特許異議申立
2021-700392
偏光子および画像表示装置
- 審判番号
- 2021-700392
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-509186
- 登録番号
- 6778353
- 請求日
- 2021年04月27日
- 審決日
- 2022年09月30日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】伊東 秀明
- 【権利者代理人】三橋 史生
- 【異議申立人】浜 俊彦
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 関根 洋之
- 審判官 河原 正
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6778353号発明「偏光子および画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6778353号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第6778353号の請求項1ないし9、11ないし12に係る特許を維持する。
特許第6778353号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第6778353号の請求項1~12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2019年(平成31年)3月27日(先の出願に基づく優先権主張 2018年3月30日)を国際出願日とする出願であって、令和2年10月13日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月28日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和3年4月27日に特許異議申立人 浜 俊彦(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和3年 6月29日付け:取消理由通知書
令和3年 8月30日付け:意見書(特許権者)
令和3年 8月30日付け:訂正請求書
令和3年10月21日付け:意見書(特許異議申立人)
令和4年 1月13日付け:手続補正書(方式:訂正請求書)
令和4年 4月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 7月 4日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和4年 7月 4日付け:意見書(特許権者)
令和4年 8月25日付け:意見書(特許異議申立人)
なお、令和3年8月30日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6778353号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める、というものである。
2 本件訂正請求について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~12〕に対して請求されたものである。
3 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「液晶性化合物と、第1の二色性物質と、第2の二色性物質と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、前記第1の二色性物質と前記第2の二色性物質から形成された配列構造を有し、前記第1の二色性物質および前記第2の二色性物質のうち、一方の二色性物質が単独で配列する構造中に、他方の二色性物質が入り込んだ際のエネルギー的な損失を表す安定化エネルギーが、72kcal/mol未満である、偏光子。」と記載されているのを、
「液晶性化合物と、下記条件を満たす、第1の二色性物質および第2の二色性物質の各1種と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、
前記第1の二色性物質が、式(1)で表される化合物であり、
前記第2の二色性物質が、式(2)で表される化合物であり、
前記第1の二色性物質の1種と前記第2の二色性物質の1種から形成された配列構造を有し、
前記第1の二色性物質の1種および前記第2の二色性物質の1種のうち、一方の二色性物質が単独で配列する構造中に、他方の二色性物質が入り込んだ際のエネルギー的な損失を表す安定化エネルギーが、72kcal/mol未満である、偏光子。
条件:
式(1)におけるR1のlogP値と、式(2)におけるR4のlogP値と、の差の絶対値が、2.30以下である。
【化1】
[図:0001391988000001.jpg]
式(1)中、
Ar1およびAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表し、
R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表し、
R2およびR3はそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。
【化2】
[図:0001391988000002.jpg]
式(2)中、
nは1または2を表し、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Ar5は、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基または置換基を有していてもよい複素環基を表し、
R4は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表し、
R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表し、R5およびR6は、互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、R4がアルキル基を表す場合、R4におけるアルキル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-または-O-C(O)-O-、によって置換されている。R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された、請求項2~12についても、同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか1項に記載の偏光子。」と記載されているのを、
「請求項1~9のいずれか1項に記載の偏光子。」に訂正する(請求項11の記載を引用して記載された、請求項12についても、同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれか1項に記載の偏光子を有する、画像表示装置。」と記載されているのを、
「請求項1~9および11のいずれか1項に記載の偏光子を有する、画像表示装置。」に訂正する。
