2021-700457
貯湯タンク
- 審判番号
- 2021-700457
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-122421外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6785586
- 請求日
- 2021年05月14日
- 審決日
- 2022年10月19日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ぱるも特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 精和工業所
- 【異議申立人代理人】谷田 龍一
- 【異議申立人代理人】吉武 賢一
- 分類
- P1651.112-YAA(B23K) / P1651.121-YAA(B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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特許第6785586号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成28年6月21日に出願され、令和2年10月29日にその特許権の設定登録がされ、同年11月18日に特許掲載公報が発行された。
その後の本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求書による訂正の内容
令和4年3月14日受入の訂正請求書により、特許権者は、以下の訂正(以下、「本件訂正」という。)を求めている。(下線部は、訂正により変更又は追加された箇所を示す。)
2 訂正事項
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、接合部周辺の前記不動態被膜の再生を容易にする間隙が形成されている」と記載されているのを、
「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙が形成されている」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、」と記載されているのを、
「前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下であり、前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
本件明細書の段落【0008】に、「本発明の貯湯タンクは、不動態被膜を表面に有する金属製のタンク缶体、タンク缶体に水を導入する導入口、タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口を備えたものであって、タンク缶体に水を導入する際又はタンク缶体から温水を導出する際の水流を抑制すると共に不動態被膜を表面に有する金属製のバッフルが、タンク缶体内部における導入口の周辺、導出口の周辺のいずれか一方、又は両方に設けられており、バッフルは、バッフル本体と、バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、バッフル支持脚底に形成されている凹形状部は、前記タンク缶体側に凸状であり、凹形状部の底部でタンク缶体と接合されており、前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、接合部周辺の前記不動態被膜の再生を容易にする間隙が形成されていることを特徴とする。」と記載されているのを、
「本発明の貯湯タンクは、不動態被膜を表面に有する金属製のタンク缶体、タンク缶体に水を導入する導入口、タンク缶体から当該タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口を備えたものであって、タンク缶体に水を導入する際又はタンク缶体から温水を導出する際の水流を抑制すると共に不動態被膜を表面に有する金属製のバッフルが、タンク缶体内部における導入口の周辺、導出口の周辺のいずれか一方、又は両方に設けられており、バッフルは、バッフル本体と、バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、バッフル支持脚底に形成されている凹形状部は、前記タンク缶体側に凸状であり、凹形状部の底部でタンク缶体と接合されており、前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下であり、前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙が形成されていることを特徴とする。」に訂正する。
3 訂正の対象となる請求項(一群の請求項)
本件訂正のうち、訂正事項1及び2に係る訂正は、請求項1についての訂正であり、訂正事項3に係る訂正は、明細書の記載について、訂正後の請求項1の記載に整合させる訂正であるところ、請求項2は請求項1を引用する請求項であるから、訂正事項1ないし3に係る訂正は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。
4 本件訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正について、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を以下に検討する。(下線部は当審で付した。以下同様。)
なお、本件においては、訂正前の請求項1及び2について特許異議申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1の、「接合部周辺の前記不動態被膜の再生を容易にする間隙」を「前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙」とする訂正は、「不動態被膜」及び「間隙」を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書【0021】には、「一般に、隙間腐食は幅30~40マイクロメートル以下の間隙が約2ミリメートル以上の長さで存在する場合に発生するとされている。・・・、不動態被膜がステンレス鋼表面から欠損し、最終的に隙間腐食が発生してしまう。」と記載されているから、本件明細書には、不動態被膜に隙間腐食が発生する間隙とは、「幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以上」の間隙であることが記載されているといえる。
その上で、本件明細書の段落【0022】には、「一方で、実施の形態1のスポット溶接方法の場合、第一電極11の端部11aに施された中央端部11bの径と凹形状部16の平面底部16aの径との差が1~2ミリメートルであるとすると、接合部15の周辺に生じる狭小な間隙17の長さは1~2ミリメートル以下であり、さらに周辺には大きな間隙18が生じている。そのため、ステンレス鋼表面の不動態被膜の表面が多少破壊されても、接合部15の周りの狭小な間隙17にも酸素の供給が十分なものとなり不動態被膜の再生が迅速に行われ、不動態被膜がステンレス鋼表面から欠損することはない。」と記載されているから、本件明細書には、不動態被膜に隙間腐食が発生するのは「幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以上」の間隙であることを前提として、接合部15の周辺に生じる狭小な間隙17(第一の間隙)の長さを2ミリメートル以下として、さらに周辺に大きな間隙18(第二の間隙)があることで、接合部15の周りの狭小な間隙17においても不動態被膜の再生が迅速に行われることが記載されているといえる。そうすると、訂正事項1に係る、「接合部周辺の前記不動態被膜の再生を容易にする間隙」を「前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙」とする訂正は、新規事項の追加に該当しない。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2の「前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、」と記載されているのを、「前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下であり、」とする訂正は、バッフル支持脚底に形成されている凹形状部の底部とタンク缶体との「接合」の形態を限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書の段落【0020】には、「第一被溶接材13と第二被溶接材14との溶接の際に凹形状部16の部分を溶接すると、溶接後には第一電極11の端部11aに施された中央端部11bの径に近い径を持つ接合部15が形成される。ここで、前述のように、接合部15の径に対して凹形状部16の平面底部16aの径は(望ましくは1~2ミリメートル程度)大きなものとなっている。」と記載されているから、バッフル支持脚底に形成されている凹形状部の底部とタンク缶体との接合について、「前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下であり、」とする訂正は、新規事項の追加に該当しない。
