商標取消審判
2021-300075
チューリップ
- 審判番号
- 2021-300075
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2013-042622
- 登録番号
- 5620907
- 請求日
- 2021年02月04日
- 審決日
- 2021年11月16日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】藤本 信男
- 【被請求人】株式会社 チューリップソフト
- 【被請求人代理人】築山 正由
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 森山 啓
- 審判官 板谷 玲子
- 分類
- T132 .1 -Z (W42) / T132 .11 -Z (W42)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5620907号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5620907号商標の指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,インターネットを用いた検索用エンジンの提供,ウェブサイトの作成・保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットサーバーの記憶領域の貸与」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5620907号商標(以下「本件商標」という。)は、「チューリップ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成25年6月4日に登録出願、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,インターネットを用いた検索用エンジンの提供,ウェブサイトの作成・保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットサーバーの記憶領域の貸与」を含む、第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同年9月17日に登録査定、同年10月4日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和3年(2021年)2月22日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年(2018年)2月22日から令和3年(2021年)2月21日までを以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,インターネットを用いた検索用エンジンの提供,ウェブサイトの作成・保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットサーバーの記憶領域の貸与」(以下「請求に係る指定役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
以下に述べる理由により、被請求人が提出した資料は、いずれも商標の使用証拠として不十分であって、それらによっては本件商標が要証期間内に使用されたことが証明されていないので、答弁書における主張は妥当性を欠くものである。
(1)乙第1号証
乙第1号証は、株式会社チューリップソフトのホームページからのトップページを印刷したものとされているところ、その冒頭には、左から比較的に太い書体による欧文字「T」、赤色の図形、欧文字「LIP」、アールマーク、欧文字「SOFT」が横一連にひとまとまりとなった表示(以下「図形付き表示」という。別掲1)が存する。このように特徴的な書体と図形要素により一体的に表された図形付き表示は、本件商標、すなわち片仮名「チューリップ」の標準文字による態様のものとは、構成文字種類の相違、文字の書体の顕著な相違、赤色の図形の有無(欧文字「U」の有無)、アールマークの有無、「SOFT」の欧文字の有無などにより、外観、称呼及び観念のいずれもが大きく相違するので、全く異なる標章であって、同一性について検討する余地もないというべきである。被請求人は、赤色の図形を「赤いチューリップの花のデザインで欧文字『U』を表現している」と述べている。この赤色の図形の上部が一つ谷の凹型の形状となっているのであれば、「U」と見立てる余地もなくはなかったかもしれないが、同図形部分の上部は凹型などではなく、二つ谷の「W」字状になっているのであって、少なくともこの図形部分を欧文字「U」であると直ちに認識されることはないというべきである。逆に、被請求人がいうように、赤いチューリップの図形によって欧文字「U」が表現されていると認められると仮定したとしても、その欧文字「U」を表現した「赤いチューリップの図形」と標準文字の欧文字「U」とは全く別の外観を呈し、外観上顕著に相違することはいうまでもない。
被請求人は、本件商標「チューリップ」と図形付き表示とは、社会通念上同一であると述べている。本件商標「チューリップ」と図形付き表示とが、社会通念上同一であるというためには、図形付き表示が標準的な書体による文字商標「TULIP」などであることで両商標が片仮名と欧文字の表示を相互に変更したものといった関係にある必要があるところ、上述のように、少なくとも図形付き表示は、その左から二つ目の構成要素が「赤色の図形」(赤いチューリップの図形)であって欧文字「U」ではなく、またアールマークや「SOFT」の欧文字を有して全体として特徴的な書体により統一的にまとまりをもって表現されてなる外観であることからすれば、本件商標の標準文字による片仮名「チューリップ」と図形付き表示「T+赤色図形+LIP+アールマーク+SOFT」とが社会通念上同一であるとは到底いうことができない。
