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特許異議申立

2021-700530

医療施設で用いる使い捨てカーテン及びその製造方法

審判番号
2021-700530
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-240863
登録番号
6795822
請求日
2021年06月01日
審決日
2021年12月03日
公報発行日
2022年01月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社リリー
  • 【権利者代理人】奥村 茂樹
  • 【権利者】シンワ株式会社
  • 【権利者代理人】奥村 茂樹
  • 【異議申立人】池田 貴博
  • 【異議申立人代理人】岩壁 冬樹
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 平野 崇
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-Y (D06M) / P1651.537-Y (D06M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6795822号発明「医療施設で用いる使い捨てカーテン及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6795822号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6795822号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年12月13日に出願され、令和2年11月17日にその特許権の設定登録がされ、令和2年12月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年6月1日に特許異議申立人池田貴博により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6795822号の請求項1~6の特許に係る発明(以下、「本件発明」、各発明を「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリエステル繊維を構成繊維とし、その色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色されている不織布であって、 該不織布表面に界面活性剤が付与されてなることを特徴とする、 院内感染を防止するため、人の体液がその表面に吸着され染みを目視した際に廃棄する、医療施設で用いる使い捨てカーテン。 【請求項2】 不織布に難燃剤が付与されてなる請求項1記載の医療施設で用いる使い捨てカーテン。 【請求項3】 ポリエステル繊維が親水性ポリエステル繊維である請求項1記載の医療施設で用いる使い捨てカーテン。 【請求項4】 ポリエステル繊維を構成繊維とする繊維ウェブに、高圧水流を施して、ポリエステル繊維相互間を交絡させて水流交絡不織布を得る工程、及び 前記水流交絡不織布に界面活性剤液を付与する工程、及び 前記界面活性剤液中の液体成分を蒸発させる工程を具備することを特徴とする、請求項1記載の医療施設で用いる使い捨てカーテンの製造方法。 【請求項5】 界面活性剤液中に難燃剤及びアクリル系接着剤が含有されている請求項4記載の医療施設で用いる使い捨てカーテンの製造方法。 【請求項6】 請求項1記載の医療施設で用いる使い捨てカーテンであって、医療施設内の人の体液が界面活性剤によって吸着され該使い捨てカーテンに染みが生じた場合に、該使い捨てカーテンを廃棄することを特徴とする医療施設で用いる使い捨てカーテンの廃棄方法。」 第3 申立理由の概要 1.理由1(進歩性) 本件発明1~6は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2~10号証に記載された事項に基いて(以下、各甲号証を「甲1」等ともいう。)