特許訂正審判
2021-390095
画像形成装置
- 審判番号
- 2021-390095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2015-013303
- 登録番号
- 6076388
- 請求日
- 2021年07月05日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】京セラドキュメントソリューションズ 株式会社
- 【請求人代理人】前井 宏之
- 審判長/審判官
- 審判長 吉村 尚
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 藤田 年彦
- 分類
- P141 .841-Z (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第5項、特許法第131条の2第1項、特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6076388号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6076388号の請求項1乃至5に係る特許についての出願は、平成27年1月27日の特許出願であって、平成29年1月20日にその特許権の設定登録がなされ、同年2月8日に特許公報が発行されたものである。
その後、令和3年7月5日に訂正審判の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、これに対し、同年8月10日付けで訂正拒絶理由が通知されたところ、同年9月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6076388号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正拒絶理由の概要
令和3年8月10日付けで,当審が通知した訂正拒絶理由の概要は以下のとおりである。
令和3年7月5日に特許権者が行った本件訂正は、請求項1に係る訂正事項2に関して、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第126条第5項に適合するものではないから、本件訂正は認められない。
第4 令和3年9月13日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の適否についての当審の判断
審判請求人は、上記訂正拒絶理由通知に対して、令和3年9月13日に提出された審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲に関する補正書を提出するとともに、同日に提出された意見書において以下の主張を行っているので、これについて検討する。
1 訂正特許請求の範囲に関する補正
令和3年7月5日に提出された審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1には以下の(1)の記載が、令和3年9月13日に提出された手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1には以下の(2)の記載がある。(なお、下線は訂正箇所を示す。)
(1)令和3年7月5日に提出された審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
原稿に形成された画像を読み取る読取部と、
前記読取部の下方に配置され、前記画像が形成された前記記録媒体が載置される排紙トレイと、
前記読取部を収納する筐体と、
前記排紙トレイと前記筐体との間に形成され、前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出すときにユーザーの手が挿入される排紙空間と、
を備え、
前記筐体を構成する底板は、前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有し、
前記底板に配置され、前記読取部を副走査方向に直線的に移動するようにガイドするガイド部を更に備え、
前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成され、
前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置する第2部分と、を含み、
前記第2部分の下面は、隣接する前記補強部材の間の前記第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する、画像形成装置。」
(2)令和3年9月13日に提出された手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
原稿に形成された画像を読み取る読取部と、
前記読取部の下方に配置され、前記画像が形成された前記記録媒体が載置される排紙トレイと、
前記読取部を収納する筐体と、
前記排紙トレイと前記筐体との間に形成され、前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出すときにユーザーの手が挿入される排紙空間と、
を備え、
前記筐体を構成する底板は、前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有し、
前記底板に配置され、前記読取部を副走査方向に直線的に移動するようにガイドするガイド部を更に備え、
前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成され、
前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置し、前記複数の補強部材が設けられない領域に位置する第2部分と、を含み、
隣接する前記補強部材の間で前記排紙トレイに対向する前記第1部分の表面は、前記第2部分の下面よりも上下方向に高く位置する部分を有する、画像形成装置。」
2 意見書の主張
審判請求人は、上記意見書の「2. 本願発明が特許されるべき理由」において、以下の主張を行っている。
「(1)補正
本件出願人は、別途提出の手続補正書により、請求項を補正しています。具体的には、請求項1についての訂正事項2において、前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置し、前記複数の補強部材が設けられない領域に位置する第2部分と、を含むこと、および、隣接する前記補強部材の間で前記排紙トレイに対向する前記第1部分の表面は、前記第2部分の下面よりも上下方向に高く位置する部分を有すること、を明確にしています。