図形付き表示の下方に「チューリップソフトは、WEB/サービスを通じて人々の暮らし/に貢献します。」なる記載があるが、これは被請求人である株式会社チューリップソフトによる企業理念の宣言といったものであって、商標としての使用ではない。また、「チューリップソフト」の語は、本件商標「チューリップ」とは社会通念上同一とはいえない。
以上により、乙第1号証には、本件商標と同一の商標又は社会通念上同一の商標は一切表れていない。よって、仮に、被請求人が、当該ウェブサイトを通じて「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」の役務を提供していたとしても、同役務に本件商標を使用したことは証明されない。
さらに、乙第1号証の最下部に「2021」の表示が見られるが、要証期間内のものであることを示すものではなく、またその他に乙第1号証が要証期間内のものであることを示す事実も示されていない。
以上より、乙第1号証は、本件商標「チューリップ」の使用事実を示す証拠とはなり得ない。
(2)乙第2号証
乙第2号証は被請求人のホームページの会社概要欄であるとされている。乙第2号証の冒頭部分に「株式会社チューリップソフト」なる表示があるが、これは、被請求人の社名を表示しているにすぎず商標としての使用とはいえない。また、「株式会社チューリップソフト」は全体として社名を表すひとまとまりの語であって、本件商標「チューリップ」とは、「株式会社」及び「ソフト」の有無の違いがあるため、社会通念上同一とはいえない。また、その「株式会社チューリップソフト」は、さらに、特定の商品・役務との関係性も不明であって自他役務識別標識として機能する表示の方法でもないので、この点からも商標としての使用とはいえない。
会社概要の会社名の欄に「株式会社チューリップソフト」と記載されているが、これはウェブサイトの運営者の社名を表しているにすぎず、商標としての使用ではないことはいうまでもない。また、「株式会社チューリップソフト」と、本件商標「チューリップ」とが社会通念上同一とはいえないことは上述のとおりである。
登録商標の欄に「『チューリップ』は株式会社チューリップソフトの登録商標です。/登録第5620907号」、及び「『カムトピア』は株式会社チューリップソフトの登録商標です。/登録第5671939号」なる記載があるが、これらはいずれも登録商標の所有者が株式会社チューリップソフトであることを説明しているにすぎず、商標としての使用ではない。
以上より、乙第2号証は、本件商標「チューリップ」の使用事実を示す証拠とはなり得ない。
(3)乙第3号証
乙第3号証は、被請求人が、他社に宛てた請求書とみられるところ、その右上方に「株式会社チューリップソフト」の記載があるが、これは請求書発行者である被請求人の社名が表示されているにすぎず、商標としての使用とはいえない。また、上述のように、「株式会社チューリップソフト」の記載は本件商標「チューリップ」とは社会通念上同一ではない。
さらに、乙第3号証は、請求書作成ソフトウェア、表計算ソフトウェア又はワープロなどのツールにより被請求人が独自に作成したと思われるものを印字したものにすぎない。よって、乙第3号証は、実際に被請求人が他人からソフトウェアアプリケーション開発の受注を受けたことを何ら客観的に証明するものではない。乙第3号証の右上方の「2019年10月21日」なる記載についても、これを裏付ける何らの証拠も提出されていない。
さらに、費用の請求書であるにもかかわらず、請求金額に消費税に関する記載が一切ないのは、我が国の取引慣習に照らして、いかにも不自然であるというほかない。
以上より、乙第3号証は、本件商標「チューリップ」の使用事実を示す証拠とはなり得ない。
(4)乙第4号証
乙第4号証は、被請求人のウェブサイト中でコンピュータプログラムを提供するウェブページのプリントアウトであって、その資料の右上方に図形付き表示が見られるところ、その図形付き表示と本件商標とは、全く異なる標章であり、少なくとも社会通念上同一ではないことは、既に述べたとおりである。よって、仮に、被請求人が、乙第4号証のウェブページを通じて「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」の役務を提供していたとしても、同ウェブページ上に本件商標と社会通念上同一といえる商標が表示されていない以上は、同役務に本件商標を使用したことは証明されない。
また、乙第4号証には要証期間内に使用されたことを示す何らの表示もない。
以上より、乙第4号証は、本件商標「チューリップ」の使用事実を示す証拠とはなり得ない。
(5)乙第5号証
乙第5号証は、その書類の構成から、一見は、有限会社ジーエヌエーが株式会社チューリップソフトに宛てた発注書と思われるところ、まず、書類左上方の「株式会社チューリップソフト」の記載は、発注宛である被請求人の社名が表示されているにすぎず、商標としての使用とはいえない。また、上述のように本件商標「チューリップ」とは社会通念上同一ではない。
そして、乙第5号証には、一般的な取引に用いられる標準的な発注書に照らして下記の不自然な点が見受けられる。
・「下記のとおりSMS送信システムについて発注書を送付させて頂きます」と記載されているが、「発注書」自体の主文に、「下記のとおり発注書を送付する」と述べることは、発注書の内容として正しい表現とはいえないので、真に業務を発注するにおいて用いられたものかどうかについて疑義があるといえる。
