特許異議申立
2021-700028
大型ユニフロー掃気式2サイクルガス燃料エンジン及び大型ユニフロー掃気式2サイクルガス燃料エンジンの動作方法
- 審判番号
- 2021-700028
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-174493
- 登録番号
- 6721647
- 請求日
- 2021年01月14日
- 審決日
- 2022年04月26日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
- 【権利者代理人】川守田 光紀
- 【異議申立人】土田 裕介
- 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
- 【異議申立人代理人】黒木 義樹
- 【異議申立人代理人】小松 秀輝
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 山本 信平
- 分類
- P1651.121-YAA(F02D) / P1651.537-YAA(F02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第150条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6721647号発明「大型ユニフロー掃気式2サイクルガス燃料エンジン及び大型ユニフロー掃気式2サイクルガス燃料エンジンの動作方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6721647号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~19〕について訂正することを認める。
特許第6721647号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6721647号の請求項1~19に係る特許についての出願は、2018年9月19日(パリ条約による優先権主張2017年9月19日 デンマーク)の出願であって、令和2年6月22日に特許権の設定登録がされ、令和2年7月15日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年1月14日:特許異議申立人土田裕介(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和3年6月10日付け:取消理由通知書
令和3年8月16日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年10月8日:申立人による意見書の提出
令和3年11月4日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年1月27日:特許権者による意見書の提出
令和4年2月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年3月9日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和3年8月16日提出の訂正請求書は、令和4年3月9日に訂正請求書が提出されたので、特許法第150条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和4年3月9日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6721647号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は当審で付した。
(訂正事項1)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、 シリンダカバー(22)に配置された少なくとも1つの排気弁(4)と、 ガス燃料を燃焼室内に噴射する、シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、
前記シリンダライナ(1)の前記燃料弁(30)への、加圧ガス燃料供給部(40)及び加圧排ガス供給部(44)の両方と、
を備えたガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンであって、
前記少なくとも1つの燃料弁(30)によって前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高めるために、前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方を前記少なくとも1つの燃料弁(30)を介して同時に前記燃焼室内に噴射するように構成され、
前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始され、または、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前に開始される、
ことを特徴とする内燃エンジン。」とあるのを、
「シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、 シリンダカバー(22)に配置された少なくとも1つの排気弁(4)と、 ガス燃料を燃焼室内に噴射する、シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、
前記シリンダライナ(1)の前記燃料弁(30)への、加圧ガス燃料供給部(40)及び加圧排ガス供給部(44)の両方と、
を備えたガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンであって、
前記少なくとも1つの燃料弁(30)によって前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高めるために、前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方を前記少なくとも1つの燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射するように構成され、
前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始される、
ことを特徴とする内燃エンジン。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2~16についても同様に訂正する。)
(訂正事項2)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1乃至4のいずれか1つに記載のエンジン」とあるのを、