これらの発明特定事項は、例えば、出願当初の図3-4、明細書【0029】-【0038】の記載に基づいています。
上記補正は新たな事項を導入しておらず、出願当初の明細書等に記載されたものです。
また、上記補正に係る発明特定事項は、訂正前の特許請求の範囲の減縮に該当しており、さらに審判請求書の要旨を変更するものではありません。
(2)訂正拒絶理由に対する対処
訂正拒絶理由通知書において、
『図3には、湾曲部331の下面に配置された補強部材332について、用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部が看取でき、また、図4には、湾曲部331の下面に配置された補強部材332が、湾曲部331の用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部までは形成されていないことが看取できる。
そして、湾曲部331及び補強部材332を備えている底板33について、上記【0034】には、「湾曲部331の下面に補強部材332が配置されている」と記載されているものの、上記のとおり、図3及び図4から看取できる事項からすると、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、底板33について、湾曲部331の用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)の全長に亘って補強部材332が配置されたもの(以下「実施例1という。)と、湾曲部331の用紙Pを送り出す方向(X軸の負方向)側の端部から補強部材332が形成されているものの、用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部までは補強部材332が形成されていないもの(以下「実施例2という。)とが記載されているものと認められる。
以上のことから、訂正事項2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて、底板33が上記実施例1及び実施例2のそれぞれの場合に対して、以下、検討する。
そして、訂正事項2における、「下面」の位置とは、「補強部材332の下面位置は、操作部224の下方に位置する底板33の位置と略一致するように形成されている。」(【0038】)及び「補強部材332の下面位置が操作部224の下方に位置する底板33の位置と略一致するように形成されている」(【0042】)との記載からすると、「下面」の最も低い位置を意味するものと認め、以下検討する。』
とご指摘いただいています。
訂正拒絶理由通知書では、実施例1及び実施例2に分けた上で、『訂正事項2における、「下面」の位置とは、(中略)「下面」の最も低い位置を意味するものと認め』る、と認定し、実施例1及び実施例2のいずれについても、請求項1についての訂正事項2は、出願当初の明細書等に記載されていないと認定されています。
確かに、訂正拒絶理由通知書においてご指摘いただいておりますように、本件明細書中において、「補強部材」の「下面」は、訂正拒絶理由通知書における審判官殿のご指摘されるように解釈できる余地があるかもしれません。
しかしながら、本件明細書において、用語「下面」は、「補強部材」の「下面」以外でも使用されています。
『補強部材332は、底板33を補強する部材であって、湾曲部331の下面に配置されている。』【0033】
『上述のように、湾曲部331の下面に補強部材332が配置されているため、上部筐体32の一部である底板33の強度を向上することができる。』【0034】
このように、本件明細書における「下面」が最も低い位置を意味するものとのご認定は、当業者に想起しがたい特異な解釈と言わざるを得ません。
それでもなお、今回の応答では、訂正拒絶理由通知書でのご指摘に鑑みて、審判請求の要旨を変更することなく、請求項1についての訂正事項2を補正しています。
具体的には、第2部分が複数の補強部材が設けられない領域に位置することが明確になるように訂正事項2を補正しています。
また、訂正事項2は、隣接する前記補強部材の間で前記排紙トレイに対向する前記第1部分の表面は、前記第2部分の下面よりも上下方向に高く位置する部分を有することを明確にしています。
補正前の訂正事項2と同様に、底板の補強部材の配置および第1部分と第2部分の上下方向の位置関係を規定することにより、訂正事項2に係る請求項1に記載の発明によれば、底板の機械的強度を担保しつつ排紙トレイに載置された用紙を容易に取出しできます。
訂正拒絶理由通知書においてご指摘にしたがって実施例1および実施例2について検討したとすると、実施例1および実施例2のいずれについても、補正した訂正事項2において記載した、隣接する補強部材の間で排紙トレイに対向する第1部分の表面が、第2部分の下面よりも上下方向に高く位置する部分を有します。
このように、補正後の請求項1に記載の発明は、願書に最初に添付した明細書等に記載の事項の範囲内にあることが明確になったため、訂正拒絶理由通知書においてご指摘された拒絶理由は解消されるものと思料いたします。」
3 本件補正が請求書の要旨を変更するかどうかについて
審判請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならない(特許法第131条の2第1項)。また、要旨の変更とは、審判請求書の記載事項のうち、請求の趣旨(訂正事項)の記載を変更することによって、補正の前後で請求の基礎である「審判を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更することである。
そこで、本件補正が審判請求書に記載された請求の趣旨を変更するかどうかについて検討する。
(1)本件補正の内容
