特許拒絶査定不服審判
2021-016505
ボア外病巣レーザ療法のためのシステム
- 審判番号
- 2021-016505
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-538594外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2023年04月04日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .536-WZ (A61B) / P18 .537-WZ (A61B) / P18 .14 -WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-538594「ボア外病巣レーザ療法のためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月3日国際公開、WO2017/132345、平成31年2月14日国内公表、特表2019-503795〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)1月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年1月26日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 3年 1月19日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月22日提出:意見書、手続補正書
令和 3年 7月26日付け:拒絶査定
令和 3年12月 2日提出:審判請求書、手続補正書
令和 4年 6月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 4年12月 6日提出:意見書、手続補正書
第2 本願発明
令和4年12月6日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「軟組織における癌限界決定の方法であって、
コンピューティングデバイスが、少なくとも1つのMRI可視病変を有する関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記少なくとも1つのMRI画像から前記少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記MRI可視病変を取り囲む組織から取得された少なくとも1つの生検コアを、癌含有養成結節、癌不存在陰性結節、又は不確定癌存在を有する中性結節に分類するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記少なくとも1つのMRI可視病変の前記3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、任意の潜在的癌性組織を覆うステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップと、を含む、
方法。」
第3 拒絶の理由
令和4年6月2日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2及び3は、次のとおりのものを含むものである。
1 理由2
本願の請求項1には、「軟組織における癌限界決定の方法」が記載されており、請求項1の記載上は、全てのステップを「コンピューティングデバイス」が行うものと解される。
全てのステップを、操作者の介入なしに「コンピューティングデバイス」が自動的に行うものとすると、本願の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)がそのような各ステップの実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
特に、発明の詳細な説明には、操作者の介入なしに「コンピューティングデバイス」が、どのようにして「癌性組織を含む陽性結節の任意の場所」、「任意の潜在的癌性組織」、「癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所」を自動的に特定しているのか何ら記載も示唆もされておらず、その結果どのようにしてこれらを取り囲んだり、覆ったり、除外するように3Dモデルを変形、生成するのかを明確かつ十分に記載したものではない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2 理由3
本願の請求項1には、「軟組織における癌限界決定の方法」が記載されており、請求項1の記載上は、全てのステップを「コンピューティングデバイス」が行うものと解される。
しかしながら、発明の詳細な説明には、当該各ステップのいずれも「コンピューティングデバイス」が自動的に行うものとは記載も示唆もされていない。特に、「少なくとも1つのMRI可視病変の前記3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップ」、「MTV3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、任意の潜在的癌性組織を覆うステップ」及び「MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップ」については、明確に「操作者」が行うと記載されている。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 本願の発明の詳細な説明の記載事項
本願の発明の詳細な説明には、次の内容が記載されている。なお、下線は当審で付した。
(1)背景技術
「【0002】