4 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1による訂正は、請求項1において、[A]第1の二色性物質を式(1)で表される化合物に、第2の二色性物質を式(2)で表される化合物に限定し(式(1)及び式(2)は、前記3(1)に記載されたとおりである。)、[B]偏光子形成用組成物に含有される第1の二色性物質及び第2の二色性物質の各1種を「条件」を満たすものに限定し、[C]配列構造を第1の二色性物質の1種と第2の二色性物質の1種から形成されたものとし、安定化エネルギーを第1の二色性物質の1種及び第2の二色性物質の1種のうち、一方の二色性物質が単独で配列する構造中に、他方の二色性物質が入り込んだ際のエネルギー的な損失を表すものとして、安定化エネルギーの算出対象を明確にする訂正である。そして、この点は、請求項1の記載を引用して記載された請求項2~12についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項1による訂正うち、[A]及び[B]は、120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1による訂正のうち、[C]は、120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
イ 訂正事項1による訂正のうち、[A]は、本件特許明細書の【0043】~【0047】、【0050】~【0057】、【0059】~【0060】、【0168】及び【0170】の記載から導き出すことができる事項であり、[B]は、【0061】~【0062】、【0159】~【0174】及び【0193】~【0197】の記載から導き出すことができる事項であり、[C]は、【0086】~【0087】及び【0192】~【0196】の記載から導き出すことができる事項であり、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
ウ 訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項10を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正事項2による訂正で特許請求の範囲の請求項10を削除することに伴って、これと整合するように請求項11の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正事項2による訂正で特許請求の範囲の請求項10を削除することに伴って、これと整合するように請求項12の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による請求項1~12についての訂正(訂正事項1~4による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったから、本件特許の請求項1~9及び11~12に係る発明(以下、請求項の番号とともに「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~9及び11~12に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
液晶性化合物と、下記条件を満たす、第1の二色性物質および第2の二色性物質の各1種と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、
前記第1の二色性物質が、式(1)で表される化合物であり、
前記第2の二色性物質が、式(2)で表される化合物であり、
前記第1の二色性物質の1種と前記第2の二色性物質の1種から形成された配列構造を有し、
前記第1の二色性物質の1種および前記第2の二色性物質の1種のうち、一方の二色性物質が単独で配列する構造中に、他方の二色性物質が入り込んだ際のエネルギー的な損失を表す安定化エネルギーが、72kcal/mol未満である、偏光子。
条件:
式(1)におけるR1のlogP値と、式(2)におけるR4のlogP値と、の差の絶対値が、2.30以下である。
【化1】
[図:0001391988000003.jpg]
式(1)中、
Ar1およびAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表し、
R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表し、
R2およびR3はそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。
【化2】
[図:0001391988000004.jpg]
式(2)中、
nは1または2を表し、
Ar3およびAr4はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Ar5は、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基または置換基を有していてもよい複素環基を表し、
R4は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表し、
R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表し、R5およびR6は、互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、R4がアルキル基を表す場合、R4におけるアルキル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-または-O-C(O)-O-、によって置換されている。R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
前記第1の二色性物質を含有せず、前記第2の二色性物質および前記液晶性化合物を含有する組成物から形成される膜の吸収スペクトルにおける最大吸収波長λ2と、
前記偏光子の吸収スペクトルと、前記第2の二色性物質を含有せず、前記第1の二色性物質および前記液晶性化合物を含有する組成物から形成される膜の吸収スペクトルと、の差スペクトルにおける最大吸収波長λと、
の差の絶対値が2nmより大きい、請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記第2の二色性物質を含有せず、前記第1の二色性物質および前記液晶性化合物を含有する組成物から形成される膜の吸収スペクトルにおける最大吸収波長λ4と、
前記偏光子の吸収スペクトルにおける最大吸収波長λ1と、
の差の絶対値が2nmより大きい、請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
前記偏光子のX線回折スペクトルにおける前記第2の二色性物質に由来する周期構造のピークO1の強度と、
前記第1の二色性物質を含有せず、前記第2の二色性物質および前記液晶性化合物を含有する組成物から形成される膜のX線回折スペクトルにおける前記第2の二色性物質に由来する周期構造のピークO2の強度と、
が異なる、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項5】
前記ピークO2の強度に対する、前記ピークO1の強度の比が、1未満である、請求項4に記載の偏光子。
【請求項6】
前記偏光子のX線回折スペクトルを測定した場合、
前記第2の二色性物質を含有せず、前記第1の二色性物質および前記液晶性化合物を含有する組成物から形成される膜のX線回折スペクトルにおける前記第1の二色性物質に由来する周期構造のピークM2が検出される回折角、および、前記第1の二色性物質を含有せず、前記第2の二色性物質および前記液晶性化合物を含有する組成物から形成される膜のX線回折スペクトルにおける前記第2の二色性物質に由来する周期構造のピークO2が検出される回折角、とは異なる回折角において、前記第1の二色性物質および前記第2の二色性物質に由来する周期構造のピークOMが検出される、請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項7】