本件補正は、上記(1)の令和3年7月5日に提出された審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1における、発明特定事項「前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置する第2部分と、を含み、前記第2部分の下面は、隣接する前記補強部材の間の前記第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する、」に代えて、上記(2)の令和3年9月13日に提出された手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1における、「前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置し、前記複数の補強部材が設けられない領域に位置する第2部分と、を含み、隣接する前記補強部材の間で前記排紙トレイに対向する前記第1部分の表面は、前記第2部分の下面よりも上下方向に高く位置する部分を有する、」と訂正することに補正するものである。(以下「補正事項」という。)
(2)判断
本件補正により、本件補正前には、「第2部分の下面」が「第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する」ものであったものが、本件補正後には、「第1部分の表面は、前記第2部分の下面よりも上下方向に高く位置する部分を有する」ものとなり、第1部分の下面と第2部分の下面との上下方向の位置の関係が何ら特定されないこととなった。
このような補正は、審判請求時の請求の趣旨における訂正特許請求の範囲における発明特定事項を変更することで、従来の請求に変えて新たな請求をすることになり、補正の前後で請求の基礎である「審判を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更するものといえる。
仮に、審判請求人が主張するように、本件特許明細書に記載の「下面」が最下面でないとすると、「第1部分の下面」及び「第2部分の下面」は、それぞれ、“「第1部分の下面」の全ての部分”及び“「第2部分の下面」の全ての部分”を意味することとなる。
そうすると、本件補正により、本件補正前の「第2部分の下面」の全ての部分は、「第1部分の下面」よりも上下方向に低く位置していた、すなわち、「第1部分の下面」の全ての部分は、「第2部分の下面」よりも上下方向に高く位置していたところ、本件補正後には、「第1部分の表面」は、「第2部分の下面」よりも上下方向に高く位置する部分を有する」こととなり、「第1部分の表面」の全ての部分が、「第2部分の下面」よりも、上下方向に高く位置する必要はなくなる。
してみると、「下面」について、審判請求人の主張のとおり解したとしても、本件補正前の「第1部分の下面」について、その範囲が変更されたこととなるのであるから、上記審判請求人の主張は採用できない。
(3)小括
上記(2)のとおり、本件補正は請求の趣旨を変更することで、「審判を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更するものといえ、請求書の要旨を変更するものである。
したがって、当該審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の補正を認めることはできない。
4 まとめ
本件補正は、審判請求の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第1項の規定を満たさず、本件補正は認めることはできない。
第5 本件審判請求に対する当審の判断
1 訂正の内容
上記第4に示したとおり、本件補正は認めることはできないから、本件訂正審判に係る訂正の内容は、審判請求書に記載された以下のとおりである。(なお、下線は、訂正の箇所である。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「記録媒体に画像を形成する画像形成措置であって」と記載されているのを「記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成される、」と記載されているのを「前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成され、前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置する第2部分と、を含み、前記第2部分の下面は、隣接する前記補強部材の間の前記第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「前記補強部材の間隔は、前記排紙空間に挿入されるときのユーザーの指の間隔と略一致している、請求項1に記載の画像形成装置。」と記載されているのを「記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、原稿に形成された画像を読み取る読取部と、前記読取部の下方に配置され、前記画像が形成された前記記録媒体が載置される排紙トレイと、前記読取部を収納する筐体と、前記排紙トレイと前記筐体との間に形成され、前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出すときにユーザーの手が挿入される排紙空間と、を備え、前記筐体を構成する底板は、前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有し、前記底板に配置され、前記読取部を副走査方向に直線的に移動するようにガイドするガイド部を更に備え、前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成され、前記補強部材の間隔は、前記排紙空間に挿入されるときのユーザーの指の間隔と略一致している、画像形成装置。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「前記底板は、前記排紙空間を拡張する向きに滑らかな曲面を形成して窪んでいる、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。」と記載されているのを「記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、原稿に形成された画像を読み取る読取部と、前記読取部の下方に配置され、前記画像が形成された前記記録媒体が載置される排紙トレイと、前記読取部を収納する筐体と、前記排紙トレイと前記筐体との間に形成され、前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出すときにユーザーの手が挿入される排紙空間と、を備え、前記筐体を構成する底板は、前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有し、前記底板に配置され、前記読取部を副走査方向に直線的に移動するようにガイドするガイド部を更に備え、前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成され、前記底板は、前記排紙空間を拡張する向きに滑らかな曲面を形成して窪んでいる、画像形成装置。」