したがって、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、上記訂正事項1及び2に係る本件訂正による特許請求の範囲の訂正に伴い、本件明細書の発明の詳細な説明において、特許請求の範囲の記載と整合しない段落【0008】の記載を、特許請求の範囲の記載と整合するように訂正するものである。
したがって、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、上記(1)ウ、(2)ウと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
なお、構成Aないし構成Hの区分けは、申立人が令和4年5月19日に提出した意見書の2-3ページの区分けに従った。
「【請求項1】A 不動態被膜を表面に有する金属製のタンク缶体、前記タンク缶体に水を導入する導入口、前記タンク缶体から当該タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口を備えた貯湯タンクであって、B 前記タンク缶体に水を導入する際又は前記タンク缶体から温水を導出する際の水流を抑制すると共に不動態被膜を表面に有する金属製のバッフルが、前記タンク缶体内部における前記導入口の周辺、前記導出口の周辺のいずれか一方、又は両方に設けられており、C 前記バッフルは、バッフル本体と、前記バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、前記バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、D 前記バッフル支持脚底に形成されている凹形状部は、前記タンク缶体側に凸状であり、前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、E 前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下であり、F 前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙が形成されていることを特徴とするG 貯湯タンク。【請求項2】H 前記バッフルの板厚は、前記タンク缶体の板厚と同じであることを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンク。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和3年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1:(公然実施発明に基づく新規性・進歩性欠如)訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、甲第1号証の1ないし甲第1号証の9及び甲第1号証の11ないし甲第1号証の16に基づいて把握される公然実施発明1であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
または、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、公然実施発明1に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2:(刊行物記載発明に基づく進歩性欠如)訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠
(1)理由1の証拠について
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。
以下、それぞれを「甲1の1」などという。また、甲1の1から甲1の16を合わせて「甲1」という場合がある。
(2)理由2の発明を示す証拠
以下、それぞれ「甲3」、「甲6」という。
第5 取消理由についての判断
1 理由1について
(1)甲1から看取される事項
ア 甲1の1から看取される事項
甲1の1から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)図面右下に記載された2つの表より、品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)が、番号「1」-番号「11」の部品により構成されること
(イ)図面右下に記載された2つの表より、上記「パウチクリーン壁掛タイプ」が、部品名「小型電気温水器」(番号「8」の部品、品番「SE-3LQB」)を備えていること
(ウ)図面右下に記載された表に、「日付 平成23年11月28日」、「有限会社 川藤」、「製図 泉本」、「設計 坂本」、という記載があること
イ 甲1の2から看取される事項
甲1の2から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)図面右下に記載された表より、部品名称「温水器 3L壁掛型(CR仕様)」が、No「1」-No「35」の部品により構成されること
(イ)上記「温水器 3L壁掛型(CR仕様)」が、部品名称「タンク 組品」(No「1」の部品、記事「SE10-03-001F」)を備えていること
(ウ)中央の図面の左下に「給水→」と記載されていることから、「給水パイプ1 完成」(No「6」の部品)を介して「タンク 組品」(No「1」の部品)の下部に給水されること
(エ)中央の図面の左上に「給湯←」と記載されていることから、「給湯パイプ1 完成」(No「4」の部品)、「ミキシングバルブ」(No「8」の部品)、「給湯パイプ2 完成」(No「5」の部品)を介して「タンク 組品」(No「1」の部品)の上部から給湯されること
(オ)図面右下に記載された表に、「作成日 10.11.21」、「株式会社 精和工業所」、名称「SE-3LQB」、「設計 関口」、「製図 杉江」、という記載があること
ウ 甲1の3から看取される事項
甲1の3から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)図面右下に記載された表より、部品名称「タンク組品」が、No「1」-No「8」の部品により構成されること
(イ)中央上の図面より、「温水タンク鏡上」(No「1」の部品)と「温水タンク鏡下」(No「2」の部品)とをすみ肉溶接(左下の「A詳細」図面に、すみ肉溶接を示す溶接記号が記載されている。)により接合してタンク缶体が構成されること
(ウ)中央上の図面より、上記「温水タンク鏡下」に「缶体給水パイプカンセイ」(No「4」の部品)がすみ肉溶接(左下の「矢視E」図面に、すみ肉溶接を示す溶接記号が記載されている。)により接合され、上記「温水タンク鏡上」に「給湯クイック継ぎ手」(No「3」の部品)がすみ肉溶接(左下の「B詳細」図面に、すみ肉溶接を示す溶接記号が記載されている。)により接合されること
(エ)中央上の図面及び右上の図面より、タンク缶体を構成する上記「温水タンク鏡下」の内部側であって、上記「缶体給水パイプカンセイ」が接合される箇所の周辺に、「バッフル板」(No「8」の部品)がスポット溶接(右上の図面に、スポット溶接を示す溶接記号が記載されている。)により接合されること
(オ)図面右下に記載された表から、タンク缶体を構成する「温水タンク鏡上」及び「温水タンク鏡下」は、材質が「NSSC190(YUS190)」で、寸法(厚み)が「0.8mm」であること
(カ)図面右下に記載された表から、「バッフル板」は、材質が「NSSC190(YUS190)」で、寸法(厚み)が「0.8mm」であること。また、「バッフル板」の記事欄に「SE10-03-020A」という記載があること
(キ)図面右下に記載された表に、「作成日 10.08.20」、「株式会社 精和工業所」、名称「3Lタンク 壁掛型」、図番「SE10-03-001F」、「設計 関口」、「製図 片山」、という記載があること
エ 甲1の4から看取される事項
甲1の4から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)図面右下に記載された表から、部品名称「バッフル板」は、材質が「NSSC190(YUS190)」で、寸法(厚み)が「0.8mm」であること
(イ)左図及び右図より、上記「バッフル板」の構造について、本件発明1の用語を用いて表現すると、「バッフル板」は、「バッフル本体」と、前記バッフル本体を支持する「バッフル支持脚」と、前記バッフル支持脚の端に設けられた「バッフル支持脚底」を備え、前記バッフル支持脚底には、「深さ0.8mm」の「凹形状部」が形成されていること
(ウ)図面右下に記載された表に、「作成日 10.10.07」、「株式会社 精和工業所」、「図番 SE10-03-020A」、「設計 関口」、「製図 片山」という記載があること
オ 甲1の5から看取される事項
甲1の5から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)2015年(平成27年)4月23日に、「3L バッフル板」(プレス仕様 SE10-03-020A)が(株)松谷金属から株式会社精和工業所に納入(有償譲渡)されたこと
カ 甲1の6から看取される事項
甲1の6から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)2013年(平成25年)12月18日から2014年(平成26年)11月11日に、複数回にわたり品名「SE-3LQB」が株式会社精和工業所からクリエイト株式会社に納入(有償譲渡)されたこと