前記安定化エネルギーが55kcal/mol以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項8】
前記安定化エネルギーが35kcal/mol以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項9】
前記第1の二色性物質が、560nm以上700nm以下の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質であり、
前記第2の二色性物質が、455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質である、請求項1~8のいずれか1項に記載の偏光子。」
「【請求項11】
さらに、最大吸収波長が380nm以上455nm未満の範囲にある第3の二色性物質を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項12】
請求項1~9および11のいずれか1項に記載の偏光子を有する、画像表示装置。」
第4 取消しの理由の概要
1 令和3年6月29日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。
理由1 明確性要件
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2 新規性
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明は、本件特許の先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1(特開2013-210624号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3 進歩性
本件特許の特許請求の範囲の請求項11~12に係る発明は、本件特許の先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1(特開2013-210624号公報)に記載された発明に基づいて、本件特許の出願の先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2 令和4年4月22日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。
理由1 明確性要件
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2 サポート要件
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当合議体の判断
1 明確性要件について
(1)本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1が「前記第1の二色性物質の1種と前記第2の二色性物質の1種から形成された配列構造を有し、前記第1の二色性物質の1種および前記第2の二色性物質の1種のうち、一方の二色性物質が単独で配列する構造中に、他方の二色性物質が入り込んだ際のエネルギー的な損失を表す安定化エネルギーが、72kcal/mol未満である」と訂正され、第1の二色性物質及び第2の二色性物質がそれぞれ1種類の物質からなり、算出される安定化エネルギーが一意に決まることが明らかになった。
(2)本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1が「R5およびR6は、互いに結合して環を形成してもよい」と訂正され、式(2)で表される化合物に、R5及びR6の部分が互いに結合して環を形成するものが含まれることが明らかになった。
(3)したがって、本件特許発明1及び請求項1を引用して記載される本件特許発明2~9及び11~12は明確である。
2 サポート要件について
本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1が「液晶性化合物と、下記条件を満たす、第1の二色性物質および第2の二色性物質の各1種と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって」と訂正され、第1の二色性物質及び第2の二色性物質はそれぞれ1種類の物質からなることが明らかになった。
したがって、本件特許発明1及び請求項1を引用して記載される本件特許発明2~9及び11~12は発明の詳細な説明に記載したものである。
3 新規性・進歩性
(1)引用文献の記載・引用発明
ア 甲1の記載
取消しの理由で引用された甲1(特開2013-210624号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光膜、円偏光板及びそれらの製造方法などに関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヨウ素染色PVAからなる偏光膜は、黄色味を帯びやすく、いわゆるニュートラルな色相性に劣るという問題があった。また、ヨウ素染色PVAからなる偏光膜は薄膜化が困難であり、より薄型化が求められる昨今の表示装置に適用するうえでは、限界があった。そこで、本発明の目的は、薄膜化が容易であり、ニュートラルな色相性に優れる偏光膜、当該偏光膜を含む偏光子及びその製造方法などを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
[1] 重合性液晶化合物から形成される重合体と、該重合体中に分散させて光吸収を測定した場合に、波長380~550nmの範囲に吸収極大を有する少なくとも1種の二色性色素(1) と、波長550~700nmの範囲に吸収極大を有する少なくとも2種の二色性色素(2)とを含む偏光膜。
[2] 前記二色性色素(1)が、重合性液晶化合物から形成される重合体中に分散させて光吸収を測定した場合に、波長400~550nmの範囲に吸収極大を有する[1]に記載の偏光膜。
[3] 前記重合体中に分散させて光吸収を測定した場合に、波長550~700nmの範囲に吸収極大を有する少なくとも2種の二色性色素(2)が、
前記重合体中に分散させて光吸収を測定した場合に、
波長550~600nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2-1)と、
波長600~700nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2-2)とを含む[1]又は[2]に記載の偏光膜。
・・・省略・・・
[8] 二色性色素(2) が、
式(2)で表される化合物からなる[1]~[7]のいずれかに記載の偏光膜。
[図:0001391988000005.jpg]
[式(2)中、
nは1又は2である。
Ar1及びAr3はそれぞれ独立に、式(AR-1)~式(AR-4)のいずれかで表される基である。
[図:0001391988000006.jpg]
Ar2は、式(AR2-1)、式(AR2-2)又は式(AR2-3)で表される基である。
[図:0001391988000007.jpg]
A1及びA2はそれぞれ独立に、式(A-1)~式(A-9)のいずれかで表される基であり、*は結合手を表す。
