特許異議申立
2021-700503
コモンモードフィルタ
- 審判番号
- 2021-700503
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-009411
- 登録番号
- 6794844
- 請求日
- 2021年05月24日
- 審決日
- 2022年08月31日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TDK株式会社
- 【権利者代理人】鷲頭 光宏
- 【権利者代理人】緒方 和文
- 【異議申立人】秋山 朋毅
- 審判長/審判官
- 審判長 酒井 朋広
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 山本 章裕
- 分類
- P1652.161-ZDA(H01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6794844号発明「コモンモードフィルタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6794844号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔3-7〕、8について訂正することを認める。
特許第6794844号の請求項3、4、8に係る特許を取り消す。
同請求項5ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6794844号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成29年1月23日に出願され、令和2年11月16日にその特許権の設定登録がされ、同年12月2日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年 5月24日 :特許異議申立人秋山 朋毅(以下、「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て(請求項3ないし7について)
令和 3年 8月25日付け:取消理由通知
令和 3年10月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年 2月10日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和 4年 4月 5日付け:取消理由通知(決定の予告)
なお、令和4年4月5日付け取消理由通知に対して、特許権者からは何ら応答がなされなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年10月18日の訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線部は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に
「巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されていることを特徴とするコモンモードフィルタ。」と記載されているのを、
「巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されており、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間しており、
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差しており、且つ、前記第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間していることを特徴とするコモンモードフィルタ。」に訂正する。(請求項3を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に
「前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。」と記載されているのを、
「前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコモンモードフィルタ。」に訂正する。(請求項5を直接的または間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していることを特徴とする請求項6に記載のコモンモードフィルタ。」とあるうち、請求項5、6を介して引用する請求項3を引用するものについて、独立形式で改め、
「巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されており、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間しており、
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差しており、且つ、前記第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間しており、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していることを特徴とするコモンモードフィルタ。」に訂正して新たな請求項8とする。
(4)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項3ないし7について、請求項4ないし7は、訂正する請求項3を直接的又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項3ないし7に対応する訂正後の請求項3ないし7、8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、特許権者は、訂正請求書において、訂正後の請求項8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別の訂正単位とする旨の求めがあるから、当該別の訂正単位とする求めを認める。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項5及び6に記載された事項を訂正前の請求項3に追加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたように、訂正事項1は、訂正前の請求項5及び6に記載された事項を訂正前の請求項3に追加するものであって、明細書の段落【0024】に「本実施形態においては、第3の巻回領域の表面領域Rにおいて第1のワイヤW1が大きく遷移している。ここで、表面領域Rとは、巻芯部23の第1のエッジE1と第2のエッジE2に挟まれた表面のうち、第3の巻回領域A3に属する表面を指し、本実施形態においてはxy平面を構成する。・・・。図2に示すように、第1のワイヤW1のうち上述した表面領域R上に位置する部分は、第1の区間S1を構成する。」、同段落【0027】に「第2のワイヤW2のうち上述した表面領域R上に位置する部分を第2の区間S2とすると、表面領域R上において第1の区間S1と第2の区間S2が交差する。」、【0038】に「本実施形態においては、符号51で示すように、第1のエッジE1上において第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が離間するとともに、符号52で示すように、第2のエッジE2上において第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が離間している。」、同段落【0039】に「本実施形態においては、第1の区間S1と第2の区間S2を第1及び第2のエッジE1,E2において互いに離間させている」、同段落【0044】に「本実施形態においては、符号51で示すように、第1のエッジE1上においては第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が離間する」と記載されているから(下線は、当審が付与。)、新規事項の追加に該当しない。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正前の請求項5は、訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであるところ、訂正事項2は、訂正前の請求項3及び4との引用関係を解消して、多数項を引用する請求項5の引用請求項数を削減する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたように、訂正事項2は、多数項を引用する請求項5の引用請求項数を削減する訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項5、6を介して訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであるところ、訂正事項2により、訂正前の請求項5の訂正前の請求項3及び4の引用関係が解消されたことに伴い、訂正前の請求項1、2、4を引用しないものとした上で,訂正前の請求項5、6を介して訂正前の請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項として新たな請求項8と改める訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたように、訂正事項3は、訂正前の請求項7のうち訂正前の請求項5、6を介して訂正前の請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項として新たな請求項8と改める訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)独立特許要件について