・「案件概要:」なる欄に、発注するシステムの機能等に関する抽象的な記載はあるものの、システムの仕様などに関する具体的な記載は一切ない。
・納期に関する記載が一切ない。
・発注金額に関する記載が一切ない。
・支払方法に関する記載が一切ない。
・納品場所、納品形式に関する記載が一切ない。
このように不自然な点が多いことからすれば、乙第5号証は、実際に取引が行われたことを立証するための証拠としては不適格といわざるを得ない。
また、仮に、本発注書が、実際に取引が行われたことの証拠と認められたとしても、当該取引において本件商標「チューリップ」又はこれと社会通念上同一の商標が使用された事実はどこにも証明されていない。
以上より、乙第5号証は、本件商標「チューリップ」の使用事実を示す証拠とはなり得ない。
(6)まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第5号証と答弁書での主張内容から、被請求人が本件商標を要証期間に日本国内において請求に係る指定役務のいずれかについて使用していたことは証明されていない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
乙第1号証は、被請求人(株式会社チューリップソフト)のホームページのトップページを印刷したものである。
乙第2号証は、当該トップページにおける会社概要の欄にリンクしたページを印刷したものであり、当該ホームページは被請求人が運営するものであることを示すものである。
乙第1号証の冒頭には,「TULIP『R』(審決注:『R』は、○の中にRの文字。以下同じ。)SOFT」(別掲1)と表示されている。なお、二文字目の「U」は赤いチューリップの花のデザインで「U」を表現している。この冒頭「TULIP」の表示(別掲2)は、本件商標と社会通念上同一と認められる。すなわち、本件商標は片仮名で「チューリップ」と書された標準文字の商標である。乙第1号証の冒頭に表示される「TULIP」と本件商標は、片仮名とローマ字の文字の表示を相互に変更したものに過ぎず、しかも称呼がいずれも「チューリップ」であり、両者は社会通念上同一と認められる。また、二文字目の「U」は赤いチューリップの花のデザインで表現されているが、チューリップの花のデザインであるがゆえに、需要者をして、乙第1号証冒頭の表示は、「TULIP」と記載されたものであることを強く推認させるものである。
以上のとおり、被請求人は、「チューリップ」という商標のもと、営業活動を行っているものである。
乙第3号証は、被請求人がiOS音声入カサンプルアプリの開発を請け負った際の請求書である。すなわち、被請求人は、指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を提供しているものである。
乙第4号証は、予定表機能を備えたプログラムを被請求人がインターネット上で提供していることを示すものである。このプログラムは、通信回線を介してサーバと接続中だけユーザーが使用できるものであり、指定役務「電子計算機用プログラムの提供」に該当する。
乙第5号証は、被請求人がApplication Service Providerによるサービス、いわゆるASPサービスの発注を受けたことを示すものである。つまり、被請求人は、指定役務「電子計算機用プログラムの提供」を行っていることを示すものである。
以上のとおり、被請求人は、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」という役務を、「チューリップ」という商標のもと、提供しているものである。
第4 審尋
当審より被請求人に対し、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に、商標権者が、請求に係る指定役務について本件商標を使用していることを被請求人が証明しているものとはいえない旨の合議体の暫定的見解及び請求人が提出した令和3年6月2日付けの審判事件弁駁書に対する回答を求めた。
第5 審尋に対する回答
1 乙第1号証及び乙第4号証の冒頭に記載されている「TULIP」(「U」は赤いチューリップのデザイン)の表示は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められないとの点について
「R」は、社会通念上登録商標であることを示すものである。乙第1号証の冒頭に記載される本件商標と社会通念上同一と解される商標において、「R」は「P」の文字の後ろに記載されている。このことは、「T」の文字、赤いチューリップのデザインで表示される「U」の文字及び「LIP」の文字が一体のものとして登録商標としての使用であることを意図したものであることが読み取れる。「SOFT」の文字部分は、単に商標権者がコンピューターソフト制作会社であることを示すにすぎない。
そして、審判便覧53-01には、平仮名の文字の表示を変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標は、登録商標の使用と認められる旨記載されており、その例示として平仮名及び片仮名とローマ字の相互間の使用が挙げられている。
乙第1号証の冒頭に記載される商標、すなわち、「T」の文字、赤いチューリップのデザインで表示される「U」の文字及び「LIP」よりなる商標(以下「使用商標」という。別掲2)は、赤いチューリップのデザインで表示される「U」の文字が存在することから明らかなように、その奏する観念は「チューリップ」であることに疑いはない。また、「TULIP」というローマ字列がチューリップを示すものであることを強調するために、赤いチューリップのデザインで表示される「U」の文字を使っていることも容易に読み取れる。