前立腺癌(PCa)は、5番目に最も一般的な癌であり、男性においては2番目に最も一般的な癌である(Kamangar F et al., J. Clin. Oncol. 24(2006):2137-2150)。従来、PCaは、根治的全腺療法又は能動監視(AS)によって処置されている(Valerio M et al., Fur. Urol. 66.4(2014):732-751)。根治的前立腺切除術(RP)は死亡率を有意に減少させることが示されている一方で、ASの下にある多くの男性は決して根本的介入を決して必要としないので、適切な行動方針を決定することは挑戦である(Bill-Axelson A et al., N. Engl. J. Med. 370(2014):932-942)。勃起不全、尿失禁及び直腸毒性を含む数多くの副作用と関連付けられるにも拘わらず(Kasivisvanathan V et al., Clin. Oncol. 25,(2013:461-473)、RPは、高リスクのPCaを有する者に依然として適したままである(Heidenreich A et al., Eur. Urol. 59,(2011):61-71)。ASは低リスクのPCaを有する男性に適している(Tosoian JJ et al., J. Clin. Oncol. 29,(2011):2185-2190; Bul M et al., Eur. Urol. 63,(2013):597-603)。しかしながら、潜在的に致命的な状態で暮らす恐れのような理由の故に、90%よりも多くの適格男性がASよりも介入を選択する(Barocas DA et al., J. Urol. 180,(2008):1330-1335)。関連する罹患率に加えて、PCaの過度の治療の現在の傾向は、コストと大きな掛かり合いを有する。最近の報告は、「前立腺癌で決して死ぬことのない低悪性疾病を患う男性の80%を治療することを回避する能力が全国的に年間13億2000万ドルを節約する」ことを確認した(Aizer AA et al., J. Natl. Compr. Canc. Netw. 13,(2015):61-68)。その本質的に低レベルの関連する合併症及び最小侵襲的な性質を考えれば、病巣療法は低リスク及び中リスクの両方についてのPCaに対する低コストの代替を提供することがある。
【0003】
レーザ間質性熱療法(laser interstitial thermal therapy)(LITT)は、PCaの治療のための病巣療法の安全で有効な形態として実証されている(Natarajan S et al., J. Urol. 196,(2015):1-8; Oto A et al., MR Imaging-guided Focal Laser Ablation for Prostate Cancer: Phase 1 Trial. (2013):267)。LITTは、拡散レーザ繊維を標的内に挿入すること及び組織温度を60~95℃まで上昇させることからなる。癌制御を達成し、周囲構造に対する損傷を防止するために、この治療様式は、組織凝固のリアルタイムフィードバックを必要とする。組織炭化は、生理食塩水をレーザ繊維の周りで循環させる能動冷却カテーテルによって低減されるが、ペルチエ冷却器のような他の冷却方法を使用することができる。LITT中の温度を監視する標準的なアプローチは、時間がかかり、労働集約的であり、高価である、磁気共鳴温度測定(MRT)である。LITTの普及に対する重大な障壁は、磁気共鳴温度測定(MRT)及び温度-時間熱線量モデルへの依存である。更に、有効性モニタとして病巣レーザ療法システム(focal laser therapy system)と並行して一般的に使用されるアレニウス損傷計算は、今までのところ、熱誘発組織損傷の真の程度を決定する上で信頼性がないことが証明されている。」
(2)発明が解決しようとする課題
「【0004】
軟組織の病巣レーザ治療(focal laser therapy)のための改良されたシステム及び方法の必要が当該技術分野に存在する。本発明はこの必要性を満足する。」
(3)課題を解決するための手段
「【0005】
1つの態様において、本発明は、軟組織における癌限界決定の方法に関する。本方法は、少なくとも1つのMRI可視病変を有する関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得するステップと、少なくとも1つのMRI画像から少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成するステップと、MRI可視病変を取り囲む組織から少なくとも1つの生検コアを取得するステップと、少なくとも1つの生検コアを、癌含有陽性結節、癌不存在陰性結節、又は未確定癌存在を有する中性結節として分類するステップと、少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップと、MTV3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、任意の潜在的癌性組織を覆うステップと、MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップとを含む。
【0006】
1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、中性結節の場所を取り囲むよう、少なくとも部分的に拡張される。1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、全方向に1cmだけ等方(isotropically)に拡張される。1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、医療画像データに基づいて癌を宿していると思われる領域を取り囲むよう、少なくとも部分的に拡張される。1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、以前の生検の集団、以前に治療された患者の集団、又はそれらの両方の統計的な分析に基づいて癌含有領域を取り囲むよう、少なくとも部分的に拡張される。」
(4)発明を実施するための形態
「【0020】
本発明は、病巣レーザ療法(focal laser therapy)中の癌性組織(cancerous tissue)の排除に必要な治療の場所及び幅を示す癌限界(cancer margins)を決定する方法を提供する。本発明は、病巣レーザ療法のためのシステム及びデバイス並びに病巣レーザ療法のためのシステム及びデバイスを使用する方法も提供する。本発明は、MRI温度測定に依存せず、治療の正確さを向上させる一方で、治療時間及びコストも低減する。」
