特許異議申立
2017-701201
接着剤組成物
- 審判番号
- 2017-701201
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-080801外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月19日
- 審決日
- 2018年07月26日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.161-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6155778号発明「接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6155778号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6155778号の請求項1、2、4及び5に係る特許を維持する。
特許第6155778号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6155778号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成25年4月8日に出願され、平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月19日に、その特許について、特許異議申立人水野智之により、特許異議の申立てがされ(以下、特許異議申立人を単に「申立人」ということもある。)、平成30年2月23日付けで取消理由が通知され、同年4月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、申立人から意見書の提出はなかったものである。
第2 訂正の内容及び訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1(以下、単に「請求項1」などという。)に、
「(A)(メタ)アクリル系コポリマー、(B)(メタ)アクリル系モノマー、及び(C)光重合開始剤を含み、
上記(B)成分が、(B1)酸素を含有する脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び(B2)窒素を含有する(メタ)アクリル系モノマーを含み、
さらに上記(B2)成分が、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド及びアクロイルモロフォリンから選択される少なくとも1つの化合物である接着剤組成物。」と記載されているのを、
「(A)(メタ)アクリル系コポリマー、(B)(メタ)アクリル系モノマー、及び(C)光重合開始剤を含み、
上記(B)成分が、(B1)酸素を含有する脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び(B2)窒素を含有する(メタ)アクリル系モノマーを含み、
さらに上記(B2)成分が、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド及びアクロイルモロフォリンから選択される少なくとも1つの化合物であり、
(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、(A)成分40質量部以上80質量部以下、(B1)成分20質量部以上60質量部以下、(B2)成分1質量部以上30質量部以下、(C)成分1質量部以上5質量部以下を含む接着剤組成物。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4及び5も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
請求項4に「前記(A)成分が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びスチレンから選ばれる2以上の化合物が重合してなるものである請求項1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。」と記載されているのを、「前記(A)成分が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びスチレンから選ばれる2以上の化合物が重合してなるものである請求項1又は2に記載の接着剤組成物。」に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
請求項5に「前記(B1)成分が、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びメタクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項1~4のいずれかに記載の接着剤組成物。」と記載されているのを、「前記(B1)成分が、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びメタクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項1、2又は4に記載の接着剤組成物。」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項について
(訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件明細書の【0019】の「(A)(メタ)アクリル系コポリマーの含有量は、接着時の弾性保持の観点から(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、40質量部以上80質量部以下であることが好ましく」という記載、
【0022】の「(B1)成分の酸素を含有する脂環式化合物を含む(メタ)アクリル系モノマーについては上記の(A)成分、(B1)成分、及び(B2)成分の合計110質量部に対して、接着性向上の観点から、10質量部以上60質量部以下であることが好ましく、20質量部以上55質量部以下であることがより好ましく」という記載、及び、
【0025】の「(C)光重合開始剤の添加量は、接着剤組成物の全質量に対して、1質量部以上5質量部以下であることが好ましく」という記載に基づいて、請求項1に係る発明の接着剤組成物の(A)~(C)成分の含有量を「(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、(A)成分40質量部以上80質量部以下、(B1)成分20質量部以上60質量部以下、(B2)成分1質量部以上30質量部以下、(C)成分1質量部以上5質量部以下」と特定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1は、請求項1の記載を引用する請求項2、4及び5についても同様に訂正するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、訂正事項2に係る訂正に伴い、多数項を引用している請求項4において、引用先の請求項3を削除し、引用請求項数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、しかも、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれかの記載を引用する記載であるところ、訂正事項2に係る訂正に伴い、多数項を引用している請求項5において、引用先の請求項3を削除し、引用請求項数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、しかも、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(一群の請求項について)
訂正前の請求項1~5について、請求項2が請求項1を引用し、請求項4が請求項1~3を引用し、請求項4が請求項1~3を引用し、請求項5が請求項1~4を引用する関係にあるから、訂正の請求は一群の請求項ごとにされたものである。