キ 甲1の7から看取される事項
甲1の7から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)2014年(平成26年)12月5日から2020年(令和2年)2月10日に、複数回にわたり「精和工業 小型電気温水器 SE-3LQB」がクリエイト(株)から(有)川藤に納入(譲渡)されたこと
ク 甲1の8から看取される事項
甲1の8から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)2012年(平成24年)10月3日に、「精和工業温水器 SE-3LQB」がクリエイト株式会社から有限会社川藤に納入(譲渡)されたこと
ケ 甲1の9から看取される事項
甲1の9から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)平成26年5月12日に、「パウチクリーン」(品番「A-13-KPS003」が管工機材総合卸商社有限会社川藤から鉈屋町歴史的建造物等修築(機械設備)工事の現場に出荷(譲渡)されたこと
コ 甲1の11から看取される事項
甲1の11から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)2016年(平成28年)3月24日に、「人工肛門・人口膀胱温水洗浄システム パウチクリーン」が名護市にある某施設に設置(実質的に「使用」)されたこと
サ 甲1の12から看取される事項
甲1の12から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)第2ページ右下部の記載及び第4ページ上部の記載より、「パウチクリーン」の「壁掛けタイプ(A13-KPS003)」に関するカタログに、東日本大震災の仮設住宅に設置(実質的に「使用」)された様子が記載されていること
(イ)第3ページ右上部の記載より、「パウチクリーン」の「壁掛けタイプ(A13-KPS003)」の本体寸法が、「幅255mm(給水・給湯部:+12mm)×奥行184mm×高さ325.5mm」であること
(ウ)第4ページ下部の記載より、「パウチクリーン」の「壁掛けタイプ(A13-KPS003)」の「システム開発元」が「有限会社川藤 ケアリフォーム部」であり、同「総販売代理店」が「クリエイト株式会社」であること
(エ)第4ページ右下部の記載より、上記カタログの内容が、平成24年8月現在のものであること
シ 甲1の13から看取される事項
甲1の13から、おおむね次の事項が看取される。
(ア)第1ページ上部の記載より、「小型電気温水器(先止め式)」(SE-3LQB(壁掛け型))の取扱説明書(「使用」のための説明書)であること
(イ)第11ページの記載より、型式「SE-3LQB(壁掛け型)」の本体外形寸法が、「幅255mm(給水・給湯部:+12mm)×奥行き184mm×高さ325.5mm」であること
(ウ)第12ページ右下部の「2011.11」との記載より、上記取扱説明書が2011年(平成23年)11月に発行されたこと
ス 甲1の14に記載された事項
甲1の14には、次の事項が記載されている。
(ア)「パウチクリーン」が、「人工肛門袋及び人工膀胱袋洗浄装置」を指定商品とする区分において、平成16年7月1日に出願され、平成17年5月13日に登録され、平成17年6月14日に商標公報が発行された登録商標であり、「有限会社川藤」が当該登録商標の商標権者の一人であること
セ 甲1の15から看取される事項
甲1の15は、「小型電気温水器」を撮影した写真であるところ、おおむね次の事項が看取される(おおむね、本件発明1の用語を用いて表現する。)。
(ア)3枚目の写真より、銀色のタンク缶体の上部及び下部に配管が接続されていること
(イ)6枚目の写真より、バッフル支持脚底に、タンク缶体側に凸状となる凹形状部が形成されていること。また、当該凹形状部の中心部にスポット溶接痕が見られ、当該スポット溶接痕の径は当該凹形状部の径に比して半分程度であること。また、バッフル支持脚底のエッジ部分(特に右手前のバッフル支持脚底の右手前側のエッジ部分と左手前側のエッジ部分)とタンク缶体との間に影ができる程度の間隙が形成されていること
(ウ)7枚目の写真より、タンク缶体の下部に配管が接続されていること。また、タンク缶体の内部側であって、上記配管が接続されている箇所の周辺にバッフルが配置されていること。また、バッフル支持脚底のエッジ部分(特に右手前のバッフル支持脚底の右手前側のエッジ部分、左手前側のエッジ部分、左奥のバッフル支持脚底の左手前側のエッジ部分)とタンク缶体との間に影ができる程度の間隙が形成されていること
(エ)8枚目の写真より、タンク缶体の下部に配管が接続されていること。また、タンク缶体の内部側であって、上記配管が接続されている箇所の周辺にバッフルが配置されていること。また、バッフル支持脚底に、タンク缶体側に凸状となる凹形状部が形成されていること。当該凹形状部の中心部にスポット溶接痕が見られ、当該スポット溶接痕の径は当該凹形状部の径に比して半分程度であること。また、バッフル支持脚底のエッジ部分(特に右手前のバッフル支持脚底の右手前側のエッジ部分、左手前側のエッジ部分、左奥のバッフル支持脚底の左手前側のエッジ部分)とタンク缶体との間に影ができる程度の間隙が形成されていること。
ソ 甲1の16から看取される事項
甲1の16は、「バッフル板」を撮影した写真であるところ、おおむね次の事項が看取される(おおむね、本件発明1の用語を用いて表現する。) 。
(ア)1枚目の写真より、バッフルが、バッフル本体と、バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備えていること。また、バッフル支持脚底には、凹形状部が形成されていること
(イ)5枚目の写真より、当該凹形状部の中心部にスポット溶接痕が見られ、当該スポット溶接痕の径は当該凹形状部の径に比して半分程度であること。
(2)甲1の1ないし甲1の9及び甲1の11ないし甲1の16の関係性について
甲1の2の設計図は、名称「SE-3LQB」についての設計図であり、甲1の1の品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)のレイアウト図における、部品名「小型電気温水器」と品番(品番SE-3LQB)が共通することから、甲1の1のレイアウト図における同品番の小型電気温水器の設計図である蓋然性が高い。
また、甲1の3の設計図は、部品名称「タンク組品」、図番「SE10-03-001F」についての設計図であり、当該図番は、甲1の2の設計図における、部品名称「タンク 組品」の記事欄の記載(SE10-03-001F)と共通することから、甲1の2の設計図における部品名称「タンク 組品」(SE10-03-001F)の設計図である蓋然性が高い。
さらに、甲1の4の設計図は、部品名称「バッフル板」、図番「SE10-03-020A」についての設計図であり、当該図番は、甲1の3の設計図における、部品名称「バッフル板」の記事欄の記載(SE10-03-020A)と共通することから、甲1の3の設計図における部品名称「バッフル板」(SE10-03-020A)の設計図である蓋然性が高い。
してみると、品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)を構成する「小型電気温水器」(品番「SE-3LQB」)は、甲1の2ないし甲1の4の設計図により製造される構成である蓋然性が高いものである。
また、甲1の5は、「バッフル板」(SE10-03-020A)について(株)松谷金属から株式会社精和工業所へ有償譲渡されたことを示す納品書であり、当該SE10-03-020Aという記載は、株式会社精和工業所により作成された甲1の4の設計図における部品名称「バッフル板」の図番「SE10-03-020A」という記載と共通することから、株式会社精和工業所へ納入された甲1の5の「バッフル板」は、株式会社精和工業所により作成された甲1の4の設計図により製造された「バッフル板」である蓋然性が高い。
さらに、甲1の6は、品名「SE-3LQB」について株式会社精和工業所からクリエイト株式会社へ有償譲渡されたことを示す納品書であり、当該「SE-3LQB」という記載は、株式会社精和工業所により作成された甲1の2の設計図の名称「SE-3LQB」という記載と共通することから、株式会社精和工業所が納入した甲1の6の品名「SE-3LQB」は、株式会社精和工業所により作成された甲1の2の設計図により製造されたものである蓋然性が高い。
さらにまた、甲1の7は、「精和工業小型電気温水器(SE-3LQB)」についてクリエイト(株)から(有)川藤へ譲渡されたことを示す納入実績書であり、当該「SE-3LQB」という記載は、株式会社精和工業所により作成された甲1の2の設計図の名称「SE-3LQB」という記載と共通することから、クリエイト(株)から(有)川藤へと納入された甲1の7の「精和工業小型電気温水器(SE-3LQB)」は、株式会社精和工業所により作成された甲1の2の設計図により製造されたものである蓋然性が高い。また、上記甲1の7の「SE-3LQB」という記載は、有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図の部品名「小型電気温水器」における品番「SE-3LQB」という記載と共通することから、(有)川藤へと納入された甲1の7の「精和工業小型電気温水器(SE-3LQB)」と、甲1の1のレイアウト図に示される「小型電気温水器」とは、同じ製品である蓋然性が高い。