「請求項1、2、4のいずれか1つに記載のエンジン」に訂正する。(請求項5を引用する請求項8~16についても同様に訂正する。)
(訂正事項3)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「前記少なくとも1つの噴射弁(30)のノズル」とあるのを、
「前記少なくとも1つの噴射弁(30)の噴射ノズル」に訂正する。(請求項6を引用する請求項7~16についても同様に訂正する。)
(訂正事項4)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に
「前記少なくとも1つの燃料弁(30)は1つ以上の噴射ノズル(39)を有する、
請求項1乃至9のいずれか1つに記載のエンジン。」とあるのを、
「前記少なくとも1つの燃料弁(30)は噴射ノズル(39)を1つ有する、
請求項1乃至3、6、7のいずれか1つ、又は請求項5、8、9のうち請求項4を直接にも間接にも引用しない請求項のいずれか1つに記載のエンジン。」に訂正する。(請求項10を引用する請求項11~16についても同様に訂正する。)
(訂正事項5)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項17に
「ガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンにおいて、燃焼室内でガス燃料と掃気との混合を促進することによってノッキングを低減する方法であって、前記エンジンは、
シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
前記シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、
前記シリンダカバー(22)に配置された排気弁(4)と、
ガス燃料、および、排ガスを前記燃焼室内に噴射する、前記シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、を備え
前記方法は、圧縮ガス燃料、および、加圧された排ガスを前記シリンダカバー内の前記燃料弁(30)に供給し、前記ピストン(10)がシリンダカバー(22)に向かう行程の間に、前記圧縮ガス燃料、および、前記加圧された排ガスを前記燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射し、前記燃料バルブ(30)が燃料噴射中に前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高める工程を含み、
前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始され、または、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前に開始される、
ことを特徴とする方法。」とあるのを、
「ガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンにおいて、燃焼室内でガス燃料と掃気との混合を促進することによってノッキングを低減する方法であって、前記エンジンは、
シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
前記シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、
前記シリンダカバー(22)に配置された排気弁(4)と、
ガス燃料、および、排ガスを前記燃焼室内に噴射する、前記シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、を備え
前記方法は、圧縮ガス燃料、および、加圧された排ガスを前記シリンダカバー内の前記燃料弁(30)に供給し、前記ピストン(10)がシリンダカバー(22)に向かう行程の間に、前記圧縮ガス燃料、および、前記加圧された排ガスを前記燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射し、前記燃料バルブ(30)が燃料噴射中に前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高める工程を含み、
前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始される、
ことを特徴とする方法。」に訂正する。(請求項17を引用する請求項18及び19についても同様に訂正する。)
ここで、訂正前の請求項1~16は、請求項2~16が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正前の請求項17~19は、請求項18及び19が、訂正の請求の対象である請求項17の記載を直接引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~16〕、〔17~19〕について請求されている。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、請求項1において、「燃料弁(30)」について、「高速で」噴射するものに限定し、本件訂正前の「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始され、または、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前に開始される」ことについて、「前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前に開始される」ものを削除し、「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始され」るものに限定するから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、特許明細書の【0020】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、請求項5において、引用する請求項から、請求項3を引用するものを削除するから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
上記訂正事項3は、請求項6において、「ノズル」を「噴射ノズル」と訂正することで、請求項10の「噴射ノズル」と記載を整合させ、明瞭とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