、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反されたものであるから、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 甲第1号証:米国特許出願公開第2012/0018106号明細書 甲第2号証:米国特許第9301634号明細書 甲第3号証:“CONTRACT CURTAIN コントラクトカーテン 医療・福祉・教育・宿泊・各種施設用”,株式会社サンゲツ,2016年10月,Vol.9 甲第4号証:特開2004-232149号公報 甲第5号証:特開2009-277952号公報 甲第6号証:特許第2904423号公報 甲第7号証:特公平3-17960号公報 甲第8号証:特開平3-220284号公報 甲第9号証:石原一彦,“繊維工業における界面活性剤について”,油化学,公益社団法人日本油化学会,1992年9月20日,第41巻,第9号,第918~923頁 甲第10号証:齋藤嘉孝,“界面活性剤講座(第11講)繊維用界面活性剤に関して”,色材協会誌,一般社団法人色材協会,2017年2月20日(当審注:本件特許の出願日より後の発行),第90巻,第2号,第80~86頁 2.理由2(サポート要件) 本件発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)界面活性剤について-1 本件発明1の「該不織布表面に界面活性剤が付与されてなる」について、本件特許明細書の記載からは界面活性剤の付与量が不明であり、実施例で実証された結果は、アクリル系接着剤及びリン系難燃剤の存在が前提となっているから、本件発明は、課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 (2)界面活性剤について-2 界面活性剤は、一般にカーテン布帛の撥水処理や防汚処理にも使用され、「体液中の水分および蛋白質をよく吸着し」という本件発明の効果を奏しない場合を包含するから、本件発明は、課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 第4 甲1~10の記載 1.甲1について 甲1には、次の事項が記載されている。以下、日本語訳を示す。また、下線は、理解の便宜のため、当審が付した(以下同様)。 「発明の詳細な説明 [0023]・・・(中略)・・・使い捨て病院のカーテンは、抗菌剤および難燃剤で処理したポリプロピレン不織布から製造される。」 そうすると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「ポリプロピレン不織布に、抗菌剤および難燃剤が処理されてなる使い捨て病院のカーテン。」 2.甲2について 甲2には、次の事項が記載されている。以下、日本語訳を示す。 「仕切カーテンは、不織布ポリエステル、不織ポリエチレンテレフタレート又は不織ポリプロピレンのような不織合成材料から作られる。」(第1欄第67行~第2欄3行) 「本発明の仕切カーテンは、衛生状態が最も重要とされる病院や同様の環境における使用に特によく適している。」(第2欄第44~47行) 「仕切りカーテン10は、不織合成材料12の単一構造の単一片から作製される。仕切カーテン10の好適な材料12は、不織ポリエチレンテレフタレート(PET)や不織ポリプロピレンである。不織布材料12は、国内火災安全規制に適合するように、難燃剤と混合するか、難燃剤でコーティングされる。」(第2欄第54~61行) 「不織布材料12は疎水性であり、水を容易に吸収しない。これにより、血液、尿、胆汁、又はいずれかの他の体液が仕切カーテン10と接触したときに、液体が不織布材料12上に留まり、吸収されない傾向がある。これにより、仕切りカーテン10は洗浄が容易である。」(第2欄第64行~第3欄第2行) 「仕切りカーテン10は普通の洗濯機において洗濯可能である。このように、仕切りカーテン10は、清潔かつ衛生を保つことが容易である。」(第3欄第6~8行) 以上の記載を総合すると、甲2には次の事項が記載されている。 「不織ポリエチレン、不織ポリエチレンテレフタレート又は不織ポリプロピレンからなり、難燃剤と混合又は難燃剤とコーティングされ、疎水性を有することで液体を吸収しない傾向があり、清掃が容易、洗濯可能な病院で用いるカーテン」 3.甲3について 甲3には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001380946000001.jpg] 」(本文前において「THE SENSE of color」として、色見本が紹介された頁) 「 [図:0001380946000002.jpg] 」(本文前において「THE SENSE of color」として、色見本が紹介された頁) 「 [図:0001380946000003.jpg] 」(第131頁 下部) 以上の記載から、甲3には以下の事項が記載されている。 「ピンク、グリーン、ベージュ及びイエローに彩色された医療用カーテン」 「病院、診療所又は助産所では消防法の規制を受ける防炎防火対象物を使用しなければならないこと」 4.甲4について 甲4には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ポリエステル系合成繊維の難燃加工方法に関する。