に訂正する(請求項3の記載を直接的に引用する請求項4も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記補強部材における最下面の上下方向の位置は、前記底板における最下面の上下方向の位置と略一致するように形成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置」と記載されているのを「記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、原稿に形成された画像を読み取る読取部と、前記読取部の下方に配置され、前記画像が形成された前記記録媒体が載置される排紙トレイと、前記読取部を収納する筐体と、前記排紙トレイと前記筐体との間に形成され、前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出すときにユーザーの手が挿入される排紙空間と、を備え、前記筐体を構成する底板は、前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有し、前記底板に配置され、前記読取部を副走査方向に直線的に移動するようにガイドするガイド部を更に備え、前記補強部材は、前記ガイド部から所定距離以上離れて形成され、前記補強部材における最下面の上下方向の位置は、前記底板における最下面の上下方向の位置と略一致するように形成されている、画像形成装置。」に訂正する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0033】に「Y軸の正方向」と記載されているのを、「X軸の正方向」に訂正する。
2 当審の判断
事案に鑑み、訂正事項2より検討する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「筐体を構成する底板」について「前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有」することを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「前記筐体を構成する底板は、前記排紙トレイと対向する側の面に、ユーザーが前記排紙トレイに載置された前記記録媒体を取り出す方向に沿って延びた複数の補強部材を有し」、「前記底板は、前記複数の補強部材が設けられた領域に位置する第1部分と、前記第1部分よりも前記記録媒体を取り出す方向側に位置する第2部分と、を含み、前記第2部分の下面は、隣接する前記補強部材の間の前記第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)における筐体をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に関連する記載として、願書に添付した明細書には、以下のとおり記載されている。
「【0031】
次に、図3を参照して、底板33を補強する構造について説明する。図3に示すように、底板33は、湾曲部331及び補強部材332を備えている。湾曲部331は、排紙空間34の上側に位置する底板33の一部であって、排紙空間34を拡張する向き(図3では、Z軸の正方向)に滑らかな曲面を形成して窪んでいる。
【0032】
上述のように、湾曲部331が、排紙空間34を拡張する向き(図3では、Z軸の正方向)に滑らかな曲面を形成して窪んでいるため、排紙空間34を拡張することができる。よって、排紙空間34にユーザーが手を挿入して、排紙トレイ311に載置された用紙Pを容易に取り出すことができる。
【0033】
補強部材332は、底板33を補強する部材であって、湾曲部331の下面に配置されている。また、補強部材332は、ユーザーが排紙トレイ311(図2参照)に載置された用紙Pを取り出す方向(図3では、Y軸の正方向)に沿って直線状に延設されている。
【0034】
上述のように、湾曲部331の下面に補強部材332が配置されているため、上部筐体32の一部である底板33の強度を向上することができる。よって、画像読取部22を構成する上部筐体32の機械的な強度を向上することができる。
【0035】
また、補強部材332が、排紙トレイ311に載置された用紙Pをユーザーが取り出す方向に沿って直線状に延設されているため、排紙空間34に挿入した手が補強部材332に引っ掛かり難い。したがって、排紙空間34にユーザーが手を挿入して、排紙トレイ311に載置された用紙Pを更に容易に取り出すことができる。
【0036】
本実施形態では、補強部材332が排紙トレイ311に載置された用紙Pをユーザーが取り出す方向に沿って直線状に延設されている場合について説明するが、補強部材332が直線状ではない形態でもよい。例えば、補強部材332が滑らかな曲線状(例えば、円弧状)に延設されている形態でもよい。
【0037】
次に、図4を参照して、底板33の構造について説明する。図4は、図3に示す底板33の構造を示す断面図である。底板33の略中央部には、ガイド部4が形成され、ガイド部4の右側(画像形成装置1の手前側:X軸の正方向側)には、湾曲部331及び補強部材332が形成されている。
【0038】
図4に示すように、ガイド部4は、底板33が上側に突出するよう湾曲されて形成されている。また、補強部材332の下面位置は、操作部224の下方に位置する底板33の位置と略一致するように形成されている。また、図4に示すように、底板33の湾曲部331は、断面視で円弧状に形成されている。
【0039】
また、図4に示すように、補強部材332は、ガイド部4から所定距離LS(例えば、20mm)以上離れて形成される。ここでは、補強部材332とガイド部4との距離LGは、例えば、30mmである。
【0040】
上述のように、補強部材332が、ガイド部4から所定距離LS以上離れて形成されているため、操作部224近傍に加えられた外力による底板33の撓みが、ガイド部4にまで影響することを阻止することができる。よって、操作部224近傍に加えられた外力によるガイド部4の変形を抑制することができる。
【0041】
また、湾曲部331が断面視で円弧状に形成されているため、湾曲部331を容易に成形することができる。
【0042】
