))」は、そのようなものかどうか不明な点。
(相違点6)
本件発明1は、「(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して25~100質量部」であることが特定されているのに対し、甲1発明2においては、「エポキシ樹脂b1」の含有量は、「変性ポリオレフィン系樹脂a4」100質量部に対して、15質量部であり、本件発明1の範囲に含まれない点。
ここで、事案に鑑み、上記相違点6について検討する。
上記相違点6は、「(B)成分:エポキシ化合物」の(A)成分に対する含有量に関するものであり、「(B)成分」の「(A)成分」に対する含有量が異なれば、接着剤組成物の硬化物の接着強度や水蒸気遮断性等の特性が異なるものとなることは明らかである。
また、上記1gに摘記した甲1の[0036]には、「この含有量が20質量部を超えると、はく離接着強さや電気特性が低下する場合がある」と記載されていることから、相違点3に係る本件発明1の構成が甲1に記載されているに等しい事項ということもできない。
したがって、上記相違点6は実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1と甲1発明2とは、同一ではない。
4 まとめ
以上のとおり、本件発明1と甲1発明1、2とは同一ではない。また、本件発明2~8は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明2~8も、甲1発明1、2とは同一ではない。
よって、上記取消理由は理由がない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、訂正後の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700663