とすると、使用商標の称呼は「チューリップ」であり、その奏する観念は「チューリップ」である。
すなわち、使用商標は、審判便覧53-01に明示される「平仮名の文字の表示を変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当する。このことは乙第4号証の表示についても同様である。
以上のとおり、乙第1号証及び乙第4号証は、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを示すものである。
2 要証期間に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことが確認できない点について
この点、乙第6号証は、本件商標権者である株式会社チューリップソフトがサーバのレンタルを受けている、GMOデジロックが運営する、ウェブレンタルサーバサービスXREAとの契約内容を示すものである。ここに「tulipsoftcorp@s205.xrea.com」という表記はサーバのアカウントを示すものであり、「IPアドレス 150.95.9.42」はサーバのIPを示すものである。
乙第7号証は、XREAからレンタルを受けているサーバと株式会社チューリップソフトのドメインの設定画面を表すものである。ドメイン名「tulipsoft.com」とサーバのIPアドレス「150.95.9.42」が対応していることが明示されている。すなわち、乙第1号証に示されるホームページ(URL:http://tulipsoft.com/)、乙第4号証に示されるホームページ(URL:http://tulipsoft.com/tool/calendar/home.php)がウェブレンタルサーバサービスXREAのサーバ「tulipsoftcorp@s205.xrea.com」上に存することを示すものである。
乙第8号証は、FTPクライアントの画面を示すものである。これはサーバに存するファイルを示すものであり、「logo3.png」というファイルが2021年3月5日にサーバ上に存在したことを示すものである。
乙第9号証及び第10号証は、それぞれ乙第1号証及び第4号証に示されるホームページのソースを表示したものである。冒頭の「TULIP」(「U」は赤いチューリップのデザイン)というデザインが「logo3.png」というファイルであることを示すものである。上述のとおり「logo3.png」というファイルは2021年3月5日にサーバ上に存在したことから、要証期間内に上記冒頭の「TULIP」というデザインを使用していたことが立証されるものである。
第6 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠及び主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人である株式会社チューリップソフトのホームページのトップページ(乙1)の中央上には、「T」の文字、赤いチューリップの花の図形及び「LIP」の文字(別掲2「使用商標」)、「R」の文字並びに「SOFT」の文字(「R」以外の文字は、すべて同じ太字の態様で表されている。)を一連に組み合わせた商標(別掲1「図形付の商標」)が表示されている。また、当該使用商標の直下には、「チューリップソフトは、WEBサービスを通じて人々の暮らしに貢献します。」の文言が三段で表示されている。
(2)被請求人ホームページの会社概要情報(乙2)によれば、同社の設立は「2013年6月4日」、事業内容は「WEBサービスの企画・開発・運営」である。
(3)被請求人から有限会社GNA宛ての、2019年10月21日付け請求書(乙3)には、件名として「システム開発(2019年9月分)」、合計金額として「¥50,000」、依頼内容として「iOS音声入力サンプルアプリの開発」と記載されている。
(4)被請求人ホームページの予定表機能を備えたプログラムを提供するページ(乙4)には、右上に「ログイン」の文字が表示され、左上に使用商標(ただし、チューリップの花の図形は薄い黒色で表されている。)が表示されており、当該使用商標の直下には「スマホDE行事予定表」の文字が大きく箱文字風に記載されている。また、「スマホDE行事予定表」の文字の下には、「スマホDE行事予定表は、スマホやタブレットで管理するみんなの行事予定表です。」と三段で説明されている。そして、「はじめる」の題目のもと、「スマホDE行事予定表の利用料は無料です。カレンダー内容の編集は管理者のみですので、会社やサークルの行事予定表として広くご利用下さい。」と三段で説明されている。さらに「使い方」として、「1.ユーザー登録する」、「2.管理者用情報を受け取る」、「3.カレンダー作成」、「4.作成したカレンダーURLへアクセス!」とある。
(5)有限会社ジーエヌユーから被請求人宛ての、2020年2月21日付け発注書(乙5)には、「下記の通りSMS送信システムについて発注書を送付させて頂きますので、何卒宜しくお願い申し上げます。」との記載があり、「案件概要」として、「本SMS送信システムは、保険会社が契約顧客に対しSMS(Short Message Service)を使い通知を行うASP(Application Service Provider)サービスである。ユーザはAWS上に構築したWebサーバに接続し、SMSの外部APIを使い顧客にSMSにて通知を行う。送信は、1通ごと送ることも可能であるが、一斉送信することも可能である。このASPについて御社へ開発・設計一式について構築を依頼する。」とある。