ア 訂正事項1は、上記「(2)ア(ア)」で示したとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、訂正前の請求項3ないし7について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項3に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 訂正前の請求項1、2には特許異議の申立てがされておらず、また、請求項5に係る訂正事項2は、上記「(2)イ(ア)」で示したとおり、引用する訂正前の請求項1ないし4のうち請求項3、4との引用関係を解消し引用請求項数を削減する訂正であって特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項5及び請求項5を直接的及び間接的に引用する請求項6,7に係る発明について独立特許要件が課される。
しかし、下記「第5 2 (3)」及び「同(4)」で後述するように、訂正後の請求項5ないし7に係る発明については特許法第29条の2の規定により特許をうけることができないものではない。また、他に訂正後の請求項5ないし7に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後の請求項5ないし7に係る発明は、訂正の要件としての独立特許要件を満たしている。
ウ そして、訂正事項3は、上記「(2)ウ(ア)」で示したとおり、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とすることから、訂正後の請求項8に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小活
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。そして、特許権者から、訂正後の請求項8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われる求めがあったことから、本件訂正後の請求項〔3-7〕、8について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線部は訂正箇所を示す。
「 【請求項1】
巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1、第2及び第3の巻回ブロックは、上下に位置する前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されていることを特徴とするコモンモードフィルタ。
【請求項2】
前記第1の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数は、前記第2の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数及び前記第3の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項3】
巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されており、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間しており、
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差しており、且つ、前記第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間していることを特徴とするコモンモードフィルタ。
【請求項4】
前記第3の巻回ブロックは、前記第1の巻回ブロックと前記第2の巻回ブロックの間に位置することを特徴とする請求項3に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項5】
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項6】
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差しており、且つ、前記第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間していることを特徴とする請求項5に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項7】
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していることを特徴とする請求項6に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項8】
巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されており、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間しており、
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差しており、且つ、前記第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間しており、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していることを特徴とするコモンモードフィルタ。」
第4 取消理由の概要
令和4年4月5日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
請求項3、4、8に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである(同法第184条の13参照)。
記
先願:特願2017-505575号(甲第1号証)
(国際公開第2017/061143号参照)
第5 当審の判断
1 先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(甲第1号証)の記載、先願発明について
(1)先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
「[0004] 図9に示すように、コモンモードチョークコイル41は、コア42と、それぞれインダクタを構成する第1ワイヤ43および第2ワイヤ44と、を備えている。コア42は、電気絶縁性材料、より具体的には、誘電体としてのアルミナ、磁性体としてのNi-Zn系フェライト、または樹脂などから構成される。コア42は、全体として断面四角形状をなしている。ワイヤ43および44は、たとえば、絶縁被覆された銅線から構成される。
[0005] コア42は、巻芯部45ならびに巻芯部45の各端部にそれぞれ設けられた第1鍔部46および第2鍔部47を有する。第1および第2ワイヤ43および44は、巻芯部45上において第1鍔部46側の第1端部から第2鍔部47側の第2端部に向かって互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回されている。
[0006] 第1鍔部46には、第1および第2端子電極48および49が設けられ、第2鍔部47には、第3および第4端子電極50および51が設けられる。端子電極48~51は、たとえば、導電性ペーストの焼付け、導電性金属のめっき等によって形成される。なお、端子電極48~51の位置からわかるように、図9は、コモンモードチョークコイル41を、実装基板側に向けられる実装面を上方に向けた姿勢で図示している。
(中略)
[0041] 図1には、この発明の第1の実施形態によるコモンモードチョークコイル61が示されている。図1に示したコモンモードチョークコイル61は、前述した図9に示したコモンモードチョークコイル41と比べて、第1および第2ワイヤ43および44の巻回態様が異なるのみで、それ以外の構成は実質的に同様である。したがって、図1において、図9に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
[0042] 図1では、コモンモードチョークコイル61における、実装基板側に向けられる面が示されている。また、図1では、図9に示した天板54の図示が省略されている。また、図1において、第1ワイヤ43と第2ワイヤ44とを明確に区別するため、第1ワイヤ43は黒塗りで、第2ワイヤ44は白抜きで図示されている。
[0043]
図1に示したコモンモードチョークコイル61における第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態が図2に模式的断面図で示されている。図1と図2とを対比すれば、ワイヤ43および44のターン数に関して、図1に示したものは図2に示したものより少ないことからわかるように、図1では、ワイヤ43および44が省略的に図示されている。また、図2およびそれ以降の図面では、第1ワイヤ43を示す断面には網掛けが施され、第2ワイヤ44との区別が明確になるようにしている。