さらにまた、甲1の8は、「精和工業温水器(SE-3LQB)」についてクリエイト株式会社から有限会社川藤へ譲渡されたことを示す伝票照会であり、当該「SE-3LQB」という記載は、株式会社精和工業所により作成された甲1の2の設計図の名称「SE-3LQB」という記載と共通することから、クリエイト株式会社から有限会社川藤へ譲渡された甲1の8の「精和工業温水器(SE-3LQB)」は、株式会社精和工業所により作成された甲1の2の設計図により製造されたものである蓋然性が高い。また、上記甲1の8の「SE-3LQB」という記載は、有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図の部品名「小型電気温水器」における品番「SE-3LQB」という記載と共通することから、有限会社川藤へと譲渡された甲1の8の「精和工業温水器(SE-3LQB)」と、甲1の1のレイアウト図に示される「小型電気温水器」とは、同じ製品である蓋然性が高い。
さらにまた、甲1の9は、品名「パウチクリーン」(品番「A-13-KPS003」)について管工機材総合卸商社である有限会社川藤から鉈屋町歴史的建造物等修築(機械設備)工事の現場に出荷(譲渡)したことを示す出荷証明書であり、当該「A-13-KPS003」という記載は、有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図の品番「A13-KPS003」という記載と、Aと13との間のハイフンの有無という点では相違するものの、当該ハイフンの有無については単なる表記上の違いにすぎないことから、両品番は共通するものといえ、有限会社川藤から譲渡された甲1の9の品名「パウチクリーン」(品番「A-13-KPS003」)と、甲1の1のレイアウト図に示される品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)とは、同じ製品である蓋然性が高い。
してみると、品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)という製品、及び、当該製品を構成する「小型電気温水器」(品番「SE-3LQB」)という部品は、それぞれ公然と実施(譲渡)されたものであり、また、上記「小型電気温水器」(品番「SE-3LQB」)については、甲1の2ないし甲1の4の設計図により製造される構成である、という蓋然性が高いものである。
また、甲1の11は、人工肛門・人口膀胱温水洗浄システムである「パウチクリーン」が設置(実質的に「使用」)されたことを示すウェブページであり、当該「パウチクリーン」という記載は、有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図に示される品名「パウチクリーン壁掛タイプ」という記載と、「パウチクリーン」という文字が共通するものである。そして、甲1の14によると、「パウチクリーン」という文字は、「人工肛門袋及び人工膀胱袋洗浄装置」という指定商品の区分において、有限会社川藤を商標権者の一人とする登録商標であると認められることから、甲1の11に記載される「パウチクリーン」は、商標権者の一人である有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図に示される品名「パウチクリーン壁掛タイプ」である蓋然性が高い。
さらに、甲1の12は、「パウチクリーン」の「壁掛けタイプ(A13-KPS003)」に関するカタログであり、当該カタログには、東日本大震災の仮設住宅に設置(実質的に「使用」)された様子が記載されるとともに、問い合わせ先として、システム開発元である有限会社川藤について記載されるものである。当該「パウチクリーン」という記載、及び、「A13-KPS003」という記載は、システム開発元である有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図に示される品名「パウチクリーン壁掛タイプ」、品番「A13-KPS003」という記載と、一部又は全部が共通するものであり、甲1の14によると、「パウチクリーン」という文字は、上述のとおり有限会社川藤を商標権者の一人とする登録商標であると認められることから、甲1の12に記載される「パウチクリーン」の「壁掛けタイプ(A13-KPS003)」は、甲1の1のレイアウト図に示される品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)である蓋然性が高い。
さらにまた、甲1の13は、「小型電気温水器(先止め式)」(SE-3LQB(壁掛け型))の取扱説明書(「使用」のための説明書)であり、システム開発元として有限会社川藤が記載されるものである。当該「SE-3LQB」という記載は、システム開発元である有限会社川藤により作成された甲1の1のレイアウト図に示される部品名「小型電気温水器」の品番「SE-3LQB」という記載と共通することから、甲1の13に記載される「小型電気温水器(先止め式)」(SE-3LQB(壁掛け型))は、甲1の1のレイアウト図に示される「小型電気温水器」(品番「SE-3LQB」)である蓋然性が高い。
してみると、品名「パウチクリーン壁掛タイプ」(品番「A13-KPS003」)という製品、及び、当該製品を構成する「小型電気温水器」(品番「SE-3LQB」)という部品は、それぞれ公然と実施(使用)されたものである、という蓋然性が高いものである。
また、甲1の15の写真は、1枚目が「小型電気温水器SE-3LQB」と同型の小型電気温水器を撮影した写真であり、2枚目及び3枚目の写真はその内部構造を撮影した写真であり、これらの写真は、甲1の2の設計図により製造される「小型電気温水器」に対応するものである蓋然性が高い。また、4枚目以降の写真は、上記小型電気温水器を構成するタンク組品を撮影した写真であり、甲1の3の設計図により製造される「タンク組品」に対応するものである蓋然性が高い。
さらに、甲1の16の写真は、「バッフル板」を撮影した写真であり、甲1の4の設計図により製造される「バッフル板」に対応するものである蓋然性が高い。
(3)公然実施をされた発明
上記(2)より、甲1の1ないし甲1の9、甲1の11ないし甲1の13、甲1の15及び甲1の16は、いずれも、「パウチクリーン(壁掛タイプ)」という同一の製品について示されたものである蓋然性が高い。
そして、申立人の主張に沿って検討して、上記証拠のうち、甲1の3及び甲1の4、甲1の15及び甲1の16から看取される事項(上記(1)ウ、エ、セ、ソ)によると、次の発明を認定でき(以下「公然実施発明1」という。)、当該発明は、甲1の5ないし甲1の9によると、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然と譲渡されていた蓋然性が高く、また、甲1の11ないし甲1の13によると、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然と使用されていた蓋然性が高いと言い得る。
なお、甲1の1ないし甲1の16については、上記(1)、(2)のとおり、同一の実施品についてのものである蓋然性が高いと一応は言い得るものであるが、各証拠の真正及び証拠間の関係性については、必ずしも証明がされているわけではない。
<公然実施発明1>
「NSSC190(YUS190)製のタンク缶体(上記(1)ウ(イ)、(オ)参照)、缶体給水パイプカンセイ(上記(1)ウ(ウ)参照)、給湯クイック継ぎ手(上記(1)ウ(ウ)参照)を備えたタンク組品(上記(1)ウ(ア)、(イ)、(ウ)参照)であって、NSSC190(YUS190)製のバッフル板(上記(1)ウ(カ)、エ(ア)参照)が、前記タンク缶体内部における前記缶体給水パイプカンセイの周辺に設けられており(上記(1)ウ(エ)参照)、前記バッフル板は、バッフル本体と、前記バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、前記バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え(上記(1)エ(イ)、ソ(ア)参照)、前記バッフル支持脚底に形成されている凹形状部は、前記タンク缶体側に凸状であり、前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており(上記(1)ウ(エ)、エ(イ)、セ(イ)参照)、前記凹形状部の中心部にスポット溶接痕が見られ、当該スポット溶接痕の径は前記凹形状部の径に比して半分程度であり(上記(1)セ(イ)、(エ)、ソ(イ)参照)、前記凹形状部の凹部の深さが0.8mmであり(上記(1)エ(イ)参照)、前記バッフル板の板厚が0.8mmであり(上記(1)ウ(カ)、エ(ア)参照)、前記タンク缶体の板厚が0.8mmであり(上記(1)ウ(オ)参照)、前記バッフル支持脚底の凹形状部が形成されていない部分と前記タンク缶体との間に、間隙が形成されている(上記(1)セ(イ)、(ウ)、(エ)参照)、タンク組品。」
(4)本件発明1についての判断
本件発明1と公然実施発明1を対比する。