(6)被請求人がサーバのレンタルを受けている、GMOデジロックが運営する、ウェブレンタルサーバサービスXREAとの契約内容を示すとされるウェブサイト画面(乙6)には、サーバのアカウント「tulipsoftcorp@s205.xrea.com」と、サーバのIPアドレス「150.95.9.42」が示されており、その有効期限は「2021年3月14日」と記載されている。
(7)XREAからレンタルを受けているサーバと被請求人のドメインの設定画面を表すとされるもの(乙7)には、ドメイン名「tulipsoft.com」とサーバのIPアドレス「150.95.9.42」が対応していることが記載されているとされる。そうすると、乙第1号証のホームページ(URL:http://tulipsoft.com/)と乙第4号証のホームページ(URL:http://tulipsoft.com/tool/calendar/home.php)が、ウェブレンタルサーバサービスXREAのサーバ「tulipsoftcorp@s205.xrea.com」上に存することが推認される。
(8)FTPクライアントの画面を示すとされるもの(乙8)には、サーバのアカウント「tulipsoftcorp@s205.xrea.com」について、ファイル名「logo3.png」が2021年3月5日にサーバ上に存在したことが示されているとされる。
(9)乙第1号証及び第4号証のホームページのソースを表示したとされるもの(乙9、乙10)には、使用商標が「logo3.png」というファイル名であることが示されているとされる。そして、上記(8)のとおり、ファイル名「logo3.png」は2021年3月5日にサーバ上に存在したとされることから、当該日に使用商標がウェブサイト画面上で表示されていたものと推認される。
2 判断
被請求人(商標権者)は、自社ホームページ中のトップページ上での使用商標(別掲2)の表示(乙1)及び同ホームページ中の予定表機能を備えたプログラムを提供するページ上での使用商標の表示(乙4)のもとで、請求に係る指定役務中、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」の役務を要証期間に提供していた旨主張しているところ、請求人は、使用商標を構成中に含む図形付の商標(別掲1)は本件商標と社会通念上同一のものとはいえない旨及び要証期間内での使用が立証されていない旨主張しているので、以下、この点について判断する。
(1)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は、上記第1のとおり、「チューリップ」の片仮名を標準文字で表してなるものであるのに対し、使用商標は、上記1(1)のとおり、「T」の文字、赤いチューリップの花の図形及び「LIP」の文字を組み合わせてなるもの(文字はすべて同じ太字の態様で表されている。)である。この点につき、請求人は、使用商標を構成中に含む図形付の商標全体が一連一体の商標である旨述べているが、図形付きの商標の構成中の「R」の存在によって、使用商標の部分も独立して識別標識としての機能を果たし得るものというのが相当である。
そこで、両商標を比較するに、本件商標は片仮名の文字のみよりなるのに対し、使用商標は欧文字と図形の組み合わせよりなるものであり、両者は、図形の有無によって外観において顕著に異なるため、社会通念上同一のものとは認められない。
この点につき、被請求人は、使用商標中の赤いチューリップの花の図形は、「U」の文字を表現したものであって、使用商標からは本件商標と同一の「チューリップ」の称呼及び観念が生じるから、使用商標は、審判便覧53-01の「平仮名の文字の表示を変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当し、本件商標と社会通念上同一のものである旨主張する。
しかしながら、本件商標と使用商標とは、同一の称呼と観念が生じる文字の表示を相互に変更するものではなく、図形の有無という外観上の顕著な差異を有するものなので、被請求人の主張を採用することはできない。
(2)要証期間内での使用の有無について
被請求人は、乙第6号証ないし乙第10号証を根拠に、被請求人のホームページ中のトップページ上(乙1)及び同ホームページ中の予定表機能を備えたプログラムを提供するページ上(乙4)で、2021年(令和3年)3月5日に使用商標が表示されていたから、要証期間内の使用が立証された旨主張している。
しかしながら、被請求人のホームページ上で、2021年(令和3年)3月5日に使用商標が表示されていたとしても、上記第1のとおり、本件の要証期間は、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年(2018年)2月22日から令和3年(2021年)2月21日までであるから、それが要証期間内の使用ということはできない。
(3)小括
したがって、被請求人(商標権者)が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを認めることができない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、請求に係る指定役務について、本件商標を使用していた事実を証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定役務に使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,インターネットを用いた検索用エンジンの提供,ウェブサイトの作成・保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットサーバーの記憶領域の貸与」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-300075