[0044] 第1および第2ワイヤ43および44は、巻芯部45上において、第1鍔部46が設けられた第1端部62側から第2鍔部47が設けられた第2端部63に向かって互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回されている。図2に示した第1および第2ワイヤ43および44の各々の断面内には、巻芯部45の第1端部62側から数えたターン数「1」~「32」が記入されている。第1および第2ワイヤ43および44の各々の断面内へのターン数の記入は、図3および図4ならびに後述する図7および図8においても採用される。
[0045] ワイヤ43は、巻芯部45の周面に接する第1層を構成する状態で巻回され、第2ワイヤ44は、その大部分が断面上の一部を第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込ませながら第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回される。
[0046] 第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態の詳細を、図2とともに、図3および図4を参照して説明する。図3および図4において、巻芯部45の周囲に巻回される第1および第2ワイヤ43および44の各部分のうち、巻芯部45の手前側に位置する部分は実線で、巻芯部45によって隠れる部分は破線でそれぞれ模式的に示されている。なお、ワイヤ43および44の、巻芯部45によって隠れる部分については、すべてが図示されているわけではなく、特徴ある箇所のみが破線で示されている。
[0047] また、図2ないし図4には、巻芯部45の第1端部62から第2端部63に向かって、「0.5ずれ領域A」、「遷移領域C」および「1.5ずれ領域B」がこの順に表示されている。すなわち、巻芯部45の軸線方向に沿って、0.5ずれ領域A、遷移領域Cおよび1.5ずれ領域Bが分布している。これら領域A~Cの各々の名称の由来は後述する説明により明らかにされるが、第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態の説明を、領域A~Cの各々に分けて行なう。
(中略)
[0050] 次いで、遷移領域Cでは、第1ワイヤ43における第24ターンから第25ターンへと移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間に隙間が形成される。
(中略)
[0055] 次いで、遷移領域Cでは、第2ワイヤ44は、第23ターンに対して隙間を形成した状態で第24ターンが巻回され、さらに、第24ターンに対して隙間を形成した状態で第25ターンが巻回される。これら第24ターンおよび第25ターンは、巻芯部45の周面に接する状態で巻回される。このとき、図3と図4とを対照すればわかるように、第2ワイヤ44は、3箇所において、第1ワイヤ43と交差する。
(中略)
[0081] 次に、図8を参照して、この発明の第3の実施形態によるコモンモードチョークコイル61bについて説明する。図8には、図7の場合と同様、コモンモードチョークコイル61bにおける第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態が示されている。図8は、図2の上半分に相当する図である。よって、図8において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
[0082] 図8に示したコモンモードチョークコイル61bでは、巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布している。
[0083] 第1ワイヤ43は、第1の0.5ずれ領域A1では、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で、第1ターンから第16ターンまで巻回される。
[0084] 次いで、第1の遷移領域C1では、第1ワイヤ43における第16ターンから第17ターンへと移行する部分が位置し、第16ターンと第17ターンとの間に隙間が形成される。
[0085] 次いで、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2にわたって、第1ワイヤ43は、再び、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で、第17ターンから第32ターンまで巻回される。
[0086] 他方、第2ワイヤ44については、第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43のたとえば第1ターンと第2ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第1ターンが嵌り込むように、すなわち、一般化すると、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第nターンが嵌り込む状態で、第2ワイヤ44の第1ターンから第15ターンまで巻回される。
[0087] 次いで、第1の遷移領域C1では、第2ワイヤ44は、第15ターンに対して隙間を形成した状態で第16ターンが巻回され、さらに、第16ターンに対して隙間を形成した状態で第17ターンが巻回される。これら第16ターンおよび第17ターンは、巻芯部45の周面に接する状態で巻回される。このとき、図示しないが、第2ワイヤ44は、3箇所において、第1ワイヤ43と交差する。
[0088] 次いで、1.5ずれ領域Bでは、まず、第2ワイヤ44の第18ターンが、自身の第17ターンと第1ワイヤ43の第17ターンとの間の凹部に嵌りこむ状態で巻回される。続いて、第1ワイヤ43のたとえば第17ターンと第18ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第19ターンが嵌り込むように、すなわち、一般化すれば、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第n+2ターンが嵌り込む状態で、第2ワイヤ44の第18ターンから第24ターンまで巻回される。
[0089] 次いで、第2の遷移領域C2において、第2ワイヤ44は、第24ターンから第25ターンへとまで移行する部分が位置する。点線の円によって、巻回されない「空き」の部分が形成されることが示されているように、第24ターンと第25ターンとの間には隙間が形成される。このとき、図示されないが、第2ワイヤ44は、3箇所において、第1ワイヤ43と交差する。
[0090] 次いで、第2の0.5ずれ領域A2では、第1ワイヤ43のたとえば第25ターンと第26ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第25ターンが嵌り込むように、すなわち、一般化すると、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第nターンが嵌り込む状態で、第2ワイヤ44の第25ターンから第31ターンまで巻回される。最後に、第2ワイヤ44の第32ターンが巻芯部45の周面に接しかつ第1ワイヤの第32ターンに接する状態で巻回される。
(中略)
[0094] しかしながら、この発明の実施形態は上記の場合に限らず、0.5ずれ領域において、第1ワイヤの第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤの第n+1ターンが嵌り込むことによって、第1ワイヤ43と第2ワイヤ44との間で0.5ターン分のずれを生じさせるようにしてもよい。この場合には、1.5ずれ領域においては、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤの第n-1ターンが嵌り込むことによって、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で1.5ターン分のずれを生じさせる構成が採用される。
(中略)
[請求項1]
一方および他方にそれぞれ第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部上において前記第1端部から前記第2端部に向かって互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記第1ワイヤは、前記巻芯部の周面に接する第1層を構成する状態で巻回され、
前記第2ワイヤは、その大部分が断面上の一部を前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込ませながら前記第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回され、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの各々の前記第1端部側から数えたターン数n(nは自然数)で表現したとき、
(1) 前記第1ワイヤの第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、前記第2ワイヤの第nターンまたは第n+1ターンが嵌り込むことによって、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる0.5ずれ領域と、
