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特許異議申立

2021-700308

加熱装置及びガラス供給管

審判番号
2021-700308
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-229068
登録番号
特許第6765638号(P6765638)
請求日
2021年03月26日
審決日
2021年06月01日
公報発行日
2021年07月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本電気硝子株式会社
  • 【異議申立人】金澤 毅
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 大光 太朗
分類
P1651.121-Y (C03B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6765638号発明「加熱装置及びガラス供給管」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6765638号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6765638号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年11月25日に出願され、令和 2年 9月18日にその特許権の設定登録がされ、同年10月 7日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、令和 3年 3月26日付けで、特許異議申立人 金澤 毅(以下、「申立人」という。)により甲第1~5号証及び参考文献を証拠方法として特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 溶融ガラスを移送するガラス供給管の外周に設けられるフランジ部と、前記フランジ部と一体に構成される電極部と、前記フランジ部を冷却する冷却路と、を備える加熱装置において、 前記冷却路の少なくとも外面は、Ni 50.0~95.0質量%を含む金属により構成され、 前記冷却路は、筒部と、前記筒部の外面を被覆する膜部と、を備え、前記膜部は、前記金属により構成されることを特徴とする、加熱装置。 【請求項2】 前記金属は、Fe,Cr,Nb,Moのうち少なくとも一種を含む合金により構成される、請求項1に記載の加熱装置。 【請求項3】 前記膜部は、蒸着膜または溶射膜である、請求項1又は2に記載の加熱装置。 【請求項4】 前記筒部は、Cu 90質量%以上を含む金属により構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱装置。 【請求項5】 溶融ガラスを移送する金属製の管本体と、請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱装置とを備え、前記管本体の外周に前記フランジ部が設けられてなることを特徴とする、ガラス供給管。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 各甲号証 甲第1号証:特開2011-173787号公報 甲第2号証: 佐藤 廣士ら,「非鉄材料」,材料と環境,平成16年 4月15日,第53巻第4号,社団法人腐食防食協会,p.178-184 甲第3号証: 清水 保雄,「溶射皮膜の特性 -機械的,化学的,物理的特性-」,表面技術,平成 2年10月 1日,Vol.41No.10,社団法人表面技術協会,p.968-973 甲第4号証:特表2011-513173号公報 甲第5号証:特表2010-523457号公報 参考文献:特許第6765638号公報(本件特許公報) 2 特許法第29条第2項所定の規定違反について 本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願日当時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された事項及び本件特許出願日当時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証に記載された事項及び本件特許出願日当時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第2項所定の規定違反についての検討 (1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には以下(1a)~(1e)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶融材料を加熱するための装置において、 導電性外壁部分を有する容器と; 前記容器の外周で該容器に接続された導電性フランジであって、少なくとも、第1の組成を有する第1の環および該第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の環を含む複数の環を備えたフランジと; 前記フランジから延在する電極と; を有してなり、 前記第1または第2の環の内の少なくとも一方の幅が、前記容器に対する角度位置の関数として変動することを特徴とする装置。」 (1b)「【0028】 図2は、直接抵抗加熱システムの一部を例示しており、電流を外壁34に供給する2つのフランジ36が取り付けられた外壁34を有する例示の金属容器(例えば、管)、ここでは、溶融装置から清澄装置への接続管16を示している。管16は、直接加熱の例示の使用を表しており、フランジ36は、清澄装置18などの、溶融ガラスを保持または搬送するのに利用される任意の他の導電性金属容器に使用しても差し支えないことが理解されよう。 … 【0030】 図2によれば、電流は第1のフランジに供給される。この電流は、第1のフランジを通り、容器の壁に入り、第1のフランジから間隔がおかれた第2のフランジを通して出る。フランジ間の距離は、容器に与えられる加熱要件により決まり、当業者によって容易に決定される。管の壁を流れる電流により、管とその中を搬送される溶融ガラスが加熱される。…。 【0031】 図3は、図2の1つのフランジ36の実施の形態の構造をより詳しく示している。図に示すように、フランジ36は2つの環38,40を備えており、ここで、最も内側の環38は、少なくとも80質量%の白金を含み、残りは、もしあれば、ロジウムまたはイリジウムの内の1つ以上である高温抵抗金属(すなわち、ここに用いたように、少なくとも1400℃、好ましくは少なくとも1500℃、より好ましくは少なくとも1600℃より高い温度で動作できる金属)から形成されている。一例として、最も内側の環38は90質量%の白金および10質量%のロジウムからなっていて差し支えない。 【0032】 フランジ36の温度は溶融ガラス搬送管から増加する半径位置の関数として減少するので、最も外側の環の材料に要求される温度抵抗は、最も内側の環の材料に要求されるものほど高くない。それゆえ、費用を節約するために、最も外側の環40は、一般に、高い溶融温度を有するが、フランジの内側環の白金含有材料よりも著しく安い材料から製造される。ある実施の形態によれば、フランジ36の最も外側の環40は、白金および白金合金と比較して低コストで容易に入手できる、ニッケル200またはニッケル201などの工業的に純粋なニッケル(例えば、少なくとも99.0質量%のニッケル)から形成される。電力フランジに使用される場合、ニッケルは、他の高温材料では対抗できない、電気抵抗、熱伝導性、酸化抵抗、白金とロジウムとの可溶性、加工性、価格、および多くの形状と形態での入手可能性の優れた組合せを提供する。 … 【0040】 環38および40に加え、図3および4のフランジは、好ましは外側の環40と同じ材料から製造された、管の形態にある冷却通路44を備えているが、この冷却管は、異なる材料から製造されても差し支えない。ある実施の形態において、冷却管44は、少なくとも99.0質量%のニッケルを含む。この冷却管は、電流源(図示せず)に電気的に接続されており、典型的に、最も外側の環40の外周で最も外側の環40に接合されている。… … 【0042】 電力フランジの上述した構成部材にニッケルを使用すると、冷却水の流れにおける一時的な停止に耐えるフランジの能力が著しく改善されることが分かった。特に、フランジは、冷却流体の流れが中断された場合、フランジが数日間に亘り動作可能のままでいるほど高いレベルの酸化抵抗を示す。ニッケル含有フランジの優れた酸化抵抗は、白金部品を損失せずに、それゆえ、容器を通るガラスの流れを中断する必要なく、冷却流を復旧するための十分な時間を与える。」 (1c)「【図2】 」 (1d)「【図3】 」 (1e)「【図4】 」 イ 前記ア(1a)~(1e)によれば、甲第1号証には「溶融材料を加熱するための装置」が記載されており、当該「溶融材料を加熱するための装置」は、導電性外壁部分を有する容器と;前記容器の外周で該容器に接続された導電性フランジであって、少なくとも、第1の組成を有する第1の環および該第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の環を含む複数の環を備えたフランジと;前記フランジから延在する電極と;を有してなり、前記第1または第2の環の内の少なくとも一方の幅が、前記容器に対する角度位置の関数として変動するものである。 すなわち、前記「溶融材料を加熱するための装置」は、電流を外壁に供給する2つのフランジが取り付けられた外壁を有する金属容器(例えば、管)を有し、電流は第1のフランジに供給され、この電流は、第1のフランジを通り、容器の壁に入り、第1のフランジから間隔がおかれた第2のフランジを通して出るものであり、管の壁を流れる電流により、管とその中を搬送される溶融ガラスが加熱されるものである。 