さらに詳しくは、ポリエステル系合成繊維、ポリエステル系合成繊維からなる綿、糸、編織物もしくは不織布、またはそのポリエステル系合成繊維と他の天然繊維、無機繊維、半合成繊維もしくは合成繊維との交織織物、もしくは混紡繊維からなる綿、糸、編織物もしくは不織布からなる、繊維または繊維製品を後加工により難燃化するのに好適な難燃加工方法を提供するものである。」 「【0073】 本発明の難燃剤(A)は、有機リン系化合物(a)を水に分散させて製造される。(A)中の有機リン系化合物(a)の濃度は、通常10~50重量%、好ましくは15~40重量%である。(a)を水に分散させる方法としては、例えば(a)と非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、およびこれらを併用し、必要により有機溶剤も配合して均一に溶解し、徐々に水を加えて乳化分散させる方法が挙げられる。」 「【0083】 本発明の処理液(I)は、難燃剤(A)をあらかじめ、水で希釈し、ゼータ電位を-20mv~-80mvに調整するために無機塩(B)を加えて作成する。」 「【0086】 本発明において、処理浴でバッチ式処理法により、処理液(I)中でポリエステル系合成繊維に難燃剤(A)を付与する方法は、以下のとおりである。液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機等のパッケージ染色機中で、(A)を水に分散させて、さらに(B)を添加して混合する。」 「【0091】 本発明で処理された物品の用途としては、自動車、鉄道、船舶、航空機などの交通機関用;劇場、病院、ホテルなどの公共施設用;または家庭用の、シート、シートカバー、カーテン、壁・天井クロス、障子紙、カーペット、どん帳、建築用養生シート、防護用ネット、帆布、テントなどの繊維または繊維製品が挙げられる。」 以上の記載からみて、甲4には以下の事項が記載されている。 「病院で使用されるカーテンに使用されるポリエステル系合成繊維の難燃性加工方法であって、難燃剤を界面活性剤により水に分散させて、さらに無機塩を添加して混合した処理液に処理浴するポリエステル系合成繊維の難燃性加工方法」 5.甲5について 甲5には、次の事項が記載されている。 「【0036】 前記難燃剤を含む樹脂を繊維ウエブに付着するには、例えば熱可塑性または熱硬化性の樹脂をディスパーションまたはエマルジョンの形態で準備して、これらのディスパーションまたはエマルジョンに前記難燃剤を混入してから、この混合液を繊維ウエブに含浸、または塗布した後、乾燥および熱硬化させて付着させる方法がある。また、難燃剤の固形分の量としては、構成繊維100質量%に対して20~60質量%であることが好ましい。この範囲の難燃剤の量であれば、本発明の電磁波シールド不織布の難燃性の程度を、アンダーライター・ラボラトリーズ・インコーポレーテッドが定めるUL94の燃焼試験(以下、単に燃焼試験と略記する)に準ずる評価が「V-0」の基準条件を満たすことが可能である。また、構成繊維100質量%に対して30~45質量%であることがより好ましい。20質量%未満であると、やや燃え易くなり、「V-0」の基準条件を満たさない場合がある。また、60質量%を超えると、不織布全体の重量が重くなり、柔軟性に劣り、加工性が悪くなる場合がある。」 「【0049】 (実施例6) ・・・(中略)・・・ 次いで、実施例1と同様にして、水流絡合シートを得た。次いで、この水流絡合シートを一対の加熱ロールの間を加圧しながら通過させて、熱接着性繊維により構成繊維を接着固定して、面密度50g/m2、厚さ0.28mm、見掛け密度0.18g/cm3、銀メッキ繊維の面密度15g/m2の不織布を得た。 次いで、グアニジン・リン酸塩からなる難燃剤(難燃剤濃度:55%)を、アクリル樹脂エマルジョン(樹脂濃度:45%)に混入して、更に分散剤および水を添加して、難燃バインダー液を調整した。 次いで、この難燃バインダー液を前述の面密度50g/m2の不織布に含浸した後、乾燥およびキュアリング処理を行い、面密度70g/m2の電磁波シールド不織布を得た。」 以上の記載からみて、甲5には以下の事項が記載されている。 「難燃剤を、アクリル樹脂エマルジョンに混入して、更に分散剤および水を添加して、調整した難燃バインダー液に不織布を含侵させた電磁波シールド不織布」 6.甲6について 甲6には、次の事項が記載されている。 