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特許拒絶査定不服審判

2021-017022

フィルタデバイス、受信モジュール、アンテナモジュールおよび受信装置

審判番号
2021-017022
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-142392外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月10日
審決日
2022年09月28日
公報発行日
2022年10月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H03H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-142392「フィルタデバイス、受信モジュール、アンテナモジュールおよび受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日出願公開、特開2019- 30009、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年7月30日(優先権主張 平成29年8月2日)の出願であって、令和3年7月2日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(令和3年9月16日付けの拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由2(進歩性)

・請求項 1-20

・引用文献 1-8

<引用文献等一覧>

1.特開2017―017520号公報

2.特開2011―009882号公報(周知技術を示す文献)

3.特開2013-197772号公報(周知技術を示す文献)

4.特開平07-058657号公報(周知技術を示す文献)

5.特開昭62-090014号公報(周知技術を示す文献)

6.特表2008-532334号公報(周知技術を示す文献)

7.国際公開第2006/040927号公報(周知技術を示す文献)

8.特開2011―176746号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明

本願請求項1―20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成3年9月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1共通端子と、
前記第1共通端子に接続され、前記第1共通端子から見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域に対応している複数のフィルタと、
を有しており、
前記複数の通過帯域は、第1通過帯域および第2通過帯域を含み、
前記第1共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている
フィルタデバイス。」

なお、本願発明2-20の概要は以下のとおりである。

本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明9は、本願発明1の「フィルタデバイス」と同様の構成を「前段フィルタデバイス」と呼び代えて、当該「前段フィルタデバイス」と「前段増幅器」を有する「受信モジュール」の発明であり、本願発明1の「フィルタ」が「前段フィルタ」と呼び代えられ、「前記前段増幅器の出力端子」に「前記前段フィルタデバイス」が接続された「受信モジュール」であり、本願発明1の「フィルタデバイス」と同様の発明特定事項を含む発明である。

本願発明10-20は、本願発明9を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明

1. 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1(特開2017-017520号公報)(平成29年1月19日出願公開)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【0025】

図1は、本実施の形態に係るマルチプレクサ1の全体構成図である。なお、同図には、マルチプレクサ1の共通端子21に接続されるアンテナ2及びインダクタ3も図示されている。

【0026】

・・・(省略)・・・本実施の形態では、マルチプレクサ1は、互いに異なる4つの通過帯域を有する4つのバンドパスフィルタ10~40と、共通端子21とを有する。このマルチプレクサ1は、例えば、Band2(送信通過帯域:1850-1910MHz、受信通過帯域:1930-1990MHz)およびBand4(送信通過帯域:1710-1755MHz、受信通過帯域:2110-2155MHz)に適用されるクワッドプレクサである。

【0027】

・・・(省略)・・・

【0028】

・・・(省略)・・・

【0029】

バンドパスフィルタ30は、共通端子21から入力された受信波を、Band2の受信通過帯域(1930-1990MHz)でフィルタリングして受信出力端子13に出力する非平衡入力-非平衡出力型の受信側フィルタである。

【0030】

バンドパスフィルタ40は、共通端子21から入力された受信波を、Band4の受信通過帯域(2110-2155MHz)でフィルタリングして受信出力端子14に出力する非平衡入力-非平衡出力型の受信側フィルタである。」(【0026】~【0030】、図1)

イ.「【0044】

・・・(省略)・・・バンドパスフィルタ40は、直列腕共振子141、143と、並列腕共振子142と、縦結合型フィルタ部144とを有する。

【0045】

直列腕共振子141、143は、共通端子21と受信出力端子14との間で互いに直列に接続されている。並列腕共振子142は、直列腕共振子141と直列腕共振子143との接続ノードと基準端子(グランド)との間に設けられている。このように接続された直列腕共振子141、143および並列腕共振子142は、ラダー型のバンドパスフィルタを構成している。縦結合型フィルタ部144は、直列腕共振子143と受信出力端子14との間に設けられている。

【0046】

なお、バンドパスフィルタ40の回路構成としては、このような構成に限らず、Band4の受信通過帯域における通過特性の要求仕様を満足できる構成であればよい。ただし、インピーダンス設計の自由度を確保するために、共通端子21側に、直列腕共振子及び並列腕共振子が設けられていることが好ましい。つまり、バンドパスフィルタ40は、他の素子を介することなく、共通端子21と接続される直列腕共振子又は並列腕共振子を有することが好ましい。」(【0044】、【0045】、【0046】、図3)

ウ.「図1

[図:0001389181000001.jpg]

」

エ.「図3

[図:0001389181000002.jpg]

」

オ.「図5A

[図:0001389181000003.jpg]

」

2. 引用発明

以上1のア~オの記載より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(引用発明)

「マルチプレクサ1は、互いに異なる4つの通過帯域を有する4つのバンドパスフィルタ10~40と、共通端子21とを有し、このマルチプレクサ1は、例えば、Band2(送信通過帯域:1850-1910MHz、受信通過帯域:1930-1990MHz)およびBand4(送信通過帯域:1710-1755MHz、受信通過帯域:2110-2155MHz)に適用されるクワッドプレクサであり、(【0026】、図1、図5A)
マルチプレクサ1の共通端子21に、アンテナ2及びインダクタ3が接続され、(【0025】、図1)
バンドパスフィルタ30は、共通端子21から入力された受信波を、Band2の受信通過帯域(1930-1990MHz)でフィルタリングして受信出力端子13に出力する非平衡入力-非平衡出力型の受信側フィルタであり、(【0029】、図3)
バンドパスフィルタ40は、共通端子21から入力された受信波を、Band4の受信通過帯域(2110-2155MHz)でフィルタリングして受信出力端子14に出力する非平衡入力-非平衡出力型の受信側フィルタである、(【0030】、図3)
マルチプレクサ1。」