(2) 前記0.5ずれ領域において、前記第1ワイヤの第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、前記第2ワイヤの第nターンが嵌り込むとき、前記第1ワイヤの第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、前記第2ワイヤの第n+2ターンが嵌り込むことによって、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で1.5ターンずれるか、または、前記0.5ずれ領域において、前記第1ワイヤの第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、前記第2ワイヤの第n+1ターンが嵌り込むとき、前記第1ワイヤの第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、前記第2ワイヤの第n-1ターンが嵌り込むことによって、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で1.5ターンずれる、1.5ずれ領域と、
が前記巻芯部の軸線方向に沿って分布しており、
前記0.5ずれ領域に位置する前記第2ワイヤのターン数の和は、前記1.5ずれ領域に位置する前記第2ワイヤのターン数の和の2倍以上かつ5倍以下である、
コイル部品。」
図1
[図:0001393055000001.jpg]
図2
[図:0001393055000002.jpg]
図3
[図:0001393055000003.jpg]
図4
[図:0001393055000004.jpg]
図8
[図:0001393055000005.jpg]
図9
[図:0001393055000006.jpg]
(2)先願明細書等の上記記載及び図面から、次のことがいえる。
ア 段落[0081]によれば、先願明細書等には第3の実施形態として、コモンモードチョークコイル61bが記載されている。
イ 段落[0081]には「図8には、図7の場合と同様、コモンモードチョークコイル61bにおける第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態が示されている。図8は、図2の上半分に相当する図である。」と記載されている。そして、図8によれば、巻芯部45の第1端部62側(紙面において左側端部)から第2端部63側(紙面において右側端部)に向かって第1および第2ワイヤ43(紙面において下段に巻回されたワイヤ)および44(紙面において上段に巻回されたワイヤ)が巻回されることが見て取れる。
よって、先願明細書等に記載されたコモンモードチョークコイル61bは、巻芯部45と、巻芯部45の第1端部62側から第2端部63に向かって巻回される第1および第2ワイヤ43および44とを備えるといえる。
ウ 段落[0082]によれば、コモンモードチョークコイル61bでは、巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布している。
エ 段落[0083]ないし[0085]によれば、第1ワイヤ43は、第1の0.5ずれ領域A1において、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で第1ターンから第16ターンまで巻回され、第1の遷移領域C1において、第16ターンから第17ターンへと移行する部分が位置し、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2にわたって、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で第17ターンから第32ターンまで巻回される。
オ 段落[0086]ないし[0090]によれば、第2ワイヤ44は、第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第1ターンから第15ターンまで巻回され、第1の遷移領域C1において、第15ターンに対して隙間を形成した状態で第16ターンが巻回され、さらに第16ターンに対して隙間を形成した状態で第17ターンが巻回され、第1ワイヤ43と3箇所において交差し、1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第n+2ターンが嵌り込む状態で第18ターンから第24ターンまで巻回され、第2の遷移領域C2において、第24ターンから第25ターンへと移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間には隙間が形成され、第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され、最後に、第32ターンが巻芯部45の周面に接しかつ第1ワイヤの第32ターンに接する状態で巻回される。
カ 段落[0088]によれば、1.5ずれ領域Bでは、第1ワイヤ43のたとえば第17ターンと第18ターンとの間の凹部に、第2ワイヤ44の第19ターンが嵌り込むように巻回される。
また、図8によれば、1.5ずれ領域Bでは、第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の同一ターンの間に第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の他のターンが介在するよう巻回されている(例えば、第1ワイヤ43の18ターンと第2ワイヤ44の18ターンとの間に第1ワイヤ43の17ターンと第2ワイヤ44の19ターンが介在されるよう巻回されている。)ことが見て取れる。
よって、先願明細書等に記載されたコモンモードチョークコイル61bは、1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の同一ターンの間に第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の他のターンが介在するよう巻回されているといえる。
キ 図8によれば、第1の0.5ずれ領域A1、1.5ずれ領域B及び第2の0.5ずれ領域A2のそれぞれの位置に、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で巻回された第1のワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第2のワイヤが嵌り込む状態で巻回されてなるワイヤ群が構成されていることが見て取れる。
ク 段落[0006]の「図9は、コモンモードチョークコイル41を、実装基板側に向けられる実装面を上方に向けた姿勢で図示している。」、段落[0023]の「[図1]この発明の第1の実施形態によるコイル部品としてのコモンモードチョークコイル61の底面図であり、実装基板側に向けられる面を示している。」、段落[0041]の「図1に示したコモンモードチョークコイル61は、前述した図9に示したコモンモードチョークコイル41と比べて」「実質的に同様である。」との記載、及び図1、図9によれば、第1の実施形態であるコモンモードチョークコイル61において、巻芯部45の軸方向に2つの角部が延在し、2つの角部に挟まれた領域を有することは明らかである。
そして、段落[0023]に「[図2]図1に示したコモンモードチョークコイル61における第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態を模式的に示す断面図である。」、段落[0081]に「図8を参照して、この発明の第3の実施形態によるコモンモードチョークコイル61bについて説明する。」「図8は、図2の上半分に相当する図である。よって、図8において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。」、[0082]に「図8に示したコモンモードチョークコイル61bでは、巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布している。」との記載からすれば、図8に示された第3の実施形態であるコモンモードチョークコイル61bの第1の遷移領域C1において、巻芯部45の軸方向に延在する2つの角部と、2つの角部に挟まれた領域を有することは当然のことである。
ケ 段落[0084]、[0087]によれば、第1の遷移領域C1では、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分が位置し、第2ワイヤ44の第16ターンが巻回され、さらに、第16ターンに対して隙間を形成した状態で第17ターンが巻回されるところ、上記クを踏まえれば、コモンモードチョークコイル61bにおいても、第1の遷移領域C1における2つの角部に挟まれた領域には、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分、及び、第2ワイヤ44の第16及び第17ターンの部分が位置しているといえる。
コ 段落[0087]によれば、第1の遷移領域C1では、第2ワイヤ44は、3箇所において、第1ワイヤ43と交差するから、上記ク、ケを、踏まえれば、コモンモードチョークコイル61bにおいても、第1の遷移領域C1における2つの角部に挟まれた領域では、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分と、第2ワイヤ44の第16及び第17ターンの部分とが互いに交差するといえる。
(3)よって、上記アないしコによれば、先願明細書等には、第3の実施形態によるコモンモードチョークコイル61bに基づく次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
「巻芯部45と、巻芯部45の第1端部62側から第2端部63に向かって巻回される第1および第2ワイヤ43および44とを備え、
巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布し、
第1ワイヤ43は、第1の0.5ずれ領域A1において、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で第1ターンから第16ターンまで巻回され、第1の遷移領域C1において、第16ターンから第17ターンへと移行する部分が位置し、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2にわたって、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で第17ターンから第32ターンまで巻回され、
第2ワイヤ44は、第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第1ターンから第15ターンまで巻回され、第1の遷移領域C1において、第15ターンに対して隙間を形成した状態で第16ターンが巻回され、さらに第16ターンに対して隙間を形成した状態で第17ターンが巻回され、第1ワイヤ43と3箇所において交差し、1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第n+2ターンが嵌り込む状態で第18ターンから第24ターンまで巻回され、第2の遷移領域C2において、第24ターンから第25ターンへと移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間には隙間が形成され、第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され、最後に第32ターンが巻芯部45の周面に接しかつ第1ワイヤの第32ターンに接する状態で巻回され、
1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の同一ターンの間に第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の他のターンが介在するよう巻回され、
第1の0.5ずれ領域A1、1.5ずれ領域B及び第2の0.5ずれ領域A2のそれぞれの位置に、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で巻回された第1のワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第2のワイヤが嵌り込む状態で巻回されてなるワイヤ群が構成されており、
第1の遷移領域C1は、巻芯部45の軸方向に延在する2つの角部と、当該2つの角部に挟まれた領域とを有し、
第1の遷移領域C1における2つの角部に挟まれた領域には、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分、及び、第2ワイヤ44の第16及び第17ターンの部分が位置し、
第1の遷移領域C1における2つの角部に挟まれた領域では、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分と、第2ワイヤ44の第16及び第17ターンの部分とが互いに交差する、
コモンモードチョークコイル61b。」
2 対比・判断
(1)本件発明3について
ア 本件発明3と先願発明とを対比すると次のことがいえる。
(ア)先願発明の「巻芯部45と、巻芯部45の第1端部62側から第2端部63に向かって巻回される第1および第2ワイヤ43および44とを備え」は、本件発明3の「巻芯部と、前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え」に相当する。
(イ)先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1」では、「第1ワイヤ43」及び「第2ワイヤ44」が巻回される。また、先願発明では「巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布し」ている。してみると、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1」は、「巻芯部45の軸線方向」の「第1端部62」側に位置する巻回領域であり、本件発明3の「軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域」に相当する。
また、先願発明の「第1ワイヤ43」が「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2にわたって」「第17ターンから第32ターンまで巻回され」る。また、先願発明では「巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布し」ている。してみると、先願発明の「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2」は、「巻芯部45の軸線方向」の「第2端部63側」に位置する1つの巻回領域といえ、本件発明3の「軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域」に相当する。
さらに、先願発明の「第1の遷移領域C1」では、「第1ワイヤ43」は「第16ターンから第17ターンへと移行する部分が位置」し、「第2ワイヤ44」は「第15ターンに対して隙間を形成した状態で第16ターンが巻回され、さらに、第16ターンに対して隙間を形成した状態で第17ターンが巻回され」る。また、先願発明では「巻芯部45の軸線方向に沿って、第1の0.5ずれ領域A1、第1の遷移領域C1、1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2が、第1端部62から第2端部63に向かってこの順序で分布し」ている。してみると、先願発明の「第1の遷移領域C1」は、「第1の0.5ずれ領域A1」と「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2」との間に位置する巻回領域といえ、本件発明3の「第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域」に相当する。
よって、先願発明の「巻芯部45の軸線方向」の「第1端部62」側に位置する巻回領域である「第1の0.5ずれ領域A1」と、「巻芯部45の軸線方向」の「第2端部63側」に位置する1つの巻回領域である「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2」と、「第1の0.5ずれ領域A1」と「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2」との間に位置する巻回領域である「第1の遷移領域C1」とが「分布し」ていることは、本件発明3の「前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含」む構成を備えている。
(ウ)先願発明の「第2ワイヤ44」が「第1の遷移領域C1において」「第1ワイヤ43と3箇所において交差」することは、本件発明3の「前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差して」いることに相当する。
(エ)先願発明の「第1ワイヤ43」が「第1の0.5ずれ領域A1において、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で、第1ターンから第16ターンまで巻回され」、「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2にわたって、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で、第17ターンから第32ターンまで巻回され」ることは、上記(イ)も踏まえれば、本件発明3の「前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され」ることに相当する。
また、先願発明の「第2ワイヤ44」が「第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で、第1ターンから第15ターンまで巻回され」、「1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第n+2ターンが嵌り込む状態で第18ターンから第24ターンまで巻回され」、「第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され」ることは、上記(イ)も踏まえれば、本件発明3の「第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され」ることに相当する。
さらに、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1、1.5ずれ領域B及び第2の0.5ずれ領域A2のそれぞれの位置に、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で巻回された第1のワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第2のワイヤが嵌り込む状態で巻回されてなるワイヤ群が構成されている」ことは、本件発明3の「整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され」ることに相当する。