[図:0001391988000008.jpg]
(mcは0~10の整数であり、同一の基中にmcが2つある場合、この2つのmcは互いに同一又は相異なる。)]
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、薄膜化が容易で、ニュートラルな色相性に優れた偏光膜、当該偏光膜を含む偏光子を提供することができる。」
(イ)「【0008】
本発明の偏光膜(以下、場合により「本偏光膜」という。)は、重合性液晶化合物から形成される重合体と、特定の3種以上の二色性色素とを含むことを特徴とする。本偏光膜は、重合性液晶化合物と、前記3種以上の二色性色素とを含む組成物(以下、場合により「偏光膜形成用組成物」という。)から形成されたものが好ましい。まず、偏光膜形成用組成物について説明する。
【0009】
1.偏光膜形成用組成物
本発明の偏光膜形成用組成物は上記のとおり、重合性液晶化合物と、特定の3種以上の二色性色素とを含み、さらに溶剤を含むと好ましい。このような偏光膜形成用組成物から形成される本偏光膜は、薄膜化が容易である。まずは、偏光膜形成用組成物に含まれる構成成分の各々について説明する。
【0010】
1-1.二色性色素
偏光膜形成用組成物に含まれる二色性色素は、重合性液晶化合物から形成された重合体に分散させて光吸収を測定した場合に、波長380~550nmの範囲に吸収極大を有する少なくとも1種の二色性色素(1)と、同様の測定において、波長550~700nmの範囲に吸収極大を有する少なくとも2種の二色性色素(2)とを含む。
【0011】
1-1-1.二色性色素(1)
二色性色素(1)は重合性液晶化合物から形成された重合体に分散させて光吸収を測定した場合に、波長380~550nmの範囲に吸収極大を有する。なお、この測定は、本発明における偏光膜形成用組成物の二色性色素を、吸収極大を測定しようとする二色性色素に置き換えた極大吸収測定用の組成物を調製し、後述の偏光膜形成用組成物から本偏光膜を形成する方法と同様の方法によって、吸収極大測定用膜を形成し、この吸収極大測定用膜の光吸収を測定すればよい。当該吸収極大の測定の具体的な方法は、本願実施例に記載する方法と同じである。
【0012】
二色性色素(1)としては、例えば、アゾ化合物が挙げられる。好ましくは、前記式(1)で表される化合物(以下、場合により「化合物(1)」という。)が挙げられる。
【0013】
化合物(1)のアゾベンゼン部位の幾何異性は、トランスが好ましい。
【0014】
式(1)におけるYは前記の式(Y1)又は式(Y2)で表される基であり、好ましくは式(Y1)で表される基である。式(Y1)及び式(Y2)において、両端の直線は結合手を表し、左側の結合手はアゾ基を有するフェニレン基と結合しており、右側の結合手はR2を有するフェニレン基と結合している。Lは酸素原子又は-NR-であり、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。該アルキル基としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基及びt-ブチル基などが挙げられる。中でも、Lは酸素原子又は-NH-であると好ましく、酸素原子であるとさらに好ましい。
【0015】
R1は前記の式(R1-1)、式(R1-2)又は式(R1-3)で表される基であり、好ましくは式(R1-2)及び式(R1-3)で表される基である。式(R1-2)で表される基における2つのmaはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であると好ましい。maは0~5の整数であるとさらに好ましい。
【0016】
R2は、式(R2-1)、式(R2-2)、式(R2-3)、式(R2-4)、式(R2-5)又は式(R2-6)で表される基であり、式(R2-2)、式(R2-5)又は式(R2-6)で表される基であるとより好ましく、式(R2-6)で表される基であるとさらに好ましい。R2が式(R2-1)、式(R2-2)、式(R2-3)、式(R2-5)又は式(R2-6)で表される基である場合、当該基に含まれるmbは0~10の整数であると好ましく、0~5の整数であるとさらに好ましい。
【0017】
好ましい化合物(1)としては、以下の、式(1-1)~式(1-8)で表される化合物などが挙げられる。
[図:0001391988000009.jpg]
【0018】
中でも、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-5)、式(1-7)及び式(1-8)で表される化合物が好ましく、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)及び式(1-7)で表される化合物が特に好ましい。
【0019】
二色性色素(1)は前記測定により光吸収を求めたとき、波長380~550nmの範囲に吸収極大を有するものであり、波長400~550nmの範囲に吸収極大を有すると好ましく、波長400~520nmの範囲に吸収極大を有するとより好ましく、波長430~520nmの範囲に吸収極大を有するとさらに好ましく、波長440~510nmの範囲に吸収極大を有すると特に好ましい。前記範囲に吸収極大を有するものであれば、二色性色素(1)として、複数種の化合物(1)を用いることもできる。
・・・省略・・・
【0024】
1-1-2.二色性色素(2)
二色性色素(2)は、前記測定を実施したとき、波長550~700nmの範囲に吸収極大を有する。吸収極大の測定方法は、二色性色素(1)の場合と同様である。
【0025】
二色性色素(2)は偏光膜形成用組成物中に2種以上が含まれるものであるが、中でも、波長550~600nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2-1)と、波長600~700nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2-2)とを含むとより好ましい。ここで、二色性色素(2-1)は波長570~600nmの範囲に吸収極大を有するとさらに好ましく、二色性色素(2-2)は波長600~680nmの範囲に吸収極大を有するとさらに好ましい。
【0026】
二色性色素(2)としては、例えば、アゾ化合物が挙げられる。二色性色素(2)は、前記式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という。)であると好ましい。
【0027】
化合物(2)のアゾベンゼン部位の幾何異性は、トランスが好ましい。
【0028】
化合物(2)の各基の組み合わせにおいて、当該化合物(2)が上記測定で波長550~600nmの範囲に吸収極大を有するように、Ar1、Ar2及びAr3を組み合わすことで、二色性色素(2-1)として使用できる化合物(2)が定められる。具体的な二色性色素(2-1) としては、表1に各基の組み合わせで示す化合物(2)を挙げることができる。表1に各基の組み合わせを示す化合物(2-1)は、式(2)におけるnが1である場合を示す。なお、表1において、例えば、式(AR-1)で表される基などは、「(AR-1)」などと表記する。
【0029】
【表1】
[図:0001391988000010.jpg]
【0030】
