特許拒絶査定不服審判
2023-001075
流体流動金属スリーブ
- 審判番号
- 2023-001075
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-531159外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年01月23日
- 審決日
- 2024年04月30日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .536-WZ (A61B) / P18 .537-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-531159号「流体流動金属スリーブ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月 5日国際公開、WO2019/228544、令和 3年12月 2日国内公表、特表2021-532965号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和 1年) 7月 8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年 8月24日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。
令和 3年 2月10日提出 手続補正書
令和 4年 2月14日付け 拒絶理由通知
同 年 5月11日提出 意見書及び手続補正書
同 年 9月16日付け 拒絶査定
令和 5年 1月23日提出 審判請求書及び手続補正書
同 年 7月27日付け 審尋
同 年 9月19日提出 回答書
同 年11月 8日付け 拒絶理由通知
令和 6年 2月 8日提出 意見書及び手続補正書
第2 本願発明
令和 6年 2月 8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「全体として中空構造のスリーブ本体と延伸部分とを備える、流体流動金属スリーブであって、
前記スリーブ本体は、前記延伸部分にネジ構造で接続され、前記スリーブ本体の末端部は、超音波メスのハンドルに接続され、前記超音波メスを通過させ、前記スリーブ本体及び前記延伸部分の表面には、ノイズ低減ノッチが設けられ、前記ノイズ低減ノッチは、前記流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成される、流体流動金属スリーブ。」
第3 拒絶の理由
1 実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)
令和 5年11月 8日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)で、「バズを防止する」の記載を「ノイズを低減する」と読み替えて留保した、拒絶査定の理由2は概略次のとおりである。
この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
明細書及び図面の記載並びに技術常識を考慮しても,当業者が請求項1によって特定される「ノイズ低減ノッチ」を備えた流動金属スリーブを作ることができるとは認められず,使用することができるとも認められない。
したがって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
2 サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)
当審拒絶理由の理由1は、概略次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1に「前記スリーブ本体及び前記延伸部分の表面には、ノイズ低減ノッチが設けられ、前記ノイズ低減ノッチは、前記流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成される」と記載されているが、明細書の特に段落【0025】の記載を参照しても、ノイズ低減ノッチがどのような構成のものであり、いかにしてノイズを低減できるのか不明である(一般に、流体が通過するスリーブにノッチを設ければ、ノッチの通過音や乱流が生じノイズは増加するものと思われ、どのようなノッチを設ければノイズが低減できるのか、発明の詳細な説明の記載から不明である。)から、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているものではない。
第4 判断
1 実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)について
(1)請求項1には「前記スリーブ本体及び前記延伸部分の表面には、ノイズ低減ノッチが設けられ、前記ノイズ低減ノッチは、前記流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成される」と記載されている。
(2)一方、発明の詳細な説明及び図面には、ノイズ低減ノッチがノイズを低減することができることについて、段落【0025】に「ノイズ低減ノッチの配置は、流体が流体流動金属スリーブを通過するときに発生するバズ(buzzing)を防止することができ、それによって切開中のノイズデシベルを効果的に低減することができる。」との記載がある。
(3)また、ノイズ低減ノッチのついて、楕円形状(図8)、円形(図9)及び矩形状(図10)のものが例示された上で、当該段落【0025】には、当該ノイズ低減ノッチは、「他の規則的または不規則な形状であってもよい。」とされ、さらに、「貫通構造であっても非貫通構造であってもよく、均一または不均一に分布していてもよい。」と記載されているところ、発明の詳細な説明及び図面には、ノイズデシベルを効果的に低減するためのノイズ低減ノッチの具体的構成について記載されていない。
(4)そして、一般に、流体が通過するスリーブにノッチを設ければ、ノッチの風切音やノッチ付近で生じる乱流によりノイズは増加するのが技術常識であり、当該技術常識に反してノイズを低減するノイズ低減ノッチを発明の詳細な説明及び図面の記載から理解することはできない。