よって、先願発明の「第1ワイヤ43」が「第1の0.5ずれ領域A1において、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で第1ターンから第16ターンまで巻回され」、「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2にわたって、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で第17ターンから第32ターンまで巻回され」、「第2ワイヤ44」が「第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第1ターンから第15ターンまで巻回され」、「1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第n+2ターンが嵌り込む状態で第18ターンから第24ターンまで巻回され」、「第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され」、「第1の0.5ずれ領域A1、1.5ずれ領域B及び第2の0.5ずれ領域A2のそれぞれの位置に、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で巻回された第1のワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第2のワイヤが嵌り込む状態で巻回されてなるワイヤ群が構成されている」ことは、本件発明3の「前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され」ることに相当する。
(オ)先願発明では「第1の0.5ずれ領域A1、1.5ずれ領域B及び第2の0.5ずれ領域A2のそれぞれの位置に、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で巻回された第1のワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第2のワイヤが嵌り込む状態で巻回されてなるワイヤ群が構成されて」おり、上記(イ)も踏まえれば、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1」に「位置」する「ワイヤ群」は、本件発明3の「第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロック」に相当し、先願発明の「第2の0.5ずれ領域A2」に「位置」する「ワイヤ群」及び「1.5ずれ領域B」に「位置」する「ワイヤ群」は、本件発明3の「第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロック」に相当する。
よって、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1、1.5ずれ領域B及び第2の0.5ずれ領域A2のそれぞれの位置に、隣り合うターン間に隙間を形成しない状態で巻回された第1のワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第2のワイヤが嵌り込む状態で巻回されてなるワイヤ群が構成されて」いることは、本件発明3の「前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含」むことに相当する。
(カ)先願発明では「巻芯部45の軸線方向に沿って」、「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2」が「この順序で分布」し、「第2ワイヤ44」は「1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第n+2ターンが嵌り込む状態で第18ターンから第24ターンまで巻回され、第2の遷移領域C2において、第24ターンから第25ターンへとまで移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間には隙間が形成され、第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され」ることから、「0.5ずれ領域A2」にて巻回される「第2ワイヤ44」と「1.5ずれ領域B」にて巻回される「第2ワイヤ44」とは離間しているといえる。
よって、上記(オ)も踏まえれば、先願発明の「巻芯部45の軸線方向に沿って」、「1.5ずれ領域B、第2の遷移領域C2および第2の0.5ずれ領域A2」が「この順序で分布」し、「第2ワイヤ44」は「1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第n+2ターンが嵌り込む状態で第18ターンから第24ターンまで巻回され、第2の遷移領域C2において、第24ターンから第25ターンへと移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間には隙間が形成され、第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され」ることは、本件発明3の「前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間して」いることに相当する。
(キ)先願発明において「第2ワイヤ44」は、「第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第1ターンから第15ターンまで巻回され」、「第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され」るのであるから、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1」及び「第2の0.5ずれ領域A2」では、「第1ワイヤ43の第nターン」と「第2ワイヤ44」の「第nターン」が隣接するよう巻回されているといえる。
よって、上記(オ)も踏まえれば、先願発明の「第2ワイヤ44」が「第1の0.5ずれ領域A1において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第1ターンから第15ターンまで巻回され」、「第2の0.5ずれ領域A2において、第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態で第25ターンから第31ターンまで巻回され」ることは、本件発明3の「第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されて」いることに相当する。
(ク)先願発明の「1.5ずれ領域Bにおいて、第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の同一ターンの間に第1ワイヤ43と第2ワイヤ44の他のターンが介在するよう巻回され」ることは、上記(オ)も踏まえれば、本件発明3の「第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回され」ていることに相当する。
(ケ)先願発明では「第2ワイヤ44」が「第1の遷移領域C1において」、「第1ワイヤ43と3箇所において交差し」ていることからすれば、「第1の遷移領域C1」において、「第1ワイヤ43」と「第2ワイヤ44」の一部が互いに離間していることは当然のことである。
よって、上記(イ)も踏まえれば、先願発明の「第1の遷移領域C1」において、「第1ワイヤ43」と「第2ワイヤ44」の一部が互いに離間していることは、本件発明3の「第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間して」いることに相当する構成を備えている。
(コ)本件発明3の「エッジ」に関し、本件特許明細書段落【0024】の「第1及び第2のエッジE1,E2はいずれもx方向に延在する角部である。」との記載からすれば、本件発明3の「軸方向に延在する第1及び第2のエッジ」は、軸方向に延在する2つの角部を含み、先願発明の「軸方向に延在する2つの角部」に相当する。
よって、先願発明の「第1の遷移領域C1は、巻芯部45の軸方向に延在する2つの角部と、2つの角部に挟まれた領域とを有し、」は、上記(イ)も踏まえれば、本件発明3の「前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、」に相当する。
(サ)先願発明において「第1の遷移領域C1における2つの角部に挟まれた領域には、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分、及び、第2ワイヤ44の第16及び第17ターンの部分が位置」することから、「第1ワイヤ43」は「2つの角部に挟まれた領域」に「位置」する「第16ターンから第17ターンへと移行する部分」を含み、「第2ワイヤ44」は「2つの角部に挟まれた領域」に「位置」する「第16及び第17ターンの部分」を含むといえる。
そして、上記(コ)も踏まえれば、先願発明の「第1ワイヤ43」が「2つの角部に挟まれた領域」に「位置」する「第16ターンから第17ターンへと移行する部分」を含むこと、及び「第2ワイヤ44」が「2つの角部に挟まれた領域」に「位置」する「第16及び第17ターンの部分」を含むことは、本件発明3の「前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含」むこと及び「前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含」むことに相当する。