「【0027】(軟組織の病巣レーザ療法のための癌限界決定の方法)
1つの態様において、本発明は、癌限界決定の方法を提供する。この方法は、放射線データ(radiology data)と病理データ(pathology data)とを組み合わせて、病巣レーザ療法(focal laser therapy)のために癌性組織の場所及び幅を表す3Dモデルを生成する。
【0028】
ここで図1を参照すると、癌限界決定の例示的な方法100が提示されている。方法100は、ステップ102で開始し、ステップ102では、少なくとも1つのMRI可視病変を有する関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得する。ステップ104では、少なくとも1つのMRI画像から少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成する。ステップ106において、MRI可視病変を取り囲む組織から少なくとも1つの生検コアを取得する。ステップ108において、少なくとも1つの生検コアを、癌含有陽性結節(cancer-containing positive node)、癌不存在陰性結節(cancer-absent negative node)、又は不確定癌存在(indeterminate cancer presence)を有する中性結節(neutral node)として分類する。ステップ110において、少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを少なくとも部分的に拡張させ、癌性組織を含む陽性結節の場所を取り囲んで、最小治療容積(minimum treatment volume)(MTV)3Dモデルを生成する。ステップ112において、MTV3Dモデル限界(model margin)を少なくとも部分的に拡張させる。幾つかの実施形態では、MTV3Dモデル限界を等方的に拡張させる。他の実施形態では、少なくとも1つの中性結節を含むよう、或いは疑わしく見えるMRI又はUS画像から見える任意の領域又は構造を含むよう、MTV3Dモデルを拡張させる。ステップ114において、MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、陰性結節の場所を排除して、最適化された限界3Dモデル(Optimized Margin 3D model)を生成する。
【0029】
関心領域は、癌性組織を含む軟組織の領域を指す。関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得する方法は、当技術分野で一般的に使用される任意の適切なMRI方法であり得る。幾つかの実施形態において、MRI方法は、マルチパラメトリックMRI(multi-parametric MRI)を含む。少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成する方法は、複数のMRI画像を3次元表現に照合し得る任意の適切なソフトウェアを使用して実行されてよい。3Dモデルは、操作者が、少なくとも1つのMRI可視病変の大きさ、形状、及び場所を空間的に視覚化することを可能にする。3Dモデルは、生検コアが局所組織の代表的なサンプリングを取り込む(キャプチャ)一方で、敏感な解剖学的構造を回避するよう、操作者がMRI可視病変を取り囲む組織からの少なくとも1つの生検コアの取得を計画することも可能にする。
【0030】
少なくとも1つの生検コアを取得する方法は、12~20の間の針ゲージ(needle gauge)を有する生検コア針(biopsy core needles)を使用する超音波(US)誘導方法を含む、当該分野において知られた任意の適切な方法であることができる。典型的な生検コアは、直径及び長さを含み、癌性組織の空間的場所は、起源組織(origin tissue)中の生検コアの源(source)及び生検コアの長さに沿う癌性組織の位置の両方によって決定されてよい。少なくとも1つの生検コアを、癌含有陽性結節、癌不存在陰性結節、又は不確定癌存在を有する中性結節として標識化すること(labelling)は、操作者が、MRI画像中に見ることができない関心領域内の癌の実際の境界を識別することを可能にする。
【0031】
生検コアサンプルは、少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルの外側の場所にある癌含有組織を明らかにすることがある。3Dモデルは、陽性結節の不存在に対処するよう操作者によって変形させられてよい。例えば、操作者は3Dモデル内に膨らみ(バルジ)(bulges)を導入して陽性結節を包んで(envelope)よく、全ての陽性結節を包む3DモデルはMTV3Dモデルを表す。
【0032】
MTV3Dモデルの拡張は非剛性であり、関心領域内の癌性組織の実際の境界により良く適合するよう操作者によって自由に変形させられることができる。MRIで明瞭に見えない関心領域内の癌性組織を取り込むために、MTV3Dモデルは更に拡張せられてよい。1つの一実施形態において、MTV3Dモデルは、全ての方向に等方的に拡張させられる。拡張の程度は、病変の場所、組織の種類、病変の種類、及び同等のことを含む、多くの要因に依存して異なることがある。例えば、敏感な解剖学的構造に近接近している病変について、3Dモデルの拡張は、敏感な解剖学的構造の方向を除く全ての方向にあってよい。他の例では、高レベルの脈管構造(血管系)を含む病変は、低レベルの脈管構造を有する良性の癌性組織を含む病変よりも大きい量の拡張を保証することがある。幾つかの実施形態において、MTV3Dモデルは、全ての方向に1cmだけ等方的に拡張させられる。
【0033】
幾つかの実施形態において、MTV3Dモデルは、任意の組織領域又は構造が癌を宿す可能性に基づいて拡張される。例えば、3Dモデルは、以前の生検の集団、治療を受けた患者の集団、又はそれらの両方における癌場所の統計的分析に基づいて異方的に拡張させられることがある。
【0034】
MTV3Dモデルは、少なくとも1つの陰性結節と重なり合うことがある。3Dモデルは、陰性結節の存在に対処するよう操作者によって変形されられてよい。例えば、操作者は、3Dモデル内に窪み(dimple)又は凹み(depression)を導入して陰性結節を排除してよく、結果として得られる3Dモデルは、最適化された限界3Dモデルを表す。」