また、フランジは2つの環を備えており、ここで、最も内側の環は、少なくとも80質量%の白金を含み、残りは、もしあれば、ロジウムまたはイリジウムの内の1つ以上である高温抵抗金属から形成されているものであり、フランジの温度は溶融ガラス搬送管から増加する半径位置の関数として減少するので、最も外側の環の材料に要求される温度抵抗は、最も内側の環の材料に要求されるものほど高くなく、それゆえ、費用を節約するために、最も外側の環は、一般に、高い溶融温度を有するが、フランジの内側環の白金含有材料よりも著しく安い材料から製造されるものであり、ある実施の形態によれば、フランジの最も外側の環は、白金および白金合金と比較して低コストで容易に入手できる、ニッケル200またはニッケル201などの工業的に純粋なニッケル(例えば、少なくとも99.0質量%のニッケル)から形成されるものである。 更に、環に加え、フランジは、外側の環と同じ材料から製造された、管の形態にある冷却通路を備えているものであり、この冷却管は、少なくとも99.0質量%のニッケルを含み、電流源に電気的に接続されており、典型的に、最も外側の環の外周で最も外側の環に接合されているものである。 ウ 前記イによれば、甲第1号証には、 「導電性外壁部分を有する容器と; 前記容器の外周で該容器に接続された導電性フランジであって、少なくとも、第1の組成を有する第1の環および該第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の環を含む複数の環を備えたフランジと; 前記フランジから延在する電極と; を有してなり、 前記第1または第2の環の内の少なくとも一方の幅が、前記容器に対する角度位置の関数として変動する、溶融材料を加熱するための装置であって、 電流を外壁に供給する2つのフランジが取り付けられた外壁を有する金属容器(例えば、管)を有し、電流は第1のフランジに供給され、この電流は、第1のフランジを通り、容器の壁に入り、第1のフランジから間隔がおかれた第2のフランジを通して出るものであり、管の壁を流れる電流により、管とその中を搬送される溶融ガラスが加熱されるものであり、 フランジは2つの環を備えており、ここで、最も内側の環は、少なくとも80質量%の白金を含み、残りは、もしあれば、ロジウムまたはイリジウムの内の1つ以上である高温抵抗金属から形成されているものであり、フランジの温度は溶融ガラス搬送管から増加する半径位置の関数として減少するので、最も外側の環の材料に要求される温度抵抗は、最も内側の環の材料に要求されるものほど高くなく、それゆえ、費用を節約するために、最も外側の環は、一般に、高い溶融温度を有するが、フランジの内側環の白金含有材料よりも著しく安い材料から製造されるものであり、ある実施の形態によれば、フランジの最も外側の環は、白金および白金合金と比較して低コストで容易に入手できる、ニッケル200またはニッケル201などの工業的に純粋なニッケル(例えば、少なくとも99.0質量%のニッケル)から形成されるものであり、 更に、環に加え、フランジは、外側の環と同じ材料から製造された、管の形態にある冷却通路を備えているものであり、この冷却管は、少なくとも99.0質量%のニッケルを含み、電流源に電気的に接続されており、典型的に、最も外側の環の外周で最も外側の環に接合されている、溶融材料を加熱するための装置。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)本件発明1についての対比・判断 ア 対比 (ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「導電性外壁部分を有する容器」、「前記容器の外周で該容器に接続された導電性フランジ」、「前記フランジから延在する電極」、「管の形態にある冷却通路」及び「溶融材料を加熱するための装置」は、それぞれ、本件発明1における「溶融ガラスを移送するガラス供給管」、「溶融ガラスを移送するガラス供給管の外周に設けられるフランジ部」、「前記フランジ部と一体に構成される電極部」、「前記フランジ部を冷却する冷却路」及び「加熱装置」に相当する。 また、甲1発明において「冷却通路」が「管の形態にある」ことは、本件発明1において「冷却路は、筒部」「を備え」ることに相当する。 (イ)前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「溶融ガラスを移送するガラス供給管の外周に設けられるフランジ部と、前記フランジ部と一体に構成される電極部と、前記フランジ部を冷却する冷却路と、を備える加熱装置において、 前記冷却路は、筒部を備える、加熱装置。」 の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 ・相違点:本件発明1は、「加熱装置」が、「冷却路の少なくとも外面は、Ni 50.0~95.0質量%を含む金属により構成され」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「加熱装置」の「冷却路」が、「少なくとも99.0質量%のニッケルを含」むものである点。 