(まとめ)
以上のことから、訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件特許の特許請求の範囲について、上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明(以下、項番に応じて、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4及び5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)(メタ)アクリル系コポリマー、(B)(メタ)アクリル系モノマー、及び(C)光重合開始剤を含み、
上記(B)成分が、(B1)酸素を含有する脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び(B2)窒素を含有する(メタ)アクリル系モノマーを含み、
さらに上記(B2)成分が、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド及びアクロイルモロフォリンから選択される少なくとも1つの化合物であり、
(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、(A)成分40質量部以上80質量部以下、(B1)成分20質量部以上60質量部以下、(B2)成分1質量部以上30質量部以下、(C)成分1質量部以上5質量部以下を含む接着剤組成物。
【請求項2】
さらに(D)酸化防止剤を含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びスチレンから選ばれる2以上の化合物が重合してなるものである請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記(B1)成分が、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びメタクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項1、2又は4に記載の接着剤組成物。」
2.訂正前の請求項に対する取消理由の概要
(1)平成30年2月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(拡大先願)本件発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができず、取り消されるべきものである。
記
先願明細書:特願2012-79887号(特開2013-209487号)(甲第1号証。以下、甲各号証は、単に、「甲1」などという。)
周知例1:特表2007-523979号公報(甲2)
周知例2:特開2009-155470号公報(甲3)
周知例3:特開2012-144641号公報(甲4)
3.先願明細書・周知例1~3の記載
(1)先願明細書
先願明細書には、「光硬化型粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シート」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
(A)(メタ)アクリル系ポリマーと、
(B)(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマーと、
(C)アミン含有光重合性モノマーと、
(D)アルコキシシラン含有光重合性モノマーと、
(E)ラジカル重合性光重合開始剤と、を含み、
前記(A)ポリマーを50~89質量部、前記(B)モノマーを5~15質量部、前記(C)モノマーを5~25質量部、および前記(D)モノマーを1~10質量部[但し、(A)+(B)+(C)+(D)=100質量部]の割合で含有する光硬化型粘着剤組成物。」
「【請求項5】
前記(B)モノマーは、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマーからなる請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化型粘着剤組成物。
【請求項6】
前記環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性モノマーは、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオリゴアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、および2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートからなる群から選ばれる1種以上からなる請求項5に記載の光硬化型粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(C)モノマーは、アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、およびヒドロキシエチルアクリルアミドからなる群から選ばれる1種以上からなる請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化型粘着剤組成物。」
「【0063】
本発明の光硬化型粘着剤組成物に用い得る(C)アミン含有光重合性モノマーとしては、具体的には、アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。」
「【0082】
また、本発明の光硬化型粘着剤組成物では、光硬化型粘着剤組成物から形成される粘着剤層の架橋密度を制御するために、架橋剤を含有させてもよい。本発明の光硬化型粘着剤組成物に用い得る架橋剤としては、例えば多官能イソシアネート系化合物やエポキシ系化合物、メラミン系化合物や金属塩系化合物、金属キレート系化合物、アミノ樹脂系化合物、および過酸化物などを挙げることができる。」
「【0084】
さらに、本発明の光硬化型粘着剤組成物には、既に上述した各成分以外に、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、保存安定剤、熱重合禁止剤、可塑剤、濡れ性改良剤、密着性付与剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、硬化剤などを必要に応じて配合することもできる。なお、ここに列挙されている紫外線吸収剤などの各種の添加剤の使用量は、本発明の光硬化型粘着剤組成物の目的を阻害しない範囲で必要に応じ適宜決定することができる。」
「【0092】
表1に示した各単量体に関する略記号の内容は下記の通りである。
BA : ブチルアクリレート[和光純薬工業(株)製]
EA : エチルアクリレート[和光純薬工業(株)製]
AN : アクリロニトリル[和光純薬工業(株)製]
HEMA: ヒドロキシエチルメタクリレート[共栄社化学(株)製]」
「【0097】
【表1】
【0098】
(2)(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー:
(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマーとして、テトラヒドロフルフリルアクリレート[V#150(大阪有機化学工業製)、表2中では「B-1」と示す]、およびイソボルニルアクリレート[IBXA(大阪有機化学工業製)、表2中では「B-2」と示す]を用いた。
【0099】
(3)アミン含有光重合性モノマー:
アミン含有光重合性モノマーとして、アクリロイルモルホリン[アクリロイルモルホリン(興人製)、表2中では「C-1」と示す]、およびヒドロキシエチルアクリルアミド[HEAA(興人製)、表2中では「C-2」と示す]を用いた。
【0100】
(4)アルコキシシラン含有光重合性モノマー:
アルコキシシラン含有光重合性モノマーとして、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン[KBM-5103(信越化学工業製)、表2中では「D-1」と示す]
【0101】