ア 公然実施発明1の「タンク缶体」は「NSSC190(YUS190)製」であり、「NSSC190(YUS190)」とは、日鉄ステンレス株式会社の高耐食性フェライト系ステンレス鋼を意味するものであり、すなわちステンレス鋼の一種であると認められることから、不動態被膜を表面に有する金属であると認められる。
そして、公然実施発明1の「タンク缶体」は、上記(1)ウ(イ)を参照するに、「温水タンク鏡上」及び「温水タンク鏡下」から構成され、温水を貯える部分を構成するものであるから、本件発明1の「タンク缶体」に相当する。
したがって、公然実施発明1の「NSSC190(YUS190)製のタンク缶体」は、本件発明1の「不動態被膜を表面に有する金属性のタンク缶体」に相当する。
イ 公然実施発明1の「缶体給水パイプカンセイ」は、「タンク缶体」下部に取付けられるものであって、「給水パイプ1 完成」から供給される水を「タンク缶体」に導入するためのものであるといえる(上記(1)イ(ウ)参照)から、公然実施発明1の「缶体給水パイプカンセイ」は、本件発明1の「前記タンク缶体に水を導入する導入口」に相当する。
また、公然実施発明1の「給湯クイック継ぎ手」は、「タンク缶体」上部に取付けられるものであって、「タンク缶体」に貯えた温水を「給湯パイプ1 完成」に導出するためのものであるといえる(上記(1)イ(エ)参照)から、公然実施発明1の「給湯クイック継ぎ手」は、本件発明1の「前記タンク缶体から当該タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口」に相当する。
ウ 上記ア及びイを踏まえると、公然実施発明1の「タンク組品」は、本件発明1の「貯湯タンク」に相当する。
エ 「バッフル板」という用語は、一般的に、流体の流れ中に設けられ、流れを阻止する板を意味する用語であることから、公然実施発明1において、「タンク缶体」内部における「缶体給水パイプカンセイ」の周辺に設けられる「バッフル板」は、「缶体給水パイプカンセイ」から水を導入する際の水流を抑制するために「タンク缶体」に設けられるものであると認められる。
また、公然実施発明1の「バッフル板」は、「タンク缶体」と同様に「NSSC190(YUS190)製」であることから、不動態被膜を表面に有する金属製であると認められる。
したがって、公然実施発明1の「NSSC190(YUS190)製のバッフル板が、前記タンク缶体内部における前記缶体給水パイプカンセイの周辺」に設けられていることは、本件発明1の「前記タンク缶体に水を導入する際」の「水流を抑制すると共に不動態被膜を表面に有する金属製のバッフルが、前記タンク缶体内部における前記導入口の周辺」に設けられていることに相当する。
オ 公然実施発明1において、「凹形状部の凹部の深さ」と「バッフル板の板厚」は、いずれも0.8mmであり、同じ長さであると認められる。
そして、本件発明1において、「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすること」という事項には、「凹形状部の凹部の深さ」が「バッフルの板厚」と同じであるという事項が含まれる。
したがって、公然実施発明1の「前記凹形状部の凹部の深さが0.8mmであり、前記バッフル板の板厚が0.8mm」であることは、本件発明1の「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上」とすることに相当する。
カ 本件訂正明細書の段落【0030】-【0032】、本件図面の図13の記載によると、「バッフル支持脚底21c」と「タンク缶体22」との間に形成される「間隙」には、「接合部25」の周辺に生じる「狭小な間隙27」と、接合部25から見て狭小な間隙27の先の部分に生じる「大きな間隙28」があると理解される。
そして、上記「大きな間隙28」については、「バッフル支持脚底21c」に「凹形状部21d」を施したことで生じた「間隙」であると理解され、本件訂正明細書の段落【0016】における「凹形状16の深さ16cは特に問わないが、少なくとも0.1ミリメートル以上であり、可能であれば第一被溶接材13の板厚程度以上であるのが良い。」との記載を考慮するに、「凹形状部21d」の凹部の深さが0.1ミリメートル以上であり、且つ、「バッフル21」の板厚程度以上である場合に生じる「間隙」は、上記「大きな間隙28」に含まれるものと理解される。
以上の点を踏まえると、公然実施発明1において、「前記バッフル支持脚底の凹形状部が形成されていない部分と前記タンク缶体の間」に形成されている「間隙」は、「凹形状部」と「タンク缶体」とを接合した部分(スポット溶接痕)の周辺に生じる狭小な間隙(第一の間隙)ではなく、当該接合した部分から見て狭小な間隙の先の部分に生じる「間隙」(第二の間隙)であると認められ、上記オに示した点から、当該「間隙」は、「凹形状部の凹部の深さ」を「バッフル板の板厚」と同じ「0.8mm」としたことにより生じた「間隙」であると認められる。
すなわち、上記オに示した点も踏まえると、公然実施発明1の「前記凹形状部の凹部の深さが0.8mmであり、前記バッフル板の板厚が0.8mmであり、前記バッフル支持脚底の凹形状部が形成されていない部分と前記タンクとの間に、間隙が形成されている」ことは、本件発明1の「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に」「第二の間隙が形成されている」ことに相当する。
さらに、甲1から、バッフル支持脚底の凹形状部の中心部にスポット溶接痕が見られ、当該スポット溶接痕の径は当該凹形状部の径に比して半分程度である(上記(1)セ(イ)、(エ)、ソ(イ)参照)ことは看取できるものの、バッフル支持脚底の凹形状部の底部とスポット溶接痕との間のスポット溶接痕周辺に間隙(第一の間隙)を有するかどうかは把握することはできない。
してみると、本件発明1と公然実施発明1とは、以下の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
<一致点>
「不動態被膜を表面に有する金属製のタンク缶体、前記タンク缶体に水を導入する導入口、前記タンク缶体から当該タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口を備えた貯湯タンクであって、前記タンク缶体に水を導入する際又は前記タンク缶体から温水を導出する際の水流を抑制すると共に不動態被膜を表面に有する金属製のバッフルが、前記タンク缶体内部における前記導入口の周辺、前記導出口の周辺のいずれか一方、又は両方に設けられており、前記バッフルは、バッフル本体と、前記バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、前記バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、前記バッフル支持脚底に形成されている凹形状部は、前記タンク缶体側に凸状であり、前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、第二の間隙が形成されている貯湯タンク。」
<相違点>
本件発明1が、「前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下」との構成を有し、さらに、「前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙が形成されている」との構成を有するのに対し、
公然実施発明1は、バッフル支持脚底の凹形状部の中心部にスポット溶接痕(「凹形状部の底部とタンク缶体との接合部」に相当する)が見られ、当該スポット溶接痕の径は凹形状部の径に比して半分程度であること及びバッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に第二の間隙に相当する間隙を有することは看取できるものの、スポット溶接痕の径と、バッフル支持脚底の凹形状部の底部の径との差が2ミリメートル以下であるか不明であるとともに、当該スポット溶接痕の周辺に幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙を有するか不明である点。
上記相違点について検討する。
まず、公然実施発明1における、スポット溶接痕の径とバッフル支持脚底の凹形状部の底部の径との差について検討すると、上記(1)セ(イ)、(エ)、ソ(イ)のとおり、甲1の15及び甲1の16の写真からは、当該スポット溶接痕の径はバッフル支持脚底の凹形状部の底部の径に比して半分程度であることが看取されるところ、公然実施発明1における、スポット溶接痕の径とバッフル支持脚底の凹形状部の底部の径との差は、上記バッフル板の板厚に対し倍以上に大きいことが看取されるから、バッフル板の板厚が0.8mmであることに鑑みれば、明らかに2ミリメートル以上であると認められる。
さらに、公然実施発明1において、当該スポット溶接痕の周辺に第一の間隙を有するかについて検討すると、申立人が提出した甲1全体を参酌しても、バッフル支持脚底の凹形状部の底部とスポット溶接痕との間のスポット溶接痕周辺に間隙(第一の間隙)を有することを示す証拠は見当たらないし、仮に間隙を有するとしても、上述した、公然実施発明1における、スポット溶接痕の径とバッフル支持脚底の凹形状部の底部の径との差は明らかに2ミリメートル以上であることに鑑みれば、当該バッフル支持脚底の凹形状部の底部とスポット溶接痕との間のスポット溶接痕周辺の間隙(第一の間隙)の寸法は少なくとも「長さ2ミリメートル以下」とはならないと考えるのが自然である。