「【0019】 【実施例】 実施例 1 ポリエチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.72)と6-ナイロン(固有粘度[η]=1.16)を別々の溶融装置で溶融し、それらの溶融重合体を紡糸頭で1:1の容量比で合流させて接合-分離を2回繰り返した後、290℃で紡糸して図1に示した断面形状を有する貼合型複合繊維を製造した。この複合繊維を・・・(中略)・・・繊維ウエブを製造した。このウエブ3枚を積層して、#40ニードルで30/cm2のニードルパンチ処理した後、移動する金網支持体上に載置して、孔径0.15mmのノズルを一列に配置した高圧噴射水流ノズルから、最初は70kg/m2の水圧で最終的に150kg/m2の水圧になるように水圧を高めながら3段階で、温度20℃の柱状水流を噴射して処理した。 【0020】その結果、分割・割裂により形成された微細繊維の平均繊度が0.34デニールであり、不織布の厚さ方向にその分割・割裂の深さが異なっている、図2に示す偏平な断面形状を有する微細繊維からなる平均重量114g/m2、見かけ密度0.18g/cm3の交絡不織布が得られた。この交絡不織布では、その表面では偏平な断面形状を有する微細繊維が密に交絡し、その裏面では僅かな未分割部分が存在し、しかも該未分割部分と分割した微細繊維部分とがやはり密に交絡していた。この不織布にアクリル系樹脂液(大日本インキ社製:ディックナールE-8310)により処理して12g/m2の量で付着させ、更にカチオン系界面活性剤(三洋化成社製:サファノール503-D)を付与して柔軟化した。次いで、カレンダー処理して表面を平滑化したところ、柔軟なドレープ性のある不織布を得た。この不織布をカーテンに仕立てて使用したところ、同じ重量のレーヨン紡績糸からなる織布製のカーテンに比べて、カーテン越しにみる光はきつくなく直射日光の遮蔽性に優れており、穏やかな状態で採光でき、且つ遮音性が優れていた。」 7.甲7について 甲7には、次の事項が記載されている。 「本発明は、カーテンや壁、床、天井あるいは電子機器のプラスチツク筐体等の表装材として用いることができ、それによつて電子機器の発生する電磁波が筐体外や室外に漏洩することを遮蔽すると共に吸音効果も発揮する導電性シートに関する。」(第1欄第23行~第2欄第3行) 「実施例 A 繊維不織布 (1) 複屈折0.170、繊度1.5デニール、繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維60重量%と、複屈折0.030、繊度1.1デニール、繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維40重量%とを、・・・(中略)・・・坪量85g/m2、厚さ均斉率85%の繊維不織布を得た。」(第6欄第8~17行) 「B コーテイング層 (1) 導電性塗料として銅微粉末をアクリル樹脂のトルエン溶液に分散したニツサンスプレイラツト8270(日産化学工業(株)製)を用い、塗布ローラを用いるコーテイング法によりA(1)、(2)の繊維不織布の片面に塗布して75℃で乾燥し、層厚5、25、50μのコーテイング層を形成した。 (2) 導電性塗料としてニツサンスプレイラツト8270に臭素化芳香族の防炎剤ピロガードF-100(第1工業製薬(株)製)を少量添加した樹脂液を用い、A(1)、(2)の繊維不織布の片面にB(1)と同様に塗布、乾燥し、さらに140℃でベーキングを行つて、層厚25、50μのコーテイング層を形成した。」(第6欄第26~39行) 8.甲8について 甲8には、次の事項が記載されている。 「近年、災害事故による被害の増大に伴い、ホテル、旅館、学校、病院などの建物で使用されるカーテン、カーペットなどのインテリア材料は、消防法により防炎規制されている。」(第1頁右下欄第2~5行) 「本発明の目的は、処理対象である難燃性繊維製品が本来有する難燃性を低下させることなく、撥水撥油性を付与乃至向上せしめるエマルジョン型難燃性撥水撥油剤を提供することにある。」(第2頁左上欄第6~9行) 「共重合反応は、重合開始剤、乳化剤および水溶性有機溶媒の存在下に、約40~90℃で乳化重合法によって行われる。乳化剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性のいずれの界面活性剤も好適に使用し得るが、繊維助剤との相溶性の点からノニオン性界面活性剤が好んで用いられる。」