(5)ラジカル重合性光重合開始剤:
光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド[DAROCURE TPO(BASF製)、表2中では「E-1」と示す」、およびヒドロキシアセトフェノン[イルガキュア184(BASF製)、表2中では「E-2」と示す]を用いた。
【0102】
(6)架橋剤:
架橋剤として、コロネートL[日本ポリウレタン社製]を用いた。」
【0103】
(実施例1~8および比較例1~3)
[光硬化型粘着剤組成物の調製]:
実施例1~8および比較例1~3の光硬化型粘着剤組成物については、上述のアクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー、アミン含有光重合性モノマー、アルコキシシラン含有光重合性モノマー、光重合開始剤、および架橋剤を表2に示す配合割合で混ぜ合わせ、さらに、溶剤としてメチルエチルケトン100質量部を加えて混合することにより調製した。なお、表2で配合割合を表す数値は、「質量部」を示す。この「実施例」の欄においていう「質量部」とは、特に言及のない限り、アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー、アミン含有光重合性モノマー、およびアルコキシシラン含有光重合性モノマーの総量を100質量部とした値である。なお、表2中において、数値ではなく「―」で示されたものについては、当該光硬化型粘着剤組成物に含有されていないことを意味する。
【0104】
【表2】
」
「【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、光硬化型粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シートとして利用できる。本発明の光硬化型粘着剤組成物は、例えば、光硬化型粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シートは、フレキシブルプリンテッドサーキット(FPC)用粘接着剤として用いることが可能であり、高温高圧プレスや長時間加熱といった過酷な接着加工条件を必要としないので、熱により劣化するような接合部材にも好適に用いることができる。」
(2)周知例1
周知例1には、「放射線硬化性接着剤組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の粘着付与樹脂及び少なくとも1種の放射線硬化性組成物を含んでなり、前記粘着付与樹脂が少なくとも1種の芳香族モノマー及び少なくとも1種のアクリレートモノマーからのモノマー反復単位を含み且つ前記放射線硬化性組成物が放射線への暴露によって硬化することができる放射線硬化性接着剤組成物。」
(3)周知例2
周知例2には、「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル(A)、(A)を除く多官能(メタ)アクリレート(B)および光重合開始剤(C)を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(A)、(B)、(C)の合計重量に基づく割合が、(A)が20~80%、(B)が19~79%、(C)が1~15%である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
さらに、充填剤、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤からなる群から選ばれる添加剤(D)を含有させてなる請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の組成物を含有してなるコーティング剤、接着剤またはシーリング剤。」
(4)周知例3
周知例3には、「多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、下記(A)成分~(D)成分:
(A)(a1)グリセロール誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、
(a2)トリメチロールプロパン誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、
(a3)ペンタエリスリトール誘導体の単量体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、並びに
(a4)エーテル結合又はエステル結合を含み、かつ4以上の末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物
からなる群より選択される、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物、
(B)光硬化性プレポリマー、
(C)単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマー、及び
(D)光重合開始剤
を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」
「【請求項3】
光学部品を貼り合わせるための接着剤である、請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」
4.先願明細書に記載された発明(先願発明1、2)の認定
先願明細書には、その【0092】、【0097】~【0099】、【0101】~【0104】から、【0104】の【表2】の「比較例3」は、【表2】から明らかなように、UV照射で硬化し、ある程度の接着力を有するものであるから、「光硬化型粘着剤組成物」ということができることから、先願明細書には、「比較例3」として、
「(a)BA(ブチルアクリレート)/EA(エチルアクリレート)/AN(アクリロニトリル)/HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)からなる(メタ)アクリル系ポリマー 70質量部と、
(b)テトラヒドロフルフリルアクリレートからなる(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー 15質量部と、
(c)アクリロイルモルホリンからなるアミン含有光重合性モノマー 15質量部と、
(e)2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドからなるラジカル重合性光重合開始剤 1.5質量部と、
コロネートLからなる架橋剤 1.0質量部とを含む光硬化型粘着剤組成物。」(以下、「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。
また、上記先願明細書の【表2】には、「実施例1」として、
「(a)BA(ブチルアクリレート)/EA(エチルアクリレート)/AN(アクリロニトリル)/HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)からなる(メタ)アクリル系ポリマー 70質量部と、
(b)テトラヒドロフルフリルアクリレートからなる(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー 10質量部と、
(c)アクリロイルモルホリンからなるアミン含有光重合性モノマー 15質量部と、
(d)3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなるアルコキシシラン含有光重合性モノマー 5重量部と、
(e)2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドからなるラジカル重合性光重合開始剤 1.5質量部と、
コロネートLからなる架橋剤 1.0質量部とを含む光硬化型粘着剤組成物。」(以下、「先願発明2」という。)が記載されていると認められる。
5.対比・判断
(1)本件の請求項1に係る特許発明(以下、項番号に対応して「本件発明1」などという。)について
ア 本件発明1と先願発明1とを対比する。