「【0079】(例1:前立腺癌の病巣レーザアブレーション:ガイダンスのためのMR/US融合の実現可能性)
病巣レーザアブレーション(FLA)又はレーザ間質性熱療法(LITT)は、手術又は電離放射線を用いずに前立腺癌を治療する方法である(Bomers JGR et al., World Journal of Urology (2016):1-9)。」
「【0081】
現在実施されているように、FLAは、MRIスキャナ(ボア内(in-bore))のガントリ内で達成され、操作者は放射線科医である(Oto A et al., Radiology 267.3(2013):932-940; Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016):68-75; Lepor H et al., European urology 68.6(2015):924-926)。」
「【0114】(処置計画)
FLAを使用して、生検で確認した癌を伴う関心領域(ROI)MR増強指標(MR-enhancing index regions of interest)を標的化した。MRIの3Dセグメント化によってROI特性を決定した。前立腺内の各患者のROI幾何学的形状及び場所に従ってMATLAB及びC++を使用して開発したカスタムソフトウェアを使用して、ファイバ場所及び所望の限界を事前に計画した。MRI組織病理学的相関を用いた以前の研究は、MRIが真実な腫瘍容積を1.5cmまで系統的に過小評価することを示している(Priester A et al., Int Symp Focal Therapy Imag 2014, Pasadena, CA, Aug 21-23, PP-24)。以前の生検情報、即ち、陽性コア及び陰性コアの3D場所を使用することによって、この限界を更に精緻化した。かなり大きなボア内経験の間に得られた予備データに基づいて、12~15Wでの3分のレーザアクティブ化がレーザ先端の周りに径方向に約1cm延在する凝固壊死のゾーンを創り出すと推定した。」
(5)図面
「【図1】
[図:0001400963000001.jpg]
」
2 理由2(特許法第36条第4項第1号)について
ア 本願発明は、「軟組織における癌限界決定の方法」に関するものであって、
一「少なくとも1つのMRI可視病変を有する関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得するステップ」
二「前記少なくとも1つのMRI画像から前記少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成するステップ」
三「前記MRI可視病変を取り囲む組織から取得された少なくとも1つの生検コアを、癌含有養成結節、癌不存在陰性結節、又は不確定癌存在を有する中性結節に分類するステップ」
四「前記少なくとも1つのMRI可視病変の前記3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップ」
五「前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、任意の潜在的癌性組織を覆うステップ」
六「前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップ」
(漢数字は、整理のために当審で付したものである。)の全てを「コンピューティングデバイス」が主体として行うことが特定されている。
イ 一方、発明の詳細な説明には、「コンピューティングデバイス」が主体として本願発明に係る上記一~六のステップを行うことについて、何ら記載がない。
特に、四「前記少なくとも1つのMRI可視病変の前記3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップ」及び六「前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップ」については、上記1(4)(特に、【0031】、【0034】)に、「操作者」によって行われることが明記されているが、「コンピューティングデバイス」が主体として行うことは、記載も示唆もされていない。それ以外のステップについても、その主体は記載されていない。
また、上記三のステップに関して、上記1(4)の【0029】、【0114】には、ソフトウェアを「使用して」、MRI可視病変の3Dモデルを生成することが記載されているが、これらはあくまでも、操作者がソフトウェア(がインストールされたコンピューティングデバイス)を使用してMRI可視病変の3Dモデルを生成すると解するのが妥当であり、当該記載に基づいて、「コンピューティングデバイス」が主体として本願発明に係る全てのステップを行うと解することはできない。
ウ そして、特に、三「前記MRI可視病変を取り囲む組織から取得された少なくとも1つの生検コアを、癌含有養成結節、癌不存在陰性結節、又は不確定癌存在を有する中性結節に分類するステップ」、四「前記少なくとも1つのMRI可視病変の前記3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップ」及び六「前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップ」を行うにあたって、少なくとも生検コアの癌含有養成結節、癌不存在陰性結節、又は不確定癌存在を有する中性結節への分類、癌性組織を含む陽性結節の範囲の特定、癌性組織の存在しない陰性結節場所の特定は、医師の高度な医療知識や経験に基づいた複雑な判断が必要であることは自明であって、単にコンピューティングデバイスにより当該判断を行うことが可能であるとはいえないところ、本願の発明の詳細な説明には、医師が介在せずに「コンピューティングデバイス」が主体として、そのような判断をどのようにして行い、その結果として上記各ステップをどのようにして行うのか、その具体的かつ詳細な説明が一切記載されておらず、当業者がその実施をすることはできない。
エ したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
3 理由3(特許法第36条第6項第1号)について