(第2頁右下欄第10~16行) 「実施例 パーフルオロアルキルエチルアクリレートCmF2m+1CH2CH2OCOCH=CH2(m:6、8、10、12の混合物で平均9)[FAA]、2,4,6-トリブロモフエニルメタクリレート(第一工業製薬製品ピロガードSR-804)[BPMA]、イソプロピリデンビス(3,5-ジブロモ-4-メタクリロキシフェニル)[PBMAP]、塩化ビニリデン[VDCl]、N-メチロールアクリルアミド[MAA]の各所定量(表1にg単位で示される)およびn-ドデシルメルカプタン0.4g、ノニオン性界面活性剤(花王製品エマルゲン930)6.0g、アゾビスイソブチロアミジン2塩酸塩2.0g、メチルエチルケトン63.0g、蒸留水230.4gを、容量500mlの冷却管付ガラス製反応容器内に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌し、十分に乳化分散させた後昇温させ,70℃で4時間共重合反応させて、それぞれ固形分濃度25.0重量%のエマルジョン型難燃性撥水撥油剤A~G(A~E:実施例、F~G:比較例)を得た。」(第3頁右上欄第2~20行) 「得られた各エマルジョン型難燃剤撥水撥油剤を、固形分濃度が所定濃度になるようにパークロロエチレンで希釈し、希釈液中に試験布[市販難燃性ポリエステルカーテン布;日本防災協会防炎規格(イ)合格品]を5秒間浸漬し、十分にマングルで絞ってから、110℃で3分間乾燥し、150℃で2分間キュアを行った後、次の各試験を行った。」(第3頁左下欄第10~16行) 以上の記載からみて、甲8には以下の事項が記載されている。 「病院などの建物で使用されるカーテンであって、ノニオン性界面活性剤を乳化剤として使用したエマルジョン型難燃性撥水撥油剤の希釈液中に浸漬して作製された難燃性ポリエステルカーテン」 9.甲9について 甲9には、次の事項が記載されている。 「繊維工業に携わる界面活性剤は構造面での分類もさることながら,湿潤,浸透,乳化,分散,可溶化,起泡,消泡などの働きにより,種々の薬剤群として業界で使用されている。これらの例を表-1に示す。」(第918頁左欄第15~18行) 「 [図:0001380946000004.jpg] 」(第919頁表-1) 10.甲10について 甲10には、次の事項が記載されている。 「繊維製品は、精練→染色→ソーピング→(フィックス)→仕上加工→縫製・(ガーメント洗い)の工程を経て完成するが,そのほぼすべての工程で界面活性剤が活用されている。界面活性剤の基本性能である,乳化・分散・湿潤・浸透・洗浄等の機能が幾多の場面で貢献しているわけである。」(第80頁 要旨欄) 「 [図:0001380946000005.jpg] 」(第81頁 表-1) 「<カーテンの耐久難燃加工> 消防法(昭和23年法律第186号)では、高層建築物,地下街または劇場,病院等の建築物(防炎防火対象物)におけるカーテンなどについては,日本防炎協会が管理する45°法による防炎性が求められる。・・・(中略)・・・ 浴中難燃処理の場合には,とくに高度な分散技術が要求される。・・・(中略)・・・こうした問題を発生させないために用いる難燃剤の分散剤は,分散染料の分散剤同様にアニオン系界面活性剤を多く用いるが,難燃成分との親和性と染色への影響を見極めながら選定された特殊なものを用いて剤型化されている。」(第83頁右欄第23行~第84頁左欄第6行) 第5 当審の判断 1.理由1(進歩性) (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、「不織布」からなる「医療施設で用いる使い捨てカーテン」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本件発明1は、「ポリエステル繊維を構成繊維とし、その色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色されている不織布であって、該不織布表面に界面活性剤が付与されてなることを特徴とする、院内感染を防止するため、人の体液がその表面に吸着され染みを目視した際に廃棄する」ものであるのに対し、甲1発明は、「ポリプロピレン不織布に、抗菌剤および難燃剤が処理されてなる」ものの、界面活性剤の付与については不明であり、何を契機として捨てるのか不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点に係る本件発明1の発明特定事項に係る技術的意義 本件特許の明細書には、次の記載がある。 「【0005】本発明者等は、上記の欠点を解決するためには、抗菌性能やその洗濯耐久性を追求するよりも、病原体が付着した可能性のあるカーテンは速やかに廃棄した方が、院内感染をより防止しうるとの発想に思い至った。」 「【0010】不織布の色彩は、ピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色されている。かかる色に着色されていると、体液が付着した箇所で変色し、染みが生じていることを目視しやすくなるためである。