(シ)上記(コ)及び(サ)を踏まえれば、先願発明の「第1の遷移領域C1における2つの角部に挟まれた領域では、第1ワイヤ43の第16ターンから第17ターンへと移行する部分と、第2ワイヤ44の第16及び第17ターンの部分とが互いに交差する」ことは、本件発明3の「前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差して」いることに相当する。
ただし、第1のワイヤの第1の区間と第2のワイヤの第2の区間に関し、本件発明3は「第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間している」のに対し、先願発明はその旨特定されていない点で一応相違する。
(ス)コモンモードチョークコイルはコモンモード電流を抑制するためのフィルタであるから、先願発明の「コモンモードチョークコイル61b」は、本件発明3の「コモンモードフィルタ」に相当する。
イ よって、本件発明3と先願発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されており、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間しており、
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差している、コモンモードフィルタ。」
<相違点1>
第1のワイヤの第1の区間と第2のワイヤの第2の区間に関し、本件発明3は「第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間している」のに対し、先願発明はその旨特定されていない点。
ウ 相違点1に対する判断
(ア)先願発明では、「第1ワイヤ43」は「第1の遷移領域C1では、第16ターンから第17ターンへと移行する部分が位置し、第16ターンと第17ターンとの間に隙間が形成され」、「第2ワイヤ44」は「第1の遷移領域C1では、第15ターンに対して隙間を形成した状態で第16ターンが巻回され、さらに、第16ターンに対して隙間を形成した状態で第17ターンが巻回され、3箇所において、第1ワイヤ43と交差」する。
また、先願明細書(上記「1(1)」を参照)の段落[0050]及び[0055]によれば、第1の実施形態によるコモンモードチョークコイル61は、遷移領域Cにおいて、第1ワイヤ43における第24ターンから第25ターンへと移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間に隙間が形成され、第2ワイヤ44は、第23ターンに対して隙間を形成した状態で第24ターンが巻回され、さらに、第24ターンに対して隙間を形成した状態で第25ターンが巻回され、第2ワイヤ44は、3箇所において、第1ワイヤ43と交差するものである。
してみると、第1の実施形態のコモンモードチョークコイル61及び先願発明のコモンモードチョークコイル61bは、両者ともに「第1ワイヤ43」が「遷移領域」では所定ターンから次のターンへと移行する部分が位置し、所定ターンと次のターンとの間に隙間が形成され、「第2ワイヤ44」が「遷移領域」では前のターンに対して隙間を形成した状態で所定ターンが巻回され、さらに所定ターンに対して隙間を形成した状態で次のターンが巻回され、3箇所において第1ワイヤ43と交差するものであるから、第1の実施形態によるコモンモードチョークコイル61の遷移領域Cにおける巻回手順と、先願発明のコモンモードチョークコイル61bの遷移領域C1における巻回手順は同一であるといえる。
(イ)先願明細書等の段落[0043]には、「図1に示したコモンモードチョークコイル61における第1および第2ワイヤ43および44の巻回状態が図2に模式的断面図で示されている。」と記載されているところ、図3ないし図4を参照すると、ワイヤ43、44のターン数が正確に示され、各ターン毎のワイヤの巻芯部45の手前側に位置する部分が実線で示され、巻芯部45の裏側に位置する部分が破線で示されている。そして、遷移領域Cにおける第1ワイヤ43及び第2ワイヤ44の巻芯部45によって隠れる部分では、第1ワイヤ43における第24ターンから第25ターンへと移行する部分が位置し、第24ターンと第25ターンとの間に隙間が形成され、第2ワイヤ44は第23ターンに対して隙間を形成した状態で第24ターンが巻回され、さらに第24ターンに対して隙間を形成した状態で第25ターンが巻回されることも明確に示されていることを鑑みれば、図2ないし図4は、巻芯部45の軸方向に延在する角部(本件発明3の「エッジ」に相当)における断面図を意図していることは明らかである。
してみると、図3および図4の巻芯部45の手前側に対して反対側(図3、図4の紙面奥側)に位置する上側の角部と下側の角部に挟まれた領域で第1ワイヤ43と第2ワイヤ44が交差し、下側の角部上では、第1ワイヤ43の第24ターンと第2ワイヤ44の第24ターンが離間しているといえ、同様に、先願発明においても、巻芯部45の手前側に対して反対側に位置する上側の角部と下側の角部に挟まれた領域で第1ワイヤ43と第2ワイヤ44が交差し、下側の角部上では、第1ワイヤ43の第16ターンと第2ワイヤ44の第16ターンが離間しているといえる。
(ウ)先願明細書等の図1、図9によれば、巻芯部45自体は直方体であって、巻芯部45の2つの角部に挟まれる面(例えば、コモンモードチョークコイルの底面側に当たる面)上では第1ワイヤ43、第2ワイヤ44は直線状に並行に巻回されることが見て取れ、各ワイヤにおいて隙間を空けて巻回する場合、1つの角部を始点にワイヤの延伸方向と巻芯部45の軸線方向との角度を変えて巻回することは当然のことである。
そして、先願明細書等の段落[0046]に「図3および図4において、巻芯部45の周囲に巻回される第1および第2ワイヤ43および44の各部分のうち、巻芯部45の手前側に位置する部分は実線で、巻芯部45によって隠れる部分は破線でそれぞれ模式的に示されている。」と記載され、図3において、遷移領域Cにおいて第1ワイヤ43の第24ターンと第25ターンとの間に隙間を形成し、巻芯部45によって隠れる第1ワイヤ43の第24ターンから第25ターンへ移行する部分において、第1ワイヤ43の延伸方向と巻芯部45の軸線方向の角度を変えて巻回することが見て取れる。同様に図4において、遷移領域Cにおいて第2ワイヤ44の第23ターンと第24ターンとの間、第24ターンと第25ターンとの間に隙間を形成し、巻芯部45によって隠れる第2ワイヤ44の第23ターンから第24ターンへ、第24ターンから第25ターンへ移行する部分において、第1ワイヤ43の延伸方向と巻芯部45の軸線方向がなす角度よりも小さい角度で第2ワイヤ44を巻回することが見て取れる。
してみると、図2ないし図4が、図1に見られるコモンモードチョークコイル61の底面図において、巻芯部45の底面側の面に垂直な面で切断した断面図であるとしても、図2ないし図4で示された第1ワイヤ43及び第2ワイヤ44の各ターンの配置関係は、巻芯部45の手前側に対して反対側の面の上側の角部及び下側の角部の位置においても反映されることは当然想定されることである。
(エ)よって、先願発明においても、巻芯部45の手前側に対して反対側に位置する上側の角部と下側の角部に挟まれた領域で第1ワイヤ43と第2ワイヤ44が交差し、下側の角部上では、第1ワイヤ43の第16ターンと第2ワイヤ44の第16ターンが離間していると解釈することは自然である。
(オ)以上から、上記相違点1は実質的な相違ではく、本件発明3は、先願発明と同一である。
エ 特許権者による意見書について
特許権者は、令和3年10月18日提出の意見書において「図2~図4が断面図であるならば、図2~図4に示す巻芯部45の上側表面位置や下側表面位置は「隣接するエッジ」ではあり得ず、いずれも2つのエッジに挟まれた別の表面領域のはずである。つまり、先願の図4に記載されているのは、巻芯部45のある表面領域上の特定位置(図4に示す巻芯部45の下側表面位置)において、第1ワイヤ43の第24ターンと第2ワイヤ44の第24ターンが離間していることであり、訂正後の請求項3が規定するように、第1のワイヤの第1の区間と第2のワイヤの第2の区間が交差する表面領域が第1のエッジと第2のエッジによって挟まれ、第1のエッジ上及び第2のエッジ上の少なくとも一方において第1及び第2の区間が互いに離間していることを示すものではない。」と主張している。
しかしながら、上記「ウ (イ)(ウ)」で述べたように、図2ないし図4は、巻芯部45の軸方向に延在する角部における断面図を意図していることは明らかであり、また、巻芯部45の底面側の面に垂直な面で切断した断面図であるとしても、図2ないし図4で示された第1ワイヤ43及び第2ワイヤ44の各ターンの配置関係は、巻芯部45の手前側に対して反対側の面(巻芯部45の紙面奥側の面)の上側の角部及び下側の角部の位置においても反映されることは当然想定されることであるから、先願発明においても、巻芯部45の手前側に対して反対側に位置する上側の角部と下側の角部に挟まれた領域で第1ワイヤ43と第2ワイヤ44が交差し、下側の角部上では、第1ワイヤ43の第16ターンと第2ワイヤ44の第16ターンが離間しているといえる。
以上から、特許権者の主張は採用することができない。
なお、令和4年4月5日付け取消理由通知に対して、特許権者から何ら応答がなされなかった。
オ まとめ