ア 上記2アのとおり、本願発明は、「軟組織における癌限界決定の方法」に関するものであって、上記一~六のステップの全てを「コンピューティングデバイス」が主体として行うものである。
しかしながら、上記2イのとおり、発明の詳細な説明には、「コンピューティングデバイス」が主体として本願発明に係る各ステップを行うことについて、何ら記載がなく、特に、上記四及び六のステップについては、「操作者」によって行われることが明記されているが、「コンピューティングデバイス」が主体として行うことは、記載も示唆もされていない。そして、上記2のとおり、「コンピューティングデバイス」が主体として両ステップを行うことは、当業者にとって自明な事項ではなく、記載されているに等しいともいえない。
したがって、本願の請求項1に記載されている事項は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。
イ また、本願発明が解決しようとする課題は、上記1(2)から、軟組織の病巣レーザ治療のための改良された方法を提供することであり、より具体的には、上記1(4)の【0020】に記載された「治療の正確さを向上させる一方で、治療時間及びコストも低減する」方法を提供することである。
一方で、上記2イのとおり、発明の詳細な説明には、上記四及び六のステップについて、「操作者」によって行われることしか記載されていない。
そして、上記2ウのとおり、上記四及び六のステップを行うにあたって、少なくとも癌性組織を含む陽性結節の範囲の特定、及び、癌性組織の存在しない陰性結節場所の特定は、医師の高度な医療知識や経験に基づいた複雑な判断が必要であることは自明であり、そのような医療知識や経験を有する「操作者」が上記四及び六のステップを行うことにより、上記課題を解決すると認められる。
よって、上記四及び六のステップを「操作者」が行うことは、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段であり、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないから、発明の詳細な説明に記載したものではない。
ウ 以上より、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
4 令和4年12月6日提出の意見書における審判請求人の主張について
上記意見書において審判請求人は、
「各ステップは、最終的には、コンピューティングデバイスによって実行されます。当業者は、明細書段落0031及び0034中の「操作者によって変形させられてよい」という記載並びに明細書段落0032中の「操作者によって自由に変形させられることができる」という記載が、3Dモデルがどのように変形させられるかの決定が操作者によって行われることを意味しているにすぎないことを容易に理解します。何故ならば、人間が視覚ディスプレイ上でソフトウェア3Dモデルを直接的に生成し且つ修正することは可能でなく、コンピューティングソフトウェアの仮想出力である3Dモデルは、最終的には、コンピューティングデバイスのプロセッサによってのみ修正されることができるからです。これに関連して、例えば、明細書段落0029には、「少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成する方法は、複数のMRI画像を3次元表現に照合し得る任意の適切なソフトウェアを使用して実行されてよい。」と記載されています。従って、操作者は、コンピューティングデバイスに3Dモデルを生成させる初期の決定を行うのと全く同様に、操作者は、3Dモデルが生成された後に、3Dモデルをどのように変形させるかの後続の決定も行います。当業者は、コンピュータ及びソフトウェアシステムの機能的出力と人との関係を理解し、「操作者によって変形させられてよい」及び「操作者によって自由に変形させられることができる」という記載が実際には上述のことを意味することを更に理解します。
と主張した上で(下線は当審で付した。)、理由2(特許法第36条第4項第1号)について
「当業者は、上記各ステップが、上記ステップを実現するソフトウェア及び/又はアルゴリズムによって行われることを容易に理解します。」
と主張し、理由3(特許法第36条第6項第1号)について
「上述の通り、当業者は、コンピューティングデバイスが、操作者の決定に基づいて、ソフトウェア及び/又はアルゴリズムを用いて上記各ステップを行うことを理解します。」
と主張している。
以上の主張は、発明の詳細な説明には、操作者がコンピューティングデバイスを用いて3Dモデルの変形を行っていることが記載されていると主張していると解されるが、請求項1には、「前記少なくとも1つのMRI可視病変の前記3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップ」及び「前記MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、癌性組織の存在しない任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップ」の主体として「コンピューティングデバイス」が記載されているのであって、操作者がコンピューティングデバイスを用いて上記両ステップを行っていることは、記載されていない。
したがって、審判請求人の主張は、請求項1の記載に基づくものではなく、当を得ていない。
5 予備的見解
なお、上記意見書で審判請求人が主張するように、本願発明は、操作者がコンピューティングデバイスを用いて行う発明と解した場合、上記三の「分類するステップ」、四の「最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップ」、六の「限界3Dモデルを生成するステップ」は、医師が行うステップとなるから、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないこととなる。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の請求項1の記載が同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-016505