・・・」 「【0011】・・・界面活性剤は水分及び油分のいずれをも吸着しやすいため、体液を吸着させる媒体として適しているのである。・・・」 「【0015】・・・このカーテン表面に血液を一滴滴下したところ、血液を弾くことなく、滴下箇所を中心して円状に拡散した。したがって、カーテンに血液が付着したことを容易に確認しうるものであった。」 以上の記載を総合すると、本件発明1において「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」されていることは、体液が付着した箇所で変色し、「染み」が生じていることを目視しやすくなるものであり、同「界面活性剤が付与されてなる」ことは、体液を吸着させる媒体として適しているためであり、同「院内感染を防止するため、人の体液がその表面に吸着され染みを目視した際に廃棄する」は、病原体が付着した可能性のあるカーテンを「染み」として識別して速やかに廃棄することで院内感染を防止するという技術的意義を有するものである。 (イ)判断 これに対し、甲1には、使い捨てカーテンを捨てる契機が不明であって、カーテンの色彩や、界面活性剤を付与することについても不明であるから、「不織布」の「色彩」を「ピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することを契機として、汚染されたカーテンを速やかに廃棄できる構成とすることの着想は得られない。 次に、甲2~甲10について検討する。 甲2(第4 2.参照)には、病院で用いるカーテンの構成繊維として、不織ポリプロピレンと並んで不織ポリエチレンは記載されているものの、疎水性を有するカーテンであって、液体を吸収しない傾向があるものであって、甲2には、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することが記載も示唆もされていない。 甲3(第4 3.参照)には、「ピンク、グリーン、ベージュ及びイエローに彩色」することは記載されているものの、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することが記載も示唆もされていない。 甲4(第4 4.参照)、甲5(第4 5.参照)及び甲8(第4 8.参照)には、難燃剤を「界面活性剤」、「アクリル樹脂エマルジョン」及び「ノニオン性界面活性剤」に分散、混入して不織布表面に付与することは記載されているものの、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することが記載も示唆もされていない。 甲9及び甲10には、界面活性剤の種類や用途は記載されているものの、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することが記載も示唆もされていない。 また、甲6及び甲7にも、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することが記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1~10には、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することが記載も示唆もされておらず、「染みを目視した際に廃棄する」ことについて動機付けがない。 そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲2~10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、次のように主張している。 「甲第1号証には、本件特許発明1の発明特定事項のうち、・・・、「院内感染を防止するため、人の体液がその表面に吸着され染みを目視した際に廃棄すること」(E)、・・・が記載されている。」(第19頁第3~6行) 「要するに、医療施設で用いるカーテンには、難燃性その他の特性を付与するため、従来から必然的に界面活性剤が付与されている。別言すれば、従来公知の医療施設用カーテンにおいて、その表面に界面活性剤が一切付与されていないものは、通常想定できない。 さらに、界面活性剤の付与量に関して、本件特許明細書には「不織布表面の界面活性剤の付与量は、極めて少量でよく、たとえば0.001~0.1g/m2程度でよい。」(【0011】)と記載され、また実施例には「非イオン界面活性剤及びアクリル系接着剤の付与量は0.6g/m2で」(【0014】)と記載されているだけで、非イオン界面活性剤自体の付与量が不明である。すなわち、従来公知の医療施設用のカーテンに必然的に付与されている界面活性剤と比べ、特別な効果を奏するような量的相違点も見いだせない。」