よって、本件発明3は先願発明と同一であるから、本件発明3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明4について
上記「(1)」で検討した点を除き、本件発明4(前記第3の巻回ブロックは、前記第1の巻回ブロックと前記第2の巻回ブロックの間に位置すること)と先願発明とを対比する。
先願発明では「巻芯部45の軸線方向に沿って」、「第1の0.5ずれ領域A1」、「1.5ずれ領域B」、「第2の0.5ずれ領域A2」が「この順序で分布」することから、上記「(1)ア(オ)」も踏まえれば、先願発明において「第1の0.5ずれ領域A1」に「位置」する「ワイヤ群」と「第2の0.5ずれ領域A2」に「位置」する「ワイヤ群」との間に「1.5ずれ領域B」に「位置」する「ワイヤ群」が配置されるといえる。
よって、先願発明において「第1の0.5ずれ領域A1」に「位置」する「ワイヤ群」と「第2の0.5ずれ領域A2」に「位置」する「ワイヤ群」との間に「1.5ずれ領域B」に「位置」する「ワイヤ群」が配置されることは、本件発明4の「前記第3の巻回ブロックは、前記第1の巻回ブロックと前記第2の巻回ブロックの間に位置すること」に相当する。
よって、上記「(1)」も踏まえれば、本件発明4と先願発明との間には相違する点がないから、本件発明4は、先願発明と同一である。
したがって、本件発明4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(3)本件発明5について
ア 本件発明5は、請求項1を引用する請求項5に係る発明と請求項2を引用する請求項5に係る発明を含むところ、上記「(1)」で検討した点を除き、請求項1を引用する請求項5に係る発明と先願発明とを対比すると、次のことがいえる。
先願発明の「第2ワイヤ44」は、「第1の0.5ずれ領域A1」では「第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に、第nターンが嵌り込む状態」で「巻回され」、「第2の0.5ずれ領域A2」では「第1ワイヤ43の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に第nターンが嵌り込む状態」で「巻回」されるから、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1」及び「第2の0.5ずれ領域A2」では、下側に位置する「第1ワイヤ43」及び上側に位置する「第2ワイヤ44」の同一の「nターン」が隣接するよう巻回されているといえる。
よって、上記「(1)ア(オ)」も踏まえれば、先願発明の「第1の0.5ずれ領域A1」及び「第2の0.5ずれ領域A2」に「位置」する「ワイヤ群」において、下側に位置する「第1ワイヤ43」及び上側に位置する「第2ワイヤ44」の同一の「nターン」が隣接するよう巻回されることは、本件発明5の「前記第1、第2の巻回ブロックは、上下に位置する前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されていること」に相当する。
ただし、第3の巻回ブロックについて、本件発明5は「上下に位置する前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されている」のに対し、先願発明はその旨特定されていない点で相違する。
イ そうすると、請求項1を引用する請求項5に係る発明と先願発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点2>
第3の巻回ブロックについて、請求項1を引用する請求項5に係る発明は「上下に位置する前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されている」のに対し、先願発明はその旨特定されていない点。
以上のとおりの相違点2があり、当該相違点2は、単なる周知、慣用技術の付加や転換といえるものではなく、実質的な相違点であって、さらに請求項1、2は異議申立ての対象の請求項ではない。
よって、請求項1を引用する請求項5に係る発明は、先願発明と同一ではない。
なお、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定したものであるから、請求項2を引用する請求項5に係る発明も先願発明と同一ではない。
ウ よって、本件発明5は先願発明と同一ではないから、本件発明5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
(4)本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、本件発明5の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記(3)と同様の理由により、本件発明6及び7は先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
よって、本件発明6及び7も先願発明と同一ではないから、本件発明6及び7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
(5)本件発明8について
ア 本件発明8は、本件発明3に「前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していること」との発明特定事項を更に加えたものであるところ、本件発明8と先願発明とを上記「(1)イ」で述べた点も踏まえて対比すると、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「巻芯部と、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え
前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻回領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており
前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、
前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、
前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間しており、
前記第1及び第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、
前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されており、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間しており、
前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、
前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、
前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差している、コモンモードフィルタ。」
<相違点3>
第1のワイヤの第1の区間と第2のワイヤの第2の区間に関し、本件発明8は「第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間している」のに対し、先願発明はその旨特定されていない点。
<相違点4>
本件発明8は「第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触している」のに対し、先願発明はその旨特定されていない点。
イ 相違点3に対する判断
相違点1と相違点3は同一事項であるところ上記「(1)ウ」で述べたとおり、相違点1は実質的な相違ではないから、相違点3も同様に実質的な相違ではない。
ウ 相違点4に対する判断
上記「(1) ウ(イ)」及び「同(ウ)」で述べたように、図2ないし図4は、巻芯部45の軸方向に延在する角部における断面図であるといえ、また、図2ないし図4が、図1に見られるコモンモードチョークコイル61の底面図において、巻芯部45の底面側の面に垂直な面で切断した断面図であるとしても、図2ないし図4で示された第1ワイヤ43及び第2ワイヤ44の各ターンの配置関係は、巻芯部45の手前側とは反対側の面の上側の角部及び下側の角部においても反映されることは当然想定されることであるから、先願発明においても、巻芯部45の手前側とは反対側に位置する上側の角部と下側の角部に挟まれた領域で第1ワイヤ43と第2ワイヤ44が交差し、下側の角部上では、第1ワイヤ43の第16ターンと第2ワイヤ44の第16ターンが離間し、上側の角部上では、第1ワイヤ43の第17ターンと第2ワイヤ44の第17ターンが接触していると解釈するのが自然である。
したがって、上記相違点4は実質的な相違ではない。
エ よって、本件発明8は先願発明と同一であるから、本件発明8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明3、4、8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明5ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明5ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700503