続いて、化合物(2)の各基の組み合わせにおいて、当該化合物(2)が上記測定で波長600~700nmの範囲に吸収を有するように、Ar1、Ar2及びAr3を組み合わすことで、二色性色素(2-2)として使用できる化合物(2)が定められる。具体的な二色性色素(2-2)としては、表2に各基の組み合わせで示す化合物(2)を挙げることができる。表2に各基の組み合わせを示す化合物(2-2)は、式(2)におけるnが1である場合を示す。なお、表2における基の表記は、表1の場合と同じである。
【0031】
【表2】
[図:0001391988000011.jpg]
【0032】
ここで、化合物(2)を具体的に示すと、式(2-11)~式(2-39)でそれぞれ表される化合物などが挙げられる。
【0033】
[図:0001391988000012.jpg]
【0034】
[図:0001391988000013.jpg]
【0035】
[図:0001391988000014.jpg]
【0036】
[図:0001391988000015.jpg]
【0037】
[図:0001391988000016.jpg]
【0038】
ここに挙げた化合物(2)の具体例の中では、二色性色素(2-1)としては、式(2-12)、式(2-13)、式(2-18)、式(2-20)、式(2-21)、式(2-22)、式(2-23)、式(2-24)、式(2-26)、式(2-27)、式(2-28)、式(2-29)及び式(2-30)でそれぞれ表されるものが該当し、二色性色素(2-2)としては、式(2-31)、式(2-32)、式(2-33)、式(2-34)、式(2-35)及び式(2-36)でそれぞれ表されるものが該当する。なお、式(2-11)、式(2-15)及び式(2-16)でそれぞれ表されるものは波長550~700nmに吸収を示す色素では無いが、補足的に式(1)の色素と併用することができる。
【0039】
化合物(2)の具体例の中でも、偏光膜形成用組成物に含まれる二色性色素(2)としては、式(2-15)、式(2-16)、式(2-18)、式(2-20)、式(2-21)、式(2-22)、式(2-23)、式(2-27)、式(2-29)、式(2-31)、式(2-32)、式(2-33)、式(2-34)及び式(2-35)でそれぞれ表されるものがより好ましい。これらのうち、二色性色素(2)を化合物(2)の具体例から選ばれる2種以上の組み合わせで表すと、混合比率によるが、例えば、表3に示すとおりである。この表3において、例えば式(2-11)で表される化合物(2)は、「(2-11)」と表すこととする。
【0040】
【表3】
[図:0001391988000017.jpg]
・・・省略・・・
【0044】
1-2.重合性液晶化合物
重合性液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有する。重合性液晶化合物を含有する偏光膜形成用組成物は、重合性液晶化合物を配向させた状態で重合することにより、本偏光膜を形成する。重合性基はラジカル重合性基であると特に好ましい。ラジカル重合性基とは、ラジカル重合反応に関与する基を意味する。
【0045】
本発明の偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物は、ネマチック相の液晶相(以下、場合により「ネマチック液晶相」という。)を示すものであっても、スメクチック相の液晶相(以下、場合により「スメクチック液晶相」という。)を示すものであっても、ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相の両方を示すものであってもよいが、少なくともスメクチック液晶相を示す重合性スメクチック液晶化合物であると好ましい。重合性スメクチック液晶化合物を含む偏光膜形成用組成物は、二色性色素(1)及び二色性色素(2)との相互作用により、ニュートラルな色相性が極めて良好であり、より偏光性能に優れる本偏光膜が得られる。」
(ウ)「【実施例】
【0187】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0188】
本実施例においては、下記の二色性色素(1)を用いた。
【0189】
化合物(1-1)(下記(1-1)で表される化合物)の製造
[図:0001391988000018.jpg]
・・・省略・・・
【0192】
化合物(1-7)(下記(1-7)で表される化合物)の製造
[図:0001391988000019.jpg]
・・・省略・・・
【0195】
本実施例においては、下記の重合性液晶化合物を用いた。
化合物(4-6)(下記式(4-6)で表される化合物)
化合物(4-6)は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)記載の方法で合成した。
[図:0001391988000020.jpg]
・・・省略・・・
【0197】
化合物(4-8)(下記式(4-8)で表される化合物)
化合物(4-8)は、上述の化合物(4-6)の合成法を参考として合成した。
[図:0001391988000021.jpg]
・・・省略・・・
【0199】
化合物(4-22)(下記式(4-22)で表される化合物)
化合物(4-22)は、特許第4719156号記載の合成法を参考にして合成した。
[図:0001391988000022.jpg]
・・・省略・・・
【0201】
化合物(4-25)(下記式(4-25)で表される化合物)
化合物(4-25)は、特許第4719156号記載の合成法を参考に合成した。
[図:0001391988000023.jpg]
【0203】
実施例1〔偏光膜形成用組成物(A)の調製〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光膜形成用組成物(A)を得た。なお、ここで用いる二色性色素の「化合物(1-7)」とは、前記式(1-7)で表される化合物を意味し、他の二色性色素として用いる化合物もその式番号に準じる。以下も同様とする。
重合性液晶化合物;化合物(4-6) 75部
化合物(4-8) 25部
二色性色素; 化合物(1-7) 3.0部
化合物(2-17) 2.5部
化合物(2-29) 1.5部
化合物(2-32) 2.0部
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
1.2部
溶剤;トルエン 250部
【0204】
1.X線回折測定
ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向層形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向層を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。このようにして作製した配向膜上に偏光膜形成用組成物(A)をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、前記配向層上に乾燥被膜を形成した。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量2000mJ/cm2(365nm基準)で乾燥被膜に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。この際の偏光膜の厚みをレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、1.7μmであった。この偏光膜に対して、X 線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いて同様にX線回折測定を行った結果、2θ=20.2°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.17°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。また、ラビング垂直方向からの入射でも同等な結果を得た。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Å であり、高次スメクチック相を反映した構造を形成することを確認した。