上記訂正事項4は、請求項10において、「1つの燃料弁(30)」について、「噴射ノズル(39)を1つ有する」ものに限定し、引用する請求項から実質的に請求項4を直接にも間接にも引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項4は、特許明細書の【0058】~【0060】、【図7】、【図8】等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
上記訂正事項5は、請求項17において、本件訂正前の「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始され、または、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前に開始される」ことについて、「または、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前に開始され」るものを削除し、「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始され」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~19〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~19に係る発明(以下「本件発明1~19」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、
シリンダカバー(22)に配置された少なくとも1つの排気弁(4)と、
ガス燃料を燃焼室内に噴射する、シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、
前記シリンダライナ(1)の前記燃料弁(30)への、加圧ガス燃料供給部(40)及び加圧排ガス供給部(44)の両方と、
を備えたガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンであって、
前記少なくとも1つの燃料弁(30)によって前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高めるために、前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方を前記少なくとも1つの燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射するように構成され、
前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始される、
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項2】
前記ガス燃料、および、前記排ガスが混合ガスとして、前記少なくとも1つの燃料弁(30)から前記燃焼室内に同時に噴射される、
請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記ガス燃料、および、前記排ガスが前記少なくとも1つの燃料弁(30)の内部で混合される、
請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記ガス燃料、および、前記排ガスが前記少なくとも1つの燃料弁(30)の上流で混合される、
請求項2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記少なくとも1つの燃料弁(30)への、前記排ガス用と前記ガス燃料用との共通の供給ライン(42)を備える、
請求項1、2、4のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項6】
前記ガス燃料、および、前記排ガスが前記少なくとも1つの燃料弁(30)の噴射ノズルのノズル孔から同時に噴射される、
請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記排ガス用の、前記加圧された排ガスの供給部(44)から前記少なくとも1つの燃料弁(30)への供給ライン(45)と、前記ガス燃料用の、前記圧縮ガス燃料の供給部(40)から前記少なくとも1つの燃料弁(30)への供給ライン(41)とを別々に備える、
請求項1乃至3または6のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項8】
前記ガス燃料と同時に噴射される排ガスの量を調整するように構成された制御装置を備える、
請求項1乃至7のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項9】
シリンダライナ(1)の外周に周方向に分散された前記少なくとも1つの燃料弁(30)を複数備える
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項10】
前記少なくとも1つの燃料弁(30)は噴射ノズル(39)を1つ有する、
請求項1乃至3、6、7のいずれか1つ、又は請求項5、8、9のうち請求項4を直接にも間接にも引用しない請求項のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項11】
前記少なくとも1つの燃料弁(30)は、前記圧縮ガス燃料の供給部(40)に接続された第1の吸気口と、前記加圧された排ガスの供給部(44)に接続された第2の吸気口とを備える、
請求項10に記載のエンジン。
【請求項12】
前記少なくとも1つの燃料弁(30)は、前記燃料弁(30)の内部に前記ガス燃料、および、前記排ガスを混合する機構(33)を備える
請求項11に記載のエンジン。
【請求項13】
上死点または上死点の近傍で、点火を開始する点火システムを有する
請求項1乃至12のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項14】
前記エンジンはノッキングセンサを有し、付加される排ガスの量は前記ノッキングセンサからの信号に応じて調整される、
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項15】
前記ノッキングセンサによってノッキングが検出されると、噴射される排ガスの質量を増加するように構成された、
請求項14に記載のエンジン。
【請求項16】
所定の時間または所定のエンジン回転数の間、前記ノッキングセンサによってノッキングが検出されないと、噴射される排ガスの質量を減少するように構成された、
請求項15に記載のエンジン。
【請求項17】
ガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンにおいて、燃焼室内でガス燃料と掃気との混合を促進することによってノッキングを低減する方法であって、前記エンジンは、
シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