したがって、本件発明1は、公然実施発明1ではない。
続いて、本件発明1が公然実施発明1から容易になし得るものであるか検討する。
ここで、申立人が令和4年5月19日付け意見書とともに提出した甲第7号証(松橋透、“ステンレス鋼の局部腐食と材料選定の考え方”、防錆管理、社団法人日本防錆技術協会、2005年、Vol.49、No.2、p.53-60。以下、「甲7」という。)の55頁左欄末行ないし右欄2行には、「すき間腐食」に関して「すき間幅が40μm以上ではすき間腐食は発生しないとされている。」及び58頁の左欄下から3行ないし末行には、「温水環境でのステンレス鋼適用例」に関して「すき間形状を幅40μmの位置で深さ2mm以下より浅くすることで、すき間腐食を抑制できる」と記載されていることや、甲第5号証(実願平5-9246号(実開平6-64020号)のCD-ROM。以下、「甲5」という。)の段落【0007】に「さらに前記2枚のパネルの接する部分全体をスポット溶接等で溶接しているため、隙間腐食の発生もなくなる。」こと、すなわち、スポット溶接する2枚のパネルの接する部分に隙間がなければ隙間腐食の発生しない旨が記載されていることに鑑みれば、本件特許の出願時において、隙間幅が40μm以下の場合は長さを2mmより小さくする、又は隙間幅を40μm以上とする、若しくは隙間をなくす、ことにより、隙間腐食を抑制できるとの技術常識はあったと考えられる。
しかしながら、上述のとおり、公然実施発明1における、スポット溶接痕の径とバッフル支持脚底の凹形状部の底部の径との差は明らかに2ミリメートル以上であることから、公然実施発明1においても第一の間隙を有することを認識していたこと、当該間隙における隙間腐食を抑制するとの意図があったことは認められないし、特に、下記(6)に示すように、2枚の金属板をスポット溶接すれば、必然的に接合部の周辺に狭小な間隙が発生してしまう蓋然性が高いというのであれば、なおのこと、公然実施発明1では当該狭小な間隙における隙間腐食を抑制するとの意図がなかったと考えるのが自然である。
そうすると、隙間腐食を抑制するとの意図がなかった公然実施発明1に、隙間腐食を抑制するための周知又は公知の技術的事項又は上記技術思想を適用する動機は見いだせない。
加えて、仮に、公然実施発明1に隙間腐食を抑制するための技術的事項又は上記技術思想を適用することができたとしても、第一の間隙を有するかどうかも不明な公然実施発明1に対して、バッフル支持脚底の凹形状部の底部とタンク缶体との間のスポット溶接痕周辺における微小な間隙を形成し、又は当該微小な間隙の存在を認識した上で、その寸法を隙間腐食が発生しない「幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下」とし、さらに、バッフル支持脚底の凹形状部が形成されていない部分とタンク缶体との間の間隙(第二の間隙)によって、当該「第一の間隙」における「不動態被膜の再生を容易にする」ことが容易になし得たということはできない。
したがって、本件発明1は、公然実施発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。
(5)本件発明2についての判断
本件発明2は本件発明1を引用するものであって、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるところ、本件発明2と公然実施発明1とを対比すると、少なくとも、上記相違点を有するから、上記(4)と同様の理由により、本件発明2は、公然実施発明1ではなく、また、公然実施発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)申立人の主張について
申立人は、令和4年5月19日に意見書とともに、新たに甲7、甲第8号証の1ないし甲第8号証の4(以下、「甲8の1」などという。また、合わせて「甲8」という場合がある。また、甲8の標目については省略する。)を提出し、同意見書において、甲7には、重ね合わせ溶接において、すき間の幅40μm以下で長さ2mm以下とすることで、すき間腐食を抑制できる点が記載され、2枚の金属板を接合するスポット溶接では、接合部の周囲にすき間腐食が生じるような狭小な間隙が生じることは周知であり(例えば、甲5、甲8等)、スポット溶接の接合部周辺の狭小な間隙(第一の間隙)の大きさ(幅)は、金属板の板厚、溶接電極棒のプレス圧、溶接電流値及びその通電時間等によっても変化し得るが、甲8には、スポット溶接によって接合部の周辺に狭小な間隙が形成されている点が開示されており、さらに、2枚の金属板をスポット溶接すれば、必然的に接合部の周辺に数マイクロメートル~数十マイクロメートル以下の狭小な間隙が発生してしまう旨を論拠として、甲1発明(本件における「公然実施発明1」)、甲7に記載された技術事項、及び周知技術に基づき、甲1発明において、すき間腐食を抑制するために、凹形状部の底部とタンク缶体との接合部の径と、凹形状部の底部の径との差を2ミリメートル以下とすることは当業者であれば容易になし得るものであり、その接合部周辺の間隙(第一の間隙)を幅40μm以下とすることも当業者であれば容易になし得るものであり、本件発明1及び2は、何れも、本件特許に係る出願前に公然実施されていた甲1発明、甲7に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである旨を主張している。
しかしながら、甲7に記載された技術的事項を勘案しても、本件発明1及び2が容易になし得るものでないことは、上記(5)で示したとおりである。
さらに、仮に、申立人が主張するように、甲5及び甲8から、2枚の金属板を接合するスポット溶接では、接合部の周囲に隙間腐食が生じるような狭小な間隙が生じることが周知技術であるとしても、公然実施発明1(甲1発明)において、バッフル支持脚底の底部とタンク缶体との間のスポット溶接痕周辺に、そもそも間隙が生じているかは定かでないし、隙間腐食が生じるような狭小な間隙が生じてしまうことを周知技術として認識していたのであれば、スポット溶接痕の径とバッフル支持脚底の凹形状部の底部の径との差を明らかに2ミリメートル以上としている公然実施発明1においては、隙間腐食を抑制する意図は全くなかったと考えるのが自然である。そうすると、公然実施発明1に隙間腐食を抑制するための周知又は公知の技術的事項又は上記技術思想を適用して、隙間腐食が生じない「幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下」の間隙(第一の間隙)とすることの動機は見いだせない。
したがって、本件発明1が、甲1発明(公然実施発明1)、甲7に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである旨の申立人の主張は採用できない。
(7)理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び請求項2に係る特許を、理由1により取り消すことはできない。
2 理由2について
(1)甲3に記載された事項
ア 「【0022】貯湯タンク上18c、貯湯タンク下18d内には、水道水が勢いよく入ってくるために、それで温水の分布が乱され、積層沸き上げが崩れてしまうことがある。それを防ぐために、貯湯タンク内には、小さな穴の空いた拡散ノズル19b、左右に拡散するための拡散板19c、19d、19e、19fが取り付けられており、貯湯タンクにスポット溶接で取り付けられている。【0023】貯湯タンク上18cの上方から、高温水となり、貯湯タンク下18d下方で低温水となるような、積層沸き上げとなった場合、貯湯タンク上18c下方、貯湯タンク下18dの上方も高温の温水が滞留された状態となる。ところが、その箇所には、貯湯タンク内の温度分布を乱さないように、拡散板19c、19dが取り付けられているとういうことになる。続きを表示(全14行)【0024】図12は、隙間腐食特性を示したものであり、横軸に温水の温度、縦軸に隙間腐食の発生する電位を示している。電位が低ければ、腐食は発生しないが、電位が大きくなれば腐食しやすくなること、温水の温度が高くなっても、隙間腐食が発生しやすいことがわかる。【0025】貯湯タンクの材料としては、耐食性に優れたSUS444が使用される場合が多く、SUS304と比べると4~5倍隙間腐食電位が高く、耐食性に優れていると言える。ところが、温水温度が高くなると、極端に隙間腐食電位が下がり、腐食される可能性が高くなることがわかる。【0026】特に、隙間腐食は残留塩素等のマイナスイオンの多く含んだ水で生じやすく、わずかな隙間に滞留している温水が、そのまま循環せず、残存している場合に、電池が形成され、隙間腐食電位が発生し、それが材料の隙間腐食電位を超えると、腐食が進行することとなる。そして、腐食が徐々に進行し、孔が空く場合があり、それも4-5年たった後発生するといった場合が多く、耐久試験での評価がしづらい面がある。【0027】そのため、貯湯タンク上18c下方や、貯湯タンク下18d上方である高温の温水が滞留しているところに、拡散板19c、19d、19e、19fのような形状のものを溶接することは耐久面で課題を有していることとなる。【0028】対策として、拡散板の変わりに、拡散ノズル19bを取り付け、攪拌を防ぐことが考えられるが、拡散ノズル19bは細かい穴があいた形状をしており、それを直列でつなっがた貯湯タンクの間に入れれば、圧損が大きくなり、給湯がうまく出来なくなってしまい、採用は出来ない。」