(ア)先願発明1の「(a)BA(ブチルアクリレート)/EA(エチルアクリレート)/AN(アクリロニトリル)/HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)からなる(メタ)アクリル系ポリマー」は、本件発明1の「(A)(メタ)アクリル系コポリマー」に相当する。
(イ)先願発明1の「(b)テトラヒドロフルフリルアクリレートからなる(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー」は、本件発明1の「(B1)酸素を含有する脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマー」に相当する。
(ウ)先願発明1の「(c)アクリロイルモルホリンからなるアミン含有光重合性モノマー」は、本件発明1の「(B2)窒素を含有する(メタ)アクリル系モノマー」及び「(B2)成分が、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド及びアクロイルモロフォリンから選択される少なくとも1つの化合物である」構成に相当する。
(エ)そして、先願発明1の「(b)テトラヒドロフルフリルアクリレートからなる(メタ)アクリル酸エステル系光重合性モノマー」と「(c)アクリロイルモルホリンからなるアミン含有光重合性モノマー」とを合わせたものは、本件発明1の「(B)(メタ)アクリル系モノマー」に相当する。
(オ)先願発明1の「2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドからなるラジカル重合性光重合開始剤」は、本件発明1の「光重合性開始剤」に相当する。
(カ)先願発明1の「光硬化型粘着剤組成物」は、本件発明1の「接着剤組成物」に相当する。
(キ)本件発明1の上記(A)成分、(B1)成分及び(B2)成分にそれぞれ相当する、先願発明1の(a)成分、(b)成分及び(c)成分について、先願発明1は、(a)成分(70質量部)、(b)成分(15質量部)及び(c)成分(15質量部)の合計100質量部(70質量部+15質量部+15質量部)に対して、(a)成分は70質量部、(b)成分は15質量部、(c)成分は15質量部であるから、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計を110質量部に換算すれば、(a)成分は77質量部、(b)成分は16.5質量部、(c)成分は16.5質量部と表せる。
また、本件発明1の上記(C)成分に相当する、先願発明1の(e)成分は、1.5質量部で、同様に換算すれば、1.65質量部と表せることから、本件発明1の「(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、(A)成分40質量部以上80質量部以下、(B1)成分20質量部以上60質量部以下、(B2)成分1質量部以上30質量部以下、(C)成分1質量部以上5質量部以下を含む」構成と、先願発明1の(a)成分、(b)成分及び(c)成分の質量部とは、「(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、(A)成分40質量部以上80質量部以下、(B2)成分1質量部以上30質量部以下、(C)成分1質量部以上5質量部以下を含む」点で共通する。
(ク)そうすると、上記(ア)~(キ)から、本件発明1と先願発明1とは、
「(A)(メタ)アクリル系コポリマー、(B)(メタ)アクリル系モノマー、及び(C)光重合開始剤を含み、
上記(B)成分が、(B1)酸素を含有する脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び(B2)窒素を含有する(メタ)アクリル系モノマーを含み、
さらに上記(B2)成分が、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド及びアクロイルモロフォリンから選択される少なくとも1つの化合物であり、
(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対して、(A)成分40質量部以上80質量部以下、(B2)成分1質量部以上30質量部以下、(C)成分1質量部以上5質量部以下を含む接着剤組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
先願発明1は、本件発明1の発明特定事項にない、「コロネートLからなる架橋剤」を含んでいる点。
(相違点2)
(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対する(B1)成分の質量部について、本件発明1は、20質量部以上60質量部以下であるのに対し、先願発明1の(a)成分、(b)成分、(c)成分の合計110質量部に対する(b)成分の質量部は、16.5質量部であって、本件発明1の範囲に含まれない点。
(ケ)ここで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
「(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対する(B1)成分の質量部」の技術的意義について、本件明細書の【0022】には、「(B1)成分の酸素を含有する脂環式化合物を含む(メタ)アクリル系モノマーについては上記の(A)成分、(B1)成分、及び(B2)成分の合計110質量部に対して、接着性向上の観点から、10質量部以上60質量部以下であることが好ましく、20質量部以上55質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上50質量部以下であることが特に好ましい。」と記載されていることから、本件発明1において、「20質量部以上60質量部以下」とすることは、接着性向上という技術的意義があるといえる。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点であって、相違点1及び周知例1~3の記載について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明1と同一とはいえない。
イ また、本件発明1と先願発明2とは、上記本件発明1と先願発明1との一致点で一致し、上記相違点2及び次の相違点3、4について相違が認められるところ、上述したように上記相違点2は、実質的な相違点であって、相違点3、4及び周知例1~3の記載について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明2と同一とはいえない。
(相違点3)
先願発明2は、本件発明1の発明特定事項にない「(d)3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなるアルコキシシラン含有光重合性モノマー」を含んでいる点。
(相違点4)
「(A)成分、(B1)成分、(B2)成分の合計110質量部に対する、(A)成分の質量部について、本件発明1は、40質量部以上80質量部以下であるのに対し、先願発明2は、81質量部[70×{110/(70+10+15+1.5)}]である点。
ウ 以上のことから、本件発明1は、先願発明1と同一とはいえないし、先願発明2と同一ともいえない。
(2)本件発明2、4及び5について
本件発明2、4及び5は本件発明1を引用し、さらに特定するものであるから、本件発明1と同様に、先願発明1と同一とはいえないし、先願発明2と同一ともいえない。
6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件発明1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、請求項3は、訂正により削除されたため、これらに対する特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
また、他に本件発明1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701201