(5)したがって、発明の詳細な説明及び図面には、流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成されるノイズ低減ノッチの具体的構成(形状、貫通の有無、配置等)が記載されておらず、発明の詳細な説明及び図面の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
令和 5年 7月27日付け審尋の、「2.本願発明に係る流体流動金属スリーブに設けられたノイズ低減ノッチにより、どのような機序で流体が通過するときに発生するノイズを低減できるのか、ノイズ低減の仕組みについて説明されたい。 」との問いに対して、出願人は令和 5年 9月19日提出の回答書の「5)ノイズの低減」において、「スリーブの中空構造内に超音波メスが存在する状態で流体が流れる為、相当の流体抵抗があり、使用時に共振キャビティが発生します。この共振キャビティのため、ブーンという大きなノイズが発生すると考えられています。本願発明者は、流体が流体流れ金属スリーブを通過するときに発生するブーンという大きなノイズを防止するため、ノイズを低減するための機構を考えました。本願発明者が利用した機序は、金属スリーブ上にノイズ低減用のノッチを配置することにより、使用時に共振キャビティの形成を回避することができ、それによってノイズを低減することができることであり、これは当業者に知られています。超音波メスのメスヘッドを用いて切開を行うとき、本願発明のスリーブがメスヘッドの摩擦熱点を冷却するために使用されます。具体的には、流体流動金属スリーブ上にノイズ低減ノッチを配置することにより、流体が流体流れ金属スリーブを通過するとき(摩擦熱点を冷却するため)に発生するバズを低減または防止することができ、それによって切開中のノイズデシベルを低減することができます。」と主張している。
しかし、本願の発明の詳細な説明及び図面には、スリーブに対して、どのような超音波メスがどのように配置されるかについて記載がなく、流体が当該スリーブ及び超音波メスに対してどのように流れるのかも特定されておらず、ブーンという大きなノイズが何に起因して発生するのか理解できない。
また、当該共振キャビティに、どのようなノイズ低減ノッチを設け、どのように使用することで、ノイズデシベルを低減することができるのか具体的な説明がなく、流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成されるノイズ低減ノッチが実施できる程度に示されていない。
よって、上記回答書の記載に照らしても、当業者が、明細書及び図面の記載に基いて、本願発明を実施することができるとはいえない。
また、令和 6年 2月 8日提出の意見書(4頁10~27行参照。)で、段落【0003】~【0004】、【0016】~【0017】及び【0025】の記載から、ノイズ低減ノッチを、「どのように作ればよいのかが不明確であるとは断定することはできません。」と主張しているが、上記段落の記載に照らしても、上記のとおり、ノイズ低減ノッチを具体的にどのように作ればいいのか理解できない。
2 サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)について
上記1で検討したように、本願の明細書及び図面には、流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成されるノイズ低減スリーブがどのような構成のものなのか理解できるように記載されていない。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されているものではない。
出願人は、令和 6年 2月 8日提出の意見書において、「ノイズ低減ノッチがどのような構成のものであるのかは、本願の図8~図10および関連説明に記載されています。 まず、ノイズ低減ノッチは符合10(図8)、11(図9)、12(図10)を用いて図示されておりますので、少なくとも、ノイズ低減ノッチがどのような形状であり、どこに配置されているのかが明らかです。また、ノイズ低減ノッチは、スリーブ本体1及び延伸部分2の周囲に設けられていることが記載され、他の規則的または不規則な形状であってもよく、貫通構造であっても非貫通構造であってもよく、均一または不均一に分布していてもよいことが記載されています(本願明細書の段落0025)。さらに、どのようなノッチを設ければノイズを低減できるのかについては、上記説明の直後に、「ノイズ低減ノッチの配置は、流体が流体流動金属スリーブを通過するときに発生するバズ(buzzing)を防止することができ、それによって切開中のノイズデシベルを効果的に低減することができる。」と記載されておりますので、ノイズを低減できるノッチは、記載され、図示されております。したがって、いかにしてノイズを低減できるのかについては明らかでないかもしれませんが、ノイズ低減ノッチがどのような構成のものであるのかは本願明細書に明確に記載されています。」と主張している。
しかし、上記1で検討したとおりであるから、「ノイズ低減ノッチの配置は、流体が流体流動金属スリーブを通過するときに発生するバズ(buzzing)を防止することができ、それによって切開中のノイズデシベルを効果的に低減することができる」ノイズ低減ノッチの構造(形状)及び配置は理解できない。
また、仮に図8~10に記載されたとおりノイズ低減ノッチを配置したとしても、そもそも超音波メスに対してどのように使用し、どのように流体を流すことでノイズを低減できるのか不明である。
よって、本願の発明の詳細な説明及び図面には、流体流動金属スリーブを流体が通過するときに発生するノイズを低減するように構成されるノイズ低減ノッチが実質的に記載されていないから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願特許請求の範囲の請求項1の記載は同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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