第5 対比・判断

1. 本願発明1について

(1) 対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.本願発明1の「第1共通端子と、前記第1共通端子に接続され、前記第1共通端子から見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域に対応している複数のフィルタと、」について

(ア)引用発明の「共通端子21」は、「アンテナ」に接続される端子であって、バンドパスフィルタ(10~40)への入力信号を受信する「端子」であることは明らかであるから、本願発明1の「第1共通端子」に相当する。

(イ)引用発明の「バンドパスフィルタ(10~40)」のうち、「バンドバスフィルタ30」と「バンドバスフィルタ40」は、いずれも本願発明1の「フィルタ」に相当し、引用発明の前記「バンドバスフィルタ30」と「バンドバスフィルタ40」の両者は、本願発明1の「複数のフィルタ」に相当する。

そして、引用発明の「バンドパスフィルタ30」と「バンドパスフィルタ40」は、「共通端子21」に接続されており、「共通端子21」から見て、互いに分岐していることは明らかであり、それぞれの通過帯域は、互いに異なる「Band2の受信通過帯域(1930-1990MHz)」と「Band4の受信通過帯域(2110-2155MHz)」であるから、本願発明1の「前記第1共通端子に接続され、前記第1共通端子から見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域に対応している複数のフィルタ」に相当する。

イ.本願発明1の「前記複数の通過帯域は、第1通過帯域および第2通過帯域を含み、」について

(ア)引用発明の「Band2の受信通過帯域(1930-1990MHz)」は、「マルチプレクサ1」の複数の通過帯域のうちの一つのバンドバスフィルタ30の通過帯域であるから、本願発明1の「第1通過帯域」に相当する。

(イ)引用発明の「Band4の受信通過帯域(2110-2155MHz)」は、「マルチプレクサ1」の複数の通過帯域のうちの一つのバンドパスフィルタ40の通過帯域であり、上記(ア)の「Band2の受信通過帯域(1930-1990MHz)」と異なる帯域であるから、本願発明1の「第2通過帯域」に相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明と本願発明1は、「前記複数の通過帯域は、第1通過帯域および第2通過帯域を含」む構成を備える点で一致する。

ウ.本願発明1の「フィルタデバイス」について

引用発明の「マルチプレクサ1」は、「バンドバスフィルタ30」と「バンドバスフィルタ40」を含むデバイスといえることから、後述する(相違点)を除き、本願発明1の「フィルタデバイス」に相当する。

以上ア~ウより、本願発明1と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)

「第1共通端子と、
前記第1共通端子に接続され、前記第1共通端子から見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域に対応している複数のフィルタと、
を有しており、
前記複数の通過帯域は、第1通過帯域および第2通過帯域を含む、
フィルタデバイス。」

(相違点)

本願発明1は「前記第1共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」のに対して、引用発明には、そのような構成は特定されていない点。

(2)相違点についての検討、判断

上記相違点について検討すると、引用文献1には、上記相違点に係る本願発明1の「前記第1共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンス」について記載されておらず、該「全体を見たインピーダンス」の周波数特性についての示唆もされていない。さらに、引用文献1は、マルチプレクサにした時の共通端子からみた各フィルタの良好なインピーダンス整合をとることによって、通過ロス及び反射ロスが大きくなりやすい通過帯域において、当該通過ロス及び反射ロスを効果的に低減する(段落【0147】)ためのものであって、共通端子21から見た各フィルタのインピーダンスは、いずれの通過帯域においても、概ね基準となるインピーダンス(スミスチャートの中心)に近づくようにするためのものであるといえ、「前記第1共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンス」が、「異なる」「通過帯域」において「離れる」ようにする本願発明1とは技術思想を異にするものである。

また、拒絶査定時に引用された引用文献2-8にも、上記相違点に係る本願発明1の「前記第1共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」ことは記載も示唆もされておらず、当該発明特定事項が本願の優先日前において周知技術であったともいえない。

したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の「前記第1共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」構成とすることは、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。

よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-8について

本願発明2-8も、本願発明1の「前記第1の共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」に対応する発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明9について

本願発明9は、本願発明1の「フィルタデバイス」と同様の構成を「前段フィルタデバイス」と呼び代えて、当該「前段フィルタデバイス」と「前段増幅器」を有する「受信モジュール」の発明であり、本願発明1の「フィルタ」が「前段フィルタ」と呼び代えられ、「前記前段増幅器の出力端子」に「前記前段フィルタデバイス」が接続された「受信モジュール」であり、本願発明1の「フィルタデバイス」と同様の発明特定事項を含む発明である。

したがって、本願発明9は、本願発明1の「前記第1の共通端子から前記複数のフィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」に対応する構成である「前記出力端子から前記複数の前段フィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2の通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」という構成を含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明10-20について

本願発明10-20も、本願発明9の「前記出力端子から前記複数の前段フィルタ側の全体を見たインピーダンスは、前記第1通過帯域における第1の値と前記第2の通過帯域における第2の値とが、反射係数平面で0.3以上離れている」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明9と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1-20は、当業者が引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-017022

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