イ 「【0047】32は第2の貯湯タンクであり、33は第2の貯湯タンク31を含んだ貯湯タンクユニットである。34は第2の貯湯タンク32に水道から入水するための第2の入水管であり、35は第2の貯湯タンク32から給湯するための第2の給湯管である。・・・【0050】55は、第1の貯湯タンク28内の第1の入水管29と一体の間隔を介して設けられた第1の入水拡散板であり、56は同じく第2の貯湯タンク32に設けられた第2の入水拡散板である。57は第1の貯湯タンク28内の第1の熱交給水管39の給水部に一定の間隔を介して設けられた第1の給水拡散板であり、58は同じく第2の貯湯タンク32に設けられた第2の給水拡散板である。【0051】そして、これら拡散板は図2に示すような形状となっており、入水あるいは給水される時に、左右方向に流れの広がりを持たせるものであり、貯湯タンク内の暖められた温水が攪拌さることを防ぐものであり、貯湯タンクにスポット溶接されている。」
ウ 「【0056】入水管36から、水道圧にて供給された水道水は、水道水供給管37と、第1の入水管29、第2の入水管34に分流される。第1、第2の入水管29、34から、それぞれ第1の貯湯タンク28、第2の貯湯タンク32に供給される。この際に、第1の貯湯タンク28、第2の貯湯タンク内には第1の入水拡散板55、第2の入水拡散板56が設置されており、水道圧で勢いよく貯湯タンク内に入水しても、左右に拡散され、第1の貯湯タンク28、第2の貯湯タンク32内の温水が攪拌され、水が交じり合い、貯湯タンク内の積層沸き上げ状態を損ねることや、温度の低下を防いでいる。」
エ 「【0061】また、貯湯タンク上方には、第1の拡散ノズル、第2の拡散ノズルを用いており、第1の貯湯タンク28、第2の貯湯タンク32内を攪拌し、温水が交じり合うことを防いでいる。【0062】これは図3に示すように、第1の貯湯管43、第2の貯湯管44に平行につけられており、スポット溶接で取り付けているわけではないので、高温域にあったとしても隙間腐食に関しては問題は生じない。【0063】そのため、隙間腐食の生じる可能性のある拡散板を比較的低温域に、取りつけることが可能となり、耐隙間腐食性を向上させることが出来、耐久性に優れた機器とすることが可能となる。【0064】図12は、隙間腐食特性を示したものであり、横軸に温水の温度、縦軸に隙間腐食の発生する電位を示している。電位が低ければ、腐食は発生しないが、電位が大きくなれば腐食しやすくなること、温水の温度が高くなっても、隙間腐食が発生しやすいことがわかる。【0065】貯湯タンクの材料としては、耐食性に優れたSUS444が使用される場合が多く、SUS304と比べると4~5倍隙間腐食電位が高く、耐食性に優れていると言える。ところが、温水温度が高くなると、極端に隙間腐食電位が下がり、腐食される可能性が高くなることがわかる。」
オ 「【0073】図1にて、太い点線で記入した部分64は第2の貯湯タンクユニットである。この第2の貯湯タンクユニット64部分を本体と切り離した形態とするということも容易に可能となる。【0074】図5、図6はそれを表したものである。図5は、本発明の実施の形態1におけるヒートポンプ式給湯機の斜視図であり、分割した所を示している。図6は、同じく本発明の実施の形態1におけるヒートポンプ給湯機であり、一体化された所を示している。【0075】図5において、21は第2の貯湯タンクを含んだ本体ユニット、25は蒸発器であり、L字状の形状としている。28は第1の貯湯タンクであり、ヒートポンプ機能で加熱され高温となった水道水を貯めておくものであり、L字状の蒸発器27の、前方延伸部27aの反対側に配設されている。29は第1の貯湯タンク28に水道から入水するための第1の入水管であり、30は貯湯タンク28から給湯するための第1の給湯管である。31は第1の貯湯タンク28に貯湯する場合用い、貯湯タンク28に給水するための水ポンプである。32は第2の貯湯タンクであり、64は第2の貯湯タンク31を含んだ貯湯タンクユニットである。34は第2の貯湯タンク32に水道から入水するための第2の入水管であり、35は第2の貯湯タンク32から給湯するための第2の給湯管である。【0076】第1の貯湯タンクを含んだ本体ユニット21と第2の貯湯タンクを含んだ貯湯タンクユニット33は、図5の様に二つに分割することが可能となっている。」
カ 「【図1】[図:0001393053000001.jpg]【図2】[図:0001393053000002.jpg]【図3】[図:0001393053000003.jpg]」
キ 上記イ、カの図1、2から、第2の入水拡散板56は、第2の貯湯タンク32内部における第2の入水管34の周辺に設けられており、バッフル本体と、バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、バッフル支持脚底の底部で第2の貯湯タンク32にスポット溶接されていることが理解できる。
(2)甲3発明
上記(1)アないしキに記載された事項によると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲3発明>
「SUS444製の第2の貯湯タンク32、前記第2の貯湯タンク32に水道から入水するための第2の入水管34、前記第2の貯湯タンク32から給湯するための第2の給湯管35を備えた貯湯タンクユニット33であって、前記第2の貯湯タンク32に水道から入水する際の水流を抑制する第2の入水拡散板56が、前記第2の貯湯タンク32内部における前記第2の入水管34の周辺に設けられており、前記第2の入水拡散板56は、バッフル本体と、前記バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、前記バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、前記バッフル支持脚底の底部で前記第2の貯湯タンク32にスポット溶接されている、貯湯タンクユニット33。」
(3)甲6に記載された事項
ア 「【0015】本発明の抵抗溶接方法によって、次のような抵抗溶接構造体が得られる。すなわち、本発明の抵抗溶接構造体は、複数の金属板を重ね合わせ、金属板の被溶接部を第1電極により圧接し、金属板における被溶接部以外の部分に第2電極を接触させ、第1電極と第2電極との間で通電することにより溶接された抵抗溶接構造体であって、第1電極により圧接される金属板の被溶接部の表面に、その金属板の裏面に突出する凹部が形成され、凹部の断面径は、第1電極の先端径の1~3倍であることを特徴としている。このような抵抗溶接構造体では、均一かつ十分な溶接強度を有することができる。このような効果は、凹部の断面径が第1電極の先端径の3倍を超えた場合に消失してしまう。したがって、本発明の抵抗溶接構造体では、凹部の断面径を第1電極の先端径の1~3倍の範囲内に設定している。」
イ 「【0018】抵抗溶接装置1には、下側金属板11および上側金属板12が配置されている。上側金属板12は、プレス成形された金属板であり、被溶接部であるフランジ部13と、フランジ部13の後端部から鉛直方向に延在する段差部14と、段差部14の上端部から後方に延在する本体部15とを有している。フランジ部13には、図2に示すように、その表面から裏面へ突出する断面円形の凹部16が形成されている。凹部16の断面径は、加圧電極4の先端径の1~3倍の範囲内に設定している。凹部16の剛性は、プレス成形による加工硬化とリブを有する形状によって高められている。」
ウ 「【0026】<実施例1、比較例1>実施例1では、厚さ1.0mmのSP材にプレス成形を行い、フランジ部に断面円形の凹部を形成することにより図1に示すような上側金属板を作製し、上側金属板と同じ厚さ1.0mmのSP材を図1に示すような下側金属板とした。実施例1の上側金属板では、図2に示す凹部の断面径D1を12mm、深さD2を1mmとした。また、図2に示す加圧電極の電極径R1を16mm、先端径R2を6mmとした。」
エ 「【図1】[図:0001393053000004.jpg]【図2】[図:0001393053000005.jpg]【図3】[図:0001393053000006.jpg]」
オ 図1、図3の記載から、甲6に記載される抵抗溶接は、スポット溶接であることが看取される。
カ 図3の記載から、抵抗溶接により接合された状態では、「フランジ部13」の「凹部16」の「裏面」で「下側金属板11」と接合されており、「フランジ部13」の「凹部16」が形成されていない部分と、「下側金属板11」との間に、「間隙」が形成されていることが看取される。
(4)甲6に記載された技術的事項
上記(3)アないしカに記載された事項によると、甲6には、次の技術的事項(以下、「甲6に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲6に記載された技術的事項>
「上側金属板12の被溶接部であるフランジ部13に、表面から裏面へ突出する凹部16が形成され、前記凹部16の裏面で下側金属板11と接合されており、前記凹部16の深さD2が1mmであり、前記上側金属板12の厚さが1.0mmであり、前記下側金属板11の厚さが1.0mmであり、前記フランジ部13の凹部16が形成されていない部分と、下側金属板との間に、間隙が形成されていること」
(5)本件発明1についての判断
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