【0205】
2.透明フィルム上への光配向膜の作製
透明基材としてトリアセチルセルロースフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタ(株)製)を用い、下記式(3)で表される光配向ポリマーをトルエンに5%溶解させた液をバーコート法により塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向膜を得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJの条件で行った。
[図:0001391988000024.jpg]
【0206】
3.偏光膜の作製
前記のようにして得た光配向膜付きフィルム上に、偏光膜形成用組成物(A)をバーコート法(#5 17mm/s)により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥した後、室温まで冷却した。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量2000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、1.6μmであった。かくして得られたものは、偏光膜と透明基材とを含む偏光子である。
【0207】
4.偏光度、透過率、色相の測定
偏光子の有用性を確認するため、以下のようにして視感度補正偏光度、視感度補正透過率、色度a*値、色度b*値、直交a*及び直交b*を測定した。
波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向の透過率(T1)及び吸収軸方向の透過率(T2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。下記式(式1)ならびに(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出した。また、同様に測定した単体透過率からC光源の等色関数を用いて、L*a*b*(CIE)表色系における色度a*及びb*を算出した。さらに、同様に測定した直交透過率からC光源の等色関数を用いて、L*a*b*(CIE)表色系における直交a*及び直交b*を算出した。色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*は値が0に近いほど、ニュートラルな色相であると判断できる。これらの結果を表4に示す。
単体透過率(%)= (T1+T2)/2 ・・・(式1)
偏光度(%) = (T1-T2)/(T1+T2)×100 ・・・(式2)
【0208】
実施例2
1.偏光膜の作製
バーコーターのバーのワイヤー幅ならびに塗工速度を変えた(#7 15mm/s)以外は実施例1と同様にして、偏光膜を作製した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、1.8μmであった。
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光膜の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0209】
実施例3〔偏光膜形成用組成物(B)の調製〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光膜形成用組成物(B)を得た。
重合性液晶化合物;化合物(4-22) 75部
化合物(4-25) 25部
二色性色素; 化合物(1-1) 3.0部
化合物(2-15) 2.5部
化合物(2-20) 1.2部
化合物(2-33) 2.5部
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
1.2部
溶剤;トルエン 250部
【0210】
1.偏光膜の作製
偏光膜形成用組成物(A)を偏光膜形成用組成物(B)に変え、さらにバーコーターのバーのワイヤー幅ならびに塗工速度を変えた(#5 25mm/s)以外は実施例1と同様にして、偏光膜を作製した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、1.7μmであった。
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光膜の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0211】
実施例4
1.偏光膜の作製
バーコーターのバーのワイヤー幅ならびに塗工速度を変えた(#7 20mm/s)以外は実施例3と同様にして、偏光膜を作製した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.0μmであった。
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光膜の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0212】
実施例5
1.黒色偏光膜の作製
バーコーターのバーのワイヤー幅ならびに塗工速度を変えた(#5 50mm/s)以外は実施例3と同様にして、偏光膜を作製した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.2μmであった。
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光膜の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0213】
実施例6〔偏光膜形成用組成物(C)の調製〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光膜形成用組成物(C)を得た。
重合性液晶化合物;化合物(4-6) 75部
化合物(4-8) 25部
二色性色素; 化合物(1-1) 3.6部
化合物(2-15) 3.0部
化合物(2-18) 1.5部
化合物(2-27) 2.0部
化合物(2-32) 1.5部
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
1.2部
溶剤;トルエン 250部
【0214】
1.偏光膜の作製
偏光膜形成用組成物(A)を偏光膜形成用組成物(C)に変え、さらにバーコーターのバーのワイヤー幅ならびに塗工速度を変えた(#7 20mm/s)以外は実施例1と同様にして、偏光膜を作製した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.0μmであった。
【0215】
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光膜の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0216】
実施例7
1.黒色偏光膜の作製