更に、補強部材332の下面位置が操作部224の下方に位置する底板33の位置と略一致するように形成されているため、排紙空間34に挿入した手が補強部材332に更に引っ掛かり難い。したがって、排紙空間34にユーザーが手を挿入して、排紙トレイ311に載置された用紙Pを更に容易に取り出すことができる。」
また、図3には、湾曲部331の下面に配置された補強部材332について、用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部が看取でき、また、図4には、湾曲部331の下面に配置された補強部材332が、湾曲部331の用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部までは形成されていないことが看取できる。
そして、湾曲部331及び補強部材332を備えている底板33について、上記【0034】には、「湾曲部331の下面に補強部材332が配置されている」と記載されているものの、上記のとおり、図3及び図4から看取できる事項からすると、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、底板33について、湾曲部331の用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)の全長に亘って補強部材332が配置されたもの(以下「実施例1」という。)と、湾曲部331の用紙Pを送り出す方向(X軸の負方向)側の端部から補強部材332が形成されているものの、用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部までは補強部材332が形成されていないもの(以下「実施例2」という。)とが記載されているものと認められる。
以上のことから、訂正事項2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて、底板33が上記実施例1及び実施例2のそれぞれの場合に対して、以下、検討する。
そして、訂正事項2における、「下面」の位置とは、「補強部材332の下面位置は、操作部224の下方に位置する底板33の位置と略一致するように形成されている。」(【0038】)及び「補強部材332の下面位置が操作部224の下方に位置する底板33の位置と略一致するように形成されている」(【0042】)との記載からすると、「下面」の最も低い位置を意味するものと認め、以下検討する。
(ア)実施例1について
湾曲部331の用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)の全長に亘って補強部材332が配置されているのであるから、訂正事項2における「第1部分」とは、底板33のうち、湾曲部331が設けられた部分であると認められる。
してみると、訂正事項2における「補強部材の間の第1部分の下面」の位置は、湾曲部331の端部の表面の位置と認められる。
また、訂正事項2における「第1部分よりも記録媒体を取り出す方向側に位置する第2部分」とは、底板33のうち、湾曲部331が設けられた部分よりも記録媒体を取り出す方向側の部分であると認められる。
してみると、訂正事項2における「前記第2部分の下面」の位置は、操作部224の下方に位置する底板33下面の位置と一致する。
そうすると、図4からも明らかなように、“湾曲部331の端部の表面の位置”と“操作部224の下方に位置する底板33下面の位置”の上下方向の位置は一致することとなる。
そうすると、実施例1について、訂正事項2における「前記第2部分の下面は、隣接する前記補強部材の間の前記第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する、」ことまでは、記載も示唆もされていない。
(イ)実施例2について
湾曲部331の用紙Pを送り出す方向(X軸の負方向)側の端部から補強部材332が形成されているものの、用紙Pを取り出す方向(X軸の正方向)側の端部までは補強部材332が形成されていないのであるから、訂正事項2における「第1部分」とは、底板33のうち、補強部材332が配置された部分であると認められる。
してみると、訂正事項2における「補強部材の間の第1部分の下面」の位置は、湾曲部331の用紙Pを送り出す方向(X軸の負方向)側の端部表面の位置と認められる。
また、訂正事項2における「第1部分よりも記録媒体を取り出す方向側に位置する第2部分」とは、底板33のうち、補強部材332が配置された湾曲部331が設けられた部分よりも記録媒体を取り出す方向側の部分であると認められる。
してみると、訂正事項2における「前記第2部分の下面」の位置は、操作部224の下方に位置する底板33下面の位置と一致する。
そうすると、図4からも明らかなように、“湾曲部331の用紙Pを送り出す方向(X軸の負方向)側の端部表面の位置”と“操作部224の下方に位置する底板33下面の位置”の上下方向の位置は一致することとなる。
そうすると、実施例2について、訂正事項2における「前記第2部分の下面は、隣接する前記補強部材の間の前記第1部分の下面よりも上下方向に低く位置する、」ことまでは、記載も示唆もされていない。
(ウ)小括
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でするものではないから、特許法第126条第5項の規定に適合するものではない。
オ 小括
以上のとおり、請求項1に係る訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項2乃至5は、訂正事項2に係る訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、当該請求項2乃至5は、特許法126条第3項に規定する一群の請求項である。
上記のとおり,訂正事項2に係る訂正前の請求項1に係る訂正が認めることはできないので、請求項1に係る訂正事項1は認めることはできない。
また、請求項1と共に「一群の請求項」を構成する請求項2乃至5に係る訂正事項3乃至6も認めることはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正のうち、訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。
したがって、その他の訂正事項について検討するまでもなく、当該訂正は認めることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-390095