(ア)甲3発明の「第2の貯湯タンク32」は「SUS444製」であり、「SUS444」とは、ステンレス鋼の一種であると認められることから、不動態被膜を表面に有する金属であると認められる。
そして、甲3発明の「第2の貯湯タンク32」は、温水を貯える部分を構成するものであるから、本件発明1の「タンク缶体」に相当する。
したがって、甲3発明の「SUS444製の第2の貯湯タンク32」は、本件発明1の「不動態被膜を表面に有する金属製のタンク缶体」に相当する。
(イ)甲3発明の「第2の入水管34」は、「第2の貯湯タンク32」下部に取付けられるものであって、水道からの水を「第2の貯湯タンク32」に入水するためのものであるといえるから、甲3発明の「前記第2の貯湯タンク32に水道から入水するための第2の入水管34」は、本件発明1の「前記タンク缶体に水を導入する導入口」に相当する。
また、甲3発明の「第2の給湯管35」は、「第2の貯湯タンク32」上部に取付けられるものであって、「第2の貯湯タンク32」に貯えた温水を給湯のために導出するためのものであるといえるから、甲3発明の「前記第2の貯湯タンク32から給湯するための第2の給湯管35」は、「前記タンク缶体から当該タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲3発明の「貯湯タンクユニット33」は、本件発明1の「貯湯タンク」に相当する。
(エ)甲3発明の「第2の入水拡散板56」は、「第2の貯湯タンク32」に水道から入水する際の水流を抑制するためのものであるから、本件発明1の「バッフル」に相当する。
また、甲3発明の「第2の入水拡散板56」は、「SUS444製の第2の貯湯タンク32」に「スポット溶接」されていることから、金属製であると認められる。
したがって、甲3発明の「前記第2の貯湯タンク32に水道から入水する際の水流を抑制する第2の入水拡散板56が、前記第2の貯湯タンク32内部における前記第2の入水管34の周辺」に設けられていることは、本件発明1の「前記タンク缶体に水を導入する際」の「水流を抑制」する「金属製のバッフルが、前記タンク缶体内部における前記導入口の周辺」に設けられていることに相当する。
(オ)甲3発明の「第2の入水拡散板56」が、「第2の貯湯タンク32」に「スポット溶接されている」ことは、本件発明1の「バッフル」が、「タンク缶体」に「接合されて」いることに相当する。
イ 一致点及び相違点
上記ア(ア)ないし(オ)を踏まえると、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「不動態被膜を表面に有する金属製のタンク缶体、前記タンク缶体に水を導入する導入口、前記タンク缶体から当該タンク缶体に貯えた温水を導出する導出口を備えた貯湯タンクであって、前記タンク缶体に水を導入する際の水流を抑制する金属製のバッフルが、前記タンク缶体内部における前記導入口の周辺に設けられており、前記バッフルは、バッフル本体と、前記バッフル本体を支持するバッフル支持脚と、前記バッフル支持脚の端に設けられたバッフル支持脚底を備え、前記バッフル支持脚底の底部で前記タンク缶体と接合されている、貯湯タンク。」
<相違点1>
本件発明1では、「バッフル」が「不動態被膜を表面に有する金属製」であるのに対し、
甲3発明では、「第2の入水拡散板56」が金属製ではあるものの、不動態被膜を表面に有する金属製であるか否か不明である点。
<相違点2>
本件発明1では、「前記バッフル支持脚底に形成されている凹形状部は、前記タンク缶体側に凸状であり、前記凹形状部の底部で前記タンク缶体と接合されており、前記凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下であり、前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすることにより、前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙における前記不動態被膜の再生を容易にする、前記第一の間隙よりも幅の大きい第二の間隙が形成されている」のに対し、
甲3発明では、「バッフル支持脚底」に、「第2の貯湯タンク32」側に凸状となるような「凹形状部」が形成されておらず、「バッフル支持脚底の底部で前記第2の貯湯タンク32と接合されている」ものの、当該「接合」されている部分が、上記「凹形状部」とはされていない点。
ウ 判断
(ア)相違点1について検討する。
甲3発明では、「第2の入水拡散板56」の材質について特定されていないものの、貯湯タンク内部に用いられることに鑑みれば、貯湯タンク内の水によって腐食が発生しないように、貯湯タンクと同様に、SUS444等の耐食性に優れた金属を使用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(イ)相違点2について検討する。
複数の金属板を重ね合わせて、スポット溶接により金属板同士を溶接するという限りにおいて、甲6に記載された技術的事項の「フランジ部13」は、本件発明1の「バッフル支持脚底」に相当し、以下同様に、上述の限りにおいて、甲6に記載された技術的事項の「上側金属板12」、「表面から裏面へ突出する凹部16」、「下側金属板11」は、それぞれ、本件発明1の「バッフル」、「タンク缶体側に凸状」である「凹形状部」、「タンク缶体」に相当する。
また、本件発明1において、「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上とすること」という事項には、「凹形状部の凹部の深さ」が「バッフルの板厚」と同じであるという事項が含まれることから、上述の限りにおいて、甲6に記載された技術的事項の「前記凹部の深さD2が1mmであり、前記上側金属板12の厚さが1.0mmであり、前記下側金属板11の厚さが1.0mm」であることは、本件発明1の「前記凹形状部の凹部の深さを、前記バッフルの板厚以上」とすることに相当し、さらに、「前記バッフルの板厚」が「前記タンク缶体の板厚と同じ」であるといえる。
そして、甲3発明と甲6に記載された技術的事項とは、いずれも、複数の金属板を重ね合わせて、スポット溶接により金属板同士を溶接するという点で共通するものであり、上記(3)アの記載から、甲6に記載された技術的事項は、「均一かつ十分な溶接強度を有することができる」という効果を奏するものであり、スポット溶接による金属板同士の溶接において、溶接強度の向上という課題は、甲3発明においても当然に内在する課題であることから、当業者であれば、甲3発明において、「第2の入水拡散板56」と「第2の貯湯タンク32」とをスポット溶接により溶接するに際し、溶接強度の向上という当然に内在する課題を解決する上で甲6に記載された技術的事項を参照して、「第2の入水拡散板56」の「バッフル支持脚底」に、「第2の入水拡散板56の厚さ」や「第2の貯湯タンク32の厚さ」と「同じ深さ」であって、「第2の貯湯タンク32」側に凸状である「凹部」を形成し、当該「凹部」の底部で「第2の貯湯タンク32」と接合し、「第2の入水拡散板56」の当該「凹部」が形成されていない部分と、「第2の貯湯タンク32」との間に「間隙」(第二の間隙)が形成されているような接合構造とすることは、容易になし得るとまではいえる。
しかしながら、甲3及び甲6のいずれにもバッフル支持脚底の底部の凹形状部とタンク缶体との間の接合部の周辺に第一の間隙を設けることの記載がないところ、甲3発明に、甲6に記載された技術的事項を適用して、本件発明1に至るためには、「凹形状部の底部と前記タンク缶体との接合部の径と、前記凹形状部の底部の径との差は2ミリメートル以下」とし「前記バッフル支持脚底と前記タンク缶体との間に、前記接合部周辺の幅40マイクロメートル以下かつ長さ2ミリメートル以下の第一の間隙」を設けた上で、第二の間隙によって、その第一の間隙における「不動態被膜の再生を容易にする」ように改変することが必要であり、そのような改変が当業者にとって容易になし得たことであるということはできない。
特に、甲3の段落【0061】ないし【0063】には、高温域の隙間腐食が問題となる箇所にはスポット溶接を用いない旨の記載があり、この記載から、隙間腐食のおそれのない箇所にのみ、バッフル本体のスポット溶接による固定を行うものであるから、甲3からは上記のような改変を行う動機は生じない。
したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
エ むすび
よって、本件発明1は、甲3発明及び甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)本件発明2についての判断
本件発明2は本件発明1を引用するものであって、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるところ、本件発明2と甲3発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点を有するから、同様の理由により、甲3発明及び甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、申立人は、令和4年5月19日提出の意見書において、甲3発明に基づく本件発明1の進歩性欠如については、意見を述べていない。
3 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700457