前記シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、
前記シリンダカバー(22)に配置された排気弁(4)と、
ガス燃料、および、排ガスを前記燃焼室内に噴射する、前記シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、を備え
前記方法は、圧縮ガス燃料、および、加圧された排ガスを前記シリンダカバー内の前記燃料弁(30)に供給し、前記ピストン(10)がシリンダカバー(22)に向かう行程の間に、前記圧縮ガス燃料、および、前記加圧された排ガスを前記燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射し、前記燃料バルブ(30)が燃料噴射中に前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高める工程を含み、
前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始される、
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記排ガスは、エンジン負荷が前記エンジンの最大連続定格の60%を超える場合のみに噴射される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記排ガスは、エンジン負荷が前記エンジンの最大連続定格の70%を超える場合のみに噴射される、
請求項17に記載の方法。」
第4 当審の判断
1 令和4年2月22日付け取消理由(決定の予告)の概要
令和4年2月22日付け取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項10の「請求項1乃至9のうち請求項4を引用しない請求項」とは、引用する請求項が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また、請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11~16も同様である。
2 令和4年2月22日付け取消理由(決定の予告)についての判断
特許請求の範囲の請求項10~16に係る発明は、本件訂正により、明確となった。
3 令和3年11月4日付け取消理由(決定の予告)の概要
令和3年11月4日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下の理由を含む。
(進歩性)本件特許の本件発明1~19は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の項第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第5号証に記載された事項に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等>
甲第1号証:特開2014-74342号公報
甲第2号証:特開2012-233471号公報
甲第3号証:森吉 泰生、‘火花点火機関におけるノッキング及びプレイグニッション克服への課題’、日本燃焼学会誌、2012年、第54巻、170号、p.237-242
甲第4号証:野田 徹 他3名、‘化学素反応モデルを適用した0次元エンジンサイクルシミュレーションによるノッキング予測’、日本機械学会論文集(B編)、2004年6月、70巻、694号、p.253~260
甲第5号証:宮坂 智海 他4名、‘外部EGRが過給SI機関におけるノッキング現象の研究’、The Japan Society of Mechanical Engineers 山梨講演会講演論文集、2014年10月18日、p.133~134
甲第6号証:特開2012-154188号公報
4 令和3年11月4日付け取消理由(決定の予告)についての判断
(1)本件発明1の進歩性について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、掃気ポートから吸入された活性ガスに燃料ガスを噴射して生成される予混合気を燃焼させるユニフロー掃気式2サイクルエンジンに関する。」
・「【0006】
上記のように燃料ガスの噴射時間が制限されると、その短期間で多量の燃料ガスを噴射しなければならなくなり、活性ガスと十分に混合せず、局所的に燃料ガスの濃度が高い部分が生じることとなる。かかる状況下では、ノッキングや過早着火等の異常燃焼が生じて正常な運転が困難になるおそれがある。」
・「【0018】
図1は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の全体構成を示す説明図である。
本実施形態のユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、例えば、船舶等に用いられる。具体的に、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、シリンダ110(シリンダヘッド110a、シリンダブロック110b)と、ピストン112と、パイロット噴射弁114と、排気ポート116と、排気弁駆動機構118と、排気弁120と、掃気ポート122と、掃気室124と、燃料噴射ポート126と、燃料噴射弁128と、ロータリエンコーダ130と、吹抜検知部132と、燃焼室140とを含んで構成され、ガバナー(調速機)150、燃料噴射制御部152、排気制御部154等の制御部によって制御される。」
・「【0023】
燃料噴射ポート126は、シリンダ110内周面(排気ポート116と掃気ポート122との間)において、略周方向(厳密な周方向のみならず、ストローク方向への変位を許容する)に所定の間隔を空けて設けられた複数の開口部である。
【0024】
燃料噴射弁128は、各燃料噴射ポート126内に配置され、
燃料噴射制御部152からの指令を受けて、例えば、LNG(液化天然ガス)をガス化した燃料ガスを噴射する。こうしてシリンダ110内に燃料ガスが供給される。また、燃料ガスは、LNGに限らず、例えば、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油等をガス化したものを適用することもできる。」
・「【0032】
そして、ピストン112が下死点から上死点に向けて上昇すると、掃気ポート122が閉口され、活性ガス172の吸入が停止される。このとき、排気制御部154は、排気弁120を開弁状態に維持しており、ピストン112の上昇によって、引き続き、燃焼室140(シリンダ110内)の排気ガス170は、排気ポート116から排出される。
【0033】