(第22頁第20行~第23頁第6行) 当該主張について検討する。 上記(1)イに示したとおり、甲1には、病院で用いる使い捨てカーテンは記載されているものの、カーテンを廃棄する契機に関する事項ついては記載されていないから、甲1に上記構成要件(E)が記載されているとは、認められない。 また、界面活性剤の付与に関し、本件発明は、「ポリエステル繊維を構成繊維とし、色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色されている不織布であって、不織布表面に界面活性剤が付与されてなることを特徴」とし、「院内感染を防止するため、人の体液がその表面に吸着され染みを目視した際に廃棄する」ものである。 そうすると、従来公知の医療施設用カーテンに必然的に界面活性剤が付与されているとしても、その目的は難燃性その他の特性を付与するためであって、「不織布」の「色彩がピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色」するとともに、「不織布表面に界面活性剤が付与され」ることによって、「人の体液を吸着」し「染み」として「目視」することを契機として、汚染されたカーテンを速やかに廃棄できる構成とすることの着想は得られない。 したがって、申立人の主張には理由がない。 (2)本件発明2~6について 本件発明2~3は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。また、本件発明4~6は、「請求項1記載の医療施設で用いる使い捨てカーテンの製造方法」であって、本件発明1の技術的事項に加え、その製造方法に関する技術的事項を追加したものである。 よって、上記(1)イに示した理由と同様の理由により、本件発明2~6は、甲1発明及び甲2~10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。 2.理由2(サポート要件)に関する申立て理由について ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 本件特許の明細書を参照すると、「【0010】不織布の色彩は、ピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色されている。かかる色に着色されていると、体液が付着した箇所で変色し、染みが生じていることを目視しやすくなるためである。」、「【0011】・・・(中略)・・・界面活性剤は水分及び油分のいずれをも吸着しやすいため、体液を吸着させる媒体として適しているのである。・・・(中略)・・・不織布表面への界面活性剤の付与量は、極めて少量でよく、たとえば0.001~0.1g/m2程度でよい。」ことが示されている。 ウ 当該記載から、ピンク、グリーン、ベージュ又はイエローに着色された不織布表面に、極めて少量の界面活性剤が付与されていれば、界面活性剤の作用によって「人の体液」が「吸着」されて、目視しやすい「染み」となり、当該「染み」を目視することで病原体が付着した可能性のあるカーテンを識別し、当該カーテンを廃棄することで「院内感染を防止する」という発明の課題を解決できると認識できるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 エ 申立人は、特許異議申立書において、本件特許明細書に記載された実施例では、界面活性剤自体の付与量が不明であり、実施例で実証された効果は、アクリル系接着剤及びリン系難燃剤の存在が前提となっていること、界面活性剤はカーテン布帛の撥水処理や防汚処理にも使用されることを理由として、本件特許発明は、課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている旨、主張している(第28頁第11~17行)。 しかしながら、本件特許の明細書【0011】には、「不織布表面への界面活性剤の付与量は、極めて少量でよく、たとえば0.001~0.1g/m2程度でよい。」ことが記載されており、本件発明において界面活性剤の付与量が、課題解決の機序に関与するものとは認められない。また、本件発明1は、「人の体液がその表面に吸着され染み」を形成することを発明特定事項として含むものであるから、「撥水処理」や「防汚処理」を目的として界面活性剤を付与したものではないことは明らかである。 したがって、申立人の主張には理由がない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700530

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