バーコーターのバーのワイヤー幅ならびに塗工速度を変えた(#5 50mm/s)以外は実施例6と同様にして、偏光膜を作製した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.2μmであった。
【0217】
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光膜の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0218】
比較例1
1.ヨウ素-PVA偏光板の作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が810.5/7.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、80℃で3分間乾燥して、ポリビニルアルコール樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向された偏光子を得た。
【0219】
2.偏光度、透過率、色相の測定
作製した偏光子の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)および色度a*、色度b*、直交a*及び直交b*を実施例1と同様の方法で測定した結果を表4に示す。
【0220】
【表4】
[図:0001391988000025.jpg]
【0221】
表4からわかるように、実施例1~7の偏光膜はいずれも従来のヨウ素-PVA偏光子よりも薄型であった。また、実施例1~7の偏光膜はいずれもニュートラルな色相性を示した。」
イ 引用発明
前記ア(ア)~(ウ)によると、甲1には、実施例1に係る偏光膜として、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1」という。)。
「光配向膜付きフィルム上に、下記偏光膜形成用組成物(A)をバーコート法(#5 17mm/s)により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥した後、室温まで冷却し、次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量2000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から形成された偏光膜。
偏光膜形成用組成物(A)は、下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで得たものである。
重合性液晶化合物;化合物(4-6) 75部
化合物(4-8) 25部
化合物(4-6):
[図:0001391988000026.jpg]
化合物(4-8):
[図:0001391988000027.jpg]
二色性色素; 化合物(1-7) 3.0部
化合物(2-17) 2.5部
化合物(2-29) 1.5部
化合物(2-32) 2.0部
化合物(1-7):
[図:0001391988000028.jpg]
化合物(2-17):
[図:0001391988000029.jpg]
化合物(2-29):
[図:0001391988000030.jpg]
化合物(2-32):
[図:0001391988000031.jpg]
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
1.2部
溶剤;トルエン 250部」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
(ア)引用発明1の「偏光膜」は、技術的にみて、偏光子であるといえる。
(イ)引用発明1の「偏光膜形成用組成物(A)」は、「重合性液晶化合物」及び「二色性色素」である「化合物(2-32)」を含有するところ、「化合物(2-32)」は、本件特許の請求項1に記載の「式(1)で表される化合物」に該当する。
そうすると、引用発明1の「偏光膜形成用組成物(A)」と本件特許発明1の「偏光子形成用組成物」は、「液晶性化合物と、第1の二色性物質と、を含有する偏光子形成用組成物」である点で共通する。
(ウ)引用発明1の「偏光膜」は、「偏光膜形成用組成物(A)」から形成されているといえる。
そうすると、引用発明1の「偏光膜」は、本件特許発明1の「偏光子形成用組成物から形成される」という要件を満たしている。
イ 一致点
上記アによると、本件特許発明1と引用発明1は次の点で一致する。なお、式(1)の具体的な記載は省略する。
「液晶性化合物と、第1の二色性物質と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、
前記第1の二色性物質が、式(1)で表される化合物である、偏光子。」
ウ 相違点
他方、本件特許発明1と引用発明1は次の点で相違する。なお、式(1)及び式(2)の具体的な記載は省略する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「偏光子形成用組成物」が「下記条件を満たす、第1の二色性物質および第2の二色性物質の各1種と、を含有し」、「前記第2の二色性物質が、式(2)で表される化合物であり」、「前記第1の二色性物質の1種と前記第2の二色性物質の1種から形成された配列構造を有し、前記第1の二色性物質の1種および前記第2の二色性物質の1種のうち、一方の二色性物質が単独で配列する構造中に、他方の二色性物質が入り込んだ際のエネルギー的な損失を表す安定化エネルギーが、72kcal/mol未満であ」り、「条件:式(1)におけるR1のlogP値と、式(2)におけるR4のlogP値と、の差の絶対値が、2.30以下である」のに対し、引用発明1は、そのような構成を有していない点。
エ 判断
相違点について検討する。
(ア)相違点1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲1に記載された引用発明1であるということはできない。
(イ)甲1には、相違点1に係る構成のうち、特に、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを組み合わせる構成自体が、以下に示すように記載されていない。
すなわち、甲1の【0039】には「化合物(2)の具体例の中でも、偏光膜形成用組成物に含まれる二色性色素(2)としては、式(2-15)、式(2-16)、式(2-18)、式(2-20)、式(2-21)、式(2-22)、式(2-23)、式(2-27)、式(2-29)、式(2-31)、式(2-32)、式(2-33)、式(2-34)及び式(2-35)でそれぞれ表されるものがより好ましい。これらのうち、二色性色素(2)を化合物(2)の具体例から選ばれる2種以上の組み合わせで表すと、混合比率によるが、例えば、表3に示すとおりである。この表3において、例えば式(2-11)で表される化合物(2)は、「(2-11)」と表すこととする。」と記載され、また、【0040】【表3】には化合物(2)の組み合わせが記載されているにとどまり、本件特許の請求項1に記載の「式(1)で表される化合物」に含まれる「化合物(2-32)」又は「化合物(2-33)」と本件特許の請求項1に記載の「式(2)で表される化合物」に含まれる「化合物(2-23)」又は「化合物(2-24)」との組み合わせまでは記載されていない。