そして、活性ガス172の吸入に伴う排気ガス170と活性ガス172との境界が、図2(c)の如く、燃料噴射ポート126に達すると、燃料噴射制御部152は、ガバナー150から入力された燃料噴射量を示す情報や、ロータリエンコーダ130からのクランク角度信号によって導出されるエンジン回転数等に基づいて、燃料噴射弁128からシリンダ110内に燃料ガス174の噴射を開始させる。
【0034】
これにより、掃気ポート122から吸入された活性ガス172に燃料ガス174が噴射され、燃焼室140(シリンダ110内)に予混合気が生成される。この時、排気弁120は開放された状態を維持しており、シリンダ110内の圧力はまだ低い状態であるため、燃料噴射弁128に高い圧力をかけなくとも(低圧でも)、燃料噴射弁128は、適切に燃料ガス174を噴射することができる。」
・「【0037】
燃料噴射制御部152は、燃料噴射弁128を通じて燃料ガス174を噴射し続け、図2(e)で示したように、ピストン112が燃料噴射ポート126に達する前に、燃料ガス174の噴射を停止する。このように、燃料噴射制御部152による燃料ガス174の噴射が一通り完了した後、圧縮過程を経て予混合気176は高圧に圧縮され、さらに、パイロット噴射弁114からのディーゼル燃料油の噴射に基づいて予混合気176が着火されて、図2(f)のように予混合気176が燃焼される。そして、燃焼によりピストン112が押し下げられると図2(a)の状態に戻り、以後、膨張、排気、吸気、圧縮、燃焼過程が繰り返される。
【0038】
排気過程において排気ガス170の滞留を避け、排気ガス170を燃焼室140から確実に排出しようとすると、排気弁120の閉弁タイミングはできるだけ遅らせるのが望ましい。しかし、排気弁120の閉弁タイミングを単に遅らせると、予混合気176が吹き抜け、燃焼室140の圧力を高めることができず、エンジンの出力を低下させることになる。また、吹き抜けた予混合気176が、他の排気ポート116から排出された高熱の排気ガス170と接触して想定外の燃焼が生じるおそれもある。したがって、エンジンの効率を考慮した場合、排気制御部154は、シリンダ110内に排気ガス170が滞留しにくく、かつ、予混合気176の吹き抜けを抑え得る図2(e)のタイミングで排気弁120を閉弁(全閉)するのがよい。
【0039】
ここでは、図2を用いて説明したように、排気ガス170とともに狭入層178の一部が排出されるのを許容する。ここで、燃料ガス174と活性ガス172との混合促進を図るため、燃料ガス174の噴射開始時期を早めることを試みると、狭入層178と共に予混合気176の吹き抜ける量が多くなる。そこで、燃料ガス174の噴射開始時期を早めると共に排気弁120の閉弁タイミングを早めることも考えられるが、排気弁120を早期に閉弁(全閉)完了させると、シリンダ110内の温度や圧力が過高になり、異常燃焼の原因になるおそれがある。したがって、狭入層178とともに予混合気176まで吹き抜けることがないよう、やはり、排気制御部154は、予混合気176の吹き抜けを抑え得る図2(e)のタイミングで排気弁120を閉弁(全閉)完了しなければならない。そのため、燃料噴射制御部152は、燃料ガス174を、排気弁120の閉弁タイミングの直前からの短期間しか噴射することができない。このように、燃料ガス174の噴射時間が制限されると、その短期間で多量の燃料ガス174を噴射しなければならなくなり、局所的に燃料ガス174の濃度が高い部分が生じてしまう。そこで、本実施形態では、排気弁駆動機構118の開閉処理を工夫することで、燃料ガス174の吹き抜けを抑制しつつ、燃料ガス174の噴射開始タイミングを早め、燃料ガス174の噴射時間の長期間化を図る。」
・「【0046】
図4(a)を参照すると、排気制御部154は、排気過程において、排気弁駆動機構118を通じ排気弁120を開弁し
、燃料噴射弁128から燃料ガス174が噴射開始されるのと同時に、もしくは、燃料ガス174が噴射開始された後に(ここでは、燃料ガス174が噴射された後)、排気弁120を全開位置から全閉位置へ変移開始する。
」
・「【図1】
[図:0001387460000001.jpg]
」
・「【図2】
[図:0001387460000002.jpg]
」
上記記載を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「シリンダヘッド110aとシリンダブロック110bとからなるシリンダ110と、ピストン112と、燃焼室140と、
掃気ポート122と、
排気弁120と、
シリンダ110内周面において、略周方向に所定間隔を空けて設けられた複数の開口部である燃料噴射ポート126内に配置されたシリンダ110内に燃料ガス174を噴射する燃料噴射弁128と、
を備えた燃料ガス174で動く船舶等で用いるフロー掃気式2サイクルエンジン100であって、
掃気ポート122が閉口された後であって、燃料噴射弁128から燃料ガス174が噴射開始されるのと同時に、もしくは、燃料ガス174が噴射開始された後に、排気弁120を全開位置から全閉位置へ変移開始するエンジン100。」
イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「シリンダブロック110b」は、本件発明1の「シリンダライナ(1)」に相当し、同様に「ピストン112」は「ピストン(10)」に、「シリンダヘッド110a」は「シリンダカバー(22)」に、「燃料ガス174」は「ガス燃料」にそれぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「燃焼室140」は、シリンダブロック110bと、ピストン112と、シリンダヘッド110aとで区切られていることが明らかであるから、本件発明1の「シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室」に相当する。
(ウ)甲1発明の「掃気ポート122」は、図1を参照すると、シリンダブロック110bに配置されているから、本件発明1の「シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)」に相当する。
(エ)甲1発明の「排気弁120」は、図1を参照すると、シリンダカバー(22)に配置されているから、本件発明1の「シリンダカバー(22)に配置された少なくとも1つの排気弁(4)」に相当する。
(オ)甲1発明の「シリンダ110内周面において、略周方向に所定間隔を空けて設けられた複数の開口部である燃料噴射ポート126内に配置されたシリンダ110内に燃料ガス174を噴射する燃料噴射弁128」は、図1を参照すると、シリンダブロック110bに配置され、燃焼室140内に燃料ガス174を噴射するといえるから、本件発明1の「ガス燃料を燃焼室内に噴射する、シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)」に相当する。