イ 判断 (ア)以下、前記ア(イ)の相違点について検討すると、甲第2号証(180頁左欄3行~右欄1行)には、ニッケル及びニッケル基合金は、古くより、石油化学をはじめとする各種の化学プラント用の耐食材料などとして広く用いられ、ニッケル基合金は、Ni-Cu合金(モネル系)、Ni-Cr-Fe合金(インコネル系)、Ni-Mo合金(ハステロイB系)、Ni-Mo-Cr合金(ハステロイC系)などに分類され、用途に応じて使い分けされてきたことが記載され、甲第3号証(971頁左欄下から3行~右欄1行)には、自然環境よりも条件の過酷な化学工業の分野で防錆・防食溶射事例として、耐食性に優れるNi-Cr合金、ハステロイ、インコネル、モネルなどが溶射されて目的を果たしていることが記載されていることから、耐食材料として、Ni-Cr合金、ハステロイ、インコネル、モネルなどのニッケル基合金が知られていることは、本件特許の出願日当時における周知技術といえる。 また、甲第5号証(【0033】)には、LCDガラスの製造に清澄剤として酸化スズ(SnO2)を用いる場合、ハロゲン化物による清澄、例えば、臭素による清澄と組み合わせても差し支えないこと、及び、実際に米国特許第6468933号には、清澄剤としてSnO2と塩化物の形態にあるハロゲン化物含有化合物との混合物を利用したガラス成形プロセスが記載されていることがそれぞれ記載されていることから、ハロゲン化物は腐食性を有する物質であることを理解することができる。 (イ)ところが、甲1発明は、「フランジ部」の「冷却路」が、「フランジ部」の外側の環と同じ、「少なくとも99.0質量%のニッケルを含」む材料から形成されるものであって、前記(1)ア(1b)(【0042】)によれば、電力フランジの構成部材に当該ニッケルを使用するのは、冷却水の流れにおける一時的な停止に耐えるフランジの能力が著しく改善され、ニッケル含有フランジの優れた酸化抵抗は、白金部品を損失せずに、それゆえ、容器を通るガラスの流れを中断する必要なく、冷却流を復旧するための十分な時間を与える、という優れた特性の発現を期待してのことと解される。 そうすると、仮に、耐食材料としてNi-Cr合金、ハステロイ、インコネル、モネルなどのニッケル基合金が知られていること、及び、LCDガラスの製造に清澄剤として酸化スズ(SnO2)を用いる場合、腐食性の物質であるハロゲン化物による清澄と組み合わせても差し支えないことが、本件特許の出願日当時の周知技術であるとしても、そもそも、甲1発明において、「加熱装置」の「冷却路」を、前記の優れた特性が期待される「少なくとも99.0質量%のニッケルを含」む材料に代えて、「Ni 50.0~95.0質量%を含む金属により構成」する動機付けは存在しないというべきである。 (ウ)前記(イ)によれば、当業者は、本件特許の出願日当時の周知技術に関わらず、甲1発明に係る「加熱装置」の「冷却路」を、「Ni 50.0~95.0質量%を含む金属により構成」することを容易になし得るものではないから、甲1発明において、「加熱装置」を、「冷却路の少なくとも外面は、Ni 50.0~95.0質量%を含む金属により構成され」る、との前記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて容易になし得るものではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲1発明及び本件特許出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)本件発明2~5についての対比・判断 ア 本件発明2~5は、いずれも、直接的または間接的に本件発明1を引用するものであり、本件発明2~5と甲1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、前記(2)ア(イ)の相違点において相違する。 イ そして、前記(2)イ(イ)に記載した事項は、甲第1、4号証に記載された事項にも左右されないから、前記(2)イ(ウ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5は、甲1発明、甲第1、4号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 小括 したがって、本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明、甲第1及び4号証に記載された事項及び本件特許出願日当時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第3の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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