また、甲1の【0038】には「ここに挙げた化合物(2)の具体例の中では、二色性色素(2-1)としては、式(2-12)、式(2-13)、式(2-18)、式(2-20)、式(2-21)、式(2-22)、式(2-23)、式(2-24)、式(2-26)、式(2-27)、式(2-28)、式(2-29)及び式(2-30)でそれぞれ表されるものが該当し、二色性色素(2-2)としては、式(2-31)、式(2-32)、式(2-33)、式(2-34)、式(2-35)及び式(2-36)でそれぞれ表されるものが該当する」と記載され、「化合物(2-23)」又は「化合物(2-24)」が含まれる二色性色素(2-1)の化合物と「化合物(2-32)」又は「化合物(2-33)」が含まれる二色性色素(2-2)化合物を組み合わせることが示唆されているが、二色性色素(2-1)には本件特許の請求項1に記載の「式(2)で表される化合物」に該当しない化合物が含まれ、二色性色素(2-2)には本件特許の請求項1に記載の「式(1)で表される化合物」に該当しない化合物が含まれているし、また、甲1には、二色性色素(2-1)に含まれる多数の化合物及び二色性色素(2-2)に含まれる多数の化合物から、どの化合物を選択し、組み合わせるのかを示す手がかりは記載されていない。
さらに、甲1には、二色性色素(2)に含まれる多数の化合物から、偏光膜の配向度を高くするために、特定の化合物を選択し、組み合わせること及びその効果(本件特許発明1の配向度が高くなるという効果)が記載されていないから、当該効果は、本件特許の先の出願時に本件特許発明1の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものであるということはできない。
加えて、上記組み合わること及びその効果について、特許異議申立人が提出した甲第2号証~甲第3号証及び他の証拠も発見できない。
以上総合すると、「安定化エネルギー」及び「条件」について検討するまでもなく、引用発明1において、相違点1に係る本件特許発明1の構成に至ることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。
オ 引用発明1以外の甲1に記載された発明を主引用発明として検討しても、前記エ(イ)での判断と同様である。
カ 令和4年8月25日付け意見書における特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、令和4年8月25日付け意見書2~3頁」において、「甲第1号証に化合物の具体的な選択肢として当該化合物((2-32)、(2-33)、(2-23)、(2-24))が記載されていることは事実なのであるから、この状況で訂正発明1に新規性及び進歩性が認められるためには、訂正発明1が有利な効果を奏することが認められて然るべきである。この点、訂正発明1には有利な効果(例えば、際だって優れた効果、異質な効果、出願時の技術水準からみて当業者が予測できなかったほどの効果)を奏することは認められない。・・・第2の二色性物質として訂正発明1の範囲内にある化合物を使用したとしても、その範囲を外れている化合物を使用した場合(実施例30及び実施例31)と比べて際立って優れているということはできない。・・・比較例1及び比較例2の結果である低い配向度は、化合物O16及びO17を使用したこと自体による効果ではなく、その含有量を高めたことによる効果であるといえる。」と主張する。
(イ)しかしながら、進歩性の判断における有利な効果の参酌は、本件出願時において本件特許発明の効果が本件特許発明の構成から当業者が予測し得る範囲内のものであるか、その効果の程度が顕著なものであるかを検討することによって行うべきものである。
したがって、特許異議申立人が主張する、本件特許発明の効果と、本件出願の明細書に開示された参考例(実施例30及び31のように、当初は実施例とされていたが現在は実施例とされていない例)や比較例の効果とを対比することを前提とした判断手法自体、誤りというほかなく、特許異議申立人の主張は採用できない。
キ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び特許異議申立人が提出した甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3)本件特許発明2~9及び11~12について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~9及び11~12は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~9及び11~12は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、前記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び特許異議申立人が提出した甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない以上、本件特許発明2~9及び11~12も、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び特許異議申立人が提出した甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人は、特許異議申立書26頁において、「本件特許発明を実施するためには、任意の二つの二色性物質を選択して「安定化エネルギー」をその都度計算し(例えば本件特許明細書の段落【0087】の方法で)、安定化エネルギーが72kcal/mol未満になるか否かを確認しなければならない。このような作業は、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を必要とするものである。したがって、本件特許明細書は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない」と主張し、取消しの理由として、実施可能要件(特許法第36条4項1号)違反を挙げている。
2 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件(特許法第36条4項1号)を満たすか否かは、物の発明について実施をすることができるとは、その物を作れ、かつ、その物を使用できることであることに鑑みて、(1)「物の発明」について明確に説明されていること、(2)「その物を作れる」ように記載されていること、(3)「その物を使用できる」ように記載されていること、という要件を満たすか否かによって判断される。
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、ひとたび第1の二色性物質及び第2の二色性物質が決まれば、【0087】に記載された方法により、試行錯誤なく安定化エネルギーを算出することができ、前記(1)~(3)の要件を満たすように記載されているといえる。
したがって、特許異議申立人が主張する上記取消しの理由は採用できない。
第7 むすび
1 請求項1~9及び11~12に係る特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9及び11~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
2 本件特許の請求項10は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、本件特許の請求項10に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700392