(カ)甲1発明の「船舶等で用いるフロー掃気式2サイクルエンジン100」と、本件発明1の「大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジン」とは、大型ユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンの限りで一致する。
(キ)甲1発明の「掃気ポート122が閉口された後であって、燃料噴射弁128から燃料ガス174が噴射開始されるのと同時に、もしくは、燃料ガス174が噴射開始された後に、排気弁120を全開位置から全閉位置へ変移開始する」ことと、本件発明1の「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始される」こととは、前記ガス燃料の噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始されることの限りで一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「シリンダライナ(1)と、ピストン(10)と、シリンダカバー(22)とで区切られた燃焼室と、
シリンダライナ(1)に配置された掃気口(18)と、
シリンダカバー(22)に配置された少なくとも1つの排気弁(4)と、
ガス燃料を燃焼室内に噴射する、シリンダライナ(1)に配置された少なくとも1つの燃料弁(30)と、
前記シリンダライナ(1)の前記燃料弁(30)と、
を備えたガス燃料で動く大型ターボチャージャ付きユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンであって、
前記ガス燃料の噴射は、前記ピストン(10)が前記シリンダカバー(22)に向かう行程の間で、前記ピストン(10)が前記掃気口を通過した後に開始される、
ことを特徴とする内燃エンジン。」
<相違点1>
大型ユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンについて、本件発明1は、「ターボチャージャ付き」であるのに対して、甲1発明は、ターボチャージャが付いているか不明である点。
<相違点2>
本件発明1は、燃料弁(30)への、「加圧ガス燃料供給部(40)及び加圧排ガス供給部(44)の両方と、」を備え、「前記少なくとも1つの燃料弁(30)によって前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高めるために、前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方を前記少なくとも1つの燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射するように構成され、」「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射」を行うのに対して甲1発明は、燃料ガス174を噴射するものであるが、ガス燃料、および、排ガスの両方を少なくとも1つの燃料弁を介して高速で同時に燃焼室内に噴射するものでない点。
ウ 判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
ターボチャージャを用いることは周知であって、甲1発明において、周知のターボチャージャを付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
甲第2号証(【0001】~【0006】、【0023】、【0047】【0048】、【図4】等)には、「筒内にガスを直接噴射する高圧ガス噴射方式の場合、燃焼によってNOXが大量に発生することを防止するために、再循環管21Aを介して、タービン9a通過後の排ガスより高い圧力の排ガスをミキサー4Aに供給し、燃料ガスを供給管12により第1段圧縮器5Aで再循環管21Aから供給される排ガスと同じレベルまで昇圧してミキサー4Aに供給し、ミキサー4Aで燃焼ガスと排ガスを混合し、混合ガスを供給管13A、14Aを介して噴射弁7に圧送し、噴射弁7から高圧で燃焼室内に噴射する点」(以下「甲2記載事項」という。)が記載されているところ、甲2記載事項の「噴射弁7」は、「排気弁が閉じ、次にピストンの上昇により燃焼室内の空気、及び完全に排出できずに燃焼室内に溜った前サイクルの燃焼ガスが圧縮され、ピストン上死点付近で、噴射弁7から噴射された燃料ガスが燃焼し燃焼ガスが生成される。」(【0030】)の記載及び【図6】を参照すると、ピストン上死点付近で噴射するものであって、シリンダのヘッド側に設けられることが、不可欠な事項である。
一方、甲1発明の「燃料噴射弁128」は、「シリンダ110内周面において、略周方向に所定間隔を空けて設けられた複数の開口部である燃料噴射ポート126内に配置されたシリンダ110内に燃料ガス174を噴射する」ものであって、「活性ガス172の吸入に伴う排気ガス170と活性ガス172との境界が、図2(c)の如く、燃料噴射ポート126に達すると、燃料噴射制御部152は、ガバナー150から入力された燃料噴射量を示す情報や、ロータリエンコーダ130からのクランク角度信号によって導出されるエンジン回転数等に基づいて、燃料噴射弁128からシリンダ110内に燃料ガス174の噴射を開始」(甲第1号証の【0033】)し、「図2(e)で示したように、ピストン112が燃料噴射ポート126に達する前に、燃料ガス174の噴射を停止する。」(甲第1号証の【0037】)ものである。
そうすると、甲1発明の「燃料噴射弁128」と甲2記載事項の「噴射弁7」とは、その噴射タイミング及びシリンダに対する配置の位置において、異なるものである。
さらに、甲第6号証には、【0053】に「図3(d)に示すように、不活性物質噴射弁132を燃料噴射弁128と一体的に形成し、燃料ガス174と不活性物質184とを予め混合して噴射することもできる。かかる構成により、燃料ガス174と不活性物質184とが混合された状態で噴射されるので、燃料ガス174の濃度が高い領域と不活性物質184の濃度が高い領域とを確実に重ねることが可能となる。」と記載されているが、燃料ガスの濃度が高い領域と不活性物質の濃度が高い領域とを重ねるものであるから、本件発明1の「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方を前記少なくとも1つの燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射する」ものではない。
ゆえに、甲第2号証(【0023】、【0041】、【0047】、【0048】、甲第3号証(238頁 左欄下から3行~右欄13行)、甲第4号証(258頁「5.1 ノッキングに対するEGRの影響」の欄)及び甲第5号証(134頁左欄1~7行、下から4~末行)の記載から、燃焼によるNOXの発生を防止するためにEGRを用いることが周知であるといえ、甲1発明において、燃焼によるNOXの発生を防止するために周知のEGRを用いることを当業者が容易に想到し得たとしても、甲1発明と噴射タイミング及びシリンダに対する配置の位置が異なる上記甲2記載事項の「噴射弁7」を適用することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~16の進歩性について
本件発明2~16は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付したものであるから、本件発明2~16と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1及び2で相違する。
そして、相違点1及び2については、上記(1)ウで検討したとおりであるから、本件発明2~16は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明17の進歩性について
ア 甲1方法発明と対比
甲第1号証には、甲1発明に係る方法の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されている。
そして、本件発明17と甲1方法発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点3>
大型ユニフロー掃気式2サイクル内燃エンジンについて、本件発明17は、「ターボチャージャ付き」であるのに対して、甲1方法発明は、ターボチャージャが付いているか不明である点。
<相違点4>
本件発明17は、「燃焼室内でガス燃料と掃気との混合を促進することによってノッキングを低減する」方法であって、「圧縮ガス燃料、および、加圧された排ガスを前記シリンダカバー内の前記燃料弁(30)に供給し」、「前記圧縮ガス燃料、および、前記加圧された排ガスを前記燃料弁(30)を介して高速で同時に前記燃焼室内に噴射し、前記燃料バルブ(30)が燃料噴射中に前記燃焼室内に噴射される物質の運動量を高め」、「前記ガス燃料、および、前記排ガスの両方の同時噴射」を行うのに対して甲1方法発明は、燃料ガス174を噴射するものであるが、排ガスと同時に噴射するものでない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
<相違点3について>
ターボチャージャを用いることは周知であって、甲1方法発明において、周知のターボチャージャを付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点4について>
甲1方法発明において、燃焼によるNOXの発生を防止するためにEGRを用いることを当業者が容易に想到し得たとしても、甲1発明と噴射タイミング及びシリンダに対する配置の位置が異なる上記甲2記載事項の「噴射弁7」を適用することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明17は、甲1方法発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明18、19の進歩性について
本件発明18、19は、本件発明17の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付したものであるから、本件発明18、19と甲1方法発明とを対比すると、少なくとも上記相違点3及び4で相違する。
そして、相違点3及び4については、上記(3)イで検討したとおりであるから、本件発明18、19は、甲1方法発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 令和4年2月22日付け取消理由(決定の予告)及び令和3年11月4日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかった取消理由について
申立人は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由において、以下の取消理由を主張している。
(1)(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項1及び17の「前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前」の記載は、この文言の意味するところが不明確である。
イ 請求項12の「前記排ガスを混合する機構(33)を備える」は、請求項12で間接的に引用する請求項3の「燃料弁(30)の内部で混合される」、請求項4の「前記ガス燃料、および、前記排ガスが前記少なくとも1つの燃料弁(30)の上流で混合される」との関係が不明確である。
(2)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項3を引用する請求項5は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
イ 請求項8の「制御装置」は、特許明細書の【0055】、【0058】、【0060】に「電子制御装置」の記載があるが、いずれの電子制御装置で実施するのかについて記載がないから、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
6 令和4年2月22日付け取消理由(決定の予告)及び令和3年11月4日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかった取消理由についての当審の判断
(1)明確性要件について
ア 請求項1及び17の「前記排気弁(4)が閉じる時または閉じる直前」の記載は、本件訂正により削除され、請求項1及び17に係る発明は、明確となった。
イ 本件訂正(請求項10に係る訂正)により、請求項12が引用する請求から、請求項4を引用する請求が実施的に削除されたため、請求項12に係る発明は、明確となった。
(2)サポート要件について
ア 本件訂正により、請求項3を引用する請求項5は、削除されたため、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
イ 請求項8の「制御装置」は、「前記ガス燃料と同時に噴射される排ガスの量を調整する」制御装置であるところ、特許明細書の【0028】に「ガス燃料と同時に噴射される排ガスの量を調整するように構成された制御装置を備える。」と記載されているから、発明の詳細な説明に記載されたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700028